くっさいあきみつけた。

 Guy Plopsky記者による2016-8-2記事「How Russia Is Bolstering Missile Defense in its Far East」。
  ロシアがカリニングラードのSAMを大強化しおえたのは2016-1であった。
 2015年夏。カムチャツカ半島のペトロパヴロフスク基地、イェリゾヴォ基地、そしてSSBN基地のあるヴィリュチンスクを覆うべく、同地の海軍SAM連隊にS-400が行き渡った。
 露軍のSAM連隊は、3個の高射大隊から成る。
 2012年、ナホトカ港に近いプリモルスキークライに駐屯する第589SAM連隊の高射大隊のうち2個がS-400を受領している。
 2015年11月には、ウラジオストックに近い航空宇宙軍の第1533SAM連隊がやはりS-400を受領。太平洋艦隊司令部防空のため。
 2009-8の参謀総長の説明では、北鮮ロケットの逸れ弾や破片に対する防備としてナホトカにS-400を置いたという。
 北鮮が馬鹿騒ぎをくりかえすと地域の米軍が強化される。これがロシアの最も心配するところ。
 2016-5に露支は、合同でコンピュータ図上ミサイル防空演習している。ロシア側は中共と合同でBMDを構築してもいいと思っている。
 しかし道は遠い。S-400であってもICBMは迎撃できない。まして中共はS-400そのものも手に入れていない。まだS-300の段階。
 ロシアはS-500というものを開発中で、これは一層高性能なABMだというが、ICBMに対処できないことは変わらない。
 ロシアはBMDシステムを構築したくてもそのカネがないはずだ。※だから中共から開発費を引き出したい。PAK-FA/T-50の開発費をインドから引き出したように。
 ロシア内のシナ専門家たちはしきりに露支協同をそそのかす。しかし政治的にはそれはまったくリアリティがない。
 2015-3に「40N6」ミサイルの大気圏外迎撃テストが実施された。最大交戦距離は400kmで、射高は180kmと報じられる。
 ※ロシアはハイパーソニック長距離ミサイルを迎撃することに高い優先順位を与えているので、この「40N6」はS-400を対ハイパーソニックに用いるためのオプションなのだろう。
 S-500とやらは、最低でもこの「40N6」を発射できるシステムなのだろう。
 S-500は、モスクワやウラルのまわりに2020年までに38個大隊を展開する計画。
 「23560号計画」駆逐艦(リーダー型)には、艦対空システムとしてS-500を搭載するともいう。
 この計画艦は排水量17500トンで、ひょっとして核動力にするかもしれない。
 1号艦の竣工は早くて2023年だろう。
 短射程SAMである「Tor-M2U」は南千島に展開しつつある。
 2015-9以降、アラート任務についている。
 射程は12km、射高は6000mである。
 ハバロフスククライのゼムギ航空基地(第23戦闘飛行連隊)には2014から、スホイ35S戦闘機が配備されている。「フランカーE」ともいう。定数24機。
 しかし2015-12後半からそのうち4機は2016前半にシリアで作戦。
 ウラジオストックのツェントラルナヤウグロヴァヤ航空基地の第22戦闘飛行連隊には11機のスホイ35Sあり。
 ※この記者はポーランド系らしく、しかも台湾に留学したロシア通。
 次。
 ストラテジーペイジの2016-8-13記事。
   北鮮三代目はこれまで33発の弾道弾を発射した。これは二代目時代のすでに倍である。
 げんざい北鮮は年に50発以上、BMを製造中である。
 いまの保有総数である1000発を維持するには、そのくらいの量産を続ける必要があるのだ。
 北鮮製BMの8割は液燃。これは長期貯蔵に向かない。製造したBMは、10年か20年で使えなくなるので、その期限切れの前に試射で消費してしまう必要があるのだ。
 2012年以降、海に落下した破片を回収して分析し続けた結果、判明していること。北鮮のBMは2012以降ほとんど技術の改善がなされていない。各部品の設計は古いままで、ひたすら量産だけが続いているようなのだ。まさに社会主義工業の面目である。
 33基のBMの製造コストは、ひっくるめても3000万ドルであろうと見積もられている。つまり1発=91万ドル。1億円しないのだ。
 ※これに対してTHAADは1発が18億円。誰がそんなものを日本に買わせようとしているんだ?


