米海軍はクォッドコプターの三次元コントロール・コンセプトは水中ロボットにも有望だと考えている。

 ストラテジーペイジの2017-7-23記事。
  2005に登場したエクスカリバーM982 は1発15万ドルもするベラボーな高額弾薬だった。今は7万ドルに下がったが、逐次の改善のための開発費がコストに載せられるので、これ以上は下がりそうにない。
 そこで、もっと安価に、ふつうの155ミリ砲弾を、誘導砲弾にコンバートさせる「後付けキット」が登場した。「M1156 飛翔物誘導キット(PGK)」という。
 2016年から量産がスタートし、米陸軍のみならず海外からの発注が増えている。
 なにしろエクスカリバーより85%も値段が安く〔※その絶対価格数値が記事中には出てこない〕、それでいて精度はエクスカリバーにちょっと劣る程度なのだ。
 M1156は、砲弾の中に組み込まれるのではなく、155ミリ砲弾の頭頂部に誘導フィンとGPSセンサーをねじ止めして取り付ける。そのため砲弾の重さは1.4kg増えてしまうが。
 GPSセンサーと誘導メカを小型化しようとする努力はこれまで何十年も続けられてきた。それがついに実用レベルに到達した。
 2009年の試作品では、砲弾の着弾誤差が50mあった。
 もしも狙った座標から150m以上逸れてしまうと予測された場合には、PGKはその砲弾を最終的に炸裂させない。それによってコラテラルダメージを防止する。
 その後、逐次に性能が改善された。2012年には誤差100フィート=32mに縮んだ。それから60フィート=19mになり、2015には10mになった。
 今ではPKGをとりつけた10発の砲弾のうち9発は10m内に落ちる〔?〕。
 PGKはどんどん単価が下がり続けている。
 155ミリ野砲を旧来の最大レンジの18kmで発射した場合、狙った座標から267m以内に落ちる。それがレンジに関係なく10m以内に落ちるということは陸戦の革命なのである。
 米陸軍はPKGを2013からアフガニスタンに持ち込んで評価を続けている。
 他のユーザーは、米海兵隊と豪州陸軍である。豪州はその前はエクスカリバーを用いていたが、PGKに切り換える。
 PKGを2発発射すれば、エクスカリバーと同じ仕事をしてくれる。コストは、それでもエクスカリバーの半分以下で済むのだ。
 エクスカリバーのメーカーは、センサーをGPSとレーザーの二本建てにして、レーザー誘導にした場合の着弾誤差を2m以内にしようと考えている。
 エクスカリバーにはスウェーデンの技術がいろいろ採用されている。砲弾の射程を延伸する工夫もそのひとつで、レーザー誘導で誤差2mでしかも射程40kmというスゴダマもいずれは実現するはず。
 120ミリ迫撃砲用の誘導砲弾は、2011年から米軍にはある。
 次。
 2冊の新刊。
 以前から頂戴していたものの時間がなくて読みきれていなかった。ようやく通読したのでその感想だ。
 まず小峯隆生氏著『蘇る翼 F2-B』。
 2011-3-11震災津波でやられた松島基地のF-2について、「なんで飛んで逃げられなかった?」という疑問にこの本が6年ぶりに答えてくれた。
 エンジンを始動する前に、3系統のコンピュータのビットチェックのプロセスを済ませなければならない。機体自体のセルフチェック。これに20分かかる。そのため、津波警報に接してからビットチェックを含めてF-2を飛ばすまでにも30分以上かかってしまう。機体とパイロットはなんとか逃げられるとして、問題は整備員。整備員全員が安全な高地まで避難するのには20分以上かかることが事前の訓練で分かっていた。F-2を全機飛ばしていたら、整備員が逃げ遅れて死んでしまうだろう。だから整備員の温存を優先し、ハードウェアの温存は二の次とした。
 この基地司令の判断はまったく正しいと思った。ハードウェアは所詮カネで買えるものだが、熟練整備員はカネじゃ買えねえ。
 大きな地震では、駐機中のヘリコプターのローターもゆさぶられてその先端が地面を叩いてしまうのだという話も生々しい。となると地震時にはドローンがいちばん使えるってことか?
