「読書余論」 2017年10月25日配信号 の 内容予告

▼『US Naval Technical Mission to Japan: Reports in the Navy Department Library』
 米海軍の技術調査団が1945-9-23から占領初期に調べ上げた報告書。
 満州大豆を輸送する船もなくなった末期、日本海の海流を調べようと瓶を朝鮮半島東岸から放流したところ、その9割は本州北部に漂着した。※今の北鮮は、風船爆弾の機雷版を使えるわけ。
 日本人の数少ないユニークな大発明だと認められたもの。航空機用格納庫の大屋根を、最少量の鉄材で支えることのできる「ダイヤモンド・トラス」という構造。
▼玉貫光一『シベリア東部生物記――ウスリー地方を中心として』S55-2
 コウモリはなぜ電光形に急転回できるのか? それは、翼が伸縮自在のためである。
 沿海州南部のウスリースッポン。産卵のとき、川から陸に上がってくる。
 南樺太の海岸の漁師番屋に侵入した羆が数の子の俵を破って飽食し、そのあと小川で水を飲み、数の子が膨れて胃が破裂して死んでいる個体を見たことがある。
 狼の尾はいつも垂れ下がっている。とがった耳はいつも前後にぴくぴく動いている。耳が下向きに折れ曲がって垂れることはない。
 カワウソは陸上ではのろまで、さりとて潜水中にも気泡を出すので、簡単に人間によって絶滅寸前まで追い込まれてしまった。
 ツンドラやタイガの昆虫は種類は少ないが個体数は多い。そして夏の日はおどろくほど長いから、鳥にとっては雛を育て易い。だから白鳥は夏はツンドラに営巣する。
 8月に発生するヌカカは針の目も通る小ささにもかかわらず、刺された皮膚は腫れあがり、人によっては後遺症すら発症。藪蚊と違って夜も襲来。焚き火の煙以外に、免れる術無し。
▼森本敏・浜谷英博『早わかり国民保護法』2005-8
 ドイツでは国土が戦場になったときに住民は「お上」の許可なく勝手に避難してはいけない。
 ただし、シェルターが人口に対して確実に足りない人口過密地域では、有事に住民は避難させることがあらかじめ決まっている。
 諸外国では、戦時の民間防衛がさいしょからあって、その組織が自然災害にも対応する。日本とは発達の経緯がさかさま。
▼土屋武之『鉄道の未来予想図』2013-6
 戦前から蓄電池式の電気機関車はあった。貨物専用の「須加線」を走らせていた。沿線に陸軍の弾薬庫があり、架線とパンタグラフとの間のスパークが忌まれた。
▼秦郁彦『官僚の研究 不滅のパワー・1868-1983』1983-5
 敗戦後に各省は、省内外から「英語使い」をかきあつめて対GHQの折衝・接待に注力した。ところが内務省だけはこの努力を怠った。それで徹底解体されてしまった。
▼李登輝・浜田宏一『日台IoT同盟』2016-6 pub.
 米国でいろいろなゲーム戦略の優劣を、コンピュータによる総当りシミュレーションで試した。主宰したアクセルロッドの結論。初めは協力すべし。そしてもしも相手が裏切って敵対してきたなら、そのときは確実にしっぺい返しを行なえ。これがいちばん得点が高い、外国との付き合い方。
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 「読書余論」は、主に軍事系の古本を、兵頭が注目した一斑の摘記や読書メモによって紹介し、他では読めないコメントも附しているものです。
 あまりに多すぎる過去の情報量の中から「兵頭はここは珍しいと思いました」というポイントだけ要約しました。
 大きな図書館に毎日通えない人も、最低費用で、過去の軍事知識のマニアックな勘所に触れることが可能です。
 また、ミリタリーしか読んで来なかった人には、他分野の情報が、何ほどか有益かもしれません。
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