米国はICBMを全廃し、ロシアはSLBMを全廃する。それが、現実的で合理的な次の核軍縮ステップ。詳しくは『白書2016』で。

 Jennings Brown記者による2016-8-9記事「Meet The Army’s New Darling, The Pocket-Sized Drone」。
   ハワイで半月間、第25歩兵師団の演習にロボットを多用してみた。パックマン演習と称する。
 飛ぶものや走るもの、大小いろいろと軍用ロボットを試し、どれが好評かをユーザー目線であきらかにするのが目的。
 陸軍長官のエリック・ファニングも大乗り気で臨場。
 昨年、国防総省が3200万ドル出して開発させていたボストン・ダイナミクス社製の四脚歩行式分隊支援システム(ロボ騾馬)が、海兵隊によってダメ出しされている。苦情は、エンジン音がうるさすぎること。
 ※今月末発売の『白書2016』に理由を考察しておいたが、米陸軍も海兵隊も、近い将来のメカニカルミュールは諦めた節がある。代りに浮上しつつあるのが、7月にダラス市警が使ったような「突入特攻ロボット」。これなら電池式で可いし、しかも長時間駆動の必要もない。ビッグドッグ系への投資がぜんぶサンクコストとなりそうなボストンダイナミクス社(今は買収されて社名は違うはず)は、これから正念場だろう。出発点を間違えた「進化」はたちまちに行き詰った。
 今回のパックマン演習には、大手のジェネラルダイナミクス社が開発した、ロボ騾馬と似たようなサイズで音の静かなMUTT〔のらいぬという意味があり、わざとこれになるように無理やり長い名称をこじつけている〕という無人ミニチュア戦車が試供された。
 しかしけっきょく兵隊からは不評におわった。重い荷物を運んでくれるといっても、悪路を歩兵に追随して来ることができないんだから。
 今回、兵隊たちから大好評だったのは、ベンチャーのプロクスダイナミクス社が開発したPD-100「黒スズメ蜂」という掌サイズのヘリコプターだ。
 1回充電すれば25分間、飛び回ってくれる。
 1.5マイル先の敵情を、ごく静かに、画像偵察してくれる。
 充電装置はパックパックで担ぐ。機体は掌サイズなので2機以上を運ぶことなど容易。1機の充電中に、別の1機を飛ばすのだ。
 軍曹いわく。この黒スズメ蜂が飛んでいる姿は、遠くからだと小鳥と見分けがつかない。革命的だ。完成されていて使いやすいし、すぐにも戦場へ持って行きたい。
 ※CSで「エジソンの卵」という番組があったのだが第一回の優勝者は酷かった。ワイパーに電熱器を仕込むことが合理的かどうかは、カーメカニックにではなくて、熱力学者にまず訊いてみるべき問題だという勘が働かないようでは……。だって大手がどこも試してないじゃない。その理由を詮索せよ。むしろ、運転室内のダッシュボード上面からフロントガラス越しに超音波のパルスをスウィープさせて氷を割るか、ワイパーのゴムもしくはフロントガラスそのものを収縮振動させるように高機能化するか……。超音波法が実用化されれば、LEDヘッドライトの低温結氷問題も解決できるし、夜間に動物を跳ねるケースも減るはずだ。予告笛になるから。
 次。
 Rebecca Beitsch記者による2016-8-9記事「Should killing a police officer be a hate crime?」
  いくつかの州では、ヘイトクライム法の範囲を人種や民族に限定しないで、警察官に対する致死的攻撃にも適用しようと動いている。
 米国の50州はヘイトクライム法規を制定している。加害者の動機が、人種、宗教、性別その他個人的キャラクターへの憎悪であった場合、加害者の量刑が、加算されるとするもの。
 ルイジアナ州はこのたび、警察官に対する襲撃もヘイトクライムであるとする改正を最初に成立させた。そして目下、ケンタッキー、ニュージャージー、マサチューセッツ、ミシシッピ、テキサスの5州が、同様のヘイトクライム法改正を検討中である。
 オバマ大統領は、警察署が軍隊式の装備をそろえることを禁じていた命令を撤回しようかと検討中ともいう。※ボルチモア警察の流儀を知ればこの措置は難しいぞ。
 批判者は言う。すでに法規によって警察官に対する襲撃者は量刑を重くされることになっているではないか。しかもその法規は加害者の動機を検察官が証明する必要がない。つまり改正には法益が無い。
 米国の諸州法にヘイトクライムが加わったのは1980年代であった。
 当初は人種、宗教、民族のみ。
  ※この宗教というのは、シナゴーグに対する落書きのようなものを含んだ。
 近年、それに、性的志向、性別主張、各種障害が加えられた。
  ※すなわちゲイへの攻撃。
 ※思うにすべての故意犯罪の背後には憎悪があると第三者は推定することができるだろう。そして他人の心の中を誰がどうやって証明できるのか? 人の行為ではなく心の中をも問題視しようとするヘイトクライム法規そのものが、反近代的であり、むしろ儒教圏人やイスラム教徒の発想であり、合衆国憲法に対する違反にあたるだろう。しかし米国ではそれを言うと「レイシスト」よばわりされるらしい。ポリティカリーにコレクトではないようなのだ。だから「宗教地政学」すら白眼視され、中東政策は失敗の連続である。この世界で、真の自由の旗手は、じつは日本国なんじゃね?


