新刊『尖閣諸島を自衛隊はどう防衛するか――他国軍の教訓に学ぶ兵器と戦法』について自己宣伝します。

兵頭二十八の放送形式 Plus

 また1冊書かせていただきました。奥付は3月31日発行となっています。アマゾンで注文した方がたは、25日頃にもう届いてますよね?

 現下、原稿をかなり先行して書き上げないと書籍そのもの発行日が決まりません。それで、じつは、去年のうちに書いたことが、やっと4月に世間に問えるという感じなんです。
 しかしまあ、このぐらい専門的なネタでこうして商業出版ができるだけでも、恵まれているのでしょうね。
 なにしろ骨子の提言のひとつが「砲兵改革」なんですから。

 ナゴルノカラバフ紛争が11月に停戦になってくれたのは、ありがたくも絶妙なタイミングでした。単行本であの紛争の最新の戦訓を論ずることができるポジションの著者はそもそも少ないはずで、その先頭打者になったと思えば、運の良さを痛感するのであります。

 アゼルバイジャン軍の勝因はトルコ製のUAVだけじゃない。イスラエル製UAVのSEADが露払いをしているのと、イスラエル製の地対地ミサイル(航法衛星参照式の地対地ロケット弾)が良い仕事をしているのです。
 まずそこを掘り下げてみました。

 日本国民の中心的な関心事は、中共が尖閣に来るのか来ないのか、でしょうね。
 しかし、これについて、来ると断言する人、来ないと断言する人、どっちもシナ人を理解しているとは思えない。

 水はいちばん低いところだけを通って流れる。戦闘の指揮もそれと同じだ――と『孫子』が説いていたその流儀は今日でも変わりはしないんですよ。すべてはこっち次第なのです。

 敵、すなわち中共の周辺諸国のうち、いちばん抵抗が弱そうなところが自動的に狙われるんですよ。自動的にシームレスに侵略が始まる。それがシナ式の政治です。

 スイッチを持っているのはこっちだという自覚が必要です。儒教圏人とわたりあう組織にはね。

 日本の有権者が覚醒して、対支で弱腰の政治家を落選させ、対支で譲歩しない政治家を当選させれば、連中は尖閣をあきらめ、他の方面での侵略活動に精を出すことになります。
 日本国民が覚醒せず、対支で弱腰の政治家を当選させ続ければ、中共は尖閣が「いちばん低い」=「いちばん抵抗が弱い」と見切り、尖閣に自動的にシームレスに出て来ます。
 すべては、こっち次第。

 中共中央に「大計画」がある、などと思っちゃいけません。行程表などないのです。あるのは好機を捕らえるセンスと、軽いフットワークと、あとから行為を正当化できる屁理屈の本能だけ。
 いいかえると、「水」があるだけ。こっちが低くなれば、水はこっちに決壊してきます。こっちが高くなれば、水はこっちではないどこかへ流れ去る。「プランB」「プランC」……は自動生成されます。
 まったくのオートマチックシステムです。

 日本の政治家に低くない見識があれば、わたしが月刊誌記事を連載していた頃に早々と警鐘を鳴らした中共の「コーストガード軍拡」に遅滞なく反応して、海自のイージス予算を1隻分削減してでも海保陣容を倍増できたはずです。

 こういう省庁間予算や省庁間人員の融通がきかないのは、国家の動脈硬化症。若年人口が足りないという前に、日本の古い組織・団体の指導層が精神的に高齢化し、干からびている。戸籍年齢が四十台でも、はや即身仏ではないかと思います。

 中共は好いポジションにいます。
 日本外務省はおそらく憲法と法律に違反する過去の《密約》の弱みを北京政府に握られているし、戦争のセンスがないくせにNSCを支配してみずからの瑕疵を国民に対して隠蔽することにのみ関心が強い。海保は上層(公明党系列)が弱腰のうえアウトナンバーもされていて、士気崩壊の兆しすらある精神状態にある。陸自は最も急いでも数週間しないと尖閣方面へは出動などできまい、といった読みがあるものと思われる。

