不倫不休。

 David Hambling記者による2016-4-4記事「Raytheon’s New Radar Tech Could Realize the Pentagon’s Pain Ray」。
  アラバマ州のハンツヴィルで陸軍展示会があり、そこにレイセオンが、窒化ガリウムでレーダー波をつくるという、ペトリオット用の新システムを出品した。
 すなわちソリッドステートレーダー。
 もともとレーダー波は、真空管から生み出されていた。電子レンジの中にあるマグネトロンはその類似品である。
 その後、トランジスタ類似のソリッドステート・エミッターからレーダー波を発生させてやろうという研究が進んだ。わかりやすくたとえると、LEDチップの光の代りに電波が出てくる素子だと思えばよい。
 このような半導体としてはガリウム砒素が知られていたけれども、出力が低いのが難点であった。
 そこでレイセオン社は、2億ドルと17年の歳月をかけ、窒化ガリウムのチップをレーダー出力源にする目途をつけた。
 ガリウム砒素よりもハイパワーで、変換効率が良い。
 また意図した信号の副産物である電波ノイズも少ないので、レーダー用としてはまことにすぐれている。
 このチップを並べたフェイズドアレイを2枚、裏表に張り合わせておくことで、機械的な首振りをさせずに、360度の自在な監視ができる。
 これからの戦場ではミサイルだけでなく無人機のスウォーム(群蜂)が相手となる。それに早々と対応しようというのだ。
 開発はレイセオンが自己資金でなしとげた。過去2年、試作品を米陸軍に評価テストしてもらっている。陸軍が希望しているペトリオットのアップグレードに使えるかどうか。
 開発は、量産化移行一歩手前の段階まで漕ぎ着けた。
 窒化ガリウムにとりくんでいるのはレイセオンだけではない。サーブ社もスウェーデン軍から昨年、窒化ガリウム・レーダーの開発を受注し、その一線配備は2016年中だという。
 サーブ社の技師も、窒化ガリウムはレーダーの革新だと絶賛する。探知距離は増すのに、機器のサイズは却って小さくなるのだから。
 窒化ガリウム・レーダーは、人体の表皮神経だけを刺激して、いかなる我慢強い人間もその場にいたたまれなくしてやる、非致死性の「痛撃信号ビーム」砲の普及にも道を開いてしまう。そんな危ない道具が世界中に普通に出回るようになるという未来はすぐそこまで来ている。
 「アクティヴ・ディナイヤル」という商品名で痛撃信号ビーム砲はすでに存在するが、素子が極低温冷却を要する「ジャイロトロン」は使用開始までの準備に3時間以上もかけねばならぬ面倒なもの。しかもサイズが貨物コンテナ大なのだ。最新の「システム2」でも1セット9トン。大型トラックでないと持ち運びもできない。
 これが窒化ガリウム応用となったら、サイズは冷蔵庫なみに減る(36立方フィート)。ピックアップトラックでも運べるし、既存の装甲車の天蓋部に増設してもよい。
 準備時間はゼロ秒。車両を走らせながらでも、照射ができる。有効射程は将来は1kmを超える見込み。
 群集の中のテロリストを咄嗟に麻痺させたいときに、この痛撃信号ビームを躊躇なく使うことができる。
 また、遠い位置の敵スナイパーに、その仕事の達成を断念させることも、痛撃信号ビームなら、可能だ。
 要人を護送する車列の行く手を邪魔する大暴徒群にこの痛撃信号ビームを照射してやれば、群集はたちまち左右に逃げ散り、1本のクリアーな王道が前方に顕われるであろう。
 ちなみにアクティヴディナイヤルの初期製品は2007に米軍がイラクに持ち込んだものの、敵の悪宣伝に利用されるだけだという問題点に気付いて、一度も使われなかった。
 米軍は、AC-130ガンシップにこの新型アクティヴディナイヤルを搭載できないかと研究中である。空対地の運用だ。ドローンに搭載することも検討されている。
 いまから70年前、レイセオンの技師パーシー・スペンサーは、ポケットの中の、ピーナッツを棒状に固めたスナックが、軍用出力のマグネトロンに近づいたときに溶け出すという現象を偶然に目の当たりにした。これが「電子レンジ」の発見であった。
 次。
 Seth Robson記者による2016-4-5記事「Kevlar or plastic? New armor lighter, provides same protection」。
  とうとうケヴラーの時代が終わる。2019年、米軍の防弾衣素材は、軽量なポリエチレン(プラスチック)に代るのだ。
 今の防弾戦闘上衣よりも25%軽いのに、防弾力は等しい。これで兵隊の腰痛が軽減される。
 しかも可撓性。
 ヘルメットも、このポリエチレンになる。
 ※未来戦場はどうなるのか? まあ、〈ディープラーニングAIと結合したナノテク3Dプリンターによる無人スウォーム軍団〉――でも考えておいたら、たいがい不覚をとることもないだろう。それが「動くIED」として運用されたら? 誰もそんな戦場には入っていけなくなる。小型で、スマートで、しかも「チープ」。それによって重厚長大高額兵器が無効化され、大国の覇権を拒絶してしまう。そういう流れだね。