即身仏と即戦力。

 Steve Kaskovich記者による2016-8-5記事「Lockheed Martin may shift F-16 production to India」。
  ロックマート社は1970年代からフォートワースに維持してきたF-16製造ラインをそっくりインドに移設してもよい、とインドに提案中。もし、数百機のF-16をミグ21のリプレイスに調達するという契約をしてくれるなら。
 ※これはMMRCAでのダッソー社の大失敗から教訓を汲んだもので、さすがだ。ダッソーは「ミラージュ2000」の古い工場をぜんぶインドにプレゼントするというとっさの機転を利かせていれば、1990年代から今日まで継続して大儲けができたはずである。ところがたまたま自社都合で「ラファール」へのライン切換えをしたかったので、インド空軍から情報リクエストされてもいないラファールをインドへ逆提案した。結果的に、オフセットを毟られるだけ毟られ、30年努力して36機しか成約できないというさんざんなビジネスとなってしまった(ちなみにいまだに引渡しも払い込みもされてない)。豪州もこのインドを見倣って「スーパーホーネットを買うから工場を建設/移転してくれ」とボーイング社に頼めば、ボーイング社はそれに応じたと思う。
 もちろんインドはその国内製F-16を自由に輸出してもよい。
 いま、フォートワース工場では、数千人の従業員が、月にたった1機、イラク空軍向けのF-16を細々と製造しているのみで、受注残は、2017-10にはゼロになる。ロックマートはこの工員たちをF-35ラインに転用したい。
 最終的にF-16のトータル量産数は4500機強となるだろう。
 しかしF-16改善型の計画もあるので、それ次第では生産はもっと続く。
 ロックマートは2016には53機のF-35を製造する予定。
 2019には年産120機にもっていきたい。そのためにはフォートワースのF-16ラインの切換が必要だ。
 次。
 ミリタリータイムスの2016-8-5記事「India approves induction of additional BrahMos missile along China border」。
  インドは対支の陸上国境にブラモス超音速巡航ミサイル×100基をズラリと並べる。事業予算6400万ドル。
 100基といってもランチャー・トラック(12輪駆動)は5台で済むのである。
 ブラモスの射程は290km。対艦用だと最高速度はマッハ3になる。
 亜音速の巡航ミサイルとマッハ3の対艦ミサイルとでは、衝突時の運動エネルギーは9倍も違う。※速度の二乗に比例するので、3倍×3=9倍。
 インド陸軍はブラモス「ブロック3」の発射連隊を3個編成している。対地用のブラモスは2007年から実戦配備。


