あらためて対支監視用の国産OTHレーダーの建設を提言する

 車力の地上出前式Xバンド・レーダーは、もともと米本土でのターミナル迎撃用の機器が転用されたようなものだから、弾道弾が北鮮で発射された直後の探知は苦手だろう。
 車力の前には佐渡島(そこは北鮮にヨリ近い上に適当な高地もあり、しかも西方に大都市がない)が、ポータブルXバンド・レーダー・チームの展開地の候補として上がっていたことから、斯く想像できる。(つまり、特に三沢基地にアラートを出すために好んで車力に置いているわけではない。)
 ※佐渡島が候補から外された理由を想像すると、レーダーとそのオペレーターズを出前するC-17輸送機が離着陸するときに、そうした大型機用の地上支援態勢が地元空港に備わっていないために、かなり不便であろうこと、および、既設の空自レーダーサイトの宿舎に余裕がなく、駐留米軍人とレイセオン社員の厚生が劣悪になるであろうことが問題として顧慮されたのではないか。
 それでも、飯岡と下甑のガメラが本格稼動する以前は、「対満鮮のPAVE PAWS/COBRA DANE」が無い――という大穴を埋める機能を、車力が一手に果たさざるを得なかった。
 しかし今回の4-6イベントに関しては、すでに飯岡と下甑島のガメラが稼動していた(下甑は3-31運開)し、複数の日米イージス艦(艦載Xバンド・レーダー)も日本海に出張して北鮮方面を集中的に見張っていたのだから、今回は、日本国家に対する「警報」機能を、車力が果たす必要は無かっただろうとわたしは想像する。
 車力は、今回は、ブースターの落下について日本近辺の米軍にアラートを出すこと、ブースターの落下点をダメ押し確認すること、デコイ/デブリ判別のデータを蓄増すること、そして、頭上を通過する物体の「カタチ」を仔細に測定することに、専念したのだろう。
 三菱電機が、国産測地衛星で、ながらくLバンドの合成開口レーダーと取り組んできたことの意義は大きい。まったくわたくしの想像だが、飯岡と下甑を連動させれば、それは合成開口レーダーとほぼ同じことになるのであろう。とすれば、Lバンドの不利な点とされた解像度にしても、XバンドのPAVE PAWSと互角になっているかもしれない。もちろん、探知距離はLバンドのCOBRA DANE並になるであろう。すなわち、ICBM級の高い弾道に対しては3200km~5500kmである。ちなみにPAVE PAWSも最大5500kmだと英文サイトには出ていた。
 さりながらXバンドは、雲や霧や雨で視程が縮む弱点があるらしいので、モンスーン域の日本周辺では、やはりLバンドを選択するのが正解なのだろう。アリューシャンの COBRA DANE がLバンドなのも、同海域に霧が多いからなのではないかと思う。
 2011年度までに佐渡島にも「J/FPS-5」(ガメラ量産型)が建てられるそうだ。そうなれば、飯岡のガメラ試験機は、電波照射の方向を太平洋の方向に限ることによって、反日工作員による住民訴訟を回避できるだろう。防衛省としては、できれば2011年度まで、飯岡のガメラの能力に、世間からの注目を集めたくはなかったことであろう。……サーセン!
 シナ工作員は、豪州のOTHレーダーに対しても、かつてのレーガン=サッチャー時代のグリーナムコモンのような反対運動を住民の間に焚きつけた。そのレーダーはあきらかにシナ軍の動静を遠くから見張るためのものに他ならぬからだ。
 現在、短波利用のOTHレーダーは、米国、ロシア、シナ、豪州にある。
 米国の両海岸に(SLBM警戒用として)数局あったOTHは、年間の電気代などの維持費がかかりすぎるので議会の意向によってソ連崩壊後にモスボール化され、現在、ニューイングランド(東海岸)の1局だけが活動を続けているが、その理由は、なんと、その位置から、カリブ海の麻薬密輸船舶や小型機を見張ることができるからだという。地図でみると、2400kmぐらい、離れている。
 かつてワインバーガー国防長官が防衛庁に硫黄島OTHを提案したときには、理想的最大探知距離として4000kmという数値が出ている。
 また、ナホトカのOTH局は、3000kmくらい捜索するだとか、グァム島の近くまで見張れると書いてある英文サイトがあるから、それが本当だとすれば、ロシアは4-6のトラジェクトリー(ぜんぶで3200km?)の終末に関しては、OTHで見届けたであろう。ニコライエフスクとコムソモルスクにもOTHがあるらしいから、北鮮は弾道を隠しようもなかった。(ロシアのOTHは毎秒10.5回のパルス状に聴こえるのでウッドペッカーと呼ばれる。)
 ただし、いろいろな英文サイトを見て回ったところでは、OTHの性能は安定したものではない。毎日確実に捜索ができるのは、やはり1000km以遠~2500kmぐらいの距離であるらしい。
 しかし控え目に国産技術で2000kmとしても、日本列島から渤海湾や満州まで見張るのには十分だ。マイクロ波レーダーと違い、OTHレーダーは、地表近くの動きが監視できる。ロケットのブースト直後とか、工作船の出港直後を探知できるのだ。もちろん航空機や巡航ミサイルの動きも探知できる。
 4-6イベントで日本国内は良いムードになっているから、防衛省は、北海道の荒野のどこかにOTHを新設したいと、いまこそ要求したがいい。OTHは日本の技術でも、迅速に確実にできる努力だろう。(OTHは距離1000kmより内側の捜索はできない。だから島根県あたりに置くと、却って北鮮海岸は見えなくなってしまう。)
 一部勢力が、DSP(早期警戒衛星)の打ち上げを提案すると聞いたが、もうね、「百年早い」と評するしかない。そんなソフトウェアは三菱電機にもないんだよ! できもしない技術に飛びついて予算をつけようとする議員たちに、誰かが国益のある処を教えてやらなくてはならない。誰もそれをする者が見当たらないので、ここに書くのである。
 DSPで中距離ミサイルのローンチの赤外線を探知しても、僅々数分の予知秒時が稼げるだけ。短~中距離ミサイルで狙われているわが国がDSPを保有しても、コストとベネフィットはまるで釣り合わぬというコモンセンスを、働かせて欲しい。
 それに比してOTHならば、低空飛行物体や、海上の艦艇の動向まで、日常普段から、居ながらにして捉えることができるのだ。シナ空母が渤海湾の奥まで遁入しようと、追い続けることができる。(静止しているものはOTHでは探知できないが、任務中の空母は洋上に停止することはありえない。)
 もちろん、OTHによって、1000km~4000km先の弾道弾の発射も、上昇開始直後に探知できる。DSPより1分くらい警報が遅くなるだけだろう。その代わりアメリカ経由でない分、伝達時間のロスは無いのだ。
 おまけにOTHは、気象観測までもできてしまう。海上の特定点における風向を知ることができるのだ。
 コストは十分にペイしてお釣りが来るのである。
 こんな良いことづくめの国産OTHの建設がこれまで日本では提案されてこなかったのは、それを造るとシナからの政治的な反発が来ると予期されたからだろう。しかしもうそんな環境は変わっているのだ。だいたいシナが1980年代からOTHを日本にまでも向けているのだから、やっとおあいこになるというべきなのだ。
 ※ここで、かつての加藤紘一長官時代の硫黄島OTH計画が消えた理由を愚考するに、火山活動のため地盤の変動が常にあることが精度を悪くするだろうこと、送信設備と受信設備をかなり離す必要があるのにその地積が島には無いこと、厖大な電力が必要だがそのためだけに大きな発電所を建てることが不可能だったこと、建設工事費と年間の維持費がハンパでなく、とうてい国会も大蔵省も納得させられないと予期したこと、があるのではないか。
 ガメラが配備される下甑、佐渡、大湊、沖縄(与座岳)では、これから工作員対策がたいへんだ。関係者のみなさんは、ぜひ、「老子の兵法」があることを、覚えておいて欲しい。
 政治先進国のシナとわたりあって行くには、『春秋左氏伝』と「老子の兵法」を押さえておく必要があるのだ。
 それについて最も手軽に学べるテキストは、これまた拙著『予言 日支宗教戦争』の中にあります。一読をお奨めします。


