4日連続の民間防衛訓練でロシア人の気分はもう欧州核戦争。

 ストラテジーペイジの2016-10-12記事。
   9月14日、インドネシア海軍が、同国製の『チュリト』型ミサイル艇から、中共製の「C-705」対艦ミサイルを廃船に向けて2発発射したところ、2発とも外れてしまった。インドネシア大統領と海軍軍令部長の御前で。
 C-705は、重さ325kg、弾頭重量120kg、レンジは140kmとされる。エグゾセのコピーなのだが、インドネシア軍は、エグゾセの半分の値段に魅力を感じ、過去に実戦で命中したことが一度もないシナ製C-705を選んだのが運の尽きだった。
 西側製のミサイルは一般に高い。それには理由がある。特に、ユーザーに対する使用法の訓練をつけてやるサービスがたいていパッケージされている。それもあっての信頼性でありコストなのだ。
 インドはロシアから買った「キロ」型潜水艦に搭載する3M54(Kulb)対艦ミサイルを、何年もかけて、各艦について1発づつ試射させて、命中することを確認してから、本式調達を決定している。
 1隻のインド海軍のキロ型潜水艦は、わざわざロシアに8000万ドル支払って2年がかりでアップグレード工事をさせたものであったが、2007年にKlubミサイルを6発試射したところが、全部外れた。
 そのためインドは、8000万ドルの支払いを拒否した。
 しょうがないのでロシアは無代で改修してやった。その結果、Klubは命中するようになった。
 Klubミサイルはキロ型の価値の生命だといっていい。それが当たらないならキロを買う意味もないのである。ミサイルは、全重2トン、弾頭重量200kg、レンジは300km以上。命中直前に時速3000kmに加速する。
 対地攻撃型は、この加速をしないかわりに弾頭重量が倍ある。
 ※レンジを300km以上に伸ばすとMTCRに抵触してしまうので、おいそれと輸出できない。そこでかわりに弾頭を重くしてやるわけである。しかし原発建屋を破壊する用途ならば、炸薬量よりも、むしろ超音速で突っ込ませることを優先した方がいいだろう。加圧水型炉の燃料棒貯蔵プールは半地下に位置し、壁のコンクリートは下の方ほど厚いものなので。
 インターネット時代には、兵器の不成績の情報は光速で第三世界の潜在バイヤーにまで届く。兵器のメーカーと売り手は、ユーザーからの苦情を決して放置できないという時代になっているのである。
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 Joseph V. Micallef記者による2016-10-11記事「Forgotten Lessons: The Return of Mustard Gas」。
   WWI中の塩素ガスからのかんたんな自衛法としては、小便を軍服にひっかけて頭から被る方法があった。アンモニアで塩素が中和されたという。
 塩素ガスは風によって希釈されやすい。
 そこでドイツは、硫黄系の新ガスを開発し、1917-7の第三次イープル戦で使用した。
 このガスは黄色で、しかも芥子か大蒜のような匂いがした。そこでマスタードガスと呼ばれた。
 塩素ガスよりも重いので、風で飛散しにくい。同じ地面に長く滞留して、敵兵の前進を困難にしてくれるのだ。
 WWI中の毒ガス戦死者は、トータルで100万人以上。
 その後、1939にポーランド軍は、マスタードガス入りの手榴弾を使ったという。
 ヒトラーはレニングラード攻囲にマスタードガスを使おうかと検討した。
 エジプト軍は、1963から1967にかけての北イエメンの内戦に、マスタードガスで介入している。
 1984から85にかけ、タイ国境近くに潜伏するポルポト残党軍に対してベトナム軍はホスゲン・ガスを使ったと、カンボジア側から非難された。
 チェチェンやイラクのスンニ派ゲリラは、塩素ガス満載のタンクローリーをIEDとして使ったという。
 シリア政府は2013-9時点で、合計1000トンの、サリンガス、マスタードガス、VXガスを保有していた。
 ペンタゴンは、ISが2015からマスタードガスの貯蔵を始めたと見ている。
 クルド人ゲリラが、ISの発射する砲弾/迫撃砲弾にマスタードガスが混ざっていると主張。破片検査から、それは裏付けられた。
 2016-9-12に米空軍はモスルの薬品工場を爆破した。迫るモスル決戦でISは大量のマスタードガスを使うつもりである。その原材料がせっせと生産されていた。
 モスル大学内の研究施設でも、各種毒ガスが試製されているという。
 すでに米軍は、イラク政府軍やクルド民兵のために防毒装備を5万セット提供した。シーア派民兵は無防備だが、イラン政府がなんとかするであろう。
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 ストラテジーペイジの2016-10-12記事。
  9月なかばに米軍機が爆破したISの薬品工場。
 その工場ではガスの原料しか製造していなかったので、空襲されてしまった。
 じつは2009以降の米軍のROEでは、毒ガス工場や毒ガス貯蔵場は、爆撃対象から外される。ISはこれを知っているはずなのである。
 1991の湾岸戦争では、まず高性能炸薬で地中爆発させたあと、焼夷弾を集中して、あたりの毒ガス成分を無毒化しようというメソッドだった。
 その後、米空軍は、「HTI-J-1000」という、毒ガス工場破壊専用の地下侵徹爆弾を完成した。高性能炸薬と焼夷剤がミックスされている他、生物兵器を無力化するための塩素や酸化物も発生するようになっている。
 他に、チタニウムのロッドを4000本も放射することで一円の貯蔵タンクを穴だらけにしてやるという、スペシャルな誘導爆弾も、米空軍は持っている。
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 Hope Hodge Seck記者による2016-10-11記事「Marines Could Ditch Ammo Cans in Push to Get Lighter」。
   米海兵隊員は、総重量30ポンドある弾薬箱1個を、頭と肩よりも高く、2分間に何回持ち上げられるかというテストに、毎年、合格し続けなければならない。
 現行の弾薬箱は、中身が空っぽのときの重量が3ポンドから7ポンドある。それは、中身として詰め込まれる全弾薬の重量の四分の一くらいである。
 このたび米海兵隊は、この弾薬箱を新素材で軽量化することを考え始めた。
 また、システムコマンドの弾薬担当者は、そろそろ薬莢の真鍮も、新素材化するべきだと考えている。箱以上に、これがいちばん重たいのだから。
 海兵隊が今使っている小火器弾薬は、9ミリ、5.56ミリ、7.62ミリ、0.50インチ、そして狙撃銃用の0.300インチのウィンチェスターマグナム実包である。※平均的なアメリカ人は、7.62ミリとは0.30インチのことであるという知識をもっておらず、762という数字を見ると、それが0.762インチのことだと錯覚するらしい。「ミリタリーコム」の編集者が、間違えている。蛇足説明をしておくと、0.3インチ径の弾薬は複数あるので、「300」と書いたり「7.62」と書いたりしてできるだけ混同事故を防ごうとするわけである。