中共が核動力砕氷船を10億元で起工し、2年後に竣工させるそうだ。シナ船として初めてポッド型推進装置も試す。

 Ben Caspit記者による2016-8-3記事「What new F-35 jets mean for Israel’s air force」。
  イスラエル空軍は米国軍以外では最初のF-35飛行中隊を作戦運用状態にする予定である。
 イスラエル空軍の懸念は、ロシアがイランにS-300という最新鋭SAMシステムを1個高射大隊分、売り渡したことである。これは近々、作戦展開するであろう。
 S-300の地対空ミサイルは、イラン領から発射してシリアやレバノン上空まで届いてしまう。射程が300km以上もあるのだ。
 第四世代戦闘攻撃機だったら、先行機がイラン上空の制空と防空レーダー潰しをやって、そのあとから爆装機が突入して核工場を爆撃するという手順を踏む必要があった。ところがステルスのF-35は制空の必要もなく、防空レーダー潰しの必要もない。いきなり爆撃すればいいだけ。
 あるイスラエル軍パイロットはF-35シミュレーターで、新鋭の非ステルス戦闘機8機と空戦してみたが、楽勝だったという。
 米国に乗り込んで試したイスラエル空軍パイロットの所感。こいつは、ありえないくらいにすばらしすぎる。
 1機のF-35とフォーメーションを組んで飛ぶF-15/16は、F-35がそのセンサーで得ている広域周辺敵機情報を共有することができる。すなわち、第四世代戦闘機も、少数のF-35のおかげで、センサーのグレードが進化したと同じことになるのだ。
 ※AWACSの機能をスコードロン単位に分散しオムニプレゼンス化してくれるのがF-35ということなのか。するとこれからの「国産」方向も見えてくる。「F-3」には空戦をさせないで、空戦の指揮だけをさせる。第四世代機の編隊をミサイル・キャリヤーとして従える。そのためには「F-3」は複座化し、兵装はぜんぶおろしてしまえばいい。そこまで割り切ればエンジンは非力でいいから純国産にできる。垂直尾翼も小さくできるし熱放射は少ないし、まず理想的なステルス指揮官機だ。WWII中に「複座零戦」を正規にこしらえていたら……と考えればもっと分かりやすい。20mmをおろしてしまって、航法装置と無線機を強化し、偵察将校を後部に座らせる。洋上嚮導もできるし連絡機や簡易救難機にもなる。ほとんど余計な予算はかからなかった。それによって、莫大な無駄な犠牲を回避できたはずなのだ……。
 F-35は、実機訓練半分、シミュレーター訓練半分、ということになっているんだそうだ。
 これまでイスラエル空軍は、シミュレーター訓練比率は8%でしかなかったから、まさに訓練体系の革命だ。
 実機訓練が少なければ、スペアパーツ代もあまりかからないわけだ。
 機内爆弾倉だけを使う場合、F-35の爆装は2トン。しかしステルス性を損なうつもりで機外吊下とすれば、6トンまで可能。
 ※イスラエル製の原爆を搭載するばあい、おそらく機内爆弾倉には収まらない。イスラエル空軍はまず第一波を2トン兵装モードで飛ばしてS-300を沈黙させ、第二派で機外吊下モードでイランを核攻撃することになるだろう。
 次。
 AUDREY McAVOY記者による2016-8-4記事「Huge Navy fuel tanks worry Hawaii farmers, utility officials」。
  ハワイでタロイモを栽培している農家。その用水は地下水。
 ところが、地下帯水層の上に巨大な20個の地下タンクがある。米海軍はWWII時代からそこに各種の燃料を貯蔵していたが、さいきん、漏れが始まった。
 2014には1基の地下タンクからジェット燃料が数万ガロン漏れた。
 この帯水層からは、ホノルル市街とワイキキビーチで使用される上水の四分の一も、採取されている。
 地元農民はこのタンク群を撤去してくれと海軍に要望している。しかし海軍は、これらの地下燃料貯蔵は戦略的に不可欠であり、しかも、移転可能な他の土地はみつからないとして拒否している。
 これらの地下タンクは1基が25階建てビルの高さ。10基×2列の20基で、パールハーバーから3マイル離れた丘の地下に所在する。
 ※詳しいことは拙著『「地政学」は殺傷力のある武器である』を読むとお分かりになるでしょう。真珠湾攻撃当日にはまだ建設の途中でした。建設計画を監督していたのは、大将になる前のニミッツです。しかし彼は戦後の回顧録にも、この地下タンク群のことをひとことも書くことができなかった。冷戦中も最高度の軍機だったからです。
 このタンク群は総計1億8700万ガロンの燃料を蓄える。ただし2基はすでに廃用されている。
 米海軍は、これから20年かけて、ハワイの地下燃料タンクを補修したいと考えている。


