interview with──決心変更サレリ──そして、未完のルポ(2004年度新春インタビュー)

(2004年に旧兵頭二十八ファンサイト『資料庫』で公開されたものです)

管理人:明けましておめでとうございます。さて、兵頭二十八先生御婚約である。誰しもその人生には色々なイベントが用意されている。進学、就職、女子中学生の愛人を囲った、出産、死病を宣告された、そして何より婚約とかだ。
 「ロシアの文豪ばりの赤貧・禁欲生活を吹いておいて、今更そりゃねーだろ!?」とか「世間並みの幸せはすべて放擲してきたって書いてたやんか」という貴方の想いは深く理解するが、ともかくも新年である。おめでたいのである!そんなわけで(?)遂に2回目の新春インタビューである。
 去年も書いた事だが、函館に居を構える兵頭先生と福岡市内在住の管理人が何時どこでこんなに長々と話したのか──絶対に詮索してはいけない。

 

管理人:明けましておめでとうございます。

兵頭:ウッキ~!(いちおうさるどしということで……) おめでとうございます。

管理人:本日はお忙しいところを恐縮です。

兵頭:いや、私も、いつものような堅苦しい年頭挨拶よりはインタビュー形式の方が良いと思いますよ。

管理人:ところで昨年11月ごろから重大な噂を聞き及びました。

兵頭:この冬は雪が遅くてね。暖冬の予感がするね。しかし昨シーズンは私も「初転び」を体験していますから、こんどはぬかりのないように、滑り止めのミニ・スパイク付きの革靴を買いましたよ。海岸通りの安売り量販店で、1900円くらいでね。

管理人:なんとご婚約をされたとか……。

兵頭:この滑り止め装置は路面がアイスバーンになっていないところでは簡単に裏返すことができるんです。

管理人:ともかく、お相手は塾講師とか。それも、少し前までホンモノの「修道女」だったひとだとか……。

兵頭:ほら、このようにカチャッとね。ワンタッチですよ。

管理人:自分は詳しくないのですが、確か、カトリック修道会を退会するにはローマ法王の許可とかが要るのではなかったですか?

兵頭:これはしかし裏返した状態でも金具は少し地面に当たるので、一歩ごとに「ガリッ」という独特の音がします。私はこんな靴は北海道でしか見たことがない。

管理人:いずれにせよ、そう致しますと、当初の計画を大きく変更され、函館に永住するご決心ということで、これは私共、理解を致しても宜しいんでしょうか?

兵頭:こっちでしか見たことがないといえば、コンビニの「セイコマート」もあるね。

管理人:あるいは、ビジネスにも資料調査にもなにかと便利な札幌方面にご新居を……といったご計画でも?

兵頭:なんとイタリア製のスパークリング・ワインがフルボトルで380円だ。1年中、この値段だぜ。これはアル中普及運動かと思ったね。

管理人:下世話な話でございますが、女子修道院の下っ端は私有財産ゼロでしょう。入るときに「清貧の誓い」とかをするそうじゃないですか。だから退会の時点では私服すら一着も持たない筈ですね。そして兵頭先生もこれまで貯金はしない主義だったですよね。そうしますとですよ、いくら土地が安いとはいえ、北海道での新世帯はいきなり大変ですよね。だから貯金のための時間が1年くらいは必要というわけですか、つまりその、入籍とかまでの……?

兵頭:まあ俺も一人で酒を飲むのは貧乏人には許されぬ時間の浪費だと悟ったので昨年末からキッパリとやめたが、それで一向平気でいられるのも精神的に充実しているが故なのだろう。

管理人:「第二次大戦中の兵器の話はもうしないのか」とのファンの声が根強いのですけれども、これからご研究の方向性は微妙に変わってしまうのでしょうか。

兵頭:日本国民が重大な勘違い、思い違いをしているのではないか--と思うことがあれば、それについて言及することがあるでしょう。いまのところ、兵器その他についてそう思うことがコンスタントに減りつつあるのは幸いです。こんど、別宮さんの『坂の上の雲では分からない 旅順攻防戦』(仮題)という並木書房からの新刊の中でちょこっと対談をしているんだけど、これなんかも、これまで指摘してきたことの「まとめ」だね。

管理人:イラクへの自衛隊派遣では、論壇では真っ先に『新潮45』で「海外派兵大賛成論」をブチ上げられましたね。この場合、「大義」はどうなるのかな、と私共は思うんですよ。そのへん、兵頭先生の「まとめ」を伺っておきたいな~~、と思うのですが、如何がでしょうか。

