生物くん。

 NEIL MacFARQUHAR記者による2016-8-26記事「A Powerful Russian Weapon: The Spread of False Stories」。
   ロシアは、スウェーデン政府がNATOと軍事同盟関係に入るのを阻止するために、偽情報のインターネット発信にドライブをかけている。
 いわく。
 ――NATOはスウェーデン国内密かに核兵器を展開して、そこからスウェーデン政府の許可なくロシアに向けて核攻撃を開始する気だ。
 ――NATO兵士がスウェーデン国内で強姦してもスウェーデン政府はその将兵を訴追することができない。外交特権で守られるからだ……などなど。
 これが国内メディアでも語られるようになったので、国防大臣が全国行脚してタウンミーティングの場に臨み、「その話はロシア人によるルーモア工作である」と打ち消して回らねばならなくなっている。
 なにしろプーチンは、NATOに加盟しようとしたジョージア/グルジアの機先を制してジョージアを武力占領してしまったというトンデモ野郎なのだ。おなじことをスウェーデンに仕掛けない保証はない。
 ロシアの通信社はスプートニクである。ロシアのテレビ番組を海外で系列地方局に放送させる輸出キー局はRT(ロシアトゥデイ)社である。この2社がスウェーデン内部に食い込んでいるので偽情報の拡散は容易なのである。
 ディスインフォメーションのことはロシア語で、「デズィンフォルマツィア」という。
 平時の偽情報作戦は、相手国の極左および極右が引用したくなるような内容にこしらえると、効果が抜群である。あとは彼らがインターネットで勝手に拡散してくれるからだ。
 こんな騒ぎもあった。ロシアのテレビ放送が、「13歳のロシア系ドイツ少女が中東系移民によってレイプされた」と報道。それが虚偽であることをドイツ警察が確認すると、ラヴロフ外相は開き直ってさらにドイツの移民受け入れ政策を非難した。
 ロシアの狙いは、西欧の極右を元気付けて「西欧の民主主義などすでに崩壊している」と内外に信じさせることなのだ。
 RTは英国内の系列局(英語放送)に、EU離脱をさんざんけしかけさせていた。このことから、ロシアが英国のEU離脱をいかに欲していたかもよくわかるのである。
 6月にNATO軍はポーランドで演習した。このときもロシア系ウェブサイトが、NATOはポーランドの許可なくポーランド等の東欧諸国内からロシアを核攻撃する気だと大宣伝した。そしてアメリカはドイツを警察官にして東欧を支配する気なのだぞとも警告した。
 チェコなど東欧圏でのロシア発ディスインフォメーションの成績は、対北欧よりも良いようである。
 ※やはりスラヴ系の言語が近くて同じレトリックがよく通ずるからだろう。もちろんすべて現地語なのだが。
 チェコ共和国内には「プロ・ロシア」のインターネット放送局は40くらいもある。いずれも、西欧とアメリカと移民はすべて悪者だと宣伝する。
 ※中共は日本国内で「移民は悪者だ」とは宣伝できない。ここが面白い。
 冷戦期のソ連の偽情報発信は、インドのメディアを利用するものだった。そこで英語によって偽情報を報道させてしまえば、それはすぐに世界が引用可能になるからだ。
 「エイズはCIAが開発した生物兵器だ」というルーモアは、この方式で拡散された。
 ロシアの工作隊は、スウェーデンの国防大臣のサインをそっくり真似して「ボフォース社はウクライナに榴弾砲を売れ」といった勧告の手紙を偽造して写真に取り、それをネットで拡散している。スウェーデンでは大臣がそんなマネをしたら違法にきまっているのだが。
 同大臣は国外で会議に出席すると、いまだにこの手紙に関する質問を受けるという。それほど、捏造名誉毀損工作は、有効なのだ。
 ロシアテレビ界の著名なアンカーであるドミトリー・キセルイェフは言った。今日では敵兵1人を殺すコストはWWII中よりもずっと高い。もし相手を説伏することができるならば、そいつを殺すことはない。プロパガンダこそ、戦争に安く勝つ戦術である。ロシアの番組がプロパガンダだというなら、西側の番組だってすべてプロパガンダじゃないか。「中立報道」の時代はとっくに終わってるんだよ。
 ※日本でもこういうガセネタがあった。いわく。〈スウェーデンの間接税は高率だが、成熟した議会制民主主義があるため、その使途についての代議士たちによる詳細なチェックが働き、有権者の満足度も高い〉、と。だが事実はこうだ。スウェーデンの有権者は冷戦終了とともに軍役の一方的な軽減だけを政府に迫り続け、徴兵制を廃止させ、国内外の安全保障については誰もが無関与をよしとするようになった。結果、複数年度にわたって軍事費の増額が禁じられる法律が可決され、プーチンのロシア軍が復活するやたちまちに、スウェーデンの領土国家主権はロシア軍から舐められ放題に蹂躙されるようになって、NATOとの同盟に救いを求めるしかなくなったのである。
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 Nomaan Merchant記者による2016-8-27記事「Does China still harvest organs of executed?」。