ヒラリーとトランプを合わせると「ヒトラリンプ」…。恐ろしい。

 Wyatt Olson記者による2016-8-2記事「Navy conducts first successful flight with ‘critical’ 3-D printed part」。
   米海軍は2016-7-29に、MV-22Bのエンジンカバーのチタニウム部品1個を3Dプリンターで成形することに成功した。試験飛行も実施。
 米海軍は1990年代の前半から、飛行に死活的にかかわるようなものでない部品については、現地のガレージで自作しても可いという指導を始めた。
 ところが今回の部品は、飛行の安全にとって重要な部品である。
 米海軍の「3D実験班」は、これから海兵隊のH-1やCH-53でも、同様の部品作りに挑戦する予定。
 ※安全に係るといっても耐熱関係であって、構造関係ではない。そこをこの報道はわざと指摘しないようにしている。しかし耐熱・耐候(耐塩)に定評のあるチタン〔合金?〕を3Dプリントできるというだけでも朗報だ。この技術は住宅の屋根材に革命を起こすだろう。つまりグラスファイバーのような安価で錆びない/腐らない基盤の上にチタン金属の極薄レイヤーを「塗布」したものをトタン鈑に代えて貼り付ければ、百年間でも屋根の葺き替えは必要ないはずである(クラックや小孔の修繕もチタンの「吹き付け」で済む)。のみならず、チタン屋根なら、核爆発の熱線や、SAMの破片にも耐えてくれる。有事に強い町づくりが可能になるのだ。もちろん屋根の重さが劇的に軽くなるから、大地震で家屋が潰れるおそれはずいぶん減ずるだろう。災害復興の心配をする前に、そもそも災害で潰れない町を考えてやるのが、行政というものではないか。
 ※『星条旗新聞』ウェブ版は、新防衛大臣の写りのよくない顔写真を掲載した。これは「リヴィジョニスト」の前評判に在日米軍が本能的に反発していることをあらわす。新大臣は「1941の真珠湾攻撃は国際法上、日本の侵略だったことは間違いない」と早々に言明すべきである。馬鹿右翼と同列だと見られてはならない。