兵頭:それはですね、「悪い団体に大金を持たすな」ってことに尽きるでしょうよ。悪い団体とは、原爆を作れるくらいの人材がよく組織されていて、ポテンシャルがある、しかもその企図を秘匿できるぐらいの国土の条件もある、しかも基本的に世界、あるいは海洋自由貿易秩序に対しては無責任である中小国です。また、大金というのは、まあここでは「百億円単位のカネ」と言っておきましょうか。この二つが結合すればですね、原爆ができてしまう可能性があるのですよ。しかもその原爆は、即興的に、西側の都市に対するテロの道具として使われる蓋然性が高い。それだから、世界経済の自由化に責任を持ち、自国民を心配する大国政府は、これを防ごうと思うわけです。バース党支配のイラクはこの「悪い団体」の条件を最も満たしていた。彼らの、世界第二の埋蔵石油をして、ロシアや支那や欧米からの武器資材輸入の「信用担保」とさせてはならなかった。バース党と石油利権を、どうしても切り離す必要があったのです。それが米英日の対イラク政策の基本ですよ。

管理人:それでアメリカはイラクを占領した?

兵頭:そうです。全土を占領統治しないと、バース党はけっきょく、石油資源を担保に、外国から核武装のための物資を買い付けてしまうと懸念されたのですよ。信用取引でね。占領統治をすることで、バース党から「悪い団体」の条件を取り去れると結論されたのでしょう。

管理人:それではなぜ北朝鮮よりも、イラクが先でなければならなかったのですか?

兵頭:北鮮は原爆を持っていないからですよ。これは過去に何度語ったことか知れないが……。1994年いらい、「北朝鮮は原爆をもう持った/もうすぐ持つだろう」といった噂が報道されてきました。だが、俺はその当時から今日までずっと、北朝鮮はじつは核兵器など持っていないのだろう--と思っているし、機会あるごとに、雑誌や書籍の中でも、そのように疑うべきだと主張してきた。北朝鮮はもちろん、原爆を持ちたいと思っている。それは間違いのないこと。彼らは、そのための最大限の努力もしているでしょう。しかし、にもかかわらず、連中は、これから何年も、最初の1発目の原爆を持てないであろうと俺は思うよ。これは、飛行機で運搬して投射したりできる「弾頭原爆」だけじゃない。「装置原爆」、すなわちとても大掛かりで重いためにほとんど「地雷」としてしか役立てられぬような原始的・初歩的な技術レベルの原爆すら、北朝鮮はまだ持つには至っていないね。なぜ俺がそんなふうに断言できるのかの根拠は、いろいろだ。が、世間を納得させる力が弱くて残念なことに、そのすべては「状況証拠」でしかない。その状況証拠の最大の有力なものは、北朝鮮じしんが、北朝鮮が原爆を持ったという証拠を、世界に対して、全く示せないでいることさ。つまり、彼らはこれまで一度たりとも、フルスケールの原爆実験をしてみせていないだろ。キミが、金正日という、虚勢を張りながらも怯えている、そして、配下の軍隊の能力を対外的に示威することについてはこれまでためらったことがない独裁者のキャラクターになりきってみれば、これが何を意味するのか、覚ることができるよ。つまり、彼らはまだ「それ」を持ち得てはいないことが、ね。

管理人:「彼らは小規模な実験を密かに、地下で行なったのだ」という人もいます。

兵頭:TNTなどの高性能な軍用爆薬を、平たい丸餅を何十枚も整然と貼り重ねるように配列して全体が球形になるようにし、それを外側から一斉に起爆させ、その爆発のエネルギーが中心の1点に同時に集中されていくような巧妙な超高圧実現装置……これは確かに、プルトニウムを中心素材とした「インプロージョン(爆縮)式」の原爆をこしらえるときに必要とされる装置だよ。しかしそうした起爆機構だけの発火試験を「核実験」とは呼びません。プルトニウム原爆は、1960年にフランスがサハラでそうしなければならなかったように、できれば大気圏内でフルスケール、つまり数十キロトンのイールド(出力)が実際に問題なく発生することをいちどでも実証してみないうちは、とても外国に対して任意のタイミングで行使することができる「兵器」ではないのだ。北朝鮮は、このような実験をしてみせられるような段階より、はるか手前の段階でここ十年間、停滞してきたという印象を、俺は受けている。それが、次の十年で、劇的に進捗するだろうとは、俺には思えない。

