「読書余論」 2016年3月25日配信号 の 内容予告

▼安藤信雄ed.『海軍中攻史話集』S55-3、中攻会pub.
 銀河の前の「泰山」(M-60)も、双発急降下爆撃機のユンカース88を参考にしたものだった。
 揚子江流域の居留民が上海へ引き揚げはじめたのはS12-8-1からで、8日にはほぼ終わった。
 8-14の午前中ににシナ空軍が延べ40機をもって、旗艦『出雲』、陸戦隊、江上の艦艇を爆撃した。
 中攻への給油は、総計3000リッターぐらい。いくらがんばっても3時間かかる。
 ※本書はあまりにも濃密且つ大部なので、今回は途中まで。この作業の皺寄せで今回は『海軍』および『帆船時代のアメリカ』の摘録はナシ。
▼横森周信『海軍陸上攻撃機』S54
 本庄は、96陸攻のアスペクト比は計算上は10がよかったが、なんとなく前例に縛られて8.3にしてしまった、と後悔。
 水平尾翼ももっと大きくすればよかった、と。
 フィリップス提督は、日本の双発機が魚雷攻撃するとは思っていなかった。
 一式陸攻の最長作戦行動は、往復1750海里(3240km)、11h以上の対艦爆撃ミッション。
▼矢島祐利[すけとし]『アラビア科学史序説』1977-3、岩波書店
 紀元前2000年頃のバビロニアの粘土板に、二次方程式をこなしている計算が多数記されている。
 したがって代数の発明者はイスラム教徒ではない。
 だが、それをまとまった書籍にして残したのは、アラブ人。だからアルジェブラが英語の代数になった。
 コーランには絵のことは何も語られていない。しかしマホメット言行録たる『ハディース』の中で神学者たちが、人物を描くことは神の創造を真似ることでよくない、という教えを作り上げてしまった。
 ハディースはたくさんある。が、アル・ブハーリー(810~870)の『キターブ・アル・ジャーミ・アッ・サヒーフ』(完全な収録の書)が有名で、非常に尊重されている。
 A.D.8世紀には、アリストテレス学派の著作から注釈まであらかたアラビア語訳がでた。ユークリド、プトレマイオスなどもアラビア語で読めるようになる。そうしなければ諸外国と太刀打ちできないという危機感があった。
 コーラン釈義の文法から修辞学、哲学に発展したのが9世紀。
 次の1世紀で教養的諸科学が発達。翻訳を脱して独自研究に移る。
 11世紀に、イスラム・オリジナルの科学を生産。
 歳差運動はギリシャ天文学では100年に1度とされている。とすれば春分点が全天360度を回るのに3万6000年かかることになる。インド人はこれを大周期だと考え、それが輪廻思想になり、ピタゴラスにまで影響を与えた。
▼防研史料 航本『一式二五番二號爆弾説明書』S16-12
▼防研史料 海軍火薬廠・海軍造兵大佐・中谷達次郎『爆薬炸填法ノ講義』S3-2
▼防研史料 『駐独海軍武官情報(爆弾・機雷関係)』S17-1-17~S18-2
 ソ連とドイツの対艦用徹甲ロケット爆弾のデータはすべてここにある。
▼山本正・他『北海道山菜誌』1980-5
 ロンドン軍縮会議に出発する若槻礼次郎が盲腸炎になったが、ハコベの汁を飲んでよくなった。
 M35-1の八甲田遭難。前岳の北斜面の竹藪中に入ったために進退きわまった。もちろんネマガリタケ=チシマザサ。
 クルミの樹は、ハエやアブを遠ざける。だから畜舎や堆肥場のまわりに植えるとよい。
 マタタビの茎・葉・実に含まれる謎のスピリットは仔猫と牝猫には効かないという。性ホルモンではないかという。
 マタタビは雌雄同株。ミヤママタタビは異株。
 ホテイシメジは、酒と一緒に食べると酔い方が数倍になる。
▼高橋英一『生命のなかの「海」と「陸」――ナトリウム・ケイ素の生物誌』2001-10
 唐朝が発明した「塩税」。肉食できず穀食頼りの下層民は追加の塩無しでは病気となるので、政府が塩を専売にして消費税を上乗せしてしまえば徴税コストはゼロでなんぼでも重税化できる。しかし典型的な逆進税であるため、闇塩結社犯罪と易姓叛乱のタネが制度内にビルトインされたようなものだった。
▼『今昔物語』 巻28の続き
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 「読書余論」は、主に軍事系の古本を、兵頭が注目した一斑の摘記や読書メモによって紹介し、他では読めないコメントも附しているものです。
 あまりに多すぎる過去の情報量の中から「兵頭はここは珍しいと思いました」というポイントだけ要約しました。
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 また、ミリタリーしか読んで来なかった人には、他分野の情報が、何ほどか有益かもしれません。
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