「読書余論」 2017年6月25日配信号 の 内容予告

▼M.C.ペリー著、F.L.ホークス編纂、宮崎壽子監訳『ペリー提督日本遠征記 上』角川文庫 H26 pub.
 ※ペリー報告書の完全翻訳本はなんと1997まで無かった。大ボリュームだが、驚くほど周到な施設団派遣であったことがよくわかる。これが大正時代に完訳されていたらと惜しまれる。今回は途中まで。
▼H・J・LASKI著、飯坂良明tr.『近代国家における自由』1951-6 原1947“Liberty In The Modern State”
 国を異にすれば自由の観念も異なる。
 エジプトやサウジアラビアでは、特権階級以外の一般男女は、自由について考えてみたことすらない。古典古代の奴隷と変わらぬ。
 ペリクレスの時代も今日も、自由を全うする秘訣は勇気である。
 不正に直面しつつ沈黙を守る人はいつでも自由の喪失を甘受する人である。
 プロテスタンティズムがキリスト教圏で共存をかちとるのに125年以上の戦争が必要だった。
 国家の支配者がちゃんと責任をとるように、国民が支配者に強制できるようになっているか。これが自由の担保なのである。
 したがって国民の勇気と結束が不可欠なのである。
 英国では、外国人の帰化請願を受理するのは内務大臣の権限である。
 帰化申請のためには、英国内に5年以上居住し、さらに、宣誓証言した市民たち複数による人物証明書を提出する必要がある。そして公告により、彼に関する情報の提供も求められる。
 出版言論と演説言論〔放送言論〕は、作用において大きな違いがある。
 出版言論は、理性で読者を説き伏せるのに向く。意図的に世間を混乱させようとしても持続できない。
 演説言論〔放送言論〕は、意図的に世間を混乱させ、しかもそれを持続させることができる。
 自由と報道は切っても切れない。人々の意見は、事実の真実性いかんによって決定的に左右されるから。
 「特定の利害によってニュースが制約されるときは、自らを自由人だと信じている人々も、実は囚人と化すのである」。
 主権は法的に全能だから、領域内で外国人の権利を制限するのもテクニカルに可能。そのさい他国といっさい相談しなくてもよいし、正義の原則から逸脱していてもOK。
▼ハンス・ケルゼン著、西島芳二tr.『デモクラシーの本質と價値』S23-10
 国民はその総体たる国家においてのみ政治的に自由になれるとすれば、国家の人格が自由でなくてはならない。自由国家の国民のみが自由なのだ。
▼P・G・ヴィノグラドフ著、末延・伊藤共訳『法における常識』イワブン1972、原1959“Common Sense In Law” 
malicious prosecution とは、濫訴の罪。悪意をもち、相手の無罪なることを内心信じつつ、他人を訴追し、結果が訴えの棄却もしくは無罪判決となった場合、訴えた者がこの罪に問われる。悪意の不存在、合理的理由の存在については原告が証明しなければならない。
 1908判例。陸軍や海軍に入ってはならないという条件をつけてなされた遺贈は、公の秩序に反する条件であるから、法律上、無効である。
 conspiracy とは、二人以上の者が、民事上または刑事上の違法行為をなす旨の合意である。その行為が実際になされずとも、軽罪を構成する(訳注)。
 1881から1904にかけ、ロシアで反動政治が吹き荒れ、当局の忌憚に触れた学生は、最下級兵として軍隊に編入されるのが「罰」であった。
▼九里[ぐのり]聰雄[としを]『食用野草』S21-6
 牛や馬は先天的に毒草を知っていて、決して食べない。牛馬が避ける草をよく見覚えよ。
 澤村真の『栄養と食物』によれば、ジャガイモは百匁中の有効熱量(大カロリー)が288であるのに比し、キクイモは269である。
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 「読書余論」は、主に軍事系の古本を、兵頭が注目した一斑の摘記や読書メモによって紹介し、他では読めないコメントも附しているものです。
 あまりに多すぎる過去の情報量の中から「兵頭はここは珍しいと思いました」というポイントだけ要約しました。
 大きな図書館に毎日通えない人も、最低費用で、過去の軍事知識のマニアックな勘所に触れることが可能です。
 また、ミリタリーしか読んで来なかった人には、他分野の情報が、何ほどか有益かもしれません。
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