中東最大の米軍基地はカタールのアルウデイド空軍基地。

 Bruce Riedel 記者による2017-6-5記事「The $110 billion arms deal to Saudi Arabia is fake news」。
  トランプこそがフェイクニュースの作者である。サウジに1100億ドルの兵器を売ったという話は真っ赤な嘘だ。契約書が1枚も存在していない。
 あるのは引き合いの書簡だけ。
 したがって武器輸出審査のために米連邦上院に提出された書類もないわけである。
 今回列挙された兵器品目はすべてオバマ政権時代から売り込み努力が始められていたもの。トランプがこのたび初めて売り込んだものなど一つもない。
 たとえばサウジ向けにプッシュされた4隻のLCSもどきフリゲート(マルチミッション水上戦闘艦)。
 これについては国務省が2015に連邦議会に売り込み中であるという報告書を提出している。しかしその後、契約には進展していない。そもそもLCSの発展型というコンセプトだから、見本艦すら1隻も実在してないのである。
 THAADにサウジが興味を示したのもオバマ時代に遡る。オバマは2015のキャンプデイヴィッドサミットで、THAADの対サウジ輸出を許可した。しかし契約には至らなかった。
 原油価が低くなり、2年以上もイエメンで戦争しているサウジに、1100億ドルもの兵器代金の支払いができるわけもない。
 ※公務員へのバラ撒きと、クーラー電力の大盤振る舞いだけで、すでに財政破綻は目前の状態。
 オバマ政権の8年間に、米国がサウジに売った全武器代金が、1120億ドルだった。
 このほとんどが、2012年にゲイツ国防長官が一発でまとめた契約だった。ゲイツはイスラエルと米議会を同時に納得させる汗を流している。そしてサウジはこのときの買い物代の支払いにいまだに苦しみ続けている状態なのだ。
 トランプが本当にサウジに凄い兵器を売ったなら、かならずイスラエルは「こっちにも補償をしてバランスを取れ」と註文をつけてくる。そのイスラエルの動きが今回まるで見られないということは、トランプは実際には何もやっていないことの証明だ。
 サウジには喫緊の買い物リストがある。弾薬だ。対イエメン戦争で消費し続けている誘導爆弾や砲弾が、いくらあっても足りないのだ。これは10億ドル単位の買い物であるが、買わないという選択があり得ない。だから、まもなく、こっちがニュースになるだろう。
 サウジはこのたび断交したカタールに懲罰戦争を仕掛けたいと念じている。カタールは、エジプトのムスリム同胞団を支援し、アルジャズィーラに拠点を提供し、イランとの紐帯を維持している。
 次。
 ストラテジーペイジの2017-6-6記事。
 エジプトがカタールと絶縁したのは、カタールの庇護しているアルジァズィーラ放送局が、エジプト治安当局による対「ムスリム同胞団」その他のテロ集団に対する検挙流儀を非難する報道を続けていることが大きな理由。
 しかも、エジプト国内で活動するISを声援する報道までしていやがるので。
 カタールは、サウジ対イランの宗派闘争では、シーアのイランを支持するようになっていた。
 カタールは住民が210万人しかいない。カタール国籍の保有者はそのうちの12%でしかない(あとは外国からの労働者)。しかし人口あたり所得は、GCCの中でカタール人が最高額なのである。この富の力でカタールは、アラブ世界を変えようとしてきた。
 2012後半、カタールの君主シェイク・ハマド・ビン・ハリファ・アル・タニはガザ地区を訪問し、4億ドルを拠出して3000軒の家を立ててやると公約した。タニはハマスをイランと絶縁させて、ヨルダン川西岸のファタハと同盟させて、パレスチナ合衆国を創設し、それによってイスラエルと交渉させようと念じた。
 カタールはシリアにおける反政府叛乱も応援したし、イスラムテロ運動がアラブ世界内の力の分布構造をすっかり変えてしまうことも欲している。
 しかしタニは2012年にガザ住民からソッポを向かれた。ガザ住民はハマスにはうんざりであった。表立ってそれをデモンストレートするとただでは済まないから、彼らは、動員に逆らい、サッカースタジアムでのタニの演説を見にいかない(空席率8割にして政治ショーをキャンセルに追い込む)ことで、反対の意思を表明した。
 ハマスが和平に動こうとするたび、それに反対して闘争をけしかけているのが、ISである。