三菱電機は地味に偉いことやってくれた(のか?)

 銚子岬に近い飯岡(千葉県旭市)の俗称「ガメラ・レーダー」(J/FPS-5。開発中はFPS-XXと称された)は、これまでずっと性能が厳秘であったのは当然なんでしょうが、ボンクラな私は、この地味っぽい器材番号や装備キャラクターに幻惑されてしまっていて、どうやら、こいつがとてつもない能力を持っているんじゃないかということに、09-6-5事件をきっかけとして、やっと、ようやく、気づかされましたよ。ありがとう、常に覚醒剤効果を発揮してくれちゃう北朝鮮さんよ!
 ハッキリいってもう北鮮ミサイルなんてどうでもいいくらい、このレーダーは凄いレーダーだ。バッヂ・システムの更新の延長のように思わせておいて、これは PAVE PAWS の対シナ版計画でしょう。おそらく探知距離は、衛星高度であれば、シナの最奥地、タジキスタン国境上空にまでも到達していますぜ。
 甑島の第二号基(非試験モデル=実戦配備モデルとしては1号基)なら、海南島あたりからのSLBM発射を余裕で見張れることでしょう。
 つまり三菱電機は、米国に何周も先行されている短中波OTHレーダー(対バックファイアー用)や、強力大型Xバンドの対SLBMレーダー(PAVE PAWS)には敢えて手を出さないで、測地衛星の合成開口レーダーでこれまで培ったLバンドを集大成するガメラをつくり、アメリカの得意とする対BM遠距離レーダー分野をニッチ技術で部分的に抜いてみせたんだ。大したガッツだぜ。ご苦労様でございます! F-2のフェイズドアレイも、無駄ではなかったですね。
 DODがこのたび、〈F-22には価格に見合った将来性はない〉と、継続調達を打ち切ることにしたのも、Lバンド、Xバンド、それからバイスタティック(離れた2局以上を同期連動させる)を混合運用する、今後の日本の技術しだいでは、そんなものはステルスでもなんでもなくなるだろうと、今から予測したからじゃないですか?
 硫黄島OTH基地案が、なんの説明もなく、いつのまにか立ち消えになったのはなぜだろうかとも、ずっと不審に思っていたのですけれども、和製 PAVE PAWS もしくは「ガメラ」の可能性がその頃からもう念頭にあったのかもしれません。イージスみたいにアメリカのノウハウを押し売りされたんじゃ、日本の三菱としてまるで面白くないですからね。
 やはり6-4「誤探知」は、ロシアの衛星じゃなかったのかと、わたしは疑います。シベリア上空でわざとホップアップさせたのかもしれません。
 さもなくば、高高度向けのSAM演習でも、やったのかもしれません。それなら、〈いやー、北鮮のロケットが落ちてきたときに一応備えましてね〉という言い訳も用意できる。
 今回、北鮮は、三菱電機のガメラの性能の一端を明らかにする手伝いを果たしたことで、またもシナに恩を売りました。それが、最初から打ち上げ目的の一つだったとも考えられます。これでまた少し、シナから重油を恵んでもらえることでしょう。
 (以前、浜松にAWACSが初配備されたときも、北鮮は一事件を引き起こしていますよね? 覚えていますか? 彼等にはパターンがあります。彼らはいつも、シナ軍が知りたい日本軍の最新装備の能力や、各種運用体制を、シナ軍に代わって「威力偵察」してやっているように、わたしには見えます。)
 さてそうなると、次に来るものは明らかです。米国のPAVE PAWSに対して展開されているような、住民からの「電波障害訴訟」でしょう。これがシナの工作員によって、必ずや起こされる。
 弾道弾警戒レーダーは、水平線から+3度の仰角でふだんの捜索用電波を発射している(これは米国の運用で、ロシアは違うかもしれません)のですが、どれほどペンシルビームにしても sidelobes(横漏れ)というものが必ずあるため、電波の幾分かは、地表に当たることになります。それを論拠として、〈レーダーを止めろ〉運動が、反日活動グループの間から沸き上がるでしょう。
 わたしがいつも申しますように、日本にとっての真の脅威は、「間接侵略」です。NHKの台湾特集制作チームが、すでにやられているそうですね。この、黒幕が見えない、代理人を使ったソフトな侵略に、わたしたちはどう対抗すればいいのか? 皆さん、いますぐ『予言 日支宗教戦争』を読みましょう。この本の売り上げが、シナへの「覚醒メッセージ」になります。


