パブリックドメイン古書『ザ・ぼうえんきょう』(1922)を、AI(GPT-5.1 Thinking High)で訳してもらった。

 やはり物事の原初の発明過程が整理して語られているところは、面白いですよね。
 例によって、プロジェクト・グーテンベルグさま、ITに詳しい御方はじめ、各位に深甚の御礼をもうしあげます。

 図版は割愛しました。
 以下、本篇です。(ノーチェックです)

題名: The Telescope(『望遠鏡』)

著者: Louis Bell(ルイス・ベル)

刊行日(電子本): 2016年12月16日 [eBook #53740]
最新更新日: 2024年10月23日

言語: 英語

クレジット: Chris Curnow, Les Galloway および Online Distributed Proofreading Team
の制作による。
このファイルは、The Internet Archive が寛大にも提供した画像から
作成されたものである。

*** プロジェクト・グーテンベルク電子本『THE TELESCOPE』開始 ***

                         THE TELESCOPE
                          (望遠鏡)




                  _McGraw-Hill Book Co. Inc._

                    専門書の出版社:

              Coal Age ▿ Electric Railway Journal
          Electrical World ▿ Engineering News-Record
         American Machinist ▿ Ingeniería Internacional
             Engineering & Mining Journal ▿ Power
             Chemical & Metallurgical Engineering
                   Electrical Merchandising

[図版説明: ガリレオの望遠鏡。(口絵) (Bull. de la Soc. Astron. de France.)]

                         THE TELESCOPE
                         『望遠鏡』

                              著

                       LOUIS BELL, PH.D.
                      (ルイス・ベル博士)

コンサルティング・エンジニア
アメリカ芸術科学アカデミー・フェロー
照明工学協会(The Illuminating Engineering Society)元会長
アメリカ天文学会会員

                         初版(FIRST EDITION)

                MCGRAW-HILL BOOK COMPANY, INC.
                 ニューヨーク: 370 SEVENTH AVENUE
              ロンドン: 6 & 8 BOUVERIE ST., E. C. 4
                             1922年




                    COPYRIGHT, 1922, BY THE
                MCGRAW-HILL BOOK COMPANY, INC.

                    THE MAPLE PRESS YORK PA

序文

本書は、研究あるいは楽しみのために望遠鏡を用い、その構造や特性についてさらに多くの知識を求めている多数の観測者のために書かれたものである。本書はいわゆる二冊以上の分厚いクォート判の「ハンドブック」ではないので、技術的事項を網羅的に論じることも、大規模な天文台とその業績について通俗的な記述を行うことも試みていない。本書が主として扱うのは原理そのものと、その原理を、天界に強く心を惹かれる学生やその他の人々が所有しうる、あるいは手の届く範囲にあるような機器にどのように適用するかという点である。

望遠鏡については、これまでのあいだに多くのことがたびたび書かれてきたが、その大部分は三、四か国語で書かれた論文の中に散在しており、一般の読者にはほとんど手の届かないところにある。そのような読者の便宜のために、文献の参照は、可能なかぎり英語によるものにとどめ、また寸法は、遺憾ながらヤード・ポンド法の単位で示した。主題のいくつかの分野については、紙幅の制約、あるいは参照しうる最近の文献がすでに存在するという理由から、本書では扱っていない。そのような主題としては、もっぱらその口径の大きさによって著名な望遠鏡や、それ自体についての専門書が存在する写真用装置が挙げられる。

天体写真は、それ自体一つの独立した天文学の部門であり、多くの望遠鏡が色フィルタの助けを借りて写真撮影にうまく用いられてはいるものの、本来の意味での写真用望遠鏡とその使用法は、いくぶん別個の領域に属し、それ独自の技術を必要とする。

しかしながら、望遠鏡が示してくれる驚異について繰り返し語ることとは別に、望遠鏡そのものを扱った書物がいずれか一冊でも現れてから、すでに長い年月が経っている。本書には、星雲の図版も、惑星が居住に適しているかどうかについての思索も含まれていない。ただ、天文学者の主要な研究機器に関する事実を、読者の理解と手の届く範囲に、しかも現在の知識の水準に即してまとめて提示しようとする試みにすぎない。

著者は、重要な天文学雑誌、ことに本国における The Astro-physical Journal および Popular Astronomy、イギリスにおける The Observatory および Royal Astronomical Society の刊行物、フランスの Bulletin de la Société Astronomique de France、ならびに Astronomische Nachrichten に対して負っているところの大きいことを、ここに心から認めておきたい。これらは、他のいくつかの雑誌および各天文台の公式報告とともに、天文学的知識の本体を形づくっているからである。また、挿図の提供という好意を寄せてくれた各出版社、特に Macmillan & Co. および Clarendon Press の厚意をも謝し、さらに何よりも、快く助力の手を差し伸べてくれた多くの友人たち――ハーバード天文台の台長および職員、Dr. George E. Hale、Alvan Clark Corporation 支配人 C. A. R. Lundin、Brashear Company の後継者 J. B. McDowell、Carl Zeiss, Jena のアメリカ代表 J. E. Bennett、その他少なからぬ人々――に対して、深甚なる謝意を表したい。

LOUIS BELL.

ボストン(マサチューセッツ州)
1922年2月

目次

                                                      ページ

序文 vii

 I. 望遠鏡の発達                                         1

II. 現代の望遠鏡                                       31

III. 光学ガラスとその加工 57

IV. 対物レンズと反射鏡の特性                           76

 V. 架台                                               98

VI. 接眼レンズ                                        134

VII. 手持ち望遠鏡と双眼鏡 150

VIII. 付属品 165

IX. 望遠鏡の検査と手入れ                               201

 X. 望遠鏡の据え付けと格納                             228

XI. シーイングと倍率                                   253

付録 279

索引 281

望遠鏡

第1章

望遠鏡の発達

「失われた技芸(Lost Arts)」といった類いの随筆に見られる、軽信的な与太話の中では、望遠鏡はたいてい、はるか古代にまでさかのぼるものだとされている。証拠の代わりにあるのは、古典古代へのあいまいな言及であったり、あるいは、聖書に「サタンがキリストを高い山に連れて行き、世のすべての国々を見せた」とあることから、悪魔は望遠鏡を持っていたに違いないと論じるような、荒唐無稽な空想であったりする――ひどい光学であり、さらにひどい神学である。

実際問題として、古典古代においても、またローマ文明の崩壊に続く、望みのない無知の暗黒の千年間においても、言及に値するような光学機器に関する知識があったことを示す手がかりは、まったく存在しない。

夜に群れを守った東方の民だけが、天文学の知識を細々と保ち続けており、やがて学問復興とともに、実験の精神がゆっくりと芽生え、人間の本来の能力を助ける道具の発明へと導かれていった。

望遠鏡の系譜は、疑いなく眼鏡へとさかのぼることができる。そして眼鏡には、初期ルネサンスの実り豊かな時代にまで及ぶ、六世紀以上にわたる由緒ある歴史がある。

その起源が13世紀末、イタリアにあったことには、ほとんど疑いの余地がない。1289年付けのフィレンツェの書簡には、「近ごろ発明された、いわゆる眼鏡というガラスは、年をとって視力の衰えた貧しい老人たちにとって、大いに有益である」と記されているし、1305年にはジョルダーノ・ダ・リヴァルトが、眼鏡はおよそ二十年前にさかのぼる発明であると述べている。

ついには、フィレンツェのサンタ・マリア・マッジョーレ教会に、サルヴィーノ・ダマルト・デリ・アルマーティ(Salvino d’Amarto degli Armati, 1317年没)が葬られ、その墓碑(現在は失われている)には、彼が眼鏡の発明者であることが記されていた。王立協会会員(F.R.S.)W. B. カーペンターによれば、この発明者は貴重な秘密を自分だけのものにしておこうとしたが、それは彼の死の前に、見つけ出され、公にされてしまったという。いずれにせよ、この発見は急速に広まった。14世紀初頭には、すでに低地地方にまで伝わっており、そこで大きな成果をもたらす運命にあったし、やがて文明世界の全域で、周知の知識となった。

しかし、眼鏡から、そのレンズを組み合わせた望遠鏡に至るまでには、三百年を要した。この空白の時間は、ある種の研究者には、まったくもって不可解と映ってきた。だが、眼科学の事実は、簡単な説明を与えてくれる。最初の眼鏡は、加齢に伴うありふれた、そして嘆かわしい病いである老視(調節力の衰え)を矯正するためのものであり、この目的には、ごく中程度の度数の凸レンズで十分であって、度数に大きな変化は必要なかった。焦点距離が1フィート半前後のレンズで、実用上の目的はすべて果たせたのであって、それは望遠鏡の材料にはなりえなかったのである。

近視はほとんど知られておらず、読み書きが行き渡っていない時代には、後天的な近視はまれであったし、その矯正用レンズ、ことに高度の近視を矯正するレンズは、おそらくゆっくりとしか現れず、需要もきわめて小さかった。したがって、光学職人が、通常の凸レンズと、強い負の曲率をもつレンズとを同時に手元にそろえている可能性は、きわめて低かったのである。実際、1575年になってようやく、マウロリコスが、近視と遠視についての明確な記述と、それらを凹レンズおよび凸レンズの使用によって矯正する適切な治療法を公表した。それ以前には、これら両種のレンズが、かなりさまざまな度数で入手可能になっていなかったのであり、それでは、両者を高度に特殊な組み合わせで用いる道具を、偶然にでも思いつく機会はほとんどなかった。

いずれにせよ、望遠視の発見を示す明確な痕跡が現れるのは1608年になってからであり、記録上の発明者は疑いなく、ゼーラント州ミデルブルフの眼鏡職人ヤン・リッペルシェイ(Jan Lippershey)である。1608年10月2日、オランダ総会(States-General)は、リッペルシェイによって提出された請願を審議に付した。それは、遠方のものを見るための器械の製造を独占するために30年の特許を与えるか、あるいは、彼が祖国のためにだけこの器械を製作するという条件で、彼にしかるべき年金を与えてほしい、というものであった。

総会はこれを聞きつけて耳をそばだて、直ちに10月4日には、モーリス公の宮殿の塔から新しい器械を試験するための委員会を任命し、もしそれが良好であることが証明されれば、発明品の購入のために900フローリンを支出することを決議した。6日には委員会が好意的な報告を行い、総会はリッペルシェイの器械に900フローリンを支払うことに同意したが、同時に、それを両眼で使えるように工夫してほしいと希望した。

そこでリッペルシェイは、双眼式への改良を急ぎ、二か月後の12月9日には成功を告げた。15日には新しい器械が検査され、良好と認められ、総会は同じ価格で、ロック・クリスタル製の双眼鏡をさらに二つ発注した。彼らは、発明が他人にも知られているという理由で、特許の付与こそ拒んだが、リッペルシェイの専属的な奉仕を国家に確保するため、一種の抱え職人として、彼に手厚い報酬を与えた。実際、フランス大使でさえ、国王のためにこの器械を彼から手に入れたがっていたが、そのためには総会から必要な許可を得なければならなかったのである。

[図版:Bull. de la Soc. Astron. de France.
図1――望遠鏡の発明者ヤン・リッペルシェイ。]

ここで問うべきもっとも適切な問題は、リッペルシェイが請願を裏づけるために示したのは、いかなる種類の光学管であり、それがどのようにして世間に知られるようになったのか、ということである。われわれが知りうるかぎり、最初の望遠鏡は、およそ1フィート半の長さであったらしく(これはホイヘンスの記述にある)、口径はおそらく1インチ半、あるいはそれ以下であった。構成は、高齢者用の普通の凸眼鏡レンズと、きわめて強い近視を矯正するための凹レンズ――当時、注意を向けられるとすればこの種のものしかなかった――から成っていたと考えられる。

この器械の倍率はおそらく三、四倍を超えず、しっかりと巻き上げて糊付けし、ニスを塗った紙で作った堅固な筒に収められていたに違いない。最初は、焦点調整の機構は備えていなかったと思われる。というのも、あまり強くない接眼レンズを用いていたなら、調節の必要はさほど切実ではなかったからである。

発明が一般に知られていたという点については、優先権を争うはっきりした試みを行ったのは、アルクマールのジェームズ・メティウスだけである。彼は、リッペルシェイの請願を知ると、1608年10月17日に同様の請願を出し、数年間の研究と努力の末、たまたま着想したこの考えを、最近、総会に器械を献じたミデルブルフの市民であり眼鏡職人である人物のものと同程度に、遠くの物体を鮮明に見せるところまで、すでに実現していると主張した。

しかし彼は、実際の器械を提出した様子はなく、「発明を完成させてから、あらためて請願を審議する」と穏やかに告げられたきりで、その後は、どのような功績があったにせよ、記録から姿を消す。もし彼が本当に望遠視に気づいていたのだとしても、その途方もない重要性を理解せず、それを理解しえたであろう他人に、事実を伝えもしなかったのである。

同時代人で、発明者としての名が挙がっているのはもう一人、やはりミデルブルフの眼鏡職人ザカリアス・ヤンセンである。ピエール・ボレルが、まったく伝聞にもとづいて、望遠鏡の発見を彼に帰している。だが、ボレルが著述したのは、それからほぼ五十年後、関係者が皆亡くなったあとであり、彼が高齢の証人たちの心もとない記憶から集めた証言は、きわめて矛盾が多く、ヤンセンが望遠鏡を作っていたのは、ほかの多くの眼鏡職人と同様、およそ1610年ごろであったことを示しているにすぎない。[1]

[1] ヤンセンが、17世紀初頭ごろに複合顕微鏡を発明した可能性は、非常に高い。

ボレルはまた、メティウスがヤンセンを探しているうちに、まちがえてリッペルシェイの店に入り込み、そこでの質問が、抜け目のない店主に望遠鏡の第一のヒントを与えた、という話にも信をおいているが、その日付を1610年としている。この「謎の来訪者」の話の別バージョンは、ヒエロニムス・シルトルスによるもので、そこには、「来訪者は超自然的な起源をもつのではないか」という、興味深い示唆が含まれているが、それ以上の説明はない。また、無知な者や妬み深い者のあいだでは、リッペルシェイの発見は偶然の産物であり、おそらくは子どもか弟子が成しとげたのだ、という噂話もひろまっていた。

実際にどのように発見がなされたのか、われわれにはわからない。しかし、彼が製作したレンズ――おそらくは、どこかの客がひどい近視であったために作ったレンズ――を用いて、あれこれ実験し、検査しているうちに、きわめてありふれたやり方で到達したもの、と考えるべき理由がないわけではない。

発見がいつなされたかについては、多少、事情がはっきりしている。明らかにそれは10月2日以前にさかのぼる。というのも、リッペルシェイの請願には、この器械がすでに総会の何人かの議員によって試されていた、というはっきりした記述があるからである。ややあいまいで噂話めいた記事が『メルキュール・フランセ』に見えるが、それによれば、1608年「昨年の9月ごろ」にモーリス公に器械が献上され、国務会議やその他の人々にも披露されたという。

リッペルシェイの発見から、権威筋に示すに足る試作品が実際に完成するまでには、ある程度の時間が必要であったはずである。これを勘案すると、発明は確実に1608年の夏にはさかのぼり、あるいは、それより早かった可能性さえある。

いずれにせよ、この知らせが、たちまちのうちに広まったことを示す証拠は、いたるところに見いだされる。もしリッペルシェイが、発明の秘密をきわめて厳重に守っていたのでなかったとすれば――そして、彼がそうではなかったという伝承もある――このセンセーショナルな発見は、小さな町の中で、すぐさま知られることとなり、それを聞きつけた眼鏡職人なら、誰でもが、その再現に取り組んだであろう。

もしサイモン・マリウスが『ムンドゥス・ヨヴィアリス(Mundus Jovialis)』のなかで与えている日付が正しいとすれば、1608年秋、フランクフルトの見本市に、どことなく謎めいた雰囲気をただよわせる一人のベルギー人が、片方のレンズにひびの入ったガラスを携えて現れ、ついにはビンバッハの貴族フックスに器械を覗かせたことになる。フックスは、それが「数倍」に拡大することに気づいたが、値段をめぐってベルギー人と折り合いがつかず、戻ってからマリウスと相談して、その構造を見抜き、眼鏡用レンズを使って試作し、さらにより長い焦点距離の凸レンズを手に入れようとニュルンベルクの職人をあたった。ところが、その職人は適切な工具を持っていなかったので、翌年の夏になってから、ようやくベルギーから、すでにかなり一般的に出回っていた、まずまずのレンズを手に入れることができたのである。

マリウスはこのレンズで、やがて木星の衛星を三つ見つけた――第四の衛星が見つかるのは、のちにヴェネツィアから届いた優秀な望遠鏡を待たねばならなかった。1609年初頭には、長さ「約1フィート」の望遠鏡が、パリで確実に売られていたし、同年5月までには、あるフランス人がミラノで一台を売り込み、二か月後には、イギリスのハリオットが一本を手にしていた。ボルゲーゼ枢機卿のもとにも一台が届いたし、パドヴァにも何台か渡ったと言われている。図2は『ムンドゥス・ヨヴィアリス』から取ったもので、マリウスが自らの「ペルスピキリウム(perspicilium)」を構えている姿を示しており、新しい器械の最初の出版図である。1610年の初めには、イギリスでも望遠鏡が製作されていたが、仮にこの時期の性能についてのわずかな報告が信用できるとすれば、当時の「オランダ筒」は、品質も性能もきわめて乏しく、とても天文観測用の器械とは呼べない代物であった。

[図版:The Observatory.
図2――サイモン・マリウスと彼の望遠鏡。]

望遠鏡の進化に関するこの予備的な段階を終えるにあたり、ロジャー・ベーコン(Roger Bacon, c. 1270)、ジャンバッティスタ・デラ・ポルタ(Giambattista della Porta, 1558)、レオナルド・ディッグス(Leonard Digges, 1571)による、望遠鏡装置の記述とされるものに触れずにはいられない。その詳細は、グラントの『物理天文学史(History of Physical Astronomy)』やその他多くの著作に見いだされる。

このうち第一のもの(ベーコン)の記述を注意深く読むと、著者は視角の観点から屈折についてかなり明確な考えを持っていたらしい、という強い印象を受けるものの、彼が、自らが示唆するような事柄を実現するための装置について、実際的な知識を持っていたことをうかがわせる証拠は見当たらない。

十分な数のレンズが手元にあれば、ベーコンは、望遠鏡と顕微鏡の両方を考案できるほど賢明であったことは、まずまちがいない。しかし、彼がそれを実際に行なったことを示す証拠はないし、その多岐にわたる活動ゆえに、彼はつねに世間の注目を浴びていたのである。とはいえ、当時容易に入手できた彼の手稿にあった示唆が、眼鏡の同時代的な発明に結びついた、という可能性は、十分にありうる。

ポルタの論評は、ベーコンのそれの反響のように聞こえるが、それに加えて、対応する装置を想像しようとする、かなり混乱した試みが見て取れる。望遠鏡の原理をよく理解していたケプラーは、ポルタの記述をすべて読んだうえで、それを完全に理解不能だと評している。とはいえ、ポルタは最も早い時期に暗箱(カメラ・オブスクラ)を研究した人物の一人であり、そのため、彼のいくつかの謎めいた記述は、暗箱を念頭に置いて書かれたものであった可能性が高い。

ディッグスに関しても、かなり似た状況が見られる。彼の息子は、父の記した驚異的な現象の源として、ロジャー・ベーコンの写本に言及している。しかし、その記述全体は、望遠鏡ではなく、暗箱による実験を強く連想させる。

この三人について言える最大限のことは、もし仮に、どれか一人が偶然、望遠視を生むレンズの組み合わせにたどり着いていたとしても、その事実を、他人の役に立つようなかたちで書き留めることに失敗した、ということである。オランダでの発見は、たしかに重要ではあったが、それとて、普通の凸眼鏡レンズと、かなり強い凹レンズを筒に入れ、凸レンズを前にして、ある特定の距離に配置すると、遠くの物体の拡大像が得られる、という経験的観察を出なかった、と考えるべき理由がある。

ここに含まれる原理を理解し、それを真の研究用器械に適用したのは、ガリレオ(Galileo Galilei, 1564–1647)であった。1609年5月、彼はヴェネツィアを訪れた際、あるベルギー人が遠くの物体を近くに見せる器械を発明したという噂を耳にした。この噂は、まもなくパリからの書簡によって確認され、ガリレオは問題の重要性に気づくと、パドヴァに戻り、着いたその夜のうちに、この問題を解き明かしたと言われている。

翌日には、彼は平凸レンズと平凹レンズを調達し、それらを鉛の筒に取り付けてみると、その組み合わせが3倍の倍率をもたらすことを見いだした。この倍率は、当時の眼鏡職人が作りうるレンズから得られる限界を、おおよそ示している。[2] レンズの焦点距離と倍率との関係は、彼がすぐに理解したようで、その次に記録されている試作では、約8倍の倍率に達している。

[2] ガリレオがこれら最初のレンズを「自ら研磨した」との記述は、彼のきわめて迅速な製作を信じるなら、字義どおりには受け取れないであろう。

この器械を手にして、彼はヴェネツィアへ赴き、1609年8月の一か月間にわたり、共和国の元老院や、数多くの有力者たちに器械を披露した。最後には、その構造の秘密を明かし、筒そのものを、元老院全体が列席する席上で、総督に献上した。この望遠鏡の長さは約20インチ、口径は1と5/8インチほどであり、これは、ガリレオがこの時点までに、あるいは見つけ出し、あるいは(もっともらしくは)自ら作り上げた、短焦点の接眼レンズを備えていたことを示している。その焦点距離は約3インチで、おそらく、通常の良質な凸レンズを対物レンズとして用いていたのであろう。

[図版:Lodge “Pioneers of Science.”
図3――ガリレオ。]

栄誉に包まれてパドヴァに戻った彼は、改良に向けての厳しい作業に取りかかり、自らの手で多くのレンズを研磨し、ついには約32倍の倍率をもつ器械を作り上げた。彼は、この望遠鏡によって、一連の比類ない発見を次々と行い、観測天文学の基礎を築いた。この望遠鏡と、ほぼ同じ大きさのもう一台は、いまもフィレンツェのガリレオ博物館に保存されており、前掲の口絵に示されている。大きい方の器械は長さ49インチ、口径1と3/4インチ、小さい方は長さ約37インチ、口径1と5/8インチである。筒は紙製で、レンズはそのまま残っており、まさに世界初の天文望遠鏡である。

ガリレオはパドヴァで、のちに1610年秋にフィレンツェへ戻ってからも、多くの望遠鏡を製作し、それらはヨーロッパ中に行き渡ったが、ほぼ確実に、これらを上回る、または同等の性能をもつものは作っていない。

この点に関して、のちにオックスフォード大学のサヴィル天文学教授となったジョン・グリーヴスは、1639年にシエナからこう書き送っている。「ガリレオは良質のレンズを二枚しか作らなかったが、それはいずれも古いヴェネツィア・ガラスであった。」しかし、それら最良の望遠鏡においてさえ、この偉大なフィレンツェ人は非常に見事な仕事を成し遂げている。接眼レンズの焦点距離を、現代のオペラグラス並みにまで短くし、しかも、このような単レンズの組み合わせで達しうる限界付近まで倍率を押し上げていたのである。

均質で透明度の高いガラスの欠如、真円な工具を作ることの大変な困難、適切な研磨材を入手できないこと、板金や金属管(鉛を除く)を買うことが不可能だったこと、そして、レンズを心出しし、検査する現代的な方法の不在――これらすべてによって、まともな器械を作ることは、現代人には想像しがたいほどの困難な仕事であった。

ガリレオのこの技術に対する貢献はきわめて重大であり、彼の形式の器械は、彼の目が最初にそれを覗いたかどうかにかかわらず、彼の名を冠してよいものだろう。実際、同時代人もそう判断していたのであり、名高い「リンクスのアカデミー(Accademia dei Lincei)」の同僚たちが、学匠ダミシアヌスを通じて、「Telescope(テレスコープ)」という名称を考案し、それが今日まで伝えられているのである。

ガリレオ式望遠鏡の重大な欠点は、ある程度以上の倍率を出そうとすると、視野がきわめて狭くなることであった。ガリレオの最大の器械の視野はわずか7分15秒で、月の直径の4分の1にも満たなかった。この一般的な理由は、図4に示すように、レンズを通る光線を追ってみれば、すぐに明らかになる。ここで AB は遠くの物体、o は対物レンズ、e は接眼レンズ、abe がない場合に対物レンズが作る実像、a′b′e によって生じる拡大された虚像である。

ひと目でわかるように、物体の各部から出た光束の軸は(太線で示したように)、あたかも対物レンズの光学中心から発しているかのように振る舞うが、凹レンズの接眼レンズ e による屈折のために、さらに大きく発散し、観測者の瞳孔の外へ大半がはずれてしまう。実際、視野は、対物レンズ o の中心から見た瞳孔の張る角度で、おおよそ決まってしまう。

ガリレオ式望遠鏡の長所としては、まず、像が正立していること、視野は狭いとはいえ鮮鋭であること(しかも、対物レンズの収差を凹レンズの接眼で部分的に補償することで、ある程度改善されている)、そして光量が豊かなことを挙げることができる。遠方の物体を観測する場合、レンズ間の間隔は、それぞれの焦点距離の差に等しく、倍率は、それらの比 f{o}/f_{e}_ となる。

[図4――ガリレオ式望遠鏡の略図。]

しかし、ある程度の広さの視野と高倍率とを両立させることができないという問題は、結局は致命的であった。そのため、この形式は、今日では、2~5倍程度のオペラグラスやフィールドグラスの形でのみ生き残っているにすぎず、天体観測用望遠鏡の世界では、像を正立させる目的で、ごくまれに凹レンズ接眼が用いられる以外には、ほとんど姿を消している。現代の望遠鏡は、事実上すべて、色収差を補正した対物レンズ(アクロマート)を持ち、接眼レンズも一般にアクロマートである。

[図5――ケプラー式望遠鏡の略図。]

必要な前進をもたらしたのは、惑星運動の法則を発見した不朽の天文学者、ヨハネス・ケプラー(1571–1630)であった。彼は1611年の著書『ジオプトリケ(Dioptrice)』の中で、今日までほとんど変わらぬ形で用いられている天文望遠鏡を、原理的に提示している。図5に示すように、その配置は、図4と同じ記号を用いれば、次のようである。

ここには、ガリレオ式とは三つの顕著な違いがある。まず、接眼レンズ e の前方焦点面内に実像が形成されること、次に、その像を通過した光線が、接眼レンズで外側ではなく内側へ屈折されること(これにより視野が大きく改善される)、最後に、像面に置かれた物体が、像とともに拡大されることである。最初の二点については、ケプラーは完全に理解していたが、第三点については、おそらく認識していなかったと思われる。だが、この第三点こそが、ミクロメーターの原理となるものであった。レンズ oe の間隔は、明らかにそれぞれの焦点距離の和に等しく、倍率は前と同様にそれらの比で表される。ただし、観測される像は倒立している。

知るかぎりでは、ケプラー自身はこの新しい望遠鏡を実際に用いなかった。その栄誉は、数年後にイングルシュタットのイエズス会数学教授であり、太陽黒点のきわめて早い時期からの執拗な――と言ってもよいほど冗長な――観測で知られるクリストファー・シャイナー(Christoph Scheiner)に帰するべきものである。1630年刊の『ローザ・ウルシナ(Rosa Ursina)』には、何年も前からケプラー式望遠鏡を自由に使っていたことが示されているが、それがどの程度の大きさや倍率であったかは、確かではない。[3] ナポリのフォンタナも、同様に早い時期からこの分野に登場している。

[3] シャイナーはまた、太陽観測のために、最も初期の赤道儀にあたる、粗野なパララクティック架台を考案している。これを利用することで、彼はヨーロッパで最初に赤道式の原理を把握した人物となった。世紀末になってようやく、レーマーが彼に続いたが、両者とも、照準器付きの中国製器械に先を越されていた。

しかし、この新しい望遠鏡は、はるかに広い視野と高倍率の可能性を備えていたにもかかわらず、きわめて深刻な問題をいくつももたらした。倍率を上げれば上げるほど、球面収差がひどくなり、さらに色収差も同様に悪化したうえ、接眼レンズの持つ収差が対物の収差に加わって、事態を一層悪くした。フォンタナが1629年から1636年にかけて発表したスケッチが、この時期の望遠鏡を正直に反映しているとすれば、初期のケプラー式望遠鏡は、お世辞にも良好とは言えず、定義力の面でひどく劣っていたようである。

開発の歩みから判断すると、最初の大きな改良のきっかけは、1637年に発表されたデカルト(René Descartes, 1596–1650)の屈折研究であったと思われる。そこには、球面収差の理論の多くが示されており、天文学者たちは、そこに示唆された実用的・非実用的の両方の手がかりを、ただちに追いかけた。

収差の理論に立ち入るまでもなく、初期望遠鏡の改良に関して重要なのは、任意の単レンズにおける縦方向の球面収差が、その曲率による厚み(すなわち「肉厚」)に比例する、という事実である。したがって、他の条件が同じであれば、同じ口径に対して焦点距離を長くすればするほど、球面収差は絶対量も、像に対する相対量も減少する。さらに、デカルト自身は色収差については何も知らなかったが、レンズを通して見た物体を縁取る色の縁取り――当時の観測者には、まったく謎の現象と映ったであろう――も、焦点距離を長くすることで大いに軽減された。

単レンズによって生じる色のにじみ(クロマティック・サークル)の半径方向の広がりは、レンズの直径が一定であれば、おおよそ焦点距離によらず一定である。しかし、焦点距離を伸ばせば、像の大きさはそれに正比例して増大し、したがって、像に対する色収差の相対的な影響は、それに逆比例して減少するのである。

デカルトはまた、楕円面や双曲面を用いることで、球面収差を完全に除去できるレンズ設計をいくつか示し、しばらくのあいだ、これを実際に実現しようとする、実りの少ない努力が続けられた。実際には、球面でない曲面を正確に成形することに成功するまでには、ほぼ一世紀を要した。天文学者を長焦点望遠鏡へと駆り立てたのは、色収差と同じくらい、球面収差でもあったのである。

その一方で、天文望遠鏡は、シャイナーよりはるかに適任の手に委ねられることとなった。最初にその可能性を十分に理解したのは、ヨークシャー州ミドルトン出身の勇敢な青年紳士、ウィリアム・ガスコイン(William Gascoigne)であった。彼はおそらく1620年ごろ(早い説では1612年ごろ)に出生し、王党派としてマーストン・ムーアの戦い(1644年7月2日)で戦死した。彼は、早くも1638年には、対物レンズの実焦点を利用して、望遠照準器を作るという着想を得ていた。

[図6――地上用接眼レンズの略図。]

やがてこの着想は、対物レンズの焦点面に一対の平行な刃を配置し、それを互いに反対方向へ動かす二条ねじと、整数回転用の目盛り、部分回転用に100分割されたヘッドを備えた、真のミクロメーターの形に結実した。彼は1638年から1643年にかけてこれを用いて多くの観測を行い、太陽・月・惑星の直径をかなり精度よく測定し、現代的なマイクロメトリーの基礎を築いた。1639年までには、彼は当時「大望遠鏡」と呼ばれた望遠鏡を備えていた。

彼の早すぎる死は、未刊行の光学論文を遺したままのことであったため、科学にとって大きな損失であった。しかも、その手稿は見つからず、戦乱の嵐に巻き込まれるうちに、彼の卓越した業績は二十年以上にわたって世の注意から消え去ってしまった。

そのあいだにも、カプチン会修道士で、勤勉かつ有能な研究者であったデ・レイタ(Anton Maria de Rheita, 1597–1660)が、望遠鏡に関して熱心な研究を続けていた。1645年にはアントウェルペンで、やや奇抜な著作を出版している。これはイエス・キリストに献げられたもので、少なからぬ実際的情報を含んでいた。デ・レイタはかなり早い時期に双眼望遠鏡を構成していたらしく、しかも、かなり独立にこの考えに到達したようだ。最近では、デカルトの双曲レンズに熱心に取り組んでいるが、言うまでもなく大した成功は得られず、倍率4,000倍の巨大レンズを用いた仕事を構想していた。

しかし、光学に対する彼の真の貢献は、地上観測用接眼レンズの考案であった。図6に示すように、彼の形式は、a b を対物レンズが作る像、r を接眼レンズ、st をそれぞれ焦点距離を等しく取り、その間隔をちょうど焦点距離だけ離した二枚のレンズ、a′ b′ を再倒立した像とするものである。この形式は、その後ドルンド(Dolland)によって改良されるまで、一世紀以上にわたり広く用いられた。

これよりやや早い形式として、シャイナーに帰されるものがあり、図6の反転用二枚レンズを一枚にまとめ、その共役焦点を利用する形となっていた。

ほどなくして、このデ・レイタの後を追うように、17世紀のきわめて重要な観測者の一人であるダンツィヒ(現グダニスク)のヨハネス・ヘウェリウス(Johannes Hevelius, 1611–1687)が登場する。1647年に出版された彼の大著『セレノグラフィア(Selenographia)』は、月の初めての体系的研究を含んでおり、当時用いられた器械とその実際的な構造についての、簡潔ではあるが示唆に富む説明を与えている。

このころ、ガリレオ式とケプラー式の望遠鏡は、並行して使用されており、ヘウェリウスは双方の設計と製作について指示を与えている。どうやら、当時一般的に用いられていた器械は、長さ5~6フィートを超えることはあまりなく、彼の示すデータから判断すれば、ガリレオ式で30倍を超える倍率は出せなかったと思われる。しかし、長さ12フィートの筒についても言及があり、より長い焦点距離の平凸レンズを用いたほうが、像の鮮明さと倍率の面で有利であるとも述べている。当時は紙製の筒がよく用いられていたようであるが、彼はこれを退け、鉄板製の筒も重すぎるとして批判し、長い筒には木製が最良であるとしている。

この時点で、ヘウェリウスは、平凸レンズそのものの形状が球面収差を減少させる効果をもつことを、まったく理解していなかったようであるが、彼は、当時の光学者デ・レイタが考案した奇妙な形式の望遠鏡について述べている。そこでは対物レンズが二枚組になっており、二枚とも平凸で、より弱い方が前面に置かれ、凹レンズ接眼と組み合わせて使用されていたらしい。もし適切に設計されていれば、この二枚組レンズは、同じ焦点距離をもつ両凸レンズに比べて、球面収差を4分の1以下にまで減らすことができたであろう。

ヘウェリウスはまた、前述の初期形式の再倒立望遠鏡にも触れ、その性能をかなり高く評価している。1643年と1644年に作られた多数の月面図から判断すると、彼の望遠鏡はシャイナーやフォンタナのものよりもはるかに優れていたものの、なおかつ定義力においては著しく劣っていた。

それにもかかわらず、『セレノグラフィア』に収められた銅版画は、あらゆる月相を描き出すことで、月面の細部を驚くほど正確に位置づけており、一世紀以上のあいだ、最良の月面アトラスとして重宝された。この時代の天文学者たちが、どれほど不十分な手段で、どれほど多くのことを成し遂げたかを知ると、彼らの忍耐と技量に対する深い敬意を禁じ得ない。

当時の望遠鏡の大きさや外観、架台の様子は、図8から概ね見てとることができる。この図は、ヘウェリウスがデカルトの『ジオプトリカ(Dioptrica)』に示された提案にもとづくとしている、やや進歩した形式の望遠鏡を示したものである。外見から判断すると、この筒の長さは約6フィート、口径はおよそ2インチで、焦点調整用の引き出し筒を備えているようである。天頂付近を観測できるよう、鏡筒を支える架台の頭部を偏心させてある点には、特に注意を払う価値がある。

ついでながら、ヘウェリウスは、やや誇らしげに、自身の発明である「ポレモスコープ(Polemoscope)」についても説明している。これは、彼の言葉によれば1637年に考案された小さな器械で、実のところ世界初の潜望鏡にほかならない。図9に示すように、太さ1と2/3インチの筒 c に、直角枝管を二本取り付けたもので、長い枝 e の先に対物レンズ f を置き、点 g と点 a に45度傾けた鏡を置き、最後に点 b に凹レンズ接眼を配置する。長い筒の長さは22インチ、上方の枝は8インチであり、塹壕や胸壁で使うのに適した大きさであった。

[図8――17世紀の天文学者とその望遠鏡。]

[図9――最初の潜望鏡。]

ヘウェリウスは、まだ若いこの時期に、当時知られていた実用光学について多くを学び、合理的な方法で太陽黒点を暗室に投影して観測する術を考案し、さらには、おそらく最初の有用な望遠鏡検査法についても示している。彼は、太陽や惑星を利用した観測にもとづいて、望遠鏡の性能を評価することを提案しているのである。のちには、彼は長焦点望遠鏡の設計と架台、そして観測において大きな業績を上げることになるが、他の点では進歩的であったにもかかわらず、望遠照準器の重要性を理解しなかったのは、きわめて奇妙である。彼は一貫してこれを使用することを拒んだ。

やがて望遠鏡の製作は、さらに熟練した手に委ねられることになった。1650年ごろからまもなく、クリスチャン・ホイヘンス(Christiaan Huygens, 1629–1695)と、その有能な兄コンスタンティン(Constantijn)が、天文学に強い興味を抱き、真円な工具を作り、レンズを研磨・研削するための、すぐれた新方法を考案した。

[図10――クリスチャン・ホイヘンス。]

1655年までには、彼らは焦点距離12フィートの望遠鏡を完成させており、これを用いて土星の研究を開始し、最大の衛星タイタンを発見し、環の存在を認識した。さらに研究を進め、焦点距離23フィート、口径2と1/3インチの望遠鏡を製作し、四年後には、この器械を用いて、クリスチャン・ホイヘンスはついに土星環の謎を解き明かした。

このレンズは、1695年末に描かれた火星のスケッチが証言しているところによれば、よほど性能のよいものであったようである。そのスケッチには、はっきりと大シルチス(Syrtis Major)が描かれており、ホイヘンスはその観測から、火星の自転周期がおよそ24時間であると決定している。

ホイヘンス兄弟は、長焦点望遠鏡が、口径をほどほどに抑えれば、収差を小さくできるという利点を、最初に完全に理解した人物であったと思われる。彼らは通常、上述したような比率――すなわち、口径を焦点距離の平方根にほぼ比例するように保つ――を用いて、大型レンズの設計を行っている。

次の二十年間で、望遠鏡の焦点距離は、ほとんど狂気じみた極端さにまで押し広げられた。ホイヘンス兄弟は、焦点距離210フィートに達するレンズまで作り、多くのやや短いレンズも製作した。有名な例として、口径6インチ、焦点距離123フィートのレンズがある。これは王立協会に寄贈され、いまも協会に所蔵されている。オゾー(Adrien Auzout)はさらに長焦点の望遠鏡を作り、ローマのディヴィニ(Divini)とカンパーニ(Campani)も、それにさほど劣らない成果を上げていた。カンパーニはパリ天文台のカッシーニの望遠鏡を製作した。イギリスの職人たちも同様に精力的に働いており、ダンツィヒのヘウェリウスも、その記録に追いつこうと奮闘していた。

[図11――ヘウェリウスの150フィート望遠鏡。]

このような途方もなく長い焦点距離の望遠鏡は、筒に収めて架台に乗せることがほぼ不可能であった。そこで観測者たちは、「空中望遠鏡」と呼ばれる方式を採用せざるをえなかった。そこでは、対物レンズを長い梁や桁の先端に取り付け、接眼レンズは反対側の地上近くに置かれたのである。図11は、ヘウェリウスが実際に用いた、焦点距離150フィートの望遠鏡の構造を示したものである。

この例では、主な支持体は、板を組み合わせて補強したT字型の木製梁であり、さらに軽い木製の隔壁を短い間隔で配置することで、剛性を高めている。隔壁の開口部は、対物レンズに近い側で約8インチ、下方へ行くほど徐々に大きくなっている。全体の整列は、鉛直面内で張力を均等にするための索具によって行われ、40フィートごとに接合された主梁の各節点からも、スプレッダーと索具が張られている。全体を支えるマストは、ほぼ90フィートに達した。

これらの長大な器械は、あまりにも扱いにくく不便であったため、光学的な欠点は差し置くとしても、その大きさに見合う成果をもたらさなかったのは、むしろ当然といってよい。実際のところ、実りある観測の多くは、焦点距離20~35フィート、口径2~3インチ程度の望遠鏡によって行われていた。

1684年、ドミニク・カッシーニ(Giovanni Domenico Cassini)は、カンパーニ製の焦点距離100フィートおよび136フィートの対物レンズを用いて土星を注意深く観察し、その衛星テティス(Tethys)とディオネ(Dione)を発見した。だが彼は、すでに17フィートのレンズでイアペトゥス(Iapetus)を、34フィートのレンズでレア(Rhea)を見つけていた。前者二枚の長焦点レンズは空中式、後者の短いレンズは梯子状三脚に載せた筒に取り付けられていた。焦点距離20フィート、倍率90倍のレンズは、カッシーニに土星環の「カッシーニの間隙」を見せた。

一方で、デカルトが提唱した非球面レンズをめぐる格闘も続いていた。ホイヘンスは、おそらくこれを試みていたことが明らかであり、ヘウェリウスもある時期、双曲線面を完全にマスターしたと信じていたようだ。しかし、彼が公表した図からは、球面収差が目に見えるほど減少した形跡はほとんど見られない。当時の主な課題は、良質なガラスを入手し、それを正しい形状と良好な研磨面に仕上げることであり、その点でホイヘンスとカンパーニは卓越していたことは、土星に関する彼らの業績が物語っている。

このころは、いわば天文学の「大衆化」の夜明けでもあり、多くの紳士が、少なくとも天体観測への一時的な興味をかき立てられていた。ペピスは、不朽の『日記』にこう記している。「その晩は非常にはっきりと澄んだ夜であったので、眠くて仕方がなかったが、リーヴスが持ってきた長さ12フィートの望遠鏡と、6フィートの望遠鏡を使い、我が家の屋上で、午前1時まで月と木星を眺めていたが、その眺めは実に愉快なものであった。そして、あの望遠鏡の一本は、ぜひ買おうと思う。」重度の乱視であった可哀そうなペピスが、実際にはあまり多くを見ることができなかったであろうことは容易に想像がつくが、当時は、めざましい発見の時代を経たあとの、科学にしばしば訪れる活気づいた時期であり、天文学はまさに時代の空気の中にあった。18世紀末、ウィリアム・ハーシェル(Sir William Herschel)の偉業によって、同じような刺激が再びもたらされることになる。

ちょうどこの時期、望遠鏡史の興味深い一幕が――反射望遠鏡に関する試みとその挫折、そして放棄というかたちで――現れた。

[図12――グレゴリーによる反射望遠鏡の略図。]

1663年、スコットランドの著名な数学者ジェームズ・グレゴリー(James Gregory, 1638–1675)は、『オプティカ・プロモタ(Optica Promota)』を出版し、その中で彼の名を冠した、洗練された形式の反射望遠鏡を記述した。これは、中心に穴をあけた放物面鏡の焦点の外側に、楕円面の凹面補助鏡を置き、そこから来た光を主鏡の中央の穴を通して接眼レンズへ導くものである。この方式は、像が正立するという利点をもち、理論的にも実用的にも正しい構成であったが、当時の光学職人には、必要な曲面を与えることがまったく不可能であった。図12は、彼が公開した略図を示している。

翌年、グレゴリーはロンドンの光学職人リーヴ(Reive)に、6フィートの望遠鏡の製作を依頼したが、このやや野心的な試みは、リーヴが鏡に必要な曲面を与えられなかったために失敗した。[4] その後、この件については、何の進展も見られなくなる。1674年、才気あふれるロバート・フック(Robert Hooke, 1635–1703)がグレゴリー式望遠鏡を製作したが、これも特筆すべき成果にはつながらなかった。伝承によれば、グレゴリー自身も1675年、死の間際に同形式の望遠鏡を使用していたらしいが、その後この発明は姿を消す。

[4] 彼は布の上で研磨しようとしたが、それだけで十分な失敗の理由になる。

続いて現れた反射望遠鏡は、やはり技術に大きな影響を与えるには至らなかった。それは、プリズムを用いた光の分散実験で名高いアイザック・ニュートン(Isaac Newton, 1643–1727)が考案したものである。彼は屈折望遠鏡の色収差に絶望し、反射式へと関心を向けた。

不幸なことに、屈折率と分散が比例関係にあるかどうかを確かめようとした実験の中で、彼は奇妙な誤りを犯した。水で満たしたプリズムの屈折率をガラスに等しくするため、酢酸鉛(いわゆる砂糖鉛)を溶かし込んだのである。こうして、実験の決定的な条件において、未知量を二つ同時に変化させるという明白な不手際に気づかぬまま、彼は、あらゆる物質において、屈折率と分散は正確に比例して変化する、すなわち、二つのプリズムやレンズが同じだけ光を分散させるなら、それらは同じだけ光を屈折させる、という結論に飛びついてしまった。この彼の誤りが、後世にどのように伝えられたのかを知るのは興味深い。ある天真爛漫な弁護者が述べたように、その話は『光学(Opticks)』には出てこない。だが、大のニュートン崇拝者であったブリュースター卿(Sir David Brewster)と、ジョン・ハーシェル卿(Sir John Herschel)は、この事実をきわめて明確に伝えている。推測を許されるなら、この話はケンブリッジ大学の内部から漏れ出し、ウィリアム・ハーシェル卿に、あるいは科学史に豊富に見られる「研究の裏話」の経路を通じて伝わったのかもしれない。いずれにせよ、偉大な学者の名に支えられた誤りは、長く大きな影響力を持つものであり、その結果、無収差望遠鏡(アクロマート)の実現は、およそ四分の三世紀も遅れることになった。

屈折式に見切りをつけたニュートンは、王立協会の会員に選出された直後の1672年、彼の設計による小さな6インチ模型を協会に提出した。これに対しては喝采が送られたが、その後半世紀ものあいだ、技術に対して何らの影響も与えることなく、棚ざらしにされることになる。

ニュートンは、視線と筒の軸とを一致させることをやめ、45度に傾けた平面鏡を焦点のすぐ手前に置いて像を筒外に取り出すという、きわめて簡潔な方法を採用したが、最初の論文で示した放物面鏡を不適切にも放棄してしまった。そのため、彼が実際に公表した形式は、主鏡として球面凹面鏡を用い、45度に傾けた楕円形の平面鏡を組み合わせるという構成であった。のちに彼は、いくつかの論文で、この組み合わせで十分だと弁護している。[5]

[5] 図13において、A は筒の支持および焦点調整ネジ、B は直径1インチの主鏡、C D は斜鏡、E は主焦点、F は接眼レンズ、G は斜鏡を支える部材である。

[図13――ニュートンの反射望遠鏡模型。]

ニュートンの判断の誤りは、おそらく彼が実地の天文観測に乏しかったことに起因していた。彼は、当時の望遠鏡の真の問題は、すべて色収差にあると考えていたようだが、実際には、視野の端での光の強度はきわめて低く、分散による像の不鮮明さは、その分大きく軽減されていた。むしろ、長焦点・小口径の対物レンズは、定義力の点でかなり良好な性能を発揮していたのである。そして、その収差は、ニュートンが構想したような大口径・短焦点の球面凹面鏡に比べれば、むしろ軽微であった。もし彼が、ある程度の大きさと倍率を持つ反射望遠鏡を実際に製作していたとすれば、その定義力は、球面形状による収差のために、必然的に致命的なほど損なわれていただろう。[6]

[6] 実際、「ニュートン氏の発明による4フィート望遠鏡」が、彼の最初の論文から二週間後に王立協会に持ち込まれたが、その性能は「まずまず」といった程度であり、その後の会合までにやや改良されて返却されたが、フック氏が「可能なかぎりの完成」を試みるために回されたあとは、もはや記録に現れない。

1672年初頭、カッセグレン(M. Cassegrain)は、ベルセー(M. de Bercé)に、自身が考案した反射望遠鏡の設計を伝え、それがのちに『フィロソフィカル・トランザクションズ』1672年5月号に、さらに前には『ジュルナル・デ・サヴァン(Journal des Sçavans)』に掲載されることになった。図14は、ベルセーが描いた粗略な原図である。この設計は、グレゴリーの構成とは異なり、焦点の外側に凹面楕円鏡を置く代わりに、主焦点の内側に凸面副鏡を配置するものである。その結果、像は倒立する。

[図14――ベルセーが描いたカッセグレン望遠鏡のスケッチ。]

発明者は、科学史では「フランス人カッセグレン」と記されることが多いが、実はルイ14世に仕えた彫刻家ギヨーム・カッセグレン(Guillaume Cassegrain)であった。彼は王のために多くの胸像や彫像を鋳造し、たとえば1666年には、ベルタンの原型にもとづく国王の胸像を制作して1200リーヴルを受け取っている。その後、彼はヴェルサイユ宮殿の庭園装飾のために、古代彫像の複製を多数制作した。王室の記録から彼の名が消えるのは1684年であり、おそらくその1、2年後に没したと考えられる。

問題の時期には、ベルセーと同様、おそらくシャルトル出身であったようである。青銅の加工や鋳造の技術を熟知していた彼は、鏡の製作に非常に適した人物であり、実際に反射望遠鏡を作っていた可能性は高い。彼自身が望遠鏡を作ったという確証はないものの、『ジュルナル・デ・サヴァン』には、彼の発明が「小型の近づけ望遠鏡(petite lunette d’approche)」であると記されており、存在しない物の大きさをわざわざ形容することは、普通は行われない。彼が1672年初頭にベルセーに設計を明かす以前、どれほど長くこの問題に取り組んでいたのかは不明である。

ニュートンの発明の方が早かった可能性は高いが、その二つは独立しており、ニュートンが、ベルセーのごく表面的な記述に依拠して、「球面鏡を使うとはけしからん」とカッセグレンを批判したのは、やや不当であった。というのも、自分自身は放物面鏡を不要と見なしていたからである。

いずれにせよ、これ以上の進展は見られず、グレゴリー、ニュートン、カッセグレンの考案は、まとめて約半世紀にわたり葬り去られることとなった。

これら初期の試みは、鏡材料やその加工法について、驚くほどわずかな情報しか残さなかった。そのため、のちにこの道を歩んだ人々――ロス卿(Lord Rosse)まで含めて――は、ほとんど手探りで問題を解決しなければならなかった。ニュートンの最初の論文からわかるのは、彼が、鐘銅にヒ素を加えて白くした合金を用いていたということである。これは、錬金術師たちの知識に由来する。

これらの思索家たちは、銅にヒ素を加えることで、その色を白っぽくし、銀に至る道の中間点に達したと考えていた。現代の目から見ればきわめて愚かな話だが、金属の本質的性質が知られておらず、化学分析の方法もなかった時代には、科学的実験の道はきわめて険しかったのである。

ニュートンが、初期の論文で言及している「ロンドンで使われている鋼のような物質(steely matter, imployed in London)」が、どのような合金であったのかは、分かっていない。おそらく、普通の鐘銅よりもスズを多く含んだ硬い合金の一種であったのだろう。ホイヘンスがニュートンとの往復書簡の中で言及しているスペキュラム(金属鏡)が、どのような種類の金属であったかも、はっきりしない。

加工法に関して、ニュートンがピッチ(松脂)による研磨法を公にしたのは、これより三十年も後のことであった。一方、ホイヘンスは、かなり以前から、自らの真円工具をピッチで研磨していたことが知られている。おそらく、どちらもこの方法の発明者ではなかっただろう。光学職人たちは、生来、秘密主義の傾向があり、工房の方法は長いあいだ外部に漏れず、あるいは再発見されるまで公にならないのである。

