「読書余論」 2017年9月25日配信号 の 内容予告

▼土肥一夫・監修『海軍 第六巻 太平洋戦争2』S56-8
 タウイタウイには石油はあったが、陸上滑走路がない。だから空母が海に出て飛行訓練させるしかないのだが、5月に米潜が蝟集してきたため、それが不可能になった。
 陸軍の「まるゆ」艇は、味方〔海軍〕からの攻撃を受けたこともあった。
 戦争が立体化しているS19時点ではGF長官が軍艦に乗って「指揮官先頭」を実践しても一益もない。むしろ大本営陸軍部との緊密な連絡が求められた。
 爆撃を回避しやすくするためには、事前に、風に向かって艦首を向けておく。なぜかというと、思い切り転舵したときに外側の舷側に風があたってくれるので、その分、舵の効きがいっそうするどくなってくれるわけである。
 雷撃を回避する方法は、艦首か艦尾をそっちに向ける。それしかない。
 AF神話。日本海軍のD暗号は「2冊制」であった。したがって、もしD暗号を解読したのならば、「AF」ではなく、いきなり「ミッドウェー」と解読できたはずだ。それが「AF」とだけ分かったというのは、要するに、暗号書の現物を彼らは手に入れていたのだ。
 S17-1-20にポートダーウィンで撃沈された「伊124潜」よりももっと前から、彼らはそれを取得していたと考えられる(p.183)。
 ついにS20-5月15日には下関海峡は「閉鎖」された。
 横浜港と東京港も5月末までに閉鎖された。
 S15から3年間で作られた油槽船(タンカー)はわずか6万トン。これに最優先を与えたのはなんとS19で、この過誤は取り返せるようなものではなかった。
 ※これが、統制経済=共産主義経済は必ず失敗するという一つの証し。
 『翔鶴』の機関部兵曹長の証言。機関長が「機関科総員退去」を命ずる。配置を去って飛行甲板を目指して昇る途中で、30分をかけて、軽質油庫からドラム缶、石油缶を運び出し、それを海中に投げ込む。これが漂流筏になるのだ。付近の応急用丸太もすべて投げ込む。
 米軍のパターン。圧倒的な支援のもとに前進し、陣地を築く。夜間はいったんそこから退いて、ひとつ後ろの陣地へ。そして翌朝また前進する。そのようにして逐次に陣地を前へ前へ出して行く。
 1945-3にマリアナに配備されたB-29は385機。これが終戦時には986機に増えていた。
 B-29は1944にスマトラ島のパレンバンにも機雷を投下している。
 上海、南京(揚子江)、サイゴンやシンガポール港にも撒布した。
 1939-10-11にFDRをザックスという男が尋ねて、アインシュタインの署名のある手紙(8-2付)を読み上げた。1発で港全体を破壊できるウラン爆弾をドイツが先に造ってしまうかもしれないというもの。シラードとフェルミは基礎実験を済ませていて見込みがあること。
 FDRは一晩考え、翌朝ザックスに、「よしわかった」と返答した。
 ウラン委員会はすぐに立ち上げられたが、全科学者を総動員することが決まったのはさすがに真珠湾直後だった。
 マンハッタン計画は1942-8発足。
 フェルミは1942末に、早くも最初の核連鎖反応に成功した。
 なぜアインシュタインは「港全体を」と表現したのか。彼は、原爆は重すぎてとても飛行機では運べないと直感していたのだ。フネで運ぶしかないから、「港湾」だけがターゲットになるのだ。
 B-29から投下する爆弾にすると決められたのは、1943-9であった。
 日本の都市目標の選定作業は、グローブズ少将が担任。グローブズは京都を一番に推した。盆地で百万の人口があったから。それに次ぐのが小倉、広島、新潟だった。
 しかしスチムソン陸軍長官が、戦後のことを考えると京都はダメだと言って目標候補から外させた。そこで代りに、長崎がリストに加えられた。
 S20-4時点で海軍艦艇は重油に大豆油を混ぜていた(p.271)。
 B-29×1機が飛んでくると270戸強が焼失する。この調子だと9月末までに人口3万以上の都市は消滅すると試算された。
 S20-2までは高々度からの工場爆撃。
 3月から5月までは夜間焼夷弾による低空大都市爆撃。
 6月以降は、低空中都市爆撃。
 都市居住者の四分の一、850万人が疎開した。
 日本陸軍の軍人と軍属の戦死は183万人。
 海軍の軍人と軍属の戦死は57万人だった。
 陸海軍の廃疾者は合計10万人以上。
 空襲による銃後の死者は、原爆が32万人だったとすると、全国合計70万人。
 唯一、日本国内の水力発電所が、損害ゼロだった。
 終戦時に海外にいたのは、陸軍310万人、海軍45万人、一般邦人300万人。
 この一般邦人は日本本土に引き揚げなさい、という命令は、連合軍は出していない(p.285)。全員、自主的に戻ったのである。
 米国は、リバティ輸送船V型を100隻、LST輸送船Q型を85隻、日本政府に貸し出し、これで引き揚げが進捗した。
▼小松左京『虚無回廊 I & II』徳間書店1987-11pub. 初出は1986~1987
 知能は初めから生命を超えている存在なのだ。生命は知能にとって制約にすぎない。生命の制約をときはなしてやった知能。それが人工実存=AEの目的だ。
 電磁カタパルト=エムパルト。
 自己意識だけで、生存限界にしばられた「肉の器」がないのならば、それは実存とは呼べず、むしろ「人工霊魂」「人工精神」ではないのか。
 死すべき自己についての絶望的自覚をぬきにして実存はなりたちうるか。
 太陽系が誕生して50億年。地球がうまれて45億年。地球生命が発生してから35億年。
 その間、一度も、証明できるような形で、他の天体の宇宙生命や、知的存在に遭遇しなかった。
▼ジョン・G・ロバーツ著『三井――日本における経済と政治の三百年』S51-6 つづき
 対米戦争の結果、日本の国財の喪失は、500億ドル相当。これはGNPの10年分にあたり、関東大震災被害の5倍であった。
 米軍が投下した16万トンの通常爆弾のうち10万トンは対都市無差別爆撃にあてられた。残り6万トンが、軍事目標と産業施設に配分された。
 何人かの進駐軍将校は、債券や銀行預金の凍結で窮地におちいっている日本人から、有価証券、不動産、絵画などを脅し取った。特に日本語のできる弁護士は占領時代に成金になり、占領後も億万長者として日本で生活している。
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