春の泥棒シーズンがやってきた

 北海道もようやく暖かくなってきたと感じます。空き巣狙いシーズンの開幕です。
 小生の最新刊:『予言 日支宗教戦争』では、皆様の住居を侵入盗犯から如何にガードすべきかの、個人的新研究を、まるまる1章分を費やして御披露いたしましたが、皆様、すでにお役に立ててくださってますか?
 やられてからでは、遅すぎますよ! すぐに拙著の経験談をお読みください。並木書房から発売中です。
 この「社会防衛」のテーマでは、小生は今後も、調査と提言を継続して参ります。地域防犯に「最終解」は無いからであります。
 さっそく、また一つの新着眼を付け足すことと致しましょう。
 「2つのブロックが離れることによって、センサーが作動し、大きな音を鳴らす」という侵入警報装置が、市販されております。戸や窓を開けて入ってくる泥棒を驚かせて、おひきとりを願うためのデバイスです。
 この装置は、感度を鈍感に抑えてある震動検知警報器(窓割れセンサー)よりも、犯人があざむきにくいという意味で、間違いがないデバイスでしょう。
 用心深い犯人は、震動センサーを作動させない仕事が、たいてい可能だと考えられます。
 なにしろ、きょうびは、カタギな窓の取り付け工事などで知識を積んだり、錠前について教える学校で情報を集めている者が、空き巣のターゲットを探して夜の街を徘徊していかねない、油断のならぬご時世……。世界的不況とグーグルストリートビューのお蔭で、社会の物騒さは減ることはないと覚悟しておくのが無難でしょう。
 空き巣狙いが窓を破るのも、その目的は、破孔から手や道具を差し入れて錠を外し、窓を全開するためです。それで、いよいよ窓をオープンするときに、「窓開け」探知警報機の存在に気がつかなければ、犯人は警報音によって奇襲されるでしょう。
 しかし、この装置、いくら薄くて小さくとも、ご家庭のアルミ・サッシ窓には、なかなか貼り付け難いことがままあるので、困ってしまうのです。
 それといいますのも、最近のサッシ枠が、おしゃれなデザインになっていて、曲面や段差が多いためです。
 どうしたら良いでしょうか?
 思うに、むしろ、「2つのブロックが5~4cmくらいに接近することによってセンサーが作動し、大きな音を鳴らす」仕組みとすれば、問題は解決するんじゃないでしょうか? ぜひ、アラーム・メーカーさんの、それぞれのご工夫を期待します。
 たとえば、持って近づくだけでマイカーのドアがアンロックされる自動車用キーが普及していますよね。これの混信/誤作動を防止しているノウハウを簡易化して応用すれば、「小型/薄型の2個のブロックが、互いに5センチ以下まで近づけば作動するセンサー」は可能ではないでしょうか。
 具体的には、「引き違い戸」式のアルミ・サッシ窓の左右各々のガラス内面に、外側からは小面積のステッカーのようにしか見えない、この2個のデバイスを、だいたい同じ高さぐらいに貼っておき、スイッチを「作動中」にします。
 外出中、泥棒がその引きちがい窓のどちらかを5~十数センチほどスライドさせて開けようとすれば、2個のデバイスが距離4cm内外で重なる形となって、たちまち大きな音が鳴り出す――といったからくりですね。
 この「2チップス近接感知アラーム」方式にしますと、2つのチップ(デバイス/ブロック)を貼り付ける位置が、ユーザーの創意により、それこそ十人十色のバラバラになるでしょう。そうなると、プロ泥棒も、窓の外側からは、その存否の見当がつけにくい。そこから、より強い抑止効果も期待できるかもしれません。


「衛星ウォッチャー」など、ありえませんでした

 北鮮は今回、「対日宣伝」の意図はゼロでしたでしょう。
 5日に発射されたんじゃ、10日に(首都圏で先行発売すればよい週刊誌とは違って)全国の書店で一斉に発売される体制になっている月刊『文藝春秋』の記事には、どうしても反映されようがない。
 これで、来月の5月10日売り号(6月号)に記事が載ったって、新年度とゴールデンウィークが挟まってるんだから、わが中産階級人民大衆はとっくに忘れ去ってます。
 つまり平壌は、今回は(というか今回も)、日本人に騒いでもらいたいとは少しも思ってなどいなかった。もちろん、かれらが政治の相手として念頭しているのは、終始、アメリカ合衆国だけです。
 二段目以降の着水点が発表されないのは、アメリカとしては、他国や他機関が有している観測能力、すなわち、衛星や弾道弾を洋上において追跡する能力がどのくらいなものかを、念のため、知りたいからなのでしょう。
 アメリカの追尾機関としては、『着水点を観測したのはオレたち以外はないはずだ』とは自負しつつも、いちおう〈ネガティヴの確認〉のために、様子を見ているところではないでしょうか。
 着水点を独自に推知した国や機関があれば、そろそろ、黙っていられなくなり、プレスにリークがされたり、発表が飛び出すはずです。
 特にロシア政府は、自国民からの「怒り」を常に気にする、革命圧力には伝統的に脆い立場ですから、なにか一言いわずにはおれない。しかし、彼らは、どうやら、新「衛星」を確認してないようですね。
 ちなみに、ロシアの強力なABMレーダーはほとんどが北極圏へ向いているでしょうから、あまり高緯度にはさしかからないであろう今回の北鮮発射「衛星」は陸上からトラックできないでしょうし、もし、カムチャッカ半島に、対SLBM警報用や自国の弾道弾実験観察用の南向きの強力レーダーがあったとしても、ハワイ沖まで見通せるはずもありません。
 残るはOTHレーダー(かつてウッドペッカーと呼ばれたもの)です。これは電離層反射ですから、精度は期待できない。
 あやふやな精度のオーバー・ザ・ホライズン情報にもとづいて、「着水点はここだ」などとロシア政府が発表したりするのは、却って、自国のトラック力の限界をアメリカや世界に知られてしまって、不利になる、と彼らは判断するのではないでしょうか。としたら、報告をうけても、プレスには教えずに黙っていた方が得でしょう。
 安定した周回軌道を維持していない飛翔体の即時洋上トラックは、この世界中で、まだまだアメリカ合衆国しかできぬ芸当であることが、今度の件で、知られたように思います。
 おそらく数か月もすれば、正確な着水点が米国からリークされるでしょう。(その時は、サルベージの可能性の検討もとっくに終わっているときです。)
 イランにできた衛星投入に、北鮮は失敗しました。両国の軍事ハイテク技術の優劣は逆転しました。西欧にとってイランは間もなくリアル脅威になります。北鮮は、今回、グアム島攻撃能力のポテンシャルを宣伝するのが精一杯で、アラスカやハワイまでは脅威できないことが逆にハッキリしたのではないでしょうか。それはアメリカ以外には知られると困るでしょう。
 あるいは北鮮は、ロシアのレーダーを嫌い、アリューシャン寄りではなくハワイ寄りに弾道を定め、しかも、そのことをあらかじめ米国に通告していたのではないかとも思うのです。米国の観測力におんぶした、米国だけを相手としたデモンストレーションだったのかもしれません。
 わたしは、「NPOトラッカー」「NPO洋上報道機関」が必要だと思いました。グリーンピースみたいに有志がカネを醵出して、軍ヲタがボロ船に乗り込んでハワイ沖で飛行船を飛ばし、そこから合法的なセンサーで飛翔体を観測するのです。そして、観測し得たことは、全部、インターネットで逐一報道するのです。
 ついでに「竹島」や「尖閣」の定期リポートもお願いしたいですね。
 日本財団とかで後援してくれないでしょうか?
 さて、「前線十萬」(『鉄兵十万』)の翻訳者の謎についての続きです。
 櫻井忠温が陸軍省新聞班長を退職したのが昭和5年8月1日で、『肉弾』で作られたネームバリューを除くとほぼ無能者であった彼は8-29に予備役になります。
 その直後、講談社の『少年倶楽部』編集長は、「のらくろ」の新連載を決めている。連載第一回がS6-1月号でした。
 「のらくろ」が戦前の日本で果たした公報機能は、『前線十萬』シリーズがWWI中の英国で果たした教育啓蒙機能の延長線上にあるように、わたくしには読めます。
 新体制の新聞班内に「前線十萬」の真の翻訳者の意図をよく理解した切れ者がいて、〈これからの国内宣伝は、漫画だ〉と考えたのではなかったでしょうか?