現代のスペキュラム金属は、本質的には銅4原子とスズ1原子からなる化合物(SnCu_{4})であり、重量比で銅約68パーセント、スズ約32パーセントである。過去に用いられた配合を含め、いずれも鋳造と加工がきわめてやっかいな物質である。こうして反射望遠鏡は、一度は歴史の舞台から姿を消した。

長焦点望遠鏡は、わずかな品質向上を伴いつつ、ますます長大化していったが、次の十年は、ホイヘンス式接眼レンズの導入によって特徴づけられる。これは、それ以前の単レンズに比べ、驚くべき改良であり、今日でもわずかな変更を加えただけの形で使用されている。

[図15――ホイヘンス接眼レンズの略図。]

図15に示すように、この接眼レンズは、平凸の視野レンズ A と、その3分の1の焦点距離をもつ平凸の眼レンズ B から構成され、それらの間隔は両者の焦点距離の差に等しい(のちには、その中間に絞りを置く)。この接眼鏡は、対物レンズの主焦点の内側へ差し込まれ、視野レンズ上に結像した光が、さらに眼レンズによって像を結ぶように調整される。

ホイヘンスの観点から見た最大の利点は、きわめて広い有効視野――およそ4倍の拡大――であり、さらに現代的な観点から見れば、この組み合わせは実質的に色収差がないことも重要である。高倍率の接眼レンズが必要となりつつあった当時には、とりわけ重大な改善であった。

さらに、対物レンズの形状を改良することで、球面収差を抑える点でも大きな進歩があった。いわゆる「クロスド・レンズ(crossed lens)」が、かなり広く採用されたのである。この形式は両凸レンズで、通常のガラスを用いる場合、後面の曲率半径を前面の6倍にとる。これにより、平凸レンズを最適な向き(平面側を後ろ)で用いた場合よりも、さらに良好な結果が得られた。対物レンズの焦点距離は、緑色光、すなわちスペクトルの中央の明るい部分について定義され、紫はそれよりもかなり手前、赤はかなり後ろに結像した。

具体例としては、口径3インチ、倍率100倍の望遠鏡は、およそ30フィートの焦点距離をもち、紫の焦点は約6インチ手前、赤の焦点は同じだけ後ろにずれていたであろう。初期の観測者たちが、このように貧弱な手段で、これほど多くの成果を挙げたことは、大いに称賛に値する。しかし実際には、長焦点望遠鏡は、機械的な行き詰まりに達していたのであり、そのため17世紀最後の四半世紀と次の世紀の最初の四半世紀は、主として比較的短い器械による位置天文学の発展によって特徴づけられることになる。

[図16――最初の実用反射望遠鏡。ジョン・ハドリー作(1722年)。]

やがて新しい時代が訪れ、それは驚くほど突然であった。1722年末、ジェームズ・ブラッドリー(James Bradley, 1692–1762)は、焦点距離212フィート3インチの対物レンズで金星の直径を測定したが、そのわずか三か月後、ジョン・ハドリー(John Hadley, 1682–1744)が王立協会に、最初の実用的な反射望遠鏡を提出し、旧来の秩序はほとんど終わりを告げたのである。

ジョン・ハドリーは、実際上も法的にも、反射望遠鏡の真の発明者と見なされるべきである。それは、エジソン氏が白熱電球の発明者とされるべきなのと同じ意味で、いやそれ以上に正当である。実際、ハドリーの場合に対して主張しうるのは、五十年前に試みられ、そのまま放棄された実験だけだからだ。さらに重要なのは、彼が、グレゴリーとニュートンがつまずき、あるいは退却した本質的な一歩――すなわち鏡面を放物面に成形すること――を、見事にやり遂げたことである。

彼が提出した器械は、口径約6インチ、焦点距離62と5/8インチで、3年前に製作・試験済みであった。頑丈な経緯台架台に載せられ、微動装置を備え、ニュートン式の斜鏡を用いている。凸レンズと凹レンズの両方を接眼に用い、倍率は約230倍に達した。

図16に示すように、全体の構成はほぼ自明である。注目すべき点としては、スペキュラム(金属鏡)が木製筒内で、前方の3個のスタッドに押し付けられ、背面の3本のネジで支持されていること、斜鏡と接眼レンズが広い溝の中を摺動するスライダーによって保持され、送りネジで移動すること、主鏡にアクセスするための扉があること、そして適切なファインダーを備えていることなどが挙げられる。高度方向の運動は、重力に逆らって巻き上げるコードを鍵で操作して得られる。方位方向の運動は、水平方向のレールに沿って走るローラー支持部によって行われ、一方向には鍵とコードによる牽引、逆方向には、主柱内部のバネによる回転で与えられる。主柱上部の頭部には鏡筒の耳軸を受ける側板が取り付けられている。

数か月後、この望遠鏡はブラッドリーとジョン・パウンド牧師によって、王立協会が所有していたホイヘンスの焦点距離123フィートの対物レンズと綿密に比較試験されたが、結果はまったく満足すべきものであった。ハドリーの反射望遠鏡は、長焦点レンズで見える天体はすべて捉えることができ、同程度の倍率をかけても像の定義は同等であり、わずかに光量が劣るだけであった。特に彼らは、土星の五つの衛星すべてとカッシーニの間隙を見た。ハドリー自身は前年に、惑星の北側の環の端にさえ、間隙を認めている。また、環が土星本体に落とす影も観測できた。

大きなスペキュラムの鋳物は決して完全ではなく、研磨がうまくかからない斑点も多かったが、鏡面の形状はかなり良好であったに違いない。もし口径6インチ、焦点距離62と5/8インチの主鏡が球面であったなら、その球面収差による像のぼかしは、カッシーニの間隙の幅の20倍ほどにも達したであろうし、五つの衛星すべてを見つけることなど、ほとんど不可能だったはずである。

その後まもなく、ハドリーは、自身が用いたスペキュラムの研磨・放物面成形法だけでなく、球面から放物面に形状を変化させていく過程であらわれる収差を観察することで、正しい形状を検出する方法も、公表した。この手法は、今日でもしばしば利用されている。

ハドリーの仕事がもたらした影響は深遠であった。彼の指導のもと、多くの職人が良好な形状の鏡を製作するようになり、とりわけモリニュー(Molyneux)とホークスビー(Hawksbee)が優れた成果を上げた。反射望遠鏡はかなり一般的となり、次の十年の初めには、きわめて高い職人技を持つジェームズ・ショート(James Short, 1710–1768)が登場する。彼は放物面鏡の成形技術を完全に習得しただけでなく、大成功を収めながら、楕円面副鏡を用いるグレゴリー式光学系にも、すぐに取り組んだ。

彼のスペキュラムは非常に明るく、F/4からF/6程度の明るさを持ち、金属の品質も優れていたため、彼の制作した鏡のいくつかは、一世紀以上を経た今日でも、良好な研磨面と定義力を保っていると言われる。彼は口径12インチに達する鏡も製作したと伝えられている。彼の具体的な加工法は、死とともに失われた。彼は自らの工具を、死の前に破壊させたのである。

カッセグレン式反射望遠鏡は、本来ならば放物面主鏡と双曲面副鏡を持つべきものであるが、18世紀にはほとんど作られなかったようである。ただし、ラムズデン(Jesse Ramsden, 1735–1800)の手に渡った一例が存在する。

天文観測用の屈折望遠鏡は、反射望遠鏡の登場以降、あまり多くは作られなかったが、それでも一般用の手持ち望遠鏡としては、依然として重要な地位を占めていた。というのも、反射望遠鏡は、迷光の問題のために携帯用としては扱いにくかったからである。そのため、長く、色収差が補正されていないにもかかわらず、屈折式はこの用途では確固たる地位を保ち続けた。

しかし救いは間近に迫っていた。ショートがその華々しい経歴を歩み始めてからほどなくして、エセックスの紳士チェスター・ムーア・ホール(Chester Moor Hall, 1704–1771)が、王冠ガラスとフリントガラスを用いた、最初のアクロマート望遠鏡の設計と製作に成功したのである。彼は、誤った信念――すなわち、(かつてグレゴリーも考えたように)人間の目が、無収差光学系の一例であるという考え――に導かれて、数年間この問題を研究していたと言われる。

いずれにせよ、ホールは1733年にはすでに、ロンドンのジョージ・バスト(George Bass)に望遠鏡の製作を依頼しており、もっとも確かな証拠によれば、いくつかの器械が作られたようである。その中には、口径2インチ強、焦点距離約20インチ(F/8)の対物レンズを備えた望遠鏡も含まれていた。また、その後も、同様の望遠鏡がバストや他の職人によって製作・販売されている。

これらの事実は明らかであり、さらに、ホールの友人たちばかりでなく、ロンドンの職人たちのあいだでも、彼の発明が知られていたにもかかわらず、この業績が何らの反響も呼ばなかったことは、きわめて奇妙である。それがようやく再発見され、特許が申請されたのは、著名なジョン・ドルンド(John Dolland, 1706–1761)が1758年にそれを発表したときであった。

物理的な事情が、この不思議な無視の手がかりを与えてくれる。ホールの時代に利用可能であった、分散特性の大きく異なるガラスは、ごく普通の王冠ガラスと、宝石カットに用いられていたフリントガラスだけであった。これは現在で言えば「ライト・フリント」に相当し、均質性という点では程遠い代物であった。

[図17――ジョン・ドルンド。Lodge “Pioneers of Science.”

このような材料から、球面収差が十分に小さい複合対物レンズを作ることは、実際上きわめて困難であった(これはドルンド親子がすぐに痛感したことである)。とくに、ホールが経験的手法だけで作業していたことを考えれば、なおさらである。さらに、欠陥だらけのフリントガラスというハンディキャップが加われば、これら最初のアクロマートは、原理的には正しく設計されていたとしても、当時の安価で単純な手持ち望遠鏡に対して、十分な優位性を示すには至らなかったのだろう。

1753年にジョン・ドルンドは、ニュートンの誤説を熱烈に擁護し、ユーラー(Euler)のアクロマチズムに関する見解に反対する論文を王立協会に提出していたが、二年後には考えを改め、熟練した計画的な実験を重ねた末、1758年初頭にアクロマチズムの発見を公表した。その功績により、4月19日に特許が与えられ、同年には王立協会からコプリ・メダルを授与された。それ以後、彼が1761年末に亡くなるまで、そして息子のピーター・ドルンド(Peter Dolland, 1730–1820)が後を継いでからも、親子は精力的にアクロマート対物レンズを製作し続けた。

ドルンド親子は卓越した職人であり、彼らの初期の製品は、おそらくホールの対物レンズよりもかなり優れていた。しかし、彼らは適切なフリントガラスの不足に悩まされ、ジョン・ドルンドの死からほどなく、1765年ごろには三枚玉対物レンズに活路を求めるようになった。図18は、その初期例の一つを示しているが、多少の改良を加えつつ、この形式は長年にわたってピーター・ドルンドの標準的な構成であり続けた。

[図18――ピーター・ドルンドの三枚玉対物レンズ。]

他の光学職人たちもアクロマート対物レンズの製作に乗り出し、ピーター・ドルンドが特許侵害で訴えると公言すると、1764年にはロンドンの光学職人35名が連名で、ジョン・ドルンドの特許無効を求める請願を提出した。彼らは、ドルンドが真の発明者ではなく、チェスター・ムーア・ホールの先行研究を知っていたと主張した。署名者の中には、25年前にホールの対物レンズを製作したジョージ・バストも含まれていた。また、コールドバス・フィールズのロバート・リュー(Robert Rew)は、1755年にホールの対物レンズの構造についてドルンドに知らせたと主張していた。

ちょうどその時期は、ドルンドがアクロマチズムに関する見解を一転させた時期と一致しており、リューからか、あるいは別の情報源から、二枚組のアクロマート対物レンズが実際に作られていたことを知った可能性はある。しかし、彼が王立協会に提出した論文は、誠実な研究の成果であることを示しており、最悪の場合でも、彼の立場は、150年前のガリレオとほぼ同じと言ってよい。

この請願は、結局、訴訟に発展しなかったようである。その一因は、翌年ピーター・ドルンドが請願者の一人であるチャンプニーズ(Champneys)を特許侵害で訴え、勝訴したことにあるのかもしれない。この裁判で、判事のカムデン卿(Lord Camden)は、のちにしばしば引用される次のような判決理由を述べている。「発明を机の引き出しにしまい込んでおく者が、その発明の特許で利益を得るべきではない。そうではなく、公益のために発明を世に出した者こそが、その恩恵にあずかるべきである。[7]」

[7] この言葉は、しばしばマンスフィールド卿(Lord Mansfield)のものとされるが、それは誤りのようである。

事実が判事の述べたとおりであるとすれば、この見解はきわめて妥当な衡平論である。しかし、ホールは、自らの発明を公表しなかったとはいえ、それが多くの人々に知られるようになっていたことも事実である。チェスター・ムーア・ホールは、しっかりとした評判を持つ一流の弁護士であり、インナー・テンプルのベンチャー(幹事)でもあった。彼が隠匿の罪に問われたとされるのは、ドルンドの特許に異議を唱えなかった、という一点に尽きる。もしホールが、矛盾点を突く気満々で法廷に現れていたなら、技術的な優先権はもちろんのこと、公開使用の事実についても、十分な証拠を示せたに違いない。しかし、自らの権利を長年放置した以上、彼はその主張を失っていたわけであり、おそらくは、光学職人たちが互いに争うのを静観している方を選んだのだろう。ホールの望遠鏡は、実際、1827年の時点でも現存が確認されている。

18世紀が終わりに近づくころ、天文観測の分野では、主としてグレゴリー式光学系を用いた反射望遠鏡が主流を占めていた。一般向けの手持ち望遠鏡は、旧式の多段引き出し式屈折望遠鏡であり、新たに登場したアクロマート屈折望遠鏡は、「専門業者専用」の高級品であった。良質なアクロマート対物レンズを作るのに適したガラスは、まだほとんど製造されておらず、また、大規模な観測に耐えうる大きさのガラス円板も入手できなかった。口径3インチの対物レンズが、「かなり大きい」と見なされていたのである。

第2章

現代の望遠鏡

旧来の天文学と新しい天文学とを、観測の面でも機器の面でも結びつける主要な架け橋となったのは、ウィリアム・ハーシェル卿(Sir William Herschel, 1738–1822)である。第一に、彼は鏡面の「面出し(フイギュアリング)」を、それまでの先人たちが到底及ばなかった水準にまで高めた。第二に、口径が像の鮮鋭度と光の捕捉力にとってどれほど絶大な価値を持つかを、実例をもって教えた。彼の生涯は、いまだ十分に書かれたとは言いがたいが、クラーク嬢の『The Herschels and Modern Astronomy(ハーシェル家と近代天文学)』は、「不可能」を知らぬ業績の記録として、きわめて読むに値する著作である。

[図版:Miss Clerke’s Herschel & Modern AstronomyMacmillan
図19――ウィリアム・ハーシェル卿。]

彼はハノーヴァーの有能な軍楽隊長の息子として生まれ、卓越した音楽的才能を持つ一家のなかで音楽家として育った。1757年には軍務を投げ打ち、イギリスへ移住したが、これは世界にとって大きな利益となった。それからほぼ10年のあいだ、彼は音楽の道で身を立てようと懸命に努力する一方で、音楽理論だけでなく数学や諸外国語にも、あらゆる機会をとらえて独学で取り組んだ。1767年になると、彼は社交界で名高いバースに落ち着き、有名なオーケストラのオーボエ奏者となり、八角形礼拝堂(Octagon Chapel)のオルガニストを務めている。彼の才能は多くの弟子を呼び寄せ、やがて彼は、かつて演奏していたオーケストラの指揮者となり、この古い名高い保養地の音楽界をほぼ意のままにする存在となった。

1772年、2フィートのグレゴリー式反射望遠鏡を借り受け、気まぐれに星を眺めたことが、彼にとっての「啓示」となった。これが天の王国への入口であり、彼はロンドンで自分用の望遠鏡を買おうとしたが、その価格は彼の手に余るものであることがわかった(ショート製の口径4½インチ、焦点距離2フィートの望遠鏡でさえ、35ギニーと記載されていた)。そこで、単純な屈折望遠鏡を自作しようとして何度か失敗したのち、ついにスペキュラム(金属鏡)の鋳造と研磨に本腰を入れて取り組むことにしたのである。

彼には優れた機械的能力が備わっていたとはいえ、新しい技術はきわめて困難で、長く彼を苦しめた。最初の成功した望遠鏡を作り上げるまでに、口径の小さな円板だけでも200枚ほどを鋳造・加工し、さらにその直後の大きなサイズの試みにおいては、これをはるかに上回る数をこなしている。

年月とともに、成功する割合は増えていったが、最初のころは良い面形状が得られるかどうかは、かなり偶然まかせだったようである。しかし、2年ほどのうちには、彼はこの技術の何たるかを身につけ、きわめて優秀と思われる5フィート鏡を完成させ、さらに優れた7フィート鏡(口径6¼インチ)を製作し、その後も一層大きな鏡を作り上げていった。

ハーシェルの最良のスペキュラムは、実に精緻な面形状を持っていたに違いない。彼の7フィート望遠鏡は、グリニッジで、ショート製9½インチ望遠鏡と比較試験され、後者を大きく圧倒した。彼がこの7フィート望遠鏡で1781年に「ジョージウム・シドゥス(Georgium Sidus)」――すなわち天王星(Uranus)――を発見すると、彼はたちまち名声と公的な認知を得た。それとともに、彼はさらに大きな努力、とりわけ口径拡大へ向けた努力に駆り立てられた。口径の重要性を彼は完全に理解していたのである。

1782年には、口径12インチ、焦点距離20フィートのスペキュラムを完成させ、続いて1788年には、同じ焦点距離で口径18インチの鏡を完成させた。その前年には、反射望遠鏡を初めて「前面観測式(front view)」――いわゆるハーシェル式望遠鏡――に組み替えている。それまで彼は、いくつかのグレゴリー式鏡を除けば、ニュートン式と同様に斜鏡を用いていた。

第2反射で光の約40パーセントが失われることから、彼は主鏡をわずかに傾け、焦点を開口の縁近くに追い出し、そこに接眼レンズを置いて、上から直接像を覗き込む方式を採用した(図20)。ここで SS は大きなスペキュラム、O は接眼レンズ、i は鏡筒の縁近くに形成される像である。本来なら、主鏡を傾ければ像の鮮鋭度は著しく損なわれるはずであるが、ハーシェルは賢明にも、相対口径を穏当な値(F/10〜F/20)に抑えて望遠鏡を設計したため、この不利はかなり軽減され、その一方で、約1等級に相当する光の節約はきわめて重要であった。

[図20――ハーシェルの前面観測式望遠鏡。]

その一方で、彼は自ら最大の鏡――有効口径48インチ、焦点距離40フィート――の製作に懸命に取り組んでいた。これは近代大型望遠鏡の祖先にあたるものである。この鏡は1789年夏に完成した。スペキュラムの全直径は49½インチ、厚さ3½インチ、鋳造時の重量は2118ポンドであった。この器械の完成は、今日でも大型の部類に入るものであるが、その完成は、土星の新しい衛星二つ――エンケラドゥス(Enceladus)とミマス(Mimas)――の即時の発見によって印象づけられた。

この40フィート望遠鏡は、星雲の「スウィープ(掃天観測)」にとっても、きわめて有用であることが証明されたが、同時に、その大重量による鏡のたわみと、急速な曇りやすさのために、実用性が大きく制限されたようである。再研磨――すなわち、少なくとも2年ごとに再び面出しをやり直すこと――が必要であり、これは途方もない仕事であった。[8]

[8] これは、おそらく不利な気候条件だけでなく、ハーシェルがその卓抜な工夫にもかかわらず、鋳造の困難を完全には克服できなかったことによると思われる。そのため彼は、最大級のスペキュラムを、銅75パーセント・スズ25パーセントという組成で作らざるをえなかった。この合金は比較的加工しやすく、非常に美しいが、決して長持ちしない研磨面しか得られない。彼は、マッジ(Mudge, Phil. Trans. 67巻298頁)が経験的に考案し、その後現在に至るまで一般的に用いられているSnCu₄(銅約68%、スズ約32%)組成を、実用的にはほとんど採用していないようである。

この40フィート望遠鏡は前面観測式として用いられ、その配置は図21の通りである。前面観測式の難点は、機械的に見て、観測者を焦点位置――すなわち空中に望遠鏡の焦点距離いっぱいまで――支えねばならないことである。もし架台が赤道儀式であれば、この困難はさらに増す。このため、現代の大型反射望遠鏡では、主焦点の3分の1から4分の1程度の全長で済み、しかも光軸方向に上から覗き込むことのできるカセグレン式がほとんど普遍的に採用されている。

ハーシェルの優れた成果が一般に知られると、彼の望遠鏡に対する大きな需要が生まれた。彼は本業の合間を縫って可能なかぎりこれに応えたが、高品質の望遠鏡を世に広め、天文学に対する一般の関心を強く刺激したことは、彼の科学への最大の貢献の一つである。

[図版:Miss Clerke’s Herschel & Modern AstronomyMacmillan
図21――ハーシェルの40フィート望遠鏡。]

彼の4フィートおよび7フィートの望遠鏡二台は、リリエンタールのシュレーター(Schröter)の手に渡り、月面を体系的に研究するうえで大いに役立った。当初、ハーシェルの7フィート望遠鏡は、200ギニーで売れたと言われているが、彼はこうして得た資金を、ただちに研究のために投じた。

われわれは時に、18世紀末を、放縦がはびこり高尚な精神生活が軽んじられた時代と考えがちである。しかし、ハーシェルは、応用をもたない純粋科学への一般的関心を呼び覚ました。その高まりは、それ以後、同等の例を見つけるのが難しいほどであり、少なくともそれを上回ることはなかったと言えるだろう。試みに想像してみるとよい――ある天文学者が幸運にも海王星外惑星を見つけたとして、社交界と政財界のワシントンがこぞってその人物を称えようと群がり、外交団が彼の家の玄関に押し寄せ、海軍天文台へ向かう彼の道が、見物人や崇拝者の自動車で塞がれる――そのような光景を描いてみれば、バースのつつましい楽師が、突如として名声を得たときに実際に何が起きたのか、少しは想像がつくだろう。

ハーシェルの進歩は偉大なものであったが、それでもなお、反射望遠鏡はその後長年にわたり廃れゆく運命にあった。その理由は、すでに述べたように、スペキュラムは再研磨、すなわち再び面出しをしなければならず、とりわけ40フィート鏡のような大鏡では、その頻度が普通の専門家・アマチュアの要求に応えられないほど高かったからである。自分で面出しの作業ができる者でなければ、器械を実用状態に保つことが事実上できなかった。

ウィリアム・ハーシェル卿は、口径の小さな望遠鏡のために、常に複数のスペキュラムを用意していたし、息子であり著名な観測者でもあったジョン・F・W・ハーシェル卿(Sir John F. W. Herschel)が、1834〜38年にかけて喜望峰で行った有名な観測遠征に際しては、彼は20フィート望遠鏡用に三枚のスペキュラムと研磨機を携行している。そしてそれらは、確かに必要であった。というのも、鏡面は1週間で悪化することもあり、規則的に2〜3か月で全く使い物にならなくなったからである。

より硬いスペキュラム金属を用いた製作者たちは、いくぶん有利であった。この金属は非常にもろく、やすりで削ることはほとんど不可能であったが、適切に管理すれば、小さな鏡は長年にわたって実用的な研磨面を維持することができた。ハーシェル時代に作られた多くの望遠鏡も、じつに見事な性能を示している。

ハーシェル自身の7フィート望遠鏡のいくつかは、きわめて優れた面形状の証拠を示しており、彼は古今を通じてかなり強気と言える、1インチの口径あたり80倍程度までの倍率をふつうに用いていた。それどころか、6½インチ鏡の一つでは、2000倍以上、ほとんど6000倍に近い倍率までかけても、恒星像の円形を保つことができたとされる。もちろん、いわゆる「空虚倍率」であり、何らの新しい細部も付け加えることはないが、工作精度の高さを示す証拠ではある。

それから多くの年を経たのち、イギリスの著名な観測者、W・R・ドーズ牧師(Rev. W. R. Dawes)は、「ジュエル(宝石)」として知られた口径5インチのグレゴリー式望遠鏡を所有していた。彼はこれに430倍の倍率を常用し、ポラリス(北極星)には2000倍までかけてみたが、それでも星像の円盤は歪まなかったと報告している。また、口径約4インチの屈折望遠鏡(焦点距離5フィート)と比較した結果、グレゴリー式は集光力の点でやや劣るものの、「像の鋭さ、小さな恒星円盤、惑星輪郭の鋭さ」においては、屈折望遠鏡より優れているとしている。これらのことは、材料や方法がいくら進歩しようとも、先人たちが決して技能に劣っていたわけではないことを、はっきり物語っている。

次の大きな一歩――そしてきわめて重大な一歩――は、アクロマート屈折望遠鏡において踏み出されることになった。その一般的原理はすでに理解されていたが、均質で透明な光学ガラス、とりわけフリントガラスは、ある程度以上の大きさの塊としては手に入らなかった。今日われわれが「光学ガラス」と呼ぶものは、当時には存在しなかったのである。

興味深くも劇的な事実として、光学ガラスの技術とその工業は、ほとんど一人の人物に負っていると言ってよい。もし「無限の手間をいとわぬ能力」が天才の定義であるなら、その称号はピエール・ルイ・ギナン(Pierre Louis Guinand)にこそふさわしい。彼はスイスのヌーシャテル州ショー・ド・フォン近郊に住む職人で、置時計の鐘などを作っていた。やがて望遠鏡の製作に興味を持つようになり、イギリスからフリントガラスを輸入したところ、その品質が悪いことに気づいた。

そこで彼は、より良いガラスを作るという課題に取り組み、1784年から実験を続けた。失敗は、かえって彼を一層奮い立たせた。彼は職人として稼いだ金のすべてを自作のガラス炉に注ぎ込み、徐々に成果を得るようになった。1799年には、直径6インチもの欠陥のないフリントガラス円板を作ることに成功し、その名は知られるようになった。

さらに重要なのは、アクロマート望遠鏡にとってとりわけ価値の高い、高密度で屈折率の大きなフリントガラスの製造が、おそらくギナンの手によるものであった、ということである。光学ガラスの製造は、いつの時代も科学というよりは「技芸(アート)」であった。あるガラスの化学組成を正確に知ることと、その原料をどの順序・どの割合で炉に入れ、どの温度まで、どのくらいの時間加熱し、その融解塊をどのように扱えば気泡や筋(ストリエ)を取り除けるかを知ることとは、全く別の問題である。

近年、科学的研究によって多くのことが明らかにされてきたとはいえ、今日においても、屈折率が十分に近い二つの連続した溶融バッチを作ること――すなわち、光学的に同一と見なせる程度にそろえたガラスを続けて作ること――は決して容易ではないし、大きな円板を光学的に均質に作ることもやはり難しい。ギナンが純粋な経験によって勝ち取った知見は、計り知れない価値を持っていた。彼は1805年にミュンヘンへ移るよう説得され、やがてフラウンホーファーと協力することになった。この協力関係は、ドイツの光学ガラス産業と、近代屈折望遠鏡の両方を生み出すことになった。

ギナンは1814年にスイスへ戻り、その後もますます大きな完璧な円板を作り続けた。パリのコーショワ(Cauchoix)が加工した直径12インチの一対のガラスは、しばらくのあいだ世界最大の屈折望遠鏡の対物レンズとして用いられた。

ギナンは1824年に亡くなったが、息子アンリ(Henry)はパリへ移住し、父から受け継いだ実践的知識の宝庫をガラス工場に持ち込んだ。それは、まるで父から子へと伝えられたかのように、代々継承され、経験による蓄積によって一層豊かなものとなり、歴代の会社を経て、今日のパラ=マントワ社(Parra-Mantois)へと引き継がれている。

アンリ・ギナンの初期の弟子の一人、ボンタン(Bontemps)は、1848年革命の際にイギリスへ移住し、バーミンガムの名高いチャンス社(Chance)に、この技術をもたらした。その初期の秘訣の多くは、すでに長らく公知のものとなっているが、経験からくるきわめて細かなノウハウは、今なお計り知れない資産である。

[図22――ヨーゼフ・フォン・フラウンホーファー博士。天体物理学の父。]

19世紀最大の応用光学の巨匠であったヨーゼフ・フォン・フラウンホーファー(Dr. Joseph von Fraunhofer)により、天体望遠鏡は、ほぼ現在の形に到達した。彼はギナンの指導のもとで、ガラス製造において驚くほどの熟練を身につけただけでなく、ガラスを自動機械で数学的精度にまで加工する技術と、アクロマート対物レンズを正しく設計するための理論をほぼ独力で作り上げた。

彼が考案した形式(図23)は、初めて収差が十分な網羅性をもって処理されたものであり、とりわけ小型器械に関しては、今日に至るまでほとんど凌駕されていない。図に示された曲率は、関係を分かりやすくするため、かなり誇張して描いてある。クラウン(クラウンガラス)の前面半径は後面半径の約2½倍、フリントの前面はクラウン後面よりわずかに平らで、フリント後面はごくわずかに凸である。

[図23――フラウンホーファー式アクロマート対物レンズの曲率関係概略図。]

フラウンホーファーの工作はきわめて精密であり、彼の第一級の作品を良好な状態で比較すれば、色収差の補正、像の鮮鋭度、視野の広さの点で、現代最高水準の器械と十分に肩を並べうる、と言っても決して誇張ではない。

フラウンホーファーの最初の大型望遠鏡(口径9.6インチ、焦点距離170インチ)でドールパト(Dorpat)のストルーヴェ(Friedrich G. W. Struve, 「長老ストルーヴェ」)が行った観測は、その品質を物語るものであるし、初の本格的ヘリオメーターであるケーニヒスベルクの器械も同様である。今日でも、彼の小型器械のいくつかは、なお現役で良好な働きを見せている。

彼はまた、相対口径F/15前後という現在も一般的な慣行を初めて実用に移し、地上観測用接眼レンズを、現在広く用いられている形式へと標準化した。それ以後の改良は相対的に小さなもので、新種の光学ガラス(1世紀前には存在しなかった種類)が近年になって登場したことによる差異が主である。フラウンホーファーは1787年3月6日、バイエルン州シュトラウビングに生まれた。ハーシェルと同様、彼も独学で学問を身につけ、理論と実務を驚くほど高い水準で兼ね備え、天体物理学の基礎を築くうえで大きな役割を果たした。

太陽スペクトルの最初の詳細なマッピング、回折格子の発明と、それを用いた光の波長の測定、ガラスその他の物質における屈折と分散の最初の精密な研究、対物プリズムの発明と、その星や惑星のスペクトル研究への応用、ナトリウム線と太陽スペクトルのD線との対応の認識、さらには、のちにレイリー卿(Lord Rayleigh)とアッベ教授(Prof. Abbe)によって展開された回折理論的分解能の最初の示唆――これらは、彼の顕著な業績の長いリストの一部にすぎない。

さらにこれに加えて、アクロマート望遠鏡の完成、赤道儀架台とその恒星時追尾用時計駆動装置の改良、ヘリオメーターの改良、ステージ・マイクロメーターの発明、複数形式の接眼マイクロメーターの考案、自動分光器刻線機の発明などを挙げることができる。

彼はその創造的能力の絶頂にあった1826年6月7日に没し、ミュンヘンに葬られている。墓碑には、「星々に近づけし者(Approximavit Sidera)」との、これ以上ふさわしい者のないラテン語の賛辞が刻まれている。

フラウンホーファーの死後、その直弟子メルツ(Merz)、フランスのコーショワ、イギリスのタリー(Tully)らの手によって、アクロマート屈折望遠鏡は着実に勢力を拡大していった。反射望遠鏡は、ロス卿(Lord Rosse)の口径6フィート・焦点距離53フィートの鏡によるセンセーショナルな仕事――この鏡の口径は、その約70年後にドミニオン天文台の口径6フィート鏡が現れるまで無比であった――や、ラッセル氏(Mr. Lassell)のさらに成功した口径4フィート・焦点距離39フィートの器械にもかかわらず、徐々に使われなくなっていった。その理由はすでに述べた通りであり、再研磨がすなわち再び面出しをやり直すことを意味し、使用者が同時に天文学者であり、かつ高度な光学職人でもなければならなかったからである。

これら大型スペキュラムは、重大なたわみを起こしやすく、トーマス・グラブ(Thomas Grubb)が1834年ごろに考案した「つりあいレバー(equilibrating levers)」がなければ、ほとんど使用に耐えなかったであろう。この装置は、主鏡背面に複数の揺動する支点を配置し、そこから「上向きに押す」力を適切に配分することで、あらゆる鏡筒の姿勢において、主鏡の自重による変形を均等に分布させ、全体として面形状を保つものである。ロス卿の望遠鏡には、これが有効に用いられた。

以上が、19世紀中葉、すなわち1850年代における状況であった。そのころ反射望遠鏡は、ドイツとフランスでほとんど同時に起こった動きによって、きわめて意外なかたちで、再び実用的な器械として第一線に押し出されることになる。その出発点となったのは、リービッヒ(Justus von Liebig)による簡単な化学的銀メッキ法であった。これは、ガラス面上に薄い銀の反射膜をすばやく容易に析出させ、それを美しく研磨できるというものである。

ガラス製反射鏡への応用に関する技術的な優先権は、カール・アウグスト・シュタインハイル博士(Dr. Karl August Steinheil, 1801–1870)に属する。彼は1856年初頭ごろ、口径4インチの反射望遠鏡を製作し、倍率100倍で驚くほど良好な像を示したと報告されている。この発表は、アウクスブルクの『一般新聞(Allgemeine Zeitung)』1856年3月24日号のニュース欄に、短く紹介されただけであったから、この発明がしばらくのあいだほとんど人目に触れなかったのも無理はない。

まったく独立に、そしてほとんど同時に、翌1857年2月16日、もう一人の卓越した物理学者、ジャン・ベルナール・レオン・フーコー(Jean Bernard Léon Foucault)が、同じ技術をフランス学士院に報告した。フーコーは、振り子実験による地球自転の証明、光速度の測定、彼の名を冠した「フーコー電流」の発見によって不朽の名を残した人物である。

[図版:図24――カール・アウグスト・シュタインハイル博士。図25――ジャン・ベルナール・レオン・フーコー。銀メッキ・ガラス反射鏡の発明者。]

現代の銀メッキ・ガラス反射望遠鏡の発展は、主としてフーコーの功績に負っている。彼は職業的光学職人ではなかったため、自らの優れた研磨法と検査法を、何らためらうことなく公表したのである。検査法は、今日ほとんど普遍的に用いられている。興味深いことに、彼の面出し法は物理的に見て、ラムズデン(Jesse Ramsden, 1735–1800)が1779年の論文(Phil. Trans. 1779, p. 427)で幾何学的に指摘していたものと、まったく同一であった。フーコーの初期の望遠鏡の一つを、セクレタン(Sécrétan)が赤道儀に載せたものが、図26に示してある。

[図26――初期のフーコー反射望遠鏡。]

シュタインハイルとフーコーの見事な仕事の直接的な結果は、新しい形式の反射望遠鏡が広く用いられるようになり、とくにイギリスにおいて、ウィズ(With)、ブラウニング(Browning)、カルヴァー(Calver)といった熟練の職人たちの手で、手軽で実用的な器械として急速に発展したことである。その利点の一つとして、旧来のスペキュラム金属鏡に比べた集光力の大きさが挙げられる。銀は、可視光に対する反射率で、ほぼ7対5の比でスペキュラム金属より優れている。この時点以降、屈折望遠鏡と反射望遠鏡は、ともに望遠鏡使用者にとって十分な選択肢となった。

構造の細部においても、両者は機械的に多少の進歩を遂げた。先ほど述べたように、かつては鏡筒が木製であることも多く、架台もまた木で作られることが少なくなかった。今日では、あらゆる種類の金属加工が容易になったため、移動用の三脚の脚部を除けば、あらゆる大きさの望遠鏡の鏡筒と架台は、ほぼ例外なく金属製である。小型の屈折望遠鏡(口径3〜5インチ程度)の鏡筒は、一般に真鍮製であったが、高級器械ではこれも急速にアルミニウムに置き換えられつつあり、その結果かなりの軽量化が得られている。口径5〜6インチを超える鏡筒は、通常、塗装またはラッカー仕上げの鋼製である。小型鏡筒にしばしば見られた、美しく研磨された真鍮は、傷つきやすく、また不要に光るため、硬質ラッカーによる実用的なマット仕上げへと移行しつつある。架台も同様で、真鍮より鉄鋼やアルミニウムが用いられることが多く、とりわけ作動部にはほぼ例外なく鉄鋼が用いられる。アルミニウムはやや軟らかすぎるためである。

典型的な現代の屈折望遠鏡は、たとえ小型であっても、外見から受ける印象よりはるかに「機械的」な構造を持っている。原理的には図5に示したような単純なものであるが、実際にはずっと複雑であり、きわめて精密な工作を必要とする。もし、良くできた小型屈折望遠鏡を、光学部品と機械部品も含めて完全に分解したとすれば、ネジを除いても30〜40個ほどの別体部品が数えられるだろう。これらが正確に製作され、適切に組み立てられてはじめて、望遠鏡は正しく機能するのである。

[図27――現代屈折望遠鏡の縦断面図。]

図27は、こうした望遠鏡を端から端まで縦に切り開いて眺めたと仮定した場合の断面図を示している。

A は対物レンズを覆うレンズキャップであり、その内側に対物レンズ B が収められている。B は調整可能なセル C に取り付けられており、このセルは鏡筒 D の軸に対して厳密に直角に据え付けられている。筒の内部を覗くと、最初の絞り板 E が見える。

絞り板は通常3〜6枚がほぼ等間隔で配置されているが、その見かけ以上に重要な役割を持っている。これらの役目は、接眼レンズに届く光束を狭めることではなく、斜めから筒内に入り込み、鏡筒の内壁で反射して接眼レンズに飛び込む迷光を捕らえて吸収することである。

いくらつや消しの黒塗りを施しても、それだけでは不十分である。なぜなら、光学職人が使うような「完全なつや消し黒塗料」でさえ、きわめて斜めの入射に対しては、10〜20パーセントもの光を反射してしまうからである。絞り板と徹底した黒塗りの重要性は、少なくとも150年ほど前から認識されており、この点について強調しすぎることはない。

絞り板は、次の条件を満たすように設計されねばならない。すなわち、「最大の接眼レンズの最大径のレンズを想定し、その位置に対応する鏡筒内の開口部の縁」から鏡筒内を覗き上げたとき、対物レンズの縁がどこも切り取られておらず、かつ最も近い絞り板の外側に、鏡筒の内壁がまったく見えないようにしなければならないのである。

筒の内部をさらに下って、いくつかの絞り板を過ぎると、クランプネジ F に行き当たる。これは鏡筒を架台に固定するためのネジである。ネジは、鏡筒内側にネジ止めされた個別の台座に取り付けられている場合もあれば、鏡筒内側にネジ止めされた縦方向の帯板の両端に取り付けられている場合もある。これらクランプは、できる限り重心の位置に近づけて配置されるが、一般には対物側よりも接眼側に寄った位置に置かれる。

さらに一つか二つ絞り板を過ぎると、案内リング G に至る。これは主な引き出し筒 H をまっすぐ支える役割を持つ。H はラック I を備え、ピニオン J のローレット付きノブを回すことで前後に動き、焦点調整が行われる。鏡筒末端のエンドリング K は、H に対するもう一つの案内面となっており、GK の両方には、精密に合わされた布張りリング L, L がはめ込まれるのが普通である。これにより、引き出し筒が滑らかに動くようになる。

同じ理由から、ラック I とピニオン J は、遊びがなく均一に噛み合うよう、きわめて高い精度で切削・調整されねばならない。引き出し筒 H の外端には、さらに小さな引き出し筒 N を収めるためのスライドリング付き筒 M が取り付けられている。ここにも、動きを安定させるために布張りがなされることが多い。小引き出し筒 N の先端には、接眼レンズをはめ込むスプリングカラー O が取り付けられ、その中に通常二枚レンズ形式の接眼レンズ P が収められる。そして最後に、アイレンズから適切な距離と大きさに設定された開口を持つ接眼キャップ Q が取り付けられる。

このように、鏡筒の「アルファベット」をかなり使い切ってしまっても、まだ構造の細部全体を語り尽くしたとは言いがたい。対物セルと接眼部はいずれも、実際にはかなり複雑であり、口径3〜4インチ以上の器械では、対物セルはほとんど例外なく調整可能な構造になっている。図28は、イングランド・ヨークの名工クック(Cooke)が用いた形式の一例である。もし対物レンズの光軸が鏡筒の軸と正確に一致していなければ、像は著しく悪化する。

[図28――調整可能な対物セルの例。]

鏡筒の先端部には、フランジ付きのカウンターセル c が取り付けられる。この外側フランジ f には、120度間隔に3組の調整ネジ s₁, s₁₁ がねじ込まれている。対物セル本体 b は、内部に対物レンズを収めるための段付き構造を持ち、押さえリング d を内側または外側からねじ込むことでレンズを保持する。アクロマート対物レンズを構成する二枚のレンズは、通常、ごくわずかに離して配置される。そのためのスペーサーとして、120度間隔に置いたごく小さな錫箔片、あるいは上縁の一部を3か所だけ残して削り落としたごく薄いリングなどが用いられる。

この工夫は、レンズが不確定な点で接触することを避け、周囲全体で均一に支持されるようにするためであり、しばしばレンズ全体としても、3点支持で下側から支えられる。各組の調整ネジのうち、一方(たとえば s₁₁ 組の1番ネジ)はカウンターセルを外側へ押し出し、隣のネジ(2番)は内側へ引き込む役割を持つ。こうして調整を行った後には、対物セルはしっかりと保持される。アクロマート対物レンズでは、通常、凹面のフリントが後側(接眼側)、凸面のクラウンが前側(外側)に置かれる。

接眼部では、接眼レンズは通常、二枚のレンズがそれぞれ真鍮製のネジリングに「かしめ(burnish)」によって固定され、さらに鏡筒、フランジ、キャップ、絞りなどが組み合わされて図29のような構造をなす。接眼レンズにはさまざまな形式があり、その詳細は後述するが、ここに示したものは代表的な例である。図30は、口径4インチの現代屈折望遠鏡を示しており、可搬式赤道儀架台に搭載され、赤経方向の微動と天頂プリズム(斜鏡付き接眼)が備えられている。

[図29――接眼レンズとその装備。]

[図30――可搬式赤道儀屈折望遠鏡(Brashear 製)。]

反射望遠鏡もまた、正しく架設された場合には、多数の部品から構成される。とくにアメリカでは、その価値に比して使用例が少ないが、小型のもの――読者が手にする可能性のあるサイズ――は、ほとんど例外なくニュートン式であり、小型の斜鏡を用いて像を鏡筒外へ導き出す形式である。

グレゴリー式は完全に姿を消した。グレゴリー式の唯一の特長は像が正立することであり、アクロマート以前の時代には地上観測用望遠鏡として高く評価されていたが、構造上、視野が迷光で満たされることを防ぐのがほとんど不可能であり、アクロマートの登場後は、たちまち駆逐されてしまった。一方、カセグレン式は、鏡筒の全長が短く、収差も大幅に軽減されることから、短い筒で長い有効焦点距離を得るうえで重要な方式となり、大型反射望遠鏡にはほとんど普遍的に採用されている。多くの場合、ニュートン式として用いるための斜鏡も併設される。

図31は、典型的なニュートン式反射望遠鏡の縦断面を示している。ここで A は主鏡筒であり、その先端近くにはリング B が取り付けられていて、その中心に小型の楕円鏡 C が45度の角度で固定されている。鏡筒の底部には、放物面主鏡 D がセル E に収められている。45度の斜鏡の位置には、鏡筒に穴があけられており、そこに接眼部 F が取り付けられる。この接眼部には引き出し筒 I が収まり、その先端のスプリングカラー H に接眼レンズ G が差し込まれる。引き出し筒 I は、ラック・アンド・ピニオン機構 J によって前後に動き、焦点を合わせる。

[図31――ニュートン式反射望遠鏡の縦断面図。]

リング K, K は鏡筒に固定されており、架台の極軸に取り付けられた棒 M に固定されたリング L, L に滑らかに接している。この構造により、鏡筒全体を自軸まわりに回転させることができ、接眼部を観測に都合のよい位置へ移動できる。用途に応じて、操作用のハンドル N が一つまたは複数取り付けられる。

破線で O, O と示したブラケットは、通常のファインダー(小型の補助望遠鏡)を支えるものであり、鏡筒の下端近くには蝶番付きの扉 P が設けられている。これを開くと、主鏡を保護する密着した金属カバーを取り外したり取り付けたりできる。小型斜鏡にも同様にカバーが付いており、これは鏡筒の上端から容易に手が届く。図に示した寸法比は、口径7〜10インチ程度の中型器械によく見られるものである。焦点比はおおむねF/6前後であり、斜鏡は主鏡の直径程度だけ焦点面より手前に位置し、その短径は主鏡直径の1/5〜1/4程度である。

[図32――骨組み鏡筒を備えた反射望遠鏡(Brashear 製)。]

この図から分かるように、鏡筒内には絞り板が設けられていない。内部はできるかぎり徹底して黒塗りされるものの、迷光の問題は屈折望遠鏡と同様に深刻である。もし絞り板を十分に効果的に設置しようとすれば、主鏡よりずっと大きな直径の筒が必要となり、それは種々の点で不便をもたらす。

この問題への、はるかに優れた対処法が図32に示されている。ここでは、鏡筒が骨組みにまで簡略化されているが、この種の構造は大型望遠鏡ではよく用いられる。夜の空へ向かって開いた「何もない空間」ほど黒いものはなく、また、そのような構造では局所的な空気の対流が起こりにくいため、通常の鏡筒内でしばしば像を悪化させる気流の問題が大きく軽減される。

[図33――反射鏡の一例:ブラウニング製セル構造。]

製作者が異なれば、構造の細部も少しずつ異なる。図33は、長年にわたってイギリスの名工ブラウニング(Browning)が用いてきた代表的な主鏡セルを示している。ここで、鏡 A の背面は厳密な平面に仕上げられており、その周囲を取り囲むカウンターセル B の内側には、幅広い環状部 F, F がやはり平面として作られている。鏡はそこへ軽く載せられ、前面から押さえリングで保持される。このカウンターセル B は、外側のセル C 内の3つの等間隔の支点上に載せられ、それぞれに対応する押しネジ・引きネジの対 D, D, E, E によって調整される。外側セル C は、完全な円筒形であってもよいし、軽量化と熱平衡のために骨組み構造にすることもある。

小型のスペキュラムは、十分に剛性の高い平面の上に数層の柔らかく厚手で表面の滑らかな布――最も良いのはブリュッセル・カーペットのようなもの――を敷いて支持することでも、うまく保持することができる。これはガラス鏡以前の中型器械で一般的に用いられた方法である。ジョン・ハーシェル卿は、この方法で1ハンドレッドウェイト(約50キロ)を超えるスペキュラムを支えたこともあると述べているが、実際にはブラウニング式に近い構造の方が、一般には好ましい。

斜鏡を鏡筒中央に支持する方法にも、かなり多くのバリエーションがある。初期の望遠鏡では、一本の剛性の高い腕によって支持されるのが通例であったが、それでも剛性が十分とは言えず、明るい星の像には、回折の結果として、直径方向に長く広がった光条が現れた。

半世紀以上も前にブラウニングが導入した支持法(図34)は、この点で大きな改良をもたらした。図中のリング A(図31の B に相当)は、3本の細いばね鋼帯 B を備え、それぞれが半径方向に鏡筒中心へ延びている。その先端で3本は中央ハブに固定され、そこに斜鏡 D が調整ネジ E を介して取り付けられている。リング外周の引きネジ C によって、斜鏡を精密に中心に合わせ、確実に固定できるようになっている。まれに、斜鏡の代わりに全反射直角プリズムを用いることもある。これは若干の光損失を減らせるが、小型器械を除けば重量が重くなりすぎ、必要な品質と面形状精度を備えたものを入手するのが難しい。図35は、ブラッシャー(Brashear)製の代表的な6インチ反射望遠鏡を示しており、赤道儀架台、目盛環、駆動時計を備えている。駆動装置は中空の鋳鉄製ピラー内に収められており、これはアメリカ製器械に一般的な配置である。

[図34――斜鏡支持構造(ブラウニング)。]

[図35――小型赤道儀反射望遠鏡。]

近年、とくにアメリカにおける反射望遠鏡では、斜鏡支持に3本ではなく4本の帯板を用いることが多くなっている。これはわずかながら剛性を増し、星像に生じる回折光条を、3本支持の6条から4条へと減らす効果がある。一本の帯板は、像の両側に一本ずつ、合計で一直線上に二本の光条を生じるためである。

一部の構造では、リング A に接眼部を取り付け、鏡筒の最先端に配置したうえで、光軸まわりに回転できるようにする場合もある。この方式では、鏡筒全体を回転させずとも、接眼部を任意の位置に持ってくることができる。小型器械では、接眼部が鏡筒の北側(中緯度の北半球を想定)に取り付けられていれば、固定式の接眼部であっても特に不便はない。

反射望遠鏡は、単純なアクロマート対物レンズに比べて、はるかに大きな相対口径をとることが容易である。実際、口径比は通常F/5〜F/8に設計され、ときにはF/3、あるいはそれ以下まで押し込まれることもある。そのような明るい鏡は、写真撮影用として成功裏に用いられてきた[9]ほか、視観測用としても――よりまれではあるが――カセグレン式に組み込まれて用いられている。後者の場合、仮想焦点距離は通常、少なくとも3〜4倍程度に伸びる。最近の例では、口径1フィート以上の器械もあり、そのような構成の望遠鏡は、きわめて強力かつコンパクトな器械となる。

[9] たとえばツァイス社製のF/3・口径1 m の反射鏡が、1911年にベルゲドルフ天文台に設置され、同様の鏡がシャール(Schaer)によって製作されてジュネーヴ近郊カレー(Carre)に据え付けられている。

この形式は、近年建設された大型反射望遠鏡に広く採用されている。代表例としては、マウント・ウィルソン天文台の60インチ望遠鏡があり、その主焦点までは25¼フィートであるが、カセグレン式として用いる際の通常の等価焦点距離は80フィートに達する。

アメリカでは、小型反射望遠鏡の製作・使用例は比較的少ない。これは、反射望遠鏡が発祥・発展したイギリスと比べて、気象条件がむしろ有利であることを考えると、やや意外である。その理由は、おそらく、定常的に観測を行い、反射望遠鏡の特性を十分に活かせるような、非職業の「アクティブな天文家」の数がイギリスに比べて少ないことにあるのだろう。

屈折望遠鏡と反射望遠鏡の相対的な利点については、長年にわたり、かなり激しい論争が繰り広げられてきた。実際、この問題ほど、科学的意見の相違に通常ともなう以上の激しい感情――いわば真の odium theologicum――を呼び起こした例は、あまり多くないだろう。多くの誤解は、ごく最近まで、両形式の器械に精通した観測者がほとんどいなかったこと、そして職業天文学者の多くが、反射望遠鏡を「アマチュア用の玩具」と見なす傾向にあったことに起因している。現在では、旧来のスペキュラム金属反射鏡は姿を消し、議論の対象は、先ほど述べたふつうの屈折望遠鏡と、その直後に述べる銀メッキ・ガラス反射望遠鏡との比較にほぼ限定されるようになったため、話はかなり整理されてきた。