 海上民兵とホンモノの漁民と海警・武警を使い、日本の海空軍の出番がないようにしてやれば、数週間で尖閣支配の既成事実化は可能です。

 東京夏季五輪が流会にならず、22年の北京冬季五輪を日本がボイコットするかどうか読めないという只今の「不確定」さが、連中の尖閣侵略の自動発動を食い止めています。この天佑を活かさなかったらバチが当たりますぜ。

 わが政府のレベルがいかに低くとも、陸上自衛隊のドクトリン改革だけで、鞏固な対支抑止は成立する――という話を、そこで、こんかいの新刊のなかで訴えてみました。

 これを説明するのに「プロスペクト抑止」理論を独自に展開してみたかったが、ちょっと準備時間が足りなかったのでそれは次著でやることにします。

 海保と陸自を融合させる案は、「安全保障のライフハック」ともいえるもの。彼我の形勢は一気に逆転します。海保の人員不足、重火器不足を陸自が補完できます。海保は海警から有力火器で攻撃されればシームレスに戦闘を陸自にバトンタッチできるようになります。敵がつけこむ「隙」がなくなります。海保船艇がもし海上民兵のスチール船体トロール漁船による「体当たり」をうけて浸水をしはじめたら、巡視船内の陸自隊員は救命ボートで脱出し、最寄りの尖閣諸島に上陸します。敵がどう出ようと、それは、中共にとって、前よりも悪いシチュエーションの始まりに帰結するのです。

 イスラエルの話にも力を入れました。大事だからです。
 イランの核武装はもはや不可避であるという共通認識が、サウジアラビアとイスラエルの間にはあるものと想像できます。
 イスラエルは兵器産業と技師たちの疎開先を探しているはずです。いまこそ、それを日本が取り込むチャンスです。

 ビンサルマンの肝いりで、アカバ湾の東岸からヨルダン国境にかけて建設するサウジアラビアの新都市計画「THE LINE」。これの狙いはわたしが昔から唱えてきた「耐核リニア・シティ」そのものだと気づくのが遅れました。この都市計画については次回作で論評するかもしれません。この都市は、イランがかかわる核戦争が起きたときの、サウド家の疎開先です。
 「ザ・ライン」の西風の風上には、イランから見ての核攻撃目標がありません。シナイ半島と海しかない。したがってイスラエルやエジプトを狙った核ミサイルの降下灰は「ザ・ライン」までは飛んでこないでしょう。

 わが国はいまのところ「少子高齢化」のまっただなかですが、じつは中共ももうじき、そうなります。国内がじじいばかりになるんです。それは待ったなしでやってくる暗い未来。日本よりも暗い。だから熊プーは大焦りです。
 世界中でシームレス侵略を続けて、常に成果を国民に示し続けないと、権力の座を逐われてしまう。尖閣に隙があったら、尖閣に出よ。そういう心境なんですよ。

 わたしは昔、親切心から、熊プーのための善い政策を提言しているんですよ。西部の砂漠にトンネルを掘ってそこを緑地化しろ、とね。そこにしか、ダブついた資金や余剰生産品を吸収できるフロンティアはなくなるはずだよと。砂漠のトンネルにスチールプロダクツをブチ込み続けろ、と。わたしのこの助言に従っていれば、すくなくとも食料品に関しては中共はいまごろ「アウタルキー」を実現できていたかもしれないのです。

 しかし中共中央は無明の闇に迷い、砂漠開発を顧みませんでしたので、まもなくして中共が高齢社会に突入したとき、若年労働力、エネルギー、食料のすべてが、中共には足らなくなってしまいます。国民1人あたりGDPでも日本に追いつけません。暗い未来です。
 その頃、日本はどうなっているでしょうか。
 次の本では、そんな話もするかもしれません。



尖閣諸島を自衛隊はどう防衛するか 他国軍の教訓に学ぶ兵器と戦法

(管理人Uより)

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 私は『兵頭二十八のマッカーサー伝』を読んでみたいですよ。