妄議するを ゆるさざるものあり。

 APの2016-7-16記事「Cleric in US being blamed for Turkey coup attempt: Who is he?」
   トルコ政府の雇われ法律家ロバート・アムステルダムは指弾した。げんざい米国ペンシルベニア州ポコノマウンテンズに広大な要塞邸宅を建てて亡命生活を送っているイスラム聖職者フェトゥラー・グレンが、今回のクーデター騒ぎの黒幕だ、と。
 この法律事務所は米国政府に対し、グレンの活動について過去何度も警告を伝えてきた。グレンはトルコ軍幹部とつながりがあるのだ。
 イマムとして訓練を受けているグレンは、トルコでは半世紀以上前からその名を知られている。イスラム教神秘主義に、近代民主主義や近代教育、近代科学を摺合させようという一派を興した思想家なのだ。
 支持する信者たちが世界100ヵ国以上に1000以上の学校を建てた。米国内のチャータースクール(地域と教師とで発起し、公的資金で補助されている私設学校)もすでに150校ある。トルコ本国では、大学、病院、銀行、新聞、電波メディアまで持っている。
 グレンはガチイスラミックなエルドアン支配下のトルコ政府からすくなくも三回、欠席裁判を受けている。
 米国司法省はグレンをトルコへ送還する気はないようだ。政治犯とみなしているようだ。
 FBIや各州の司法当局は、グレンのチャータースクールがトルコから大量の教師を呼び寄せ、その教師の給料として他のチャータースクールよりも多額の米国民の税金が補助されているケースを捜査している。
  ※じつは今年の三月にも、「オバマ政権がトルコ軍にクーデターを起こさせる」という噂が飛んだ。そうした事情の背景解説を『白書2016』ではしているのだが、刊行が現実に間に合わなかった。残念です。
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 海軍系テクノロジーのウェブサイトの記事「Proteus Dual-Mode Underwater Vehicle, United States of America」。
   大手造船会社のハンチントンインガルスの子会社であるUSGが、無人輸送潜水艇を完成した。旧陸軍の「マルゆ」の発想である。
 大量の貨物やダイバーを、遠距離まで、こっそりと海中から送り届けてやることができる。
 敵の海底ケーブルを調べることもできるし、大陸棚の資源開発にも使える。
 この実物「プロテウス」は、既に今年、米国内の海軍関係のエキスポで展示されている。
 プロテウスの開発は2012年2月から始まっていた。
 これまでの実験で、連続720時間潜航し、海中を2412浬、移動できることを実証している。
 プロテウスは、ダイバーが内部から操縦することもできるし、完全自律無人モードで活動させることもできる。
 船体の外寸は、長さは7.8m、幅1.61m、高さ1.62mである。
 積荷は、最大で1633kg。容積は、5立方m弱というところ。
 艦尾にはX字状の舵が付く。
 カーゴ・ベイには、縦1.52m×横0.54mの開閉扉があり、そこから積荷を出し入れ可能。
 有人モードにする場合、荷物スペース内の6箇所のエア・ステーションを活かして、ダイバーたちの連続10時間の活動をサポートできる。
 無人モードで運航させる場合は、ウェイポイントを辿らせることになる。プリプログラムで。
 船体外殻のさらに外側に、長カプセル形状の「カーゴ・ポッド」複数を装着して行かせることもできる。
 無人運航時の途中での命令受領、現状報告は、VHFアンテナやイリディウム衛星通信アンテナを海面上に出して行なう。
 潜航中はGPSを受信できないので、INSとして光ファイバーのジャイロ〔レーザーリングのこと?〕を頼る。
 300キロヘルツのマルチビーム・ソナーで、障害物を探知できる。
 動力はリチウムポリマー電池で、5枚プロペラのスクリューを回す。
 垂直と水平のスラスターが2個づつある。
 ベースラインの電力として148キロワットを蓄電して出航する。これは296キロワットまで増強できる見通し。
 深度は、有人モードでは150フィート、無人モードでは200フィートが可能である。
 最高速力は9ノット。バラストは総計521kgまで。
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 Matthew Cox記者による2016-7-15記事「Army SOF to Trade in Its Androids for iPhones」。
   米陸軍の特殊部隊は、従前のサムスン製のアンドロイドスマホを捨てて、アイフォンに切り替えることにした。
 「iPhone 6S」という。
 かれらいわく。アンドロイドは遅くてダメ。よくフリーズするし、そのたびにリスタートを強いられる。無人機の「インスタント・アイ」からのライブ動画を受信するのに、こんなもの使ってられない。アイフォンは高速だし、スムースだ。
 画面を2分割して、そのひとつに無人機のルートを表示させ、ひとつにライブ動画を表示させようとすると、アンドロイドスマホはフリーズしてしまう。そしてしばしば、そこから再起動が必要になる。特殊作戦中の肝心なときに、何分間も、画像情報が中断されてしまうのだ。
 この点、アイフォンはシームレスで快調。しかも画質も良い。信じられないくらいに。
 米陸軍は、これからの兵隊は皆胸にスマホを常時装着するようになると考え、いろいろ実験している。
 ※「歩兵分隊のネットワーク化」という話題を聞くたび、わたしが空想するのは「馬の目隠し板」だ。
 遠隔情報を処理中の人間は、目の前のイベントに鈍感になってしまう。味方からの無線報告に集中していると、自分が乗っている指揮通信用装甲車の近傍に敵の野砲弾が落下してもそれに気付かない。丘の向こうの敵情に集中していると、足元の塹壕に敵の戦車が埋めてあったのに気付くのも遅れる。
 通常人を聖徳太子にすることはできないのである。
 むしろこれからは、各級指揮官に、よけいな情報処理のための注意力分散をさせないようなガイダンスが、軍隊には要求されるだろう。
 わが陸自はいたずらな先走りをしないで、まず、スマホで小火器と重火器を「オフセット照準」する、という地道なテクノロジーから究めていっては如何だろうか? 敵が繰り出してくるUAVスウォームを、わが歩兵分隊の小火器の半自動照準ガイダンスによって効率的に掃い落せるようにできるかどうかが、近未来の勝負を分けるだろうとわたしは直感している。この技術ができると、飛んでいる鳥をライフルで落とせるから、レンジャーの食料問題は一挙に解決します。