ストラテジーペイジの2017-3-20記事。
3月17日、4機のイスラエル空軍機が、ヒズボラの入手した兵器〔おそらく地対地ミサイル〕を爆破するため、シリア東部のパルミアを空爆した。
このイスラエル機に対してシリア政府軍は、地対空ミサイル「SA-5」を発射した。
そしてイスラエルは、このSA-5を空中で爆破するために、ミサイル迎撃ミサイルである「アロー3」を使用せねばならなかった。
どういうことかというと、イスラエル空軍機に向けて陸上から発射された地対空ミサイルが、飛行機には当たらずに逸れ、そのまま自由落下を始めて、イスラエルの領空・領土へ向かってきたのである。
イスラエルとしては、この飛翔体がもしかして地対地弾道弾であるかもしれぬという万一の場合を顧慮し、イスラエル国内に着弾する前に空中で迎撃をした次第。
イスラエル軍が領土外で作戦行動している戦闘状況下で「アロー3」が試されたのは、今回が最初のケースである。
※わたしが拙著で提言している、(そして中共もいよいよ無視しておけなくなってきた)ソリッド弾頭を用いた「対〈静止艦〉用」戦術弾道弾のメリットは、ABMで阻止しようと図っても無炸填の重金属弾頭は特に故障も起こさず、そのまま惰性で目標へ突っ込むだけであるという点。敵は迎撃ミサイルを発射すればするほど、単にみずから発生させた破片を降らせて自国の軍港施設に余計な損害を加えるばかりなのだ。
SA-5は1960年代からある。最新のそのバージョンは「S-200」と称され、シリア政府軍には2010年から、ロシアによって供給されている。自重7トン、水平射程300km。
※それにしても、ロシア製SAMには、はずれたときに自爆する機能がついていないのか? だったらSM-3が艦隊地の核弾頭付き弾道弾だと疑うのも、無理はないわな。
2011からエジプトにカネをめぐみ続けているサウジは「アラブの盟主」づらをしたい。しかしエジプト人には、それは不快である。
現在、エジプト国内では、ガソリン1リットルの小売価格は36セントである。対して、イスラエル国内では、2ドル強。
イスラエル政府は民需用の石油燃料に対して政府補助を与えないのみか、重税を課しているからだ。
逆にエジプト政府は気前よく政府補助によってガソリン価格を押さえている。輸入価格はリッター70セントなので、異常な逆ザヤ。しかしそれを続けねば、国民が暴動を起こす。
フランス製のスカルプという空対地ミサイルは射程560kmある。自重1.5トン、弾頭重量450kg。艦艇やビルディングに精確に命中する。
単価が150万ドルで、1990年代後半からすでに3000発以上、註文されている。これまでに発射されている総数は100発ほど。
フランスは600発購入。共同開発した英国は1000発近く調達。英軍は名称を独自に「ストームシャドウ」と変えた。
この他、GCC諸国が1000発以上、買っている。
ギリシャ、イタリア、エジプトも少数、購入。
仏軍はシリアとマリでスカルプを発射し、うまくいっている。
英軍は2003年にイラクで「ストームシャドウ」を使用した。
※米国からトマホーク・ミサイルを買うという話は手続き的に簡単ではない(国務省だけでなく、議会の承認が必要)。しかし英国からストーム・シャドウを買うのは、手続き上はものすごく簡単である。なにしろあちらの政府が売る気満々だから。こちらの発射母機の火器管制システムに小改修が必要となるけれども、インド人のように上手に交渉をすればその工事代を「弾薬を買ってやるかわりのサービス」として向こうにまるまる負担させることだってできる。日本は巡航ミサイル技術をとっくに持っているため、この国際取引はMTCR規制にはひっかからない。往々、兵器輸入は後年度のメンテナンスが軍事財政を圧迫する。しかし今日の弾薬は気密コンテナに封入されているので、使わないのならば十年以上でも倉庫に寝かしておけばいい。さすがに10年も経過すれば技術が古くなっているだろうからリファービッシュが望ましくなるけれども。人件費となんら連動せぬ「弾薬買い」は、軍事政策としてとても合理的なのだ。迷ったらとりあえず「弾薬」を買うのが、損しない道である。
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Kris Osborn 記者による2017-3-19記事「Army Upgrades GMLRS Warhead」。
射程70kmかそれ以上でも精密に命中し、しかも不発弾を決して残さないというGMLRS用の新弾頭がロックマートにより開発された。その工場は、アーカンソー州カムデン市にある。
200ポンドの単弾頭で、空中炸裂モードか、地中貫徹爆発モードにできる。
低い空中から破片を高速で飛散させて地面を覆う技術の改善により、クラスターではないのにクラスター並のエリア制圧力がある。
なおロックマートでは6年前に、MLRS用のクラスター弾頭の製造は止めた。
GMLRSは、すでに2万5000発、製造されている。
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Tim Worstall 記者による2017-3-19記事「Trumps’ Right About Germany And Defense But Not About The Economics Of Nato」。
NATOの欧州メンバーは、それぞれ自国の軍事力にカネを出すことによって米国を含めた全メンバーに貢献しているのである。
NATOとは、欧州諸国が米国にカネを出して安全保障を買う仕組みではない。米国が欧州にカネやモノを与える仕組みでもない。
欧州諸国の国防努力はたしかに足りない。しかし、欧州の防衛努力とは、欧州から米国にカネを貢ぐことではないのだ。
※まったく同じことが日米安保条約にもあてはまる。