トマホーク巡航ミサイルの飛翔速度は880km/時。1300km飛ばすにも1時間半、2200km飛ばすには2時間半がかり。

  Thomas E. Ricks 記者による2017-3-28記事「Book excerpt: Defense Secretary Mattis discusses his favorite books, and why」。
   マティスへのインタビュー記事。
 俺(マティス)だけじゃない。海兵隊の現役当時、俺が仕えたすべての上官は「読むべき本のリスト」を持ってたね。そして俺が、そんな本は重要じゃないと判断してそれを読まなかったりすると、上司たちは怒るのが常だったね。
 シャーマンやマルクス・アウレリウスについて、それから、ネルソン・マンデラの自伝『Long Walk to Freedom』……。興味あることはすべて読んできた。人間の本性というものを書籍から学ばせてもらった。おかげで、敵の行動が一瞬不可思議に見えても、それには悩まされないのである。
 一介の武辺、部隊指揮官として人生を終えられるのならばともかく、民主主義政権下のプロ軍人は、出世するにつれて、軍隊外の世界と交渉を持たねばならぬ。そのさい、戦場でのテクニックに詳しいという以上の、大人の世知が必要になるのだ。
 マンデラがバーミンガムの獄中でどんな手紙を書いたか、シャーマンが敵前でディレンマに直面したときにどうしたか、スキピオ・アフリカヌスはいかにして勝利することができたか〔シャーマンとスキピオについては、マティスはリデル・ハート著で読んでるらしい〕。
 これらを承知しておくことは、人間の政治的欲望について了知できるということ。それが非軍人の大物指導者たちの意向と軍事作戦との折り合いをつけさせねばならぬときに役に立つ。この教養が、世界を野蛮から遠ざける高度な「戦略」を生むのだ。
 古代戦でも現代戦でも変わりなく、戦場はえてして、人間が最も原始的・本能的な野蛮を発揮するステージとなる。いやしくも将校ならば、そこに十分に詳しくなくてはプロ軍人として頼りない。
 しかしそのレベルの専門知識だけで満足していてはならぬ。敵をメチャクチャにやっつける方法を国家指導部に提案するだけではダメなのだ。高級将官としては、それではあまりに未熟である。
 古代でも現代でも、偉人たちは、その野蛮な無秩序から「よりマシな平和」を再構築するのにいちばんよい戦略とは何なのか――を考えてきたのだ。
 書籍には、それが書いてあるのだ。
 戦術レベルで実戦とはどんな具合かを教えてくれる本としては、そうだな……。
 M.M.Kayle著『The Far Pavilions』。
 Guy Sajer著『The Forgotten Soldier』。本書からは、部隊指揮官は部下の兵卒たちから報復されることがあるんだぞという戒めを得られる。
 Nate Fick著『One Bullet Away』〔わが身をスレスレにかすめて飛び去った敵弾〕。
 Alistair Horne著『Savage War』。
 E.B.Sledge著『With the Old Breed』。
 師団幕僚以上の者は、グラント将軍の回想録『Memoirs』や、スリム著『Defeat into Victory』を読んでおけば、間違いは犯さない。
 コリン・グレイ著の『Fighting Talk』『The Future of Strategy』の2冊も良い。
 Williamson Murray著『Military Innovation in the Interwar Period』。
 Tony Zinni著『Before the First Shot Is Fired』。
 H.R. McMaster著『Dereliction of Duty』もオススメである。
 コリン・パウエル著『My American Journey』。
 マルクス・アウレリウス著『Meditaitons』。
 Steven Pressfield著『Gates of Fire』やマンデラ自叙伝からは、われわれが取り組まねばならぬミッションなんて先人の苦闘に比べたら大したことないと学べる。
 デュラン夫妻著『The Lessons of History』または、Ron Chernow著『アレグザンダー・ハミルトン』も同様。
 国防長官の重責について体験したくば、ゲイツ著『Duty』が必読だ。
 要するに、日の下に新しいことなどありはしないのだ。すべては先人がもう体験済みなのである。
 もしLucas Phillips著『The Greatest Raid of All』を読んでない海兵隊員がいたら、すぐに読むべし。WWII中にフランスのサンナゼールにあったドライドックを破壊した作戦の話だ。戦艦『ビスマルク』はそれ以降は出撃ができなくなった。メンテナンスできる軍港設備が消滅したので。
 これは、戦争の戦略と作戦と戦術コストのバランスをどう考えるべきかの好資料である。
 Andrew Gordon著『The Rules of the Game』は、トラファルガー海戦時のネルソン提督と、百年後のユトランド海戦時のジェリコー提督とを比較して、後者の通信についてのひごろの取り組みが不十分であったために英海軍の決定的勝利は逃されたと示唆し、サイバー時代の今日の通信部門への教訓を与える。
 国家レベルの話としては、タックマンの『愚者の行進』『8月の砲声』、ポール・ケネディの『大国の興亡』、キッシンジャーの『外交』『世界秩序』。
 初陣で倫理問題に直面するときがある。そんなときに役立つのは、Michael Walzer著『Just and Unjust Wars』や、Melham Wakin著『War, Morality, and the Military Profession』。
 1950年の朝鮮半島で大苦戦した第一海兵師団について、Gail Shisler女史が著した『For Country and Corps: The Life of General Oliver P. Smith』は、キミ自身が著作する場合のひとつの見本だと思う。
 蔵書が数千冊にもなると、転勤のたびに車で運搬するのにうんざりする。そこで処分を余儀なくされるのだが、わたしは地質学(geology)の本全部と、いくつかの軍事書、そして米国西部の歴史について書かれた多数の本は、手元に残している。