残念ながらP-1やその操縦訓練用の巨大6軸制御シミュレータの撮影はできませんでした。日米共同の基地でなければたぶんP-1の外観についてぐらいならばOKだったんでしょうけれども、米軍がうるさいようです。
分解整備中のSH-60Kと、消防隊の最新消防車だけ、接写してきました。これは、機会あればまた別枠でご紹介したいと思います。
まず印象的でしたのは、前に雪で潰れた「日飛」の格納庫の中にあった米海軍用のP-3Cの残骸が2~3機分、野積みされている場所があるんですよ。これを撮影できないのはほんとうに残念でした。角度的に、近傍のマンションの高層階からは見えているはずなんですけどね。
日飛の格納庫屋根はなぜヘシャってしまったか。私見ですが、倉庫の屋根構造がアーチ型(D型)じゃなかったからでしょう。
降雪や寒波を甘く見ているとえらいことになります。こんどの見学の前日にわたしが函館空港へ行くために朝っぱらに乗車したタクシー(コンフォート)も、なんとわたしが最初の客だったせいなのか寒さでドアのロックが閉まらず、「お客さん、それ押さえててもらえますか。こっちも(ドア開閉レバーを)押さえてますから」というノリで、止まらずにそのまま走り続けました。……ルパン三世かよ!
聞けば、前夜に洗車したときの水が内部で氷結しているときがあって、時にはドライヤーでドアを温める必要もあるんだそうです。
それはともかくもP-1の操縦席、左右ともに大きなヘッドアップディスプレイがあるのには感動しました。もちろん計器もぜんぶグラスコクピットです。日本周辺の海の深さ、海底の土質などがぜんぶカラーのマップ化されているのは超便利だと感嘆しました。敵潜がどのルートを選びそうか、このマップを見ているだけで見当がつくような気がいたします。敵艦長にとっては伊豆・小笠原・硫黄諸島とつらなる帯がずっと浅海面になっているのがほんとうに邪魔でしょうね。
「この上を飛んではいけない」と決められている原発の位置などもちゃんとディスプレイに表示されているのです。
ジブチの細かい砂がこの機内の電子機材を故障させたりはしないのか、という質問は……し忘れました。
P-1の機内には最大で25人乗れるそうです。しかしお客さん用の椅子は後部に6人分しかない。それ以上に増えたときは床に適当に座るそうです。
米海軍のP-8がMADを廃してしまった理由は、海自の人にはまるでわからないそうです。
海面がひどく荒れているときはソノブイも役に立たぬことがあるそうです。その場合でもMADなら使えるというので、海自ではMADをずいぶん買っていました。
水温を調べる特別な投下ブイはあるが、塩分濃度を調べられる投下ブイはないそうです。
爆弾倉内は、TVカメラでモニターされています。機外に出て、腹の下からじっさいに見せて貰いました。この広さならばミサイルキャリアーの「空中巡洋艦」に改造するのは十分に可能であると頼もしく感じました。
海自の人が十数人勤務している南鳥島までP-1なら厚木から3時間で到達するそうです。しかしなんと、着陸は不可能。あの滑走路はC-130だけが離発着できるらしい。
ちなみに南鳥島の飲用水は造水機で得ていますが、硫黄島は海水が火山性の不純物で満ちていてフィルターが詰まってしまうため、雨水だけを頼っているそうです。それで200人分の用が足りるかというと、3月頃は雨が少なくてさすがに困るようですね。
それと、硫黄島は隆起が続いていて、海岸がどんどん広まっているそうです。
P-1の操縦シミュレーターは、四階建てくらいの吹き抜け空間があるピカピカの屋内にあって、ちょうど女性パイロットが訓練を受けていました。それをわれわれに見せたかったのかもしれないが……。米海軍はF-18にも女子を乗せているという話です。
管制塔から見渡しましたところ、E-2Dが2機所在していました。話では、米海軍は岩国にE-2Dを集め、厚木にE-2Cを持ってくるつもりらしいともいうのですが……。
また近い将来、厚木の米海軍機は回転翼機だけになるという話もあります。米海軍の回転翼機部隊のコールサインが「ウォーローズ」(軍閥頭目たち)だということもここで承知しました。格納庫にデカデカ書いてあります。
厚木基地内には川が貫流していて、そこはちょっとした谷になっています。終戦直後にその谷に旧海軍機をボンボン投げ捨てたものだから、今でもあちこち掘るといろいろなものが出土するという。雷電の「火星」エンジンのパーツを入れた木箱とか、あれこれ、資料館に保存されていました。
「零戦が埋まっている」というのも、この谷に投げ捨てた残骸から尾ひれがついた伝説のようです。
米軍基地の面白い点は、バスがゲートに入るときには、ひとりひとりについて厳正にID点検をするのに、出て行くときには壁によりかかったままリラックスして傍観しているだけ。敬礼もしない。メリハリありすぎやろ!
