アルカイダではなくアルカイジだった

 ストラテジーペイジの2018-5-8記事。
   モサドがイランから核計画書類半トンを持ち帰ったのが1月だった。
 これが明らかになってイラン政府はショックを受けた。まず、防諜がザルであったことに。
 またこの窃取作戦でイラン人の誰も死傷していないことは、要するにイラン人たちがカネで大量の書類を売り渡したことを示唆する。すなわちテヘランの宗教独裁政権に国民は愛想を尽かしているのだ。
 イスラエル政府は書類について4月末に公表した。そして直後のイラン世論調査の結果は、イラン国民はそんなことについては何の関心もないことを示した。
 イスラエル政府の意図は、トランプをして5月12日に、対イランの2015条約から脱退させることにある。
 盗み出された文書は、過去にイランに核開発計画が存在したことを示す。そこから推測されること。今もさまざまな科学研究事業としてその目的は継続されているのではないか。
 イラン政府は公式には核開発計画の存在を認めたことはない。
 しかしイラン国民は、地域大国としてじぶんたちが核ぐらい持つのはあたりまえだろうと思っている。なにをいまさら、という態度なのだ。
 イラン国民は、2015条約で制裁がなくなったはずなのにいまだにイラン経済が好転しないことについて不満である。その不満は独裁政権への抗議運動にあらわれている。
 イラン政府は、イスラエルを滅ぼしたくてたまらない。しかしイラン国民は、イスラエルが〈反テヘラン政府の同盟者〉であると感じている。
 それどころではない。米英軍は2003に3週間でサダム体制を終焉させてみせた。おなじことをテヘラン政権に対しても米軍がやってくれないかと、イラン国民は期待さえしているのだ。
 ちなみに1980にイランは同じサダムを打倒しようとして失敗。10年近くも泥沼戦争に苦しんだ。
 イランの弱点は、カーグ島の石油・ガス積み出し港。エネルギー輸出の9割がここからなされている。
 この石油とガスの輸出により、イランの国家予算の三分の一がまかなわれている。
 積み出し港施設がイスラエル軍機の爆撃で破壊されると、その修復は短時日ではできない。
 イラン第二の弱点は、南部のバンダルアッバス港。
 ここはコンテナ荷役港としてイラン最大なのである。輸入品の9割はここを経由する。
 たとえばカーグ島が破壊されたとした場合、修理部品が、このバンダルアッバスから輸入される。だからバンダルアッバスも同時に空爆されてしまうと、イランは経済的にダルマになる。
 湾岸アラブ諸国はすべてスンニ政府である。イスラエル空軍機がシーア本山のイランを空爆するのに、彼らの領空をよろこんで提供するであろう。
 シリアのアサドはイランの同盟者だが、反政府ゲリラとの内戦で手一杯で、対イスラエル戦争になど参加できない。アサド支援に送り込まれているイラン人傭兵隊も同様。
 レバノンのヒズボラは、対イスラエルの本格戦争には、まったく乗り気ではない。
 彼らもすでにシリア内戦介入で数千人が死傷している。疲弊しているのだ。
 イランがシーア派のヒズボラをシリアへ送り込んだのは2012年からで、彼らの戦闘手当、軍人恩給、医療保険、死亡見舞金などもイランが負担してきた。しかし代理戦争の鉄砲玉にされて熱心になれるものではない。
 2006にヒズボラとイスラエルは直接交戦している。そのときの悪い記憶もレバノンのシーア派住民の中には残っている。
 イスラエル空軍は今でも、イランからシリアに搬入されたSSMなどの貯蔵所をコンスタントに空爆し続けている。イランはその空爆を止められない。
 4-26にイスラエルの商用写真衛星の撮影画像がリリースされた。イランは2015条約で、Fordoの地下工場では核に関する製造をしないと約束したが、そこでウランの濃縮を再開しているとイスラエルは主張。
 4-21にガザ地区から「火炎凧」が揚げられ、イスラエル南部の倉庫1棟に放火。倉庫は焼失した。
 マレーシアでは、オートバイに乗った男〔たぶんモサド〕が、パレスチナ人の技師ファディ・アル・バトシュを殺害した。この技師はマレーシアの大学の教員だったが、じつはハマスのためにロケット弾搭載のUAVを設計してやっていたのである。
 4-14の対シリアの巡航ミサイル攻撃だが、イスラエル政府は、実行の12時間以上も前に、米政府から通告されていたという。
 というのは、イスラエル空軍機も独自にシリア内の目標を空爆しているので、そのイスラエル機が巻き添えになったりしないように調整する必要があったからだ。
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 RAPHAEL SATTER 記者による2018-5-8記事「Russians posed as ISIS hackers, threatened US military wives」。
   アイホンに登録しているフェイスブックを通じて米軍人の家族がテロ脅迫された事例。
 2015-2-10に、ISを装ったロシアのサイバー機関が選択的に送信。
 これも米大統領選挙介入の一環だったと考えられる。