問題の本質は、比較的単純である。たとえば口径が等しい二台の望遠鏡――一方は反射式、他方は屈折式――を考え、それぞれが現代技術の水準において十分よく面出しされていると仮定する。この場合、理論的な分解能は同一である。なぜなら、分解能は口径のみによって決まるからであり、したがって両者の差は、屈折望遠鏡が完全には色収差を除去しきれないことによる残留誤差にのみ帰着する。この差は、多くの用途にとっては実質的に無視しうるが、すべての用途についてそうだと言うことはできない。

像の鮮鋭度についても、双方が一級の工作精度を持つという前提のもとでは、ほぼ同等と見なせる。鏡面は、屈折望遠鏡におけるどの単一面にも増して、厳密な面形状を必要とするが、今日では、十分にパラボラ形状を与えることが可能であり、そのような反射鏡が作る像は、最良の屈折望遠鏡に劣らない。両形式の望遠鏡は、良好な条件のもとでは、同じ「口径あたり倍率」の限界まで、像の崩れなく倍率を上げることができる。

ただし、鏡面は温度変化やたわみによる影響を、対物レンズよりはるかに強く受ける。屈折望遠鏡では、アクロマート対物レンズを構成する複数の面が、互いの曲率変化をある程度打ち消し合い、しかもその変化は、さらに屈折率のわずかな変化としてのみ像に影響する。それに対し、反射鏡では鏡面が唯一の光学面であり、その曲率変化は直接、しかも反射によって二倍の効果となって、像に現れる。

したがって、反射望遠鏡を用いる際には、屈折望遠鏡に比べて、外的条件に対してより繊細な配慮を払う必要がある。この点については、後ほど改めて述べる。集光力――すなわち、暗い天体を見えるようにする能力――については、なお正当な意見の相違がありうる。かつては、「反射望遠鏡の明るさは、口径が半分の屈折望遠鏡(有効面積4分の1)とあまり変わらない」としばしば主張されていた。

これは、古いスペキュラム金属反射鏡が悪い状態で用いられていた場合には、ある程度当てはまったかもしれない。しかし、銀メッキ・ガラス反射鏡に対しては、明らかな中傷である。フーコーは逆に、銀メッキ反射鏡の方が、同じ口径の屈折望遠鏡より明るいと主張した。これは一時的、つまり銀膜が極めて良好な状態にある場合には、ありうることだが、一般的な関係としては適切ではない。

実際の関係は、両形式の望遠鏡において実際に起こる光損失にのみ依存する。これらは今日ではかなりよく知られている。屈折望遠鏡における損失は、二枚のレンズを通過する際の吸収と、それぞれのレンズの自由表面(合計4面)での反射損失とから成る。前者は、口径が中程度の対物レンズでは全体で2〜3パーセントをほとんど超えない。後者は、研磨が完全であると仮定した場合、通常用いられるガラス種については、全入射光の18〜20パーセントに達する。

したがって、透過光量は良くても80パーセント、しばしばそれ以下となる。たとえばシュタインハイルが、フラウンホーファー製屈折望遠鏡の一つについて行った試験では、全透過率は78パーセントと測定されている。他の試験でも、同様の結果が報告されている。

厚みの異なるガラスにおける透過率の関係は、非常に単純である。単位厚みのガラスが入射光の m パーセントを透過するとき、厚み n のガラスは mⁿ パーセントを透過する。たとえば、厚さ1/2インチで透過率0.98(98パーセント)のガラスがあるとすると、厚さ2インチのガラスは 0.98⁴ = 0.922(92.2パーセント)を透過する。明らかに、対物レンズが大型になるほど、吸収による損失は増大する。また、単一の表面での反射損失によって透過率が m となるとき、n 枚の表面を通れば透過率は mⁿ となる。通常 m は約0.95であるから、4枚の表面を通過した後に残る光はおおよそ0.815(81.5パーセント)であり、これに厚みのあるレンズ自体の吸収を加えると、大型対物レンズ全体の透過率は、おおよそ75パーセント前後になる。

反射望遠鏡については、比較全体が、ただ一つの量――すなわち、銀メッキ面の反射率――にかかっている。

通常の反射望遠鏡では、銀面での反射が二回起こる。反射率を m とすれば、全体の透過率、より正確には全反射光量は m² となる。銀メッキ・ガラス面の反射率は、これまでに何度も測定されている。たとえばチャント(Chant, Astrophysical Journal 21巻211頁)は、95パーセントをわずかに超える値を得ている。レイリー卿(Rayleigh, Scientific Papers, Vol. 2, p. 4)は93.9パーセント、ツァイス社(Zeiss, Landolt u. Bornstein, Tabellen)は、平均波長付近の光に対して約93.0パーセントという値を示している。

最後の値を採ると、二回の反射を経た光量は、入射光のおよそ86.5パーセントとなる。この計算では、選択反射(波長による反射率の違い)の影響を考慮していない。だが、ここで問題にしている明るい可視光については、選択性の効果はごく小さい。一方、写真観測の場合には、この効果を考慮しなければならず、ガラスによる吸収は比較のうえで重大な要素となる。大型器械では、写真用波長に対する吸収が30〜40パーセントに達することもある。

反射望遠鏡と屈折望遠鏡を比較する際には、斜鏡とその支持構造によって遮られる光も差し引かなければならない。これは通常、全口径の5〜7パーセント程度である。以上を総合すると、銀膜が新しく、きわめて丁寧に研磨されている場合、同じ口径の反射望遠鏡と屈折望遠鏡の集光力は、ほぼ等しいと結論せざるをえない。

しかし、実際の運用では、新しい銀膜であっても、その反射率が0.90(90パーセント)を下回ることが少なくないうえ、一般に銀膜はかなり速く曇る。その結果、実際には反射望遠鏡の光量は、屈折望遠鏡に比べて、銀膜の劣化度合いの分だけ低下する。たとえばチャント(前掲論文)は、3か月後の反射率が0.69にまで下がったことを報告している。著者自身も、15週間にわたり、湿気と埃にさらされたままカバーもかけずに放置され、ひどく曇った鏡を測定したところ、その反射率はわずか0.40足らずであった。

図36の曲線は、単一の銀面反射率が0.95から0.50まで変化するとき、口径10インチの反射望遠鏡に相当する屈折望遠鏡の有効口径を示している。ここでは、対物レンズの透過率を一定と仮定しているため、両者の関係は明らかに直線となる。熟練観測者による実測比較からの推定値は、図の直線とよく一致しており、状態の良い銀膜について、反射率がおおよそ0.80〜0.85程度であることを示している。

[図36――反射望遠鏡と屈折望遠鏡の相対的集光力。]

結局のところ、銀メッキ反射鏡は時間とともに劣化し、数か月から数年に一度――これは設置環境、気候、使用状況によって大きく変わる――再研磨、あるいは少なくとも銀膜の張り替えを必要とする。これは手間のかかる作業ではあるが、うまくいけば短時間で終えることができる。

実用視野については、反射望遠鏡は通常、F/5〜F/6という速い焦点比で働くのに対し、屈折望遠鏡はF/15程度であるため、不利な点がある。同じ焦点比で両者を比較するかぎりでは、とくに写真用に特別な設計を用いる場合を除き、視野に関する本質的な違いはほとんどない。

費用と観測のしやすさという二点については、中型までのサイズであれば、反射望遠鏡に利がある。ごくおおざっぱに言えば、単純な架台に載せた反射望遠鏡は、同じ集光力(ただし分解能はやや劣る)を持つ屈折望遠鏡の半分から4分の1程度の費用で済む。そして、この差は口径が2フィート以上と大きくなるほど拡大する傾向にある。

観測のしやすさという点では、小型屈折望遠鏡は、高度45度を超えると、文字どおり「首を絞める」ような姿勢を強いる器械であり――これこそ、同じ集光力を持つ反射望遠鏡が最も使いやすい領域でもある。架台の構造については、この点がより明確になる。

実際問題として、定常的に観測を行い、望遠鏡を固定架台に据え付けることができる観測者は、反射望遠鏡をきわめて有効に用いることができ、再銀メッキの作業が年に一度、あるいは半年に一度必要であっても、いったん手順を覚えてしまえば、それほど負担には感じないだろう。必要なのは、主として「清潔さ」と「細部への注意」である。

一方、多くの熱心なアマチュアにしばしば見られるように、観測に充てられる夜はときおりしかなく、しかも環境の事情から、庭や屋上に可搬式架台をその都度設置して観測せざるをえない場合には、屈折望遠鏡の方が向いている。屈折望遠鏡は常に好状態を保ちやすく、据え付けも容易で、観測までの立ち上げ時間も最小限で済む。反射望遠鏡は、言わば「繊細な」器械であり、その性能を最大限に引き出すには一層の注意を要するが、その代わり、完全な色収差補正という貴重な特性を備えている。一般には、反射望遠鏡の方が、散乱光による影響を受けやすい。銀膜の研磨が完全でないと、視野全体の背景が、良好な対物レンズの視野よりも明るく見えることが多い。

結局のところ、どちらを選ぶべきかは、望遠鏡の用途に大きく依存する。天体物理学的な研究一般について言えば、これほど適切な評価者は他にいないと思われるジョージ・E・ヘール教授(Prof. George E. Hale)は、反射望遠鏡を断然支持している。今日では、多くの大天文台が、屈折望遠鏡と反射望遠鏡の双方を備えている。

第3章

光学ガラスとその加工

ガラスは、人間の創意によって生み出された最も注目すべき、かつ有用な産物の一つであるが、その起源は、もはや古代の霧の中に失われている。少なくともキリスト紀元前1000年ごろ、あるいはそれより数世紀も前にさかのぼることは確かである。その起源については、場所(おそらくシリア)と、砂とソーダが偶然に一緒に溶けたという伝承があるのみである。その生成物であるケイ酸ナトリウムは、容易に液体、すなわち「水ガラス(water-glass)」となるが、この話を伝える大プリニウスは、後に、ある鉱物(おそらくマグネシア質石灰岩)を加えることによって、安定なガラス質の物体が得られたと述べている。

この組み合わせは、その話の真偽にかかわらず、良質で長期安定なガラスを与えるものであったであろう。そしてプリニウスの時代よりはるか以前から、ガラスは、きわめて多様な組成と色で作られていた。実際、磁器がなかったために、ローマ時代にはガラスは現代以上に広く用いられていたのである。しかし光学の知識がなかった当時には、光学用途に適したガラスを必要とすることはなかった。ごく小さな片であっても、そのような用途に耐えるガラスが作られるようになるまでには、ルネサンスもかなり進んだ時期を待たねばならず、ガラス製造が最も粗野な経験主義の段階を脱したのは、ようやく1世紀あまり前のことである。

ガラスは本質的には、シリカ(SiO₂)と、ナトリウム、カリウム、カルシウム、鉛といった各種金属酸化物、ときにはマグネシウム、ホウ素、亜鉛、バリウムその他の酸化物からなる固体溶液である。

シリカ単独では耐火性が高すぎて、容易に加工することができない(もっとも、石英ガラスは非常に有用な性質をいくつか持っている)が、特にアルカリ金属酸化物は、普通用いられる融剤として働く。他の酸化物は、所望の性質を得るために加えられ、その際に不純物が混入することもある。

このように、溶融状態のガラスは、しばしば半ダースほどの成分を含む、やや複雑な溶液である。それぞれの成分は、それぞれ固有の融点と沸点を持っているため、全体としては一応均一な混合物であっても、溶融中にある成分が揮発しやすかったり、あるいは冷却の際に、ある特定の成分が、自身の凝固点近傍で結晶化しやすくなったりすることがある。いくつかの組み合わせは、他のものよりもこうした原因からのトラブルを起こしやすい。シリカと一緒に溶融させうる酸化物の種類は非常に多いが、光学的に有用な、均質かつ無色のガラスを与える組み合わせは、比較的限られている。

一般用途には全く問題ない多くの混合物が、レンズ用としてはまったく不適当である。その理由は、風化による表面劣化の傾向があったり、均質性に欠けたり、不都合な着色を示したりするからである。製造の初期段階で用いる砂に、ごくわずかでも鉄が含まれていると、安物の瓶に見られるような緑色がかりが生じ、透過率を大いに低下させる。瓶の製造者はしばしば、混合物に二酸化マンガンを加える。これ自体はガラスをややピンクがかった色にするが、鉄による吸収と相殺し合うことで、見かけ上ガラスを「白く」見せるのである。その結果得られるガラスは、一見したところ問題がないように見えるが、実際にはかなりの量の光を吸収してしまう。

さらなる困難として、ガラスは流動性(粘性)が組成によって大きく異なり、また構成成分同士が相互作用して、微細な気泡を頑固に発生し続けることがあるほか、溶解坩堝に用いる耐火粘土と反応して、不純物を吸収してしまうこともある。

溶融ガラスはかなり粘性が高く、決して完全な均質体ではない。その状態は、濃い糖蜜を水の中に流し込んでできる、濃淡の縞や渦を連想させる。この状態の混合物が、突然凍りついたと想像すれば、透き通ってはいるもののストリエ(striæ:筋状の層)だらけの、ガラスの一般的な状態をよく理解できる。こうしたストリエは、質の悪い窓ガラスにも頻繁に見られ、特に有用な種類の光学ガラスでは、完全に取り除くことはほとんど不可能である。

ギナンが導入した大きな改良は、溶融ガラスの連続的な撹拌であった。彼は耐火粘土製の円筒を用いて溶融塊をかき混ぜ、気泡を表面へと浮かび上がらせるとともに、溶融塊を完全に融合した状態から、粘性が高くて撹拌できなくなるまでの長いあいだ、徹底的に混合し続けたのである。

この工程の妙味は、ガラスの組成ごとに適切な温度、時間、撹拌条件の組み合わせを正確に見極めることにある。また、溶融中やその後にも生じる揮発損失も考慮に入れたうえで、各種原料の配合比と、到達・維持すべき温度を決めなければならない。

ガラスを分析した結果から、その原料混合比を正確に逆算することはできない。さらに、最良のメーカーでさえ、その製品が標準的な「型」から多少ずれてしまうことが、しばしばあるのは衆知の事実である。そのため、各溶解バッチごとに光学特性を慎重に測定し、その結果に応じて、標準型からわずかにずれたバリエーションとして登録するか、あるいは特性のかなり異なる「特別ロット」として扱う必要がある。後者の中には、その光学的な特異性が、もし規則的に再現できれば、きわめて望ましいものもある。

高級の光学ガラス(あるいはその他高品質ガラス)を作るには、原料の純度が決定的に重要である。シリカは通常、きわめて純度の高い白砂の形で導入される。そこには、鉄、アルミナ、アルカリなどの不純物が、合計でも0.数パーセントしか含まれていない。アルカリ成分は、通常高純度で得られる炭酸塩の形で加えられるが、市販ガラスでは、しばしば「ソルトケーキ」と呼ばれる粗製硫酸ナトリウムがナトリウム源として用いられる。

カルシウム、マグネシウム、バリウムなどは、一般に炭酸塩として、亜鉛と鉛は酸化物として溶解に供される。アルミナは、鉄と同様、砂中の長石から来る不純物として加わることが多いが、ときには純粋な天然長石や、化学的に調製した水酸化アルミニウムとして、意図的に加えられることもある。ごく少数のガラスには、ごく微量のヒ素が含まれており、これは通常亜ヒ酸の形で用いられる。さらにまれに、その他の元素が、ふつう酸化物の形で加わることもある。

どのような原料であっても、溶解炉に投入する前に、通常は細かく粉砕され、できれば機械的なミキサーで、十分に混合される。現代のガラス炉は、一般にガス焚きであり、大きく二つの形式に分かれる。一つは、原料を巨大なタンク内で溶融し、その上部をガス火炎がなめる方式である。もう一つは、原料を開放型、あるいはほぼ密閉型の坩堝(ポット)に入れ、それを直接ガス火で加熱する方式である。タンク炉では、溶解はほぼ連続的に行われる。原料が投入される一端で活発な溶融が行われ、透明な溶融ガラスは、タンクの冷たい側、あるいは別室へと流れ、そこから引き出されて成形工程へ送られる。

光学ガラス製造の一般的な方法は、このポット方式を改良したものであり、それぞれの坩堝を個別に加熱して温度を精密に制御できるようにしている。

坩堝自体は、きわめて純度の高い耐火粘土から作られ、その容量は通常半トン程度である。内部は、燃焼ガスの直接の炎から内容物を保護するためにアーチ状に覆われ、側面には原料投入と撹拌用の開口部が一つ設けられている。

光学ガラスと一般の市販ガラスとの基本的な違いは、前者では、均質性と規則性を確保するために、各チャージ(溶解バッチ)を個別に取り扱わねばならない点にある。特に、各溶解を自身の坩堝の中で、きわめてゆっくりと冷却するという工程が必要であり、その結果、最終的には坩堝を破砕して中身を取り出すことになる。一方、タンク炉は何週間も、あるいは何か月も連続稼働し、内部に数百トンのガラスを溶かしている。このような方式では、組成や品質を厳密に一定に保つことは、はるかに難しい。

光学ガラス工場にはまた、特に効率の良い予熱炉と徐冷炉が備えられている。というのも、坩堝やガラスの熱処理は、最も慎重かつ徹底して行わなければならないからである。

光学ガラス製造の工程は、まず坩堝を徐々に加熱し、明るい赤熱状態まで持っていくことから始まる。この予熱は専用の炉で行われる。その後、坩堝はあらかじめ同温度程度に熱せられた溶解炉へ移され、耐火煉瓦のブロックで入口を封じられ、ただし投入・撹拌のための口だけは確保される。その後、炉温は対象とするガラスの溶融温度近くまで、すなわち中程度の白熱温度から、再生式ガス炉が出しうる最高温度に至るまで、徐々に上げられる。これが終わって初めて、慎重な原料投入の工程が始まる。

原料は一度にまとめてではなく、少しずつ順次に追加される。というのも、溶融物は発泡しやすく、原料の固体状態の体積は、液体になったときよりもはるかに大きいからである。溶解が進むにつれて起こる化学反応は、やや複雑である。ごく単純化すると、ケイ酸塩の生成として表せる。

高温ではシリカは、かなり強い酸のように振る舞い、溶融状態の炭酸ナトリウムや炭酸カリウムを分解して、二酸化炭素などのガスを放出する。これは、融点の比較的低いアルカリ物質が、融剤として働く原理そのものである。他の混合物も、ある程度似た挙動を示すが、一般には複雑すぎて、その全体像を追うことは難しい。

最終的な結果は、濃厚な溶液であり、光学ガラス製造者にとっての主要な関心事は、それをできるだけ均質に保ち、気泡を取り除き、かつ可能なかぎり無色にすることである。均質性と脱泡を達成するために、温度はかなり高く保たれ、しばしば(たとえばヒ素のような)特定の物質が、揮発性や化学的作用により、微細な気泡どうしを融合させて大きな気泡にし、それが溶融塊の中を自ら上昇して逃げられるようにする目的で加えられる。この目的のために、先述の撹拌も行われる。

撹拌棒は、硬く焼き締めた耐火粘土の円筒であり、鉄棒に固定されている。まず坩堝の口近くで予熱され、次に溶融ガラスの中に差し込まれて、一定の回転運動が与えられる。長い鉄棒はスイベルで支えられ、作業者が扱えるよう木製の取っ手がついている。この撹拌は、温度をきわめてゆっくりと下げながら、ガラスが粘りすぎて動かせなくなるまでほぼ連続的に行われる。その所要時間は、ガラスの種類や条件によって異なるが、およそ3〜4時間から、長い場合にはほぼ1日を要する。

[図37――光学ガラス粗材の検査。]

その後、きわめて慎重かつ長時間にわたる冷却段階が始まる。最初は比較的速く冷やし、ストリエが新たに生じない程度まで固まったら、炉内、あるいは徐冷炉へ移したうえで、さらにゆっくりと冷やしていく。坩堝が手で扱える程度に冷えるまでには、通常1週間以上を要する。

ここからが本当の「苦労の始まり」である。坩堝を割ると、ひびの入った、あるいはいくらか割れたガラスの塊が現れる。ひどく砕け散っていることもあれば、数百ポンドに達する大きな塊がそのまま得られることもある。このガラス塊は、ストリエやその他の欠陥の有無を調べるため、注意深く選別・検査される。

欠陥のある部分は、ガラス塊をさらに割ることをいとわなければ、しばしば取り除くことができる。粗材の検査を容易にする方法の一つが、図37に立面図として示されている。ここで A は側面を平行な板ガラスで構成したタンクであり、その中に検査対象の粗いガラスブロック B を入れる。その後、タンクに液体を満たし、その屈折率をガラスと等しくなるよう調整する。これは先に触れたニュートンの「不運な実験」と同じ原理である。たとえば黄色光について屈折率が等しくなれば、ガラス表面での屈折が起こらなくなり、光はタンクの側面からガラス塊をほぼ直線的に通過する。その結果、足元で屈折されることなくガラス内部を通る光線の中で、ストリエや不均一があれば、それは容易に観察できる。厚さ1フィート以上の大きな塊であっても、内部構造を明瞭に見ることができるのである。液体を入れる前には、光線は C, D, E, F のように折れ曲がっていたが、屈折率を合わせた後には C, D, G, H のように一直線に通過する。

このような検査を経て、合格と見なされるガラスの割合は、しばしば全体の4分の1以下、多くても2分の1程度である。この良質ガラスは、次の工程――成形と精密アニーリング――の準備が整ったことになる。最終的な形は円板かブロックであり、ストリエのないガラス片は、まず炉で加熱して軟化させたうえで、必要な形に成形される。場合によっては、小型レンズ用の凹面あるいは凸面ディスクの形に成形されることもある。

その後、成形されたブロックは徐冷炉に移され、ブロックの大きさや要求される品質に応じて、数日から数週間かけてきわめてゆっくりと冷却される。最高級の作業では、徐冷炉はサーモスタットで温度制御され、熱電対式温度計(パイロメーター)によって、温度変化が厳重に監視される。

坩堝から、大きく完全なガラス塊を得る確率は、数ポンドの小片を得る確率に比べてはるかに小さいことは明らかである。したがって、大口径対物レンズ用の完全なディスクを得るには、高度な技術と相当の幸運が必要となる。対物レンズ用ディスクの価格が、その直径のおおよそ3乗に比例して急速に上昇するのも、むしろ当然と言えよう。

ここまで述べた光学ガラス製造法は、今日に至るまでほとんど変わることなく用いられている標準的な方法であり、その基本形はギナンの時代にはすでに確立されていた。その後の四半世紀ほどにおける大きな進歩は、特定の望ましい性質を備えた新しい種類のガラスの開発、および、高品質で均一な製品を得るための条件をよりよく理解したことにある。世界大戦中には、需要の急増によって、国内外でガラス製造が飛躍的に活発化し、とりわけこの問題に関する科学的研究が精力的に行われた。その結果、量産への大きな一歩が踏み出され、タンク方式の改良によって、ある種の光学ガラスを、少なくとも実用に耐える品質で生産できることが判明した。また、アニーリングの精度と速度も飛躍的に改善された。

これらの改善は、主として電気炉の利用、偏光下でのアニーリング中の内部応力の観察、そして科学的温度測定(パイロメトリー)の発達によるものである。その結果、温度のある範囲においては、冷却をかなり加速してもよいことが分かり、全体に必要な時間は大幅に短縮された。また、捕獲された敵国の光学機器の調査から、気泡を取り除くことがほとんど不可能だと長年考えられてきたガラスの中にも、改良された処理法によって実際には相当程度改善されたものがあることが明らかになった。

慣例的に、光学ガラスはクラウン(crown)とフリント(flint)の二種類に分類される。もともとクラウンは、シリカにソーダ(Na₂O)とカリ(K₂O)、場合によっては石灰(CaO)やマグネシア(MgO)を加えた比較的単純な化合物であり、フリントは鉛酸化物(PbO)を多く含み、アルカリ成分が少ない組成であった。クラウンは屈折率が低く、分散も小さく、フリントは屈折率が高く、分散も大きかった。クラウンガラスは一般用途の標準的材料であり、フリントガラスは、上記の性質からきわめて高い輝きを示すため、カットグラス製品に用いられていた。

[図38――屈折率。]

屈折率とは、レンズ面への入射角の正弦と、屈折角の正弦との比である。図38は、空気からガラスレンズ面 L へ光が入射する際の入射光線と屈折光線の関係を示したものであり、n(屈折率の慣用記号)を定める角の正弦の関係を示している。ここで i は入射角、r は屈折角であり、すなわち n = s/s′ である。屈折率は、通常スペクトル中の特定の線に対応する色について与えられる。たとえば、赤外端のカリウム線 A¹、水素の赤線 C、ナトリウム線 D、水素の青線 F、および青紫の水素線 G′ などであり、それぞれ n_{C}, n_{D}, n_{F} … のように表される。可視光域における標準分散(dn)は、通常 CF の間について与えられ、標準屈折率は、スペクトル中の明るい黄色部にある D 線に対するものを用いる。(注:三角関数に少々不慣れな読者の便宜のために、図39に角の基本三角関数を示しておく。角 A の正弦は、数値的には、半径 Ob に対して、そこから垂直に下ろした線分 bc の長さの比 bc/Ob に等しい。接線(タンジェント)は da/Ob、余弦は Oc/Ob である。)

[図39――角の基本三角関数。]

通常、クラウンガラスの屈折率は約3/2、フリントガラスは約8/5とされてきた。しかし時代の進展とくに、約35年前にイエナ工場から新種のガラスが導入されて以来、クラウンとフリントをこれほど単純には定義できなくなっている。高屈折率のクラウンもあれば、低分散のフリントもあるからである。

以下の表は、いくつかの代表的光学ガラスの光学データと化学分析を示したものである。このリストには、普通のクラウンとフリントのほか、代表的なバリウム・クラウンとライト・フリント、さらにイエナ工場で開発された、対物レンズのアクロマチズム改善のための「望遠鏡用クラウン」と「望遠鏡用フリント」が含まれている。

ここでクラウンとフリントを区別する最も顕著な点は、後者(フリント)が青側の相対分散が大きく、前者(クラウン)は赤側の分散が相対的に大きいということである。これは、表中の括弧付きの比(後述)に示されている。この性質は、アクロマート対物レンズの設計において、重大な意味を持つ。また一般に、フリントの ν(アッベ数)の値はクラウンより小さく、屈折率そのものはクラウンより高いことが多い。

すでに述べたように、ガラスは光学職人のもとにはブロックかディスクの形で供給される。一般用途にはおおよそ3〜4インチ角、厚さ約1インチ前後のブロックが用いられ、望遠鏡用にはディスクが用いられる。対物レンズ用ディスクは、仕上がりの対物レンズ直径より約1割ほど大きく、厚さは直径の1/8〜1/10程度である。これらは通常、良好にアニーリングされ、両面に粗研磨が施されており、精密な検査がしやすくなっている。

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光学ガラスの特性
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(上段:光学定数 下段:化学分析)

—————+——–+——–+——+————————–+
| | | | かっこ内は |
| | | | 分散 dn の比率 |
| | dn | | を示す。 |
ガラス | n_d | —– | ν +——–+——–+——–+
| | (F−C) | | D−A′ | F−D | G′−F |
| | | | —- | —- | —- |
| | | | dn | dn | dn |
—————+——–+——–+——+——–+——–+——–+
ほう珪酸クラウン| 1.5069 | .00813 | 62.3 | .00529 | .00569 | .00457 |
| | | | (.651) | (.701) | (.562) |
亜鉛珪酸(硬質)| 1.5170 | .00859 | 60.2 | .00555 | .00605 | .00485 |
クラウン | | | | (.646) | (.704) | (.565) |
高密度バリウム | 1.5899 | .00970 | 60.8 | .00621 | .00683 | .00546 |
クラウン | | | | (.640) | (.704) | (.563) |
バリウム・ライト| 1.5718| .01133 | 50.4 | .00706 | .00803 | .00660 |
フリント | | | | (.623) | (.709) | (.582) |
一般ライト | 1.5710 | .01327 | 43.0 | .00819 | .00943 | .00791 |
フリント | | | | (.617) | (.710) | (.596) |
一般高密度 | 1.6116 | .01638 | 37.3 | .00995 | .01170 | .00991 |
フリント | | | | (.607) | (.714) | (.607) |
非常に高密度 | 1.6489 | .01919 | 33.8 | .01152 | .01372 | .01180 |
フリント | | | | (.600) | (.714) | (.615) |
最高密度 | 1.7541 | .02743 | 27.5 | .01607 | .01974 | .01730 |
フリント | | | | (.585) | (.720) | (.630) |
[]望遠鏡用 | 1.5285 | .00866 | 61.0 | .00557 | .00610 | .00493 | クラウン | | | | (.643) | (.705) | (.570) | []望遠鏡用 | 1.5286 | .01025 | 51.6 | .00654 | .00723 | .00591 |
フリント | | | | (.638) | (.705) | (.576) |

[* 光学データは近似値。]

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| 各種ガラスの化学分析(重量%)
|
+—-+—-+—+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-
| Si |B₂ | | | |K₂ |Na₂ | |Al₂ |As₂ |As₂ |Fe₂ |Mn₂ |Sb₂ |
| O₂ |O₃ |ZnO| PbO| BaO| O | O |CaO | O₃ | O₅| O₃ | O₃ | O₃ | O₃ | MgO
| | | | | | | | | | | | | | |
+—-+—-+—+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-
|74.8| 5.9| –| — | — | 7.11|11.3| — | .75| — | .06| — | .06| |
| | | | | | | | | | | | | | |
|65.4| 2.5|2.0| — | 9.6|15.0| 5.0| — | — | — | .4 | — | .1 | |
| | | | | | | | | | | | | | |
|37.5|15.0| –| — |41.0| — | | — |5.0 | 1.5| | | | |
| | | | | | | | | | | | | | |
|51.7| — |7.0|10.0|20.0| 9.5| 1.5| — | — | .30| | | | |
| | | | | | | | | | | | | | |
|54.3| 1.5| –|33.0| — | 8.0| 3.0| — | — | .20| | | | |
| | | | | | | | | | | | | | |
|54.8| — | –|37.0| — | 5.8| .8| .60| .4 | — | — | .70| — | — | .20
| | | | | | | | | | | | | | |
|40.0| — | –|52.6| — | 6.5| .5| — | — | .30| — | — | .09| |
| | | | | | | | | | | | | | |
|29.3| — | –|67.5| — | 3.0| –| — | — | — | .20| — | .04| |
| | | | | | | | | | | | —^— | |
|55.2| — | –| — |22.0| 5.7| 7.5|5.9 | — | — | — | 3.7 | |
| | | | | | | | | | | | | |
|59.9|12.7| –| — | — | 5.1| 3.5| — | — | — | — | 2.7 |16.1|
| | | | | | | | | | | | | |
+—-+—-+—+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+—-+———+—-+—-

望遠鏡に向けた最初のステップは、これらガラスディスクの検査である。第一はストリエおよびその他の欠陥の有無、第二はアニーリング(徐冷)の完全さを調べることである。製造者の側でも、ディスクを出荷する前に、重大な欠陥については通常あらかじめ除去しているが、光学職人がガラスを最良に活用するには、さらに一段と精密な検査が必要である。

[図40――ストリエ検査。]

ひどいストリエであれば、窓ガラスの筋と同様に肉眼で容易に分かる。しかし、そのような目立つ欠陥よりも、見た目にはごく軽微なストリエの方が、実際には遥かに有害なことが多い。こうした軽微な欠陥を見つける必要がある。最も簡単な検査は、良質の望遠鏡を人工星に焦点を合わせ、接眼レンズを取り外し、その位置に目を置くという方法である。

目が焦点位置にあるとき、対物レンズの全口径が均一に光で満たされて見える。この状態で、検査したいガラスディスクを対物レンズの前面に置くと、屈折の不均一は、照度の不均一として現れる。欠陥の広がりと、その部分での明るさの変化量から、おおよその深刻度を見積もることができる。図40は、この検査法の配置を示したものであり、A は目、B は対物レンズ、C は試験すべきガラスディスクである。人工星は、100フィートほど離れた場所に黒い瓶を置き、その肩の部分に太陽光の反射を作ることで、容易に用意できる。

[図41――ストリエの鏡検査法。]

もう一つ、しばしば用いられる、やや感度の高い方法を図41に示す。ここで A は完全な球面を持つ鏡であり、その表面は前面銀メッキされている。鏡の曲率中心近くの位置 B に、小さな穴(直径1/32インチ程度)をあけた遮光板を備えたランプを置く。

鏡面で反射した光線は、ほぼ正確に自身の経路を逆向きにたどるので、目を反射焦点 C に置くと、対物レンズの場合と同様に、鏡全体 A が均一に照らされて見える。しかも、同じ大きさと品質の対物レンズに比べて、球面鏡の方が入手しやすく、安価であるという利点がある。次に、鏡の前面にディスク D を置くと、その中を二度通過する光線が、最もわずかなストリエや他の欠陥であっても、視野中の筋や斑点として顕在化させる。欠陥の位置は一目瞭然であり、ガラスに印をつけておくことができる。しかし、その欠陥がガラスのどの深さに位置するかは、この方法だけでは分かりにくい。

欠陥の深さ位置を知ることは、その部分をレンズ成形の工程で削り取れるかどうかの判断材料となる。これを知るためには、先ほどの最初の方法を少し改変すればよい。この改変法は、大型ディスク全体の検査にも便利である。すなわち、遠方の人工星と望遠鏡の代わりに、ランプと遮光板、あるいは10フィート以上離れたロウソクの炎を光源とし、短焦点の集光レンズ(アクロマートである必要はない)を用いる。これにより、レンズを手に持ったまま、容易に目を焦点に合わせることができる。図42は、この配置を示している。ここで A は目、B は集光レンズ、C はディスク、D は光源である。集光レンズは、状況に応じてディスクのどちら側に置いてもよく、ディスクとレンズのどちらを動かしてもよい。この操作は、要するに、大きなディスク全体を一度に検査する代わりに、より小さな対物レンズや鏡を用いて、部分ごとに検査することに相当する。

[図42――ディスク内部におけるストリエの位置決定。]

ストリエが見つかったら、まずその位置に対応する表面に印をつける。その状態で目をわずかに動かし、欠陥と表面マークとの間に視差(パララックス)が現れるかどうかを見る。もし視差があれば、次に反対側の表面に新たな印をつけ、同様に調べる。二度の観察結果を比較すれば、欠陥が表面からどれくらいの深さにあるか、おおよその見当がつき、その部分を研削で取り除ける可能性が判断できる。ときには、ディスクを縁から覗き込むことで、診断の助けになることもある。

ごくかすかに見えるストリエが多数ある場合は、目立つストリエが1本か2本ある場合よりも、たいてい悪い状態である。というのも、目立つストリエは、通過する光を焦点から大きく外へ飛ばしてしまうことが多く、その結果、像の形成にはほとんど影響しないことがあるのに対し、ごく軽微なストリエは、焦点近くにわずかなボケを生じさせ、それが像を大いに損なうことがあるからである。

ストリエ等の検査に合格したディスクが得られたら、次はアニーリングの完全さの検査、すなわち内部応力の有無の確認である。これは偏光光線による検査で、きわめてよく分かる。

[図43――偏光によるディスクの検査。]

この目的のために、まずディスクを机または床の上に置いた枠に立てかける。その背後には空からの散乱光がよく入るようにし、ディスクは垂直から約35度だけ傾ける。そのさらに後ろには、偏光子として働く光沢のある平面を置く。黒色エナメル布を滑らかに敷いたもの、背面を黒く塗ったガラス板、あるいはアスファルト塗料で塗装した平滑な板などが適している。その状態でニコルプリズムを目の前に持ち、ディスクの面に垂直な方向から覗き込むとともに、ニコルを軸のまわりに回転させる。図43はこの配置を示しており、A が目、B がニコル、C がディスク、D が後方の偏光子である。

アニーリングによる内部応力が全く残っていない場合、ニコルを回転させたときに見られる効果は、ディスクがない場合とまったく同じである。すなわち、視野全体が明るくなったり暗くなったりするだけである。しかし、実際には、ややぼんやりしたマルタ十字形の模様が現れ、その腕がディスクを横切る形で見える。そしてニコルを回転させると、この十字の濃さが周期的に強弱を繰り返す。

もしこの十字がくっきりと明瞭で、しかも対称的かつディスクの中心にしっかり位置しているなら、そのアニーリングはまずまず良好といえる。十字が淡く、輪郭がぼやけているほど、さらに良好である。一方、十字に明瞭な色彩が現れたり、中心からずれていたり、歪んでいる場合には、アニーリングは明らかに不十分である。なお、この検査は非常に感度が高いため、ディスクの表面に指を軽く当てるだけでも、その部分にわずかな応力が生じ、淡い雲状の斑点として観察されることがある。

ストリエもなく、目立ったアニーリング応力も見られないディスクは、たいていの場合(だが常にとは限らない)良好なガラスである。しかし、成形やアニーリングの過程で、何度も加熱し直した結果、ガラスがわずかに変質し、最悪の場合には、前述のような結晶化(脱ガラス化)が起こっていることもある。

良好なペアのディスクが得られたなら、それを対物レンズへと仕上げていく最初の工程は、おおよそ目的とする形状への「荒削り」である。必要な曲率の形を得るための指針として、まず設計された曲面に基づくテンプレート(型板)を、できるかぎり正確に作らねばならない。テンプレートは、ビームコンパスや回転軸付きワイヤを用いて必要な半径を描き、その曲線を薄い鋼板、真鍮板、亜鉛板、あるいはガラス板の上に罫書きして作る。亜鉛やガラスは、割って形を整えやすいという意味で、加工しやすい材料である。

テンプレートを基準にして、まず荒削り用の工具が鋳鉄などから旋盤で成形される。これに炭化ケイ素(カーボランダム)や砂などの研磨材と水を加え、ディスクを工具に押し当てながら回転させることで、おおよその曲面を得る。その後、ディスクはゆっくり回る丸テーブルに固定され、外周を回転砥石に押し当てることで、真円かつ所定の直径に整形される。

ここからが、きわめて注意深さを要する「精密研磨」の工程であり、この段階でレンズは最終形にきわめて近い形まで仕上げられる。この作業でも、一般に鋳鉄や真鍮製の工具が用いられ、テンプレートに基づいて非常に高い精度で成形される。工具の表面には、研磨材(エメリーや微粒カーボランダム)が均一に行き渡るよう、溝が刻まれる。作業は通常、専用の研磨機で行われ、工具をしっかり支持されたガラスディスクの上で複雑な軌跡で動かすことで、手仕上げによる最良の研磨ストロークを、ある程度機械的に再現する。

手作業の場合、作業者は、一種の垂直ポストにガラスディスクをホルダーで固定し(通常セメントで貼り付ける)、工具をその上で直線的、あるいは楕円形の軌跡で動かしながら、自分自身はポストのまわりを歩くようにして作業する。熟練者は、研磨の進行を注意深く観察し、それに応じてストロークの長さや位置を調整することで、工具の摩耗が避けられないにもかかわらず、工具とガラス面の双方の形状を正確に保つことができる。

[図44――ドレーパー博士の研磨機。]

研磨機は、こうした手作業の運動を模倣するように設計されている。図44は、ドレーパー博士が使用した形式の一例を示している。ここではガラスディスク a がベッドにチャック c, c′ で固定され、ポスト d とウォームホイール e によって回転する。これらはプーリー i, g によって駆動され、シャフト k を介してクランク m を回す。クランクの振れ幅はナット n, n′ によって調節でき、工具の位置はクランプ r, r によって調整される。工具の運動は、一般にディスクの中心を外した楕円軌道となる。実際には、ディスクとほぼ同じ直径の工具が用いられることが多い。このように、ディスクをゆっくり回転させながら、工具を複雑なストロークで動かすことで、同じ部分に同じストロークが繰り返し当たることを避ける。すなわち、ディスクの一回転と工具の往復運動の周期が、できるだけ「無理数比」に近くなるようにするのである。眼鏡レンズ研磨機でさえ、同じストロークが同じ位置に戻るのは数百回に一度程度である。大型対物レンズの研磨において、もしこれより頻繁に同じストロークが同じ位置に繰り返し当たると、その痕跡が、最終的な光学試験で工具痕として検出される可能性がある。

精密研磨の終盤では、テンプレートだけでは曲率の検査精度が不十分となるため、スフェロメーターが用いられる。これにより、10万分の1インチ程度までの精度で曲率半径を測定できる。

次の工程は「ポリッシング(研磨仕上げ)」であり、これによって、精密研磨で生じた灰色の半透明面が、光学的に完全な透明かつ光沢のある面へと変わる。この段階で初めて、最終的なレンズの仕上げのために、厳密な光学試験が適用できるようになる。ポリッシングは、通常、精密研磨と同じ機械で行われるが、工具と研磨剤がまったく異なる。ここでは、極めて細かい赤色研磨剤(ルージュ)が用いられる。

ポリッシング工具は、いずれにせよまず正確な曲率に成形され、その表面に、ルージュを保持するためのやや弾性的な材料を貼り付ける。安価なレンズは、ビリヤードクロス状の布や、乾燥状態の紙をポリッシャーとして用いて仕上げることも多い。これらでも注意深く用いれば、まずまず良好な面を得ることは可能である。ただし、これらの材料は、研磨でできた小さなくぼみを完全に削り取るのではなく、それらの上だけを磨き上げてしまう傾向がある。その結果、外見上は光沢面に見えても、微視的には微小な凹凸が残りやすく、像形成に使われるべき光が、視野全体に散乱してしまうことがある。

このため、一級の対物レンズや反射鏡の研磨には、実際上すべてが、光学用のピッチ研磨が用いられる。ここで言うピッチは、市販の単純なピッチではなく、さまざまな組成を持つ特殊な材料である。アスファルト系の化合物を基材とするものもあれば、タールや樹脂にテレピン油を加えて適度な硬さにしたものもある。

いずれの配合であっても、本質的な性質は次の通りである。すなわち、見かけ上はかなり硬く、冷えた状態ではもろいように見えても、一定時間以上圧力を加え続けると、わずかに流動する「塑性(プラスチック)」を持っているという点である。封蝋も似た性質を持っており、簡単に折れるものの、両端を支えて放置すると、自重でゆっくりとたわんでくる。

精密研磨が適切に行われていれば、ガラス面は、ゲージやスフェロメーターで測定したかぎり、かなり正確な形状をすでに得ている。この段階での目的は、その面を可能なかぎり均一かつ強い光沢を持つ鏡面へと仕上げることである。そのために、先述のピッチの塑性を利用し、「ガラス自身に工具面を整形させる」ことが行われる。

ポリッシング工具の基体は、金属でもガラスでも木材でもよい。その作業面は、可能なかぎり正確な曲率に成形され、その上に温めたピッチをおよそ1/8インチ程度の厚さで塗布する。塗布は全面に連続的に行う場合もあれば、あらかじめ格子状に区画を刻んでおき、そこにピッチを充填する場合もある。いずれにせよ、ピッチがまだやや柔らかいうちに、工具を微細研磨済みのガラス面に密着させると、ピッチ側がわずかに変形して、ガラス面の曲率をそのまま写し取る。

冷却後、ピッチ面を適当な工具で格子状に切り分けたり、規則的な凹みを付けたりすることができる。これにより、ルージュと水からなる研磨スラリーの均一な分布が促進されるとともに、後述するように、研磨曲率の微調整も行いやすくなる。

図45は、平面あるいはごくわずかな凹面・凸面を研磨するために用いられる、格子溝入りの工具面を示している。ルージュを含んだ薄い研磨スラリーを供給しつつ、工具をガラス面に軽く押し当て、冷えた状態で完全な接触が得られるようにする。その後、手作業または機械による研磨動作を開始する。

工具の作用は、レンズの形状を変えないように、できるだけ均一でなければならない。研磨機や手作業でストロークの長さや位置を変えることによって、この作用をある程度制御できるが、それ以上に繊細な制御を可能にするのが、工具面の「有効ピッチ面積」を変化させる方法である。

[図45――平面用ポリッシング・ツール。]

[図46――凹面用ポリッシング・ツール。]

すなわち、工具の縁または中央付近のピッチを適宜削り取ることで、実際にガラスと接触しているピッチの面積分布を変えるのである。図46は、こうして加工された工具の一例を示している。ここでは、外周に近い部分ほど、ピッチの小片(格子)が小さくなっている。このような工具は、もともと平らな工具であれば凹面を作る傾向があり、すでに曲率を持つ工具であれば、その曲率をさらに強める(すなわち凹みを増す)ように働く。逆に、中心部のピッチを削り取って格子を小さくすれば、工具は凸面方向に働く。

一般に、どの領域で研磨量が多くなるかは、その領域におけるピッチとガラスとの接触面積によって決まる。これは単に磨耗面積が大きいというだけでなく、接触面積が大きいほど、単位面積当たりの圧力が低くなり、その結果ピッチの変形が少なく、より広い面積で実効的な接触が維持される、という効果もある。

もちろん、ピッチの削り方(格子の大きさ分布)は、ストロークの形式と長さ、そしてピッチの硬さ(温度)と密接に関連している。実際に、これらの要因を巧みに組み合わせて、均一で規則正しい研磨作用を得るには、かなりの「蛇のごとき知恵」が必要である。そのため、研磨工程では、短い間隔で作業を停止してルージュを補充し、摩擦熱によってピッチやガラスの状態が変わってしまうのを防がねばならない。特に手作業研磨では、ガラス面を上向きにして研磨することが多く、観察には便利だが、加熱により状態が変化しやすいので、十分な注意が必要である。

精密研磨が適切に行われていれば、中型以下の面については、ポリッシングに要する時間は数時間程度で済む。初めのうちは、ごくゆっくりと表面が光沢を帯びてくるが、それは「丘」が削られている段階であり、続いて「谷の底」が研ぎ出される段階に入ると、突然、表面全体が一様に輝き始める。大型のレンズや鏡では、この工程に数日を要することもある。

これが済むと、最後の、そして非常に繊細な「面出し(フィギュアリング)」の工程が始まる。レンズや鏡は、ゲージやスフェロメーターなど、最も高精度の機械的測定によって判断できるかぎり、ほぼ設計どおりの形を得ている。誤差は高々1/100000〜2/100000インチ程度であろう。しかし、光学的観点から見ると、この程度の誤差でも結果を台無しにすることがあり、数百万分の数インチの差が、実際の性能にとって重大な意味を持ちうる。

たとえばレンズ外周の曲率半径が、理想値よりわずかに長すぎたり短すぎたりすることもあれば、レンズの中間帯域(環状ゾーン)に局所的な誤差があることもある。反射鏡の場合、最初のポリッシングで得られるのは、一般に球面であり、これを放物面へと変換する必要がある。そのために必要な全体の曲率変化は、わずか数十万分の数インチにすぎないが、その過程でさらに微小な変動が画質に影響する。

面出しは、ポリッシングとほぼ同様の方法で行われる。第一段階は、ポリッシング完了直後の面に残っている誤差の分布を、光学的試験によって正確に把握することである。こうした試験法については、第9章で述べる。誤差の位置が分かれば、それを根気強く慎重な研磨で取り除いていく。

各光学職人は、それぞれ好みの面出し技法を持っている。もし中間帯域に凹み(ゾーン)があれば、レンズ全体を再研磨して、その凹みの深さまで全体の面を「落とす」必要がある。一方、どこかに環状の「盛り上がり」がある場合は、その部分を重点的に削るためのストロークや工具面の工夫によって、周囲と同じレベルまで削り落とすことができる。

ポリッシングは通常、レンズとほぼ同じ大きさの工具で行われるが、面出しの段階では、職人によって作業方法がかなり異なる。ある職人たちは、常に全口径サイズの工具を用い、その操作の仕方を変えるだけで全域の誤差を取り除く。一方、別の職人たちは、小さなポリッシャー、さらには自分の親指の腹を用いて、ごく限られた領域だけを局所的に修正する。小型のレンズや鏡では、ガラスの均質性が十分に信頼でき、工具形状も容易に維持できるため、前者の方法が一般的である。しかし、大型対物レンズでは、後者の局所修正法の方が扱いやすく、全体研磨では除去しにくい欠陥をうまく取り除ける場合がある。

有名な望遠鏡メーカーの中では、クラーク父子と、その同じく高い技量を持つ後継者であるルンディン父子が、局所修正技法を一種の「魔術」と言ってよいレベルまで高めたことで知られている。他方、故ブレシャー博士(Dr. Brashear)は、ほとんど専ら巧みに調整された研磨機に頼っていた。ハワード・グラブ卿(Sir Howard Grubb)は、特定の場合に局所修正を行いつつ、一般には、全体用ポリッシャーの形と動きを慎重に変化させる方法を採っている。また、ヨーロッパ大陸の名匠たちの中には、局所修正法を徹底的に発展させた者もいると伝えられている。

おそらく真実はこうである。すなわち、そのとき対処すべき誤差の性質に応じて、攻め方を選ぶべきであり、その成否は、ひとえに作業者の技能にかかっている、ということである。どちらの方法で面出しを行ったとしても、その結果できあがった対物レンズを最も繊細な試験で調べても、「面出し方法に起因する系統的な差異」を検出することはできない。

いずれにせよ、面出しの工程は長く退屈な作業であり、とくに大型レンズや鏡の製作では、その困難さはいっそう増す。そこでは、フレクシャーを避けるための支持方法、温度変化によるガラスや工具の変形に起因する長い待機時間、そして最終段階で必要となる非球面の導入など、さまざまな問題に直面することになる。

最終的な善し悪しは、実際の性能で判断される。すなわち、球面収差やゾーン収差がまったくない、完全にきれいな円形の星像が得られ、かつ、用いたガラスが許す範囲で、最良の色収差補正がなされているかどうかである。面出しの工程全体を通して、絶えず厳密な試験を行わねばならず、最終的な成功は、経験、直感、触覚的な熟練――これらが一人の人間の中に、きわめてまれに結び合わさった産物であるかのように見える。

ハワード・グラブ卿は、対物レンズに関心を持つ者なら誰にでも一読を勧めたい論文の中で、次のように率直に述べている。「直径10インチを超える対物レンズを仕上げる作業で、私は一度として、新しい経験、新しい条件の組み合わせに出会わなかったことがないと言ってよいでしょう。すなわち、過去に遭遇したことのない問題が、必ずと言ってよいほど現れ、それに対して、その都度新たな工夫と手段で対処しなければならなかったのです。」

反射望遠鏡の製作も、決して楽ではない。たしかに、加工すべき面は1枚だけであるが、その1枚を、桁外れに高い精度で成形しなければならない。作業のあらゆる段階でフレクシャーに注意を払い、完成後も温度変化との戦いは続く。そして、面形状が球面ではないため、正しい形状かどうかを判定する試験は、屈折望遠鏡の場合よりはるかに煩雑である。

熟練者であれば、同じ口径の対物レンズに比べて、はるかに少ない実作業量で良い鏡を作ることができるかもしれない。しかしヘンリー・ドレーパー博士(Dr. Henry Draper)が、「ロス卿やラッセル氏の研磨機や方法を直接知っていたにもかかわらず、正しい面形状を比較的容易に得られるようになるまでに、百枚以上の鏡を研磨し、3年の歳月を費やした」と述べているのを読むと、この技術習得に要する技能の高さに、あらためて敬意を抱かざるをえない。

本章の記述は、必然的に概略的であり、読者にガラス製造の技術や、対物レンズおよび鏡の複雑で、しばしば言語化しがたい製作技術を完全に理解させようとするものではない。ただ、本章を通じて、光学ガラス工業と一般ガラス製造との違い、そして、完成した対物レンズや反射鏡が、初期の職人たちの粗削りな試みや、後世の多くの拙速な仕事と比べて、いかに高度な「芸術作品」であるかについて、多少なりとも理解を深めていただければ幸いである。