衛星ウォッチャーにお尋ねしたい

 いまごろ日本海には、無人偵察機の「グローバルホーク」が、ぶんぶん飛んでいるんでしょうな。高度2万mを時速650kmで。
 北鮮は、TVカメラを積んだグローバルホークが領海・領空にちょっとぐらい入っても、撃墜するつもりはない。これは公言はしないが阿吽の呼吸でしょう。
 むしろ、米国にだけは、よく見てもらいたいと思っているはずだ。
 北鮮はロケットのランチを、できれば米国の(合成開口レーダー衛星ではなくて)光学写真偵察衛星から、はっきりと見てもらいたい。
 やはり〈ロケット技術をPRして米国から一目おかれる〉ってのが政治的目標ですからね。
 とすれば、ムスダンリ上空が曇っている時や、上空に光学偵察衛星がさしかかっていない時刻には、ランチはしたくないはずだ。
 ロシアはガメラ・レーダーの対BM用探知性能を、知りたがっている。だからこのさいELINT衛星を「北鮮上空のはるか手前から軌道降下開始、日本列島上空航過後に軌道回復」させるくらいのフェイントを仕掛けたとしても不自然ではないでしょう。
 日本のガメラの性能が分かれば、米国が東欧に設置するMD用レーダーの性能も推測可能になりますからね。
 ところで「前線十萬」の摘録をつくっていて、また発見をしちまっただよ。この邦訳(まず昭和4年の改造社の『世界大衆文学全集』に収め、ついでS5-10の『櫻井忠温全集 第二巻』に収められた)こそは、S6-1からの漫画「のらくろ」の『少年倶楽部』連載by田河水泡、を企画として発想させたのだ。委しくは09-5-25配信の「読書余論」で語ろうじゃないか。真の訳者が誰かについては、本田増次郎が大14-11に没したから、彼が着手し、その後、別人が引き継いだと想像しています。


誤探知でなく誤警報では?

 誤探知といわれるもの、じつは、高度をうんと下げてきた米露の光学偵察衛星を、千葉のガメラ・レーダーが探知したのではないですかな? あるいは小型のフェレット衛星。既存のデータベースに入ってない軌道だったんでしょう。
 そのむかし、最初のノドンが能登沖におちたのをいつまでも国民に知らせずにいた、許し難い日本政府の態度にくらべれば、昨今は千倍マシだと思いません?
 さらにそのむかしは、北鮮の拉致事件すら国民に対して隠していた、とんでもなく反国民的な日本政府がですよ。少しは進歩して来ているのです。


