ロシアの年間宇宙予算は10億ドル。中共は60億ドル。そして米国は400億ドル。

 Elias Grollと Dan De Luce記者による2016-8-26記事「China Is Fueling a Submarine Arms Race in the Asia-Pacific」。
   先週、『オーストラリアン紙』は、仏メーカーのDCNS社の下請け企業に勤務する元フランス海軍将校が東南アジアにおいてデータブリーチされ、『スコルペン』型潜水艦に関する2万ページの技術情報が漏洩したと報じた。この退役将校はそのデータをDCNS社から2011年に貰って保存していたらしい。DCNS社の秘密管理体制が問われている。
 『スコルペン』型潜水艦をライセンス製造しているインド海軍は、性能の秘密を中共に知られることになるので、大打撃。
 『スコルペン』型が潜航に要する時間、その魚雷の射程、水中でのノイズのプロファイルまでが記されていたという。
 チリ、ブラジル、マレーシア海軍もフランスに『スコルペン』を発注しているが、どうなることか。
 SIPRIによると、2014年から2015年にかけ、アジアでは軍事費が5.4%増えた。同じ時期、世界平均では1%の伸びであったのに比して、その緊張の激しさが分かる。
 ベトナムは2009年いらい、ロシアから『キロ』型×6隻を、26億ドルで輸入し、カムラン湾に配した。
 『キロ』型からは射程188浬の対艦ミサイルを発射できる。
 ベトナムはまた、米海軍で余剰となる古いP-3Cも安く調達したいと念じている。
 ※こうした格安転売は、ペンタゴンの外局(?)であるDSCA〔米国海外軍事防衛協力局とでも訳す?〕が国務省といっしょになって仕切っているようだ。DSCAは、政府間の掛け値なし武器売買であるFMS、外国軍が武器を購入できるように資金を融資してやるFMF、そして外国軍に米軍の余剰兵器を譲与または格安販売してやるEDA(Excess Defense Articles)を、その事業の骨幹としている。転売価格だが、その兵器の年季や状態により、新品を取得したときの価額の5%から半値の間で値が決められる。おそらくわが防衛省がフィリピンに「TC90」を「タダ同然リース」したときの価額はこの5%を参考にしたはずだと私は勝手に妄想している。EDAによる供与は販売のこともあれば譲与もある。何が余剰兵器かは、四軍(MILDEPS)の長が判断する。引き取り手は、「エンド・ユーズ制限」条項を受諾しなければならない。貰った装備を第三者に渡さないなどの約束を文書でしなければならないのだ。そして、引き取る際の梱包、荷役、輸送、リファービッシュメント費用は、受け取る国の負担でしなければならない。余剰兵器は、現在の状態で、現在ある場所から、受領国によって引き取られねばならない――という建前だ。
 インドネシアもナツナ諸島をシナから守るために、現在2隻しかない潜水艦を7隻に増強する。昨年、ロシアに『キロ』型×2隻を発注した他、2012には韓国版のドイツ型潜水艦も3隻、発注している。※『キロ』級のときは、ロシア版のFMFが行使されている。韓国潜水艦のときは、韓国式接待が発動されている。
 ※インドネシアの造船業界は急発達している。韓国製潜水艦は最終的にはインドネシア国内で組み立てられる。すでにインドネシアは、韓国型の11500トンのLPDを国内で量産し、それをフィリピン軍に単価1億ドルで2隻、売ったりもしているのだ。やはり最初は韓国から完成品を2隻買って学習し、2009年にその国産化に成功した。インドネシアは、LSTや警備艇なども、次々と武器輸出に成功している。北欧の技術で「水上戦車」まで作っている。間違いなく、小型潜水艦も、いずれ国産化して輸出するであろう。
 インドはこれから30年のうちに24隻の潜水艦を国産するとブチ上げている。
 ※こっちはあまり信用しなくていいだろう。とにかくインドは「国有工場」が政治家の利権になっていて、社内人事が腐敗しすぎていてダメなのだ。純然民間資本の造船所を別に創設しない限り、見込みはない。インドに進出して大成功した「スズキ」が証拠。「タタ」コンツェルンも民間なのでいい調子だ。
 インドが国内で『スコルペン』型を6隻建造するプロジェクトは、遅れに遅れている。1番艦は2012年に就役させるという計画だったのに、やっと2016年に公試運転に漕ぎつけたという段階。
 ※これも国有造船所がどうしようもないのが理由である。
 豪州がこれから建造しようというフランス型潜水艦は、『スコルペン』型ではない。SSNの機関を非核にして、5300トンを3800トンくらいにスケール・ダウンした『ショートフィン・バラクーダ』型である。
 ※非核動力だと潜水艦は4000トン台が合理性の極限で、5000トン台というのは、ありえないそうである。つまり日本の次期潜水艦も4200トンの『そうりゅう』型以上には大きくはなりそうにない。
 アメリカ政府は日本に豪州潜水艦隊強化の面倒を見させることで日本に対支抑止の大幅な肩代わりをさせようともくろんでいたのだが、フランスのロビー活動のおかげでその狙いが見事に吹っ飛んだ形だ。しかし『ショートフィン・バラクーダ』には米国製の戦闘管制システムが搭載される。
 ※ペンタゴンの中の人たちは、豪州のASC社が豪州労働党の利権ベースであったことに無知であった。そして豪州はとんでもなく労組が強い国で、トヨタすら撤退に追い込まれていることにも無知であった。豪州自由党は、がんらい、反労組の党である。彼らは陣笠代議士時代から、選挙区で労組票(労働党候補)を相手に死闘を続けてきている。ASCは軍艦の工期をダラダラひきのばすことで国庫から造船労連に無限にカネが流れ込むスキームに貢献する。自由党のジョンストン国防相(上院議員になる前は金鉱会社の企業弁護士だった)は、このようなASCには一銭も儲けさせぬという決意を固めていたのだが、それは全国有権者の支持は得られなかった。フランス資本のタレス社はシドニー軍港の半ばをすでに制圧しているくらいで、フランス工作隊が造船労組経由で豪州労働党に『そうりゅう』随契への異議を唱えさせることなどわけもなかった。フランスが特に巧みだったのではなくて、米国が豪州の「下部条件」について無知すぎたのである。三菱は、F-35参加のために武器輸出解禁の閣議決定までさせた負い目と経団連筆頭である責任から、この降って湧いた案件を峻拒できなかった。そして改型でのAIP外しの指向は、豪州自由党が野党時代から、「コリンズ型=コックムス社=造船労組」を批難してきたいきさつと関係があると思う。だって川重がもっているスウェーデンのエンジンライセンスを無駄にするという話だからね。
 げんざいDCNS社は、ノルウェー海軍およびポーランド海軍からの潜水艦受注をめぐって、他社とコンペティションを戦っている最中である。