『兵頭二十八の防衛白書2016』は、お盆より前には書店に出る見通しです。

 ストラテジーペイジの2016-8-2記事。
  SOCOMがSDV(シール隊員運搬用潜航艇)を完成した。
 これは民間市販の潜航艇「S302」をベースにしている。
 全重27トンで、DCS(ドライ戦闘可潜艇)と称す。
 ドライというのは、それ以前のシールズ運搬用海中モービルは、ミニ魚雷の外部にしがみつくスタイルの「ウェット」タイプだったからだ。DCSはカプセル内に海水は入らない。
 ドライの方が隊員の疲労が心身ともに少なくて、敵地に上陸した後の作戦行動にプラスになるのだ。
 DCSは単価5540万ドル。
 クルーが2名。プラス、お客のシールズ隊員を6名収容する。
 100mまで潜航し得、最高速力は9km/時である。
 SSNの背中にこのDCSをくくりつけ、敵海岸沖100kmまで近づいたところで、シールズ隊員がSSN内からDCS内に海中で乗り移る。そこから発進して10時間で敵岸にDCSは到達する。
 ただし、古いウェットタイプのマーク8というSDVもこれからも使用される。魚雷にフロッグマンがしがみついて進むスタイル。
 DCSの前のドライタイプの試製品が、ASDS(発達型シール隊員運搬システム)だった。これは全長21m、排水量60トンあり、2008年にたった1隻、2億3700万ドルでこしらえられたが、2009年にリチウム電池が火災を起こし、その修理には3年かかった。お客は14名乗せられた。エンジンは無く、モーターのみ。
 ASDSプロジェクトは典型的な〈予算底なし吸い取りプロット〉だったのでSOCOMは完成させる意欲を失った。もし量産しても単価は当初計画の2倍どころでは済まなくなると確実に予見された。
 ※市販されている潜航艇ですら8名を乗せて100m潜れる。台湾海峡は深さ数十mにすぎない。いかに台湾人が「ミニサブ」の分野で「やる気」が最初から全く無いか、よくわかる話だろう。