統計学的な科学精神……くらいは学校で教えとかないと今の日本のようになります

 かつていちど数学で「0点」とったこともあるのが自慢のわたしは、すべての日本の生徒・学生が理数系の教養を極める必要があるとは主張しない。しかし、「統計学」というものの存在とその有り難さだけは、一生忘れないように早いうちから教えておくべきである。
 実戦式な運用実験を、二十数回以上もくりかえしてみないうちは、そのロケット技術や弾頭技術は、決して「枯れた」とは評し得ない。
 枯れてない技術が、次の実戦使用で、ものの見事に失敗しても、誰も驚いてはいけない。
 これが「統計学」の教養である。
 どうです。有り難いでしょ?
 たとえば1945年の「リトルボーイ」は、濃縮ウランを砲身式で臨界させる最初の原爆ながら、実爆試験をパスして広島へ投弾された。
 しかしその蔭では、起爆装置部分の「カラ撃ち」試験や、爆撃機から投下する手順の実動演練を、事前に何十回も重ねていた。
 うち1回の投下シミュレーションでは、「不発」になって失敗を記録した。
 とうぜん、広島上空で不発になったまま弾体が敵手にわたるというケースも想定をせざるを得ず、米軍では、そんな場合にはどうするかということまでも、考えていたのである(その計画オペレーションの具体的詳細は、まだ公表されていないと疑うべきだ)。
 北鮮は弾道ミサイルに核弾頭を搭載して発射してみる実験を、過去に一度もしていない(シナは1960年代後半から何度もやってみせている)。
 それなのにもし近いうちに北鮮がいきなりリアルにスカッド改に原爆を搭載して発射をこころみた場合、「当たる」/「当たらない」以前に、「正常に爆発しない」可能性や、「不発に終わる」可能性の方がデカい。
 もし空中での起爆タイミングが遅い方にズレた場合も、弾頭は音速の数倍の速さで地面に衝突して起爆装置が圧壊し、原爆サンプルをまるごと相手国に進呈することになる。逆に起爆タイミングが少し早い方にズレた場合は、地表をほとんど破壊せぬ「高々度花火」になる。
 北鮮は原爆実験そのものも1回しか実施していない。
 しかもそのイールドは、最も初歩のノウハウで構築された(したがって核物質のムダが多かった)長崎型原爆の22キロトンや、同じく広島型原爆の14キロトンにも、遠く及ばなかったと観測されている。
 とうぜん、そのような実験結果は、所定の連鎖反応を実現できず、失敗に終わったと判定されるべきである。
 北鮮はそのご、再試験をいちどもしていないから、原爆そのものが、未だにできあがってはいないのだ。
 統計学的科学精神を教授される機会を人生の前半に於いて逸してしまった者だけが、「北鮮の核ミサイル」なるものの存在を声高に叫ぶであろう。
 なおまた北鮮は過去に、ロケット弾頭に生物化学剤を詰め、それを実戦射程で発射し、目標とした地表から最適の高度において、人の肺に吸入させるために最適な粒子サイズのミストにしてそれを放出するというテストを、いちどもしたことがない。
 すなわち、北鮮の「生物化学兵器搭載ミサイル」なるものも、統計学的に、存在しもせぬものだ。
 統計学的科学精神を講授される機会を人生の前半に於いて持たなかった者だけが、このような幽霊兵器が飛んでくるだろうと、声高に叫ぶであろう。
 かつてわたしは、複数の著書と雑誌記事の中で、〈戦争指揮所設備がある防衛庁を、六本木から市ヶ谷に移転させるのは、シナが水爆ミサイルを撃ってきたときに皇居をまきぞえにすることになるのだから、考え直せ。せめて朝霞にすべし〉――と訴えた。
 しかし今回、PAC-3のファイアーユニットが市ヶ谷駐屯地内に展開したのは、至当である。同部隊は、皇居防空の専任なのだろう。
 それをする心構えが日本の統治機構の中にあったのだと示したことは、有意義だ。
 そこでこの際また提案をさせて貰うと、やはり防衛省は市ヶ谷から東京24区外のどこか(座間とか入間とか)へ引っ越すべきで、市ヶ谷駐屯地には、パトリオット部隊を常駐させるべきだろう。
 ついでだ。ひとつまた予想をしよう。
 海上で北鮮ロケットの切り離されたブースターをSAMで撃破できるチャンスが幸運にもあったとしても、海自はそれをやらないだろう。というのは、米海軍の潜水艦が、そのブースターを良い状態でサルベージ回収したいと欲しているはずだからだ。
 もちろんサルベージ作戦は秘密裡に行なわれる(前回のミサイル演習のときも、米潜による海中回収が試みられているはずだ)。
 デブリが沈んだ海底を精確に特定するためにも、イージス艦をあちこちに展開することが要請される。
 以下、せんでん。
 3日に、オークラ出版の『撃論MOOK 281 世界に愛された日本』が拙宅に届きました。この中に、小生が一文を寄稿しています。例の「U27」潜や第二特務艦隊に関する過去の不正確な日本語文典を正す内容としたつもりですので、WWIのASWの実相に興味のある人は、参考資料にしてください。
 『予言 日支宗教戦争』は、邪悪な反日宗教からナウなヤングを保護する「テキストのワクチン」です。あなたの大切な人のために、1冊買ってさりげなくプレゼントしましょう。新入生が5月になったら、もう手遅れかもよ!
 この本が売れることで、日本人の理性とガッツとがいまだ十分に健在であることを、邪悪な諸勢力に対して、見せつけてやることになるでしょう。