転勤の多い米兵たちは、使った家具などを基地内のガレージセールで次々に新任者に転売するシステムをつくっていました。そのための保管倉庫もあるのです。
あとまったく余談なんですが、今回初めて北海道新幹線を始発から利用して帰宅し、そのあまりの「気楽さ」に、つくづく感心をさせられました。
羽田その他の空港にて、われわれがいつも、いかに余計なストレスにさらされていたのかということを、肉体的にも精神的にも実感できたようなわけでございます。
北斗駅と旧函館駅をむすぶ「ライナー」も、ピカピカの新車両だし、ぜんぜんオッケーじゃない!
これならばもう2時間以上余計にかかろうとも、新幹線を使う方が断然いいわい――というのが、偽りなき所感でござる。
次。
ストラテジーペイジの2017-3-1記事。
米海軍は、ものはためしの訓練として、1隻の駆逐艦に、GPSの利用を禁じ、六分儀と天測航法だけで日本からグァムまで航海させた。道程は2500km。
結果、なんと目標点から7kmしか外れなかったという。
ちなみにグァム島のさしわたしは59kmである。
ロシアの「ミル8」ヘリが公道に降りて来て、トラックドライバーに「ここはどの町の近くだ?」と訊ねて地図と照合し、すぐ離陸して行くユーチューブ動画。これは露軍もGPS/グロナス抜きの地文航法を訓練させていることを米軍に対して宣伝しているのである。
GPS時代の前、「戦場で最も危険な男は誰か?」という軍隊ジョークがあり、その答えは「地図を持った少尉」だった。新米小隊長が、地図と地形を読み間違えて、とんでもないところへ部下を率いて行ってしまうという意味だ。
次。
ALEX HORTON 記者による2017-3-1記事「Questions hover over Army drone’s 630-mile odyssey across western US」。
米陸軍がアリゾナ南部で1月31日に発射した無人機「RQ-7Bv2 シャドウ」が10日間も行方知れずになり、630マイル先のデンバー市郊外の森林でハイカーによって発見された事故が、重大視されている。
この150万ドルの無人偵察機は、公称の航続距離が77マイルしかない。その8倍の距離を飛んだのはなぜ? そして片翼は発見されていない。
同機は油圧カタパルトで射出された直後から無線リンクが切れたという。
同機は重さ450ポンド、翼長20フィートである。
シャドウのソフトウェアは、地上との直接無線リンクが切れた際には、出発点に戻るようになっているはずなのだが……。
詳しい人によると、内部燃料だけで9時間以上滞空し、この距離を飛翔することは可能なのだという。ただし遠ざかるにつれ地上との無線リンクは確立し難くなる。
また当日は強い風が、南西からコロラドへ吹き込んでいた。これも逸走を助けたであろう。
2014年に1機のシャドウがペンシルベニアで墜落して車に轢かれたことがあった。
また2011年にはアフガニスタン上空でシャドウがC-130と空中衝突している。
シャドウは海兵隊も前から使っているが、陸軍が2014から大々的に採用している理由は、有人の「OH-58 カイオワ」偵察ヘリの仕事をこのロボットで代行させるためであった。軍隊のリストラである。
アパッチ攻撃ヘリを装備する陸軍の10個航空旅団(陸軍師団内に1個)は2019年までに、シャドウをアパッチに先行させるコンビネーションに切り換える。