潜水艦にこそ静かな「ロータリー・エンジン」を積んだらどうなんだ?

 Tyler Rogoway 記者による2017-2-17記事「Japan Goes Back To The Future With Lithium-Ion Battery Powered Submarines」。
  AIPにも、スターリング機関から、仏式の「艦内閉塞型スチームタービン」から、燃料電池まで、各種ある。
 スウェーデン発明のスターリング機関には、潜水艦内で液体酸素を扱うという危なっかしさがある。
 また、メカニカルに動くパーツが多々あるので、それがどうしてもノイズ発生源となってしまう。
 パキスタンがフランスから買った『アゴスタ90B』潜にはMESMAというフランス製のAIPが搭載されている。
 これは仏型原潜の熱源を、液体酸素とエタノールの反応燃焼に置換したようなもの。原潜は基本的にスチームタービンだ。MESMAは、エタノールの燃える熱で水を蒸気化させてタービンを回す。そのタービンが発電機にもなっている。
 MESMAはタービンなので高速ダッシュが効くというメリットがある。しかし、やはり複雑な装置内を液体酸素がめぐるという危っかしさを内包し、メカニカル駆動パーツが騒音を立ててしまう。
 これらにくらべて、燃料電池式AIPは、メカニカル駆動部分がほとんどないので、スターリング機関やMESMAより静粛である。そのかわりに、ダッシュは効かない。水中に長期間潜りっぱなしで遠隔地の敵港の動静を探るという、ゆったりしたミッションに向いている。豪州がフランスから購入する『ショートフィン・バラクーダ』型AIP潜は、これを搭載する。
 長距離偵察や長時間待ち伏せなら、燃料電池式がいちばんだ。
 魚雷や対艦ミサイルにより敵高速艦隊に沖合いで攻撃を仕掛け、返り討ちを避けて高速で雲隠れしたいのなら、MESMAがいちばんだ。
 自国の沿岸だけで作戦するつもりなら、スターリング機関でもいいだろう。
 ※自国の沿岸だけで作戦させるなら、「電池のみ、内燃機関無し」、というシンプルタイプでいいんじゃね? サブマリンテンダーから有線で給電してもらってさ。
 日本の次の『蒼龍改』型潜(スーパー・ソーリュー)は、リチウムイオン電池とディーゼルだけを積む。つまりAIPは廃するという。
 既存の7隻の『そうりゅう』型はすべてスターリング機関搭載だ。
 『ゴットラント』型AIP潜を建造したコックムス社からライセンスを買っている。
 リチウム電池の長所は、放電を続けても最後まで電圧が下がらないこと、鉛酸化電池よりも軽量であること、すばやく充電ができること(ただしそれなりの強力発電機から給電せねばならないが)、重量や容積あたりの蓄積エネルギーが大であること。
 そしてもうひとつ。ここぞというときにダッシュを効かせることもできるのだ。
 リチウムイオン電池の短所は、なぜか制御が効かなくなったり、過熱膨張や自燃を起こすことである。
 リチウム電池の過熱自燃事故では、高熱とともに有毒ガスや伝導性粉塵が放散される。しかも簡単には消火できぬ。潜水艦用としてはえらく厄介だろう。
 しかし、飛行機等と違い、大型の潜水艦であれば、電池のセル一個一個を密封隔離するステンレス合金筐などの重さが多少は増えても問題は少ないから、日本のメーカーと防衛省は電池自燃事故を防遏可能だと考えている。
 短絡や塩水浸潤の予防にも万全を期す。落下衝撃テストはもう済んでいるという。
 電池室の隔壁内には特注の自動消火装置も据えつけるという。
 ※それよりもバッテリーパックとして船外に曳航するようにして、燃えたら切り離せるようにすりゃいいんじゃね? 魚雷避け用の囮にもなるだろう。
 『そうりゅう』型の量産最後の3隻にはリチウム電池が搭載される。
 げんざい進水している7艦目には、スターリング機関4つの他に、リチウム電池が搭載されている。
 この7艦目が、過渡期のスタイルとなるのであろう。次は、AIPを廃してリチウム電池だけにするのだ。
 将来展望だが、燃料電池とリチウムイオンバッテリーを組み合わせた潜水艦ができれば、すごいことになるだろう。持続力とダッシュ性能と静粛性のすべてを兼ね備えることになるからだ。
 噂では、中共は、AIPとリチウム電池のハイブリッド潜水艦を計画中だとのこと。しかし単価はとてつもないものとなるであろう。
 米海軍は過去27年間、ディーゼル電池式潜水艦とは無縁だ。
 米軍最後のディーゼル電池式潜水艦『ブルーバック』は、演習で敵潜役を務めるため、1990年まで運用されていた。それ以降は、米海軍にはもう原潜しかないのだ。
 米海軍が原潜一本となったことで、戦略的には不利となったことがある。原潜はセキュリティがうるさいため、どの外国の港にも気軽に置いておくわけにはいかない。この点では米海軍の海外作戦は、不自由になっているのである。
 米海軍は、『スーパー蒼龍』のライセンスを日本から買って、非核動力潜水艦を米国の造船所で大量生産するべきではないか。
 『ヴァジニア』級SSN×1隻のコストで、『そうりゅう』型なら4艦も建造できてしまう。
 量産するにともなって、単価もどんどん下がるだろう。
 もちろん、この提案は米海軍によって拒絶されるはずであるが。
 ※米国の東海岸からインド洋やら南太平洋やらまで往復をするのに、核動力以外ではどうしようもないのでね。米国の場合は、むしろ衛星に搭載される小型のアイソトープ原子炉を艦内の機関室に多数並べてエンジンそのものも撤去してしまって、「アイソトープ+リチウムイオン」のハイブリッドにした方が有望だろう。これ以上静かな軍用潜水艦はできないはずだ。寄港の問題は残るが、万一奪取されても困る秘密じゃないし。
 次。
 Kevin Robinson-Avila 記者による2017-2-15記事「Air Force lab at forefront of microwave, laser defense efforts」。
    装甲トラックに搭載したマイクロ波発生装置。1ギガワットの強力電磁波により、路上爆弾の回路をショートさせ、自爆させてしまう。「マックスパワーシステム」と名付けている。
 ニューメキシコ州アルバカーキ市にあるカートランド空軍基地内で、こんな研究をしている。
 すでに2012年にアフガニスタンへ持ち込んで9ヶ月間、テストしている。
 マックスパワーシステムは 2007年から2012年まで、5000万ドルかけて開発した。いまはその小型化を研究中。
 次。
 『Indiatimes』紙の2017-2-17記事「Fighter Plane F-16 To Be Made In India? US & India Are Discussing The Possibility」。
     米政府とインド政府の間で、F-16の製造工場をインド国内に建設することについて話し合いが持たれている。
 ロックマート社員がインド国内の航空ショーで語った。
 2016-8にロックマートは、テキサス工場の「F-16 ブロック70」の製造ラインをそっくりインドに移設してもいいですよと提案したのである。
 ※ロックマートはこれからF-35に製造資源を集中したいので、店じまいとなるF-16のラインはそっくりインドに転売しても可いという気になっている。これはダッソー社の苦い失敗から学んだものだろう。ダッソーが「ミラージュ2000」のラインをそっくり譲ると言っていれば、MMRCAはとっくのとんまに「ミラージュ2000」に決まっていたのだ。ただし、インド相手の「非核関係」の商談はトントン拍子には進まぬ。その詳しい実態を知りたい人は、今月末に徳間書店から発売される兵頭二十八の新刊を読もう!