絶東黙示録

 複数の英文サイトが1~2年前から警告しているのが、シナ軍は米空母への対策として、弾道弾(短距離用の東風15や、中距離用=2500kmの東風21)のRV(再突入体)に、空力制御による対艦ホーミング機能をもたせるんじゃないか、っていう話。
 つまり宇宙空間からまっさかさまに米海軍の原子力空母の飛行甲板を直撃してやれ――と、たくらんでいるんじゃないか、というのだ。
 いまげんざい、シナ軍が保有する「潜水艦+巡航ミサイル」、「攻撃機+巡航ミサイル」のいずれもが、米空母機動艦隊の総合的艦隊防空システム(イージス巡洋艦、艦上早期警戒機、中距離AAMを低空目標に対して発射できる艦上戦闘機などを含む)の前には、有効ではないと見積もられる。
 ならばと、奥の手を考えているだろう、と予想しているのだ。
 じつは、弾道ミサイルを対空母に用いるという「奥の手」は、目新しい話題ではない。冷戦期のソ連は、対米開戦の暁には、核弾頭付きのSLBMで、米空母艦隊と戦うつもりであった。そこまでやらぬ限り米空母には対抗はできないと、最盛期のソ連軍ですら認識をしていたのだ。
 シナ軍は、そんな難しい課題を、非核弾頭で、しかも陸上から発射する中距離弾道弾で、克服してみせられるのだろうか? まず、無理だろう。
 米軍はすでにパーシングII(とっくに廃棄済み)で、弾道弾のRVを大気圏内での最終落下中にホーミング機動させる凄い技術をマスターしている。しかしシナ軍はそのような技術の実験すらまだしていない段階。米空母は30ノットで動いている。ダイレクト・ヒットなんて、夢物語だ。
 だが、英文サイトがこの種の警告を宣伝してくれるのは、日本にとっては都合がいい。
 日本の武器メーカーは、この大不況で倒産したくなければ、次のような提案をすれば良い。
 ――「シナ海軍が空母を持つことが確実になった。この脅威に対抗するには、わが国が、長射程の対艦弾道弾を開発するのが有効です。その発射プラットフォームには、大型潜水艦が適当でしょう」と。
 そう、通常弾頭の対空母弾道ミサイル・システムを作るという名分の下、SLBMシステムを堂々と開発することができるだろう。
 ……というのは冗談だが、もちろん、日本にとって、長距離戦術用・対艦弾道ミサイルは、必要な装備なのである。というのは、シナ海軍は、かならずや、韓国領土や北鮮領土などを、日本からの戦術巡航ミサイルに対する「政治地理上の障壁」として利用するに決まっているからだ。
 しかし、射程数千kmの戦術対艦弾道弾ならば、朝鮮領土などのはるか上空を通過するので、海自は、日本海から随意・随時にそれを発射して、渤海湾に居るシナ艦艇を攻撃できる。
 北鮮は、今月、日本の上空を長距離戦略ミサイルに横切らせるという。
 だったらわが国は、射程数千kmの対艦弾道ミサイルを開発しようじゃないか。
 シナ政府は、それが厭だったら、北鮮をとっとと制圧するが良い。
 おまたせしました。
 『櫻井忠温全集』をあらかた調べ終り。結論。『肉弾』は、忠温の単独著作ではない。本田増次郎と櫻井鴎村(彦一郎)のどちらか、もしくは両方が、大幅に加筆して編集したものである。
 この両名はしかも、最初から、本書を英文で出すつもりだった。
 陸軍病院入院中の忠温は、迫真の一次ソース提供者として利用されたに過ぎなかった。
 英文で宣伝しようという構想が先行した、特別な企画だったのだ。それは新渡戸の『BUSHIDO』に続き、大成功した。“Human Bullets”を後押しした大隈重信は、確かに日本の安全保障に大きな貢献をしたといえる。
 増次郎&彦一郎は、かなりな嘘を、忠温の口を藉りて、吐かせてもいる。たとえば、M37-8-24の望台の麓で、ロシア将校がじぶんの足の傷を日本の衛生兵に包帯させたあとで拳銃で射殺してしまったのを目撃した、という話など。
 (どうして嘘だと言い得るのかは、いずれどこかで書くとする。)
 それより大事な発見。
 増次郎&彦一郎コンビの目的は、高度な対外宣伝&対内啓蒙にあった。
 増次郎はポーツマス会議前に渡米して世論工作に任じているほどの英文通。英国では少年を勇敢に鍛える文化と、動物愛護精神とが両立するのだという発見を早々としていた。
 彦一郎は日本の町民の、武士化(=市民化)に関心が強く、あの新渡戸の『BUSHIDO』を、新渡戸と細部を相談しながら完訳(和訳ですよ)した男。大隈に気軽に序文を依頼し、大隈経由でテディ・ローズヴェルトへ献本をさせられるような関係にあった。
 彦一郎のこの地位が有ったので、弟の忠温は菊池常三郎じきじきに治療をしてもらえたのだ。その鴎村はS4に没した。
 忠温の下の弟の櫻井忠武がまたすごい。海機19期の首席卒業者で、和田操の上司でもあった、スーパー・テクノ・エリートだ。ところが、山本五十六が最も期待をかけた「九五式大攻」を、忠武は失敗させてしまった。そのためS8-5から米国へ、あらたなる大型機の勉強のため出張してS10-11に帰朝するのだが、その間に和田が仕切った96式中攻が大成功していたために、航本内では居場所がなくなってしまった。それでもS15には中将だし、息子(忠温からは甥)は木村俊吉の娘と結婚している。テクノ・エリート閥だ。
 この忠武の死去がS20-3なので、櫻井兄弟のなかでは、最も学力で劣った忠温(数学ができなくて、中学一年を2度やった)だけが、戦後まで生き残ることになった。
 素では、平板で散漫な文章しか書けない、しかも、リハビリ後の軍職に関するプロ意識もそれほど高くはなかった忠温……。ところが、『肉弾』が、1911(もしくは1913)に A.Schinzinger の手で、(シナ語訳やアラビア語訳にも遅れて)独語訳されたことから、俄然、陸軍エリートの一部で忠温に再注目をする者があり、田中義一も〈櫻井は何かに使える〉と判断して、忠温の運命は狂った。
 じつにくだらない映画脚本を、陸軍省新聞班長の肩書きで、いくつも、映画会社に押し付けて作らせた。これで映画人から恨まれなかったらどうかしている。
 ちなみに、おそらくドイツ皇帝は、近未来の対露戦のための教養資料として、独訳『NIKUDAN』を、各聯隊の図書室に1冊づつ配給したまでだろう。
 忠温訳とされている「前線十萬」は、じつは本田増次郎もしくは櫻井彦一郎もしくはその関係者の訳なのであろう。文章が忠温のとは違いすぎるから。
 だいたい、カリフォルニアの病院で、「小便に行きたい」という意志を看護婦に伝えるのに「ウォーター!」と叫ぶしかなかったと自白している忠温に、小説の1冊翻訳は不可能だろう。また、軍事用語の訳語に、プロ軍人としては変なところもあるので、わたしは本作の真の訳者は、軍歴と没関係の者だろうと推定する。
 ちなみに原題は、第一次大戦の初めにキッチナーが英国内で募集した最初の10万人の志願兵たち、という意味で、これを「K(1)」とも略したらしい。キッチナー第一軍団、ですね。反権威的・反組織的なスコットランドの庶民兵どもが、いかにして慣れた兵隊になったかを、元中尉の本名ジョン・ヘイ・ベイス(筆名はイアン・ヘイ)が大戦の進行中に早業で逐次に発表した、半分リアル、半分創作といった体裁だ。
 英国の大衆向け宣伝小説としてのこれの興味深いところは、味方のあっけない死は描くのだが、忠温のように血塗れの描写はしないこと。
 ……とまあ、こんなテーマに興味があって、詳細を知りたい方は、5月25日配信予定の「読書余論」を、ご購読ください。「読書余論」は、毎号、ミリタリー文献の面白ネタが満載です。
 また、全国の悩める新入生諸君は、いま書店にある『予言 日支宗教戦争』を買いなさい。