空戦コマンドのカーライスル大将は、戦闘機搭載レーザー銃はまず「対SAM」用に実用化すると言っている。さあどうかな。

 ストラテジーペイジの2016-8-1記事。
  イスラムテロリストご愛用のAK-47系アサルトライフルによるテロやアフリカの内乱を抑制するにはどうしたらよいか?
 簡単である。AK用の弾薬、「7.62×39mm」実包を、国際的に市販禁止にすればよいのだ。
 この弾薬は、1991以降、最も多数の人命をこの地球上で奪っている弾薬である。
 もはやいかなる政府も、世界中に拡散してしまったAK-47系アサルトライフルを回収することはできない。しかしその弾薬を簡単に得られないようにしてやることは簡単にできるのである。
 ゲリラが持ち歩いている状態では、弾薬はその小銃よりも早く経年劣化する。
 AK-47は精密狙撃に向いた銃ではないので、安価に大量の弾薬が手に入らない状態では、ユーザーにとって、銃そのものも価値が下がる。したがって銃の廃棄にもつながる。
 冷戦が終わっていらい、旧共産圏からおびただしいAK-47の過剰在庫が第三世界へ破格値で投げ売りされたり、援助工作やバーターとして供給された。その7.62ミリ×39ミリ弾は、1発20セント未満である。
 安い弾薬は、多数の弾薬の出回りを意味し、それは、現に多数の死者をもたらしている。
 7.62×39ミリ実包について、西側先進国だけでも市販や輸出入を禁止してしまえば、その国際市場価格は跳ね上がる。
 少ない弾薬しかなければ、アフリカの死者も少なくなるのだ。
 ※新聞社が製作しているカレンダーの写真にて、「ミヤコドリ」の命名の必然を初めて理解できた。赤い長嘴、赤い長脚、赤い丸目。胴と羽は白地+ダークグレーの迷彩。この赤が、あたかも朱塗りの材木のような反射色なのである。なるほどこいつが川岸に群れていたら京都の建築が髣髴としたはずだ。
 次。
 Bloomberg Newsの2016-8-1記事「Why China Is Handing Soldiers Big Payouts to Retire Quietly」。
  習近平はシナ軍将兵の早期除隊を促す。現勢230万人から、30万人を減らしたい。
 大佐の場合、一時退職金数万ドルと、最終年俸の8割の軍人恩給が、その餌とされる。※したがってベアなど論外である。
 中共中央は、国営企業に対し、退役将兵を雇用せよとも命じている。
 いったいシナ政府がこの退役促進事業(目標は30万人の整理)のために総額でいくら用意しているのかは不明である。
 シナ政府は、130万人の国営炭鉱労働者と、50万人の国営製鉄所労働者の整理解雇のために、1千万元(150億ドル)を用意しようという計画は、持っている。
 シナメディアによると、解放軍の将校の月給は、安いのが4000元で、高いのが2万元である。
 下士官が最終年俸の8割の恩給資格を得るためには、18年間以上奉職している必要がある。しかし将校の場合だと、大学時代の数年間を軍隊勤続年限の内にカウントしてもよいので〔おそらくこれはROTCの場合のみだろう〕、兵隊と同じくらいの若年で退職が促されている。
 ※すなわち37歳で退職して、月に3200元(最古参超先任わけあり一号俸少尉)から16000元(レコードブレイキング特進大佐)の恩給を貰うことが、理論上は可能なわけか。
 さらに早期除隊者には、引越し補助金と、個人事業者に転じた場合には事業税や所得税の減免措置も与えられる。
 中共の政治科学法律大学の学長が2013-5に語っている。元将兵たちが全国の反政府抗議運動に加わることが、シナにとっての最大の潜在リスクである、と。
 新華社によれば習近平は2015-11の中央軍事委員会で、軍のリストラにともなう退役将兵の授産援護についての特別措置をあらかじめ講ぜよと語った。
 たとえば中共最大のタクシー会社は、2016-5時点で、17万9000人の元軍人をドライバーとして再雇用したという。その給料は月に1万元であるという。
 ※これも公然たる嘘の見本。16万5000円も流しの雇われタクシー商売で貰えてたまるかい。それがしかも18万人とか、わらわせる。
 ※日本国内では、北部方面隊の普通科連隊から2個中隊づつ西方に派遣する国内ローテーションが始まりそうだ。重装備は九州に置きっぱなしとする。「移駐」だと税収の減る北海道の基地城下市町村が猛反対するので。かつては九州の下士官が北海道勤務を数年間義務付けられていたから、北海道出身者は地元の陸自駐屯地にいるだけで九州の方言をいろいろと学ぶことができた。これからは、その逆の現象が起こるだろう。


