テレメトリーによる起爆シミュレートがなかったということは、北鮮技師にも何km飛ぶのかは事前に分からなかったのだ。

Jenny Lee 記者による2017-9-16記事「Former CIA Chief Warns of N. Korea’s Other Nuclear Weapon」。
   韓国VOAの記者が、前のCIA長官ジェームズ・ウールジーにインタビュー。
 ウールジーいわく。北鮮はICBMを開発する必要はない。衛星を打ち上げればいいんだ。その衛星に核弾頭を内蔵させて、地球を周回させておけばいいのだ。〔ICBM級のRVを完成する必要はない。なぜなら再突入させずとも軌道上で爆発させればEMP兵器となるから。〕
 聞き手いわく。北鮮は米国上空でEMP兵器を爆発させようとしているんですか?
 ウールジーいわく。するだろうね。適当なところで爆発させれば全米の電力網がダウンする。これならミサイルの精度とか命中率とかも何の関係もなくなるわけで、まさに北朝鮮の技術レベル向きだ。
 電力がダウンすると、米国民は、食料も上水も得られなくなる。電話も、病院もダメだ。
 普通のICBM開発も追求し続けるだろうが、今、北鮮が実行できるのは、米国上空での核爆発によるEMP攻撃。これだけだ。
 再突入体を熱と摩擦衝撃から守るシールドを北鮮は、まだ完成できていない。しかし再突入させずに宇宙空間で爆発させてしまうなら、再突入に関連したハードルはすべてパスできる。技術的問題はなにもなくなるんだ。
 サダムやカダフィーの轍を辿りたくなければ、いつでも核を使うぞと全方位的に世界を脅かし続ける以外に、三代目の選択はない。
 そして米国にはもう支那しか残されていない。この問題では支那しか頼れない。
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 KIM GAMEL 記者による2017-9-17記事「N. Korean missile test raises questions about why allies didn’t try to shoot it down」。
   加州選出共和党下院議員のダナ・ロラバチャーは9-12に下院外交委員会で発言した。「北鮮へのメッセージとして、また米国に頼っている日本国民へのメッセージとしても、日本上空に飛来した弾道ミサイルは米軍が撃墜すべきではないのか」「米国がいつでも武力を行使できることをデモンストレーションしてみせない限り、北鮮政府も日本人も、米国にその気があるとは思わないだろう」。
 『NYT』の報道。北鮮のMRBMが発射された9-15(金)の1日前から、弾道ミサイルが発射台上で燃料注入されていることを米国政府は知っていた。マイク・ペンス副大統領は諜報機関ビルの中でその画像を見せられいた。しかしトランプ政権はそのミサイルを破壊しようとしなかった、と。
 ※北鮮は、米軍の偵察衛星が通過するときに、わざわざよく見えるように、フェアリングの中身がカラッポであることを示したのかもしれない。
 フーバー研究所のマイケル・オースリンいわく。もしも迎撃を試みて外したら、その政治的リスクが大きい。いままで大金を注ぎ込んできたMD政策が空疎であることが天下にバレてしまうから。
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 ストラテジーペイジの2017-9-17記事。
   アゼルバイジャンにイスラエル設計の「オービター」というUAVを製造させ、輸出もさせようという商談に邪魔が入っている。
 アゼルバイジャン軍が無人機を越境させて自爆させ、アルメニア軍兵士2名が負傷したためだ。
 機体はイスラエル製の「オービター2」に2kgの爆装をほどこした「1K」という新商品だった。2015にできた型。
 操縦はイスラエル企業の者が行い、それは商品のデモンストレーションだったという。
 イスラム圏で例外的にイスラエルと密接なのがアゼルバイジャンだ。
 アルメニアはイスラムではない。そしてロシアが強力にバックアップしている。
 「オービター2」は自重10kg弱。電池モーターで高度3200mまで行ける。
 カタパルトにより発進し、回収はパラシュートによる。
 アゼルバイジャンを契約メーカーとすることにより、ほんらいイスラエル製品など買ってくれるわけのない他のイスラム圏にも、イスラエルは兵器を売って儲けることができるのである。
 ※謹告。兵頭版白書は今年は出ません。あのシリーズは3号で終わりました。今後は1テーマにこだわった国防トピックス本をいろいろな版元から出して行きます。次の最新刊はまずかねてから約束をしている飛鳥新社の懇意の編集者さんに原稿をお見せするつもりですけれども、自衛隊の欠点を論ずる本でありながら著者の関心がAIとシンギュラリティの未来に集中しているので、このおもむきが同社の中枢から敬遠されてしまった場合には、あらためて他社へ売り込むことになるでしょう。いずれにせよ革新的な本になるのでご期待ください(北鮮核ミサイル絡みの話もこの中に集約できると思います)。『大統領戦記』シリーズも、とうぶんお休みです(Vol.2で事実上の完結の可能性が濃厚です。これはまったく著者の調査力=視力の制約が原因です)が、草思社さんへは来年に、新規な軍事系の1テーマ本を提案するつもりです。毎回すばらしい編集をしてくれる徳間書店さんからももっと立て続けに出したいんですが小生の生産力に限りがあるため(と同時に小○左○の悪口を徳間で書くわけにもいかないため)、次の企画提案は来年になってしまうでしょう。とりあえず10月第一週の水爆級の新書(講談社)をお楽しみに!