 「サイバーカリフェイト」を名乗るロシアハッカーは米軍人家族たちが使っているツイッターも乗っ取った。
 2015-4-9にはフランスのネット放送局「TV5 モンド」がダウンした。
 ルーターが機能しなくなり、局内通信ができなくなった。
 やはり「サイバーカリフェイト」を名乗る連中の仕業。
 「ATP28」というロシアのハッキングチームが容疑者だ。
 サンクトペテルスブルグに本拠のある「トロール」たちがフェイク・ルーモアを世界中に流している。たとえばISがルイジアナを襲撃する、だとか。米兵がコーランを銃撃している工作映像もここから流された。
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 Aram Roston 記者による2018-5-7記事「This American Is A General For A Foreign Army Accused Of War Crimes In Yemen」。
   米陸軍を中佐で退役したステフェン・トゥーマジャンは、いま、UAE軍の少将になっている。53歳。
 そして、対イエメン戦争でヘリコプター集団を指揮している。
 陸軍を退役したのは2007年で、それまで20年在籍していた。
 正式にはUAEの陸軍軍人ではない。しかし、階級と部隊指揮権は確かにUAE政府から与えられている。
 本人は、自分は傭われの民間人だと主張したいらしい。
 米陸軍の法務部門は、このような活動がゆるされるのかどうか、調査中。
 軍事会社についての著作のあるショーン・マクフェイトいわく。わたしは士官学校で教え込まれたものだ。指揮した部隊がしでかしたことの責任は、ぜんぶ指揮官であるお前にあるんだぞ、と。もし部下将兵が無辜住民を虐殺したら、お前の手が血塗られたのであると。これが全世界共通の、プロ軍人のエトスである。
 どうも米国内にはこのような元軍人の傭兵化を防ぐ法制はないようだ。だから今後、トゥマジャン「少将」のようなケースは、増えるに違いない。彼らは米国の国益に反する「戦争」にも必ず関与するであろう。さらには部下軍隊を使って、いかなる国際犯罪に手を染めるか、予測不可能である。
 UAEの本当の国民は100万人しかいない。のこり900万人は、諸外国から出稼ぎに来ている住民である。
 UAE軍による、退役米軍人のリクルートは、もう十年以上前から始まっていた。
 ブラックウォーターの設立者であるエリック・プリンスは、UAEのために、コロムビア人からなる傭兵部隊を設立してやった。プリンスはセイシェルでUAEの首長ファミリーと面談している。同じ場所でプリンスは、ロシア人銀行家とも会っている。その銀行家はトランプとクレムリンの繋ぎ役ではないかとFBIが疑っている人物である。
 元シールズで、退役海軍中将のロバート・ハーウォド。彼はマイケル・フリンがロシアスキャンダルで安全保障補佐官を馘になったとき、そのあとがまに来てくれとトランプから誘われたが、断った。ハーウォドは今、UAEの兵器調達契約を任されており、ロックマート社に莫大な商益をもたらしつつある。
 トゥマジャンの監督者は誰か。なんと、スタンリー・マクリスタルであるという。マクリスタルは「ノレッジ・インタナショナル」という会社の重役に就任している。外国政府のために戦略をアドバイスする会社である。
 同社重役には、元海兵隊大将のジェームズ・コンウェイや、元SOCOMのダグ・ブラウン大将まで名を連ねる。
 ※日本にいらねえ兵器(オスプレイ、AAV7……)を売り込んだのも、こういう連中なのか?
 しかしマクリスタルの副官は、マクリスタルはもうそこの重役ではないと話す。
 マティス国防長官も、じつは、トランプ政権の閣僚になる前、無料奉仕で、UAEのアドバイザーを務めていた。
 UAE政府が米国内で自国についていろいろ宣伝工作するために雇っている広告会社は、「ハーバー・グループ」である。
 英国シンクタンクのIISSによると、サウジやUAEが構成する合同空軍は、アパッチ、チヌーク、ブラックホークなどの米国製ヘリをイエメン戦線に投入中。
 豪州軍を退役した元大将のマイク・ヒンドマーシュは、UAEの王族警固と特殊作戦をつかさどる近衛部隊を指揮している。
 古い話だが1993に、米陸軍を大佐で辞めたアレクサンダー・アインセルンが、エストニア軍総司令官に任命されたことがある。ペンタゴンは、軍人恩給を停止するぞと脅し、国務省は、米国市民権を喪失するぞと脅したものの、アインセルンは就任した。
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  Akhilesh Pillalamarri 記者による2018-5-8記事「There’s No Need to Attack A Declining Iran」。
         2014年にイランは150億ドルの軍事費を計上した。サウジとはくらべものにならず、UAEと比較しても三分の一の金額である。
 現在サウジはGDPの12%にあたる6464億ドルを軍事費に充てている。