「読書余論」 2017年1月25日配信号 の 内容予告

▼東京日日新聞社会部ed.『戊辰物語』岩波文庫1983、原1928
 目明し御用聞きは、誰がなるのか。たいていは、料理屋の主人か、博徒の親分であった。彼らを、二足の草鞋という。お上からは手当は出ない。だから悪い奴ばかり。
 江戸市内は春いらいの雨で屋根が濡れていたおかげで、上野山から発射された「焼け玉」は火事を起こさなかった。三百匁の野砲。
 渋谷翁いわく。伊庭は箱根でも奮戦した。その噂が武士たちの評判だった。伊庭は百人を一太刀づつでやった、という話だった。よく刀が続いたものだと思った。敵の持っているのを奪っては使ったものだろうという噂であった(p.84)。
 ※「百人斬り」の馬鹿話のおこりは幕末なのだろう。
 「脱柵」という言葉は明治初年の御親兵からすでにあった。
 薩摩の井上良馨[よしか]海軍大将の回顧談。貴重。
 上原元帥の回顧。さらに貴重。
▼吉田 司『宮澤賢治殺人事件』1997-3
 戦後文部省により半聖人あつかいされている賢治はじつはただのろくでなしだったと初めて立証。
 山口昌男によると、田中智学の書いたものには農村への言及がほとんどない。農村の具体的イメージがなかったのだろう、と。
 ラスキン+地人=羅須地人なのである(p.200)。
▼田久保忠衛『激流世界を生きて』2007-10
 蒋介石は沖縄の財界人に署名入りの書簡を送り、沖縄の独立をそそのかした(p.92)。
 1968年に沖縄じゅうが湧いたニュースがあった。国連アジア極東経済委員会ECAFEの後援で、日本、韓国、台湾の海洋問題専門家が東シナ海の海底調査を実施し、かなりの石油・天然ガス資源が尖閣諸島周辺に埋蔵されているらしいと大々的に、新聞とテレビで報じられた(p.124)。
 SS-20は、射程5000km未満だが、CEPは400mだと言われた。
 1983時点で欧州向けに240基、極東向けには100基を配していた。ドイツには発射後5分で到達する。
 米支国交正常化の当時、ニクソンのシナリオはキッシンジャーが書いていたとよく言われるのだが、違う。キッシンジャーは対ソを任されていたのだ。対支政策は、ニクソン自身が終始、主導権を握っていた。対支に関しては、キッシンジャーはただのメッセンジャー・ボーイにすぎない(p.222)。
▼グレイ&メール共著、松田tr.『防雪技術ハンドブック』1990-2
 合成ゴムよりも天然ゴムの方が低温下での滑り抵抗は大きい。
 人がなだれにまきこまれない用心としては、斜面のできるだけ高いところをトラバースする。これしかない。しかも、横断は必ず、いちどに1人ずつとする。
 ポールもスキーも、体に縛着しない。なだれに巻き込まれたらすぐに身体からすべて離してしまえるようにしておく。
▼東中野修道『南京「事件」研究の最前線』H19-1
 西住小次郎大尉の軍事郵便。
 擲弾筒手は、中隊長の近くにいて、隊長の命令通り、榴弾(専用弾)を敵軍に打ち込む。
 8月15日の玉音放送より1時間早く、蒋介石が重慶から「抗戦勝利にあたり全国軍民および全世界の人々に告げる」という演説を放送したという。
 舩木が情報課からその放送の要旨を聞いたのは、15日の午後。演説の内容を知ったのは、17日になってからである。
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 「読書余論」は、主に軍事系の古本を、兵頭が注目した一斑の摘記や読書メモによって紹介し、他では読めないコメントも附しているものです。
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