プーチンの今の関心事は、自身の権力の保持以外、何も無し。

 Richard Berman記者による2016-10-4記事「China’s rising threat to Hollywood」。
  ハリウッドはチャリウッドになるのか。
 中共が米国映画産業の直接買収に乗り出している。現地舎弟企業は「ダリアン・ワンダ」社という。最初のターゲットは、ディック・クラーク・プロダクション(『ニューイヤーズロッキングイヴ』という作品があるという)だ。
 このDW社は2012年に、全米第二の映画館チェーンであるAMCエンターテイメント社を26億ドルで買収している。
 ついでDW社は、あのダークナイト三部作の製作会社を、2016-1に、35億ドルで買収した。つまり米映画業界の川上から川下までをセットで子会社化することになった。
 さらに、DW傘下となったAMCは今、12億ドルで「カーマイク・シネマズ」も買収しようともしている。これが成功すれば、米国で最大となる8380スクリーン(映画館建物としては六百数十箇所)の映画配給チェーンが、本年末までに中共の半支配下に置かれる。
 独立機関のフリーダムハウスによれば、中共の国内でのインターネット統制と検閲によるパブリックオピニンの不自由度は、イランやサウジアラビアをも優に凌ぐという。その北京発のパブリックオピニオン操縦文化が、ハリウッドに持ち込まれるだろう。
 なんと中共で本年に上映された外国製映画は、34作品しかない。
 中共で輸入映画の検閲をしている部局(SAPPRFT)は、報道、出版、ラジオ、映画、テレビを一手に取り締まっている。ここがハンコをつかない限りは、どんなハリウッド・コンテンツも中共本土内には売り込めない。
 2006年にSAPPRFTは、『ミッションインポッシブル3』から1シーンを削除させた。それは上海市で洗濯紐に下着が干されている風景だった。SAPPRFFTによると、あたかも中共が開発途上国のように見えるからそのシーンは許可できない、ということであった。
 2015年のアクションコメディ映画『ピクセルズ』の場合は「自己検閲」が発動された。万里の長城にエイリアンが穴をブチ開けるシーンが当初は含まれていたのであるが、ファイナルカットでは除去された。中共国内で上映していただくためには、そんなシーンは不都合だ、とプロデューサーたちは判断したのである。
 『レッド・ドーン』(若き勇者たち)の2012リメイク版のリテイク騒ぎについてはすでに有名だろう。もともと中共軍が米本土まで攻めてくるという内容にしていたのを、急遽、北鮮兵の制服に変えてぜんぶ撮り直したのだ。まったく中共からクレームが付けられる前の自主規制の発動であった。
 DW社の創業者にして会長の王ジャンリンは、20年ちかくも中共軍の政治将校(目付)をやっていた人物である。その野望が、米国におけるポップコーンとコーラの売り上げ増であるとは誰も思わない。
 DW社は中共政府から11億ドル以上もの補助金を受け取っている。
 王はその会社の株を親類および中共政界と財界の有力者たちに分け与えて地位の安全を図っている。
 王はまた、中共製の映画を、AMC系列のアメリカの映画館でもっと上映させたいとの希望も公言している。
 米連邦議会にはCFIUS(合衆国における外国企業投資委員会)がある。 敵性外国資本が米国企業を買収することによって米国の安全がおびやかされないかどうか、ここが、広く監視の目を光らせている。
 たとえば米軍基地のすぐ近くに立つ風力発電所をシナ人が買収しようとすれば、この委員会が止めさせている。
 CFIUSが条規を修正拡張して「ソフトパワー」買収をも規制できるようにすることはできるだろう。米国内のパブリックオピニオン形成に不可分の影響力を有するアセット(映画配給チェーン等)の、敵性外人による乗っ取りを阻止するのだ。
 CFIUSに活動権限を与えている根拠法のひとつは、1988の「エクソン-フロリオ」修正法である。米議会はこの修正法をさらに改正することで、映画産業を経由した中共による間接侵略工作を阻止すべきだ。
 「外国エージェント登録法」(FAR法)も、見直しの時だろう。同法は、外国政府が米国内でロビー活動や、公衆相手のプロパガンダを展開しようとしているときに、それが透明になるようにさせようとしたものである。
 たとえばDW社の買収リストなどはすべて公表されるべきだろう。さすればDW系の映画館に行く人は、そこが政治的に「色付き」の空間であることを、事前に承知できるからだ。
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 ストラテジーペイジの2016-10-5記事。
  トルコの先の反乱さわぎで、直接反乱に加わったF-16パイロットは数人だったけれども、最終的に274名もの戦闘機パイロットが免職されるか自主退職を選んで、トルコの空軍基地から消えた。
 これにより、トルコ空軍のF-16の機数に対するパイロット人数の比率が、反乱前の1.25から、0.8に落ち込んでしまっている。
 トルコ空軍には240機ものF-16があり、これは有数である。
 しかも2016年までは、パイロット1人が年間に150時間の飛行訓練をしていた。NATOの最右翼としてまず遜色はなかったのである。
 今日の西側空軍は、パイロットの数が、機体の数よりもやや多くなければ、最高の効率は発揮できない。というのは、故障の少ない優良機体は疲れ知らずに1日に何ソーティでも飛んでくれるが、パイロットの方は体力に限りがあって疲労困憊してしまうからである。それで、理想的には1機を1.5人のパイロットで休み無く運用できるようにしたいわけだ。
 ちなみに米空母には、F-18の機体の数の1.4倍の人数のパイロットが乗り組む。どんなに少なくとも1.25よりこの比率を悪くしてはいけないと考えられている。米空母の1日の総ソーティ数は平均120ソーティだ。
 戦時には、1日に1機で何ソーティできるかが、空軍力のパフォーマンスを段違いに変えてくれる。機体の数ではなく、交替用パイロットの確保そこが問題となるのだ。
 戦時の最も激甚且つ繁忙な1日における「機体数」対「パイロット数」の比を「サージ・レート」という。
 これがロシアや中共の空軍だと、機体とエンジンに耐久信頼性がないので、パイロットよりもむしろ機体の数を平時から多くしておかないと、ここぞという1日の限界的最多ソーティ(サージ)は実行ができない。
 機付きの地上整備班は、1機を24時間運用するためには、2組が必要である(12時間交替シフト)。
 彼らは、帰投着陸した戦闘機を、たった15分で再整備する。交替パイロットが乗り込み、すぐにまた離陸する。これが「サージ」の日のあいだじゅう、繰り返される。
 1個のF-16スコードロンは12機+予備機からなる。そこには120名の地上整備部隊が所属する。整備班長は「クルー・チーフ」と呼ばれる下士官で、120人の中にはそれが37名いる。
 ある米空軍のF-16スコードロンは、機体が20、パイロットが40。それが12時間のうちに160ソーティを実行できた。これは平時の実験だったが、西側空軍の理論的な目標値として、参考にできるだろう。
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 出版社を公募します。
  『兵頭二十八の防衛白書』は毎年7月もしくは8月刊行の年鑑ですが、年に1冊のペースだと、わたしのもっている軍事ニュース解説ネタのことごとくを反映できません。無理に1冊にたくさん詰め込むと、とても読みにくくなる、という反省もあります。
 そこで、「裏作」をやりたい。
 毎年1月もしくは2月に、日本の普通の新聞ではまず報道されないようなトピックスとバラエティをちりばめた、お気楽に読み流すことのできる《軍事解説本》を、世に問うようにしたいのです。
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