米日支は軍艦を1隻4年で建造している。英は6年。露は数千トン級ですら7~9年。ヤバイ。

 Jonathan Saul 記者による2017-8-7記事「Cyber threats prompt return of radio for ship navigation」。
  世界の貿易は9割が船でなされている。
 ところが航空機が多重のバックアップナビ手段をもつのにくらべて、いまの商船はGPSが妨害されたらお手上げだ。混雑海峡では事故必至である。
 そこで「イーロラン」という地上波を使うバックアップナビゲーションシステムが提唱されていて、いま、韓国がそれに乗って開発中。米英露も、この方向を考えている。
 GPS電波は、太陽嵐/太陽黒点活動によっても掻き乱されてしまう。
 昨年、北鮮による大規模GPS妨害があり、韓国漁船が一斉に帰港しなくてはならなくなった。
 2017-6にも黒海で、ロシアによるとみられるGPS妨害事件が発生。
 米コーストガードによると、港湾名は伏せられているが、同様事件が、2014に1つの港で数時間、そして2015には別の港であったという。
 2017-6には、「A.P. Moller-Maersk」社の船舶管理システムがサイバー攻撃を受けた。全世界の港湾業務に支障が生じた。
 韓国政府は「GPSの父」と呼ばれる米国人技師ブラッド・パーキンソンを招聘して「イーロラン」を開発してもらっている。
 パーキンソンいわく。
 イーロランは海上の二次元座標を比較的に粗い精度で知らせ得るにすぎないが、その電波はGPS衛星電波よりも強力であり、しかもGPSとはまったく波長帯が異なっているところが利点である。GPSに対する意図的ジャミングや偽信号送出は、イーロランを併用する船舶にとっては、決定的な妨害にはならない。
 静止衛星からのナビゲーション信号は、1万2500マイルも離れたところから届くものなので、微弱。妨害することは、いとも簡単である。
 しかしイーロラン信号の電界強度はGPS信号の130万倍も強い。それだけ妨害は受けにくい。
 今の船員たちは紙の海図は読めないし、GPSと自動航法ソフト頼みになっている。これが弱点。
 韓国の海洋漁業大臣によると、韓国版イーロランの地上局は2019年までに3箇所で試験電波を発するであろう。基地局はさらに増やす。
 しかし122m~137mのアンテナ塔を立てるため、基地局ひとつにつき12km×12kmぐらいの敷地が必要になる。
 ※原文には132200平方メーターとある。この面積値は一桁大きいように思う。それとも地面にカウンターポイズの放射配線が必要なのか?
 この用地買収にローカル住民が抵抗中である。たとえば西海岸の「ガンワ」島。
 7月、米連邦議会下院は、交通省がイーロランを創建するための予算法案を可決した。
 上院も賛成すれば、予算法となる。
 じつは前のオバマ政権も、その前のブッシュ(子)政権も、イーロランをやると公約していたが、ただのリップサービスだけに終わっていた。今回は、実現しそうなムードである。
 ロシアも似たようなシステムを検討中。「イーチャイカ」と呼ぶ。北極海にぜひ展開したい。しかし事業は頓挫中。政府にカネがないのだ。
 欧州勢は「おれたちのガリレオ・システムはGPSより妨害に強い」とイキがっている。
 ガリレオは偽信号に乗っ取られることはなさそうだが、電界の弱さはGPSと変わりなく、使用周波数帯もGPS類似である。
 多くの国が地上波ナビ建設に消極的なのは、全世界の海洋を同じ方式で覆うことが、とても数年以内には無理な話だから。
 欧州では英国だけが、イーロランの送信タワーを北部に1基、維持している。これは米英合弁の「タヴィガ」という私企業によるもの。
 もう1局を英本土内に建てれば、時刻サービスができるようになる。しかし英政府が関心を示さない。
 今の英国政府は、ポリシーとして、「巨大インフラの運用には政府はもうかかわるな」という方向。イーロランはモロにそれに該当するのだ。