それは本当に潤滑油だったのか?

 Fred Barbash 記者による2016-12-12記事「How the Navy secretary’s baseless claim helped lead to the WWII internment of Japanese Americans」。
 近々、C.D.オサリバンというサンフランシスコ大学の歴史家がノックスの評伝を出す。それによると……。
 フランス・ノックスは、若いときテディ・ローズヴェルト率いる「ラフライダーズ」の一員として米西戦争に参加し、『シカゴデイリーニューズ』を発行するようになり、1936大統領選挙では共和党のアルフ・ランドンの副大統領候補として選挙を戦ってFDRチームに負けている。
 ノックスは1933年3月時点ですでに、非常時にはハワイの日系人は隔離しなければならないと信じていた。※満州事変で日米関係はいきなり大緊張した。
 それが挙国一致内閣でFDR政権の海軍長官になっていた。
 ノックスは海軍長官に就任するとすぐに、陸軍省や司法省と、在米日本人と日系米人を強制収容する施設をつくることについての相談を始めていた。
 彼は1941年12月4日に政府高官を招いての私的な夕食会で、わが海軍が昼寝中を日本軍から襲われるなんてことはない、と演説していた。
 1941-12-5の緊急閣議の席上で、ノックスはFDRに対し、日本艦隊はオアフ島の近くにはいない、と請け負っていた。
 日本の船団がマレー半島に接近していることは主要閣僚なら皆知っていた。
 しかし11月26日に空母機動艦隊が単冠湾を出撃したことは分かっていなかった。
 真珠湾空襲直後、議会メンバーはノックス海軍長官の引責辞任を求める空気になった。FDRも、ノックスを解任するつもりであった。
 海軍がドジを踏んだのはあきらかだったからだ。何の準備もできていなかったのに、準備ができているとノックスは吹聴していた。
 12月8日にノックスはすぐにハワイへ飛んだ。そして責任者は誰なのかを探そうとした。
 ノックスが現場を視察したとき、湾内の海面には半インチ厚の重油が漂っている状態だったという。そして身元判別不能な状態の死体が海岸に並べられていた。
 しかしノックスは、この空襲の真相も、アメリカ人の誰がしくじったのかも、解明できずに、12月15日にDCに帰着した。
 そして記者会見場に臨んで、ハワイに暮らしている日系米人たちは日本の第五列である、と、何の証拠も挙げずに非難した。
 「第五列」という用語は、ナチのノルウェー侵攻のときから、米国内ではよく使われていた。
 しかしFBIと陸軍情報部は、奇襲の前もさなかもその後も、ハワイの日系人によるサボタージュ活動はなかったと把握していた。
 しかし公的には誰もノックス発言に異議を唱えなかった。新聞はノックスの言葉を派手な見出しにした。UPIもノックスの表現をそのまま使って、「日本人スパイが日本機にハワイの致命的な場所はどこかを教えた」と報じている。
 ノックスは、大衆が聞きたかった話をしてやったのである。
 こうしてノックスは馘をまぬがれ、代りに、米西海岸の日系米国籍市民12万人(うち7割が市民権あり)の強制隔離収容が実行される。
 ところでハワイの日系人は、じつは強制収容されていない。多すぎて施設など造れなかったし、彼らの労力なしではハワイは機能しなかったからだ。
 強制収容されたのは、西海岸州の日系人だった。
 1982年のレーガン政権下でこの問題の調査を託された委員会は、これら12万人がスパイであった証拠はなかったと最終的に結論を出している。
 ノックスは1944年に、何の説明責任も果たさずに、70歳で死んだ。
 次。
 Lara Seligman 記者による2016-12-11記事「Trump Slams ‘Out Of Control’ F-35」。
  トランプの12-12のツイート。F-35計画とコストは制御不能になっている。数十億ドルの予算は、わたしが大統領に就任したあとは、他の軍事支出に使えるだろう。
 トランプは12-11のFOXテレビのインタビューでも同様のF-35批判をしている。そこでは、数千億ドルが際限なくつぎこまれていると言っている。※フォックスは選挙期間中、唯一、ヒラリーに不当に加担しなかった局。
 ペンタゴンの最近の試算。F-35部隊を60年間運用すると、そのトータルコストは1兆ドルを越える。
 トランプはFOXに対して語った。元将校で、ある特定の兵器開発を担当していた者が、退職後2年か3年したらそのメーカー企業に就職しているなんて、許されない、と。そのような「回転ドア」は、一生、禁じられねばならん、と。
 トランプはこの主張を、先週、バトンルージュで最初にしている。
 その発言のタイミングは、昨年まで空軍参謀長だったマーク・ウェルシュ大将がノースロップグラマンの重役に天下るという企業からの発表の数日後である。
 ウェルシュは次期ステルス爆撃機の開発メーカー選定(ノースロに決まり)には直接かかわっていなかったと主張しているが、そのまま大口契約獲得企業の重役の座をあてがわれるなんて、ゆるされていいわけあるか。