貧者の巡航ミサイル。それがドローン。

 Rachel Zissimos & Katie Tubb 記者による2017-1-5記事「The New Administration’s Policy Should Reflect that Biofuels Cannot Meet Military Needs」。
  現役当時のマティスはオバマがくだらない燃料を海兵隊に押し付けてくるのに大反対だった。
 イラクでの治安作戦中、バイオ燃料のおしつけ統制のために作戦の進捗が阻害された。ただちに現地のマティス将軍は、燃料規制を撤廃しろとペンタゴン上層に要求したものだ。
 何がグリーン・エナジーだ。
 オバマは2011年に、海軍省、エネルギー省、農務省を指名し、3省が民間企業と共同して、レギュラー燃料に添加・混和する第二燃料としてのバイオフュールを作り出し、全米の民間輸送部門と国防総省の輸送部門に使用させろと命じた。
 これが「グリーン・エナジー・アジェンダ」であった。役人はこのアジェンダを尊重するコンプライアンスを負う。
 国防総省職員や軍人も国家公務員であるから、米四軍はそれからたいへんな時間・予算・人を突っ込んでバイオ燃料利用を増やす工夫に努めてきた。
 メイバス海軍長官が、オバマのティーチャーズ・ペットとなって奮闘した。オバマ政権2任期、ずーっと長官。これほど大統領から気に入られた海軍長官はWWIいらい初めてだが、おかげで海軍は大迷惑を蒙った。指定された艦隊は、各艦の燃料タンクにナタネ油を半分注入しろと言われた。F-18戦闘機にまで注入させられた。とうぜん、海軍の燃料コストは逆にハネ上がった。
 メイバスは「グレート・グリーン・フリート」だと胸を張っていた。
 海兵隊は省をもっておらず、海軍省の支配下にある。つまりマティスの大ボスも、この尻舐めメイバスだった。
 ※『グリーン・ミリテクが日本を生き返らせる!』を上梓したのが2010年4月ですよ。なつかしい。この時点で完全にオバマ新政権の最大のプッシュ政策になっていた。  たしかに、化石燃料の入手にまったく不安がない米軍には何のメリットもなかった政策だった。しかし自国領内で石油/ガスを安価に生産できない他のすべての国家にとっては、軍用の代替燃料の研究は、意義がある。オバマ政権時代でも、もし中共の石油消費量が順調に膨張し続けた暁には、コストもペイする可能性すらあったのである。米国はこの研究から手を引く。ならば、今こそ、日本がこの研究を引き継がねばならない。西欧はすでにディーゼル後まで考えているが、軍用車の電気化には無理がある。日本政府はまずディーゼル優遇税制をもっと強化して、日本の精油プラントで余ってしまう軽油を再度国外へ搬出して売り先を探しているという犯罪的な無駄構造を解消するのが急務だろう。
 石油は、どの国の生産分であれ、それは国際マーケットに提供される。したがって、どこでも、どこから買うことができるコモディティ商品である。
 かつて、国防エネルギー兵站部長だった退役空軍准将氏いわく。この世界にある石油の全体量は、軍隊にとって問題ではない。燃料兵站の問題とは、それを必要とする部隊に間に合うように燃料を輸送してやれるかどうかということに尽きるのだ。
 遠征先で部隊が燃料を必要としているなら、その現地で石油を買った方が早い。米国内で液体燃料がどのくらい生産されているか、あるいは消費されているかなど、関係ないのだ。
 米軍艦は、36ヵ国にある74ヵ所の港で燃料を買って給油可能である。また米軍機は、96ヵ国にある108ヵ所の飛行場で燃料を買って給油できている。
 米空母を中心とする機動艦隊の消費する液体燃料の9割は、ふつうの派遣のあいだじゅうは、海外で調達されているのである。
 国防総省全体が1年間に買う液体燃料の半分以上は、外国にカネを払って購入したものである。
 1815年、米海軍は帆船を石炭焚き蒸気動力に切り替え始めた。これにより艦隊は、海風と関係なく移動計画を立てて、予定の通りに実行できるようになった。
 ただし外洋を蒸気船が長駆移動するのに必要な石炭の量は厖大だったので、給炭港の位置と容量と政治状況に、米海軍はかつてなく縛られることにもなった。石炭積み作業には多大のマン×アワーも必要だった。
 20世紀初め、米海軍は、石炭焚きボイラーを重油焚きに替え始めた。体積あたりのカロリーが高いので、給油頻度は給炭頻度より少なくてよい。しかもホースで圧送できるので補給時の労力も要しない。
 ついで洋上給油法や、原子力推進が開発され、米艦隊は母港に戻らずに連続して長期間の遠征作戦や潜水艦パトロールを実施できるようになった。
 こうした既往の海軍エネルギー源革命とくらべると、バイオフュールは何の作戦上のメリットも米海軍に付け加えてくれなかった。単に、米軍の作戦をいちじるしく不自由に、且つコスト高にしてくれただけ。オバマのマスターベーションだった。