「読書余論」 2017年3月25日配信号 の 内容予告

▼大山敷太郎『農兵論』S17-11
 幕末からの兵制改革をリサーチした学術論文集。農兵とは広義の一般徴兵のこと。
 維持費。『開陽』を1年維持するための「入用高」は、14万6000余両であった。
 慶応3年10月調の海軍経常費は、92万両余。
▼マイケル・アブラショフ著、古越浩一郎tr.『即戦力の人心術』 原2002“It’s Your Ship”
 部下から慕われる駆逐艦艦長になるのは簡単だが、それだと海軍内で出世はできんよと言外に教えてくれる奇書。
 軍のエリート将校は、自分を売り込むチャンスなので、できるだけ国防長官との面談時間を長引かせようとする。スケジュール管理を担任する副官は、それを打ち切らせねばならず、恨みを買う。
 苦しんでいる人は自分からは語らない(p.76)。
▼マーク・ゲイン著、井本威夫tr.『ニッポン日記』下 S26-11
 1945のガレキを都民はどうやって除去したか。銀座では、とりあえず運河に捨てた。山のようになった。それを川舟ですこしづつ運び去った(p.197)。
 ※『空手バカ一代』の中にGIがジープで主人公を轢殺しようとする「そんなのあるかよ」と思われるようなシーンが出てくるのだが、じつはそれは終戦直後の韓国におけるリアルな「米兵の憂さ晴らし」であったのだと本書を読んで初めて了解できた。もちろん轢かずに寸止めなのである。
▼安全保障調査会『日本の安全保障――1968年版』
 ベトナム戦争。1968-3-23時点で、米国は1ヵ月に20億ドル=7200億円を使っている。すなわち日本のS43年度国防費4221億円を18日間で使っている勘定。桁違い。
 大内兵衛は、日本人の一人一人が毛沢東語録を熟読すべきだと。「軍隊は国家権力の主要な構成要素である」「われわれは革命戦争万能論者である」「全世界はただ武器によってのみ改造することができる」「われわれは戦争消滅論者である。戦争を経てのみ戦争を消滅させられる。武器をなくすには武器をとらなければならない」とあるのだが……。
 コンゴでは国連PKFは失敗した。教訓として、内戦紛争には介入しないこと、武力行使の認められる自衛の範囲規定などが決められている。
 米ABM。まずスパルタンが、高度数百kmで核爆発。中性子やX線で敵RVを無力化する。スパルタンを突破してきたRVは、スプリントによって高度40kmで迎撃する。どちらも核爆発だが、地上には影響は無い。
 F-105Dは、九州の板付からちょうど北京を核爆撃してもどってこられる航続距離をもっていた。板付から1500km。往復ともに高々度で飛行した場合。
 マクナマラの1968年議会報告書。いわく。
 出力50キロトンの弾頭10個――つまり合計で500キロトン――が、人口200万人の都市に与える被害は、10メガトン(=1万キロトン)の単弾頭ICBMと同じである。
 人口10万人の小都市が対象の場合、そこに50キロトン弾頭が10発落下すれば、10メガトンの単弾頭が1発炸裂したときの3倍半もの破壊と死をもたらすことができる。
 飛行場の場合だと、この差は10倍にもひらく。
 迎撃のしにくさも、RVの数に比例する。
 したがって、大威力の単弾頭をミサイルに搭載するぐらい非効率なことはない。小威力の弾頭をできるだけ多数発射した方が、はるかに効率的なのである。
 ポラリスをギリシャ南岸から発射してもモスクワに届かない。ポラリスをノルウェー北岸から発射してもモスクワに届かない。しかし、スウェーデン南岸のバルト海から発射すれば、楽々と届いてしまう。黒海から発射した場合も同様である。
 ※このポラリスを「スタンダードミサイル改造核SSM」に脳内置換すると、なぜプーチンがウクライナ領有にこだわり、またバルト三国とポーランド支配にもこだわるかが了解される。
 1965統計で、極東ソ連の人口は951万で、全ソ連の4.1%しかない。
 また1965のソ連の石油生産は243000万トン。そのうち極東では240万トン。
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 「読書余論」は、主に軍事系の古本を、兵頭が注目した一斑の摘記や読書メモによって紹介し、他では読めないコメントも附しているものです。
 あまりに多すぎる過去の情報量の中から「兵頭はここは珍しいと思いました」というポイントだけ要約しました。
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 また、ミリタリーしか読んで来なかった人には、他分野の情報が、何ほどか有益かもしれません。
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