ドラマ化決定? ――せんでええから。

 ストラテジーペイジの2017-3-23記事。
  北鮮の青年某は特権階級に属し、何不自由ない生活をエンジョイしていた。妹との二人暮しであった。
 青年某は大学生である。
 ただし学部はちょっと変わっている。
 将来、対韓国のスパイとなるための諜報官養成コースなのだ。
 しかしこの学科に進学できたこと自体、彼の「出身成分」の健全さと能力の高さの証しであった。妹ともども、今以上の将来の特権生活が、保障されたようなものであった。
 ところがあるとき、兄が血相を変えて不意に妹の部屋に現れる。
 「今夜、脱北するしかないのニダっ!」
 寝耳に水の、事態の急展開である。
 なんと、この兄妹の遠い親類が韓国で暮らしていることが、公安当局のデータベースチェックで判明したらしいのだ。
 北鮮当局は、韓国に親戚がいるような北鮮人を、南遣工作員にすることはできない。現地で二重スパイに取り込まれてしまうかもしれないからだ。いや、そもそもこの青年は、既に韓国秘密警察のスパイとして働いているのではないのか?
 このような嫌疑がかかり、高級アパートには公安の監視人が張り付くようになった。大学も、青年を放校することを通知してきた。
 これはバッドニュースだ。公的に、兄妹の階層成分は一気に最低ランクにまで転落させられたのだ。いまや2人には何の特権もありはしない。
 次に来るものは何か? 強制収容所への収獄のみであろう。
 平壌一等地にある高級アパートは、誰もが大枚をはたくのを厭わぬ特権財で、贈賄者(公安中堅幹部)の屈強の袖の下となる。おおぜいが、空き室が出るのを願っている。
 困ったことには、この兄にとり、単身での脱北は、考えることはできない。
 残された妹はどうなるか? 即日に逮捕されて、残りの人生は、刑務所で無期労働に服せしめられるであろう。北鮮の強制労働施設は、北鮮の余剰人口の調節装置になっている。その中では、数年しか生きられない。
 脱北は、満州側の闇組織と連絡をとって周到に準備しておけば成功は堅いが、咄嗟に準備なしで越境すれば、失敗率は高かった。
 しかし、この兄妹には躊躇している時間は無かった。
 北鮮公安はただちに満州の鮮人村に顔写真を張り出した。生死を問わぬ懸賞首であることも、符号によって告知された。
 中共公安も協力し、間もなくしてこの2人は捕えられ、北鮮内に拉致されて行ったという。すべては2017年、今年の出来事である。
 以上について表向きの報道は皆無。しかしながら、ヒュミントによって、話が外部に伝わってきた。
 アメドラならば、この先の展開をどうするだろうか? プリズンブレイクですかね? 女囚房には謎の婆さんがいて……。
 関係ないが、「シカゴPD」は目が離せないですね(「シカゴファイアー」なんて誰が視てるんだよ?)。
 ※蛇頭考。日本の「ライギョ」のことを満州では「蛇頭魚」というそうだ。肺呼吸をするが、ドジョウのように胴は細長く、名前そのままな外見であるという。この蛇頭魚の一大特徴は、多数の子供ライギョをいつも引き連れていること。1人のツアーコンダクターが、おのぼりさん多数を連れ歩くような格好なので、密出国手配師の別名となったのであろう。