中古兵器の対外無償譲与が法的に可能になったとはめでたからずや。

 まだ使えるけれどもわが国の最新の安全保障ニーズには適合しなくなっている――という兵器が自衛隊にはゴマンとあるから、それを全部ASEANにプレゼントしてしまう。
 それによって大綱の別表に空いた「空欄」を、最新のニーズに合うようなふさわしい装備で埋める。こうやって「進化」のスピードをまきあげなかったら、日本は近い将来に韓国軍にすら、してやられますぜ。
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 Stew Magnuson 記者による2017-5-26記事「Fuel Cells Fail to Make Inroads With the Military」。
  ※この記者さんは、わたしが『「グリーン・ミリテク」が日本を生き返らせる!』を上梓した2010年より前からずっと軍用の燃料電池や植物油等による代替動力源の取材を続けている、筋金入りの脱石油オタクである。
 全米防衛産業協会主催による「ジョイント・パワー・エクスポ」がヴァジニア・ビーチで開催中。
 米四軍は、燃料電池の実用を当面、見送る。
 ただし研究は続行される。
 残念ながら、歩兵が携行するにはまだ重すぎる。重さの割りに電力が長持ちしない。
 ※現在、米軍の地上兵は重量負担が過大になりすぎていて、有史いらい最もヘヴィーな兵隊と化しており、骨や筋肉の故障をカバーするためステロイド剤に頼らざるを得ないなど、不健康のスパイラルが人権問題になりかかっている。これと比べると自衛隊は天国だ。
 燃料電池は、水素と酸素を化合させて電力を引き出す装置である。
 酸素は大気中にありふれているが、水素は、化石燃料、天然ガス、プロパン、メタノールなどから取り出すしかない。
 これを最前線でどうするんだという話。そこが実用化のネック。
 四軍は、1990年代の前半に、共通基本燃料としてはJP8を使うことを決めている。兵站を合理化し、兵站線の負荷をできるだけ楽にしてやるため。兵站線が疲れてしまったのは、イラクとアフガンへの泥沼常駐が関係している。
 とにかく水素は、流通も貯蔵も容易ではない。
 プロパンやメタノールは、イラクやアフガンの戦場へ大量に推進補給するのに全く不向きである。
 となるとJP8からなんとか水素を取り出すしかない。
 それが、なかなかそうはいかない。
 JP8(これはジェットエンジン用の灯油だが、米軍の全ディーゼル車両用にもそのまま給油されている)から水素を取り出そうとするためには改質させる工業プロセスが必要だが、そのさい不純物(特に硫黄)がフィルターや触媒を通り抜けてしまうと、燃料電池はダメになってしまうのだ。
 米国内で精製されたジェット燃料に含まれる硫黄分は15ppmと少ないから好都合なのだが、海外で調達したジェット燃料はその限りではない。
 湾岸戦争のさいにサウジアラビアで調達したジェット燃料には3000ppmもの硫黄分が含まれていた。
 米軍以外の誰も、JP8やから硫黄の混じらない水素を取り出そうなどという目的意識をもっている機関や団体は無く、したがって、このめんどうな開発はすべて米軍内部で研究を進めるしかないのである。
 実用化までの道程を9里程であらわすならば、いま、研究は5里まで来ているところだ。
 軍用の小型UAVの内燃機関は、実はとてもメンテに手間がかかる。だから軍としては、できたら、これは燃料電池+モーターに変えてしまいたい。
 水素タンクの代用品としては、「水素化アルミ」が有望材料だ。「アレイン」という。
 アレインは個体で、水素が結びついている。もともとロケット・モーターの材料。
 毒性が無く、安定。数十年放置しても質が劣化しない。
 このアレインを、重さ2.8ポンド以下のコンテナに封入し、あたかもそれを「乾電池」のようにして戦場で兵隊が次々と消費するようにしたい。この試みは陸軍が先行して研究中。
 アレインの難点は、製造しにくいこと。
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 ストラテジーペイジの2017-5-27記事および5-25記事。
   2017-4-27にロシアは、最新型で全部で4機しかないAWACSのA-50Uをシリアに移動させた。これはイスラエル軍のF-35がレーダーにどう映るかを調べるため。
 イスラエルは50機のF-35Iを発注済み。うち33機は2021年までに納入される。
 最初の20機はF-35Aそのままだが、イスラエルは受領後にそれを「I」型に改造する。
 21機目以降は、米国内の工場で最初から「I」仕様で製造される。
 イスラエルが6機装備するF-35はすでに訓練飛行でシリア国境を越えている可能性がある。
 軍用機にかぎらず、いま一番大事な技術は、データ融合。複数のビデオカメラとレーダーの情報をソフトウェアがリアルタイムで総合して、指揮官の役に立つスタイルで表示してくれること。
 地上とのデータ共有もできる。F-35パイロットが感心するのは、ソフトウェアがパイロットをアシストしてくれる技術はここまで進化したのかということ。
 イスラエル軍パイロットの経験が、過去にも、米軍の新型戦闘機のソフト開発に反映させてきた。今回もそうだろう。
 ロシアの新AWACSの「U」型は2011にデビューしていたが、外国軍は実戦場でその能力を密着観察(自軍のエリント機で)する機会がなかった。
 ところが向こうからシリアまで持ってきてくれたものだから、米軍はさっそくF-22を「エリント機」として、このA-50Uのレーダー特性を追いかけ、解析しているところである。
 むろんイスラエルもF-35で情報収集中。
 ステルス機の真面目は、こうしたエリント・ミッションでこそ発揮されるようだと、米軍もイスラエル軍も認識中。
 もともと米軍の1977デビューのE-3がソ連を刺激し、イリューシン76をベースに開発され、1984年から40機のA-50が就役させられた。
 しかし中共はそれを高く評価せず、独自に双発のボーイング737-800を母体にAWACSをこしらえている。
 イリューシン輸送機は維持コストがかかりすぎるのだ。自重も倍違うし。