光学ガラスの製造・性質・加工に関するさらなる詳細は、次の文献を参照されたい。

HOVESTADT:『イェーナ・ガラス(Jenaer Glas)』

ROSENHAIN:『ガラス製造(Glass Manufacture)』

ハワード・グラブ卿(Sir HOWARD GRUBB):
「望遠鏡用対物レンズと鏡――その製作と検査(Telescopic Objectives and Mirrors: Their Preparation and Testing)」
Nature 第34巻 85頁。

ヘンリー・ドレーパー博士(Dr. HENRY DRAPER):
「銀メッキガラス望遠鏡の構造について(On the Construction of a Silvered Glass Telescope)」
(スミソニアン協会刊 Smithsonian Contributions to Knowledge 第34巻)。

G. W. RITCHEY:
「近代反射望遠鏡と光学鏡の製作および検査について
(On the Modern Reflecting Telescope and the Making and Testing of Optical Mirrors)」
Smithsonian Contributions to Knowledge 第34巻)。

レイリー卿(LORD RAYLEIGH):
「ガラス表面の研磨(Polishing of Glass Surfaces)」
(光学会議議事録 Proc. Opt. Convention,1905年,73頁)。

BOTTONE:『アマチュアのためのレンズ製作(Lens Making for Amateurs)』”

第4章

対物レンズと反射鏡の特性

普通の望遠鏡における光線の経路は、すでに図5に示した。原理的には、遠方の物体の一点から来るすべての光線は、像面内の対応する一点に、まったく同じ位置で集まらなければならず、その像を接眼レンズを通して観測することになる。実際には、たとえ視野が角度にして1度程度であっても、その全域にわたって光線をこのような秩序だった形で一点に集めるためには、対物レンズの設計と工作に非常な注意を要する。必要とされる視野が広いほど、構成は一層困難になる。すでに初期の研究者たちの項で、彼らが色収差と球面収差を避けようとしてどれほど苦心したかを述べたが、今日でも、程度こそ小さいとはいえ、主としてこの二つが、彼らの後継者を悩ませている。

[図47――凸レンズの色収差。]

第一の色収差は、プリズムがすべての色の光を等しく曲げるのではなく、それらをスペクトルとして拡げてしまう――すなわち赤は最も曲げられず、紫は最も強く曲げられる――という事実に起因する。レンズは、中心付近では角度の小さいプリズム、周辺へ行くほど角度の大きいプリズムを集めたものと考えられるから、全体として、また全面にわたって、青や紫の光線は赤の光線よりも強く内側へ曲げられ、レンズ後面により近い位置で光軸上に集まることになる(図47)。ここで、入射光線 a はレンズのプリズム作用によって分解され、赤は r に、紫は v に焦点を結ぶ。

この色収差は、普通の読書用ルーペの大部分を手で覆い、縁の部分だけを通して明るい光源を眺めてみると、容易に観察できる。光は長い色の帯として伸びて見えるはずである。

レンズが凹の場合でも、紫の光線の方が依然としてより強く曲げられるが、今度は外側へ向かって曲げられる(図48)。入射光 a′ は分解され、紫は v へ向かって曲げられ、レンズの前方、レンズにより近い位置にある仮想焦点 v′ から直進してきたかのように進む。一方、対応する赤の仮想焦点は r′ にある。したがって、凸レンズでは紫を「内側へ曲げ過ぎ」、凹レンズでは紫を「外側へ曲げ過ぎ」るのであるから、この二つを適切に組み合わせれば、互いに補償し合い、赤と紫が同じ焦点に結ぶようにできるはずである――これがアクロマート対物レンズの原理である。

[図48――凹レンズの色収差。]

もしレンズの屈折力が、その分散力(色ごとの屈折率の差)に正確に比例するのであれば――ニュートンが誤ってそう考えたように――凹レンズはあらゆる光線を外側へ、ちょうど凸レンズの屈折と色収差を完全に打ち消すだけの量だけ追い出してしまい、その結果、両者を組み合わせても何も結像しないはずである。ところが幸いなことに、フリントガラスはクラウンガラスに比べて、赤と紫の間の分散がほぼ2倍近くあるにもかかわらず、中間の黄色光に対する屈折力はおよそ20%多いにすぎない。

したがって、プリズム的な分散効果が、レンズの全曲率に比例するとすれば、クラウンガラスのレンズが持つ色収差は、おおよそその半分の全曲率を持つ凹フリントレンズによって打ち消すことができ、しかも屈折力の比がほぼ5対6であるから、レンズの「力」としては3/5程度だけ残ることになる。

レンズの「力」が、焦点距離の逆数であることを思い出せば、焦点距離3のクラウンガラスの凸レンズと、焦点距離5(負)のフリントガラスの凹レンズを組み合わせれば、おおよそアクロマートな組み合わせが得られる。この組み合わせ全体の屈折力は、構成要素の屈折力の代数和となるから、両者を合わせた焦点距離は、クラウンレンズ単体の焦点距離の約2.5倍(5/2)になる。

より厳密に言えば、アクロマチズム(色消し)の条件は

Σρδn + Σρ′δn′ = 0

で与えられる。ここで ρ は曲率半径の逆数、δn および δn′ は、たとえば赤と青(または紫)といった、同時に正確な焦点に集めたい二つの色に対する屈折率の差である。

この慣用式は、「クラウンレンズのすべての曲率半径の逆数にクラウンガラスの分散を掛けた総和」は、「フリントレンズのそれ」に等しくなければならず、両者の総分散が互いに打ち消し合って、組み合わせ全体がアクロマートになる、ということを述べている。どのようなガラスを用いる場合でも、そのレンズの屈折力は

P( = 1/f) = Σρ(n – 1)

で与えられる。したがって、ほかの条件が同じなら、屈折率の高いガラスを使うほど、より穏やかな曲率(大きな半径)で、所定の焦点距離の対物レンズを作ることができる。また、先のアクロマチズムの条件に立ち返れば、二種類のガラスの分散差が大きいほど、所定の焦点距離に対して必要とされる全曲率が小さくて済み、これは種々の理由から有利な条件である。

任意のガラスの組合わせと焦点距離について、アクロマチズムの条件を決める計算は、ν という補助量を用いることで大いに簡略化される。この量は、すべての光学ガラス表にタブレットされており、やや扱いにくい代数式を短縮するために利用される。これを用いれば、焦点距離1(単位焦点距離)に対するアクロマチズムが、ただちに次のように表される:

P = ν/(ν-ν′) P′ = ν′/(ν-ν′) ν = (n_{D}-1)/δn

ここで P および P′ は、それぞれ前群・後群レンズの力であり、ν は D 線(ナトリウム黄)に対する屈折率 n_{D} と、二つの基準色(たとえば C と F)の屈折率差 δn の比で定義される。

このようにして構成された複合レンズは、選んだ二つの色――たとえば赤と青――を光軸上の同じ点に結像させる。しかし、それは必ずしも、赤と青の像の「大きさ」を完全に等しくするわけではない。この点での失敗は「倍率色収差(chromatic difference of magnification)」として知られるが、望遠鏡の対物レンズでは通常、その程度はきわめて小さく、ほとんど無視できる。

以上で、対物レンズをアクロマートとし、かつ所定の焦点距離を持たせる方法を見てきたが、この解はクラウンおよびフリントレンズそれぞれの「全曲率の和」の形で与えられ、各面の個々の曲率半径については何も教えてくれない。だが、この個々の半径の関係こそが、最終的な性能にとって決定的に重要である。

[図49――凸レンズの球面収差。]

なぜなら、球面面を持つ凸レンズでは、どの色であっても、縁の近くを通る光線は、軸の近くを通る光線よりも、過度に内側へ曲げられてしまうからである(図49)。その結果、a′ b′ のような周辺光線の焦点距離は、a b のような中心近くの光線の焦点距離よりも短くなる。

これが球面収差であり、古い天文学者たちは、デカルトの示唆に従って、非球面レンズを作ることでこの収差を取り除こうとしたが、結局は成功しなかった。

[図50――凹レンズの球面収差。]

図50を見ると、その補正の手がかりが示されている。ここでは、外側の光線 a″b″ へ向かって外側へ曲げられ、あたかも c″ にある焦点から出てきたかのように振る舞うが、中心に近い光線 a″′b″′ に向かって、はるかに少しだけ曲げられ、仮想焦点は c″′ にあるように見える。したがって、凹レンズの球面収差は、凸レンズのそれと符号が正反対であり、アクロマート対物レンズで両者を組み合わせた場合、少なくともある程度までは互いに補償し合うはずである。

実際その通りであり、両レンズの全曲率を構成する各面の曲率を適切に選べば、少なくとも光軸付近に関しては、全体の球面収差を事実上無視できる程度にまで小さくすることができる。したがって、アクロマチズムの条件に加えて、この条件を考慮に入れることで、全曲率の分配――ひいては各レンズの曲率半径――に関する手がかりが得られることになる。ただし、球面収差は、曲率だけでなく屈折率にも依存するので、完全な補正を得るには、アクロマチズムを得るために選んだガラスの組合せも重要な要素となる。

球面収差の大きさは、口径の二乗に比例し、焦点距離の三乗に反比例する。すなわち、a²/f³ に比例して増減する。図49のように、縁の光線の焦点が短くなる場合には球面収差を正(+)、逆に長くなる場合には負(−)と定義される。

いずれにせよ、あるレンズの球面収差は、同じ全屈折力を保ったままで、単に表裏の曲率半径の比を変えるだけで、その大きさを4対1以上の範囲で変化させうる。したがって、クラウン・フリント両レンズが、全曲率としてはほぼ正しい値を持っている場合でも、それぞれの個々の曲率をかなり変化させながら、なおかつ軸上の球面収差を互いに打ち消し合うようにすることが可能である。

実際にもその通りであり、レンズ形状を一意に決めるためには、さらに別の条件を導入するか、あるいは何らかの仮定を設けて、各面の曲率を特定の関係に縛りつける必要がある。この追加条件は全く任意であってもよいが、対物レンズの理論を発展させる過程では、しばしば、レンズに実際的または仮想的な利点を与えるような条件が選ばれてきた。

最も一般的な任意条件は、「クラウンガラスレンズを両凸(equiconvex)にする」というものである。これは単に、製作すべき工具を一つ減らすための便宜的な理由による。この条件は一組の曲率半径を決めてしまうので、フリントレンズの方は、それに対応して必要な補償収差を持つよう、最も作りやすい形に決められる。その結果として得られる対物レンズが図51である。

[図51――両凸クラウンを用いた対物レンズ。]

おそらく現存する対物レンズの9割は、この一般形式――両凸クラウンと、ほぼ平凹のフリント――に属している。内部面の曲率半径は等しくすることもでき、その場合は二枚を貼り合わせて一体化すべきであるが、図51_a_ のように、フリント前面の曲率をクラウン後面よりもわずかに弱くする(半径を大きくする)こともあれば、図51_b_ のようにフリント側をより強く曲げることもある。こうしたレンズは、普通のガラス組み合わせを用いた場合、軸上の球面収差はきわめて良好に補正されるが、軸から外れるにつれて補正は悪くなり、結果として「よく見える範囲」は比較的狭い。わずか数種の特異なガラス組み合わせを除いて、この状況は大きく改善されない。

内部の二面が完全に同じ曲率を持ち、貼り合わせることができる条件は、歴史的に「クレロー条件(Clairaut’s condition)」として知られており、二つの曲率半径を等しく固定することになるため、使用できるガラスの選択をある程度制限する。また、光学定数がわずかに異なるガラスに対して適切な補正を得ようとすると、接触面の曲率半径にかなり大きな変化を与えなければならない。

二つの隣り合う面の曲率が同一である場合、それらは必ず貼り合わせなければならない。そうしないと、図51で第3面から反射された光線が、第2面で再び反射され、その後方のレンズを、ほとんど元の光線と同じ経路で再通過して、ほぼ同じ位置に結像してしまい、やっかいな「ゴースト像」を生じる。したがって、もし第2面と第3面を貼り合わせないのであれば、それぞれの曲率半径を2〜3パーセント程度ずらし、二度反射された光線が焦点から大きく外れるようにしてやる必要がある。

この場合も、多くの他の例と同様、基本となる曲率を求める解析式は二次方程式の形で現れ、その解は a ± b の形となる。その結果、条件を満たす曲率セットは二組存在する。そのうち、曲率の穏やかな方――すなわち半径が大きい方――が、通常は選ばれる。図52_a_ および図52_c_ は、普通のクラウン・フリント組み合わせについて、このようにして得られた二つのセメント結合対物レンズの例であり、いずれも色収差と軸上球面収差が良好に補正されている。

およそ一世紀前、ジョン・ハーシェル卿(Sir John Herschel)は、もう一つの定義条件を提案した。それは、「平行光線に対してだけでなく、光軸上のより近い点(たとえば対物レンズの前方10倍程度の距離)から出る光線に対しても球面収差を消す」というものであった。この条件自体には、実用上それほど大きな価値はなかったが、第二の点を十分遠くに取った場合に、のちに本当に重要となる条件に近似していたという意味では、意義があった。

その少し後、ガウス(Gauss)は、球面収差を二つの異なる色についても打ち消すようにする、という条件を提案した。すなわち、色収差の扱いと同様の発想である。そして、彼は「数学の魔術師」ともいうべき天才であったから、このきわめて複雑な理論を実際に導き出し、その結果、図53に示すようなおおよその形式の対物レンズに至った。

この形式は、広い視野は与えないが、全波長域にわたって鋭い結像が必要な分光観測には有用である。ただし計算は非常に面倒であり、また組み立てやセンタリングも困難なため、広く用いられるには至らなかった。とはいえ、この形式の見事な例がいくつか存在し、たとえばプリンストン、ユトレヒト、コペンハーゲンには口径約9.5インチ級のものがあり、その他にいくつかの小型例が、主として分光用途に用いられている。

[図52――接着型対物レンズの関連形式。]

[図53――ガウス型対物レンズ。]

フラウンホーファーが見いだし、適用した条件こそ、今日に至るまで最も実用的価値の高いものであった。その条件とは、「コマ収差(coma)の消失」である。コマ収差とは、広い視野の周辺部でしばしば見られる、彗星状に流れた像のことである。

これは、光軸に対して斜めから入射する平行光線が、レンズの対向する縁や中心付近を通過したとき、それらが一般には同じ位置に結像しないことから生じる。事実上、斜め光線に対する一種の球面収差であり、これが「像がくっきり見える範囲(シャープフィールド)」を著しく狭める原因となる。コマは、像が視野の外側に向かって流れている場合を正(+)、内側へ向かう場合を負(−)と定義し、その大きさは斜入射角の正接(tan(u))と口径の二乗に比例し、焦点距離の二乗に反比例する。すなわち、おおよそ a² tan(u)/f² に比例して増減する。

[図54――フラウンホーファー型対物レンズ。]

フラウンホーファーがこの問題をどう解決したのかは、まったく分かっていない。しかし、彼はこの問題を完全に解決したのであり、そのことは、彼自身が後期の論文の一つで、「自分の対物レンズは、すべての収差を最小限に抑えるものである」と述べている点や、セイデル(Seidel)が30年後に、フラウンホーファーの対物レンズの一つを解析して証明した点からも明らかである。おそらく彼は、光軸上および斜入射の光線を、三角法計算によってレンズ系内で追跡し、それによって、自身が用いたガラスに対する標準的な形状を見いだしたのであろう。[10]

[10] 近年の研究によれば、彼の条件は、アッベ(Abbé)の「サイン条件(sine condition)」とまったく同等であることが分かっている。これは、「光軸上のある一点から出る光線が対物レンズに入射するとき、その光線の軸に対する入射角の正弦と、対物レンズを出るときの軸に対する角度の正弦との間には、入射位置に関係なく一定の比が成り立つべきである」というものである。光軸に沿った平行光線の場合、この条件は、「出射光線の角度の正弦が、入射位置の軸からの距離に比例する」という要件に簡約される。

フラウンホーファー式対物レンズの一例は、図54_a_ に示されている。これは、現代的なサイン条件の公式にもとづいて設計されたものであり、適切なガラス組み合わせを選べば、2〜3度の視野にわたって非常に正確な補正を与える。したがって、広角の視野を必要とするあらゆる用途にとって、きわめて貴重な形式である。

特定のガラスの組合せによっては、コマフリー条件(サイン条件)とクレロー条件とを同時に満たすことも可能であるが、通常は、コマフリーな形状は図52_b_ のように、「軸上球面収差は十分に補正されていないが、斜め光線の収差がうまく打ち消されている」中間的な形式に位置する。

フラウンホーファー型対物レンズでは、有利なガラス組み合わせでは必ず、フリント前面の曲率半径が、クラウン後面の曲率半径よりも大きくなる(曲率が弱くなる)。そのため、両者は縁にスペーサーを挟んで分離配置しなければならず、この点は小口径レンズの単純なセルではやや不便である。しかし、フリント前面の曲率を強くして取付けを簡単にしようとする試みはほとんど例外なく、サイン条件に違反し、シャープフィールドを狭めてしまう。もっとも、多くの天体観測では、この点はそれほど重大な問題にはならない。

フラウンホーファー型の唯一の実質的欠点は、クラウン後面の曲率が非常に強いことであり、大口径対物レンズでは、これが力学的なたわみに対してやや弱い形状となる。この問題は、シュタインハイル(Steinheil)が本質的に発展させ、その名高い工場で広く用いられた「フリント前面配置形式」で解決された。図54_b_ は、図54_a_ に対応するフリント前面型対物レンズを示しており、その曲率は、力学的に見てたわみに強い形状である。[11]

[11] 図54_a_ のサイン条件を満たすよう計算した際、その二次方程式のもう一つの解が、おおよそ図53に示したガウス型に対応する形状を与えたことは、興味深い事実である。

[図55――クラーク型対物レンズ。]

大口径対物レンズにおいては、機械的な考慮も軽視できない。図55は、その好例としてクラーク父子が導入し、近年に至るまで大口径レンズに用いてきた、きわめて有用な形式を示している。ここではクラウンとフリントの間に、図に示す比率に応じた空隙が設けられている。

この空隙は、有効な換気を確保し、レンズが急速に外気温に追従できるようにする。また、内面の清掃や結露除去も容易になる。光学的には、この隔たりによって、両凸クラウンにほとんど付き物であったサイン条件からの逸脱が軽減され、色ごとの球面収差の差も減少し、さらにレンズ間隔をわずかに変えることで、色補正を制御する便利な手段が得られる。

さらに特別な場合として、レンズを「両方向通過の光線」に対して球面収差ゼロにする、という条件がある。ガラスと曲率を適切に選べば、これはかなり良い近似で達成でき、その結果得られる形式が図56である。ここではクラウン前面が著しく平らであり、フリント後面が目立って強く曲げられている。全体の形状は、図52_b_ と図52_c_ の中間に位置している。この形式は、読み取り望遠鏡などで有用であり、またいくつかの分光用途にも使われる。

[図56――両方向に対して補正された形式。]

まだ触れていないよく知られた収差として、非点収差(astigmatism)と像面湾曲(curvature of field)がある。前者は、光線の経路が光軸から外れた場合――すなわち広がりを持った物体から来る光を扱う場合――に現れる。軸に向かう半径方向(メリディオナル)に並ぶ線からの光と、軸を中心とする円の接線方向に並ぶ線からの光とが、同じ位置には焦点を結ばないのである。その結果、軸方向成分と接線方向成分とが、それぞれ別々の像面を形成することになる。これらは、光軸上では一点で接しているが、軸から離れるほど互いに離れていく。同時に、この二つの像面はいずれもかなり強い曲率を持っており、接線方向像面の方が、より強く曲がっている。

ガラスの種類と曲率をうまく選べば、軸のごく近傍に限って、両者の像面を、おおよそ平面に近い位置にそろえ、しかも色収差と球面収差を大きく損なうことなく収めることが可能である。この種の補正には、通常少なくとも三枚のレンズが必要であり、このように設計された写真用対物レンズ(アナスチグマット)は、全角50〜60度にわたる視野で、写真用途としてはほぼ完全と言い得るレベルの補正を与える。

ただし、天文学における分解能要求のように、より厳密な補正を求めれば、許容される視野角ははるかに狭くなる。多くの天体写真レンズ(アストログラフ)は、全視野10〜15度を超えることはほとんどなく、しかも相対口径が大きくなるほど、アナスチグマティックな平坦像面を維持するのは困難になる。非点収差は、普通の望遠鏡ではほとんど目立たないが、接眼レンズでは時に顕著に現れることがある。

像面湾曲は、他の収差がよく補正された対物レンズであっても、光軸外の斜め光線が、軸上の光線よりも短い焦点距離で結像しがちであることから生じる。これは、斜め光線の入射角が大きくなり、その結果屈折がより強くなるためである。この傾向は、前述の二つの非点像面のいずれにも当てはまり、両者とも一般に対物レンズ側に凹の形状となる。

幸いなことに、これら二つの誤差は、光軸のごく近傍ではほとんど無視できる。その大きさは、tan²(u)/f に比例し(u は光軸からの斜入射角、f は焦点距離)、広角写真レンズでは深刻な問題となるが、相対口径 F/12〜F/16 程度の普通の望遠鏡では、通常あまり気にしなくてよい。とはいえ、F/8 より明るい(口径比の小さい)対物レンズでは、こうした高次収差が無視できなくなるので、注意が必要である。さらに明るいレンズでは、特殊なガラスを慎重に選ぶか、あるいは二枚ではなく三枚以上のレンズに曲率を分担させる必要がある。図57は、その一例としてシュタインハイルが設計した接着三枚玉を示しており、クラウンを二枚のフリントレンズの間に挟んだ構成である。この種の三枚玉は、口径約4インチまで製作され、相対口径 F/4〜F/5 程度で用いられる。

[図57――シュタインハイル三枚玉対物レンズ。]

[図58――トルス四枚玉対物レンズ。]

極端に明るい相対口径が求められる場合には、四枚の要素を接着した対物レンズが作られることもある。図58は、その一例として、かつてトルス(Tolles)が小型手持ち望遠鏡用に製作した、口径1インチの四枚玉対物レンズを示している。相対口径 F/4 でありながら、その性能はきわめて良好であり、倍率75倍まで用いても優れた像を示したと伝えられている。

これら高口径対物レンズの主な問題点は、短い焦点距離に起因する像面湾曲の大きさであり、そのために、軸外部での優れた補正を十分に活かしきれない点にある。

歪曲収差(distortion)も、概ね同じ原因から生じる。すなわち、光軸からの距離が異なる光線では、倍率がわずかに異なってしまうのである。歪曲収差は、一般には光軸からの距離の3乗に比例し、普通の視観測用望遠鏡では視野が狭いため、ほとんど問題にならない。実際に問題となるのは、写真望遠鏡においてである。

歪曲を最も簡単に避ける方法は、写真用に一般的な、少なくとも四枚のレンズからなる対称型ダブレット形式を採用することである。二枚玉の単純なアクロマートでは、軸のごく近傍を除いて、歪曲もその他の収差も完全には抑えられない。したがって、そのような対物レンズで撮影した写真乾板を測定する場合には、通常、歪曲の補正計算が必要となる。

ときには、理論的に最良とされる形状から、多少外れた対物レンズ形式を採用せざるをえないこともある。幸いなことに、曲率比をかなり目立って変えても、性能が急激に悪化することはなく、収差は徐々に増加していく傾向がある。

[図59――「曲げた(bent)」対物レンズ。]

その一例が、いわゆる「曲げた(bent)」対物レンズである。これは、全体の曲率を対称的に変化させるものであり、たとえば指をレンズの周辺に、親指を中央に当てて、全体を内側か外側に撓ませたような形状を想像すればよい。これにより、一般には補正状態がわずかに悪化するものの、像面を実質的に平坦化し、視野全体の結像を改善できる。

極端な例が、写真用のランドスケープレンズ(風景レンズ)である。図59は、低倍率かつ非常に広い視野が要求された、ある実際の望遠鏡対物レンズの例を示している。まず、空間的に十分広い視野に対してサイン条件を正確に満たすよう、慎重に選んだガラスによって対物レンズが設計された。それでも、視野中央から40度以上に及ぶ像は、周辺部でかなりの劣化を示した。

そこで、後続の光学系全体を考慮しながら、対物レンズの曲率を、図中の実線から点線の形へと対称的に「曲げ」てやったところ、望遠鏡は視野の周辺に至るまで、中心画質の低下なしに、美しい結像を示すようになった。

ただし、このような「見かけの平坦化」は、非点収差による焦点位置の違いを根本的に解決するわけではないため、あまり極端に行うと、かえって問題を引き起こす。とはいえ、適度な範囲であれば非常に有用な手段である。実際、像面湾曲は、高倍率使用を要求される対物レンズにおける、ほとんど唯一と言ってよい残存誤差であり、これを根本的に解消しようとすれば、結局は写真用と同様のアナスチグマティック形式に頼らざるをえない。[12]

[12] 像面の湾曲こそが、相対焦点距離(F比)を短くする際の限界を定める要因である。すでに述べたように、非点像面は軸から離れるにつれて急速に互いに離れ、その両者ともかなり大きな曲率を持つ。接線像面の曲率は、とくに大きく、その半径は焦点距離の1/3よりも明らかに小さい。一方、半径方向像面は、焦点距離の2/3よりも小さい半径となる。これらは、いずれも普通のガラスを用い、通常の収差を補正した形式に対して成り立つ。非アナスチグマット形式でも、例外的に他の収差がひどい場合を除いて、これらの像面は対物レンズ側に凹である。その近似曲率は、半頂角5度以内のアクロマートに対して、単位焦点長を仮定すると、次のように与えられる:

ρ{r} = 1 + (1/(ν-ν′))(ν/n – ν′/n′), ρ{t} = 3 + (1/(ν-ν′))(ν/n – ν′/n′)

ここで ρ_r および ρ_t は、それぞれ半径の逆数である。実際の像面は、軸から離れるにつれて、球面というよりはむしろ「卵形」に近い形になる。

像面湾曲を除けば、対物レンズにおける主な残存誤差は、アクロマチズムの不完全さである。これは、クラウンとフリントが、スペクトル中の各色に対して、まったく同じ比率で分散を与えるわけではない、という事実から生じる。クラウンガラスは、スペクトルの赤側の分散をやや強調する傾向があり、フリントガラスは紫側をやや強調する――いわゆる「分散の非合理性(irrationality of dispersion)」である。

したがって、二枚のレンズが、たとえば C 線と F 線のような二色については完全に一致した色収差補正を与えるように設計されていても、他の波長に対しては補償が完全ではなくなる。図60は、この状況を示している。ここではクラウンとフリントそれぞれによるスペクトルが、C と F の間でちょうど同じ長さになるように調整されている。

[図60――分散の非合理性。]

明らかに、二つのプリズムあるいはレンズが、このように C と F に対して同じ屈折を与えるよう調整されていても、その組み合わせを通過する光は、スペクトルの他の領域における差のために、なおわずかに着色されることになる。この残存色差が、いわゆる「二次スペクトル(secondary spectrum)」である。

アクロマートレンズにおいて、この二次スペクトルがどのような効果をもたらすかは、図を見ればよく理解できる。C と F は、クラウンとフリントによって等しい屈折を受けるので、同じ焦点位置に結像する。しかし、ナトリウムの黄色線 D に対しては、フリントレンズの屈折がわずかに小さく、その分クラウンとの補償が不十分になるため、クラウンが単独で持つ屈折力の方が勝り、D 線の焦点は C・F よりわずかに手前になる。一方、A′ および G′ の赤と紫に対しては、フリントガラスの屈折がクラウンよりわずかに大きくなり、その分クラウン側を上回って、これらの色の焦点は C・F よりわずかに後ろにくる。

D 線に対する焦点ずれはごく小さく、おおよそ焦点距離の1/2000程度であるが、赤側はその約3倍、紫側は約4倍に達する。H 線近傍では、この差は急速に増大し、大型望遠鏡では、各色の焦点位置の範囲が数インチにも及ぶことがある。

残念ながら、通常のガラスの組み合わせでは、この問題を避けることはできない。どのクラウン・フリント組み合わせも、ほぼ同程度の二次スペクトルを示すからである。19世紀後半には、スペクトル全体にわたってより均等な分散特性を持つガラスを生み出そうという試みが、まずイギリスの研究者たちによって、次いでイエナのショット(Schott)とアッベ(Abbé)によって行われ、最終的な成功を収めた。

ここではクラウンとフリントの双方が、組成的にかなり異常なものとなり、とくにフリントは極めて特異な配合であった。その結果、両者の屈折率はほとんど同じであり、また ν の差も非常に小さいものとなった。さらに、クラウンガラスの均質性を十分に確保することが非常に難しいことも分かった。ショットは、そのカタログに、このクラウンが気泡やストリエから完全には自由でない旨の注記を添えている。

とはいえ、新しいガラスは、二次スペクトルを概ね4分の1程度にまで低減することに成功した。しかし、必要とされる曲率が依然として強く、かつガラス間の屈折率差が小さいため、球面収差を取り除くことは非常に困難であり、この形式の対物レンズでは、実用的には相対口径 F/20 程度が限界であると思われる。図61は、このようなガラスを用いた対物レンズの一例を示しており、相対口径が、通常のガラスで作る場合の半分程度に抑えられているにもかかわらず、曲率は非常に強くなっている。F/20 においては、普通のガラスを用いた対物レンズでも、二次スペクトルはさほど目立たない。ロー(Roe, Popular Astronomy 18巻193頁)は、シュタインハイル製の小型新ガラスレンズと、旧来のガラスを用いたクラーク製レンズとを、ほぼ同じ口径と焦点比で並べて比較したところ、実用上の性能に有意な差は見いだせなかったと報告している。

[図61――アポクロマート二枚玉。]

[図62――アポクロマート三枚玉。]

同じ問題への別のアプローチは、H・D・テイラー(H. D. Taylor)によって、さらに成功裏に行われた。彼は、単純な二枚玉アポクロマート(二色以上の色消し)を、たとえ最良の新ガラスを用いても実現するのが困難であることを見抜き、あらかじめ分散特性の異なる二枚のフリントレンズを組み合わせ、その適切な相対曲率によって「合成的な」フリントを作ることで、望ましい分散を実現するという方法を採用したのである。

その結果得られた対物レンズ形式は、とくにヨークのクック社(Cooke)によって製作され、また大陸のメーカーからも供給されている。そして、「写真視用(photo-visual)」と呼ばれている。これは、紫外側にまで及ぶかなり広い範囲にわたって正確な補正を行うことで、同じ焦点位置で「見る」ことと「撮る」こととを両立させる形式である。残存する色収差はごく小さく、通常の二次スペクトルの1/8〜1/10程度にまで抑えられている。

この構成によって、相対口径を F/12 あるいは F/10 まで増大させながら、曲率を比較的穏やかに保ち、球面収差の残りをさらに低減することが可能となる。三枚玉には理論上12通りの配置があるが、そのうち最良と思われるものがテイラーによって採用された形式であり、それが図62に示されている。これは二枚のフリントを前面に、一枚のクラウンを後面に配置する「フリント前面・三枚玉」であり、第一要素はバリウム・ライトフリント、第二要素はホウ素珪酸フリント、後面は特殊ライトクラウンである。後二者のガラスは、長いあいだ耐久性にいささか疑問が持たれていたが、近年その問題は解決されたと報告されている。いずれにせよ、二次スペクトルを減じた二枚玉・三枚玉形式は、天文用途としてはあまり広く採用されていない。その理由は、価格がかなり高いこと[13]、三枚玉であっても天体写真用としては相対口径がそれほど大きくないこと、そして何より、反射鏡に比べれば、なおアクロマチズムの完全度が劣ることにある。

[13] 二枚玉アポクロマートは、同口径の普通アクロマートの約1.5倍、三枚玉は2倍以上の価格となる。

アクロマチズムの問題は、さらに別の要因によっても複雑化する。というのも、対物レンズは通常、接眼レンズ、とくに人間の眼自体に含まれる色収差を補償するために、あえて「過剰補正(over-achromatization)」されているからである。一般論として、光学系のどこかで目立つ誤差がある場合、系の別の場所に逆符号の誤差を意図的に導入することで、全体としてかなりよく打ち消すことができる――どの位置で補償するかは、他の補正条件との兼ね合いで決まる。

人間の眼は、色収差についてほとんど補正されておらず、したがって、たとえ反射望遠鏡であっても、明るい天体を見れば、像の縁に色付きの縁取りが現れやすい。その顕著さは、瞳孔の相対口径が大きいほど増す。低倍率の接眼レンズを用いるときには、出射光束が瞳孔をほぼいっぱいに満たすことがあり、このとき色収差はとくに問題となる。そこで、フラウンホーファーの時代、あるいはおそらく彼自身に端を発する慣習として、熟練光学職人たちは、対物レンズ側の色補正をわずかに「やり過ぎる」ことで、眼の欠点を相殺してきたのである。

実際に何が起きているかは、図63に示されている。この図は、歴代の名工たちが行ったアクロマチズムの実状を表したものである。最も短い焦点は黄緑付近、すなわち D 線の近傍にあり、最も長い焦点は紫側にある。そして F 線は、理論上のアクロマート条件である「C 線と同じ焦点」にはならず、実際には B 線近傍の深赤と同じ焦点位置にある。したがって、見かけ上は、青側の焦点がやや後ろ(長い焦点)へ移動し、眼の色収差に対する補償効果を持つ。その結果、像には目立った赤や青の縁取りが現れにくくなる。このような色補正の調整は、ほとんど完全に職人の熟練に委ねられているが、図63に示された各メーカーの補正曲線がきわめてよく似ていることからも、その判断がかなり一貫していることが分かる。もっとも、グラブ社の対物レンズでは過剰補正が最も小さく、フラウンホーファーのものでは最も大きい。この違いは、おそらく「標準的な瞳孔径」をどう見なすかという個人的見解の差に由来するのであろう。

一般に、高倍率用として最適化する場合、瞳孔に入る光束の直径がおおよそ1/64インチ程度となるよう設計するのが通例である。

いずれにせよ、瞳孔に入る光束が大きくなる――すなわち倍率が低くなる――ほど、大きな過剰補正が必要となる。したがって、常時低倍率で使用されるような望遠鏡――たとえば彗星捜索用望遠鏡――は、対物レンズ側か接眼レンズ側か、あるいはその両方で、この事情を見込んだ設計が必要となる。

[図63――各メーカーによる色補正曲線。

  1. フラウンホーファー 2. クラーク 3. シュタインハイル
  2. ヘイスティングス=ブレシャー 5. グラブ]

倍率に応じたこの色補正の差は、観測上決して無視できるものではない。もし、光学ガラス表に記載されているような理想的条件――すなわち C 線と F 線が完全に同一焦点に結ぶような――に厳密に従う対物レンズを、そのままさまざまな倍率で明るい天体に用いたとすれば、観測者にとってかなり不快な印象を与えるであろう。また、この実際の色補正に対応する ν の値は、特定の対物レンズ形式を計算する際に、けっして無視しうるものではない。

1 はフラウンホーファー自作の対物レンズであり、口径9.6インチ、焦点距離170インチのもので、ベルリン天文台に設置されている。

2 はローウェル天文台のクラーク製屈折望遠鏡であり、口径24インチ、焦点距離386インチである。これは通常のクラーク形式、すなわちクラウン前面・レンズ間隔は口径の約1/6 である。

3 はポツダムのシュタインハイル製屈折望遠鏡であり、口径5.3インチ、焦点距離85インチである。

4 はジョンズ・ホプキンス大学の精巧な赤道儀であり、ヘイスティングス教授が設計し、ブレシャーが製作したものである。この対物レンズは、特に一つの波長だけでなく、すべての波長にわたって球面収差を最小化することを目標に設計されている。フリント前面配置であり、口径9.4インチ、焦点距離142インチ、レンズ間隔は最終調整において1/4インチである。

5 は、グラブ製のポツダム赤道儀の対物レンズで、口径8.5インチ、焦点距離124インチである。

これらの色補正曲線が互いに非常によく似ていることは、一目瞭然である。ガラスの違いによる差異は、倍率に応じた調整から生じる差に比べれば、ごく小さい。

実際問題として、色補正に関してできることは、新種の特殊ガラスを用いる以外にはほとんど残されていない。しかし、特殊ガラスの使用は他の問題を引き起こし、倍率に応じた補正の調整という点では、むしろ自由度を減らしてしまう。その場合、接眼レンズ側で特別な補正を行う必要が出てくる。ごくまれに、ある溶解バッチが、通常よりやや有利な分散特性を示すこともあるが、そのような特性を持つ大口径ディスクを安定して供給できるという見込みはほとんどなく、製作者は基本的には「来るものを受け取る」しかない。色分散におけるごく小さな優劣よりも、均質性とアニーリングの完全さの方が、はるかに重要である。

反射鏡の収差については、第1章ですでに多少触れたが、ここでいくつかの簡単な例を通じて、実用的な側面を見ておくことにしよう。

図64は、最も単純な形式の凹面鏡――開口角90度の球面鏡――を示しており、その性質を示すには十分である。もし光が C を中心とした半径方向に外向きに進むとすれば、どの光線も表面に対して垂直に(a のように)当たり、正確に自分の来た道を引き返して、再び曲率中心 C を通るだろう。

一方、光軸に平行に進む光線が、表面の bb のような点に当たると、すべての反射光と同様に、「入射角の2倍の角度」で折り返される。この入射角は、曲率中心 C からの半径 Cb によって決まり、反射光線 CbF の軸となす角は、入射側の角 FCb に等しい。光線が軸のごく近傍を通る場合には、bF はほぼ FC に等しく、またほぼ cF にも等しい。したがって、軸付近の平行光線は、ほぼ曲率半径 C と曲率中心 c との中点 F に集まる。ゆえに、小さな開口角を持つ凹面球面鏡の有効焦点距離は、曲率半径の半分に等しい。

[図64――凹面球面鏡での反射。]

しかし、入射角が大きくなると、これらの簡単な等式は成立しなくなる。図上半分に示すように、軸から45度離れた位置 e に平行光線が入射すると、その面は光線に対して45度の角度を持つため、反射光は90度折り返され、ちょうど垂直方向へ折れ曲がる。その結果、反射光は、名目上の焦点 F よりも内側の d で軸と交わることになる。軸と周縁の中間部からの光線を追跡してみると、もはや一点に全てが集まることはなく、「尖ったカスプ状の焦点面(カウスティック)」が形成されることが分かる。これは幾何光学でいう「カウスティック曲面(caustic)」であり、明瞭な像を結ぶことはできない。

これに対し、図65に示される放物面鏡は、光軸に平行な光線を完全に一点に集める性質を持っている。ただし、光軸上のある一点から出る光線を集める、という目的には全く適していない。なぜなら、放物面鏡の曲率は頂点から縁に向かって連続的に変化し、球面のような一様な曲率を持たないからである。図65では、光軸に平行な光線 a, a, a, a が放物面に当たり、すべて焦点 F に反射される。一方、それらを逆方向に延長した光線 a′, a′, a′, a′ が、もし放物面の凸面側から入射したとすれば、反射光 R, R′, R″, R″′ は、あたかも焦点 F から出てきたかのように振る舞う。

[図65――放物面鏡での反射。]

[図66_a_, 66_b_――放物面と球面のずれ。]

球面と放物面の曲線の違いは、図66に明瞭に示されている。ここで実線が球面、点線が放物面の断面である。図からも分かるように、放物面は周縁部で球面よりも深く落ち込んでおり、その結果、周辺光線を外側へ押し出すような形になる。一方、中心付近では放物面の曲率が球面より強く、そのため中心近くを通る光線を、より内側へ引き込んで、周辺光線と合流させるように働く。

実際に放物面鏡を作る場合には、必ず最初に球面として面出しを行う。球面は、曲率中心における像を利用して、容易かつ高精度に検査できるからである。その後、周縁部の曲率を弱める、あるいは中心部の曲率を強めることで、面を少しずつ放物面へと変形させていく。図66_a_ は、やや長い曲率半径を持つ球面から出発して、中心部の曲率を強める場合の例である。

実務的には、いずれの方法も採用されており、結果としては同じ放物面に到達する。いずれにせよ、球面からのずれはごくわずかであり、大きさや焦点比に応じて、数十万分の数インチ、せいぜい数万分の一インチ程度に過ぎない。

にもかかわらず、このごく小さな違いが、像の品質において「きわめて優れた定義」と「まったく使い物にならない像」との違いを生む。作業の具体的方法はどうであれ、頻繁な検査を行いながら、真に放物面となるまで慎重に面出しを進めなければならない。その達成は、職人の熟練と経験に大きく依存する。

放物面鏡の弱点は、光軸に対して斜めから入る平行光線を扱うときに現れる。図67は、その状況を示している。ここでは、斜めから入射した光線 a, a′ の反射光 a′, a″ は、もはや焦点 F に一点として集まらず、平行光線の焦点より内側の f に一種の「焦点面」を形成する。実際の効果としては、星が光軸から離れていくにつれて像が急速に悪化し、楕円形に伸びた星像となる。これは、非点収差とコマ収差を組み合わせたような状態であり、実際そのような複合収差で説明される。

[図67――放物面鏡の収差。]

開口角が非常に小さい場合でも、わずかながら焦点面は理想的な平面とはならず、焦点距離の半分の半径をもつ球面となる。そして、光軸外での収差は、おおよそ相対口径の二乗と光軸からの角度に比例して増加する。

そのため、通常の比例で作られた放物面鏡が持つ「十分に鋭く見える視野」は、一般にかなり小さく、多くの場合30分角程度を超えることはない。屈折望遠鏡で一般的な F/15 程度の相対口径を用いると、屈折望遠鏡と反射望遠鏡のシャープフィールドの広さは、だいたい同程度になる。鏡の通常の収差[14]に対して最も有効な対策は、カセグレン形式を採用することであり、これはとりわけ大口径器械にとって、他の追随を許さないほど便利な構成である。ここでは、副鏡として双曲面鏡を用いる。

[14] 放物面鏡の収差については、Poor による有用な研究が Astrophysical Journal 7巻114頁にある。そこでは、さまざまな口径の望遠鏡について、光軸外における星像の最大径の表が示されている。この表は、次のおおよその式に要約される:

a = 11 l d / f²

ここで a は収差による星像径(秒角単位)、d は光軸からの距離(分角単位)、f は F比の分母(F/8 なら f = 8 など)、11 は定数である。望遠鏡の分解能(第10章参照)は、おおよそ 4.″56/D(D は対物レンズまたは鏡の口径インチ)で与えられるから、a > 4.″56/D となると、分解能は悪化する。写真の場合には、基準となる量は 4.″56/D ではなく、撮影目的に照らして許容しうる像径の最大値となる。

双曲面は、光学的に非常に興味深い性質を持つ曲面である。球面鏡が、自身の曲率中心から出た光線を、収差なく再び同じ点へ戻すことができ、放物面鏡が、その焦点から出た光線を収差なく平行光として送り出し、あるいは平行光を収差なく一点に結像させることができるのと同様に、双曲面鏡(図68)は、収差のない発散光束を送り出し、あるいはその逆に、適切に入射した発散光束を一点に結像させることができる。

[図68――双曲面鏡での反射。]

このような光束 a, a, a は、双曲面の反対側にある仮想焦点 F′ から出て、同じ点へ戻っていくかのように振る舞う。そして、双曲面の凸面側に反射面を設ければ、仮想焦点 F に向かって収束しつつある光線 R, R′, R″P, P′, P″ で双曲面に当たると、実際にはそれらは F′ に向かって反射され、F′ が実焦点となる。

この双曲面は凸面であるため、その軸外収差は凹面鏡による収差と符号が逆になり、放物面主鏡の収差を、少なくとも部分的に相殺することができる。その理屈は、図67と68を見比べればよく分かる。図67では、斜めに入射した光線 a, a′ は、あまりにも強く下方へと曲げられてしまう。これが図68においては、双曲面鏡の凸面で反射され、R, R′, R″ のように収束光束となって F′ を目指す。もし双曲面の形状が適切に選ばれていれば、これらはほぼ共通の結像位置 F′ に集まり、これは放物面鏡単体における近似的な結像位置 F の共役点となる。

とはいえ、この補償は広い視野全域にわたって完全に行えるわけではなく、光軸から離れるにつれて結像位置 F′ は面となって広がっていく。その結果として、総合的な収差は大幅に減少するものの、なお若干のコマ収差が残り、さらに像面湾曲や歪曲収差が増加する。ここでも、放物面鏡の面出しと同様に、構成は本質的に経験的であり、熟練した光学職人の「勘」に大きく依存する。

実際の作業では、おおよそ所定の曲率を持つ球面凸面から出発し、これを少しずつ非球面へと変形させながら、真の放物面主鏡と組み合わせて試験し、像が完全に欠点のないものとなるまで修正を続ける。事実、球面以外の回転対称曲面(放物面や双曲面など)は、厳密な意味で幾何学的な研磨法だけで成形することはできない。そのため、機械研磨や手研磨によって、球面からのごく小さなずれを見極めながら、形状を追い込んでいくしかないのである。

シュヴァルツシルト(Prof. Schwarzschild)やその他の研究者たちは、反射望遠鏡の補正をさらに進め、視野を拡大しようと試みたが、そのためには主鏡・副鏡の双方に非常に扱いにくい曲率を課すか、あるいはレンズを併用する必要があり、いずれも実用的な解決には至っていない。

参照文献

SCHWARZCHILD:『研究 第2巻・幾何光学 II』
SAMPSON:『オブザーバトリー(The Observatory)』誌 第36巻, 248ページ。
CODDINGTON:『光の反射および屈折(Reflexion and Refraction of Light)』。
HERSCHEL:『光(Light)』。
TAYLOR:『応用光学(Applied Optics)』。
SOUTHALL:『幾何光学(Geometrical Optics)』。
MARTIN:『エコール・ノルマル高等学校科学年報(Annales Scientifiques de l’École Normale)』1877年付録。
MOSER:『器械学雑誌(Zeitschrift für Instrumentenkunde)』1887年。
HARTING:『器械学雑誌(Zeitschrift für Instrumentenkunde)』1899年。
HARTING:『器械学雑誌(Zeitschrift für Instrumentenkunde)』1898年。
VON HOEGH:『器械学雑誌(Zeitschrift für Instrumentenkunde)』1899年。
STEINHEIL & VOIT:『応用光学(Applied Optics)』。
『研究論文集(Collected Researches)』国立物理学研究所(National Physical Laboratory)第14巻。
GLEICHEN:『幾何光学教科書(Lehrbuch der geometrischen Optik)』。

注――光学の公式を扱う際には、代数記号の符号に注意されたい。著者によって、符号の取り決めがまちまちであり、公式を最初から導くのと同じくらい、「その公式をどう適用すべきか」を学ぶことが難しい場合がある。また、特許明細書に書かれた光学系については、とくに注意が必要である。そこでは、重要な光学定数をわざと伏せていたり、実際にはどこのメーカーも製造していないガラスに基づく例を挙げたり、さらには、実際には馬鹿げた特性をもたらすような曲率を指定していることさえある。数値設計を鵜呑みにする前に、そのアクロマチズムと焦点距離が本当に成り立っているか、簡単な検算をしてみるのがよい習慣である。

第五章
架台(マウンティング)

望遠鏡をうまく使うためには、良い対物レンズと同じくらい、しっかりして扱いやすい架台が必要である。ぐらつく架台で、しかも天体を追尾するために滑らかに容易に動かせる調整機構を備えていない望遠鏡では、いかなる目的であれ満足な観測はできない。

大まかにいって、望遠鏡架台は二つの大きな種類に分けられる。すなわち、経緯台式(alt‑azimuth)と赤道儀式(equatorial)である。前者は、その名が示すように、鉛直軸のまわりに方位(azimuth)方向に、水平軸のまわりに高度(altitude)方向に回転するように作られている。この種の架台はきわめて単純に作ることができるが、明らかに、視野内の任意の天体を追尾するには二つの運動が必要になる。というのも、天体の見かけ上の運動は天の極を軸とする円運動であり、その軸は観測地の緯度だけ鉛直線から傾いているからである。

したがって、鉛直軸および水平軸のまわりにしか動かない望遠鏡で天体を指向するということは、星が見かけの軌道を進むにつれて、方位・高度の両方の方向に望遠鏡の視野から外れていくことを意味し、それを追尾するには二重の動きが求められるのである。

経緯台式架台は、その構造によって三つの大きな群に分けられる。第一であり最も単純なのは、図69に示す柱と爪脚型スタンド(pillar‑and‑claw stand)である。これは、通常真鍮または鉄製の頑丈な三脚に支えられた垂直の柱から成り、その頂部には長い円錐形の軸受が設けられ、その上端にヒンジ継手を介して、望遠鏡を図のようにねじ止めするためのバーが取り付けられている。

適切に作られたものであれば、上部の継手は、バーを支える円板と、両側の支柱(チークピース)との間に挟まれた構造になっており、摩耗を補償する手段と、望遠鏡を容易に調整できる程度の摩擦を与える手段とを備えている。これにより、望遠鏡は天頂近くから地平線付近、さらにはそれ以下まで高度方向に振ることができ、かつ鉛直軸のまわりに任意の方向へ回転させることができる。

よく作られていれば、この種のスタンドは小口径(およそ3インチ程度)までの望遠鏡を十分支え得る安定で滑らかな動作を示す。その適切な使用には、柱の三本の強固で折りたたみ式の脚を支える堅固な下部基礎が必要である。これは、脚を広げた形の非常に頑丈な腰掛けのような台として作るのが便利であり、または、十分な大きさの板をよく据え付けた杭にしっかりボルトで固定してもよい。

〔図69――緩速運動付きテーブル架台〕

このように据え付ければ、この架台は小型望遠鏡にはきわめて実用的なものとなる。しかしながら、その安定度は、それを据え付ける基礎に依存する。筆者はかつて、利便性を高めようと考えて、このスタンドの脚を取り外し、その本体をかなり頑丈な三脚の上にしっかりと取り付けてみたことがあるが、それは安定度の点で完全な失敗であった。柱の高さによって長いてこの腕が生じてしまい、その結果、当初は見事に安定していた装置が、ピント合わせの際にひどく振動するようになってしまったからである。

ここに示した特定のスタンドには高度方向のラック機構が備えられており、これは追尾においてかなりの便利さを与える。よりまれには、望遠鏡の対物レンズ側から架台の基部へと延びる調整式の補強棒が取り付けられることもあるが、そこまでの補強を必要とするほど大きな望遠鏡には、一般により良い形式の架台を用いる方が望ましい。

ときおり、柱と爪脚型スタンドに用いられるものとまったく同じ種類の経緯台ヘッドが、高さのある三脚の上に据え付けられることがあるが、このような構成は通常、安価な望遠鏡に限って見られるものであり、そのような三脚式マウントには、別種の金具を用いる方が望ましい。

〔図70――経緯台式架台(Clark Type T)〕

第二の形式の経緯台式マウントは、全体としてはるかに頑丈な構造である。通常、テーパー状で精密に研磨された垂直軸が、斜めのフォーク(両腕)を支えており、その中に望遠鏡筒が、縦方向の動きのための耳軸(トラニオン)で取り付けられている。フォークヘッドが傾斜していることで、望遠鏡を天頂方向に真っ直ぐ向けることができ、架台全体はよくできた三脚のヘッド部となっている。

