ロシアは水面下で「対中共・米露連合戦争プラン」をトランプ政権に提案しているものと推定される。

 Steven Pifer 記者による2017-3-21記事「Multilateralize the INF problem」。
   INF条約は、射程が500kmから5500kmまでの地上発射式の弾道弾と地上発射式の巡航ミサイルを米ソに禁止した。1987年に調印され、1991年半ばに全廃は実現している。
 ロシアはこれに違反する地上発射式巡航ミサイルの試射を2014年から開始。そのときはオバマ政権がこのニュースが炎上しないように努めた。
 しかしとうとうこのたび、露軍はこいつを実戦配備したとワシントンが認めた。
 これを承けて連邦議会内の共和党員たちは、米国もただちに地上発射型の中距離核ミサイル(弾道ミサイルと巡航ミサイル)を製造せよと叫び出している。
 そうなるとはっきりさせねばならぬことが2つあるだろう。
 ひとつ。いまの制限された米国国防費枠の中でそれは可能なのか?
 ふたつ。NATOの欧州諸国や、日本や韓国は、それら地対地核ミサイルの自国内展開を認めるだろうか?
 ロシアがこのたび配備したGLCMは「SSC-8」というコードネームで、射程は2000kmだと推測されている。
 こいつをカリニングラード〔最西端のロシア領土〕から発射すると、アイルランドから南仏まで、楽々と核弾頭が届いてしまう。
 シベリア東部から発射すれば、東京にも、北京にも到達する。
 ※この記者は核不拡散のプロなのだが、米国中心主義の御仁らしく、肝心なことに想像力が働いていない。ロシアはとっくに空中発射式の空対地巡航ミサイルで全欧と全日本列島は攻撃できるのだ。SLBMもある。高速で飛翔する弾道弾ならばともかく、旅客機並のスピードの巡航ミサイルでは、いまさら欧州にも日本にも特別な危険など加わらない。この新兵器の注目点はあくまで「対支」なのだ。SSC-8がほんとうに2000km飛ぶのだとしたら、北京に対しては、イルクーツク以東のモンゴル北側国境帯のどこからでもロシアはこれを届かせることができるわけだ。それを中共側としては先制破壊しようがない。もっと重要なこと。モンゴルの北側から、中共の核弾頭の一括貯蔵庫である「22基地(太白山)」まで届くのだ。中共の核ミサイルは普段は核弾頭を装着していない。巡航ミサイルが亜音速だといっても、その発射を探知したあとから「22基地」から核弾頭を持ち出そうとしても、もう間に合わない。水爆の連打で交通運輸も通信も麻痺するからだ。おそらくこの核巡航ミサイルは、INF当事者ではないのをいいことに勝手な中距離弾道弾軍拡を続ける中共に対する絶妙の回答となっているのだろう。そうだとすればアメリカは本音では反対もできないという、ロシア発の高等政治なのかもしれない。やはりフリンのような小者ではロシアの相手はとても無理だったかにゃんたらりん。
 じつはソ連は極東の最も東北域の陸地には過去、一度も核兵器を展開したことがない。
 ※そこには交通と通信面でとても不便な条件があるからだ。とすれば米国はアラスカから戦略的にも戦術的にも攻勢に出るというオプションを持つわけだ。極東ではロシアはウラジオなど沿海州の南部にも核兵器を置きたくない。おそらく満州からの歩兵攻撃には弱いからだ。コムソモリスクナアムーレの近くの Selikhino という基地が、極東の陸上核拠点らしい。
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 Kris Osborn 記者による2017-3-24記事「Army Pursues Precision-Guided Upgraded Shoulder-Fired Weapon」。
   DARPAはカールグスタフから誘導式の対戦車弾を発射させたい。
 名付けて大量圧倒撃滅弾薬(MOAR)。
 口径84ミリながら、カールグスタフは、最大で1300m先の目標を打撃できるポテンシャルを持っている。最先端のシーカー技術を結合させれば、その距離で移動目標も撃破できるはず。
 もともとそのシステムは、歩兵携行型の対戦車ミサイルの「ジャヴェリン」よりも軽い。
 米軍が採用しているカールグスタフの型番は「M4」だが、次のタイプではこれをもっと軽量にしてやるべく、チタニウム合金でこしらえることが検討されている。
 1990年代前半登場の「M3」カールグスタフは重さが22ポンドあった。2014年導入の「M4」はこれを15ポンドに軽減した。しかし、さらに軽くできるはずだ。
 鋼鉄でありながら、普通の鋼鉄より密度が半分(したがって比重も半分)という素材がある。さらに砲身部分の内張りのパターンを改善。外張りのカーボンファイバーも効率化する。
 CASに頼らずに、カールグスタフだけで、頑丈なビルの内部にたてこもる敵ゲリラを掃討してやりたい。そのための壁貫徹弾薬も充実させる。
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 ストラテジーペイジの2017-3-25記事。
   ロシアは海軍予算の配分を、SSBNの新造へ集中している。
 そのあおりで、SSNとSSGNは予算カットされている。新造はさせずに、既製艦のリファービッシュで凌ぐつもり。
 冷戦中、米海軍のSSNは、ロシアの沿岸領海22km域内にこっそり潜航して諜報活動し、また気づかれずにそこから立ち去るという「訓練」を反復していた。米ソの潜水艦の技術格差は当時も今も圧倒的である。
 ロシア海軍は、潜水艦から発射させる旧来の長射程の対艦ミサイルを、2017年からどしどし、最新型の「3M54」(別名 SS-N-27、もしくはシズラー、もしくはクルブ、もしくはカリブル)に換えていくことを決めた。
 名称によって混乱させられるけれども、要するにその本質は「トマホークスキー」なのだ。
 すでにこのトマホークスキーは、インド、ベトナム、アルジェリア、中共の潜水艦用対水上艦兵器として、ロシアから輸出済みである。
 ちなみに、クルブは、カリブルよりも性能を落とした輸出専用バージョンである。
 インドはロシアから買ったキロ型の非核動力潜水艦『シンドゥヴィジャイ』からロシア沿岸で2010年にこのクルブを6回試射したものの、非常に調子は悪かったと伝えられている。
 「3M54」は公式には2012年からロシア海軍が運用している。そしてシリアにおいて、水上艦や、航空機からもカリブルを発射してうまく飛ぶことを露軍は世界に証明した。
 トマホークスキーは自重が2トン。径533ミリ(21インチ)の魚雷発射管から打ち出せる。「3M54」の弾頭重量は200kgである。
 対艦用だとレンジは300kmとなるかわりに、終末スピードが時速3000km。
 対地用だと、終末加速をしないかわりに、弾頭重量が400kg。
 ロシアのトマホークスキーは冷戦末期には「3M14」として開発途中にあり、2001年に対地用が完成した。しかし対艦用に使える「3M54」が仕上がるまでにはそれから10年も必要だったわけである。