ウエストサイズストーリー。

 Mark B. Schneider 記者による2018-3-12記事「Deterring Russian First Use of Low-Yield Nuclear Weapons」。
       2018NPRのひとつの結論。米国はトライデントSLBMの弾頭に、低出力水爆を採用すべし。それによってロシアが低出力戦術核の第一撃によって北欧で侵略戦争を成功させようとしている野心を挫かなければならぬ、と。
 ※GDPで14分の1にすぎぬロシアが米国に優っているのはストックの戦術核弾頭の数の多さだけである。だからロシアはこの自らの長所を最大限に活かそうとする。それを止めなくてはならない。
 ロシアの先制核戦争野心について最初に警告したのは2016-10のアシュトン・カーター長官。通常戦力ではもうNATOにかなわないものだから、戦術核の限定使用で勝とうとしている、と。
 大威力水爆を製造できる国が遭えて弾道弾に低威力弾頭を搭載することは珍しくはない。ロシアだけでもない。英国とフランスはSLBMに複数の低出力水爆弾頭を搭載している。
 ロシア政府が、出力可変式で精密に着弾してコラテラルダメジを抑制できる戦術核弾頭の開発や使用について承認したのは1999-4のこと。それは2002にロシア人ジャーナリストによって暴露されている。そのイールドはTNT換算で数十トンから数百トンというところ。すなわち0.1キロトン前後。
 CIAはこのロシアの意図に2000年から気付いていたことが、公開文書によって判明済みである。当時のCIA報告書にいわく。低出力で高精度の戦術核弾頭は、野砲の砲弾、空対空ミサイル、ABM弾頭、ASAT兵器、多連装ロケット弾に搭載され得る、と。
 ※野砲弾はナンセンスだ。盗難リスクが高すぎるし大射程ではそもそも「精密」に落ちないから。しかし空対空核ミサイルは現実的だ。これで西側のAWACSを落とせる。もちろんAWACSの整備工場所在地もBMで吹き飛ばす気だろう。
 2009の民主・共和両党の合同リポートいわく。ロシアは地下に貫徹して爆発する低出力の核兵器を開発中である、と。
 ロシアの国営メディアの報道によれば、すでにロシアのSLBMの「シネヴァ」および「ブラヴァ30」には、特別に低威力(0.1キロトン未満~0.2キロトン)の弾頭を装着したものがある。
 セルゲイ・イワノフが国防相だったときにいわく。ブラヴァ30SLBMと、RS-24「ヤース」ICBMには、同じ新型の弾頭が搭載されている、と。ここから、RS-24にも低威力弾頭のオプションがあることが示唆される。
 2004年にロシアのテレビは、新しい野砲のフッテージに添えた解説で、低出力核弾頭も発射できる、と解説。※バルト沿海諸国に向けた典型的なブラフ宣伝である。野砲から発射させる合理性がない。
 2013にロシアの元核兵器研究所の男いわく。野砲から発射できる口径152mmで出力1キロトンの核砲弾は、露軍全体に行き渡っている、と。※冷戦中にそのような砲弾があった。誰でも知っていること。ただそれだけ。この宣伝強調は、じっさいには古い野砲用の核砲弾が実用的でなくなっていて、新型短距離核SSMを必死で開発中であることを暗示する。
 2009にタス通信が宣伝。SSNの『セヴェロドヴィンスク』型は、低威力水爆弾頭の長射程巡航ミサイルを搭載するであろう、と。
 2018NPRいわく。ロシア軍は近接射程の核弾道弾を持っており、それは目の前の敵に対して用いるものであるがゆえに低出力であると。
 ポトマック研究所の男いわく。5000発ある露軍の戦術核弾頭のうち半分は、すでにサブキロトンの低威力水爆に更新されているだろう。それは防空用途にも投じられ、また、魚雷や巡航ミサイルにも使用され得ると。
 サロフ核研究所が2013にいわく。冷戦中、われわれはPNE(平和的核爆弾)を開発していたと。それは99.85%が核融合であったと。※米国の中性子爆弾と何も変わらない。米国人は幼稚にもニュートロンボムなどというおどろおどろしい名付けをしてロシアの宣伝機関に完全につけこまれて欧州反核運動が盛り上がった。当のロシア人は同じものにずっと響きの良い名前を与えた。国際宣伝戦のセンスにかけてはロシア人の方が上なのである。
 露人ジャーナリストいわく。S-300/400/500とモスクワABMには核弾頭を装置できる。それらを核SSMにも転用可能である、と。
 タスとスプートニクの二つの国営メディアも、S-300とS-400は地対地ミサイルにもなるものだと確認をしている。
 2007にロシア軍参謀本部次長が言った。5キロトン未満の低威力戦術核兵器をすでに開発したと。
 ロシア発の宣伝のひとつの特徴。じぶんたち自身がまさしく現在進行させていることを、米国がやっている所業だとして非難する。
 2009-3のタスの報道に注目。セヴェロドヴィンスクから発射される低威力核弾頭付きの巡航ミサイルは、米空母艦隊を狙うものであると。
 ※洋心に所在する敵に対する核攻撃で弾頭の出力を控える合理性がどこにあるのか? これは港湾に在泊中を狙うつもりなのだと考えると、初めて辻褄が合う。
 戦術核のコラテラルを減らすためには核分裂エネルギーを少なくして核融合エネルギーを増やさねばならない。要するに米国の80年代の中性子爆弾だが、ロシアはこれを完成するのに2000年代までかかっているらしい。
 ※これに関するロシア人の宣伝レトリックに出発点からして錯誤がある。中性子が地面に届く高度で爆発させれば、その中性子照射が地表の物質を放射性同位体に変えてしまう。そのうえに火球が地面に接触する低高度爆発なら、強放射性フォールアウトが必然的に発生し、エネルギー源が核分裂だろうが核融合だろうが関係なく、広範囲且つ長期の民間汚染をもたらすからである。
 2010年のヴォストーク演習で極東軍区の軍隊新聞は書いた。分離主義抵抗集団のセンター市街区をぶっ潰し、かつ、わが軍の損耗を最小にするために、低威力の核攻撃が敵に対して加えられる、と。
 ※中共がシベリアや樺太で分離運動をそそのかすと想定しているわけ。
 そしてこの演習で、S-300の核弾頭タイプを、地対地ミサイルとして使用する想定が実行された。
 ※これでどうしてロシア政府が日本の地ージス案を非難するのかが分かる。SM-3に核弾頭を搭載すれば中距離弾道弾になるじゃないか、と言いたいわけ。てめえらがやっていることをもって他者を非難して来るのが連中の手癖也。
 〔欧州の?〕米空軍基地に対してロシアが10発のありふれた核ミサイルで先制奇襲すれば、その時点でアラートになっていなかったすべての米軍機は報復のために飛び立つことはもうできなくなる。
 CSISの2007リポートいわく。ロシアは米本土の3箇所の核爆撃機基地と2箇所のSSBN基地を、5基の核ミサイルだけで壊滅させられる。
 すると欧州のために米国が使える核運搬手段は、すでに海に出ているだけのSSBN〔とICBM〕が担うより他はない。
 在欧の5箇所のB-61貯蔵所も、とうぜんに核奇襲で破壊されているだろう。