管理人:でも北朝鮮の人口はイラクと同じくらいあるし、ある程度教育を受けた人材プールもあるし、排他的な一定の広がりをもつ国土を内側から固めているシステムはバース党以上に堅固ですよね。そこに日本からのパチンコ資金や覚醒剤の売り上げ金が大量に流れ込めば、そっちの方が「悪い団体に大金を持たす」ことになるんじゃないですか。そうなったら、イラクよりは原爆保有によほど近い位置にあるのでは?

兵頭:原爆が1億円単位のカネでゼロから作れるのならばキミの今の話は正しいと言えるね。しかし原爆は、幸いなことに、科学先進国ではない小国がゼロから作ろうとすれば、百億円単位のカネを注ぎ込まなければ実現は不可能なのだよ。イラクならば、地下の莫大な埋蔵石油を信用にして外国からそのくらいの買い物をツケでできるんだが、北朝鮮にはその現金も信用もないわけだ。つまり米国としては日本の財務省をちょいと脅して総連を締め付けさせさえすれば、もともと核開発には十分ではなかった裏金の流れ込みもさらに限りなくゼロにできると見積もったので、イラクよりも北鮮は後回し。もちろん、日本国民としては平壌の有害性はとても無視できない。なにしろ具体的に国民を拉致されたり麻薬を持ち込まれたり、犯罪し放題をされているのだからな。しかしそのくらいは、日本も大国なんだから、自力対処ができなければ、本来おかしいだろ? 世界ぜんたいの面倒をみなきゃならんアメリカとしては、やはりイラクが先となるわな。

管理人:月刊『MOKU』の最終刊の対談記事にありましたように、海上保安庁を国交省と分離して、日本の真の「国境警備隊」にすれば、良いのでしょうか?

兵頭:無論、それは必要だ。国交省は旧田中派の牙城で、親中・親鮮だろ。しかも海保の長は防衛庁長官と違い、国交省の役人が出世をしていく途中のポストでしかないのだ。そんなんだから、海保庁ぜんたいで海自のイージス艦1隻とほぼ同額の年間予算しかないのを、もうちょっと増やしてくれ、と要求する事も、上級組織である国交省の本省の事務官に向かっては、とてもできやしない相談、となってしまっている。

管理人:イラクの石油収入……というか、埋蔵石油を担保にする信用は、北朝鮮が利用できる日本のパチンコ資金などとは比較にならないくらい、莫大なんですか?

兵頭:1996年12月から2003年3月まで、石油と食糧の交換を許すという国連決議のスキームのもとで、イラクは34億バレルの原油を輸出したことになってる。これはかなり制限された量だったが、それでも売り上げは、650億ドルだぜ。そのカネは国連が指定したフランスの銀行口座へ振り込まれ、バース党の手には渡ってはいないことになっているのだけれども、どうだい、巨大な埋蔵利権を担保にすれば、百億円単位の買い物も半ば「闇」でツケでできるのだという想像は、この数値から、キミには容易にできないかね。

管理人:サダムと9.11のアルカイダは関係があったんでしょうか?

兵頭:それは分からん。しかし、1993年4月にクウェートを訪問したブッシュ(父)元大統領に自動車爆弾テロを仕掛けさせたのは、サダムのシンパでないなら、誰だろうか? そいつらがもし核爆弾を手にすれば、それは西側自由主義国の大都市で試されるに違いないと疑うのは合理的だろう。

管理人:イスラエルも、一昨年までのイラクと同様の、国連決議無視の常習犯です。しかも核保有国ですが……。

兵頭:イスラエルが西側世界で核テロを起こす恐れはないと、西側大国では思っているんじゃないの。

管理人:別宮暖朗さんの御説では、平時のイラクの油田から得られる収益は、第三世界諸国の政府にとっては多額と言えても、米国の平時の国防費と比べたら、その足元にも及ばない、というわけですか。

兵頭:そう、だからイラク戦争は、米国にとって「持ち出し」となることは、もう開戦前から明らかだった。米国政府は、世界秩序のために、敢えてそのリスキーな作戦を決断したのだ。カネのリスクだけでなく、人命と政治的なリスクをすべて引き受けた。この米国を、日本政府が、資金でも、マン・パワーでも支援しようと決めたことは、わが政府としたら上出来さ。世界第二の経済大国が、国民がその政府を批判しても決して投獄されたりはしない自由主義体制の他の大国と共に「世界経営」に参画する。これは合格点だろ。「対支那」ではどうも赤点だけどね。