 もう1冊は桜林美佐氏著『自衛官の心意気』。
 幹部自衛官は退官までに20回の引越しをせねばならず、そのコストは、支給される異動旅費手当を大幅に上回っているため、ボーナスがすべて引越し代で消えるという実感だと。これはダッフルバッグ1個で基地から基地へとさすらうことができた営内居住者のわたしには新鮮な話だった。家族持ちがこんな私弁を次から次とさせられていたのではさぞ大困りだろう。私有車を北海道から沖縄へ持って行かなくてはならない転勤者がいたとして、直航のフェリーなんてないから、陸上自走区間のガソリン代を含めるとそれだけでも10万円以上かかるはずだ。
 そこで思った。現役自衛官の引越しだけ専門にやる民間会社をOBが作ったらどうなんだ? しかもその会社の社員は全員、予備自衛官さ。つまり有事には器材も人員もそっくり自衛隊と合体するわけだよ。誰にも文句はねえだろう? その会社でついでにフェリーも2隻ぐらい持ったってバチは当たらねえ話だと思うよ。
 「ブラックウォーター」のクロネコ版だよ。引越し屋なのに、ヤケにガタイが良くて目配りが鋭いというね。
 もうひとつ。自衛官の転勤者が、僻地の駐屯地のすぐ外で中古車を売ったり買ったり、合理的に安全で格安に使いまわせるような全国ネットの民間会社を、やっぱりOBが創りなよ。私有車両に日本一周旅行させるんじゃなくてさ。その方がずっとエコだろう。在日米軍基地ではどこでも基地内で大っぴらにやっていることだから、みんなそこで仕組みを勉強したらいいんだよ。
 防衛省も、中途退職や定年退職する隊員たちに「起業」を教えるコースを駐屯地/基地ごとに用意しなよ。
 みんな、大きな保険会社の使い捨て社員として老年を終えたいのか? それとも、小規模なりといえども定年なんて無い民間会社の幹部になって、家族にも、仲間にも、後輩にも感謝されたいのか? 答えは出てるよな?
 次。
 大沼国定公園の水質をめぐる政治の話。
 国定公園である大沼は、七飯町と森町の行政区画に包摂されていて、函館市には管理責任がない。森町は北岸(北海道駒ケ岳の側)の一部で沼に接していて、残りの岸はぜんぶ七飯町。
 この沼の水は、鹿部町を横切る折戸川という1本の川から太平洋へ注ぐか、取水口トンネルから南方の峠下にある北電七飯町発電所の水力発電タービンへ導かれた後に、函館市を南流して津軽海峡に注ぐ河川系に合流する以外に、「出口」を持っていない。
 これに対して大沼に流入する水系は、とりわけ七飯町の広範囲の山林農地に降った雨水が直接に、またはいったん地下水となったあとに地表に現れて最終的に複数の流路にまとまったものである。
 ここから必然的に「大沼への家畜屎尿の流入を気にする人」と「家畜屎尿の処理には金はかけたくない地域農家」との摩擦が生まれる。
 大量の家畜屎尿はそのまま原野に捨てることが許されていない(微々たる分量を畑に肥料として撒くことが認められているだけ)ので、畜産農家は自前で屎尿処理設備を造らなければならない。しかし地元産の豚肉や牛肉の市場需要が増し、いま家畜の頭数を増やせば儲かるのだと思われたときに、限りのある資金の多くを、屎尿処理設備の拡充に使ってしまいたいと思う農家は居るまい。
 もし、自治体が税金で共同屎尿処理施設を作ってくれず、そのいっぽうで、めったに人など通りはしない山林原野の広大な私有地に結界して立ち入り禁止として、そこへひそかに屎尿を捨てている限りは誰にもチェックされないという環境があったとしたなら、小規模畜産農家はその誘惑に抗し切れるだろうか?
 この脱法的に投棄された屎尿が他の「合法的な垂れ流し」ともあいまって最終的に大沼の水質を悪くしつつあるのかどうかは、第三者機関に委託して沼の水質を複数ポイントで定期的に調べてもらうだけでも科学的に検討容易となるはずであるが、関係自治体(の議会)は、事態の究明をできるだけなおざりにあいまいにすることを選択しているかのようである。(ある年のデータが前年のデータとまったく同一だと報告されているとしたら、統計学者は果たしてそれがまじめな調査なのかどうかに懸念を抱くことだろう。)
 背景事情を想像することは難くはない。町に最多の税金を納めている地主集団の意向は、町に比較的小額の税金しか納めていない観光業者等のグループの意向よりも、尊重される。
 わたしは大沼で泳いだり釣りをすることもないので、その水質が富栄養化しようが、藻類が異常発生しようが、とりあえず関係はない。
 しかし昨今の全国の水害ニュースを見聞きするにつけ、最低限の注意喚起だけはしておくべきだろうと考える。
 近い将来にもし大沼で撹乱的な増水が起きたときに、その溢れた湖水は、衛生学的にクリーンであるとは保証されていない。殊に水遊びが好きな児童の保護者は、留意を要する。