読書余論 2009-4-25 配信予定分の内容予告

▼福田一郎『続 潜水艦』S18-6-30、河出書房
 WWIのASWを調べるのに適した良著。なによりの収穫は、WWII前の日本海軍のドイツ贔屓は、WWIのUボートの活躍(数百トンの潜水艦で戦艦や巡洋艦を撃沈できる)にあったんだということが、ピンと来る。
▼ジョン・ガンサー著『アメリカの内幕』S40-8、鹿島研究所出版会訳、原1951
 邦訳は束が700ページ超、それも二段組ギッチリだ。古書店で適価で見つけても、これ1冊を読もうという気力が湧き難いだろう。だが、これが面白軍事情報の宝庫なのである。
 すべての英文科新入生徒にこの要約ノートを提供する! 但し代価200円でネ。
▼武野藤介『戰線餘白』S18-5
 怪著である。どこがどう怪著なのかは、摘録を読んでください。
▼スザンヌ・バーガー著、楡井浩一tr.『MITチームの調査研究による グローバル企業の成功戦略』2006、原2005末
▼吉村昭『細菌』1970-11講談社
 731部隊について小説の形を借りて最も早くストーリーをまとめてみせた作品。石井(作中では「曽根」)のキャラクターを調べたのが偉い。兵頭おもえらく、天才石井の不幸は、じつは米英ソが早々と炭疽菌に的を絞って秘密研究を進めていたことに、大正期の禁止条約時点から終戦まで、想像すら及ばず、彼らが切り捨てていたペスト菌やチフス菌に集中した点。つまり、ペスト菌やチフス菌ではダメなんだという先進列強の最初からの見通しの追試確認を、わざわざしてくれた形になった。その契機は何だったかといえば、おそらくシナと満州とシベリアの住居が不潔で、蚤/南京虫だらけであるのが、あまりに印象的すぎたことにあるのだろう。でも、明治期の外人の日本国内旅行記を読むと、日本の地方の旅館も蚤だらけだったと分かる。最終的に虱まで追放されたのは進駐軍のDDTのおかげ。だから、小説およびTVシリーズの『SHOGUN』の清潔イメージは、貴人の宿舎にしかあてはまりそうにないフィクションです。
▼加藤周一『日本の名著 18 富永仲基』S47
▼W.Dilthey『フリードリヒ大王とドイツ啓蒙主義』村岡皙tr. S50
▼C・シュミット『政治的ロマン主義』大久保和郎tr. 1970、原1918&1924
▼R.P.Dore著、松居弘道tr.『江戸時代の教育』S45
▼トルストイ『戦争と平和』エピローグ第2編と付録、中村白葉tr. S56
 創作うちあけ話。
▼頼山陽『通議』安藤英雄・訳注1977
▼Jonathan D. Moreno著、西尾香苗tr.『[マインド・ウォーズ]――操作される脳』2008-9、原2006
 DARPAに注目していれば、劇画ネタなどに驚かされることはまずなくなります。
▼源了圓『近世初期実学思想の研究』S55
▼Rodney A. Brooks著、五味隆志tr.『ブルックスの知能ロボット論――なぜMITのロボットは進化し続けるのか?』H18-1、原2002
 アシモフという二流SF作家に影響されすぎた工学技師が、どれほどのことをなしとげられるか。
▼北海道新聞社『検証 拓銀破たん10年』2008-6
 純商業的にふりかえると破綻は仕方なかったことを分からせてくれる。辺境国策としてどうなのよという話は抜け落ちているが、北海道新聞社に期待できるのはここまでだ。
▼保科善四郎『大東亜戦争秘史――失われた和平工作』S50-8
 あまり厚くない本だが情報がテンコ盛りであるだけでなく、独特の筆法に気づけば、著者が誰を擁護しようとしていたのかが推定できる。その例を示す。鳥居民氏説には與しない。青年の高松宮が海軍物動のエキスパートに影響されたのは自然であった。
▼泉井久之助『フンボルト』S13、repr.S25
▼『二十一世紀の国際法 宮崎繁樹教授還暦記念』S61所収、池田文雄「宇宙軍事化と法」
▼小川清二『航空発動機工学』S16-5
▼筑紫二郎『少年航空科学の話』S16-5
▼佐藤堅司『鈴木春山兵學全集』上・中・下巻、S12-4
▼関口多景士『復讐心を持て』S51
▼吉田武三『とびあるき人生』S49
 長野油田に関する一説。
▼ジルベール・ガンティエ『パイプライン』文庫クセジュ1971、原1964
▼三木季雄『パイプライン』S48
▼長崎作治『海洋パイプラインハンドブック』S59
▼梅津和郎『ロシア天然ガス産業の経営構造』1997
 なぜイランが強気なのかが分かってくる。
 ◆  ◆  ◆
 「読書余論」は、主に軍事系の古本を、兵頭が注目した一斑の摘記や読書メモによって紹介し、他では読めないコメントも附しているものです。(配信されるファイルはPDFスタイルです。)
 あまりに多すぎる過去の情報量の中から「兵頭はここは珍しいと思いました」というポイントだけ要約しました。
 大きな図書館に毎日通えない人も、最低費用で、過去の軍事知識のマニアックな勘所に触れることが可能です。
 また、ミリタリーしか読んで来なかった人には、他分野の情報が、何ほどか有益かもしれません。
 「読書余論」は、毎月25日に「武道通信」から最新号が配信されます。1号分の購読料は200円です。
 バックナンバーも1号分が200円で、1号分のみでも講読ができます。
 2008年6月25日号以前のバックナンバーのコンテンツは、配信元の「武道通信」のウェブサイト
http://www.budotusin.net
 の「告知板」をスクロールすれば、確認ができます。
 ウェブサイトでわからない詳細なお問い合わせは、(有)杉山穎男事務所
sugiyama@budotusin.net
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公的討議と「国防の倫理」のループ