図70は、この形式の架台のすぐれた一例であり、地上観測と天体観測の双方に用いるよう設計されたClark社のType T望遠鏡に使用されている。この特定の構成では、望遠鏡はトラニオンに載るアルミ製の揺りかご(クレードル)の中に置かれており、つまみねじを緩めてクレードルを開くだけで、簡単に取り外すことができる。

〔図71――全軸緩速運動付き経緯台〕

また、クレードル内で望遠鏡を前後方向に移動してバランスを取ることもでき、どちらかの端に何らかの付属品を取り付ける場合に対応できる。このマウントでは、三脚の開きと伸縮式の脚の両方によって、望遠鏡の高さを調整できるようになっている。このように架装された3インチまたは4インチ口径の望遠鏡は、取り扱いが容易であり、地上用にも天体用にも非常に優れた性能を発揮する。

実際、Clarks社は、特別な用途のために、6インチ口径までの望遠鏡をこの単純な方式で架装してきた。天体観測で比較的高倍率が必要となる用途には、この形式または同様のマウントに、方位・高度いずれか一方あるいは両方に緩速運動を備えることが容易である。

図71は、そのような緩速運動を備えたZeiss製4¼インチ望遠鏡と架台を示している。経緯台式マウントの中には、三脚を動かさずに望遠鏡を便利な高さに持ち上げるための垂直方向のラック機構を備えたものもある。図70および図71に示すような良質の経緯台架台は、3インチまたは4インチ口径の望遠鏡に用いる架台として、決して軽視すべきものではない。

考慮すべき唯一の不便は、追尾に二つの運動が必要であることである。とはいえ、よく作られた緩速運動を備えている場合、これは通常の倍率での観測ではそれほど深刻な問題ではない。150倍から200倍程度までは、対象を容易に視野内に保持したまま、きわめて快適に作業することができる。しかし、高倍率では視野がきわめて狭く、せいぜい数分角にすぎないため、この二重の操作がかなり厄介になり、また、位置が正確にわかっていない天体を捜索する「掃天」観測では、低倍率であっても極めて不便である。

実際のところ、天体観測で必要となる「追尾」には二つの異なる種類がある。第一は、対象をとにかく視野のどこかに保持し続ける粗い追尾であり、第二は、細部の精密観察やマイクロメータ測定などを行うために、対象をかなり厳密に一定の位置に保つ精密追尾である。このような精密追尾が必要となる場合には、できるだけ早く経緯台式マウントから離れた方が良い。

さらに別の形式の経緯台式マウントが図72に示されており、これは6インチまたは8インチ口径のニュートン式反射望遠鏡に適用されている。ここでは、耳軸で筒を支える張り出しフォーク(オーバーハングフォーク)が、頑丈な固定三脚の上に支えられており、フォークの前方部ではピボット(回転軸)によって三脚に接続され、後方では、三脚に載るセクターによってしっかり支えられる。

前方には、粗動用スライドと微動用ねじを備えたロッドがあり、高度方向の必要な運動を与える。フォーク全体は、横方向のねじでセクター上を回転させることができ、その操作はユニバーサルジョイント付きのロッドで行われる。

このマウントは、Hadleyの原型図(図16)を強く想起させるものであり、非常に堅牢かつ実用的である。このように架装された反射望遠鏡は、接眼部が常にきわめてアクセスしやすい位置に来るという点で驚くほど便利であり、視野は常に水平で、すべての調整は常に観測者の手が届く範囲内にある。

〔図72――経緯台式ニュートン反射望遠鏡〕

マイクロメータやその他の付属装置を用いるなど、対象を厳密に追尾する必要がある場合には、経緯台式マウントは扱いづらく、単一の動きで調整できる、できれば時計仕掛けで自動化された何らかの改良形式が必要となる。

この方向への第一歩は、ごく簡単なものである。仮に、方位軸(azimuth axis)を傾けて、それが天の極を指すようにしたとしよう。天の星々はすべてこの極を軸として回転して見えるのであるから、こうすると、いったん望遠鏡をある星に向ければ、その星を追尾するには、この傾いた軸のまわりに筒を回転させるだけでよいことになる。もちろん、極の近くの天体の一部には、架台と干渉せずに到達するのが容易でないものもあるだろうが、概して天の大部分は到達可能であり、単一の運動で星を追尾できる。もともとのマウントに方位方向の緩速運動が備わっていれば、これはごく容易なことである。

これは実際、最も単純な形式の赤道儀架台であり、ときに平行式架台(parallactic)と呼ばれる。図73は、この原理を小型反射望遠鏡に適用した例を示している。共緯度(90度−緯度)に相当する角度をもった斜めのブロックを用いると、もとの鉛直軸は天の極と同一直線上に向けられ、その結果、天の主要部は容易に射程内に収まる。

この形式は、経緯台から真の赤道儀へ移行するための過渡的なステップと見なすことができる。屈折望遠鏡に用いられることはまれであり、実際のところ、真の赤道儀マウントへの最初の試みは、James Short F.R.S. が自作の小型グレゴリー式反射望遠鏡を架装したときに行われたものである[15]。史実として、これはShort自身が1749年に王立協会で発表した論文に基づき、図74に示しておく。

〔15〕 極軸を備えた器械は、すでに1627年にはScheinerによって、約四分の三世紀後にはRoemerによって用いられており、さらにそれ以前には中国人が望遠鏡ではなく照準器(sights)を使う形で使用していた。しかし、これらは現代的意味での赤道儀とは言いがたいものであった。

〔図73――反射望遠鏡用平行式架台〕

ひと目見ると、このスタンドはきわめて複雑に見えるが、よく観察すると、これは単にテーブルスタンド上の赤道儀であり、きわめて広い弧にわたる赤緯方向の動きと、緯度および方位を精密に設定するための、きわめて完全な調整機構とを備えているにすぎないことがわかる。図に示した特定の器械は口径4インチ、全長約18インチであり、この頃Shortが製作した数台のうちの一つであった。

図に示す器械では、まず、脚の先に整準ねじを備えた台座BBBBに支えられた方位目盛円AAがある。方位円のすぐ下には、おおよその方位決めのための方位磁針が据えられており、円は接線ねじCにより調整可能である。

方位円によって、四本の柱で支えられた軸受の上には、極軸を設定するための緯度円DDが載っており、緩速運動ねじEを備える。緯度円は赤経円FFを支えており、これには緩速運動用ねじGが付属している。さらにこれが四本の柱で赤緯円HHを支え、その軸は緩速運動ねじKにより調整できる。

この赤緯円にグレゴリー式反射望遠鏡LLが固定され、観測用望遠鏡として機能する。すべての円にはバーニヤ目盛が設けられ、また緩速運動を備えている。言わばこの器械は、赤道儀として必要なあらゆる用途に対応できる万能機であり、極軸を鉛直に設定すれば、子午儀、トランシット(経緯儀)、方位儀、レベルなどとしても同様に使用できる。各円には適切な水準器が設けられているからである。

この架台は、その意図された目的には、実際きわめて巧妙で完全な作品であったが、小型器械以外を載せるにはほとんど不適当であった。ごく類似した構造が、のちにRamsdenによって小型屈折望遠鏡用として用いられている。

先に述べたような架台で望遠鏡を赤道儀として使用する場合、その天球上での可動範囲がいくぶん制限されていることは明らかである。近代的な構造においては、望遠鏡が天のあらゆる部分に容易に向けられるよう架装されているが、それでもしばしば、南天の極端な領域から北天の極端な領域へ自由に移るには、極軸を180度振りかえねばならない。

必要となる二つの運動は、天体の見かけの回転運動に沿って追尾するための赤経方向の運動と、天の極からの角距離(赤緯)に応じて任意の天体へ指向するための赤緯方向の運動である。

いつの場合も、少なくとも小さな弧にわたって方位および緯度の調整ができるようになっているが、これらの調整機構は、Shortの架台に備わっていた広い可動範囲に比べれば、ごく初歩的なものにすぎない。

赤道儀の基本構造は、大文字のT字形のように直交する二つの軸から成っている。T字の縦棒が極軸であり、スリーブに取り付けられてその中を回転し、T字の横棒を支えている。この横棒は中空であり、その内部に赤緯軸の軸受を備える。この赤緯軸は再び、自身に直交する形で望遠鏡筒を支持する。

極軸を支えるスリーブが天の極を指すように向けられていれば、望遠鏡筒は明らかに、任意の高度の天体をとらえるように振ることができ、さらに極軸のまわりに回転させることで、その天体の1日運動に沿って追尾することができる。適切な角度にセットした自転車の前フォークに、ハンドルバーの代わりに横方向の軸を取り付けたものが、緊急時にこの目的によく使われてきた。

〔図75――中型望遠鏡用近代的赤道儀の断面図〕

図75は、中型望遠鏡用の近代的赤道儀マウントを断面図として示したものである。

図75に示したZeiss製の架台は、中型器械における最近の実用例としてきわめて典型的なものである。この赤道儀の全体的な形式は、Fraunhoferがドーパットの大望遠鏡を架装した時代から、そのまま伝わってきたものである。要するに、正確に直交する二つの軸から成っている。

極軸Pは正確に天の極に合わせられており、中空の鉄製ピアの上に支えられている。このピアの頂部には、Pの軸受がボルト留めされる緯度ブロックLが取り付けられている。赤緯軸Dは望遠鏡筒Tを支える。

筒は、極軸に関しては錘aによってバランスされ、赤緯軸に関しては錘b bによってバランスされている。Aの位置で、ピア上部は調整ねじによって正確に方位(アジマス)を合わせられ、下部基礎のB Bにあるねじによって若干の緯度調整が可能である。このように、Shortの架台にあった方位および高度の目盛円は、ここではごく初歩的な調整機構にまで簡略化されている。

極軸の上端には、時計装置Cからウォームを介して駆動される歯車gが取り付けられ、星の運動に合わせて追尾できるようになっている。同じ軸の下端には、赤経用に目盛られた時角円hがあり、赤経を素早く調整するためのハンドホイールが備わっている。

dは赤緯円であり、その読み取りおよび設定は、上端に直角プリズムを持つ小望遠鏡tによって行われる。これにより、観測者は微小な調整を行う際に接眼部から離れる必要がなくなる。Fは通常のファインダーであり、口径3インチ以上の望遠鏡には必ず取り付けるべきものである。これは低倍率で、可能な限り広い視野を持つべきであり、通常は主対物レンズ口径の1/4ないし1/5程度の口径を持つ。これにより、観測対象を容易に補足し、その粗い十字線によって主望遠鏡の視野にすばやく導入できる。mとnは、それぞれ赤経軸および赤緯軸のクランプねじであり、oおよびpは、それぞれクランプ後の赤経および赤緯の精密調整用接線ねじを操作する。

このマウントは、かなり大きな器械に必要な機械的洗練をすべて備えており、固定式観測所に設置される恒設望遠鏡として用いられるクラスの代表例である。

一般的な小型望遠鏡には、同じ基本形式ながら、はるかに簡素なマウントが与えられる。固定観測所に据え付けられていないため、設置場所の変更に対応できるよう、方位および高度の調整範囲はむしろ大きく取られている。図76は、Clarks社が口径5〜6インチ程度までの望遠鏡に用いている、非常に優れた可搬式赤道儀マウントをやや詳細に示したものである。

実用上、携帯用と固定設置用の望遠鏡を分ける境界は、ほぼ口径5インチにある。というのも、標準的な構造の5インチ赤道儀式望遠鏡は、三脚スタンドに載せて実際的に持ち運ぶには、すでに重量過多だからである。Clarks社は、焦点距離を比較的短くとり、アルミ製の筒を用いて、4インチ用標準架台に装着した、真に可搬式の5インチ望遠鏡を作ってはいるが、一般的な焦点距離を持つ通常の5インチ装置は、恒久的に据え付けるに値する。

この架台では、短くテーパー状の極軸PがチークAの間に差し込まれており、ハンドスクリューBによって任意の位置に締め付けることができる。頑丈な赤緯軸Dは望遠鏡およびカウンターウェイトCを支える。赤経および赤緯用の目盛円pおよびdがそれぞれの軸に取り付けられており、さらに各軸にはウォームホイールと接線ねじが備えられ、ユニバーサルジョイントを介して緩速運動を与えることができる。

〔図76――Clark社可変式赤道儀架台〕

ウォームホイールは、それぞれの軸を摩擦軸受を通じて駆動しており、カウンターバランスは非常に正確にとられているので、器械は天のどの部分にも素早く振り向けることができ、直ちに緩速運動に切り替えることができる。極軸の広い可動範囲により、地上観測用として瞬時に経緯台として使用することも、任意の緯度に合わせて調整することもできる。通常、チークの一方には、緯度調整を容易にするための目盛入りの緯度弧が刻まれている。

普通、三脚上の可搬式赤道儀には目盛円は備えられておらず、緩速運動も赤経方向のみ1系統ということが多い。ただし、赤緯円を備えていると、器械の正確な据え付けが容易になり、また、赤経上で掃天すべき天体の位置を見つけるのにも便利である。しばしば恒星時が手元にない場合には、こうした掃天を行わねばならないからである。図76では、三脚ヘッドの下にある親ねじをゆるめると、三脚を動かさずにマウントを方位方向にただちに回転させることができる。

アメリカ製の固定式赤道儀架台では、通常、図35の反射望遠鏡や図77に示した中型屈折望遠鏡用Clark社架台に見られるように、駆動用の時計機構は、その赤道儀ヘッドを載せている中空の柱の内部に収められる。図77では、整った四角柱が口径8〜10インチの望遠鏡を支え得る赤道儀を載せている。この架台は、原理的には図76と非常によく似ているが、はるかに大型になっている。あらゆる緯度で使用できるよう緯度調整は全方向に可能であり、時計装置とその駆動錘は柱内に収納されている。また、赤経および赤緯方向の捜索用緩速運動も備えている。

方位調整は、ピアにボルトで固定された基礎板上で柱を移動させることで行う。精密な追尾を行うための使いやすい操作部と強力な時計装置により、この架台は中型写真用望遠鏡にはとりわけ適しており、装備全体としてきわめて便利で実務的なものとなっている。注目すべきは、目盛円の目盛が、現代的慣行に従ってきわめて読みやすく、細かすぎないように刻まれている点である。今日の天体写真の時代にあっては、赤道儀を位置決定に用いることは、マイクロメータを併用する場合を除けばほとんどなく、したがって目盛円は主として対象天体を探すために用いられるにすぎないからである。そのため、目盛円は何よりもまず読み取りが容易でなければならない。

可搬式マウントはすべて、図75の観測所用標準型を簡略化したものであり、そこに各種の省力装置を付加したものが、大部分の大型屈折望遠鏡や多くの反射望遠鏡の架装に用いられている。

変形赤道儀として「イギリス式赤道儀(English equatorial)」と呼ばれる型があり、これは極軸が長く、適切な緯度角を与えるために高さの異なる二本のピアで支えられている。赤緯軸は極軸のおおよそ中間付近に位置する。この型では、高い方のピアによって天の一部が遮られてしまい、特に利点があるとは言いがたい。唯一の利点は、ごく重い器械を支える場合で、通常の形では片持ち支持にしにくいほどの重量がある場合に、この形式が重要な意味を持つ。

〔図77――Clark社9インチ用ユニバーサル観測所架台〕

このような場合には、何らかのイギリス式マウントが、撓みを避けるうえできわめて重要となる。大きな撓みはR.A.方向の駆動精度を損ない、写真観測において決定的に重要な追尾の完全性を保てなくなるからである。ドミニオン天文台の72インチ反射望遠鏡およびマウント・ウィルソンの100インチフッカー望遠鏡はいずれもこの形式で架装されている。前者は極軸と直交する赤緯軸の両端にカウンターウェイトをもつ、古典的な「イギリス式」型であり、後者は長い密閉フォークの内部にトラニオンで支えられ、そのフォークの両端に極軸の軸受を持つ形式である。

〔図78――イギリス式赤道儀マウント(フッカー100インチ望遠鏡)〕

図78は後者、すなわち口径100インチ、主焦点42フィート、カセグレン式として使用したときには135フィートの有効焦点距離を持つ望遠鏡を示している。このマウントのきわめて大きな剛性が、星の角直径測定に最近用いられた干渉計を支える長い横梁を支え得たのである。極軸の両端にある水銀浮上ドラムに注目されたい。ミラーの研磨と光学仕上げはRitchey氏の熟練した手によって行われた。

〔図79――イギリス式赤道儀マウント(72インチ・ドミニオン天文台望遠鏡)〕

図79は、ビクトリア(ブリティッシュ・コロンビア)近郊のドミニオン天文台で使用されている美麗な器械の概略の寸法とマウントを示している。主鏡および補助光学系の光学研磨はBrashear社によって行われ、非常に洗練されたマウントはWarner & Swasey社の製作である。主鏡の主焦点距離は30フィートである。口径20インチの双曲面副鏡により、カセグレン式としての有効焦点距離は108フィートに延長される。こうしたイギリス式マウントの力学的な安定性は、この望遠鏡およびフッカー100インチ反射望遠鏡によって十分に実証されている。巨大な重量を支える場合、これらのマウントは、撓みの点で、Fraunhofer型マウントよりも優れている。一方でFraunhofer型は、中型器械にはより便利で汎用性が高い。これら二つの巨大望遠鏡を、研究用器械としてこれほど完全に成功させた機械技術に対しては、いくら賞賛してもし過ぎることはない。

〔図80――偏ったピアを持つ写真用マウント〕

赤経方向の追尾において、筒をピアと干渉しない位置まで振り替えなければならないという不便さは、写真観測における長時間露出では大きな障害となり得るし、また眼視観測においても貴重な時間を浪費させることがある。そこで最近になって、望遠鏡が赤経方向に完全に自由に回転し、あらゆる位置で支持部に干渉せずに振れるようにするための新しい赤道儀形式がいくつか考案された。

その一つの例が図80に示されるもので、これはBrashear製二重写真レンズとガイド望遠鏡を載せる標準的なアストログラフ用マウントである。ピアは、極軸の方向に向かって強く前方に張り出しており、器械がどの位置にあっても、必要とされる期間だけ十分に追尾できるようになっている。場合によっては、別の夜に観測を再開する際にも、作業位置を変える必要がない。

〔図81――開放フォークマウント〕

もう一つの形式は、さらに単純でありながら、かなり大型の器械に対してもきわめて満足すべき性能を示すことが知られている、開放極フォークマウント(open polar fork mount)である。ここでは、通常の形式の極軸が、太く剛性の高いフォーク状鋳物として延長され、その内側にある頑丈なトラニオンで筒を支えることで、望遠鏡筒に完全な自由運動を与えている。

図81は、この開放フォークマウントの最も簡単な形態であり、ヘリオスタット鏡を支えている。Aがフォーク、Bが極軸であり、これは緯度調整用セクター上に載っている。Cは赤緯軸で、その先に鏡Dを収めたセルを支えている。Eは赤緯の緩速運動、Fは赤経の緩速運動である。両軸はともにクランプを解除して自由回転させることができ、また赤経軸は時計あるいは電動モーターによって容易に駆動できる。

この構成は、図78に示した完全な英式赤道儀マウントとよく似ているが、ここでは短い器械があらゆる位置で支持部と干渉せずに自由に振れるようになっており、調整も容易で、全体としてきわめて実務的である。焦点距離の短い6〜8インチ口径の天体写真用カメラや、焦点距離4〜5フィートの反射望遠鏡を容易に支えることができる。

第十章の図173には、ハーバード天文台で使用されている同種のマウントが二台示されている。手前のものは天体写真カメラを載せており、全景が見えるように描かれている。これは赤緯方向の緩速運動とクランプ、および赤経方向の電動駆動を備えており、カメラを振り向ける際にはこの駆動を瞬時に解除できる。動作は非常に滑らかであり、その重量は極軸下端にあるごく簡単な自動調整式スラスト軸受で受けている。全体として、適度な長さの器械を載せることができる第一級の赤道儀架台としては、これ以上簡単で安価なものは考えがたい。

同種のマウントはハーバード天文台に数台設置されており、それよりやや大型のものが、同天文台で恒星写真に用いられている24インチニュートン反射望遠鏡および16インチMetcalf写真用ダブレットを支えている。

〔図82――マウント・ウィルソン60インチ反射望遠鏡の架台〕

〔図83――カセグレン式としての60インチ(F = 100フィート)〕

実際、この開放フォークマウントは、故Dr. Commonによって開発されたものであり、大型反射望遠鏡の架装に非常に適している。彼は最初、この形式を自らの3フィート反射望遠鏡に採用し、その後二台の5フィート鏡にも用い、さらにはマウント・ウィルソンの5フィート反射望遠鏡を含む最近のいくつかの器械にも用いられている。Dr. Commonは、赤経方向の動きを可能な限り軽くするために、極軸が負担する重量の大部分を水銀によって浮上させる方式を考案した。

図82は、Ritcheyによってマウント・ウィルソンの5フィート反射望遠鏡のために設計された、このフォークマウントの概略図である。ここでAは格子状の筒、Bは極軸、Cはフォーク、Dは極軸を水銀槽E内で浮上させている中空鋼製ドラムである。図では、大鏡は焦点距離25フィートの単純なニュートン式として描かれている。実際には、多くの時間をカセグレン式として使用している。

この目的のために、斜鏡を収めた筒の上部セクションを取り外し、その位置に三種類の双曲面副鏡のいずれかを収めたより短い筒を取り付ける。図83は、長焦点(100フィート)での眼視および写真作業に用いられる標準的な配置である。点線は光線の経路を示しており、通常のカセグレン構成とは異なり、大鏡に貫通孔があいておらず、その代わりに平面の斜鏡によって光線が取り出されていることに注目されたい。

図84は、80フィートの有効焦点距離で恒星分光に用いられる、類似の構成である。ここでは副鏡は小さな平面鏡である。図85では、まったく異なる方式が採用されている。この場合に用いられる双曲面副鏡は有効焦点距離150フィートを与え、補助平面鏡は赤緯軸に平行な軸のまわりに回転するようになっており、反射ビームを極軸の中空部を通じて、その南端に位置する分光器室へと導く。明らかに、この配置では極付近の天体は観測できず、およそ75度の範囲内に限られる(点線がその範囲を示す)。フォークマウントは、反射望遠鏡用のマウントとして普遍的なものではなく、すでに見たように、中型のカセグレン反射望遠鏡の多くは、屈折望遠鏡とほぼ同じ形式の架台に載っている。

〔図84――カセグレン式60インチ(F = 80フィート)〕

〔図85――極向きカセグレン式60インチ(F = 150フィート)〕

ここで、接眼部を固定位置に保つという基本的な発想を共有する、いくつかの架台群に話を移そう。これらは共通して、長い冬の夜に観測者を厳しい寒さから保護しようとするものである。しばしばこのような条件のもとでシーイングは最良となるが、不快さによって観測者の能率は大きく損なわれるのである。これらの構成の中には、長焦点対物レンズや大鏡の使用を容易にし、それによって必要となる大ドームの建設費を節約できるという利点もある。

この種の装置の最初期の例は、図86に示されるCaroline Herschelの彗星捜索用望遠鏡に見出される。これは口径約6インチのニュートン反射望遠鏡であり、そのマウントはほとんど図を見れば自明なほど単純である。これもまた、Herschelの望遠鏡すべてと同様に経緯台式であるが、標準的なニュートン反射望遠鏡のように、主鏡や筒全体の重心付近を高度回転の支点とする代わりに、接眼部の位置を支点としており、筒は図のようにカウンターバランスされている。そのため、高度方向の調整はきわめて容易であり、架台全体は鉛直の支柱のまわりに方位方向に回転させられる。

このようにして、観測者は楽な姿勢で立つか座るかして、垂直な大円に沿って掃天観測を行うことができ、その際、方位を変えるごとに支柱のまわりを少しずつ移動するだけで済む。この構成は利点が少なくなく、何年も後になって、J. W. Draper博士が天体写真の技術を飛躍的に進歩させた有名な器械を作った際にも、細部を変更しつつ採用されている。

固定接眼部という基本的な発想は、さまざまな赤道儀式彗星捜索用望遠鏡にも応用されている。その良い例が、図87に示すZeiss製大型彗星捜索用望遠鏡である。この形式の基本原理は、接眼部が極軸と赤緯軸の交点に位置し、望遠鏡筒が極軸の北側に大きく張り出して架装され、赤緯軸上でバランスされているという点にある。したがって観測者は、回転椅子に座ったまま、そこから動くことなくきわめて広い天空領域を素早く掃天することができる。

〔図86――Caroline Herschelの彗星捜索用望遠鏡〕

この器械は、おそらく通常の彗星捜索用望遠鏡としては最大のものであり、口径8インチ、焦点距離52½インチである。これほど大きな相対口径で必要とされる諸収差の補正を確保するため、三重レンズの対物を用いている。図中、1は方位および高度の調整を行うための基台、2は望遠鏡全体を基台上でバランスさせるためのカウンターポイズ、3は極軸および赤経目盛円、4は張り出した赤緯軸およびその目盛円、5は赤緯用カウンターポイズ、6は極軸用カウンターポイズ、7は主望遠鏡筒を示す。図に見えるハンドホイールは、観測者が椅子を離れることなくドームを回転させるための駆動ギアを操作するものである。

固定接眼部の発想から一歩進めて、観測者を十分に保護しつつも、望遠鏡の光学部品を性能を損なわない形で収容する位置に接眼部を置く、という試みもなされている。

温度差による空気の流れのために、開いた窓越しに観測を行うことはうまくいかない。また、加熱されていないドームでは、シャッターを開けたあと、温度がある程度落ち着くまで待たなければならない。

これらの彗星捜索用望遠鏡を除けば、この種の装置のほとんどは、像を望む方向に導くために一つか二つの補助反射面を利用している。一般に、架台によって視野の取りうる範囲はある程度制限されるが、これは一見したほど大きな欠点ではない。そもそも地平線からおよそ20度以内での観測は一般に満足なものにならないし、長焦点で安定かつ扱いやすい器械がもたらす利点は、多くの用途で、多少の可視空の減少を十分に補って余りあるからである。

〔図87――大型彗星捜索用望遠鏡の架台〕

この固定接眼部グループでもっとも単純なものは、いわゆる極望遠鏡(polar telescope)であり、その基本形は図88に示されるように、Sir Howard Grubbが1880年に記述したマウントにおいてよく示されている。のちにその実例がCorkのCrawford天文台に設置された。ここでは、極軸Aが望遠鏡の主筒そのものであり、その前方端にはフォークに支持された赤緯用の揺りかごと鏡Cがある。これにより、ある範囲の赤緯内の任意の天体を視野内に導き、筒を極軸のまわりに回転させることによって手動または時計駆動で追尾できる。

別の見方をすれば、これは極軸駆動のヘリオスタットのようなものであり、望遠鏡自体が赤経方向の駆動軸となっている。マウント全体は、車輪の付いた頑丈な鋳物フレームであり、これは二本のレールの上を移動できる。使用の際には、この器械を特別に設けられた窓の位置まで転がしていき、さらに外側に押し出して、外部に設けられた定位置のピアの上に載せる。ハンドホイールDを数回まわすと、フレームはピア上の軸受に下ろされ、フレームの背面が壁の開口部を塞ぎ、光学部全体は屋外に、接眼部は室内に残される。この最初の実例は口径4インチにすぎなかったが、きわめて重要なことに、きわめて有用かつ扱いやすい器械であることを見事に証明した。

〔図88――Grubbの原型極望遠鏡〕

この架台を含む、固定接眼部型のさまざまな形式は、1874年の金星日面通過観測に用いられ、その後多くの皆既日食において使用された水平写真太陽望遠鏡(photoheliograph)から派生したものと見ることができる。図81に示したような赤道儀式ヘリオスタットがあれば、そこからのビームを南北線(子午線)に沿って配置した水平望遠鏡に導き、その望遠鏡を極軸の延長方向に向けておけば、赤経方向の回転(すなわちヘリオスタット鏡の回転)だけで視野を保つことができる。極軸延長方向以外にビームを向ける場合は、赤緯方向の調整も必要となるが、太陽の赤緯の変化は緩やかであり、もともとごく短い露出時間で用いられていたので、このヘリオスタット望遠鏡は容易に調整を保てた。

当初の器械は口径5インチ、焦点距離40フィートであり、口径7インチのヘリオスタット鏡が通常の赤道儀式時計駆動を備えていた。望遠鏡を極軸方向に向けておけば、赤緯方向の連続的な調整は不要になり、時計駆動によって通常の赤道儀と同様に視野を一定に保つことができる。

図89は、ハーバード天文台で20年以上にわたり使用されている口径12インチ極望遠鏡の概略を示す図である。このマウントは、ハーバード天文台スタッフのW. P. Gerrishによって設計され、多くの巧妙な特徴を備えている。図88とは異なり、これは固定架台であり、接眼部は主天文台建物の2階にある部屋に収容されている。極軸の下端は南側にあるしっかりしたピア上の軸受に載っている。

〔図89――Gerrish極望遠鏡の概念図〕

図中、Aは接眼部、Bは主筒であり、その下端には対物レンズがあり、さらにその先はフォークに延長されてCの軸受で支えられている。Dはビームを上方に向ける赤緯鏡である。全体は電気時計駆動で赤経方向に回転し、必要なすべての調整は接眼部から行うことができる。

図90は、その外観を示しており、鏡と対物レンズの蓋が外された状態である。対物部にある揺り腕は、接眼部のそばにある小さなウィンチで操作され、数秒で鏡蓋および対物蓋を開閉できるようになっており、望遠鏡はただちに使用可能となる。焦点距離は16フィート10インチであり、約80度の赤緯範囲をカバーする。像のシャープネスは非常に良好であり、きわめて有用な器械であることが証明されている。

第二の極望遠鏡は、1900年秋にハーバード天文台のジャマイカ(Mandeville)観測所に設置された。これは主として月面写真撮影を目的としており、口径12インチ、焦点距離135フィート4インチの対物レンズと、直径18インチのヘリオスタット鏡(電気時計駆動付き)を備えていた。

〔図90――ハーバード天文台のGerrish極望遠鏡〕

この種の器械では、必然的に鏡の回転とともに像が回転するので、この望遠鏡の尾筒(接眼部側)も、同様の駆動によって回転させるようになっている。これにより、像はプレート上で位置も方向も固定されたままとなる。Mandevilleの緯度は北緯18度01分であるため、この望遠鏡はほぼ水平に近い位置で使用できた。イェール大学の天文台にもこの種の大型器械があり、焦点距離50フィート、口径15インチの写真用対物レンズと口径10インチの眼視ガイド用対物レンズとを、同一ヘリオスタットからのビームで同時に使用するようになっている。

その単純さと扱いやすさにもかかわらず、極望遠鏡には明らかな欠点がある。それは、赤緯方向の可動範囲がきわめて限定されており、これを拡大するには特別に大きな鏡を用いなければならないという点である。したがって、一般的用途のための固定接眼望遠鏡を真剣に試みるにあたって、補助反射面が一枚増えるという代償を払ってでも、別の構造が模索されたとしても不思議ではない。

これがいわゆるクーデ式赤道儀(equatorial coudé)であり、1882年にパリ天文台のLoewyによって考案されたものである(図91)。概念図では、Aが主筒であり、それが極軸を構成している。Bは接眼部側であり、観測者はそこにあるすべての付属装置を手元で操作でき、完全に屋内に収容されている。しかし、主筒は途中に箱形のケーシングCによって中断されており、その中には、主筒および側筒Dの軸に対して45度の角度で固定された鏡が収納されている。側筒Dはカウンターバランスされており、実質的には対物レンズEを先端に持つ中空の赤緯軸として機能している。

〔図91――クーデ式赤道儀の概念図〕

通常であれば、この赤緯軸には望遠鏡筒が取り付けられるところだが、ここでは45度の鏡Fが取り付けられており、その鏡は対物レンズと同心のスリーブ内を回転する。さらに、対物レンズには側方に開口部が設けられており、事実上、上側のピアによる遮蔽を除き、対物レンズはほぼ全範囲の赤緯に向けることができる。器械全体は赤経方向に時計駆動され、通常の目盛円および緩速運動を備えているが、これらはすべて接眼部から容易に操作できる。

クーデ式赤道儀は、否定しがたいほど複雑で高価な装置であるが、Henry Frères社によって製作された実物は、厳しい条件下でも実に見事な性能を発揮しており、フランス国内のいくつかの天文台に同型機が設置されている。最初に建造されたクーデ式望遠鏡は口径10½インチであり、その後、口径23.6インチ、焦点距離59フィートの器械が続いた。これは現在までに建造されたクーデ式望遠鏡の中で最大のものである。

さらにもう一つ、極望遠鏡およびクーデ式の両方を思わせるマウントが、Sir Howard Grubbによって考案されている(図92)。ここでもクーデ式と同様に、極軸上部Aが望遠鏡筒となっており、その先は堅固なケーシングBに導かれている。このケーシングの周囲には、頑丈なフォークCがピボット支持されており、このフォークは側筒Dの延長部をなしている。側筒Dは先端に対物レンズを持ち、赤緯方向に自由に振ることができる。上部の観測室の天井および地平線との干渉によって、その振り幅は制限される。実用上の振り幅は、対物レンズから鏡Eまで届く光束の大きさ、すなわち鏡Eの寸法によって決まる。

〔図92――Grubbの改良クーデ式マウント〕

この鏡Eは、対物レンズからの光束を受けとめ、それを極筒内を通して接眼部に向けて反射する。鏡は側筒Dの回転角の半分の速度で回転するようにギアで連結されており、したがって角度DEAは常に二等分される。

実際のところ、この構成によって得られる唯一の利点は、対物レンズから鏡までの距離が大きいため、そこでの光束の断面が小さくなり、必要な鏡の大きさを小さくできるという点にある。この方式は、ケンブリッジ天文台の美しいアストログラフで非常に成功裏に実現されている。この器械は口径12½インチ、焦点距離19.3フィートの望遠鏡である。

この種の器械においても、他の極望遠鏡やクーデ式望遠鏡と同様、すべての調整は接眼部から便利に行うことができる。ケンブリッジの器械には、H. D. Taylor氏設計の三重フォトビジュアル対物レンズが用いられており、使用しないときには側筒を水平位置まで回転させ、低い車輪付き覆いで覆うようになっている。カバーできる空の範囲は、極から15度上方から地平線近くまでである。

明らかに、極望遠鏡やクーデ式の各種形式を反射望遠鏡に適用することもまったく可能であり、実際マウント・ウィルソンの60インチ反射望遠鏡にはその一例が見られる。しかしここでは、実際に有用性が証明された主要な架台形式に焦点を当てている。大きな補助反射面を追加使用するすべての構成は、像の品質劣化という危険から完全に自由ではない。撓みや鏡の歪み・そりによって生じる像の歪曲や非点収差を防ぐには、きわめて高いレベルの加工精度と架装技術が不可欠であり、こうした問題は実際にしばしば経験されてきた。

やや性格の異なるが、同じく固定接眼を実現する形式として、コエロスタット(cœlostat)を補助反射系に用いるものがいくつかある。コエロスタットとは、単純に言えば、極軸と同一平面内に、その面が固定されるよう取り付けられた平面鏡であり、この極軸は48時間に1回転、すなわち星の見かけの運動速度の1/2で回転する。

〔図93――Snow水平望遠鏡の概念図〕

このような鏡を望むように望遠鏡を向けておけば、ヨシュアの物語のように(天が止まったかのごとく)、恒星は視野内で静止して見える。だが、視野を変えたい場合には、望遠鏡を高度または方位、あるいはその両方の方向に振り向けねばならない。これはきわめて不便であるため、実際には第二の平面鏡を用いて、コエロスタットからの静止光束を任意の方向に折り曲げるのが普通である。

鏡の向きを変えることで望遠鏡を動かす代わりにビーム方向を変えることができるので、望遠鏡自体はもっとも便利な場所に恒久的に据え付けることができる。ただしそのためには、多少の追加費用と光量損失を受け入れなければならない。また、極ヘリオスタットと異なり、像の回転が生じないことも、しばしば利点となる。

このようにして構成される固定望遠鏡の優れた典型例が、マウント・ウィルソンのSnow望遠鏡である(Solar Observatory Contributions No.2, Hale)。図93はこの論文から転載したもので、平面図および立面図で設備全体を示している。山頂の地形により、建物の軸は真北から15度東に偏り、かつ北方向に5度だけ下り勾配になっている。

図の右端には高さ29フィートのコエロスタットピアがあり、その南端にコエロスタット鏡本体(直径30インチ)が載っている。このピアには東西方向に正確に敷かれたレールa aがあり、その上をコエロスタットがスライドできるようになっている。これは、コエロスタットの視野が、直径24インチの第二鏡に妨げられない位置へ移動できるようにするためである。第二鏡は経緯台式フォークマウントを備え、こちらもレールb b上をスライドできる。

この望遠鏡の主光学系は、一対の放物面鏡であり、それぞれ口径24インチ、焦点距離は60フィートと145フィートである。第二コエロスタット鏡からのビームは、まず図の左に示された分光実験室を通り、そこから細長いシェルターハウス内を通って、いずれか一方の鏡に入る。長焦点鏡はレールe e上に縦方向の焦点調整用として載せられ、短焦点鏡は同様のレールc c上にあり、長いビームを通すために側方へスライドできるようポイントdに切換機構がある。

この注目すべき望遠鏡の接眼部側は分光実験室であり、そこではビームを固定設置された分光器に導くことができる。詳細については原論文を参照されたい。ここでの目的は、コエロスタット式望遠鏡がどれほど巧みに天体物理学的研究に適応されうるかを示すことである。明らかに、コエロスタットビーム内に対物レンズを挿入すれば、必要に応じて任意の目的に用いることが可能である。

実際、これはマウント・ウィルソン天文台のタワー望遠鏡群における構成である。これらの器械では、通常のコエロスタット配置を縦に延長した形となっており、主光学系を地表から十分な高さに持ち上げることができる。その結果、地面からの熱気による影響が少なくなり、像のシャープネスが一般に向上する。焦点は地表近くにあるとはいえ、上昇する空気の流れは、Snow望遠鏡のような水平方向の流れほど像を乱さない。

最初のタワー望遠鏡のヘッドは図94に示されている[16]。Aはコエロスタット本鏡であり、直径17インチ、厚さ12インチである。Bは副鏡であり、短軸長12¾インチ、長軸長22¼インチ、厚さ12インチの楕円平面鏡である。Cは口径12インチ、焦点距離60フィートの対物レンズ、Dは下からスチールリボンで操作される焦点調整ギアである。

〔16〕 Solar Observatory Contributions No.23, Hale。詳細については原論文を参照されたい。

〔図94――60フィートタワー望遠鏡のヘッド部〕

この器械は太陽研究専用であるため、鏡は太陽が東西いずれかの水平線にかなり低く位置する時間帯、すなわちシーイングが最良となる時間帯にもっとも便利に働くよう配置されており、Snow望遠鏡と同様、そのために位置を調整できるようになっている。また、この装置をスペクトルヘリオグラフとして使用するために、対物レンズを側方に一定速度で移動させる機構も備えられている。

タワー構造は風車型であり、その高さにもかかわらず、マウント・ウィルソンでは強風がまれであることから、かなり良好な安定性が得られている。撓みを避けるために鏡を非常に厚くした点は注目に値するが、実際には熱伝導が不十分であり、熱的な歪みを防ぐには厚すぎることが判明した。

のちに建設された焦点距離150フィートのタワー望遠鏡では、鏡は相対的に薄くなっており、タワー構造にもきわめて興味深い改良が施されている。すなわち、外側に一つの格子構造を持ち、その内側にもう一つ同様の格子構造を、部材ごとに二重化する形で設けている。その結果、構造全体は依然として開放的であるが、光学部を支える内側の各部材は、それと対応する外側のシースによって風や急激な温度変化から保護されている。

観測者を固定接眼部の下で保護するという、別の形式の架台が、Russell W. Porter氏による巧妙な極反射望遠鏡である。口径16インチ、焦点距離15フィート6インチの主鏡を持つその一例が、数年前に同氏によって建設された。図95は、この構成をほぼ説明し尽くしており、Porter氏自身の報告によれば、きわめて良好に動作したという。この構成で直面した最大の困難は、鏡面への水分の凝結であり、これは地域によっては防ぐことが非常に難しい。

〔図95――Porterの極反射望遠鏡〕

興味深いことに、Porter氏の当初の計画では、この器械をヘルシェル式(Herschelian)として使用し、焦点をシデロスタットの下方F′に置く予定であった。しかし主鏡の相対口径がF/11.6と明るすぎたため、傾斜によって像に過度の非点収差が生じてしまい、この案は放棄され、図に示すニュートン式構成に改められた。相対口径がF/25程度であれば、前者の方式もおそらく良好に機能したであろう。

固定接眼部を備えた望遠鏡の、さらに大胆かつ成功した設計として、J. E. Hartness卿のタレット望遠鏡がある。発明者本人が、口径10インチの優れた実例をバーモント州スプリングフィールドに建設した。この望遠鏡は屈折式であり、そのマウントの特徴は、極軸をタレット状に大型化し、その内部に観測者が座り、主筒からの光束を折り曲げる反射プリズムによって給光される分割赤緯軸内の接眼部を覗く、という点にある。

図96は、このマウントおよび観測所の概念図である。aが極タレット、bbが赤緯軸の軸受、cが主筒、dがその支持構造、eが接眼部側である。光学的には、この望遠鏡は、ごく普通の屈折望遠鏡であり、ただし通常よりわずかに大きく、かつ筒のやや前方に配置された直角プリズムを使用しているだけである。このタレットには、発明者の邸宅から地下トンネルを通って入るようになっている。図96に示す望遠鏡には、Brashear製の口径10インチ対物レンズ(光学品質は非常に高い)が用いられており、光は大きさ2¾インチの面を持つ直角プリズムによって接眼筒に導かれる。このサイズは反射プリズムとして十分実用的であり、光量損失も、通常の赤道儀で天頂付近の星を観測する際に不可欠な「スター・ダイアゴナル」で失われる量を、さほど上回るものではない。

この構成で唯一明らかな問題は、非常に大きな極軸をどのように支持するか、という点である。Hartness卿は優秀な機械技師であったため、総重量約2トンにも及ぶ可動部をきわめてうまく扱えるよう、この設計の細部を成功裏に仕上げた。接眼部は観測者に対して絶対固定というわけではないが、常に無理のない位置にあり、器械の性能はあらゆる点できわめて優秀であると報告されている。また、厳しいバーモント州の冬から観測者を守る効果は特筆に値する。図97は、完成した観測所全景を示している。緯度が高いほど、この構成は採用しやすく、大型器械にも容易に適用できる。また、世界の広い地域で温暖な季節に悩みの種となる昆虫から観測者を解放するという追加的な利点もある。

〔図96――Hartnessタレット望遠鏡の概念図〕

本章で述べてきた各種架台の紹介は、決して網羅的なものではない。ここで示したのは、現在一般に用いられている装置のほか、将来の発展の方向性を示すいくつかの例にすぎない。架台に求められる主な条件は、安定性と動作の滑らかさである。二つの運動が必要とはいえ、動作が滑らかで安定した経緯台架台の方が、ぐらつきがひどくぎくしゃくした赤道儀より、はるかに望ましい。

Herschel父子が、赤道儀架台なしで、しかも高倍率を用いて、不朽の業績を残したことを思い出してほしい。時計駆動付き赤道儀は非常に便利であり、現代天文学の重要な部分を占める写真観測には事実上不可欠であるが、眼視観測だけなら、時計なしでもかなりうまくやっていける。

〔図97――北東側から見たHartnessタレット観測所〕

小型で三脚に載せた携帯用望遠鏡を除けば、目盛円は必須である。そうでなければ、対象天体を見つけるのに多大な時間が浪費されるだろう。どの場合でも、ファインダーの性能を削ってはならない。ファインダーは十分な口径と広い視野を持つべきであり、たとえば主対物レンズ口径の1/4程度、視野は3〜5度ほどが望ましい。最高級の解像力は不要であり、対象をすばやく見つけるための十分な光量と空間的余裕が、最も重要な条件である。

最後にもう一つ付け加えておくと、すべての調整装置は、接眼部から容易に手が届く位置に配置されていなければならない。高倍率接眼鏡の視野から一度対象を見失ってしまうと、再び捕捉するのにしばしば大変な苦労を伴うからである。

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参照文献(REFERENCES)
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CHAMBERS: 『Astronomy(天文学)』第2巻。

F. L. O. WADSWORTH: 『Astrophysical Journal(天体物理学雑誌)』第5巻, 132ページ。反射望遠鏡用Ranyard式架台。

G. W. RITCHEY: 『Astrophysical Journal』第5巻, 143ページ。大口径鏡の支持法。

G. E. HALE: Contributions from the Solar Observatory 第2号。Snow水平望遠鏡。

G. E. HALE: Contributions from the Solar Observatory 第23号。60フィートタワー望遠鏡。

J. W. DRAPER: Smithsonian Contributions to Knowledge 第34巻。大型反射望遠鏡の架台。

G. W. RITCHEY: Smithsonian Contributions to Knowledge 第35巻。マウント・ウィルソン60インチ反射望遠鏡の架台。

Sir H. GRUBB: Transactions of the Royal Dublin Society, Series 2, 第3巻。極望遠鏡(Polar Telescopes)。

Sir R. S. BALL: 『Monthly Notices of the Royal Astronomical Society(王立天文学会月報)』第59巻, 152ページ。写真用極望遠鏡。

A. A. COMMON: Memoirs of the Royal Astronomical Society 第46巻, 173ページ。3フィート反射望遠鏡の架台。

R. W. PORTER: 『Popular Astronomy』第24巻, 308ページ。極反射望遠鏡。

JAMES HARTNESS: 『Transactions of the American Society of Mechanical Engineers』1911年号。タレット望遠鏡。

Sir DAVID GILL: 『Encyclopaedia Britannica』第11版、「Telescope(望遠鏡)」の項。架台に関する見事な要約。

第六章
接眼レンズ(アイピース)

望遠鏡の接眼レンズは、対物レンズまたは反射鏡によって結ばれた像を拡大するための装置にすぎない。接眼レンズを外した望遠鏡をのぞき、眼を焦点位置から通常の明視距離まで引き戻すと、その像は空中に浮かんでいるかのように、はっきりと見ることができるし、すりガラス片の上に受けることもできる。

その像が肉眼で見たときの対象に比べて大きく見えるか小さく見えるかは、その対物レンズの焦点距離が、像をはっきり見るために眼を引き戻さなければならない距離より長いか短いかに比例する。

この実像の品質は、対物レンズまたは反射鏡の収差補正がどれだけ正確に行われているかに依存するが、この像を、望むだけ拡大してくれるのが、器械の接眼レンズである。大づかみにいえば、接眼レンズとは、対象そのものではなく、対象の像に対して適用された単純な顕微鏡である。

もっとも単純に考えると、任意の単レンズの倍率は、そのレンズの焦点距離と、眼の通常の明視距離との比較に依存する。明視距離を慣例どおり10インチとすれば、焦点距離1インチのレンズは、明視距離を対象から1インチの位置まで短くし、対象が張る見かけの角度を10倍に増加させ、したがって10倍の倍率を与えることになる。

ところが、対物レンズの焦点距離が100インチであれば、その像は、すでに述べたように、肉眼で見た対象に比べて10倍に拡大されている。したがって、焦点距離100インチの対物と、焦点距離1インチの接眼レンズとを組み合わせれば、全体としての拡大率は100倍となる。そしてこれは一般法則を表現している。もし肉眼の標準明視距離を10インチではなく、たとえば12½インチととれば、その場合、対物レンズによる像の拡大は8倍であり、接眼レンズ1インチによる拡大は12½倍となる、というような換算になる。

したがって、任意の接眼レンズの倍率は

 m = F / f

で与えられる。ここで F は対物レンズまたは反射鏡の焦点距離、f は接眼レンズの焦点距離である。眼の明視距離は、この計算から完全に消えてしまう。

これらの事実は、対物レンズでできた像を、すりガラス片とポケットルーペでたどってみれば、ごくすぐに理解できる。普通の写真機も、同じ話を物語ってくれる。1度の視角を占める遠方の物体は、焦点面では、レンズの焦点距離を半径とする円弧上で1度の角度を占める。もしこの焦点距離が、通常の明視距離と等しければ、同じ距離に眼を置いたとき、その像(あるいは遠方の物体)は、同じ1度の角度で見える。

この関係の幾何学は次のようになる。第1章図5で、o を対物レンズとしよう。このレンズは、普通の写真機と同様、物体A Bの倒立像を、焦点位置ab に結ぶ。そして像の任意の点 a に対しては、対物レンズの中心 c を通り、Aからその点までの直線上に、対応する物体点が存在する。

物体点Aから出た二本の光線1と2は、それぞれ o の縁と中心を通り、像平面上の点Aに集まる。この点で交差したあと、光線1と2は接眼レンズ e に入射し、もし ae の主焦点にほぼ一致していれば、光線1と2は実質的に平行に出射し、眼はそれらを結んで鮮鋭な像を形成する。

ここで F を o の焦点距離、f を e の焦点距離とする。物体は対物レンズの中心 c に対して角度 A c B を張り、遠方の物体であれば、これは肉眼がその物体を見るときの視角と事実上同じである。

像の半分の線寸法を L とすれば、眼は物体の半分を、接線が L/F であるような半角で見ることになる。同様に、像ab の半分は、接眼レンズ e を通して L/f の接線を持つ半角を張って見える。倍率 m は、この視角の接線、すなわち像の大きさの増加比に比例するから、

 m = (L/f) ÷ (L/F) = F / f

となる。これは前に述べた式と同じである。

さらに、対物レンズの全口径を通って平行に入射した光は、ただ一つの円錐状のビームを形成し、焦点に集中したのち広がって、接眼レンズに入射する。したがって、接眼レンズを通過する光束の直径は、対物レンズの直径を o とすれば、f と F の比に応じなければならない。

接眼レンズの口径がそれより小さければ、出射光の一部を切り捨てることになるし、大きければ、出射光束は接眼レンズより小さく見える。実際には、後者のことが多い。そこで、この特定の接眼レンズについて、眼に見える明るい光の円柱の直径を p とすれば、

 m = o / p

となる。すなわち、

 f = pF / o

であり、これは接眼レンズの焦点距離を測るもっとも簡単な方法である。

望遠鏡を晴れた空に向け、遠方に焦点を合わせて、接眼レンズから出るビームがはっきりとシャープな円として見える状態にする。そして、細かい目盛のついたスケールとポケットルーペを使って、その直径を測る。このとき、スケールと出射ビームが同時に鮮明な焦点に見え、眼を少し動かしても視差が生じないよう注意すること。接眼レンズから見えるこの明るい円は、実際には、対物レンズの絞り像が接眼レンズによって投影されたものである。

この方法による倍率測定は簡単で、かなり正確である。しかし、もし対物レンズの有効直径が、光路のどこかで絞りによって実際より小さくなっていると、しばしば起こるように、誤った結果を招く。したがって、こうして倍率を測定する前に、その点について望遠鏡を注意深く調べておく必要がある。〔17〕

〔17〕 より精密な方法として、接眼レンズの接眼端から見たときの接眼絞り径の張る角度を実測し、それを対物レンズ側から計算される同じ角度と比較する方法がある。Schaeberle によって示されている。M. N. (=Monthly Notices)=43=, 297。

図5に示した接眼レンズは、Christopher Scheiner やその同時代人たちが使用した、単純な両凸レンズである。一級品の対物レンズまたは反射鏡を用いるなら、この図98_a_に示すような単レンズ式接眼レンズも、今日において決して軽視すべきではない。Sir William Herschel は、高倍率用として常にこれを好み、広い視野を得るためにその利点を犠牲にする観測者たちを、露骨に軽蔑している。その強い言葉が、T. W. Webb や W. F. Denning ら熟練観測者の経験によって強く裏づけられている以上、その理由を探ってみよう。

