久慈の地下原油タンク群は東日本震災でも無傷だった。なぜこの方式をもっと普及させないのか?

 ストラテジーペイジの2016-12-6記事。
  土嚢のことは英語でサンドバッグという。
 サンドバッグが急に進化したのは1980年代だった。
 特に中東で活躍したのがHESCOバリアである。
 折り畳まれたワイヤーメッシュの容器。丈夫なプラスチックで裏打ちされている。
 それを展張して、重機のバケットローダーで土砂を投入してやる。
 大型トラック爆弾からも歩哨を守ってやるのに十分な障壁がたちどころにできあがる。
 折り畳まれている出荷初期状態では、兵隊たちが人力で持ち上げて移動させることが可能。
 しかしひとたび土砂やガレキを詰め込めば、もはやコンクリートブロックに等しい防護効果を発揮してくれるのだ。
 HESCOはもともと1980年代に、同名の英国企業が、護岸や洪水制御の資材として発明した。水害時に短時間で胸壁を構築できるようにと。
 だがあまりに便利だったので2001年にはもう防弾・防爆用途で米軍その他から愛用されるようになった。
 従来のサンドバッグに円匙で土砂を詰める作業は、兵隊1人がいくらがんばっても1時間にせいぜい20個というところで、そんな調子では急な増水に対処できたものではない。
 そこでバケットローダーで一挙に巨大な土嚢壁が構成できるように、HESCO社が創案したのだ。
 人気が出たので軍用の商品バリエーションも増えた。いずれも、充填状態で何段も積み上げることが可能。急設用「塹壕キット」もある。
 壁厚が60センチの土嚢ならば、ライフル弾や榴弾破片を阻止できる。
 RPGを防ぎとめるには、厚みが1.5メーターになるように積む。
 たいていの自動車爆弾に備えるには、厚みが1.2m以上あればよい。
 このHESCOのラインナップに触発されたイスラエル企業が2010年に開発した製品は、ホイールローダーもフォークリフトもないところで、兵隊の人力だけでサンドバッグ壁を急設できるようにした。
 出荷状態では折り畳まれている。展張してスコップで土砂を入れると、1m×1m×1mの立方体土嚢になる。1個の重さは22kgくらいになる。だいたい1時間で胸壁ができる。
 専用パネルを使えば、この土嚢箱で「屋根」を構成することもできる。すなわち天蓋付きの3D土嚢陣地ができあがるのだ。
 1個のサイズが小さいので、陣地を撤収するときには、中身の砂を捨ててまた折り畳んで車両に積めばよいだけだ。
 民間用の鉄製の貨物コンテナ。これの周りをHESCO土嚢で覆うと、ミニ司令部要塞ができる。
 その便利さが各国軍に知れ渡ると、2005年までに、最初から軍用に設計された、寸法だけはシッピング・コンテナとまったく同じ、「アーマー・コンテナ」が製作されるようになった。
 ただの鉄板ではなく、防弾スチールのボックスなので、HESCOによる防護補強工事の手間は省ける。最初からエアコン等も備わり、そのまま野戦手術室にもなる。
 移動はトラックで簡単にできる。場合によっては輸送用大型ヘリコプターで吊るして移動することもできるのだ。