バグダディ死亡の真相に迫りたい人は、本ブログ2017-5-22にUpした記事を読み直してくれ。

 露軍機には「住民の楯」など通用しない。非スマート爆弾で痛撃してやったのだろう。
 次。
  Steven Wills 記者による2017-6-16記事「Of Mothballs and Modernizations」。
     「350隻海軍」の公約の帳尻を合わすため、モスボール軍艦の現役復帰だって? やめとけよ。
 20世紀の教訓をふりかえるかぎりでは、それはロクな結果にならない。
 モスボールしてから5年未満のフネであっても、船体、機械、電装品は、すべておそろしい不完全コンディションなのだ。加えて、そのフネをちょっとした平時任務に就けるためにも、訓練された水兵を十分数、配置しなくては始まらない。
 古い艦艇は、新しい艦艇よりもメンテナンスのためのコストを食う。今の海軍ですら、メンテナンスのための諸資源は足りない。そこに古い艦艇を押し付けられたりしたら、とうていマネージできなくなるだろう。
 たしかに朝鮮戦争とベトナム戦争では、元モスボール艦がひっぱり出されて活動した。
 しかしそのほとんどは、揚陸艦や輸送艦や後方支援任務艦で、水上戦闘艦は例外的だったのだ。
 朝鮮戦争では戦艦(BB)の現役復帰が注目を浴び、それらの戦艦は米ソ冷戦中、活動した。
 沿岸砲撃に元モスボール艦を使ったとき、その海岸の敵から反撃を喰らう危険などまったくないことは確信されていた。だから個艦防空システムなど新設する必要もなく、昔の機能のままで現役復帰させられたのだ。
 WWII中の砲戦型巡洋艦『ボストン』は、モスボールから復帰させるときにミサイル巡洋艦へ改装された。その費用は1950年代で数百万ドルもかかり、しかも満足の行かない出来栄えだった。
 アイオワ級の戦艦も、元モスボール艦の高コスト体質を立証した。けっきょく10年も使わないでまた退役させて、ミュージアムシップとして只同然で売り払うしかなくなった。時代遅れの戦艦に数千名もの水兵を無駄に充当している余裕など、米海軍にだって無いのだ。
 古い軍艦は、鉄板は錆びて薄くなっているし、配管は腐蝕が進んでいるし、電路は絶縁が悪くなってしまっている。これらをあらかた新品同様に直せるものではないのだ。
 また、艦齢25年以上のフネだと、オリジナルの部品を納品したメーカーが、現在ではその部品を製造していない場合がほとんどである。
 ある型の艦内の勤務を特訓するための専用施設というものが1番艦の就役と同時に創られるのが海軍では通例だが、『ペリー』級フリゲートのように、その全艦が退役する前に、その訓練コースの方が消滅してしまっている場合も少なくない。そんな中古艦だけを復活させてみても、新規乗員の訓練は、いまさらどうやるんだという話。
 2009に退役させた空母『キティホーク』を再就役させろという話だが、その蒸気タービンに詳しい水兵や士官は、もういないんだよ。現役の『ワスプ』級揚陸艦の蒸気タービンとは、ぜんぜん違うものなのだ。
 ちなみに『キティホーク』を動かしたければ士官と水兵が4500人も必要で、そのうち数百人は「機関科」でなくちゃならない。古い蒸気タービン艦は、機関科の省力化がぜんぜん進んではいなかったんだから。
 キティホークの艦齢を延長する工事を1987~1990に施したとき、9億4750万ドルかかった。2017の物価に直すと、20億ドルである。
 その20億ドルは、他の現役艦の改装費・修繕費に使った方がいい。
 英海軍史家のD.K.ブラウンはその著書『ネルソンからヴァンガードまで』の中で、英海軍が予算不足に苦しめられた戦間期、旧艦艇の近代化改装に努力を集中したのは、えらく無駄であった、と結論づけている。そのために職工をぜんぶとられてしまって、新造艦の建造計画が阻害された。そして改修された旧艦の能力は、期待に応えなかったと。