海賊「起業」の時代が到来したようだ。

 Claude Berube and Chris Rawley 記者による2017-8-2記事「Dueling NGOs on the Seas: ‘What Ships Are For’」。
    「難民の海」では、コーストガードなど政府機関だけでなく、NGOが問題に介入しつつあり。
 これから10年で、3000万人ものアフリカ人がヨーロッパにやってくるという。これは商売になる。
 第一期の「海上のNGO」は、地中海における水没者救助を目的としていた。
 MOASという団体は、捜索救難を標榜していた。
 それに対抗するように、とうとう、難民ボートの欧州岸達着を洋上にて阻止せんとするNGOが現れた。代表格が、「ディフェンド・ユアロップ」という団体。
 この団体は船を1隻チャーターしジブチ国旗を掲げていたが、今は船名を『C スター』と変え、便宜船籍をモンゴルに登録し直した。
 同団体はこの船をシチリア島に置き、そこから出動させて、難民を追い払いたいと思っている。
 しかしスエズ通航の際にも、またキプロス寄港の際にも、さまざまに妨害され、まだシチリアに到着していない。
 ちなみに、漁業資源保護のため、違法操業の取り締まりにもNGOが加わっている。シー・シェパードは複数の船艇で複数の漁場をパトロールしている。あるケースでは違法トロール船を1万海里追跡して当局の臨検に持ち込んだ。
 地中海では2014年以降、すくなくも15隻の改造ヨット、改造タグボート、改造救難船艇がNGOによって運用され、数百人の雇われクルーと無人機まで搭載して、捜索救難活動に従事中である。
 2010-5-31に、イスラエル当局は『ガザ自由艦隊』と名乗る1隻の船を強行臨検し、そのさい、船内で10人が射殺された。NGOは、その船は人道支援をしていたのだと主張しているが、イスラエル当局は、単にパレスチナゲリラのための武器の運び屋だとしている。
 2011-6には2隻目が出港前にイスラエル当局から阻止された。保険会社とインマルサットが、テロ幇助嫌疑で捜索された。
 NGOの寄付金集めに使われるオンラインプラットフォームの「ペイパル」は、「ディフェンド・ユアロップ」の口座を凍結した。ヘイト、暴力、人種的不寛容を呼び起こす活動をしている団体には、使わせないというポリシーがあるので。
 ホープナットヘイトという団体は、クラウドファンディングのプラットフォームであるパトレオンに対し、DEを支援しているカナダ人ジャーナリストの口座を閉鎖せよと圧力をかけた。HNHは、別の英国のコラムニストの記事を載せるな、と新聞社にも圧力をかけている。
 DEは船員をスリランカで徴募して空路でイタリアへ送り込もうとしたが阻止された。
 シチリア当局によれば、捜索救難を標榜しているNGOの一部は、密入国斡旋屋(ヒューマン・トラフィカーズ)からカネを貰っており、共謀関係にある。
 アフリカ人たちは洋上で悪徳NGOにひとりあたり1500ユーロを渡せば、NGOが救助名目でそのままイタリア海岸まで運んでくれるともいう。
 捜索救難NGOと結託などせずとも、地中海にこれほど多数の難民ボートがうようよしていれば、その中にまぎれて武器や人身を不法に売買する海賊稼業は容易となるはずである。
 「ディフェンド・ユアロップ」は、以前は「紅海洋上予備役教練団」と称していた。ソマリア海賊から商船が自衛するための軍事訓練を、インド洋全域(約36箇所)で施していた。
 ホープナットヘイトにいわせると、『C スター』には民間軍事会社の武装チームが乗り組んでいるはずだと。
 しかしこれは疑わしい。アフリカの角沖には監視カメラが無いので良い。地中海はテレビカメラだらけである。そんなところに傭兵が顔を出すか?
 それにプロ傭兵というものは最低レベルでも料金が箆棒である。1隻の船をようやく借りた段階のNGOには、雇う資金が無いだろう。
 DEは2017-7-29時点で2000人以上の個人から16万3000ドルの寄付を集め得たにすぎない。プロ難民NGOとは規模が違いすぎる。
 『C スター』級のサイズのフネになると、1日動かすだけで、3000ドルから1万ドルの、燃費+船員日当が生じるはずである。
 おそらく2週間運航するのがギリギリだろう。