管理人:その兵頭先生の「お立場」は、西部邁さんらとは反対側、という認識で、よろしいですね。

兵頭:俺はまがりなりにも江藤淳の弟子だからね。馴らされない野良犬のままだったとしてもさ。江藤淳が米国を憎んだのにはまっとうな理由がちゃんとあってね。それは、占領期間中の情報管制・言論検閲が心底許せなかったのだ。国民に対する検閲は政府はしちゃなんねえなんていう御リッパな憲法を押し付けておいて、手前達はコバート(隠密裡)で新聞や出版物や個人の手紙の検閲をやってたんだ。そんな表裏あるアメリカのどこが自由の国だ、と怒っていた訳だ。俺はもちろんそこにも全然同意する次第だが、怒りの対象がちょっと違うのさ。その秘密検閲をやったGHQなんかよりもむしろ、そのマインド・コントロールの企図に気づいていながら、その罠にまさにかけられそうになっていた、当時の精神年齢12歳、平均学歴は小卒にすぎなかった日本臣民のためにだよ、カラダを張ってGHQに抵抗をするでもない、むしろ逆にそのGHQ様に積極協力しやがった、日本人の犬インテリの腐れド外道どもに、俺の怒りはどうしても向いてしまう。エリートに武侠精神が無いわけだよ。アメリカ国内では、新聞や雑誌で政府の政策を公然と批難しても、逮捕されたり監禁されたり流刑されたり銃殺されるかもしれないと恐れる必要はないだろう。これは昔も今も偉い。ただし、アメリカ政府が偉いのではない。アメリカ政府にそれを許さないアメリカのエリート達に、日本のインテリには無い武侠精神があるんだ。

管理人:中国や、サダム・フセイン体制下のイラクには、政府批判の言論の自由があるように思えませんもんね。

兵頭:イラクは中東産油国中では人口が多く、近代教育もできていた。しかし民主主義ではなかったし、法治国家でもなかった。とうぜん、報道や学問の自由などもないんだ。支那と同様。バース党の組織力は堅固で、専制体制下での近代化が進められていた。このサダム・フセイン体制と、巨億の石油収入が結びついたままにしておけば、いずれは核兵器を持ちかねない国だったよ。オシラク原発の話を思い出すことだ。対イラン戦争や、国内少数民族の抹殺のために、躊躇なく毒ガスを使わせたサダムなら、原爆だって出来次第に使っただろう。しかしこの点に関しては、もう世界は安心だ。だからアメリカさまさまだ。

管理人:イラクの次のターゲットはどこなんでしょうか? 9.11のアルカイダに資金を流していたのは、サウジアラビアではないのですか?

兵頭:そう疑われているね。しかもサウジはとんでもない専制国家だ。ここにアメリカが肩入れしているのは、かつてフィンランドやバルト三国やポーランドを侵略したソ連をF・ローズヴェルト政権が支援し、戦後はまた赤色支那と何代かの米国政権が裏同盟を結んでいるのと同じで、道義的にはとても汚れたことさ。しかしサウジアラビアは、人口があまりに少ないために、自国内で核・化学・生物兵器を開発する恐れは無かった。ここが、バース党のイラクとの大きな違いなのだ。米英の最大関心事はあくまで、無責任な小国が原爆を作って米英を攻撃してくるかどうか、だけ。とすれば、次はイランだろうね。シリアにはもう原爆は作れない。

管理人:自衛隊のイラク派遣は、世界や日本の何を変えるのでしょうか。

兵頭:いままで自衛隊は、いわばコタツに足をつっこんで寝ていたような状態だったのを、派遣後は、常に中腰でファイティング・ポーズをとらせておくことができるようになるだろう。徐々にね。ここが最大の国益だよ。

管理人:つまり、法制とかが整うのですね。極東の有事に即応できるように。

兵頭:そうとも。拉致問題で米軍を頼む前に、まず大国として自力救済だろう。いままでは、それができなかったのだ。こういう機会でもないとね。自衛隊には国会議員のパトロンは少ないから。

