新刊ご紹介

 並木書房さんから、ゴードン・ロットマン氏著、床井雅美氏監訳、加藤喬氏tr.の新刊『AK-47ライフル』を頂戴しましたので早速拝読。
 原著者はM-16系と比較してAK-47系列を高く評価しています。
 各種の実包の細かい違いとスペックが網羅されているところ、資料価値が高い。
 東欧で戦後も鉄薬莢を広範に使っていたのだとは知りませんでした。
 床井さんが原著に書いてない情報を補足しているところは例によって貴重です。
 米軍の兵隊用のM-14はフルオートができない仕様になっていたとは知りませんでした。
 カラシニコフ氏の前半生についての大きな謎、「捕虜のドイツ人技師からどのくらい助けてもらったのよ?」には、今の段階でも最終回答が出ちゃいないようだな、と感じました。
 シュツルムゲヴェールと内部システムが違っていることは、ドイツ人の設計関与がなかったことを保証しませんからね。
 設計した本人、開発の陣頭指揮を執った本人しか語り得ないエピソードがあるはずです。別に寸法や素材や加工の秘密なんかをバラす必要はない。国家にとって無難な、しかし外人には興味深い体験談を、昔話として、いくらでもできるはず。本人は西側のインタビュアーに対してそれらを語る機会がいくらでもあったことが本書からもわかる。ところが、そうしたエピソードが本人の口から自然にアドリブで飛び出すことはなかったようです。本人はそれを強く自戒していたんだと疑える。
 削り出しの自動火器にしか過去に関与してこなかった叩き上げの工員が、いきなりプレス加工指向の簡易量産の、公差最大の自動小銃をデザインできるとは不思議千万。
 設計も開発も、StGの経験をたっぷり有するドイツ人チームがやったんでしょう。
 カラシニコフ氏は、戦後ソビエト=ロシアの国家威信発揚の宣伝塔キャラにまつりあげられたのだろうとわたしは疑います。農民/労働階級出身の一介の工員が国家英雄級の偉業をなしとげたことに、マルクス主義国家は、しておきたかった。グラスノスチ後のロシア軍も、その神話遺産は維持したかった。だとしたら本人も死ぬまでそのキャラを演じ、神話を守り続けるほかになかったのだろうなと拝察しました。
 カラー写真満載で¥1800円+税。