「読書余論」 2016年12月25日配信号 の 内容予告

▼陸軍戸山學校将校集会所pub.『銃劔術指導必携』S17-7
 竹槍の作り方は緒戦からもうマニュアル化されていた。
▼警視庁長官官房総務課『10年のあゆみ』S40
 「押し売り」は昭和30年からあらわれた。
 第一次ガンブームはS34から。ただしこれはホンモノの銃。
 S30まで、空気銃は日本では無規制だった。飛出ナイフも同様。
 本書の時点で国内にはハンドガンは枯渇した。それゆえ、S39から拳銃密輸が急増する。
▼警察研究会ed.『警察百科常識事典 一九五六年版』S30-12pub.
 警察昇進試験対策用の出版物らしい。
▼西ヶ谷徹『戦時独逸の警察』S19-1
 著者はS16からS17に独留学してきた
 ゲシュタポと親衛隊の関係について、分かる限り、書いてある。
 ゲシュタポは、政治警察を担当する国家機関であり、なんら「秘密」の警察ではない。
 しかし政治警察は内密捜査があたりまえだから、一般人は「秘密警察」と呼ぶのである。つまり日本の特高と同じだ。
 しかし日本の特高は、自由権の侵害はできない。ゲシュタポは、それができる。
 つまり日本では司法的に思想を統制するだけで済んでいるが、ドイツは行政的に一思想を押し付けるのでなくば分裂してしまうわけである(p.54)。
▼国家地方警察本部総務部企画課ed.『国家地方警察統計書』第一回(S23)~第四回
▼高橋雄豺『新しい刑事警察』S24-7
 これからはアメリカ流に、写真や指紋やコンピュータを使うのだぞという話。※戦前は科学的な鑑識がいかに重視されていなかったか。
▼渡部英喜『漢詩百人一首』1995-4 新潮選書
▼団藤重光『死刑廃止論』1991-11
 巻末に、M6から1991までの日本の死刑執行人数表あり。S35には39人も吊るしていた。
▼森永種夫『流人と非人』1993-7
 長崎の流刑地は五島。
 元禄13年に鍋島家の家来が長崎奉行代官の下人に報復の討ち入りをした大事件。これが赤穂浪士に影響を与えたはずだという。
▼樋口秀雄『新装 江戸の犯科帳』1995-4
 江戸時代の裁判では、とにかくその者の身分が相当におもんじられた。
 旅人、旅籠屋、飯もり女や人足を管轄したのは、道中奉行。
 代官というのは1人で5万石くらいを支配する。全国で450人くらいいた。勘定奉行がボス。役所を陣屋といった。
 10万石ぐらい支配するのは「郡代」。
 悪事をしたせがれを、親が手にかけた場合は、無罪。しかし、親が人に頼んで殺させたときは、頼まれた者は有罪。
 慶安の変については一等史料はほとんどなし。だから実録本をよりどころに話をこしらえるしかない。
▼石井良助『人殺・密通その他』S46-8
▼渡辺一夫『イタヤカエデはなぜ自ら幹を枯らすのか――樹木の個性と生き残り戦略』2009-10
 競合生物との戦いが熾烈で多角的な環境では、常にハイペースで遺伝子を発達させねばならないので、有性生殖樹が増える。
 他生物は大したことがないが、乾燥、寒冷、貧栄養、撹乱の常襲地では、無性生殖が多くなる。
 今から2万年前、気温は7度低かった。森林限界も1000m低かった。
 大井川から南アルプスの稜線まで、製紙会社の私有林。1社所有としては日本最大。
 欧州森林に多様性が乏しいのは、氷河期の絶滅のため。
 日本列島には氷河期でもいろいろ「逃げ場」があった。
 今から7000年前の縄文時代、気温は3度弱、高かった。
 そのため九州では、亜高山針葉樹は絶滅した。
▼松山&山本・共著『木の実の文化誌』1992-9
 商・周の時代、黄河地方の気温が高く、梅が栽培されていた。
 しかし気候は寒冷化し、唐宋以降、北支では絶滅。淮河より南。
 淮河より北では杏が分布する。
 フィンランドにはセイヨウナナカマドが生える。6月に開花し、晩夏から実をつける。これは、マーマレードやジャムにすれば人間も食べられる。
 ※日本のナナカマドの実は、人間はどうにも食べられない。改良すべきではないか?
▼渡部英喜『漢詩歳時記』1992-6
 楚辞には梅は出てこない。万葉集には菊は出てこない。
 漢代に寒食節という風習あり。旧暦の2月ま末頃。いちにちじゅう、火を使わない。よって冷たいものしか食べられない。
 日本の「お節料理」のルーツはここにあるともいう。
▼中央史壇特別号『国史上疑問の人物』?年pub.
 慶安事件はなにもかもが曖昧。油井正雪の名からして、確かなことがわからない。油井とも由比とも書く。正雪も初めは松雪と書いたのを、憚るところあって正雪に改めたという。
 坪内逍遥いわく。酒呑童子の話や百合若物語は、ギリシャ古典のオデュッセウスのストーリーがポルトガル人の口から日本に定着したものだ。
 金太郎の話はバッカス伝説が元なのではないかと坪内は強く疑う。
▼川田稔『原敬と山県有朋』1998-10
 原敬だけが、日本の生存にとって対米関係がいちばん大事だと考えていた。
 大正5年の大隈内閣のシナ内乱干渉方針に対し、原だけは、それは内政干渉だという反対論。そんな策動をしたら排日気運を全支に蔓延させるだけであるのがわからないのかと。
 寺内内閣は兵器借款もあわせて1億7700万円を無担保で段祺瑞に貸し、ぜんぶ不良債権になった。回収できず。
▼村上哲見『漢詩と日本人』1994-12
 『本朝高僧伝』には鎌倉~南北朝の僧侶469人を載せているが、宋または元に遊学した人が93人含まれている。名の通った僧侶の5人の1人はシナ帰りだったのだ。遊学ではなく、宋・元から渡来して帰化した僧侶は18人いた。
▼『ビッグマンスペシャル 連合艦隊 日米開戦編』1998 世界文化社pub.  60~61ページに、未来戦記の一覧年表あり、有益。
 大14に、H・C・バイウォーターの『日米関係未来記・太平洋戦争』。これが、最も正確に日米戦争の経緯を予言した。
 外れた予言。劈頭まずフィリピンにつながる海底ケーブルが切断され、また爆薬満載の日本商船によりパナマ運河は粉砕されること。
 1934に石油業法が成立する。各石油会社は、前年1年間の原油、重油、揮発油の総輸入量の半分、つまり半年分を、常時貯油しなければならないとした。
▼冨澤繁信『「南京事件」発展史』H19-1
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 「読書余論」は、主に軍事系の古本を、兵頭が注目した一斑の摘記や読書メモによって紹介し、他では読めないコメントも附しているものです。
 あまりに多すぎる過去の情報量の中から「兵頭はここは珍しいと思いました」というポイントだけ要約しました。
 大きな図書館に毎日通えない人も、最低費用で、過去の軍事知識のマニアックな勘所に触れることが可能です。
 また、ミリタリーしか読んで来なかった人には、他分野の情報が、何ほどか有益かもしれません。
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