管理人:防衛庁は、初めは米英軍のための「ガソリンスタンド」をイラクに開設するとか言っていましたが、いつのまにか「給水」になりましたね。それも、米英軍に対してじゃなくて、イラク住民向けの。

兵頭:その理由は去年に『発言者』に詳しく書いたが、米陸軍は今次イラク戦争からは、もはや軽油燃料は使っていないんでね。陸自とは燃料兵站上のインターオペラビリティが無くなっているわけだ。内局はそんなことにも気づかず、9.11後のテロ特措法で洋上給油をやった、その陸上版で行ければ、何かと事務手続き上の都合も良いだろうと、当初はそう目算したのさ。たしかに海自と米海軍は同じ重油を使うよ。今もね。しかし陸自と米陸軍はもう燃料がぜんぜん違う。それに気づき、慌てて話を「給水」に切り替えた。しかしどの軍隊も水くらいは自前で補給ができるものだろう。それでしょうがないから「対住民」にしたわけだ。まあ絵に描いたような泥縄なんだけれども、こうやって法制とかいろいろなノウハウが整って、蓄積もされていくのさ。

管理人:大量破壊兵器の除去の手伝いをしに行くんだという項目は、イラク特措法には含まれなくなりましたね。

兵頭:しかし、せっかく給水部隊がいくのだから、この際だ、昔の防疫部隊のように、これからは「後方支援」部隊も対CBRの活躍ができる能力を備えて欲しいよね。これは良い機会ですよ。

管理人:お話は変わりますが、古い武器カンケイのご著書の改訂版は出ないのでしょうか。これはファンの要望が強いのではないかと思うのですが。

兵頭:う~む。俺も以前は収益構造というものを度外視して、純粋な事実窮理に打ち込んだりしたが、これからは態度を悔い改めたい。俺もようやく、同年代の評論家がどうしてあんなに記事をトバしまくるのか、納得できるようになったんだ。すべては扶養家族のためだったんだねえ。だから「調査著作」は減ると思う。この8年ほどで、インターネットで分かることがとても多くなった。当然、その先だ。評論家の本領は。いや、もちろん95年とか昔からのファンの皆様には深く感謝を致しておりますよ。まあ、お笑い芸人は古いネタを何年も後にまた出して使うというわけにもいくまいが、武器の面白い話は、一回しておいたら、8年以上も封を開けたままでも賞味期限が切れないらしいからな。釣り師がいちど「コマセ」を撒いておけば、次の朝きても、その次の朝きても、針に熱烈読者が食い付いておる。餌がなくなっても、彼らはそれを反芻できるようだ。1粒で8年おいしい兵頭本。ワシも「慈善事業」といってよい程な功徳を施したことになろうかのう……。しかし、作者はそれじゃちっとも儲からないことも、分かってくれ。

管理人:「武道通信」のデジタル復刊シリーズでもある程度「原典」に遡れますしね。

兵頭:とにかくあれらを書き直しても、労多くしてインカム少なしと想像がつくから、そんなビジネスにいまさら俺が首を突っ込むだろうなどとは期待しないで欲しい。それから実はだね、2003年秋にパソコンが2台続けて壊れ、古いデータが全部失われてしまったんだよ。

管理人:ハードディスクが壊れたんですか。

兵頭:そうなのだ。壊れた原因は、たぶん秋の地震だろう。電源の入っていないストーブの耐震消火スイッチが知らないうちに入っていたほど揺れたからねえ。それで、何年も前の著作のデータが消えたので、俺としてはまあ、サクッと忘れることにしたのさ。心機一転だ。

管理人:この新春にはいきなり『ニッポン核武装再論』という久々の書き下ろし単行本が書店に並ぶそうで、新しい展開に大いに期待をしております。並木書房さんですよね。

兵頭:管理人さんも、正月1日早々から、借金とりたてに大いに励んでくださいネ。

管理人:ウッキ~ッ。でも、きゃつらは電気・ガス・水道代・家賃滞納しまくり、あまつさえ無職で無収入の筈なのに、それでも私なんかより余程元気に生きてますから、お金がなくても、意外と楽しくやっていけるものみたいですよ。
 どうか先生もお元気でお幸せに。今日は本当にありがとうございました。

おしまい


管理人:如何だったろうか?秋に兵頭先生は心機一転。過去の著述からの演繹で今年の兵頭先生はもう測れないのかもしれない。
 まだまだ私は「兵頭二十八」から目が離せない。