「読書余論」 2016年8月25日配信号 の 内容予告

▼防研史料 『爆撃兵器関係』
▼中田万之助『徳川氏刑法』M21-3
 反逆、謀殺主尊属、放火強盗でも、その所犯より12月を経過して発覚したるときは、其罪を免ず。
 評定所の目安箱に 受理糺問なし難い事件を3回投じた者は、放江戸。
 武家 卒以下 庶民等より法外の暴言を以て辱かしめられ 止むを得ずして之を殺傷したるときは其罪を論ぜず。
 白痴其他 智覚精神を喪失したる者 火を放ちて家屋建造物を焼毀したる者は流刑に処す。
▼『日本風俗史講座 第五巻』雄山閣S4-7
  所収・有坂【金召】蔵「武器武装」
▼陸軍省編纂『明治卅七八年戦役 陸軍政史』M44、1983復刻。
▼『戦場のならず者――セルビア軍に立ち向かったフランス人雇われ兵』1994-10
▼中央乃木会『御神徳を仰ぐ』S49-1
▼北越製紙(株)『北越製紙70年史』S52-6
 S18~19のヴァルカナイズトドファイバーは、海軍省指定燃料ドラム缶用に充てられた。
▼東陶(株)『東陶機器七十年史』S63-5
 海軍から、「マル呂」ロケット用の耐酸電界槽なども受注。
▼本州製紙(株)『本州製紙社史』S41-2
 S18に陸軍航空本部から、紙製ドラム缶の製作を命ぜらる。仕上がりは竹細工。
▼伊奈製陶(株)『伊奈製陶株式会社30年史』S31-12
 S19-9に、ロケット「まる呂」の耐酸炻器を造れと言われた。
▼高等捕獲審検所 残務調理員『明治三十七八年戦役捕獲審検誌』M39-6
▼クリーガー&オン著『ミサイル防衛――大いなる幻想』2002-11
▼大分バス(株)『五十年のあゆみ』S62
▼高桑純夫ed.『自我と実存』1948
 サルトルのマルクシズム攻撃は次のようなもの。
 思想やイデオロギーは社会の上部構造だという。ならばどうしてそのイデオロギーが逆に下部構造たる社会を変革し得るのか?
▼鮎川信夫『自我と思想』1982
 ヴァレリー、ジッドは、マジノ線が突破されるとは思ってもいなかった。知識人と言ってもその程度か。
 レジスタンスもぜんぜん評価できない。ナチズムはレジスタンスで倒されたんじゃないことは明らか。
 「日本浪漫派」はドイツかぶれにすぎない。鮎川ら大正9年生まれの世代だと外国映画はぜんぶ観ていたが、橋川らの大11世代以降はドイツ映画以外、鑑賞を禁止されたのである。だから大9人には大11人の思想偏向が透視できる。
 「第一、人類が全滅するという考えはおかしいですよ。全滅する何倍かの原爆があると言ってますがね、数学的にはそうかもしれないけど、絶滅はしないんじゃないか」(pp.217-8)。
▼『岩波講座 文学 第五巻』S29
 伊藤整いわく。日本は「現世を逃亡するだけで十分生命感を味ふやうな不合理な社会を長いこと持つていた」。「個我伸展の思想が真面目に考へられたのは文壇のみ」。
▼相田二郎『小田原合戦』S51
▼花見朔巳『鎌倉時代史論』S6
 乗馬には「鞍締まり」の身体ができていないといけない。股関節で内側へ締める力が、昔の乗り手は、強かった。
▼笈田敏野『北條時宗公』S17-1
 元軍が二度目には宗像の石垣海岸に着上できなかったのは、日本の弓の威力による。
▼『今昔物語』M34-10pub. 国史大系第16巻/経済雑誌社
 ※これにて本書のメモは完結。鎌倉時代には大盗賊と乞食がほぼ同義であったことが覗われる。
 ◆  ◆  ◆
 「読書余論」は、主に軍事系の古本を、兵頭が注目した一斑の摘記や読書メモによって紹介し、他では読めないコメントも附しているものです。
 あまりに多すぎる過去の情報量の中から「兵頭はここは珍しいと思いました」というポイントだけ要約しました。
 大きな図書館に毎日通えない人も、最低費用で、過去の軍事知識のマニアックな勘所に触れることが可能です。
 また、ミリタリーしか読んで来なかった人には、他分野の情報が、何ほどか有益かもしれません。
 「読書余論」は、毎月25日に「武道通信」から最新号が配信されます。1号分の購読料は500円です。
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熊情報

 本日、昼の十二時五分、国道228号線を江差から松前に向かって軽自動車で走行していたところ、矢立橋の手前数百mの地点で、道路を山側から海側へ横断しようとするヒグマに遭遇。
 ヒグマは我が自動車の接近に気づくと笹薮の中にUターンして山の方へ消えた。
 いや~、驚きました。クマは道路を横断するときに左右を目で確かめないで、まっすぐ「のそーっ」と出てくるんですよ。最初は巨大な黒犬かと思いましたが、茶色の熊でした。一秒くらい目が合った。「おろっ?」という顔をしてました。
 あまり巨大であるという印象を受けなかったので、若い熊だったのかもしれません。