E-malfunctions & AAGH!……と誰もが連想しているだろう。

 Dan Grazier 記者による記事「How Not to Build a Ship: The USS Ford」。
 ※『The San Diego Union-Tribune』に最近載ったこの記事にはもっと長いバージョンがある。それはPOGOウェブサイトを見よ。
 米海軍はフォード型空母1号艦は2014に、105億ドルで納品されると予期していた。
 しかし現実には、2017に、129億ドルでの引き渡しとなった。
 揚弾昇降機も問題があるらしい。レーダーも。
 電磁カタパルトは機体へのストレスをやわらげるという謳い文句だったが、陸上施設でのテストによれば、F-18はむしろスチームカタパルトよりも強い応力に曝される。
 また電力系統を4条のカタパルトごとに遮断できないことがわかった。これが意味することは、もし1つのカタパルトに修理や点検の必要があるときは、4条すべての発艦と着艦の作業が、中止されざるを得ないということ。
  現時点では、『フォード』の電磁カタパルトは、射出400回ごとに故障を起こしている。発注の時点では、故障を起こすまで4166回は射出できるということになっていたのに。
 空母が作戦に投入されるときは、最初の4日間は毎日100回以上も発艦や着艦があるものだ〔いわゆるサージ・ストライクの期間〕。400回で故障が起きるということは、とてもまずいだろう。
 得をしたのは、サンディエゴにあるジェネラルアトミクス社ばかり。彼らは電磁カタパルトの開発とデモンストレーションの契約を2004年に結び、1億4500万ドルを獲得したのだ。
 なおかつ2017-1には、同社はフォード型3番艦『エンタープライズ』の電磁カタパルトとアレスティングシステムのために5億3200万ドルをかちとっている。
 しかしトランプが言ったようにスチーム式に戻すと、もっとカネが必要になる。なぜなら、原子炉を熱源にしてスチームを発生させて圧力を維持させるシステムを、あらたに設計しなければならないから。
 フォード型は、大型のスチームシステムは排してオール電化された空母にしようという根本コンセプトがあった。でかい蒸気系統の介在を、最初から考えてなかったわけだから。大改造になっちまう。
 甲板の支持構造もとっかえねばならない。工期は3年追加となるだろう。
 電気式アレスティングシステムの開発は、2005年の見積もりでは1億7200万ドルで可能だとされた。2009年には、3億6400万ドルかかるだろうと見通しが修正され、今日ではそれが、13億ドルに膨れ上がっている。
 アレスティングワイヤを減速させるメインの仕組みはしかし電気とはあんまし関係がなくて、液体(水)の中で羽根車(パドル・ウィール)が回るときの粘性抵抗が利用される。これで着艦機の行き脚エネルギーの七割を吸収してしまい、のこった三割を、電気モーターの引っ張り力が分担する。
 ウォーター・ツイスターとよばれるこの減速装置の内部メカは、強度の足りないところが複数あって、すぐに壊れた。
 その再設計に2年が費やされた。
 海軍は、ケーブルショックアブソーバーは16500回の着艦回数まで壊れぬことを要求しているが、いまのところAAGは、25回の着艦で壊れてしまう。
 とりあえず二番艦の『JFK』では路線は変更されない。海軍はあくまで電気で行く気でいる。
 法規によって、2009時点での見積もりを50%予算超過した計画は、自動的に見直し過程に投げ込まれる。とはいえ現実的にはキャンセルなど無理な話。
 ここにも、「フィッツジェラルドの防衛予算要求第一法則」があてはまる。いわく。軍備開発計画には二つの段階しかないのだ。初期には「それ〔合格にほど遠いという所感〕を言うには早すぎる」であり、そのあとには「もう止めるには遅すぎる」である。
 『フォード』型の発電機がまた凄い。4基載っているのだが、その発電量は、『ニミッツ』型の8基の発電機の総出力の3倍もある。
 電圧も高いため、これを熱帯の高温多湿環境で運転しているうちには、「短絡」の危険がとうぜんにある。
 『フォード』型の原子炉は「ベッチェルA1B」×2基である。『ニミッツ』型の「A4B」原子炉よりも、トータルで、熱量が25%多く、発電量は3倍だ。
 にもかかわらず、その運転に必要な人員は、三分の二に省力化されるという。
 2016-6に、この発電機の1基が「電気的爆発」事故。また7月には別な発電機も同様の故障を起こして修理が必要になった。
 どちらの発電機も、内部ローターが交換された。
 しかし第2発電機については、『フォード』が就役したあとに、時間をかけて全部バラして補修する必要があるらしい。
 米海軍の第一線用の新造艦は、かならず「ショック・トライヤル」を受けなければならない。ちょっと離した水中で爆薬を起爆させ、その衝撃波で艦内に問題が生じないかどうかを確かめるのだ。
 2000年5月、豪州海軍の『コリンズ』型SSの1隻が、ハワイ沖の合同演習にて、米海軍の空母戦闘群に肉薄し、空母に対するアタックポジションまで気づかれずに辿り着くことに成功している。これは連邦議会の予算局が承知している。
 同様の「演習沈没」は、米空母『ロナルド・レーガン』と『リンカーン』に対してもスコアされたことがあるのだという。
 いま、北鮮は潜水艦70隻、中共は非核式を50隻、ロシアは18隻+SSNを22隻、イランは20隻、有している。