     腎臓移植を希望していた1人のカナダ人の患者が中共に行ったら、たった3日間待たされただけで、適合する腎臓を移植してもらうことができた。
 モントリオールの「移植協会」は、中共では適合腎臓を持つ死刑囚のリストが揃っていて、顧客がやってくるとその適合囚を選び出してただちに処刑して病院に供給しているのではないかと疑うようになった。
 表向きには中共は2015-1に、刑務所を「臓器畑」扱いすることはやめた、と発表している。
 2011年時点で中共内で移植された臓器の65%は、死刑囚のものだった。これは元副厚生大臣であったシナ人医師が認めている。
 中共は、毎年死刑にしている人数を公表していない。アムネスティーインターナショナルでは、1年に1000人弱だろうと推定している。
 シナ文化では死者の臓器を遺族が同意して他人に分け与えるなどとんでもないことだと思われている。だから供給源はボランティアには頼っていられないのだ。
 政府発表によれば2015年にシナ国内で1万57件の臓器移植手術が実施された。しかし同国には闇市場があるので、誰もこの数字は信じていない。
 ちなみに政府の公式数字ではシナ国内で臓器移植を欲する患者は1年に30万人だという。
 シカゴ大学の移植外科医で、シナのあちこちの病院でそのワザを披露しているミルズ医師いわく。たしかに改善の跡があると。というのは、以前には移植病院では毎日コンスタントに一定の移植手術があった。これはドナーが囚人だからできることだ。しかし今では、あるときは1日にオペ2件が集中し、かと思うと移植の無い日が何日も続いたりする……という具合に、スケジュールが予測不能になっている。これはドナーがボランティア化しつつある証拠だろう、と。・
 臓器の闇市場は残っている。しかし、人々が疑っているほど大規模ではなくなったのだ。
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 Sebastien Roblin記者による2016-8-27記事「BrahMos: India’s Supersonic Mega Missile That China Should Fear」。
       ブラモスの原型はロシアのP-800である。それはマッハ2.8だったが、ブラモスのラムジェットは少し速い。
 トマホークとくらべると、重さは2倍。速力は4倍だ。
 ブラモスは命中直前にはS字運動をする。シースキミングだけでなく。
 もし目標までの距離120km以内でリリースされたときには、最初から最後までシースキミングで飛翔する。
 狙われた艦艇が、自己のレーダーでブラモスを探知できるのは、距離30kmである。そこから命中までは30秒しかない。30秒でどんな対処が可能かという話。
 ある試算によると、アーレイバーク級イージス艦は、同時に12発までのブラモスにしか対処はできない。したがって、空母輪形陣全体では、64発のブラモスが同時に集中すれば、防禦手段が飽和されてしまう。
 ブラモスは、ロシアのオニキス・ミサイルと比べてレンジが半分。290kmである。
 この理由は、ロシアがMTCRを遵守したことにある。35ヵ国が合意したMTCRの条項のひとつが、レンジ300km以上の巡航ミサイルを、その技術を持ってない国に対して輸出してはならぬ、というものなのだ。
 だからロシアはレンジを290kmにわざわざ制限し、その代わりに速力を増してやったわけ。
 ちなみにインドも2016-6-28にMTCRに加わった。これはインドがブラモスを輸出する気満々であることを示している。
 中共はMTCRに加入していない。
 ブラモスの弾頭には、660ポンド以内の核弾頭も、理論上、搭載できる。それはあまり現実的ではないにしろ。
 ブラモスは一般的には、軍艦に8個のセルのVLSとして搭載される。
 インド海軍は2013年には潜水艦からもブラモスを発射してみた。
 インドは「スホイ30MKI」戦闘機からこの巨大ミサイルを発射するために数年努力して、成功させた。2016-6のことである。そしてこのタイプを「ブラモスA」と称する。
 40機のスホイ30MKIが、この運用機として改造される。
 陸上型は、12輪トラックから発射する。発射連隊は、この車両を5両もつ。その連隊がすでに4個、シナ国境に配備されている。
 ブラモスの「ブロック3」は、山の反対斜面を、70度の急降下で直撃できる能力がある。ヒマラヤの中共軍は、反対斜面を利用した陣地に籠もっても、無駄である。
 ブラモスはポテンシャルとしてはレンジを500kmに伸ばせるが、インドにその技術力があるかは疑わしい。
 探知されにくいように小型化した「ブラモスNG(ネクストジェネレーション)」も開発中である。総重量3000ポンド以内でまとめるという。
 と同時に、スクラムジェットによりマッハ7で飛ばす「ブラモス2」も開発したいと言っている。
 2014秋に習近平がインドを友好訪問したとき、インド国境のシナ軍はあきらかにそれに不満で、いろいろな策動を示した。中共の文民統制は不完全であることがここでもバレている。
 インドはベトナムにブラモスを売る気である。ブラモスには、マレーシア、インドネシアなども関心を示している。