まず第一に、単レンズは約10%の光を節約する。ガラスの各面を通過する光は、95〜96%が透過し、残りは反射される。したがって、単レンズは約90%の光を透過し、二枚レンズでは81%といった具合である。この損失は、ある対象が見えるか見えないかを決定する程度の差となりうる。Sir William Herschel は、普通の二枚玉接眼レンズでは見えなかった微光天体が、単レンズを使うと現れてくることを見いだした。

おそらく実際の光量損失そのものよりも、「見え方」への影響のほうが重大である。損失は本質的にはレンズ面での反射によるものであり、この反射光は、接眼レンズ付近で散乱され、あるいは眼の中に入り込み、視野内に迷光を生じさせる。その結果、微光天体の検出に不可欠なコントラストを損なうのである。

接眼レンズの中には、その面の形状のため、反射光が眼に強く集中し、「ゴースト」と呼ばれる像を形成するものがある。これはしばしばかなり明るく、微妙なコントラストの観測を大いに妨害する。

単レンズ式接眼レンズの「シャープな」視野はきわめて狭く、角度にしてせいぜい10度程度である。軸から離れるにつれ、像の品質は急速に悪化する。もしレンズが平凸レンズ(ふつうの二枚玉アイピースの眼レンズ)であれば、その凸面を眼側に向ける(すなわち通常の使用向きとは逆にする)ほうがよく働き、この向きでは球面収差がかなり小さくなる。

〔図98――単純接眼レンズ。〕

Herschel が単レンズで普通の二枚玉接眼レンズより良い像を得たという報告は、当時入手可能であった二枚玉接眼レンズの品質に対して、あまり良くない印象を与えるものである。もちろん、単レンズはある程度の色収差を生じるが、高倍率で用いる細い光束に対しては、一般にそれほど問題にはならない。

単レンズよりやや優れた形式として、ときおり用いられるのが、いわゆる Coddington レンズである。これは実際には Sir David Brewster によって考案されたものである。図98_b_に示すように、ガラス球から厚い赤道帯部分を切り取り、中央に溝を切って、その直径が球の半径の半分以下になるようにしたものである。普通のクラウンガラスで作った場合、その焦点距離は球の半径の3/2であり、単レンズより多少広い良好視野を持つが、周辺ではかなり急激に像質が悪化し、色収差も増大する。

単レンズの利点を保持しながら、収差の補正をより完全にしようとする当然の一歩は、接眼レンズ自体を小さな対物レンズのようにアクロマティック(二色消し)にすることである。これにより、比較的広い視野にわたって、色収差と球面収差を同時に補正できる。構成要素は貼り合わせなので、その境界面での光損失は無視できる。図98_c_はそのようなレンズを示している。正しく設計されたものであれば、15〜20度の視角にわたって、色のない、歪みのごく少ない、きわめてシャープな視野を与え、高倍率用として非常に適している。

〔図99――三枚貼り合わせ接眼レンズ。〕

さらに広視野と正像性(オルソスコピック性)を求めるなら、図57の対物レンズに似た、三枚貼り合わせレンズに進むとよい。このようなトリプレットは、Zeiss, Steinheil などによって海外で作られており、アメリカでは Hastings 教授設計の優れたトリプレットが Bausch & Lomb 社によって製造されている。

この種のレンズは、20〜30度ほどの視野にわたって、非常に平坦でシャープ、事実上無色で正像の視野を与える。図99_a_は Steinheil が用いた形式であり、この構成の優れた例であって、きわめて有用な接眼レンズである。故 R. B. Tolles は、この種のトリプレットを、焦点距離1/8インチという短焦点に至るまで製作し、見事な結果を得ている。

トリプレットの一種として高度に特殊化されたものが、Steinheil のいわゆる「モノセンター」(monocentric)アイピースである(図99_b_)。このレンズの特異性は、すべての曲率が同一中心から描かれるという点よりも、むしろ前側のフリントガラスとクラウンガラスが非常に厚いという点にある。これは一部の写真レンズと同様であり、画面の平坦化や歪みの除去に有利に働く。

モノセンター接眼レンズは、鋭い解像力で高い評価を受けており、色補正・正像性ともに非常に優れている。シャープな視野は約32度に及び、すべての貼り合わせレンズ形式の中で、最大の視野を与える部類に属する。これらすべての「光学的に単一」のレンズは、ゴーストがほとんどなく、散乱光を最小限に抑え、厳密な解像力の点でほとんど望むところがない。ただし、この一族全体の弱点は視野が狭いことであり、Herschel の意見にもかかわらず、特定の種類の作業に対しては現実の不利であり、観測者が非常に高い精度で望遠鏡を向けられない限り、時間の浪費につながる。

このため、今日広く用いられているのは二枚玉形式の接眼レンズであり、いずれも比較的広い視野を与え、中には解像力や正像性に関してほとんど完全といえるものもある。もっとも古い形式は図100に示されるもので、きわめて有用かつ一般的な構成であり、Huygens が使い、その名を冠している(おそらくローマの Campani も独立に考案した)。おそらく現在用いられている天文接眼レンズの4/5は、この型に属するであろう。

〔図100――Huygens型接眼レンズ内の光線経路。〕

Huygens 型接眼レンズは二つの有用な結果を達成している。第一に、いかなる単レンズよりも広いシャープな視野を与え、第二に、単レンズであれば合成レンズによって補正しなければならない色収差を、補償的に打ち消すという点である。通常これは、対物レンズ側に凸面を向けて配置された平凸レンズ(視野レンズ)が、対物レンズの焦点位置より手前に置かれ、その後方の絞り面に像を結ぶ。さらに、それより短焦点の同様な平凸レンズを眼レンズとして用い、絞り面の像を観察する。

図100では、A が視野レンズ、B が絞り、C が眼レンズである。A の周辺近くに入射する二本の光線1および2を考える。各光線はレンズ A を通過する際に分散され、青色光は赤色光より大きく屈折される。二本の光線は、一般の焦点として B の位置に集まり、そこで交差したのち、C に向かってわずかに発散する。

しかし C に達すると、周辺部を通った光線1――これは A でより屈折された――は、C の中心に近い部分に入射し、光線2より小さい角度で屈折される。一方の光線2は C の縁近くに入射する。もし A と C の曲率が適切な関係にあれば、1と2はCから出射するとき、互いにほぼ平行になり、これらを眼が合成して鮮明な像を形成する。

次に、光線1の赤成分と紫成分を、それぞれ 1_r および 1_v としてたどってみよう。屈折率の高い紫成分 1_v は C の中心により近い部分に当たり、赤成分より小さい屈折を受けて、C からほぼ赤成分 1_r と平行に出ていく。その結果、もし A と C が同じ種類のガラスで作られており、その焦点距離とレンズ間隔が適切に関係づけられていれば、赤像と紫像は重なって見える。

実際、色補償のための条件は

 d = (f + f′) / 2

である。ここで d は二つのレンズ間隔、f および f′ はそれぞれ視野レンズと眼レンズの焦点距離である。この色補償条件と、「A と C での屈折量を等しくする」という条件(球面収差を最小にするのに都合がよい)を合わせると、f = 3f′ および d = 2f′ という関係が得られる。これがいわゆる標準的な Huygens 型接眼レンズであり、視野レンズの焦点距離の1/3を持つ眼レンズを、眼レンズの二倍の距離だけ離して配置し、その中間に絞りを置くという構成になる。

実際には、焦点距離比は1:3から1:2、さらには1:1.5程度までさまざまであり、これは、対物レンズ側の過補正量および接眼側の未補正量に応じて変化する。また d の値も、実際に望遠鏡につけて試しながら調整し、可能なかぎり良好な色補正を得るようにすべきである。どんな接眼レンズでも適当に差し込めば最高の結果が得られる、などと期待すべきではない。

〔図101_a_――Airy および Mittenzwey 型接眼レンズ。〕

Huygens 型接眼レンズはしばしば「負アイピース」(negative eyepiece)と呼ばれる。これは、この形式が直接に対象を拡大するルーペとしては使えない一方、対象ではなく像を扱うという意味では顕微鏡的である、という理由からである。また、「十字線を入れて使用できない」と言われることがよくあるが、これは誤りである。実際、この型の接眼レンズでは、広い視野の周辺部で、歪みや非点収差がかなり目立つものの、中心付近では状況ははるかに良好である。

絞り面(B)の位置に置かれた中央の十字線は、望遠鏡のアライメント(光軸合わせ)用としてはまったく適しているし、視野の適度な範囲内では歪みもごく小さいため、絞り面に置かれたマイクロメータスケールでかなり良好な近似測定を行うことができる。実際、顕微鏡ではこの方法が広く用いられている。

Huygens 型接眼レンズの「アクロマティズム」は、真の意味での色消しというより、補償的であることにも注意を要する。すなわち、さまざまな波長の像の「大きさ」を一致させることと、像の「位置」を一致させることを同時に達成することはできない。後者――すなわち色ごとの焦点位置の差――は比較的重要ではないため、Huygens 型接眼レンズでは、各波長の光路が、色像の大きさが一致するように補償される。実際、その結果は非常に良好である。

標準形式の Huygens 型接眼レンズの視野は、少なくとも40度はあり、とりわけ中心部の解像力は非常に優秀である。目立つゴーストも生じず、余分のレンズによって約10%の光が反射で失われるものの、その光は視野全体に拡散するため、微光天体観測にとって有害なのは、コントラストが損なわれるという意味に限られる。Huygens 型接眼レンズの理論は、Littrow によって精密に論じられている(Memoirs of the Royal Astronomical Society, Vol. 4, p. 599)。そこで、この構成におけるやや複雑な幾何学が詳細に検討されている。

Huygens 型の種々の変形も考案・使用されている。図101_a_に示した Airy 型は、のちに王室天文学者(Astronomer Royal)となった Sir George Airy が、かなり徹底した数学的研究の結果考案したものである。この形式の特徴は、焦点距離比を通常どおり3:1に保ちながら、レンズ形状を変えている点にある。視野レンズは、後面にかなり顕著な凹面を持つ正メニスカスレンズであり、眼レンズは「クロスドレンズ」(crossed lens)で、外側の曲率半径が内側の約1/6である。この接眼レンズでは、周辺視野が標準的な Huygens 型よりいくぶん改善されている。

〔図101_b_――Airy および Mittenzwey 型接眼レンズ。〕

今日では、より一般的な変形として Mittenzwey 型がある(図101_b_)。これは通常、焦点距離比2:1で作られ、視野レンズはやはりメニスカス形であるが、Airy 型ほど明瞭には凹んでいない。眼レンズはごく普通の平凸レンズである。この形式はとくにヨーロッパで広く用いられており、実用視野としては、おそらく現在知られているいかなる接眼レンズよりも広く、およそ50度に達し、周辺までかなり良好な解像力を保つ。

最後に、図102_a_に示される「ソリッド・アイピース」(solid eyepiece)に触れよう。これは故 R. B. Tolles によって、今からほぼ四分の三世紀前に考案され、天体望遠鏡および顕微鏡の双方用として、しばしば彼自身によって製作されたものである。実質的には、一個のガラス円柱から作られた Huygens 型接眼レンズであり、眼レンズと視野レンズの曲率比は1½:1である。長いレンズの、視野側頂点から1/3ほどの位置に環状溝が切られ、これが絞りとして機能し、レンズの直径をほぼ焦点距離の半分程度にまで制限する。

これは事実上、光損失のない Huygens 型接眼レンズである。視野は標準形式よりさらに広く、かつきわめてシャープである。実に優秀な形式であり、現在の利用度が低すぎると言ってよい。故 Dr. Brashear は、「焦点距離3/4インチ以下のすべてのネガティブアイピースは、この形式で作るべきだ」と考えていたと伝えられている。

〔図102――Tolles のソリッド接眼レンズおよび補償型接眼レンズ。〕

著者の知るかぎり、この形式が広く用いられていない唯一の理由は、二枚玉形式より製作がいくぶん難しいという点である。曲率と全長を非常に高い精度で調整しなければならないためである。その結果、顕著な長所を持ちながらも、製作する光学技師にはあまり好まれていない。ゴーストは生じず、眼側端面の弱い反射光も広く拡散されるので、円柱の外面が十分に黒くつや消しされていれば(そうあるべきである)、迷光に対してきわめて優れた性能を示す。

Huygens 型接眼レンズの別種の変形として、顕微鏡における補償接眼レンズ(compensating eyepiece)に類似したものがある。一般に、低倍率において眼の色収差を補うために、望遠鏡対物レンズは色に対して過補正に作られており、そのため高倍率では顕著な過補正が現れ、青の焦点が赤より長くなり、青像が赤像より大きく写る。

このような場合、接眼レンズの視野レンズを重フリントガラスで作り、二レンズ間隔を適切に調整すると、視野レンズが青色光に対してより強く屈折する結果、青の焦点位置が手前に引き寄せられ、その像寸法が赤像とほぼ同じになる。こうして眼レンズは、対物レンズの過補正があたかも存在しないかのように働く。

著者は、図102_b_に示すような接眼レンズを試作してみたが、予想どおり、同じ焦点距離(1/5インチ)の Mittenzwey 型接眼レンズと比較して、色補正が著しく改善されることを見いだした。このように、使用倍率に応じて接眼レンズの色補正を変えることには、確かな利点があるであろう。

Huygens 型接眼レンズの合成焦点距離 F は、

 F = 2 f f′ / (f + f′)

で与えられる。ここで f および f′ は、それぞれ視野レンズと眼レンズの焦点距離である。この式では、レンズ間隔 d が、焦点距離の和の半分という標準配置であると仮定しているが、これは製作者が必ずしも守っているとは限らない。二枚のレンズを任意の間隔 d で組み合わせた場合の、もっとも一般的な式は、

 F = f f₁ / (f + f₁ − d)

である。

〔図103――Ramsden 型接眼レンズ内の光線経路。〕

より平坦で、とくに歪みのない視野を得るために、Ramsden によって考案された構成がよく用いられる。これは図103に示すように、共通の焦点距離を持つ二枚の平凸レンズを、平面側を外向きにして配置し、その間隔を共通焦点距離と等しいか、あるいはそれよりやや短くしたものである。間隔を焦点距離に等しくした配置は、前に述べたように、色補償に最も適している。というのも、アクロマティズムの条件は

 d = ½ (f + f′)

であるからである。

この条件で配置した場合、視野レンズの平面は、眼レンズの焦点面とちょうど一致する。先ほど示した合成焦点距離の式

 F = f f′ / (f + f′ − d)

において f = f′、d = f とおけば、F = f となり、組み合わせた全体の焦点距離は、個々のレンズの焦点距離と等しくなる。こうして視野は平坦かつ無色になるが、視野レンズ面上のほこりがすべて、極端に鮮明な像として強烈に目についてしまう。

このため、実際には Airy によって提案された形式が一般的であり、そこでは色補償を多少犠牲にしてこの不都合を避け、残余収差のバランスをより良好なものとしている。図103はその光線経路を示している。レンズ AB は同じ焦点距離であるが、いまやその間隔は共通焦点距離の2/3に設定されている。

遠方の物体から対物レンズを通ってくる二本の近接光線1および2は、対物レンズの焦点面ab 上の一点 a に集まり、これが像面ab 上の点である。ここから発散した光線は、A および B によって屈折され、B からはほぼ平行に出射するため、眼には像面cd 上の点 c から出たかのように見える。像面cdB の主焦点位置にある。

一般式 F = f f′ / (f + f′ − d) に f = f′、d = (2/3)f を代入すると、F = (3/4)f となる。したがって、この組み合わせは、対物レンズの主焦点面から1/4 f だけ後方に焦点を結ぶ。さらに、眼の位置は眼レンズの1/4 F 後方となる。この点も、レンズ間隔を短くする理由の一つである。間隔が長すぎると、眼の位置が不当に接眼レンズに近くなってしまう。

このように構成された Ramsden 型接眼レンズは、その対物側焦点面を利用して実物を拡大するルーペとして用いることができるため、「ポジティブ・アイピース」と呼ばれる。視野はほぼ35度にわたり平坦で歪みがなく、多少解像力を犠牲にすれば、もう少し視野を広げることもできる。この形式は、マイクロメータによる測定にもっとも一般的に用いられている。

あらゆる光学装置において、収差は光軸から離れるほど増大する。そのため、「視野角」という用語は、実際にはかなり曖昧であり、どれだけの収差まで許容するかによって決まる。〔18〕

〔18〕 視野の全角 a は、次式で定義される。

 tan (a/2) = γ / F

ここで γ は「十分にシャープである」とみなせる視野半径(線寸法)、F は接眼レンズの有効焦点距離である。

Ramsden 型接眼レンズには、多くの変形が存在する。たとえば、f と f′ を等しくしない場合もあれば、平凸レンズという単純な形状から逸脱することもある。より一般的には、レンズをアクロマティックにして、単純形式で目立つ色収差を取り除き、解像力を大いに改善する方法がとられる。図104_a_は、そのようなアクロマティック接眼レンズを Steinheil が製作した例である。基本配列は普通の Ramsden と同様だが、シャープな視野がわずかに広がり、約36度となり、解像力もかなり向上している。

これとやや似ているが、細部ではかなり異なる形式が Kellner 型接眼レンズである(図104_b_)。これは Wetzlar の Kellner という名の光学技師によって考案されたもので、彼は約四分の三世紀前、「Das orthoskopische Okular(正像接眼鏡)」という小冊子でこれを宣伝したが、その内容は現代の宣伝屋にも引けを取らないほどの「ホットエア(誇大広告)」であった。

今日作られている Kellner 型接眼レンズは、一般に対物側に平凸レンズ(平面を外側に向ける)を置くが、ときにはクロスレンズや両凸レンズを用いる場合もある。これと、はるかに小さい眼レンズとを組み合わせる。眼レンズは過補正のアクロマティックレンズである。視野レンズの焦点距離はおおよそ (7/4)F、眼レンズは (4/3)F、レンズ間隔はおよそ (3/4)F である。

この接眼レンズでは、前側焦点面が視野レンズのすぐ近く、場合によってはその内部にまで入り込んでおり、眼の位置は比較的接眼レンズに近い。しかし、解像力は非常に優秀であり、実用視野としては極めて広く、周辺まで無色で正像性が良好である。著者の手元には、焦点距離2⅝インチのものがあり、眼レンズにはアクロマティックトリプレットが使われているが、その視野は実に見事であり、50度に達する。

〔図104――アクロマティックおよび Kellner 型接眼レンズ。〕

Kellner 型接眼レンズは、広視野型ポジティブアイピースとして非常に価値が高いが、前述の二形式と同様、明るい天体に対して、ときに不快なゴーストを生じるという欠点がある。これは、視野レンズ内面で反射された光が、もう一度前面で反射されて焦点を結ぶことにより生じる。このゴーストの焦点は、多くの場合、視野レンズのすぐ後方、すなわち眼レンズの焦点位置に不愉快なほど近いところにくる。したがって、前述の形式の接眼レンズで微光天体を探す際には、このゴーストに注意を払う必要がある。

ポジティブ接眼レンズとして、これより明らかに優れている形式が、Steinheil や Zeiss によって製作されている近代的な「オルソスコピック(orthoscopic)」接眼レンズである(図105_a_)。これは、視野側に三枚貼り合わせのアクロマティックレンズ(密フリントを二枚のクラウンで挟んだもの)を置き、その背後に、焦点距離がこれの1/3〜1/2程度の平凸眼レンズを、凸面をほとんど接触させるほど近接させて配置したものである。

視野側のトリプレットは、色に対して強い過補正を持ち、前側焦点面は視野レンズ前面のほぼ1/2 F 前方に位置する。眼の位置は Kellner 型よりかなり遠く、快適である。視野は40度以上におよび、非常に平坦でシャープかつ正像性に優れ、厄介なゴーストも生じない。全体として、著者は、二枚玉形式の接眼レンズの中で、これを最高と評価している。

ここで、もう一つ非常に有用な「ロングリリーフ」接眼レンズにも触れておく必要がある。これはしばしば砲の照準器に用いられるもので、図105_b_に示すような構成である。図104_a_と同様、二つのアクロマティックレンズからなり、両者のクラウン面をほとんど接触させるように配置する。また、より完全な正像性を得る目的で、もっと長焦点の平凸視野レンズを前側に追加して用いることも多い。

この形式では、特に視野レンズを併用した場合、全器械としての見かけ視野はおよそ40度に達し、かつ眼の位置(アイリリーフ)は、おおよそ焦点距離と同程度である。これはファインダー用接眼レンズとしてきわめて有利であろう。というのも、ファインダーではしばしば不自然な姿勢でのぞき込まなければならず、長いアイリリーフが非常にありがたいからである。

〔図105――オルソスコピックおよびロングリリーフ接眼レンズ。〕

接眼レンズの見かけ視野がどれだけ広くとも、実際の天球上の視野(真視野角)は、その見かけ視野を倍率で割った値で決まる。たとえば、先ほどの著者の Kellner 接眼レンズは、設計された対物レンズと組み合わせた場合、倍率は20であるから、真視野は2½度となる。一方、第二の Kellner は倍率65であり、その真視野はわずか0度40分程度であるが、このときの見かけ視野は40度を少し上回る程度である。この関係を逃れることはできない。つまり、高倍率は常に狭い視野を意味する。

見かけ視野の上限は、光軸から離れるにつれて増大する収差、とりわけ強い像面湾曲および外周部での非点収差により決まる。人間の眼は、いっぺんに取り込める見かけ視野がせいぜい40度程度であるため、それ以上の視野を設計しても、「視野の周辺をのぞき込む」ような形でしか利用できない。

低倍率の場合は、眼の調節能力が有効視野を広げてくれるが、短焦点接眼レンズでは像面湾曲が決定的な制限要因となる。単レンズの場合、像面の曲率半径はおよそ (3/2)F であり、一般的な二枚玉形式では約 (3/4)F である。

この問題を検討するにあたり、Conrady は(M. N. 78, 445)、「総視野角40度をとると、正常な調節力を持つ眼に対して、焦点距離およそ1インチあたりで視野のシャープさが限界に達する」ことを示した。最良のアクロマティック結合レンズを用いても、この限界はせいぜい約1/2インチまで押し下げられるにすぎない。

これより短い焦点距離では、開口を絞らない限り、もっともシャープな視野を得ることができない。Conrady は、近代的写真レンズと同様の構成を用いて「アナスチグマティック接眼レンズ」を設計する可能性を示唆しているが、高倍率と広視野を同時に求める必要性は、それほど切実ではなく、研究を促すほど強いものではない。

〔図106――普通の地上観測用接眼レンズ。〕

最後に、ほとんどの小型望遠鏡に付属するごく単純な補助器具――地上用接眼レンズ(terrestrial ocular)――について触れておこう。これは、像の向きを正立させ、風景を上下・左右とも正しい向きに見せてくれる。構造がどうであれ、本質的には、対物レンズ単独では倒立する像を再度反転させる「正立系」と、その正立像を観察するための接眼レンズ系から成る。

一般的な形式では、図106のように、四枚の平凸レンズで構成される。ここで A および B が正立用の一組、C および D が修正された Huygens 型アイピースである。対物レンズからの像は、AB の前側焦点面上に結ばれ(AB は実質的に一種の「倒立接眼レンズ」として働く)、その後ろに形成される正立像を、C と D の組み合わせで通常どおり観察する。

この形式の見かけ視野はおよそ35度であり、Airy が示したように、曲率を特別に調整したレンズを用いれば、わずかながら補正状態を改善できるが、実用上そこまで行うことはほとんどない。この正立系の主な欠点は、その長さが等価焦点距離の約10倍にも達することである。ときおり、光量を節約し視野を広げるために、正立部を単一の貼り合わせレンズで構成し、接眼部には図99_a_や図102_a_のような形式を用いることがある。図107は、そのように構成された地上用接眼レンズを、故 R. B. Tolles による一例に基づいて示したものである。慎重に設計すれば、40度以上の見かけ視野と非常な明るさを得られ、正立系の全長も適度な範囲に抑えられる。

原理的にこれと非常によく似ているのが、いわゆる「接眼レンズ顕微鏡(eyepiece microscope)」である。これは Zeiss がフィラーマイクロメータ用として製作しているもので、可変倍率と、眼にとって便利な位置をもつ接眼部を与える(図108)。ピント合わせ用の回転カラーが備えられ、小さなスライド筒によって、普通の顕微鏡と同様に倍率を変化させることができる。実際、接眼レンズ顕微鏡は、かなり以前から高倍率観測において有利に用いられてきた。これは、眼にとって楽であり、極端に小さな眼レンズしか持たない短焦点接眼レンズよりも長いアイリリーフを与えてくれるからである。ソリッド接眼レンズと単レンズ対物を用いれば、光損失も通常の Huygens 型接眼レンズと変わらない。天文観測においても、像が正立するという点が、時に便利なことがある。

〔図107――Tolles の三枚玉正立系。〕

〔図108――接眼レンズとして用いる顕微鏡。〕

〔図109――「Davon」器械。〕

接眼レンズ顕微鏡とほとんど同じ原理にもとづいているのが、いわゆる「Davon」マイクロ・テレスコープである。これはもともと、顕微鏡のサブステージ用アタッチメントとして開発され、少し離れた位置にある対象の拡大像を得るためのものであったが、その後、一般用としての単眼・双眼手持ち望遠鏡にも発展してきた。そのアタッチメントとしての完成形が、図109に示されている。

ここで D は、十分に補正された対物レンズを意味し、適切な絞りを備えたマウントに収められている。その像は、普通の顕微鏡または専用の接眼顕微鏡 A(どちらの場合も)によって観察される。A にはラック式のピント調整機構 A′ が付属し、精密に芯出しされたカップリング C によって対物部と結合される。

こうして得られる器械は、きわめてコンパクトかつ高性能であり、地上観測や小規模な天文観測に非常に適している。これは前に触れた Tolles の短焦点手持ち望遠鏡と同じ系統のものである。設計を適切に行えば、この種の望遠鏡は双眼プリズムにほぼ匹敵する広い視野を与え、重量ははるかに軽く、同じ有効倍率と口径で比較した場合、光損失も非常に小さい。また、比較的高倍率においても、他の条件が同じであれば、解像力の面でしばしば有利である。

第七章
手持ち望遠鏡と双眼鏡

手持ち望遠鏡は、天体観測には比較的あまり用いられない。たいていの場合、用途がごく限られるほど小さすぎ、固定架台の助けなしには十分な倍率を与えることができないからである。それでも、ある種の用途、特に変光星の観測などには、十分にコンパクトで集光力の大きいものであれば、有用な目的を果たす。

手で支えて用いる器械に与えられる倍率には、実用になる安定度を保ったままの明確な限界がある。倍率が8〜10倍を越えると、非常に扱いにくくなり、快適に観測するには、ごく簡単な架台か、少なくとも手を何かにしっかり支えることが必要になる。

器械が長くなればなるほど取り扱いは難しくなるので、手持ち望遠鏡で最もよい結果が得られるのは、相対的に大きな口径を持ち、短くて低倍率の器械である。すぐに思い浮かぶのは、いわゆるガリレオ式の普通のフィールドグラスであり、実際、フィールドグラスは古くからよく用いられてきた。しかし、通常の構造のままでは天文用途として光学的にやや粗雑である。対物レンズは正しい面精度や良好な芯出しが施されていることがまれであり、明るい星は、普通は点ではなく、揺らめく光芒のように見える。

さらに、視野は一般に狭く、中心から周辺にかけて照度に著しいむらがあるので、視野内の位置によって星の明るさを判断する際には、大いに注意が必要である。通常構造のフィールドグラスでとり得るレンズ径は、接眼部に対する両眼間距離の制限を受ける。両眼は接眼レンズの中心にうまく位置しなければ、鮮明に見ることはできない。

瞳孔間距離は一般に2½インチ弱であるから、フィールドグラス一方の対物レンズの有効口径が2インチに達することはほとんどない。最良のフィールドグラスでは、各対物レンズは三枚貼り合わせトリプレット、凹レンズ群もトリプレットであり、その構造は図110に示すようになっている。この種のグラスの倍率は、5倍を越えることはまれである。

フィールドグラスを空の観測にも用いるつもりで選ぶなら、明るい星(実際の星でも人工星でもよい)に向けて試し、慎重にピントを合わせても像が十分小さく、均一な点像にならないようなら、その器械にはそれ以上関心を持たないほうがよい。

〔図110――フィールドグラスの光学部〕

双眼式器械の利点は、一般にかなり誇張されている。実際には心理的なものであって物理的ではない、ある種の「きらきらした明るさ」と「鮮明さ」の錯覚を与えるのである。最近の大戦中、アメリカ合衆国政府の依頼により、プリズム双眼鏡と、まったく同形式の単眼(モノキュラー)との比較研究が非常に綿密に行われた。後者はより安価で軽く、多くの点でずっと扱いやすい。

その結果、さまざまな照明条件下であらゆる対象を「実際にどれだけ見えるか」という点での差は、ほとんど無視しうるほど小さいことがわかった。倍率を5%未満だけ増やせば、単眼器械でも双眼と同じものを、同じよさで見ることができるのである。細部を見るという点に限れば、その差は一般の使用条件よりさらに小さいと考えられる。というのも、双眼器械の左右両側を効率よく同時に働かせ、その状態を長く保つことは、決してたやすくはないからである。

したがって、適度な倍率を持つ高品質の単眼手持ち望遠鏡には、明らかに独自の用途が存在し、実際、優れた大陸メーカーのいくつかは、その種の器械を製造している。このような器械は、テレフォトレンズとまったく同じ原理を用いて短縮されることがある。テレフォトレンズは、カメラの繰り出しを短く保ったまま、相対的に大きな像を得るものである。

〔図111――Steinheil の短縮望遠鏡〕

太陽写真用として Steinheil が製作した、大きく短縮された望遠鏡を図111に示す。この器械は全長約2フィートで、有効口径2⅜インチを持ち、太陽像を直径½インチに写す。これは、全長がその2倍以上もある普通の望遠鏡に相当する。まったく同じ原理が、同じ製作者による地上用望遠鏡にも適用されており、やはり器械全長のほぼ2倍に相当する有効焦点距離を与えている。この原理と同一のものは、いわゆるバローレンズにもたびたび用いられてきた。これは、対物と接眼の中間に置かれる負レンズであり、器械の全長をあまり伸ばさずに倍率を上げる働きをする。また、実質的に同様の機能を持つ写真用引き伸ばしレンズも、かなり広く使用されている。

天文用途のための高効率な手持ち望遠鏡は、この方向に沿って構成することができる。大幅な短縮が可能になるため、普通よりいくぶん高倍率を用いても、安定度の低下をそれほど大きくしなくて済むからである。純然たる天文用として構成された双眼鏡も存在し、それは小型の手持ち彗星捜索用望遠鏡を対にしたものである。

その一方の小型器械を図112に示す。対物レンズの有効径は1⅜インチ、倍率は5倍、視野は7½度に及び、きわめて明るく均一である。対物レンズは、すでに触れた図57と同様のトリプレットであり、接眼レンズは図104_a_の形式のアクロマティックダブレットである。

〔図112――天文用双眼鏡〕

これらの特殊な天文用フィールドグラスを除くと、もっとも有用で一般に入手しやすい手持ちの器械は、現在きわめて広く使用されているプリズム双眼鏡である。これは、互いに直交する二つの全反射面を持つ二個のプリズムによる全反射を利用して、像の正立を行う原理に基づいている。その基本は、図113に示す単純な反転プリズムにある。

これは、斜辺面(hypothenuse face)が光学軸に平行になり、二つの直角辺面が光学軸に対して45°に配置された直角プリズムにすぎない。物体から来る光線が、その一方の直角辺面に45°の角度で入射すると、屈折して斜辺面に達し、そこで全反射されて、第二の直角辺面から元の方向と平行に出射する。

図113を見れば、斜辺面の面に垂直な要素 A B が、全反射によって反転し、A′ B′ の位置をとることが一目瞭然である。同時に、A B に直角な要素は、いわば斜辺面上を「平ら」に反射され、端の向きは変わらないまま出射するので、この単一反射の純粋な効果は、像を倒立させるが、左右は反転させないことになる。

一方、もし第二のプリズムを第一プリズムの後方に、その側面を下にしてぴったりと置き、その斜辺面が第一のプリズムの斜辺面とちょうど直交する平面に位置するようにすれば、A′B′ 方向の線分は、第二のプリズムで再び屈折・全反射・屈折されるが、このとき上下方向の反転は受けない。一方、A′B′ に直交する線分は、第二プリズムの斜辺面上を端から端へ(endwise)反射され、最初のプリズムで A B が受けたのと同様の反転を受ける。

〔図113――反転プリズム〕

したがって、このように配置された二つのプリズムは、像を完全に反転させ、結果として図106に示した普通の正立装置とまったく同じ効果を生む。単純な反転プリズムは、接眼レンズの上に置いて回転させることにより、像そのものを回転させる手段として便利であり、とくに恒星測光では便利なことがある。二つのプリズムを組み合わせると、真の正立系(inverting system)となり、実際その機能で利用されたこともあるが、得られる視野角がかなり小さいため、広く使用されるには至らなかった。この組み合わせは歴史的に「Dove のプリズム」と呼ばれ、その正確な効果は図114にはっきり示されている。

最初の実用的なプリズム式正立システムは、M. Porro によるもので、19世紀中頃に発明され、その後「Lunette à Napoléon Troisième(ナポレオン三世用遠眼鏡)」という名前で軍用グラスとして商品化された。

〔図114――Dove のプリズム〕

〔図115――Porro のプリズムシステム〕

この印象的な器械のプリズム系統は、図115に示されている。ABC の三個の直角プリズムから成り、A は対物レンズ側に直角辺面を、B は接眼レンズ側に直角辺面を向けている。対物レンズから a の方向に入ってきた垂直の線分を考えると、それはまず A の斜辺面 b で反射されて、元の位置から90°回転した方向に移り、ついで C の斜辺面に入り、そこで c および d で二度「平ら」に反射され、方向を変えることなく出射し、B の下側直角辺面に入射する。ここで B の斜辺面 e でさらに90°反射される結果、眼を f に置いたとき、上下方向について完全な反転が行われることになる。これと直交する線分は A に入り、「平ら」に反射され、C の面では端から端へ二度反射され、完全に倒立したのち、再び C の斜辺面で「平ら」に反射される。こうして光線経路全体をたどるとわかるように、像は完全に反転されるのである。焦点合わせは、プリズム C をねじで移動させるだけの非常に単純な機構で行われ、器全体は図116に示すような小さな平たい箱形の筐体に収められていた。

〔図116――Lunette à Napoléon Troisième〕

〔図117――Porro の第一形式プリズム〕

接眼端から対物端までの長さは、約1½インチであった。倍率は10倍で、1000ヤードの距離で45ヤードの視野をとることができた。ここで、初めて厳密な意味での近代的なプリズム式正立システムを見ることになる。興味深いのは、もし誰かが双眼式「Lunette à Napoléon Troisième」を作ろうとしたなら、観測者の鼻先を避けようとする努力だけで、現代のプリズム双眼鏡と同じように、立体感が強調された器械を必然的に生み出していただろう、という点である。

Porro はその少し前に、現在標準的な図117の形式にプリズムを配置していた。ここでは、二個の直角プリズムの各面は互いに平行な平面内に位置するが、図114に示したように90°だけ相互に回転している。ここに描かれた光線をたどると、初期の Porro 構成とまったく同じ反転が起こることがわかる。この形式は、プリズムによる正立のためにもっとも一般的に用いられるものであり、「Porro の第1形式」と呼ぶのが便利である。実際、この形式は、原理・実用の両面において、「Lunette à Napoléon Troisième」以前にすでに存在していたのである。Porro の仕事についての最初の公刊記述は、『Cosmos』第2巻222ページ(1852年)以下からの翻訳としてここに引用しておく。これによって、現代のプリズム双眼鏡の起源が明白に示されるからである。

『Cosmos』第2巻 p.222――「われわれはしばらく前から、Porro 氏の『ロング・ヴュ・コルネ(longue-vue cornet)』あるいはテレメーター(télémetre)の貴重な利点を、読者諸氏に紹介したいと願ってきた。普通の小型スパイグラス、すなわち地上望遠鏡は、遠方の物体を明視するために伸ばした状態で、少なくとも長さ30〜40センチはある。長さは、固定筒の代わりに入れ子式の筒を用いることでかなり短縮されるが、この伸縮操作は、やや深刻な不便をもたらす。望遠鏡を向けるたびに繰り出す必要があり、そのために時間を失うからである。

われわれは長いあいだ、伸縮を必要としない、きわめて短い望遠鏡によって遠方の物体を見ることができるようにならないものかと願ってきた。Porro 氏の『ロング・ヴュ・コルネ』は、この困難かつ重要な問題を完全に解決しているように思われる。その構造はきわめて巧妙な工夫にもとづいており、望遠鏡の軸と光線を文字どおり三つ折りにすることで、器械の長さを三分の二だけ短くしているのである。

この構成を説明してみよう。望遠鏡の対物レンズの後ろに、Porro 氏は直角二等辺プリズムを置き、その斜辺面を光軸に垂直にしている。物体からの光線はこのプリズムの直角面に入射し、二度の全反射を受けて、元の方向と平行に戻っていく。像が結ばれるべき点のほぼ中間で、その光線はまったく同じ第二のプリズムによって遮られ、再び元の方向に返されて、接眼レンズへと導かれ、われわれはそこで実像を観測することになる。もし第二プリズムの直角面が第一プリズムの直角面と平行であれば、この実像は倒立したままであり、その望遠鏡は地上用ではなく天体用ということになるだろう。だが、Porro 氏はきわめて巧妙な光学技師であり、再正立を行うには、第二プリズムの直角面を第一プリズムの対応する面に対して直角に配置し、すなわち四分の一回転させればよいことを見事に見抜いたのである。

実際、反射面を1/4回転させることは、像を1/2回転させるのと同じ効果がある。像を半回転させれば、上下と左右が入れ替わり、完全な反転が起こることは明らかである。このようにして像は接眼レンズとは独立に正立させられるので、接眼レンズには単純な二枚玉を用いるだけでよくなり、これにより望遠鏡の長さはさらに短くなる。結果として、その長さは、同じ倍率・視野・明るさを持つ通常の望遠鏡の約4分の1にまで縮められるのである。

この新しい望遠鏡は、倍率が10倍あるいは15倍であっても、真のポケット望遠鏡といえる。その長さと嵩は、通常倍率4〜6倍のフィールドグラスと同程度である。伸ばせば伸ばすほど煩わしいものだが、この望遠鏡では小さなつまみねじを回すだけで、瞬時に最もシャープな焦点を得ることができる。

輝度はある程度低下せざるを得ないが、それは二度の全反射によるものではなく(全反射では光の損失は起こらないことは周知のとおりである)、二つのプリズムを四度通過することによって生じる。とはいえ、このコルネ式望遠鏡は、像のシャープさと拡大度において、ウィーンの名高い光学師 Ploessl の最上級狩猟用望遠鏡とも比肩しうる。Porro 氏は同じ原理にもとづいて、全長15センチしかない海軍用望遠鏡を製作したが、その対物レンズは直径40mmであり、全長70センチの普通の海軍望遠鏡に取って代わることができる。さらに優れたものとして、全長30センチの望遠鏡には直径60mmの対物レンズが取り付けられており、接眼レンズを手元の簡単な操作で交換するだけで、昼用と夜用に切り替えることができる。何一つ器械を分解する必要はない。夜用接眼レンズでは倍率約12倍、昼用接眼レンズでは約25倍であり、これによって木星の衛星の食現象も難なく観測することができる。

これは明らかに大きな進歩である。ベルリンの Dove 教授という、ドイツでもっとも著名な物理学者の一人は、1851年に、二つのプリズムを互いに対応する面が直角になるように直列に配置した組み合わせに、反転プリズムという名前を与えた。彼はこの配置を、自身の新しく重要な発見として発表した。しかし彼は、おそらく Porro 氏の存在を知らなかったのであろう。Porro 氏こそ、この魅力的な応用に関する栄誉のすべてを負うべき人物であり、この構成をずっと以前に実現していたのである。」

その少し後、Porro は、一般に「Porro 第二形式」と呼ばれるものを発表した。これは図115の A を、C の対応する半分に一体化し、B の残り半分を同様に C に付加することによって直接得られる。この結果、図118に示すような二つの「スフェノイド」プリズムができあがる。これらは別々にマウントすることもできるし、反射による光損失を減らすために、接触面どうしを貼り合わせることもできる。スフェノイドプリズムは、これまで、他の形式に用いられる単純な直角プリズムよりもはるかに製作が難しいとされてきた。しかし実際には、特別に難しいわけではなく、現在では望遠鏡用の最良の正立接眼レンズは、先に述べたようなスフェノイドプリズムによって構成されている。

〔図118――Porro 第二形式〕

〔図119――Clark 社のプリズム接眼レンズ〕

この構成は、実際にかなりコンパクトで対称的なマウントに非常にうまく適用できる。その好例が図119であり、これは Alvan Clark 社が自社製各種天体望遠鏡用に製作した地上観測用プリズム接眼レンズである。図をひと目見れば、その構成のコンパクトさがわかるだろう。この接眼装置は、通常の地上用接眼レンズとは反対に、対物と接眼との間の直線距離を、プリズム内の光路分だけ短縮してくれるのである。

さらに、図110のような構成よりも、視野がはるかに広く、40度を超える。視野周辺部で、照度や解像力が強く低下する傾向もない。

実際のプリズム双眼鏡の構造では、Porro の最初の器械と同様、二つの直角プリズムは通常ある程度離して配置される。これは、図120に示した典型的な現代のプリズム双眼鏡に見られるように、光線を折りたたんで実際の器械長を短く保つためである。

〔図120――プリズム双眼鏡の断面〕

光線経路は図中にはっきり示されており、プリズムが対物レンズの全焦点距離をどのように折り込んでいるかがすぐに理解できる。二つの筐体を離して配置することにより得られる立体視の効果は、実際上非常に大きな利点となる。可視視野のモデリング(立体的な起伏表現)は見事であり、距離感も非常に明瞭である。そして、藪の中をのぞき見るような状況では、小さな物体の「向こう側」を一方または他方の対物レンズがわずかに見回り込むことによって、ある種の「見通す力」が得られる。近距離では立体効果がいくぶん誇張されるが、全体として地上観測用としての純益はかなり顕著である。

よく作られたプリズム双眼鏡は、空の観測用としてもきわめて有用である。ただし、そのためには対物レンズが十分な口径を持ち、プリズムが対物からの光束全体を受け止められるだけの大きさであり、また平坦な視野と十分良好な像を与える精度で製作されていなければならない。

プリズム双眼鏡の弱点は、通常10個にも及ぶ空気-ガラス境界面での反射と、プリズムとして必要な厚いガラス塊における吸収による、きわめて大きな光量損失である。ある程度以上の大きさの器械では、透過光量は入射光量の半分強にすぎず、60%を超えることはきわめてまれである。器械が正しく設計されていれば、見かけ視野はおよそ45度であり、実質的に平坦で、かなり均一な照明を持つはずである。しかしここで警告しておきたいのは、市販の双眼鏡の中には、視野が平坦とは程遠く、照明もきわめて不均一なものが多数存在する、ということである。

多くの場合、プリズムは対物レンズから像面までの光束全体を通すには小さすぎ、周辺部の光をかなり切り捨ててしまっている。視野が一見かなり平坦であっても、このような照明の不均一はしばしば潜んでおり、天文用途の双眼鏡としては、これは非常に不快な欠点である。

空の観測用に双眼鏡を選ぶ前には、まず視野全体にわたって平坦さと、視野の端ぎりぎりまで天体像が鮮明であるかどうかを、きわめて慎重に試験すべきである。ついで、照明の均一性をできるかぎり正確に判断すること。できれば、視野半径ほど離れた二つの星を対象とし、それらを視野内のどの位置に持ってきても、その見かけの明るさに検出可能な変化が現れないことを確認するとよい。

もし対物レンズが容易に取り外せる構造であれば、それをねじ外して、プリズムの実際の大きさを直接確かめてみると良い〔19〕。明るい星のゴーストにも注意すべきである。

〔19〕 外見上はプリズム双眼鏡に見えるが、実際にはごく普通のオペラグラスを、見せかけのためにプリズム型の筐体に収めただけの製品も市場に出回っている。中には、有名メーカー名を少しだけもじった名前をつけているものもある。

プリズム双眼鏡の対物レンズ径は通常¾インチから1½インチの範囲にあり、倍率は6倍から12倍程度である。プリズムが十分大きいという前提つきで、対物レンズは大きければ大きいほどよい。一方、倍率は6〜8倍を超えると、一般には不要で、かえって不利になることが多い。12倍から20倍、さらにはそれ以上の倍率を持つ器械もときおり見かけるが、このような倍率は、支持なしで使用する器械としては不便なほど大きすぎる。

第一級の単眼プリズムグラスは、非常に便利で快適に使用できること、そして両眼用器械より相当に安価であることを忘れないでほしい。ちなみに、単眼プリズムグラスは、接眼レンズに太い十字線を入れてやれば、きわめて優秀なファインダーとなる。特に目盛環を持たない小型望遠鏡には、非常に適している。

〔図121――極端な立体効果を持つ双眼鏡〕

Porro の正立プリズムには、多くの変形があり、それぞれ特定の目的に合わせて応用されている。その代表例として一つ挙げるだけで、Porro プリズム系が、プリズム要素の単なる再配置によってどのように応用できるかがよくわかる。図121は、Zeiss による特殊な双眼鏡で、極端な立体効果を得ることができる。これは二つの Porro プリズム望遠鏡から成り、それぞれの前面には、対物レンズの前で光線を器械軸に対して直角方向から導き入れる直角プリズムが置かれている。

図に見える前方を向いた開口部が、これら外部プリズムの入口である。図に示された状態は、立体効果が最大となる位置である。

鏡筒はヒンジで上下に動かすことができ、水平位置では、二つの対物レンズは瞳孔間距離の約8倍もの間隔で配置される。鏡筒が水平のときの立体効果は、もちろん著しく誇張されるが、やや遠方にある物体の相対的位置関係を判断するのに非常に有用であり、とくに砲弾の着弾点(榴散弾の爆発)を見つける際に役立つ。

この双眼鏡の片側望遠鏡の光学構造は、図122に示されている。そこでは、対物レンズ外側のプリズムに入射した光線が、残りの正立系と接眼レンズを通過するまでの経路をたどることができる。このプリズム正立システムは、明らかに「Lunette à Napoléon Troisième」をもとにした派生形であり、図115のプリズム BA の対応する部分に下ろして貼り合わせると同時に、対物レンズを A のすぐ下に配置したものである。

Porro 形式とはかなり異なる正立プリズム系にも、ときおり出会う。その中でもおそらく最もよく知られているのが、Abbé 教授によるいわゆる「ルーフプリズム」(roof prism)で、図123に示されている。これは、入射光と射出光とが同一直線上にある「直視式」システムを構成できる点で、特定の用途に有用である。Porro 系を扱ったときと同じ観点から見てみよう。プリズム前方の垂直線分は、面 a および b での二度の反射により反転される。一方、それと対応する水平線分は、a および b に関しては「平ら」に反射されるだけだが、屋根形をなす面 c および d で端から端へ反転される。その結果、像は完全な反転を受ける。

実際には、このプリズムは図に示すように三つの部分から成り、そのうち二つは直角プリズム、残る一つが屋根面を含んでいる。屋根面の製作には非常に高い精度が要求されるため、この種のプリズムを量産するにはかなりの困難が伴う。そのため、直視式が有用な銃照準器などの特殊な器械では便利に用いられてきたものの、一般用として広くは採用されていない。とはいえ、この形式を利用した単眼・双眼の器械が、ある程度は製作されている。

〔図122――図121における光線経路〕

〔図123――Abbé のルーフプリズム〕

屋根プリズムの原理を用いた別の形式として、Hensoldt 社が製作したフィールドグラスに用いられているものがある。そのプリズム形式は図124に示されている。他の屋根プリズムと同様、この形式も、通常の Porro 型に比べて製作がやや難しい。正立や側方反射を行うプリズムは、特定の用途のために多数考案されてきた。その中には、驚くほど巧妙で用途に非常によく適合したものもあるが、望遠鏡の一般的実務において重要な位置を占めるとは言いがたい。むしろ、銃照準器や潜望鏡といった特殊器械の技術分野に属するものであり、中には単に、より単純な Porro 型の巧妙な代替案として主に考案されたものもある。

単眼・双眼を問わず、ほとんどのプリズム望遠鏡は、Porro のいずれかの形式にもとづいて製作されている。これは特に、大型双眼鏡について顕著である。Porro 第二形式のスフェノイドプリズムは、器械長の短縮が必須でない場合には、とくによく適合している。たとえば、Zeiss の短焦点望遠鏡の一部は、定常的に双眼形式で製作されており、正立系として二つのスフェノイドプリズムを用い、接眼レンズは顕微鏡の三連鏡筒(トリプルノーズピース)と同じ原理で構成されている。そのため、観測者は三種類の倍率を即座に切り替えて利用できる。

〔図124――Hensoldt のプリズム〕

さらにまれではあるが、かなり大きな口径を持つ双眼望遠鏡が、主として天文観測用として製作されることもある。これらは、地上観測への転用のためにプリズム式正立系を備えるが、より重要なのは、Porro 系による横方向のオフセットによって、大口径二本の対物レンズを配置するための空間を得る点である。すでに見たように、双眼鏡の対物レンズ径は、スペースを工夫しない限り、実用上はわずか2インチ強に制限される。

これまでに製作された最大のプリズム双眼鏡は、Clarks 社がかなり以前に作ったもので、対物口径6¼インチ、焦点距離92¼インチであった。このように大きく、強力な器械は、当然ながら天界の見事な双眼像を与えうるものであり、しかもきわめて精密に作られていたため、その性能についての報告はどれも非常に高く評価している。同社は、口径3インチ以上の同様の双眼望遠鏡も多数製作しており、その一例として、口径4インチ・焦点距離60インチの典型的な器械を図125に示す。この場合、正立系には Porro 第一形式が用いられ、きわめて広視野の Kellner 型接眼レンズが組み合わせられていた。

しかし、これほどの大きさの器械における双眼構成は、それがどれほど優秀に作られ、地上観測にどれほど快適であろうとも、純粋に天文用という観点からは、その費用に見合うだけの正当性を持つとは言いがたい。

〔図125――Clark 社4インチ双眼望遠鏡〕

第八章
付属品(アクセサリー)

通常の接眼レンズ一式とは別に、さまざまな付属装置が観測者の装備の重要な一部をなす。これらの数と種類は、使用している望遠鏡およびそれを用いる目的によって決まる。

〔図126――スター・ダイアゴナル(天頂プリズム)。〕

もっとも一般的に有用なのは、通常の接眼レンズに付随する、いくつかの特殊な接眼部用付属装置である。その筆頭に挙げられるのが、天頂付近の天体をより楽に見るための、ごく普通のスター・ダイアゴナル(天頂プリズム)であり、図126に示されている。これは単に、望遠鏡の引き出し筒に差し込む筒 A と、それに直角に接する横方向のスリット付き筒 B から成り、この横筒に通常の接眼レンズが差し込まれる。さらに、主筒と横筒の軸にそれぞれ垂直な二つの面と、それら双方に対して45°に傾いた斜辺面とを持つ直角プリズム C が組み込まれている。筒を下りてくるビームは、この斜辺面で全反射を受け、接眼レンズの位置に焦点を結ぶ。筒の下端は、塵の侵入を防ぐためキャップで閉じられている。