 イージス艦のロケーションが日本沿岸を離れて北鮮の発射基地へ近づけば近づくほど、理論上、敵の弾道弾を迎撃できるチャンスは逆に減ってしまうという単純なメカニズムについては、既に書きました。
 でも米海軍と海自は、あえて何隻かのイージス艦に、北鮮寄りの配置を命ずるはずであります。その理由は、「平時のデータ採集」にあります。
 北朝鮮のロケット燃料の性能が既知でありますため、それを使った弾道弾のブースト離昇時の「加速度」をレーダーで追いかけることにより、二段目部分以上の「重さ」を計算できてしまうのです。みなさん、積分という数学を考えてくれたニュートンやライプニッツに感謝しましょう。
 できるだけ発射の直後からの加速度を測るためには、水平線より下に届かないレーダーの制約上、イージス艦は、ランチ・サイトに近づけば近づくほど、よいわけです。
 そして、最終弾着点まで、イージス艦や、対宇宙レーダー艦のリレーでトラッキングができれば、弾頭の重さも知れてしまいます。
 すると、そこから、将来、その宇宙工学技術を使って、北鮮が、特定の射程に対してどのくらいの重さの弾頭までを投射できるだろうかということも、予想することができます。
 (現在の結論は、「北鮮は原始的な原爆システムの全重量を長距離弾道弾に搭載することはできまい」というものらしく、だからアメリカは基本的には平然たるものです。)
 北鮮の近海で採集された加速度や赤外線(そこから推薬燃焼時の熱量の大小をある程度知ることができる)などのさまざまなデータは、現在の北鮮の技術力のほどを適確に教えてくれるでしょうし、また、将来のわが方の早期警戒の参考となったり、わが防禦システムの設計に役立てることができます。
 米軍にとっては、シナ沿岸から台湾やグァム島が攻撃されるさいのシミュレーションにもできるわけです。
 あと、弾道弾実験では、飛翔体から刻々の「テレメートリー」が地上に向けて送信されるのが普通です。(北鮮は異常な国ですから、それを必ずするとは言い切れませんが。)
 テレメトリーは暗号化されているのが普通ですけれども、米国の解析チームなら朝飯前にブレークしてしまいます。このテレメトリの情報内容はとにかくものすごく貴重なので、米軍では、宇宙、空中、海上、陸上から、耳を澄ましていることでしょう。
 もうひとつ。北鮮の陸上で、発射の前には、いったいどんな通信のやりとりがなされるだろうか? これにも、米軍と自衛隊のリスニング部門が関心を集中させていることでしょう。
 そのパターンを知ることができれば、将来、日本や米軍が(最上層部レベルにおいて)奇襲を喰らう可能性が低くなるのです。
 米国の情報機関は、北鮮の誰が誰に許可を求めたか、誰が許可を与えたか、その回線は何を使ったか、そんなことまで調べておこうとするでしょう。
 そうすれば、将来、その回線が活性化したときは、北鮮がまた何か発射するのかもしれないと警戒ができるわけです。
 北鮮領土近くでの、海面からのSM-3発射による「追い射ち」撃墜は、あり得ません。それは単純に不可能なのです。(将来は、北鮮の領空ギリギリの成層圏を飛行する大型輸送機に搭載した空対空レーザー砲により、ブースト段階の筒体を毀損し、上昇中に燃料自爆させてやることが可能になる、と、米空軍およびメーカーは宣伝をしています。)
 ところで、SM-3によるミッドコースの高い高度での迎撃があり得たとして(まあ、ありえないんですが)、そのデブリはどこに落ちるでしょうか? 頭の体操として考えてみてください。
 偵察衛星は、大気摩擦で燃え始める限度に近い高度200km以下までも降りてきて、なお地球を周回することがあります。しかし北鮮の多段ロケットは、人工衛星になるのに必要な速度をそもそも達成できはしないと今から想像をされていますから、大気摩擦で燃え尽きないデブリ(堅固な弾殻のRV=再突入体も含む)については、弾道コースの経路下のどこかに落ちるでしょうね。
 低い高度で、且つ人工衛星よりも遥かに低速で切り離されたブースターやサスティナーの筒体が、超偶然的に市ヶ谷や朝霞のPAC-3陣地にまっすぐ向かって落っこちてきた場合は(これまた、天文学的な偶然を前提としなければなりませんが)、破片はどこに落ちるでしょうか?
 こうしたドンガラは、湾岸戦争の映像を見る限りでは、迎撃をしないでそのまま地面まで落下させた方が被害は小さくなるかもしれないのですけれども、政府は、〈その場合は迎撃させる〉と明言をしていますね。
 もちろん、地対空部隊としては、まっすぐ落ちてくるものを撃たないで見過ごすなんてことはできません。もしその迎撃によって、わが住民の上に降り注ぐ破片の数が結果として増えたとしてもです。ドンガラのように見える〈もっと危険な何か〉かもしれませんからね。
 思い出してください。パトリオットの前に、ナイキという古いSAMがありましたが、あの巨大な第一段ブースター(4筒バンドル)は、基地のすぐ近くのどこかに(パラシュートなしで)落下することになっていたのです。 Who cares?(藁)
 PAC-3の筒体や弾頭も、日本国内のどこかには落下するでしょう。
 つまりターミナル・フェイズでの迎撃をすることによって、デブリは2倍以上になるのです(PAC-3は、落下してくる1目標に対して、2発以上、射撃することになるでしょうから)。
 第二次大戦中のロンドンでは、味方の高射砲弾の破片の落下によって死傷した市民がコンスタントに多かった。真珠湾奇襲の日のホノルルでも、同じことが起きました。高度わずか数百mから投下された軽金属製の集束焼夷弾の1本が首筋に当たっただけで、人は死にます(最近の「読書余論」で文献を紹介しましたね)。
 こういうことは、あらかじめわかっていることです。としたら、政府は、PAC-3の導入前に、市民用の防空壕や「防空頭巾兼ガスマスク」を準備させなければいけませんよね? なぜ、そのあたりまえの議論がないんでしょうか。
 わたしが、こんどの北鮮実験をめぐる騒ぎも「くだらない」と一言で片付けておりますのも、マスコミ言論上の物事の注目の順番が、根本から顛倒しているからに他なりません。
 北鮮が核爆弾をロケットで投射できる段階にないことは、既知です。
 他方、シナが、メガトン級水爆を中距離弾道ミサイルで投射して東京都を何十回でも破壊できることは、1960年代から、既知なのですよ。
 しかもシナは戦前の蒋介石時代いらい、一貫して、小学校からの反日教育も継続しています。これまた、確実な既知情報。
 つまりシナには東京を水爆で攻撃する能力もあれば意志も十分にあります。正真正銘の脅威じゃないですか?
 ならば、どうして北鮮の実験ロケットではなく、シナの実戦配備済みの高速核ミサイルから日本国民を防禦するための具体的な方法を、国会は、討議しないのですか? 異常じゃないですか。
 これが、小生が1995年刊の『日本の防衛力再考』のときから、ずっと世間に問うていることです。
 (雑誌『諸君!』にも同様の話を書きましたが、公的討議には結びつきませんでしたね。1か月で消えてしまう雑誌のハイブラウ情報と国会の教養とはリンクしにくくなったとしても、もうしかたないでしょう。)
 日露戦争いらい、この国に「国防の倫理」がなくなっていることが、日本国民を21世紀の今日いまだに群盲のありさまにおしとどめているようです。
 目覚めたい人は、拙著『予言 日支宗教戦争』を、ご購読ください。
 武道通信から配信されている「読書余論」もネ!