ロシアは北鮮が事を起こすのを待っている。極東事変と同時にバルト三国を占領してしまう気だ。三代目はその期待も理解している。

 ストラテジーペイジの2018-1-1記事。
 さいきん脱北してきた北鮮兵の血液検査をしたら、炭疽菌に対する抗体ができあがっていた。すなわち、炭疽菌ワクチンの予防接種を受けていた。
 ワクチンは北鮮の全国民分はとうていない。全兵士分もない。
 しかし、炭疽菌を製造したり輸送したり兵器に搭載したりする関係者には接種するはず。
 そしてまた、開戦奇襲で炭疽菌で汚染した地域に突入する予定の部隊に対しても接種しておくだろうと考えられる。
 三代目は2015に新装開店なった平壌微生物研究所を視察して宣伝している。
 炭疽菌は自然界では草と土にについており、羊は根こそぎ草を引き毟るのでよく炭疽病に感染する。
 羊毛業者や、皮剥ぎ業者も、しばしばアンスラックスに罹る。
 この炭疽病を兵器化してみたのは英国が早かった。WWII中である。
 ドイツがワクチンを開発する前に使えば有効なはずだった。
 炭疽菌の胞子は自然状態では空中を長距離漂ったりしない。
 長距離を漂う兵器にするには、胞子同士がくっつかないように工業的に処理しなければならない。
 そこまでしても胞子は日光で死んでしまう。
 すくなくも1万個以上の胞子を吸い込ませないと、人は死なない。5万個でも死なぬ人もいる。空気中にバラバラに漂わせれば、それだけの数を1人に吸い込ませることができない。難物なのだ。
 過去最悪の炭疽菌事故は、ソ連のスヴェルドロスク市郊外の生物兵器工場から漏洩した1979のケース。数千人の付近住民が炭疽菌の強化株に感染してしまったが、死者は100人に達しなかった。
 しかもほぼ全員が老人か慢性の肺疾患持ちで、健康な兵役適齢者の死者はゼロ。
 威力としては、その程度である。
 この犠牲者たちは、ソ連政府が生物兵器事故であることを公式に否定したがために、正しい治療を受けさせられずにまったく放置された。それでも100人は死ななかったのである。
 その後、ソ連政府は、死者たちは炭疽菌に汚染された食肉を口にしたために死んだのだと公式発表を訂正。
 ソ連崩壊後、現地に始めて西側の調査チームが入り、生き残った人々の血液を調べた。人々は、炭疽菌ワクチンは注射されていなかったが、もともとナチュラルな抵抗力を備えており、それが機能して感染症と戦うことができたのだと分かった。
 地球温暖化で炭疽菌がアウトブレークしたという例が、2016年の西シベリアにあった。40人が感染したがいまのところ誰も死んではいない。
 原因は、1968に自然流行した炭疽病でトナカイが大量死し、なにしろ永久凍土帯なので埋めた肉が腐り切らず、かなり残っていた。それが2016の35℃の暑い夏に溶けて再び胞子を放出したのだ。
 2012年には南シベリアで炭疽病の小流行があり、1人死んでいる。
 キルギスタン内で露軍が借り上げているカントという飛行場の20km郊外でも小流行があった。
 米国の炭疽菌テロは2001の話。封筒に炭疽菌が入っていて、1人死亡、12人罹患。
 問題は、こういう事例に社会と政府が反応して人々におびただしいワクチン投与を始めると、ワクチンに耐性をもった菌種が誕生してしまうおそれがあること。そっちの方がおそろしいかもしれない。
 炭疽菌の作用には大別して二種あり。
 皮膚がただれて激しく痛む症状のものは、真っ黒なシミ状からすぐに炭疽菌と診断されるから、ただちに抗生物質が投与され、完治する。痕は残るが。
 他方、肺から感染した場合は、感染後数日でインフルエンザのような症状を顕す。その場合は死が間近にあると言える。
 というのも、非常に幸運に、それが炭疽菌のしわざだといちはやく気付くことができたときにのみ、抗生物質による正しい治療をしてもらえるからだ。たいていは、そうとは気付けず、インフルエンザと診断されてしまえば、手遅れになる。