これを用いることで、天頂付近の星を水平にのぞき込むことができ、また高度がやや高い対象であっても、快適な下向きの角度で観測することができる。プリズムは、像のシャープさを損なわないよう非常に精密に作られていなければならないが、光の損失は約10%程度にとどまり、観測の快適さを大いに増してくれる。

ほぼ同等の重要性を持つのが、Sir John Herschel によって考案された太陽用ダイアゴナル(ヘルシェルプリズム)、図127である。ここで筒構造 A, B は図126とまったく同じであるが、直角プリズムの代わりに、小さな角(10°以下)の単純な楕円プリズム C を用いている。その上面はきわめて平坦であり、筒の軸に対して45°に傾いていて、図のように切り欠かれた内筒 D の上に載せられている。太陽観測の際、この上面で反射される光(および熱)は全体の約5%にすぎず、それが接眼レンズ位置に像を結ぶ。

〔図127――太陽用ダイアゴナル。〕

下側の研磨面で反射する光は視野の外へ追いやられ、残りの放射はプリズム C を通り抜けて、その下方に集中する。観測者を焼いてしまわないように、筒の下端はキャップ E でふさがれているが、このキャップには、加熱された空気が循環できるよう側面に小孔が設けられている。このようなプリズムを用いれば、反射してきた残りの光は、中性(ニュートラル)濃度の着色ガラスを接眼側に置くことで、容易に適度な明るさまで落とすことができる。

口径3インチ以下で、通常の焦点比を持つ望遠鏡では、接眼レンズの前面にきわめて濃い平行平板ガラス(サングラス)を置くだけで、眼の保護としては十分である。このガラスは、できれば中性濃度であることが望ましく、通常、厚さは1/16インチ弱である。中には中性ではない色ガラスを好む観測者もいる。緑ガラスと赤ガラスを重ねたものは良好な結果を与えるし、いわゆる Noviweld ガラスの最も濃い色の円板も同様の効果を持つ。

口径が3インチに達する場合には、暗色ガラスを二枚重ねる価値がある。二枚同時に熱で破損することはなく、その間に眼を安全にどける時間が稼げるからである。太陽フィルタが一枚割れれば、観測者は網膜の小領域に永久的な暗点(暗点性暗点:scotoma)を負うおそれがあるが、これは時を経ても良くも悪くもならない。

口径が3インチを超える場合には、太陽プリズム(ヘルシェルプリズム)を用いるべきであり、もし費用を倍額程度かけるつもりがあれば、太陽観測にこれほど快適なものはないとも言えるのが、図128に示す偏光接眼装置(polarizing eyepiece)である。この図は、その配置を概略的に示したものである。この装置は、一般的なガラス面に約57°の入射角で光線が当たると、その反射光が偏光されるという事実に基づいている。こうして偏光された光は、最初の面と平行な面に再び同じ角度で当たるとよく反射されるが、最初の面に直角な面に同じ入射角で当たると吸収されてしまう。

〔図128――偏光接眼装置の略図。〕

したがって、図128において、望遠鏡から来る入射ビームは、黒ガラス面 a に57°の入射角で当たり、次に平行な鏡 b で再反射されて、ほぼ元の進行方向と平行に、下方の鏡 c, d に向かう。二度目の反射の目的は、収束しつつある光束のうち、一度目では偏光が不完全だった成分を、さらに偏光させることである。

下側の一対の鏡 c, d は、再び偏光角で二度反射を行い、図のような位置にあるときには、四度の反射による減光を受けるだけで、光をそのまま接眼レンズへ通す。しかし、第二の一対の鏡を、b c に平行な線を軸として回転させると、透過する光はしだいに減少し、両鏡の面が a, b に対して90°傾く(=図面の平面に対して33°傾く)位置まで90°回転させると、光はほとんど完全に消光される。

このように、第二の鏡対を回転させるだけで、太陽像の輝度を任意の程度まで落とすことができるのであり、その際、色調はまったく変化しない。偏光接眼装置の典型的な形は、図129に示したものに似ている。ここで t₂ は偏光用鏡 a, b を収めた箱であり、望遠鏡引き出し筒に取り付けられるが、構造上の理由から、その軸とは偏心している。t₁ は「解析」用鏡 c, d を収めた回転箱であり、接眼レンズ a はこれとともに回転する。

プリズムを用いる場合もあり、その際は図126に示したようなヘルシェルプリズムを向かい合わせに配置し、熱の大部分を取り除く構成になる。そうでない場合は、逆反射を避けるため、鏡面すべてを黒ガラスで作る。より単純な構成では、偏光子(polarizer)および検光子(analyser)として単一の鏡だけを用いることもあり、実際、同じ原理に基づいた多くの変形が考案されている。

〔図129――偏光太陽接眼装置。〕

いかなる種類の太陽用接眼装置においても、直径1/64インチ程度から始まる小孔をもつ一連の小絞りを用意しておくと便利である。これらは注目している領域外の太陽面からの全体的なまぶしさ(グレア)を抑えるのに役立つ。これらの小絞りは、通常の接眼レンズの絞りの上に載せてもよいし、古い写真レンズに使われていたような回転式絞り盤に組み込んでおくと便利である。

天体の位置や距離を測定するためには、さまざまな形式のマイクロメータ(測微計)という重要な補助装置が多数開発されてきた。もっとも単純なものは、ほとんど説明を要しない。これは、ポジティブ接眼レンズの焦点面に挿入される平行平板ガラスから成り、その表面には、等間隔の方眼網がエッチングされている。これによって、格子状マイクロメータ(reticulated micrometer)が形成され、二つの天体間の距離を、おおよその格子数として見積もることができる。

この種のマイクロメータは、既知の角距離をもつ恒星対を測ったり、あるいは赤道付近の星が格子線に平行に視野を横切るのに要する時間を測ったりすることで、容易に較正することができる。これはあくまで実用的な近似値を与えるにとどまり、精密な測定は、より高精度の器械に委ねなければならない。

〔図130――リング・マイクロメータの略図。〕

Fraunhofer が考案したリング・マイクロメータは、位置測定用として便利で広く用いられている。これは図130に示すように、薄い鋼板で正確に旋削された不透明な環 R から成り、平行平板ガラスにセメント固定するか、接眼レンズの視野中央に懸架される。環の外径は通常、接眼視野の幅の1/2〜2/3程度であり、星の出入り(進入・離脱)のタイミングをとりやすいよう、適度な幅の環状部分(リング)を持つ。

このマイクロメータは、固定された望遠鏡の視野を、星が自転に伴って漂っていく間に横切る時間を測定することによって、すべての仕事を「時間」の測定に依存している。正確を期すには、時計またはクロノメータと電信音発信器(サウンダー)を併用するのが望ましいが、差だけを問題とするのであれば、二つのストップウォッチでもかなりよい結果を得ることができる。

その使用法についての詳細は、Loomis の “Practical Astronomy” を参照されたい。この書は、天体観測にいささかでも興味のある人ならば、誰もが蔵書として備えておくべきものである。ここでは、ごく簡単に述べるにとどめるが、リング・マイクロメータは非常に扱いやすく、その観測結果の計算もきわめて簡単である。図130で F は視野の縁、R はリング、a b および a′b′ は、それぞれ星 s および s′ の軌跡を示している。前者 s は視野中央寄り、後者 s′ はちょうどリングの内縁に入ったところである。必要なデータは、それぞれの星がリングを横切るのに要した時間と、リングの角半径 r であり、これらから両星の赤経差、または赤緯差を求めることができる〔20〕。

〔20〕 リングの角半径 r は次式で与えられる。
r = (15/2) (t′−t) cos Dec.
ここで t′−t は、星がリングを横切るのに要した秒数である。

赤経差は、
Difference of R.A. = ½ (t′−t) ½ (T′−T)

ここで (T′−T) は第二の星がリングを横切るのに要する時間である。赤緯差を得るには、少なくとも一方の星の赤緯がある程度既知である必要があり、他方はリング内での相対位置などから概略を推定する。この粗い値を用いて次のように進める。

x = ∠aob、x′ = ∠a′o′b′ とおく。
また、d = 星 s の(近似)赤緯、d′ = 星 s′ の(近似)赤緯とする。

すると、
sin x = (15/2r) cos d (T′−T)
sin x′ = (15/2r) cos d′ (t′−t)

最後に、両星がリング中心の同じ側にあるとき、赤緯差は

Difference of Dec. = r (cos x′ − cos x)

反対側にあるときには

Difference of Dec. = r (cos x′ + cos x)

となる。

また、時折用いられるものとして「スクエア・バー・マイクロメータ」がある。これは、日周運動の方向に対して対角線を持つ不透明な正方形板であり、基本的にはリング・マイクロメータと同様の方法で使用され、結果の計算もほぼ同じである。この器械にはいくつかの利点があるが、精密な製作が非常に困難であること、また有利に使用するには、望遠鏡がよく調整された赤道儀架台に載っている必要があることから、ほとんど普及していない〔21〕。これに対し、リング・マイクロメータは、しっかりした架台であれば型式を問わずまずまずの性能を発揮し、視野照明も不要で、常に安定した調整状態を保つことができる。

〔21〕 この器械の詳細な議論については、Chandler, Mem. Amer. Acad. Arts & Sci. 1885, p.158 を参照。

さらに別のタイプのマイクロメータとして、「ダブルイメージ・マイクロメータ」がある。これは、駆動時計を必要とせず使用できる型である。通常の形式では、レンズを直径に沿って二つに切り、その半分を切断面に沿ってわずかに平行移動させると、視野内のすべての物体が二重像になって見える、という原理にもとづいている。レンズの各半分が、それぞれ独自の像集合を結ぶからである。

逆に、同一視野内にある二つの天体を選び、それらの像がぴったり重なるまでレンズ半分をスライドさせれば、その移動量が、両天体間の角距離を表すことになる。このように分割して用いることのできるレンズは、対物レンズから接眼レンズに至るまで、光学系中のどの位置にあってもよい。図131は、Browning がかなり以前に考案した、ごく単純なダブルイメージ・マイクロメータを示している。ここで分割されているレンズは、いわゆるバローレンズ(Barlow lens)であり、弱いアクロマティック負レンズである。これは、望遠鏡の焦点距離を伸ばし、したがって倍率を変えるために、テレフォトレンズのように用いられることがある。

このレンズ A の二つの半分は、ダブルねじ式マイクロメータスクリュー B によって広く引き離されており、このねじを回すことで、両半分は対称的に出入りする。接眼レンズ本体は C に示されている。

ダブルイメージ・マイクロメータは、現在では主として歴史的な意味合いを持つだけであるが、その原理自体はヘリオメータ(heliometer)に受け継がれている。ヘリオメータは、対物レンズを二つに分割し、きわめて精巧なスライド機構を備えた望遠鏡であり、フィラールマイクロメータでは実用範囲を超えるほど離れた二天体――たとえば1.5度、あるいはそれ以上――の距離を直接測微するための特別な器械である。

ヘリオメータによる観測はかなり労作的であり、複雑な補正を要するが、きわめて高精度が得られる(詳しくは、Sir David Gill の “Heliometer” に関する Encyclopaedia Britannica 第11版の記事参照)。もっとも、今日では天体写真と、その乾板上のマイクロメータ測定が発達したおかげで、数分角を越える距離について目視測定を行う必要は、ほぼなくなりつつある。したがって、将来ふたたび大型ヘリオメータが建造されるかどうかは、やや疑わしいところである。

〔図132――フィラール・マイクロメータ(糸状測微計)。〕

天文学者にとって真の「精密武器」といえるのは、フィラール・マイクロメータ(糸状マイクロメータ)である。その骨格は図132に示されており、ここでは接眼レンズとそれを支える板が取り外され、機構部がよく見えるようになっている。フィラール・マイクロメータは、主フレーム aa と、それに沿ってスライドする台 bb から成る。bb は、スクリューと円形のつまみ B によって移動する。スライド bb には、垂直方向の蜘蛛の糸 mm と、通常1本以上の水平蜘蛛糸が張られている。糸 mm は、マイクロメータにおける「固定糸」と呼ばれ、本質的には望遠鏡を動かさなくて済むように、便宜的に可動にしてあるだけである。

bb 上にはさらに、別のスライド cc があり、そこには可動蜘蛛糸 nn と、「櫛」(comb)が取り付けられている。櫛は、マイクロメータスクリュー C の全回転数――すなわち、固定糸 mm を基準とした可動糸 nn の移動量――を記録する。接眼レンズは、最適な位置に調整するため、cc 上に独立のスライド機構を持つ場合もある。

使用時には、一方の星をつまみ B を操作して固定糸 mm の上に合わせ、ついでスクリュー C を回して、可動糸 nn が他方の星を二分する位置に来るまで動かす。そして、C の全回転数と目盛ヘッドで読まれる分数回転を読み取り、あらかじめ求めておいたマイクロメータ係数――通常は、ほぼ赤道上の星が水平糸に沿って mm, nn を一定間隔だけ離した位置で通過するのに要する時間から求める――を用いて、角度に換算する。

(このとき、一回転あたりの角秒値 r は、
r = (15 (t′−t) cos d) / N
で与えられる。ここで N は mm と nn の間の回転数、t と d は前出と同様の意味を持つ。)

一般に、スライド全体は目盛円に取り付けられており、固定水平糸が円の直径方向になるように配置される。すると、マイクロメータ全体を回転させて水平糸が比較対象二天体を結ぶようにすれば、その位置角(position angle)を、目盛円に対して読みとることができる。この角度は、北から東回りに0°〜360°で表すのが慣例である。

〔図133――位置測定用フィラール・マイクロメータ。〕

図133は、ローウェル天文台の24インチ赤道儀用に、Clark 社が製作したフィラール・マイクロメータを示している。ここで A は主スクリューのヘッドであり、全回転数は、図132の「櫛」に代わって、カウンター H によって記録される。B は固定糸系の移動スクリュー、C は位置角円のクランプねじ、D はその微動用歯車、E は接眼レンズ位置調整用ラック、F は位置角円読み取り用の拡大鏡、G は蜘蛛糸照明用の小型電球である。構成部品は図132の略図とほぼ一対一に対応しているが、この器械のほうが、はるかに優美な設計であり、また幸いにも、かつて広く用いられていた油ランプから解放されている。小さな電球と反射板によって、ごく弱い光が蜘蛛糸に当てられ、線がはっきり見える程度の明るさを与える。また、場合によっては、視野全体にうっすらと光を広げ、その中に蜘蛛糸を暗く浮かび上がらせる方法もとられる。

通常、どちらの照明方式も選択でき、必要に応じて輝度を調整できる。フィラール・マイクロメータは、小型望遠鏡にはめったに用いられない。というのも、これを使って楽に観測を行うには、望遠鏡が恒久的に設置され、かつ駆動時計を備えている必要があるからである。初期の観測者の中には、これらの補助なしで良い仕事を成し遂げた人々もいるが、それには膨大な手間と時間がかかった。

実際、駆動時計(driving clock)は、単なる眼視観測以外の用途に望遠鏡を使う場合、きわめて重要な付属装置である。もっとも、単純な視覚観測に限るのであれば、赤経方向に滑らかな緩速運動さえあれば十分ではある。時計装置そのものは、時計学的見地からいえば非常に単純である。基本的には、おもり(あるいはゼンマイ)で駆動されるドラム A と、それに単純な歯車列で連動したウォームギアとから成り、このウォームが極軸に取り付けられた精密歯車を回す。一方、機構が暴走しないよう、高速回転するフライボール・ガバナ(遠心調速機)が、歯車列を増速する形で接続されており、速度がわずかに過大になったときに摩擦を加えて、装置全体を規定の速度に抑えている。通常の意味での振り子(ペンデュラム)は存在せず、等時性は、駆動側とガバナ側の摩擦を合わせた「総摩擦」の均一さに依存している。

図134は、Warner & Swasey 社による、ごく単純かつ典型的な駆動時計を示している。ここで A は主ドラムであり、その巻き上げ用ギアが B に見える。C は傾斜歯車(ベベルギア)であり、A に取り付けられた別のベベルギアから駆動され、ウォーム軸 D を回す役目をする。E はギア列によって回転するフライボールで、摩擦円板 F を持つ軸を、一定以上の回転数で持ち上げ、固定側円板に押し付ける。固定円板の位置はネジ G によって調整される。

フライボールは、その有効位置をわずかに変えることで、微調整ができる。ここに示したような単純な時計は、摩擦機構の細部が少しずつ違う多くのバリエーションを持っているが、いずれもきわめて高い精度を発揮することが可能である。ただし、そのためには、望遠鏡を駆動する際の負荷を軽く保たねばならない。

大型で重量のある望遠鏡、とくに写真観測のように高い精度が要求される用途では、駆動摩擦の変動を、ガバナ自身の摩擦だけで補償できる範囲に抑えることが難しくなる。このような場合には、多くの場合、フライボールを「中継器」として用い、電気制御式ブレーキに作用させる構成、あるいは電動機を駆動源とし、そのモーターの速度を連続的、あるいは間欠的に制御する方式が採られる。このような高精度用途では、時計装置を補う目的で、独立した手動ガイド装置が用意される。最小クラスの赤道儀――口径3〜4インチ程度――では、ゼンマイ式の駆動時計が使われることもある。動作原理は、普通の重力式時計とほぼ同じであり、負荷がさほど大きくない場合には、十分に良好な精度を発揮し、実用的にきわめて役立つ。

〔図134――典型的な駆動時計。(Clarendon Press の厚意による。)〕

ゼンマイ式の単純な駆動時計の優れた例を、図136に Zeiss 社製のものとして示す。1 が巻き上げ機構、2 が摩擦ガバナ、3 が調整機構である。ここでは、フライボール自身が摩擦突起(friction studs)を持っており、これはほぼ一世紀前の Fraunhofer の構造に類似している。円錐型の摩擦面の高さを調整すれば、調速はきわめて簡単かつ迅速に行うことができる。

より重い負荷には、同じメーカーは通常、四つのフライボールと電気式秒単位制御を備えた強力なおもり駆動式歯車列を用い、場合によっては、赤経方向の微速微動のために電動モーターを付加している。

〔図135――Clark 社の駆動時計。〕

図135は、これと似た形式を持つ、Clark 社製のかなり強力な駆動時計である。機構の細部、特に摩擦機構は少し異なっており、ここでは軸側円板が、きわめて繊細に調整されたラッチによって持ち上げられ、必要な時間だけ固定円板に接触して、速度調整を行う方式になっている。これほど単純な構造の時計装置が、経験の示すようにきわめて良好な性能を発揮するという事実は、実に驚くべきことである。中には、音楽レコード用プレーヤー(蓄音機)の駆動装置のように、空気抵抗式の羽根(エアファン)に調速を依存した設計もあるが、軽負荷ではそこそこ成功したものの、赤道儀の駆動にはあまり歓迎されなかった。

第二の系統として優れた例が、Sir David Gill による振り子制御式駆動時計である。この装置は、通常のフライボール・ガバナを備えた強力なおもり駆動式歯車列を持つが、その摩擦機構は、図137に示すように、接点を持つ秒振り子によって制御されている。一対の軽い皮革先端棒がそれぞれ電磁石によって動かされ、ガバナ軸に取り付けられた補助ブレーキ円板に作用する。円板の回転が速すぎる場合は、一方の制動棒の圧力を電磁石で弱めて速度を上げ、逆に遅すぎる場合は、他方の棒の圧力を強めて速度を落とす。

〔図136――ゼンマイ式駆動時計。〕

図137は、Gill の原論文(M. N., 1873年11月号)からとった略図であり、その非常に巧妙な選択制御機構を示している。P には接点付き秒振り子が吊されており、Q のピンによって、水銀の小滴 R と瞬間的な接触を行う。時計の一つの軸には、毎秒一回転するスピンドルがあり、その上にはバルカナイト(硬質ゴム)製ディスク γ, δ, ε, σ が取り付けられている。この円板の縁には銀製の輪があり、γ, δ, ε, σ の位置に長さ3°の象牙製スペーサーによる絶縁部が設けられている。円板の両側には、周縁が完全に銀で覆われた、より小さな円板が一枚ずつあり、一方 ηθ はばね接点 V に、もう一方 η′θ′ は接点 U に接続されている。また、三枚目の接点 K が主円板の大きな縁に触れている。

γ, σ および δ, ε の二組のセグメントは、それぞれ ηθ および η′θ′ に接続されている。いま、図の矢印方向に円板が回転しているとしよう。K がちょうど絶縁箇所の一つの上にあるときに、振り子が接点を閉じて電池 C Z を回路に投入しても、何も起こらない。もし円板の回転が振り子より進んでいれば、K は図に示されたように γ の上ではなく、セグメント γσ のどこかに乗っており、そのとき電流は ηθ を経て V に至り、対応する制動電磁石を作動させる。

〔図137――Sir David Gill の電気制御。〕

逆に、円板の回転が振り子より遅れていれば、K はセグメント γδ に接触し、電流は η′θ′ および U を経て別のリレーを動かし、もう一方の制動電磁石を働かせて、時計を加速させる。第四の円板(図示せず)が同じスピンドルに取り付けられており、その縁には、γ および ε に対応する位置にだけ金属接点があり、K と同様の接点ばねを持つ。円板が進みも遅れもしない状態で振り子が接点を閉じると、電流はこの第四の円板を通って流れ、リレーを「中立位置」にセットしておき、必要時にすぐ反応できるようにする。

この時計は、多くの同類装置に先駆ける「振り子制御・電気ブレーキ付駆動時計」の典型であり、その動作はきわめて精巧であることが証明された。ただ、この種の装置は多少高価であり、構造も複雑である。

近年の大きな傾向として、特に大型望遠鏡の駆動装置では、駆動源として電動機を用い、その速度制御だけを時計機構に担わせる方式が採られている。これによって、最も単純なタイプの駆動時計――敏感なフライボール・ガバナだけで制御される純機械式装置――を出発点とし、第二段階として、時計ペンデュラムによる精密な規制を受ける駆動時計(図137のように電気的、あるいは機械的に制御する)を経て、最終的には、モーターで直接赤経軸を回し、そのモーターの速度を時計によって制御する、という形に至る。

この最後の形式の優れた例が、Gerrish による駆動装置であり、ハーバード天文台の各観測所にあるほとんどすべての望遠鏡に用いられている。これは、とくに要求の厳しい天体写真の作業においても、きわめて成功している。この装置の概略は図138に示してある。ここで1は電動モーターを示し、これが減速ギアによって望遠鏡の赤経軸を、ほぼ正しい角速度で回すようになっている。電源はバッテリーからでもよいし、実際には、利用可能な商用電源からでもよい。このモーターは110ボルトで動作し、その電流は、低電圧時計回路を通る電磁石3によって制御されるスイッチ2を経て供給される。時計回路は、二つの点で開閉できる。一つは秒振り子5によって制御される接点、もう一つは、モーターに連動して1秒に一回転するタイミングホイール7に取り付けられたスタッドによる接点である。また、振り子側の開閉部を迂回するショントがあり、それは電磁スイッチ6によって閉じられる。このスイッチ6は、ロッド4によってスイッチ2と機械的に連結されており、両者は同時に開閉する。

制御の働きは次のようになる。まず、モーターが停止している状態で時計回路の主電源を投入する。このとき、2および6は開、7は閉である。振り子が最初に接点を閉じると、2および6が閉じ、5を含むループをショートする形で電流が流れ続け、モーターが回り始めてタイミング接点が切れるまで、2は閉じたままになる。小さなフライホイールは、その後も惰性で回転を続け、再び振り子が接点を閉じると、ふたたび2と6が閉じ、タイマーが1回転を終えて回路を切るまで、モーターに電力が供給される。このプロセスは、モーターの回転が規定速度に達するまで続き、その間、タイマーの回転が加速するほど、電力供給の持続時間(オン時間)は短くなる。

最終的に、モーターが一定の速度に達すると、その速度に対応するだけの「わずかな時間」だけ電力が供給されることで、均一な回転が維持される。もし何らかの理由でモーターが速度超過しようとすると、タイマーによる遮断が早くなり、逆に速度が低下すれば、電力供給時間が長くなって、元の速度に引き戻される。電力供給期間は、通常1/4〜1/2秒程度である。この例においても、モーターに供給される電力は非常に小さく、110ボルトで1アンペア程度にすぎない。

〔図138――Gerrish による電気制御の略図。〕

したがって、1回転のうちどれだけの角度にわたってモーターに電流が供給されるかは、時計の振り子によって厳密に決定されている。そして、モーター自体は、この振り子の周期にちょうど合うように選ばれており、振り子は回路開閉以外には何の仕事もしないため、非常に正確な時間を保つよう調整することができる。モーター軸には小さなフライホイール9が取り付けられており、その重量は、駆動される全体の仕事量に合わせて慎重に調整されている。このフライホイールは、制御が働いている間のモーターの動作を効果的に安定させる。Gerrish 型駆動装置は、適用される望遠鏡に応じて細部がさまざまに変えられているが、その基本原理は常に同じである。

〔図139――24インチ反射望遠鏡に搭載された Gerrish 駆動装置。〕

この駆動方式の適用例として非常に優れているのが、図139に示したハーバード天文台の24インチ反射望遠鏡である。架台は巨大なオープンフォークであり、その右側にモーター駆動装置が見える。ここには二つのモーターがあり、いずれも一般的な扇風機用モーター程度の大きさである。右側のモーターはフライホイールを持ち、前述の振り子制御のもとで一定速度で回転を続ける。もう一つのモーターは、駆動モーターと同じ差動ギアに接続されており、専ら観測者が赤経速度を微妙に速めたり遅めたりするための独立調整用として用いられる。

ここに述べた駆動時計の例は、さまざまな用途――軽負荷から重負荷まで――で成功を収めている代表的なものである。実際には、ここで示した一般的な構成に基づきながら、細部が異なる時計装置がほとんど無数に存在すると言ってよい。あまりに多くのバリエーションがあるので、「他とまったく同じではない駆動時計」を見つけるほうが容易である、というくらいである。

現在の傾向としては、大型望遠鏡に関しては、赤経軸を直接モーターで駆動し、種々の方式で、実際の時計ペンデュラムによってそのモーター速度を制御する方式が、明らかに主流となりつつある。小型望遠鏡では、古典的な機械式駆動時計――多くの場合、電気ブレーキや、時には振り子制御を併用したもの――でも、きわめて良好な精度を得ることができる。

分光器(スペクトロスコープ)の原理は、ごく基本的には、「プリズムによる白色光の虹色への分解」というおなじみの現象に帰着する。大きな厚紙に細いスリットを開け、腕を伸ばした位置に保持し、そのスリットを、スリットの縁に平行な辺を持つプリズム越しに見ると、この現象を簡単に観察できる。もし光が白色光ではなく、いくつかの特定波長の混合光であれば、各波長の光はそれぞれ独立したスリット像を形成し、それらが連続して重なり合って「帯状のスペクトル」となって見える。

太陽を光源とすると、この連続スペクトルには Fraunhofer が最初に図示した暗線が多数走る。これは、内部の高温層が発するスペクトル線が、外層の比較的低温な層によって吸収される結果であり、その吸収線の位置と同じ場所に、対応する物質の輝線スペクトルが現れる。

天文分光器の実際の構造は、その用途によって大きく変化する。太陽観測では、遠くのスリットを近くに持ってくる目的で、スリットをプリズムに向けた小型対物レンズ(コリメータ)の焦点に置き、そのスペクトルを中倍率の望遠鏡で観察して、細部まで見えるようにする。また、太陽光は非常に明るいため、たくさんのプリズムを用いて非常に大きな分散が得られる。このような太陽スペクトルは、スリットの長さに相当する十分な幅と、極めて大きな長さを持つ。

恒星スペクトルを得ようとするときには、光源は点であり、きわめて狭いスリットのごく小さな一部と等価である。したがって、実際にはスリットを設ける必要はあまりなく、主な問題は、スペクトルを「十分な幅」と「十分な明るさ」で観察できるようにすることである。

小型望遠鏡で最も簡単かつ一般的な形式は、図140に示すような「接眼分光器」(ocular spectroscope)である。これは望遠鏡の接眼筒に差し込んで用いる器械であり、Browning 社(ロンドン)が製作した McClean 型は、ねじ込みカラー B を持つ通常の筐体、その内部に配置された円筒レンズ C、直視プリズム(direct-vision prism)c–f–c、そして接眼キャップ A から構成される。

使用にあたっては、まず通常の接眼レンズと同様に、引き出し筒を星像に正確にピントを合わせる。こうして得た星像に、円筒レンズ C を通じてほぼ平行光としてプリズム面に光束を入射させると、プリズムで分散された後、そのまま眼に届く。このプリズムは、非常に高分散な密フリントガラス製の大角プリズム f と、その両側に接合された二つの軽クラウンガラス製プリズム c, c から成る。c, c の底面は f の底面と反対方向を向くように配置されている。

すでに見たように、ガラスの屈折率の違いに比べ、分散の違いははるかに大きい。したがって、材料と角度の組み合わせを適切に選べば、f の屈折による光の「曲げ」は、ある特定波長帯に関しては c, c によってほぼ完全に相殺される一方、その分散作用は c, c の分散を大きく上回り、かなり長いスペクトルを得ることができる。

円筒レンズ C は、微小な円形の星像を短い直線像に引き延ばし、得られるスペクトルに、快適に観察できるだけの「幅」を与えるためだけに用いられる。弱い円筒レンズは、プリズムの前に配置する代わりに、しばしばプリズムの眼側に差し込んで、所要のスペクトル幅を与える。

この種の小型分光器を、口径3〜5インチの望遠鏡と組み合わせて用いれば、2〜3等星以上の恒星スペクトルや、比較的明るい彗星・星雲などのスペクトルを、かなりよく観察できる。スペクトルの見やすさは、その種類によって大きく変化し、太くて幅広い吸収帯を持つスペクトルは観察しやすいが、同じ等級の星であっても、細い線が多数あるスペクトルは、観測がまったく困難な場合もある。それでも、このような接眼分光器を一つ持っていれば、観測するだけの価値が十分にある現象を、多数目にすることができる。

〔図140――McClean 接眼分光器。〕

口径6〜8インチ程度のやや大きな望遠鏡では、より大きな集光力を活かし、スリットを持つ分光器を用いることができる。スリット付き分光器は、スペクトルをややシャープにし、またその位置を測定することも可能にする。

その優れた形式として、Abbé 教授による図141の装置がある。この構造は、基本的には図140と類似している。接眼レンズは Huygens 型であり、その絞り面にあたる位置 A に、つまみで開度を調整できるスリット機構が設けられている。したがって、このスリットは眼レンズの焦点位置にあり、眼レンズがコリメータレンズとして働く。上部には、通常の直視プリズム系 J があり、プリズム群はネジ P とバネ Q によって横方向に微調整できる。

N の位置には、ごく小さな透過型の波長目盛(スケール)があり、O の鏡で反射された弱い光によって照明されている。小レンズ R は、このスケール像を、プリズム前面で反射させて視野に重ねる位置へ写し出し、スペクトルの縁に沿って並行して見えるようにする。したがって、観測者は、スペクトルを一望しながら、その各部分がどの波長に相当するかを、明るい線として読みとることができる。

〔図141――Abbé 接眼分光器。〕

ピボット K とクランプ L によって、分光器全体を側方へスイングできるので、まずスリットを広く開いた状態で接眼部から直接のぞきこみ、星像の位置を確かめてから、スリットを正確にその上に閉じ、最後にプリズムを視線内に戻す、という操作が可能である。M は位置角のクランプである。しばしば、比較プリズムが付加され、ガスや金属のスペクトルを、星のスペクトルのすぐ隣に同時に出せるように工夫されることもあるが、こうした高度な機能は、一般により高分散の大型器械に譲られている。

図141で見た「スイングアウト」機構による利点――すなわち、星を視野中央に正確に導入してから分光モードに切り替えられる点――を、小型の接眼分光器(図140)でも得るために、普通の接眼レンズと分光器とを顕微鏡の二連鏡筒(ダブルノーズピース)のような装置に取り付け、どちらか一方を瞬時に選べるようにしていることもある。

実際、どんな一般的なポケット分光器でも、スリット付き・なしにかかわらず、スリットの一部に比較プリズムや波長スケールを組み込んだものでも、適当なアダプタを介して望遠鏡接眼部に取り付けることができる。星像をスリット上に正確に結像させたうえで、必要であれば円筒レンズを接眼キャップとして付けてスペクトル幅を広げればよい。

この種のスリット分光器を用いれば、恒星スペクトルの概略特性や、比較的明るい星雲・彗星のスペクトルを容易につかむことができる。代表的なスペクトル線を同定し、それを地上の光源(ガスや金属蒸気のスペクトル)と比較することも可能である。太陽観測を除けば、アマチュア観測者にとって必要となるのは、この程度の装置でほとんど足りると言ってよい。

しかし、本格的な研究を行おうとすれば、これよりずっと大がかりな装置と、大口径望遠鏡、そして分光写真撮影のための設備が必要になる。長時間露光により、目視では同じ口径では決して見えないほどの暗いスペクトルも記録できるようになり、露出時間はしばしば多時間に及ぶ。

こうした用途の分光器では、通常、屈折角約60°、屈折率1.65程度の密フリントガラス製プリズムを、1〜3個まで組み合わせて用いる。Brashear 社による優れた例が図142であり、ローウェル天文台の24インチ屈折望遠鏡に取り付けられた視覚観測用分光器の姿を示している。ここで A はスリットボックス、B はプリズム箱、C は観測用望遠鏡(観測筒)、D は糸照明用電球を内蔵したマイクロメータ接眼部、E はコリメータと観測筒に対し、プリズム面を常に二等分するように保つためのリンク機構である。スペクトルのどの部分を観測するにも、コリメータと観測筒で挟み込むようにプリズム箱の角度を変える必要があるが、この際、プリズム面を両者に対して一定角度に保つことで、常に最良の解像力が得られる。

写真撮影を行う場合には、観測筒 C を取り外し、その代わりに写真レンズとカメラを装着する。対象が十分明るければ、プリズムを三個用いてビームを180°折り返し、スリットと同じフレーム上に取り付けたカメラに収めることもある。

純粋に写真用としては、Fraunhofer が初期の恒星スペクトル観測に用いた「対物プリズム(objective prism)」が広く使われている。これは、対物レンズの前面に取り付けられたプリズムであり、その屈折面が、望遠鏡光軸と観測領域とに対し、それぞれ等しい角度をなすように配置される。最大の利点は、光損失がきわめて小さいこと、そして複数のスペクトルを同時に撮影できることである。視野内のすべての星は、その像をスペクトルとして引き伸ばして乾板上に記録することになる。

〔図142――典型的な恒星分光器。〕

図143は、アストログラフ用対物レンズの前に取り付けられた対物プリズムを示している。プリズムは対物の光軸まわりにどの方位にも回転できるようになっており、スケール i とクランプねじ r によって、その屈折面と光軸との角度を調整して、スペクトルのどの部分を撮影するにも最良の位置を選べるようになっている。このような構成は、口径3〜6インチ程度の小型望遠鏡で一般的である。

より大きな口径の望遠鏡では、通常、プリズムの角度はもっと小さくなり、もし光量が許すなら、複数のプリズムを直列に用いて高分散を得ることもある。対物プリズムは、ポートレートレンズ型の真の写真用対物レンズ――比較的大きな平坦視野を持つもの――と組み合わせたときに最も良く働く。この種の大口径装置を用いて、Harvard 天文台は、主として Arequipa 観測所にて、壮大な “Draper Catalogue” 用のスペクトルを取得してきた。対物プリズムによる撮影では、スペクトルを観察しやすい幅にするため、駆動時計の速度をごくわずかに変えて、赤経方向にごくゆっくりと漂わせる方法がとられる。プリズムの屈折縁が日周運動と平行になるように配置されているので、このわずかなドリフトによって、露光時間全体で数分角程度のスペクトルの幅が、均一に与えられる。

〔図143――簡単な対物プリズム。〕

太陽分光に入ると、状況はまったく変わる。恒星分光では、主な問題は「いかにして十分な光量を集めるか」であり、大口径・短焦点の望遠鏡と、比較的中程度の分散を持つ分光器の組み合わせが求められる。一方、太陽研究では光量は十分以上にあり、主眼は「詳細観察に足るだけ大きな像を作り、それに対して非常に大きな分散をかけること」にある。

これは特に、太陽円盤の縁を取り巻く彩層(クロモスフィア)の炎や、円盤上のプロミネンス(紅炎)を研究する際に重要である。これらを効果的に観察するには、視野内の迷光を最小限に抑えながら、きわめて大きな分散を得る必要がある。

図142のような分光器を用いて、もしスリットを広く開け、望遠鏡から外して外景に向ければ、分光器を通してプリズムで屈折された風景の像を見ることができる。望遠鏡越しに風景を見ると、それぞれの物体は、観測筒の波長設定に対応する色調で見えることになる。つまり、プリズムで屈折されても、風景像そのものは十分によく見えるのであり、分散を大きくすれば、その見えている像はほとんど単色になる。

さて、この分光器を再び望遠鏡につなぎ、太陽像の縁がスリットと接するように調整し、その状態からスリットを徐々に開いていくと、視野には太陽近傍の空の連続スペクトル――すなわち空からの散乱光――に、太陽縁からの特定波長光が重なったものが現れる。もし観測筒が水素の赤線(C 線)に合わせられていれば、開いたスリットを通じて、太陽縁の周囲を取り巻く水素ガスの光り輝く雲(プロミネンス)の像が、その背後にある空の光を背景として、はっきりと見えることになる。

もっともシャープに見るためには、この背景光を極力広い波長範囲に引き伸ばして「薄める」ほどの大きな分散が必要であり、その一方で視野内のその他の迷光を極力排除し、「開いたスリット」の部分だけを注視できるように制限する必要がある。

〔図144――Evershed 型太陽分光器の略図。〕

こうした目的を達成するため、初期の太陽分光器では、多数のプリズム――10数個にもなる――を直列に配置し、それらを図142に示したような連結機構で常に適切な方向関係に保つという設計がとられていた。詳しくは、40年前のほとんどの天文学書に、その構造図が掲載されている。これらは、分散を得る点では非常に有効であったが、解像力を改善するわけではなく、また多くの面で反射された迷光を除去することにもならなかった。

近年では、より簡潔な構造の装置が用いられるようになり、その優れた例の一つが、Evershed 氏の設計した分光器である。図144はその略図である。ここでは、スリットから出た光は、まずコリメータ対物レンズを通り、ついで非常に強力な直視分散系を二回通過する。その間、反射鏡で一度折り返される。直視系一組で可視スペクトル全体にわたって約30°の分散が得られるので、二組を通すことで大きな分散と、比較的少ない反射面数とを両立させている。反射鏡は手動で回転して、スペクトルのさまざまな部分を視野に入れることができ、その回転は微動ねじで制御されるため、波長位置の精密測定も可能である。

このプリズム系には、反射面がわずか5面しかなく(接着面の反射はごく小さいので数えない)、同じ分散を持つ従来型の多プリズム装置の20面超と比較すると、大幅な迷光減少効果がある。また、他の直視プリズムと同様、得られるスペクトル線はほとんど直線であり、多数の単一プリズムを用いた場合のような強い湾曲は見られない。その結果、図145に示すような、軽量でコンパクト、かつ強力な太陽分光器となっている。この装置は、太陽縁のプロミネンス観測にも、太陽面自体の詳細なスペクトル解析にも、同じように適している。

〔図145――Evershed 型太陽分光器。〕

現在製作されている多くの太陽分光器では、プリズムの代わりに回折格子(diffraction grating)が用いられている。Fraunhofer が最初に作った格子は、ワイヤー製であった。きわめて細かいねじ山を持つ2本のねじを、真鍮フレームの向かい合う二辺として取り付け、その上に極細のワイヤーを巻きつけ、一方側にハンダ付けし、反対側を切り落とすことで、平行ワイヤーと隙間から成る格子を得ていた。

今日では、格子は一般に、自動刻線機(ruling engine)によって研磨されたスペキュラムメタル(鏡面金属)板上に刻まれる。ダイヤモンドの先端が、非常に平滑で細い溝を互いに平行に刻んでいき、その密度は通常1インチあたり1万〜2万本である。溝と溝の間の平滑な部分が強く反射し、そこから回折スペクトルが生じる〔22〕。

〔22〕 回折スペクトルの原理については、Baly, “Spectroscopy”; Kayser, “Handbuch der Spektroskopie” または一般的な物理学の大部教科書を参照。

プリズムの代わりに格子を用いる場合、装置全体は通常、図146に示すように構成される。ここで A はスリット付きコリメータであり、太陽像からの光はここに入射する。B は観測用望遠鏡、C は回転台に取り付けられた格子であり、微動ねじ付きの接線スクリューによって、接眼レンズの十字線に任意のスペクトル線を正確に合わせることができる。

〔図146――格子分光器の略図。〕

格子は、スリットの両側に複数のスペクトル像を生じる。これらはスリットに対し紫側が近く、赤側が遠くなる方向に現れ、スペクトル線の偏向角は波長 λ の1倍、2倍、3倍、4倍……に比例して増大する。そのため、一次スペクトルの極端な赤端と、二次スペクトルの紫外端とが重なりあうなど、さまざまな次数のスペクトルが互いに重ね合わさる。スリットや接眼レンズ前に有色フィルタを置いて、不要な重なりスペクトルを除いて観測する。

格子分光器は、利用できる分散範囲が非常に広く、また同じ分散を持つプリズム列に比べ、迷光が少ないという大きな利点がある。さらに、得られるスペクトルは、ほぼ「正規スペクトル(normal spectrum)」であり、各スペクトル線の位置が波長 λ にほぼ比例する。これに対し、プリズムスペクトルでは、青や紫側が過度に引き延ばされる。

格子分光器で太陽プロミネンスを観察するとき、スリットをやや広く開くと、プロミネンス像は圧縮されるか、あるいは引き延ばされ、その見かけの高さは格子の向きによって異なるが、この効果は簡単に計算できる〔23〕。

〔23〕 プロミネンスの実際の高さ h と、見かけの高さ h′ の関係は、
h = h′ sin c / sin t

で与えられる。ここで c は格子面がコリメータと成す角、t は格子面と観測望遠鏡との成す角であり(図146参照)、h は真の高さ、h′ は見かけの高さである。

スリットをほとんど閉じると、プロミネンスは細い線として見え、その明るさはプロミネンス自体の形状に応じて不規則に変化する。スリットをわずかに太陽像に対して上下・左右にずらせば、同じ単色光のもとで、別の断面におけるプロミネンスの輪郭が現れる。

これらの単純な現象は、太陽研究において最も重要な器械の一つである「スペクトル・ヘリオグラフ(spectro-heliograph)」の基礎をなしている。この装置は、約30年前に G. E. Hale と Deslandres によってほぼ同時に発明され、単色光による太陽写真撮影を可能にした。これにより、太陽縁のプロミネンスだけでなく、太陽面全体に散在する輝くガス塊の分布が写し出される。

この器械の原理は非常に単純である。まず、強力な格子分光器のコリメータに、太陽像の直径全長に相当するスリットを設け、このスリットを、ボールベアリング付きスライドで太陽面全体を横切る方向に滑らかに動かせるようにする。一方、撮影用カメラレンズの焦点面には、接眼レンズ前幕(フォーカルプレーンシャッター)に似た細いスリットを設け、乾板を少しずつ露光していく。この前面スリットと乾板側スリットとは、レバー機構やその他の方法で厳密に連動しており、両者は常に同じ速度、同じ位置関係で太陽像をなぞっていく。

したがって、正面のスリットが太陽縁上のプロミネンスからの単色光部分を通過させているときには、乾板側スリットもその位置に対応する位置を走査しており、プロミネンス像が単色光で乾板上に描かれる。前面スリットが太陽像中央を横切る位置に達すれば、乾板側スリットも太陽像中央に一致し、その一点ごとに単色像を露光する。格子の向きを変えれば、任意のスペクトル線を選択できるが、通常は写真感度が高く、太陽面全体に広く分布する輝く蒸気塊をよく示すカルシウムの K 線に設定されることが多い。

〔図147――Hale のスペクトル・ヘリオグラフ(初期形式)。〕

図147は、Hale 教授の初期型スペクトル・ヘリオグラフを示している。この図は、原理を非常によく表している。ここで A はスライド式スリットを持つコリメータ、B は撮影用望遠鏡で、その焦点面には対応するスライド式スリットがある。C はレバー機構であり、両スリットを完全に同期して移動させる。駆動源はコリメータと平行に取り付けられた、水圧シリンダーであり、その圧力はきわめて精密に調整されている。この結果、太陽全体が単色光で撮影され、その波長に対応する物質の輝く蒸気が、太陽面全体にどのように分布しているかが、明瞭に示される。

図147の装置は原理を示すには最適であるが、その後、多くの改良形式が考案され、とくに、現在用いられている大きな水平型・垂直型固定望遠鏡に適合させるための構成が工夫されている(詳細は Mt. Wilson Solar Observatory の出版物、Cont. Nos. 3, 4, 23 など参照)。こうした装置において、常に最大の困難は、二つの移動部を完全に滑らかかつ一様な速度で動かすことである。

変光星の研究は、天文学の中でも非常に大きく、興味深い分野であり、真剣な天体観測に用いるあらゆる望遠鏡には、何らかの形で光度計(フォトメータ)を備えておくべきである。Argelander の確立した系統的肉眼観測法によって、これまで大量の有用な成果が得られてきたが、その精度は、変光の微妙な特徴の多くを明らかにするには不十分である。

通常の「等級」(magnitudes)による明るさの表し方は、厳密な測定にはあまり向いていない。一等級の差は、光度比で対数 0.4、すなわちおよそ 2.512 倍に相当する。したがって、たとえば 9.9 等星と 10.0 等星の光度差は、1%ではなく約9%である。このため、微小な光度変化を正しく捉えるには、0.1等級よりはるかに細かい精度で測定できなければならない。

〔図148――二重像星光度計。〕

通常の実験室用光度計では、色の似通った光源同士であれば、明るさの差を0.1%以下の確率誤差で比較できる。しかしこれは、二つの光源からの照明が、隣り合った視野として同時に見えるという、きわめて有利な条件の下での話である。これに対して、星のような「点光源」を比較する場合には、たとえ互いにかなり近接していても、事情はずっと厳しくなる。

天文用光度計は、原理的に三つのクラスに分けることができる。(1)二つの実在の星を同一視野内に導入し、一方または双方の明るさを既知の割合で変化させて比較するもの。(2)実在の星像と人工星像を同一視野に並べ、一方の光度を既知の手段で変化させ、同じ人工星を通じて複数の星を比較するもの。(3)ある既定の手順で星光を完全に、あるいはちょうど消えるか消えないかまで減光し、その減光量を測るもの。それぞれのクラスには、さらに多くの変種が存在する。

第1クラスの代表例として挙げられるのが、故 E. C. Pickering 教授の「偏光光度計(polarizing photometer)」である。その光学的原理は図148に示される。ここでは、二つの隣接する天体からの光を、互いに90°異なる偏光方向に分離し、その後、解析用 Nicol プリズムを用いて、両者の像を等しい明るさに戻すように操作する。光度計そのものについての詳細は、H. A. Vol. II(Harvard Annals 第2巻)に、いくつかの他の偏光型光度計とともに詳しく述べられており、図148もそこから引用したものである。

A は、接眼レンズ B に挿入された Nicol プリズムであり、これが回転すると、目盛円 C がともに回転し、その角度は指標 D に対して読み取られる。E は望遠鏡の接眼部に差し込む筒であり、その中には石英製の二重像プリズム F が入っている。F は回転せずに、コード G を引くことで軸方向にスライドできる。比較したい二つの天体を同じ視野内に導入すると、それぞれの像は二重に見え、合計四つの像が現れる。解析 Nicol を回転させると、より明るい天体の暗いほうの像を、より暗い天体の明るいほうの像と等しい明るさにまで減光することができ、その回転角度が両者の光度比を測る尺度となる〔24〕。この光度計は、同一視野に比較対象を並べられる範囲では、非常によく働く。ただし、二重像プリズム F をスライドさせて像の間隔を多少調整できるとはいえ、普通の望遠鏡では利用できる範囲はせいぜい視野の数分の一度に限られる。

〔24〕 一方の光度を A、他方を B とし、一方の像が消失するときの目盛読みに対応する角を α、両像が等しい明るさのときの読みに対応する角を β とすれば、
A/B = tan²(α−β)
となる。Nicol の位置には、90°おきに4つの「等輝度位置」があり、通常はそれぞれで測定して平均値をとる(H. A. II, 1)。

このような視野の制限を避けるべく設計されたのが、「子午線光度計(meridian photometer)」である。光度測定部は、基本的には図148とほぼ同じ構造であり、比較対象となる二天体は、それぞれごく近い角度をなす二つの対物レンズを通して視野内に導入される。二つの対物レンズは、二重像プリズムを通した後、それぞれの像がほぼ重なるような角度に配置されている。各対物レンズ前には鏡が置かれ、本体は東西線の方向を向いている。鏡は光軸に対して45°傾いており、一方の鏡で北極星(Polaris)を視野に導入し、もう一方の鏡を望遠鏡軸まわりに回転させることで、子午線近傍の任意の星を北極星のそばに導入できる。あとは先ほどと同じように、図148と同じ方法で両者の像を比較する〔25〕。もちろん、両像を適切な位置に導くための調整機構も備えられている。

〔25〕 この装置および作業手順の詳細については、H. A. Vol. 14、および Miss Furness の優れた著書 “Introduction to the Study of Variable Stars” の p.122 以下を参照。H. A. Vol. 23 にはいくつかの改良形式が紹介されている。これらの直接比較型光度計は、小さな補正項を要する煩わしさはあるが、Harvard Photometry(ハーバード光度計画)では非常に多くの有益な結果をもたらしてきた。

人工星を媒介として実在の星を比較する第2クラスの光度計は、主として「人工星の光度を既知の方法で変化させる仕組み」の違いによって区別される。もっともよく知られているのは、図149に略図を示す Zöllner 光度計である。ここで A は望遠鏡の接眼端であり、その前に45°傾いた平行平板ガラス B が置かれ、側管 C からの光束を反射して望遠鏡の主光軸に導く。

側管 C の先端には、ごく小さな孔、あるいは複数の小孔を持つ絞り板 D があり、これが人工星の像を形成する。これより内側には、光源 D があり、従来はランプの炎、現在ではふつう小型白熱電球が用いられ、その前面はすりガラスや拡散板で覆われている。

側管 C の中には、三つの Nicol プリズム n, n₁, n₂ が配置されている。n は平行平板ガラス B と固定され、解析用(analyser)として機能する。n₁ と n₂ は一体となって回転し、偏光子(polarizer)系を構成している。n₁ と n₂ の間には、結晶軸に垂直に切り出された水晶板 e があり、偏光光がこの板を通過すると、その透過色は板の厚さと偏光方向によって大きく変化する。したがって、Nicol n₂ を回転させることで、人工星の色調を観察対象の星と一致させ、それから n₂, e, n₁ からなる三つ揃いの偏光子系全体を回転させて(その回転角は目盛円 F で読み取る)、人工星の明るさを実在の星と等しくできる。

〔図149――Zöllner 光度計の略図。〕

このとき、レンズ G を通して B の前面・背面両方からの反射像を見ると、視野内には人工星の像が二つ現れる。前面反射の像のほうが明るく、背面反射の像はやや暗い。実在の星は、この二つの像の間、あるいは脇に導入され、それらとの比較が行われる。偏光子をある角度 α だけ回転させれば、人工星の二つの像の一方を、実在の星の明るさと一致させることができる。同様の比較を別の基準星で行えば、両星の光度比は次式で与えられる。

A/B = sin²α / sin²β

ここで A と B はそれぞれ二つの星の明るさ、α と β は、それぞれの星を比較したときの偏光子の回転角である。

Zöllner 光度計は、当初は小型対物レンズを持つ高度方位式装置として構成され、高度方向にチューブ C を軸として回転する仕組みになっていた。現在では、不便な炎ランプに代わって電球が使用されるようになり、多くの場合、赤道儀の接眼部に直接取り付けられている。

Zöllner 光度計とよく似ているが、明るさの変化方法が異なるものとして、「楔(ウェッジ)光度計(wedge photometer)」がある。これは故 E. C. Pickering 教授によって発案されたもので、その略図を図150に示す。ここでも O は望遠鏡の接眼端、B は平行平板反射器、C は側管、L は光源、D は絞り、A は人工星像を形成するレンズであり、D の小孔を望遠鏡の焦点位置に投影する。通常、この小孔の直径は1/100インチ以下である。

〔図150――楔(ウェッジ)光度計。〕

W は光度変化装置であり、「写真用ウェッジ(photographic wedge)」がフレームに取り付けられている。フレームの縁には目盛が刻まれ、ラック&ピニオン R によって、孔の前方を滑らせることができる。必要に応じて、色ガラスや減光フィルタも併用できる。「写真用ウェッジ」とは、微粒子感光板を一定方向に均一に変化する露光で感光させ、現像してから保護ガラスで封入したものである。その吸収特性は長期的にも安定しており、色選択性もほぼなく、透明度はわずかな濃度から完全な不透明まで、任意の勾配で作ることができる。場合によっては、中性濃度ガラス製の楔を代わりに用いることもある。

この種の「ウェッジ光度計」を使用する前には、必ずウェッジの透過特性を、既知の光度差を持つ実在または人工星によって正確に較正しなければならない。この作業には非常な注意が必要であり、Parkhurst による Ap. J. 13, 249 の論文に、装置とともに詳しく記述されている。なお、この種の光度計全般にとって最大の難点は、「実在の星像とできるだけ似た見かけと色を持つ人工星像を作り出すこと」にある。

もちろん、実在星・人工星どちらか一方、あるいは両方を、楔や Nicol によって減光する構成も考えられる。実際、Zöllner 光度計の有用な改良として、Shook による簡易型偏光光度計が Pop. Ast. 27, 595 に報告されており、その略図を図151に示す。ここで A は通常の接眼筒に差し込む筒、E は側管であり、その先端には延長筒 D があり、その外端 H にランプ管 G がはめ込まれる。G には、プラグ F 上に小型懐中電灯用電球が取り付けられており、乾電池2本で点灯する。O の位置には微小孔を穿った真鍮絞りがあり、その内側には拡散用ガラス板または紙がある。O のすぐ前には Nicol プリズムがあり、レンズ L が O の孔像を対物レンズの焦点面に結ぶ。その際、図149と同様に、平行平板ガラス M を介して光路を折り曲げる。I は普通の接眼レンズであり、その上には回転可能な Nicol N が置かれ、目盛円 K で角度が読み取れる。P の位置には第三の Nicol があり、実在星からの光束を偏光して、測定範囲を広げている。詳細および測定方法は原論文に譲るが、明らかに同じ構成を楔光度計にも応用でき、実在星・人工星いずれか、あるいは両方に楔を掛けることができる。

〔図151――簡易型偏光光度計。〕

第3のクラスの目視光度計は、観測星の光を「完全に消すか、ちょうど見えなくなる瀬戸際まで減光する」ことによって、その光度を測るものである。この方式は、およそ40年前に Oxford の Pritchard 教授によって盛んに用いられた。彼は濃色ガラスのスライディングウェッジを用い、その透過特性を入念に較正したうえで、星が消失する位置を記録することで、二つの星を比較した。写真用ウェッジも、まったく同じ方法で使用できる。

同様の原理に基づく別の方法として、「瞳孔絞り」や「猫の目(cat’s eye)」――望遠鏡の有効口径を徐々に絞れるアイリス絞りなど――を用い、星が完全に見えなくなるか、あるいはほとんど見えなくなる位置を測る、というものがある。この手法に対する最大の異議は、眼の感度が光刺激に対して極端に変動しやすい、という点にある。

この種の滅光光度計(extinction photometer)について、Pritchard のような熟練した観測者であれば、驚くほど一貫した結果を得ることができた、ということ以外に、大きな賛辞を与えることは難しい。簡単な近似をすばやく得るにはときに便利であるが、どれほど好意的に評価しても、「精密測定用器械」と呼ぶには無理がある。これは天文光度計においても、一般の物理光度計においても同様である〔26〕。

〔26〕 天文光度計の達成しうる精度のおおよその程度は、1911年に Hertzsprung が写真観測によって下した発見に端的に示されている。長年「標準星」として用いられてきた北極星(Polaris)が、実際には変光星であったというのである。その周期は 4 日ほど、写真等級での振幅は 0.17 等、肉眼等級では約 0.1 等であった。すなわち、±5%程度の変化が、従来の観測誤差の中に完全に埋もれていたことになる。しかし、いったん変光であることが知られると、蓄積された観測データの中から、その変化曲線をたどることはそう難しくはなかった。

光度計の話を終える前に、Stebbins や Guthnick らによって発展した「物理光度計」の手法にも触れておくべきである。その第一はセレン光電池を用いたものであり、照射光に応じて電気抵抗が変化するセレンの性質を利用する。これは、気軽に使える装置ではなく、最良の結果を得るにはきわめて細心の注意を払った取り扱いが必要であるが、その精度は、従来の目視天文光度計をはるかに上回る。測定のばらつきは、おおむね 2% 程度まで抑えられ、それまでの方法ではまったく検出できなかった微小な変光も、明らかになっている。

もう一つの方式は、光電池(photoelectric cell)にもとづくものである。この装置は、白金グリッドとアルカリ金属(カリウムその他)電極との間に希薄な不活性ガスを封入した構造をもち、アルカリ電極に光が当たると、その表面から光電子が放出されることで、見かけ上の電気抵抗が低下する。通電速度(電流)は、照明強度にきわめて正確に比例し、その変化は高感度エレクトロメータによって測定される。結果は驚くほど一貫性があり、理論的「確率誤差」は非常に小さい。ただし、ここでも「確率誤差」という語は、しばしば誤った精度感を与える危険な用語である。実際のところ、この装置もまた、かなり複雑で繊細な機器であるが、その作業精度はセレン光度計よりもやや優れているといってよく、確実に 1% 以下の誤差で測ることができる。

これらの装置はいずれも、小口径のごく普通の望遠鏡に簡単に取り付けて使えるという類いのものではなく、また得られた結果は、視覚的明るさの尺度に換算する必要がある〔27〕。しかし、微小な光度変化を検出するうえで大きな可能性を秘めており、すでにいくつもの優れた成果を上げている。セレン光度計についての良い基本的解説としては Stebbins, Ap. J. =32=, 185 を、光電方式については Guthnick, A. N. =196=, 357、および A. F. & F. A. Lindemann, M. N. =39=, 343 を参照のこと。既出の Miss Furness の著書にも、両者に関する興味深い記述が含まれている。

〔27〕 この種の装置は、本質的に、少なくとも12インチ、できればそれ以上の口径を持つ大望遠鏡に付随して用いるべきものであり、小望遠鏡に気軽に取り付けられる類いのものではない。人間の眼は、単位面積あたりの放射エネルギーの検知能力という点で、いかなる人工装置よりもはるかに敏感であり、このため、小型望遠鏡でも目視光度測定には十分使用に耐える。一方、大型望遠鏡は、より暗い星まで到達できるという利点を持つにすぎない。

第九章

望遠鏡の手入れと検査

まず最初に,望遠鏡の選択と購入について一言しておきたい。
屈折望遠鏡と反射望遠鏡のどちらを選ぶかという問題はすでに論じたが,個々の場合の結論は,その望遠鏡をどの程度頻繁に,どれくらい多く使用するか,そして何の目的に使うつもりかによって決まる。気まぐれな観測や時折の使用――望遠鏡を買う多くの忙しい人々にとって期待できるのはせいぜいその程度であるが――には,屈折望遠鏡の方が明らかに取り扱いが便利で有利である。もしじっくり観測するだけの暇があり,とくに望遠鏡を恒久的な架台に据え付けることができ,まじめな研究を行うつもりであるなら,反射望遠鏡という考えを十分に検討せずに捨ててしまわない方がよい。

いずれにせよ,最良のメーカーの一つから器械を入手するのが賢明な方針である。そして実際の製作者から直接購入しないのであれば,その公認代理店から買うのがよい。言い換えれば,購入前に有能な指導のもとで徹底した検査を行う機会がたまたまあるのでない限り,光学器械一般の取引の場で,なりゆき任せに手に入れた望遠鏡は避けるべきである。最良のアメリカ製メーカーの製品より優れた望遠鏡はどこにもない。数人のイギリスおよびドイツのメーカーも全く同等の水準にある。この国〔アメリカ〕には高級なフランス製望遠鏡がほとんど入ってこないために,フランスにはそうしたものが存在しないという,かなり一般的だが実際には不当な[28]信念が生じている。

[28] たとえば,アンリ兄弟が製作した美しいアストログラフ用その他の対物レンズ。

もし経済上の制約が厳しいなら,安価な新製品に運を賭けるよりも,一流メーカー製の中古品を探し求める方がはるかに賢明である。ごくまれに,ごく平凡な評判しかないメーカーが良い器械を作ることもあるが,それは証明されるべき事実であって,前提として当然視すべきものではない。望遠鏡は,適切な手入れさえ受けていれば,年月と使用によって大きく劣化することはない。フラウンホーファー製のものの中には一世紀を経た今でもなお良好な性能を発揮しているものがあり,また,一流メーカー製の器械が掘り出し物となって市場に現れることも時折ある。そうしたものはメーカーのところへ下取りとして戻ってきて再販されることもあれば,どこかの光学店にふいに姿を現すこともあるが,いずれにしても,同じ値段の安価な新品を買うよりは,はるかに検討に値する。

鏡筒や架台の状態は,機械的には健全である限り,それほど重大な問題ではない。古い時代の高級器械の多くは真鍮製で,美しく仕上げられラッカー塗装が施されていたが,酷使されるとこれほど見苦しくなるものもない。重要なのは,部品同士の嵌合が正確であり,ピント合わせ用のラックが極めて滑らかに動くことである。この点に欠陥があっても,修理にかかる費用はさほど大きくない。架台はどのような形式であれ,同様に動きが滑らかで,わずかなガタつきもあってはならない――ただし,いずれ捨てるつもりなら話は別である。

対物レンズについては,本格的な光学性能試験を行う前に,きわめて慎重な検査が必要である。対物レンズはセルごと取り外し,まず表面のホコリをラクダ毛の刷毛で払い落とすか,あるいは光学用に用いられるやわらかい日本製の「レンズペーパー」でごく軽く拭き取ってから,強い光の下でじっくり観察しなければならない。

そこで実にさまざまなものが目に入るであろう――シミ,指紋,はっきり分かる傷,さらにはもっと悪いものとして,浅い傷が網目状についている場合や,非常に細かいピッティング(点蝕)を受けたように見える斑点状の面が現れることもある。後者の二つの欠陥は,その面を再研磨しなければならないことを意味し,それは同時に,ある程度の再成形をも伴う。普通の褐色のシミや指紋なら,たいていはそれほど苦労せずに除去できる。

いわば「素人」はしばしば,セルは決して望遠鏡から外すなと戒められるものだが,いずれにせよ簡単な調整くらいは早いうちに覚えてしまった方がよい。セルを外すにあたって何より大切なのは,自分が何をしているのかをよく把握し,秩序立てて作業を進めることである。小型器械ではセル全体がねじ込み式になっていることが多く,その場合の唯一の注意は,セルとその受け座に鉛筆で印をつけておき,元通りの位置までねじ戻せるようにすることだけである。

より一般的なのは,セルが3組のネジで固定されている構造であり,各組のうち一方のネジがセルを押さえる当たりネジとなっており,もう一方がセルを引き寄せる引きネジとなっている。引きネジの頭の位置に鉛筆で印をつけておけば,セルの位置を変えることなくネジを戻すことができる。

最初の検査で,その対物レンズにこれ以上手をかける価値があるかどうかは,だいたい見当がつく。前面を除くすべての面が良好な状態なら,その対物レンズをメーカーに送って再研磨してもらうだけの価値があるかもしれない。二つ以上の面が悪い状態にあるなら,そのレンズがごく安価に手に入るのでない限り,手直しするだけの見込みはほとんどない。元のメーカーから中古品を購入する場合には,これらの注意は不要である。メーカーは自社製品に責任を持つとみなしてよく,第一級の状態に整備して引き渡してくれるからである。

ともあれ,表面的欠陥の検査に合格した対物レンズだとしても,その後は必ず,形状と色収差補正について本格的な試験を行わなければならない。第一級メーカーの製品であっても,ごくたまに補正にわずかな欠陥を示すことがあるし,それほど名の知られていないメーカーのレンズが,たまに良好な結果を示すこともあるからである。この必要不可欠な試験という点では,新旧いずれのレンズも全く同等である。ただし,良い評判を正当に獲得しているメーカーであれば,何らかの欠陥が見つかった場合に誠実に対処してくれると,まず信頼してよい。単なるホコリ払いと,湿らせたレンズペーパーで慎重に拭き,続いて乾いたペーパーで拭くといった清掃以上のこと――すなわちレンズをセルから取り出しての清掃――には,本格的な注意が必要である。

新旧いずれであれ,有望そうな対物レンズであれば,最初に行うべき試験は人工星によるものである。天然の星ではなく人工星を用いるのは,後者なら位置が固定され,昼夜を問わず試験に用いることができるからである。昼間に使う場合の「星」は,太陽光が強く曲がった表面に反射した明るい点でよい――小さな丸瓶の肩の部分,内面を銀引きした球形フラスコ,クリスマスツリーの装飾に使うような小さな銀球,ボールベアリング用の鋼球,あるいは小さなガラスのビー玉(小児の心をとらえる「アリー」)などが利用できる。

どのような物体を用いるにせよ,それを暗い背景の前に,テストする対物レンズの焦点距離の40~50倍程度離れた場所に,太陽光が当たるように設置しなければならない。著者は,大きな黒いボール紙に銀球をセメントで貼り付けたものを好んで用いる。夜間には,ボール紙(できれば錫箔)の中央に直径1/32インチ以下のピンホールをあけ,その後ろに炎,もしくはガス入り白熱電球を置けばよい。後者の場合には,コイルの非常に密な小さなフィラメントの投影面積が,直前のピンホールを適切に満たすように,かなり慎重な調整が必要である。

さて,望遠鏡を据え付けて低倍率の接眼レンズでおよそのピントを合わせ,星像を視野の中央に正確に導入する。その後,接眼レンズを外し,鏡筒を少し繰り込んで,目を対物レンズの焦点位置にもっていけば,ガラス内部のストリエ(striæ:縞模様)を検査することができる。ストリエが存在しなければ,視野は全体に一様に明るく見える。しかし実際には,図152や図153のような視野が見えることも少なくない。前者は,著者が最近目にする機会を得た4インチ対物レンズの様子を示している。後者は,ごく普通に見られるタイプのストリエの典型例である。図152に示すようなひどいガラスを用いた対物レンズは,天文用としてまったく望みがなく,海辺の別荘のベランダ用にでも回すほかない。図153が示す程度なら,実用上はほとんど害のない,しかし望ましくはない状態といえる。

続いて行うべきは,焦点像を本当に厳密に検査することである。口径1インチあたり50倍程度の倍率を与える中倍率の接眼レンズを用いて星像にできるだけ鋭くピントを合わせ,像を注意深く観察する。対物レンズが良好で調整も取れているなら,この像はきわめて小さな光点となり,完全に円形で,縁に向かってわずかに柔らかく減光し,その周りには2~3本の細く鋭い光の環が,正確な同心円となって現れ,その間にははっきりとした暗い間隔が見えるはずである。

[図152――ストリエのひどい例。]

[図153――普通に見られるストリエ。]

空気の揺らぎのために,これらの環が震えて切れ切れに見えることもよくあるが,それでもなお,星の円盤を中心としてよくそろっているはずである。全体としての見え方は図154のようである[29]。

[29] ここおよび後に出てくる数葉の図は,対物レンズの検査についての最良の解説書といってよい “On the Adjustment and Testing of Telescope Objectives” (T. Cooke & Sons, York, 1891)から転載したものである。この小冊子は残念ながらすでに久しく絶版であったが,新版がちょうど今,1922年に刊行されると告知されている。

[図154――第一級の星像。]

これとはまったく異なる様子が現れることも,しばしばである。第一に,明るい回折環が星の中心円盤の片側にしか見えず,円盤自体も同じ方向に引き延ばされている場合。第二に,得られる最良の像が一応かなりシャープではあるものの,円形または楕円形にならず角ばって不規則であり,おそらく一方に霞んだフレアがついているような場合。第三に,どこにも本当に鋭い焦点が得られず,像がぼんやりとした光の塊にすぎず,はっきりした輪郭をまったく欠いている場合である。

先に進む前に,接眼レンズが清浄で,かつ欠陥がないことをよく確かめておくべきである。清掃については,小さなレンズペーパーを柔らかい木片の先に巻き付けて作った綿棒のようなものが役に立ち,清掃が十分であることを確認するためには,よく照らされた場所でポケット用ルーペを用いて各面を検査する必要がある。接眼レンズを回転させながら観察すれば,像の中に見えると思われる欠陥が接眼レンズと一緒に回転するかどうかで,その由来を判断できる。

第一の場合には,次に接眼レンズを少しずつ引き出していくと,星像は暗い間隔をはさんだ同心円状の明るい干渉環の列へと広がり,小さな焦点外しでおよそ半ダースほどの環が現れる。この環が図155のように歪んで偏心しているなら,対物レンズが鏡筒に対して直角に据え付けられておらず,接眼レンズが像を斜めから見ているという明確な証拠である。

[図155――対物レンズが傾いたときの効果。]

普通の形式の対物レンズでは,この場合,環の系がより明るく,かつ広がりの少ない側にある対物レンズの縁が,接眼レンズに対して近過ぎることを意味する。したがって,その側の対物レンズをわずかに外側へ押し出してやればよい。その側の引きネジを少し緩め,当たりネジをわずかに締め込めば,必要な修正が行える。初回の調整でやり過ぎた場合には,少し戻してやればよく,環の系が正確に中心にそろうまで,これを繰り返す。やや気を使う作業ではあるが,慎重に事を運び,ドライバーを乱暴に扱わないよう心掛けさえすれば,決して難しい仕事ではない。

[図156――対物レンズ内の欠陥による効果。]

第二の場合には,接眼レンズを少し引き出して焦点外像を得ると,像の欠陥がそのまま誇張された形で環の系に現れる。この欠陥は,対物レンズがセルの中で機械的な締め付けによる歪みを受けていることによる場合もあれば,ガラスそのものの内部応力や疵による場合もあり,前者は容易に直せるが,後者は修復不能である。したがって,まず望遠鏡の対物レンズ面を水平にし,レンズを動かさないよう注意しながら,レンズを押さえている押さえ環をいったん緩め,それからそっと接触する程度まで締め戻し,もう一度焦点外の環の系を調べてみるべきである。それで大きな改善が見られない場合には,欠陥はガラスそのものにあり,その対物レンズにこれ以上時間を費やす価値はない。図156はこの種の欠陥の典型例である。

第三の場合を扱うにあたっても,まず対物レンズに機械的な歪みがかかっていない状態にしてやるのがよい。ときどき,そうした歪みだけで像を完全に台無しにしてしまうことがあるからである。しかし,よほど乱暴に扱われたのでない限り,この状態からの回復は見込み薄と言わざるを得ない。

いずれにせよ,きわめてはっきりした一つの平面内に鋭く定義された焦点像を結べないということは,そのレンズ(あるいは鏡)がかなり悪いという警告である。反射望遠鏡を検査するにあたっては,まず主鏡と副鏡の両方に十分注意を払わなければならない。先ほどと同じく人工星を用い,焦点を合わせたうえで像の対称性をよく観察する。ただしその前に,望遠鏡を観測位置のまま日光を避けて1~2時間放置しておく必要がある。反射望遠鏡は屈折望遠鏡に比べて温度変化にずっと敏感であり,形状が安定するまでにより長い時間を要するからである。屈折・反射いずれの型でも,よく据え付けられた望遠鏡なら,高度がほどよい明るい星を極上の夜に用いる方が,人工星よりさらに良い試験条件を与えてくれる(北半球ではポラリスが好適である)が,そのような夜を待つには長い時間がかかるかもしれない。

反射望遠鏡の主鏡の面精度が良好で,調整も適切になされているなら,焦点内・外いずれにおいても星像の見え方は屈折望遠鏡と全く同じである。ただし,明るい星を焦点に合わせたときには,像の上にごく薄く鋭い光の十字が,中心を貫いて現れる。これは比較的暗いが,はっきりと見分けられる。これは副鏡を支える4本の細い支持帯による回折効果であり,星を焦点外にずらすと次第に消えていく。

このとき現れる環は通常どおりであるが,同時に副鏡の影による黒い円盤も見える。図157は,主鏡がよく中心出しされ,星像が視野の中央にあるときの,実際の星または人工星の焦点外像を示している。この場合にのみ,環は真円となり,副鏡の影もその中心に正確に位置する。主鏡の相対口径がF/5やF/6のように大きい場合には,星が視野中心からごくわずかに外れるだけで,環はすぐ真円でなくなり,黒い円も中心から外れてしまう。

[図157――反射望遠鏡の焦点外像。]

視野の中央にある星像が,フレアを引いていたり,焦点外像の環が楕円になっていたりする場合には,一方または両方の鏡の調整が必要である可能性が高い。形状の欠陥に原因を求める前に,まずは鏡をきちんと調整しておくべきであり,とりわけ副鏡の方が欠陥の原因となる可能性が高いので,こちらを先に行う。環の系が広がっている側,あるいはフレアが伸びている側に向いた副鏡の縁を,接眼レンズからわずかに遠ざけるように押してやればよい(反射によって像が反転するため,この動きは屈折望遠鏡の場合とは逆方向になることに注意)。

それでも対称性の欠如が残る場合には,原理からやり直して,主鏡と副鏡をきちんと中心出ししてしまった方がよいかもしれない。おそらく最も簡単な方法は,主鏡と全く同じ大きさの白いボール紙の円板を作り,その上に同心円を描いて,中央に1/8インチの穴を開けたものを用いることである。接眼レンズを外し,その代わりに1/2インチ径の絞りをはめ込み,その絞りと引き出し筒とを一直線に見通す位置に立つと,小さな副鏡が真円に見えるかどうか,そして反射して見える同心円と同心になっているかどうかを確かめることができる。ずれている場合には,調整ネジを少し回して修正する。

それから,先ほどの穴を通して,細い筆を使って副鏡の中心に白いペンキで点を打つ。紙を取り外すと,主鏡が正しく調整されているなら,この点は副鏡の中心に正確に見えるはずであり,以後恒久的な基準点として役立つ。もしこの点が偏心して見えるなら,今度は主鏡側の調整ネジを操作して,先ほどと同様に修正する。

最後の調整は,やや高倍率で視野中央付近にわずかに焦点外した星像を置き,先述の方法で環の系を同心にそろえることによって行う。文章で読むといくぶん込み入っているように聞こえるが,実際にはさほど複雑ではない。もし主鏡がまだ架台に載っていない状態なら,副鏡の中心から下げた下げ振りとスチール製のさしがねを用いて,主鏡セル(カウンターセル)をあらかじめ中心に据え,水平を出しておくとよい。副鏡はあらかじめできるだけ正確に寸法を測って中心に据えておく[30]。

[30] ときには,いくら注意深く中心出しを行っても,視野中央の環の系が副鏡に対して依然として偏心したままであることがある。この場合は,主鏡の放物面の軸が鏡面の一般的な面に対して直角になっていないことを示している。たいていは主鏡の調整ネジを用いて前述のように修正できるが,ごくまれに,実際に副鏡全体を真の光軸の位置まで移動させなければならないこともある。Draper(loc. cit.)はこの種の経験をいくつか報告している。

ここまでは,対物レンズまたは鏡の一般的な調整について述べた。真の意味での品質は,注意深い検査を行って初めて明らかになる。

出発点として,適切な中心出しを行ったのち,対物レンズまたは鏡が与える焦点外の環の系を用いるとよい。球面収差が十分に除去されているなら,像を焦点外にずらして6本から8本程度の環が見えるようにしたとき,その見え方は図158のようであるはずである。中央には鋭く定義された明るい点があり,そのまわりを正確な同心円をなす干渉環が取り巻き,環の明るさは外側に向かって次第に増していき,最外縁の環が最も著しく明るくなっていなければならない。

この試験は,黄色ガラスのスクリーンを通して行うのが最もよい。これによって,色消しが不完全であることに起因するわずらわしいフレアが除去され,焦点内と焦点外の像の見え方がきわめてよく似たものになるからである。焦点のすぐ内側あるいはすぐ外側では,完全に補正された対物レンズまたは鏡なら,図159のような像が得られる。

[図158――正しく補正された焦点外像。]

ときには,焦点内の星像の片側の縁に著しく赤みがさし,反対側が緑がかったり青みがかって見える,といった非対称な着色が見られることがある。像を少し焦点外にすると,この非対称性はいっそうはっきりする。この場合は,クラウンガラスとフリントガラスの光学的中心がずれており,レンズの縁削りがずさんであったか,あるいは嵌め込みがひどく悪いことを意味する。これはかなり深刻な欠陥であり,光学工房で行う以外に残された唯一の手段――二枚のレンズのうち一方を他方の上で回転させ,異なる相対方位で組み合わせを試す――を試みるだけの価値はある。

まず最初の組み合わせ位置に明瞭な印をつけておかなければならない。また,多くの場合,レンズの縁に120°おきに配置されているスペーサーを決してずらさないよう,十分注意しなければならない。各種の相対位置は,秩序だった手順で順々に試してみることが大切である。そうすると,この欠陥がごくわずかになるか,あるいは完全に消えてしまう位置が見つかることが少なくない。その位置は直ちに印をつけておき,将来の基準とするべきである。

[図159――焦点直前・直後での正しい像。]

未補正の球面収差が残っている場合には,環の明るさの配分が規則的な勾配から外れている。もし「short edge」,すなわち正の球面収差があって,外周帯からの光線が手前側で結像し過ぎるなら,焦点内では外縁の環が過度に強く見え,内側の環は相対的に弱くなる。焦点外ではこの様子が逆転する。「long edge」,すなわち負の球面収差の場合には逆であり,焦点外で外縁の環が強く,焦点内では弱い。両者とも,かなりよく見られる欠陥である。図160および図161は,焦点付近で観察した「long edge」効果を示している。

[図160――焦点直前における球面収差。]

[図161――焦点直後における球面収差。]

ごくわずかな球面収差を見分けるには,かなり鋭い目と豊富な経験が必要である。おそらく最もよい判定方法は,黄色スクリーンを用いながら,焦点のすぐ内側からすぐ外側へ,そしてまた内側へと素早くピントを行き来させ,その間の明るさの変化を注意深く観察することである。正直に言えば,図160に示される程度のわずかな残留収差なら,実際の性能という点では大して深刻な問題ではなく,望遠鏡使いの感情を傷つける度合いの方が,得られる像の品質に与える影響よりずっと大きい。

はるかに重大な欠陥は,ゾーン収差である。これは,対物レンズまたは鏡の途中のある帯状部分が,他の部分に対して焦点が長すぎたり短すぎたりするものであり,その帯の焦点のずれの量によっては,像のシャープさをかなり深刻に損なう。典型的な例を図162に示す。これは焦点内で観察した像であり,二つの帯状部分が異常に強く見えている。これは,単純な球面収差の場合と全く同じく,それらのゾーンの焦点が短すぎることを示している。焦点外では,明るさの強弱は入れ替わり,外周帯と中間帯および中心が強く,図162で強く見えていた帯は弱くなる。このゾーン収差は,対物レンズ・反射鏡のいずれにもかなり一般的に見られ,しかも検出は容易であるが,図162ほど顕著な例はさすがにまれである。

もう一つの欠陥は,乱視の出現である。大まかに言えばこれは,屈折面または反射面が回転対称面ではなく,したがって光軸のまわりの異なる平面から入射する光に対して異なるふるまいをすることによって生じる。もっとも普通の形では,その面はある一つの平面内では強く反射または屈折し,それと直角な別の平面内ではそれほど強く反射・屈折しない。その結果,この二つの平面に対する焦点は異なり,点像は全く得られず,互いに直角をなす二本の線像として結像する。図163および図164はこの欠陥を示したもので,前者は焦点内,後者は焦点外で,かなり高倍率のもとで撮られている。星像が楕円形であり,焦点のこちら側と向こう側とで像を移して見ると,その楕円の長軸の向きが90度回転して見えるなら,どこかに乱視が存在する。

人類の半分以上は,眼自体の欠陥として乱視を持っているので,自分の目の軸を望遠鏡の軸のまわりに約90度ねじって,もう一度見てみるべきである(つまり頭を横に傾けて見る)。もし楕円の長軸の向きが,目と一緒に回転して見えるなら,眼科医を訪ねるのがよい。そうでなければ,接眼レンズを回転してみる価値がある。楕円が接眼レンズと一緒に回転しないなら,その望遠鏡はかなりの用途に供する前に,レンズを作り直す必要があるということである。

この,形状不良による乱視は,第IV章で触れた像面の乱視的な違いと混同してはならない。後者は軸上ではゼロであり,普通の望遠鏡では実質的に重要ではない。それに対して形状による乱視は,どこでも常に悪影響を及ぼす。とくに反射面,凹面・平面を問わず,これに注意すべきである。たわみの結果として非常によく現れるからである。

これらの単純な形状検査から先に進み,つぎに色収差を調べなければならない。予備的な調査には,昼間に太陽でつくる人工星ほど良いものはない。夜間には,これや他の試験の場合と同様,ポラリス(北極星)が有利である。

[図162――ゾーン収差の一例。]

[図163――焦点内における乱視像。]

[図164――焦点外における乱視像。]

色消し曲線(図163)は,実際には観察されることの全体像を物語っている。望遠鏡をスペクトルの明るい部分に慎重にピント合わせし,得られる最もシャープな星像を出したとき,中心の円盤は小さく清浄で,口径1インチあたり60~70倍の倍率で見て,黄白色に見えるはずである。

しかし,赤および青の光線はより長い焦点距離を持つので,像の周囲を,わずかに色調の異なる狭い紫色の環として縁取る。この色調は,色消しの特性に応じていくらか変化する。接眼レンズをわずかに焦点内側に押し込むと,赤の成分が青をやや上回り,紫は赤味を帯びた色合いに傾く。接眼レンズをごくわずかに引き出すと,深赤色が焦点に入り,像がわずかに広がりはじめるときに,微小な中央の赤点として見える。さらに焦点外側に離れると,視野の中心部が青または紫がかったフレアで満たされ,その周囲には,二次スペクトル中間部の光線が,より短い焦点から広がった結果として,緑がかった環が現れる。

補正不足(アンダーコレクション)の対物レンズでは,この赤い点がより明るく,像の周囲の縁取りも,焦点位置または焦点内側では,明らかに赤味が強い。強い過補正(オーバーコレクション)は,強い青色の縁取りを与え,赤点は弱いか,まったく現れない。すでに述べたとおり,低倍率の接眼レンズでは,それ自身に色補正が施されていないかぎり,いかに適切に補正された対物レンズでも,補正不足のように見えるものである。

色補正は,図140のような接眼分光器を用いてもよく調べることができる。このときは円柱レンズを外して用いる。ピントの合った星像をこのように観察すると,スペクトルは二次スペクトルの中間色にあたる部分では細い線となり,FおよびBの位置で等しく広がり,紫端では一種の刷毛状に拡散する。逆に,焦点外側にずらしていって,FおよびBの位置での幅が細い線になるまで広げると,黄色および緑側への広がりが,二次スペクトルの性質と大きさをきわめて明瞭に示してくれる。この方法によっても,それぞれの色に対する実際の焦点位置を容易に測定できる。

色補正の具体的なあり方は,ある程度は好みと,望遠鏡が使われる目的との問題であるが,ほとんどの観測者は,通常用いられるB-F補正が,眼と接眼レンズの誤差を最もよくバランスさせるという点で望ましいことに同意している。反射望遠鏡では,アクロマートの接眼レンズ,あるいはむしろ過補正気味の接眼レンズが望ましい。望遠鏡を色について検査したときに現れる現象は,観測する恒星の分類によって異なる――太陽型星が平均的に良い対象である。α Lyræ を試すと青側の相が過度に強調され,α Orionis では赤側が強く出すぎることになる。

ここで述べたような,焦点内外での星像円盤に対する簡単な試験は,普通の目的には十分であり,それらを良好に通過するガラスは,非の打ちどころのない良好な面精度を持つことに疑いはない。しかし,これらの試験は定量的ではなく,しかもわずかに不規則な小さな誤差をすばやく見抜くには,経験に裏打ちされた眼が必要になる。環の系は非常に良好なのに,視野の中に一種のもやがあって,コントラストが悪いことがある――これは研磨不良か汚れによるもので,面形はよい,といった具合である。

光学製作者や,実験室設備を持っている人にとって非常に有用とされている試験に,主としてフーコーによって作り上げられ,反射鏡の検査に広く用いられているナイフエッジ試験がある。原理的には,鏡を据え付けて,光線を可能な限り鋭く一点に集めるようにすることにある。たとえば球面鏡では,小孔を通したランプを曲率中心に置き,その反射像をすぐそばに結ばせて,そこを肉眼または接眼レンズで観察する。図165では,小孔 b から出たすべての光線が鏡 a に当たり,きわめて正確に焦点 c に集められている。c に目を近づければ,鏡面が完全であれば,鏡から来る一様な光の円板が見える。

[図165――フーコー試験の原理。]

ここで,安全カミソリの刃のようなナイフエッジ d を,焦点を非常にゆっくりと横切るように差し入れていくと,光は完全に一様な仕方で切り取られる――どこかのゾーンや局所的な部分だけが先に暗くなったりはしない。ある点における面の誤差が,反射光線に焦点を外させ,図中の光線 bef のように,焦点の手前または後ろで交差する原因となっている場合には,ナイフエッジはその光線を他より先に,あるいは逆に後になって切ることになり,その点 e は,ほかの部分の光が消える前に最初に暗くなるか,あるいは周囲が暗くなった後にも明るく残ることになる。

[図166――放物面鏡に対するフーコー試験。]

このようにして鏡面を部分ごとに調べることができ,ゾーンだけでなく,同一ゾーン内のごくわずかな変動さえも,非常に高い精度で検出することができる。図166に示したような放物面鏡の場合には,補助平面鏡と対角鏡を用いて焦点位置で試験を行い,小孔とナイフエッジは先ほどと全く同じように配置する。ナイフエッジ試験の実際的な使い方については,すでに引用した Draper 氏および Ritchey 氏の論文に,きわめてよい記述が見られる。

この試験は,屈折望遠鏡にも適用されるが,その場合には単色光を用いるのがよく,普通の方法で星像試験を行うと視野の一般的な照明に紛れてしまうような,ごくわずかな研磨痕ですら検出できるし,ましてや局所的な形状のわずかな変化を見落とすことはない。

ナイフエッジ試験のセットアップは,きわめて安定で,かつなめらかに動作するものでなければならず,精密な結果を得るにはそれが不可欠である。そのため,この試験は一般には,鏡面の成形作業の技術として用いられる場合を除き,あまり使われることはないが,その分野では欠くことのできないものである。ナイフエッジを横方向および縦方向に動かすマイクロメータ送りを備えれば,形状誤差やたわみの誤差を,非常に正確に診断することができる。

さらにいっそう繊細に成形の完全さを検査する方法として,ハルトマン試験がある(Zeit. f. Instk., 1904, 1909)。これは本質的に写真による試験であり,焦点内外における対物レンズの各ゾーンの効果を比較するものである。ゾーンごとの効果を比較するだけでなく,同じゾーンの異なる部分の効果も比較するので,性能における対称性の欠如があれば,ただちにそれを見いだし,測定することができる。

ハルトマン試験の原理を図示したのが図167である。対物レンズは,天然または人工の星を観測するように据え付ける。そのすぐ前に,図167の断面図にAとして示したような穴あき不透明スクリーンを置く。一般的な適用においては,このスクリーンの穴の直径は対物レンズ口径の約1/20であり,各ゾーンあたり通常4つの穴が90度おきに配置される。そしてそのような穴は一列に並んでいるわけではなく,スクリーン上に対称的に分布している。各ゾーンが,半径方向および接線方向に離れた穴によって表わされるよう注意が払われており,これは二つの乱視像面における要素の対に対応する配置である。この配置により,形状だけでなく乱視も調べることができる。

[図167――ハルトマン試験の原理。]

スクリーンの穴の実際の配置は,ハルトマン自身の原論文に示されており,また Plaskett 氏による非常に重要な論文(Ap. J. 25 195)にも示されている。この論文は,ハルトマン法およびその応用について,英語による最良の解説を含んでいる。さて,スクリーンの各穴は,対物レンズの対応する位置を通る一本の光束を通し,各光束は一度焦点を結んだのち,再び発散する。その焦点は,便宜上「主焦点」と考えられる点 B の近傍のどこかに分布する。たとえば図167には,五つの異なるゾーンにある穴の組 a, a′, b, b′ などが示されている。

焦点より数インチ手前,図中の C の位置に写真乾板を置いて露光すると,スクリーンの各穴から来る光束がそれぞれ写真上に一点として記録される。その点は,光軸からの距離,および軸の反対側にある対応する点からの距離が,それぞれの光束の傾きによって決まる位置に現れる。同様に,一般焦点 B の反対側で,ほぼ同じ距離だけ外側に位置する D に写真乾板を置いて露光すると,今度は焦点の向こう側での各光線の広がりに対応する点のパターンが得られる。

もしスクリーンのすべての開口から来る光束が,B にある共通の焦点できちんと交わるなら,CD に得られる二つのパターンは完全に同一となり,焦点からの距離が等しければ,大きさもまったく等しくなるはずである。実際には,これらのパターンは完全には一致せず,それらの違いをマイクロメータで測定することにより,各光線が仲間の光線と正確な共通焦点で交わる位置からどれだけ外れているかを知ることができる。

たとえば図の中を見ると,光線 e および a′ はほとんど C のすぐ外で焦点を結び,D に達する頃にはかなり広がっていることがわかる。この二つの対応する乾板上の点の相対的な間隔と,CD の間隔とから,これらの光線が実際にどの位置で交差し,焦点を結んだかを正確に求めることができる。

これを求めるのは,全く単純三角形の比を計算する問題にすぎない。光線は直線的に進むからである。同様に,図を見れば,d および d′ の光線は B よりやや手前で交わっていることがわかるし,C および D におけるそれぞれの記録を測定すれば,e,e′ の焦点と一般焦点 B との中間に位置するゾーンが存在することが示される。このゾーンの正しい焦点位置からのずれの量も,ただちに測定できる。

さらに詳しく検討すれば,a,b および a′,b′ の光線で表わされる外側のゾーンは,同じ対物レンズ直径の両端で,正確に同じ焦点を持っていないことがわかる。言い換えれば,この直径の一端では,レンズが他端よりもわずかに平坦であり,そのためこの部分を通る光線は,本来よりかなり長い焦点距離を持つことになる。このような欠陥は決して未知のものではなく,幸いそれほど頻繁ではないにせよ,実際に存在する。

こうして,C および D 上の二つのパターンの違いと,それらの間の差とから,スクリーンの開口によって表わされる対物レンズの各点の性能を,正確に求めることができる。そして同じ方法を基本として,乱視の変化,一般的な色補正,さらには各色ごとの収差の差異にまで,調査を拡張することができる。非常に精密で興味深いこの試験の適用の詳細については,前掲の原著論文を参照されたい。

この試験は,対物レンズの詳細な補正状態の貴重な記録を与えてくれる。普通の観測者が関心を持つ機会は少ないかもしれないが,性能の記録をこれほどの精度で必要とする場合には,他のどんな手段でもこれに匹敵するものはない。対物レンズや鏡を調べるために,他にもさまざまな目的で種々の試験法が用いられているが,ここで述べた方法だけで,ほとんどすべての実用的な目的に十分であり,実際,最初の二つの試験だけで,必要なことはたいていすべて明らかになってしまう。

ときどき,まったくもってひどく汚れた対物レンズを扱わなければならないことがある。すでに述べた方法で簡単な予備清掃をすることはできるが,場合によってはそれでも試験に耐える状態にはならないことがある。そのようなときは,覚悟を決めて根本的なところまで手を入れ,徹底的に仕事をしなければならない。

この作業に取りかかるにあたって,まず第一に心に留めておくべきことは,これから掃除しようとしているものがガラスであり,ホコリをこすり込めば非常に簡単に傷がついてしまうが,慎重に扱えばきわめて容易に清掃できるということである。第二に覚えておくべきことは,一度清掃したら,もとの状態と同じ向き・位置に戻さなければならず,別のやり方で組み立ててはならない,ということである。

汚れた対物レンズの持ち主は,たいてい,メーカーか信頼できる光学技術者のところへ持って行くよう助言される。メーカーが近くにいて利用しやすい場合や,望遠鏡対物レンズの取り扱いに豊富な経験を持つ光学技術者がいるなら,この助言はよいものである。しかし,望遠鏡使用者として当然期待される程度の普通の注意さえ払えば,自分で対物レンズを清掃するのに,何ら困難はない。

手のかかる仕事ではあるが,決して難しいわけではない。対物レンズの清掃方法として最良の助言は,表面の軽い拭き取りでは足りないほど汚れている場合には,文字どおり「風呂に入れて」しまうことである。

作業の手順としては,まず対物レンズをセルに入れたまま水平な面に置き,レンズ押さえ環を止めているネジを外すか,押さえ環そのものをねじ外す。これで,セルと対物レンズが,レンズ面を上にして自由に取り出せる状態になる。つぎに机の上に,対物レンズより少し小さいサイズのやわらかいもの(布,フェルト等)を重ねたパッドを用意し,その一番上に柔らかく清潔な古布を敷いておく。それから,セルの縁を少し持ち上げ,両方の親指をその下に差し込み,人さし指とその他の指を対物レンズの外側の面に軽く添え,そのまま全体をさっとひっくり返してパッドの上に置き,セルだけを持ち上げて外し,対物レンズをやわらかな受け台の上に残す。

何より先に行うべきことは,対物レンズの縁に,硬めの鉛筆で印をつけることである。構成するそれぞれのレンズの縁に,二つのはっきりしたV字を描き,その先端同士がちょうど向かい合って接するようにする。また,通常そうであるように,フリントレンズとクラウンレンズの縁の間に小さなスペーサー(間隔片)が3つ挟まっている場合には,これら一つ一つの位置に,同じ鉛筆で1,2,3という番号を記しておく。

つぎに,別の扱いやすいパッドを用意し,上にあるレンズを持ち上げて取り外し,三つのスペーサーを取り出して,裏表をひっくり返さないよう注意しながら,一枚の紙の上に順番どおり並べる。それぞれの横に,さきほどの番号を記しておく。こうしておけば,これらのスペーサーが良好な状態であれば,再度組み立てるときに,同じ場所に,同じ向きで正しく戻すことができ,対物レンズそのものも元どおりの状態でセルに戻すことができる。

ここで,木製またはファイバー製のタライか浅い桶を用意し,石けんと水でよく洗ってから完全に拭き取って乾かしておく。これに,ごくぬるい程度の温水を半分ほど入れ,穏やかな良質のトイレ用石けん(たとえばシェービングソープ)を溶かす。清潔な手と,非常に柔らかく清潔な布を用意して,レンズの片方をしっかりと洗う。洗浄が済んだら,きわめて十分にすすぎ,水気を拭き取って乾かす。拭き取りに用いる布として大切なのは,とにかく柔らかく,傷をつけるようなホコリを含まないことである。古いハンカチはなかなか役に立つ。

ブラシア博士は,この方法を説明した際に,チーズクロスの使用を勧めている。だが,今日「チーズクロス」という名で売られているものは,最初から十分に柔らかいとはとても言えず,使用するなら,その中でも最上質なものを選び,なおかつ非常に徹底した浸し洗いとすすぎ,乾燥を施した後でなければならない。カットグラスの清掃に使われる,非常に柔らかいタオルも,完全に洗浄してホコリをつけないようにしておけば,申し分なく使える。チーズクロスの利点は,比較的安価であるため,使用後に惜しまず捨てることができる点にある。どのような布であれ,よく洗って乾かした後は,密閉できる容器の中に保管しておくべきである。

レンズを十分にすすぎ,きれいに拭き上げて乾かすことが,清掃の第二段階の主な仕事である。場合によっては,この洗浄では取れないひどい斑点が残っていることもある。そうした斑点は,柔らかい脱脂綿か束ねたレンズペーパーにアルコールを少量つけ,注意深くこすってやると取れることがある。

アルコールでも落ちない場合には,表面の状態が,より強力な手段を試みるだけの理由があるということになる。中程度の濃さの硝酸を,脱脂綿のタンポンでレンズ面に擦りつけると,斑点がとれることがある。この処置を行った場合は,必ず引き続き,純粋な苛性カリの10パーセント溶液か,中程度の濃さのc.p.アンモニア水で処理し,その後,きわめて徹底したすすぎを行うべきである。ガラスは,慎重であれば酸・アルカリ双方の処理に耐えるが,一般に酸の方がアルカリより安全である。

それから最終的なすすぎと乾燥を行う。多くの作業者は,少なくとも90パーセントの強度を持つアルコールで最終洗浄を行い,ほとんど拭き取ることなく揮発させている。メチルアルコールで変性したアルコールも,十分に濃度が高ければ役に立つが,成分不明の変性アルコールは避けるべきである。中には石油ナフサなどの石油系溶剤を使う者もいるが,現在では,ガソリンと同様に,こうした市販の石油製品は品質がきわめて不確かであり,より高沸点の石油製品を分解して得られたものであることが多いが,その経緯は知る由もない。

純粋な石油エーテルが手に入るなら,アルコールと同様にうまく使えるが,揮発性の液体が純粋でないと,拭き跡が残るおそれがある。通常は,どちらも必ずしも必要ではなく,適切な拭き取りを行えば,ガラスは完全にきれいになる。この処理が済んだら,レンズを元のパッドの上に戻し,相方のレンズにも同じ工程を施す。

フリントガラスはクラウンガラスよりも斑点が出やすいが,クラウンガラスもまた,表面劣化――おそらく初期の失透――に対して決して免疫ではなく,大戦中には多くの対物レンズが,この種の不可解な作用によって「失明」した。一般に,注意深く石けん水で処理してやれば,かなりひどい状態に見える対物レンズでも,過去の使用者がつけた傷を除けば,かなり良好な状態まで回復する。

スペーサー(通常は錫箔)が破れたり腐食していなければ,それらを元の位置に戻し,一方のレンズを他方の上に重ねてから,セルをその上にそっとかぶせ,全体を再びひっくり返してセルに収める。このとき,今度は指先とレンズのあいだに柔らかい布かレンズペーパーを挟むことを忘れてはならない。その後,押さえ環を元どおりにはめ込み,ネジで固定すれば,対物レンズは試験または使用に備えて準備完了となる。

もしスペーサーが腐食していたり傷んでいる場合には,非常に薄い錫箔で同じ大きさと形のものを新たに切り出し,下側のレンズ縁に折り返す分だけ,少し長めに残しておく必要がある。これらはレンズのごく縁の部分に,ごくわずかな量の糊,シェラック,またはカナダバルサム(手近にあるもの)で固定する。このとき重要なのは,スペーサーがレンズ縁にかぶさって間隔をとる部分には,一切粘着材が付いていないようにすることである。この折り返し部分は通常1/16インチにも満たず,対物レンズをセルに収めた際に外側から見えることはほとんどない。接着剤やシェラックが乾いたのち,上側のレンズを軽く押し当てて位置を合わせ,はみ出た部分を鋭いペンナイフで切り取ってやれば,元のスペーサーがあった場所に,ちょうどそこだけ新しいスペーサーが残ることになる。

対物レンズ清掃の話に多少紙数を割いたのは,多くの状況で対物レンズはかなり速い速度で汚れをため込みがちであり,使用者自身が,この単純だが注意深さを要する清掃作業を習得しておくことが,非常に望ましいからである。

日常使用において,ラクダ毛の刷毛でホコリを払うだけでは取れない汚れが対物レンズ外面に付着した場合には,まず純水またはアルコールで軽く湿らせた脱脂綿あるいはレンズペーパーの小さな束で優しくたたき,見えている汚れをそっと吸い取る。その後,同じ材料で慎重に軽く拭き取る。このような一連の処理を繰り返せば,外面は良好な状態に保たれる。この工程は,章の冒頭で詳しい検査を行う前の通常の清掃として述べたものと,まったく同じである。

望遠鏡の手入れにおいて,荒い扱い全般とは別に,とくに避けるべき重要なことは,対物レンズを濡らし,そのまま自然乾燥に任せてしまうことである。多くの気候で,露は非常に厄介な敵であり,しばしば用いられる露よけ筒――外側を明るく,内側を黒くした,口径の3~4倍の長さの筒――は,ガラス面への露の付着を減らすうえで非常に大きな助けとなる。また露よけ筒は,視野全体を明るくして悪さをするような迷光を多く遮ってくれる。実際,とくに対物レンズよりかなり大きな直径を持ち,内部に絞りを備えた露よけ筒の,迷光トラップとしての役割は,非常に重要である。

ファインダーも同様に保護しておかなければならない。さもないと,ある晩の観測のさなかに,対物レンズへの激しい結露のために,突然「失明」することになる。その結果として,急に著しい暗さと悪い像質が現れ,まったく不愉快な事態となる。

望遠鏡の金属部分については,他の機械の金属部分と同様に扱えばよい。可動部分は,ときどき微量の鯨油(スパームオイル)かそれに類する油を差し,他の摺動部と同じく,摩擦の起こりうる部分を適宜潤滑しておく必要がある。

昔ながらの,高度に研磨されラッカー塗装された真鍮の鏡筒は,本気で頻繁に使えば,まともな見栄えを保つことがほとんど不可能であった。できることといえば,ホコリがつけば払うこと,そして結露した水滴は,すぐに,かつ慎重に拭き取ることくらいである。より新しいラッカー塗装の鏡筒は,ほとんど手間がかからず,もし本当にひどい状態になっても,再ラッカー処理はそれほど費用も手間もかからずに行うことができる。

古い器械にときどき見られる木製鏡筒は,他の高級な木工品と同じ扱いを要求し,元の仕上げの性質に応じて,適宜オイルや家具用ポリッシュで磨いてやる必要がある。塗装された鏡筒は,ときおり塗り替えを要することもあるが,それを行うのに特別な熟練はほとんど要らない。木製三脚の表面が悪い状態になった場合にも,他の良質な木工品と同じく,オイルやポリッシュで手入れしてやる必要がある。

架台は通常,塗装またはラッカー塗装されており,いずれも時間がたてば,さほどの苦労なく再仕上げができる。金属の光沢面には,普通の防錆処置としてごく薄く油を塗布しておくとよい。

反射望遠鏡は,銀引きされた面がデリケートな性質を持つため,屈折望遠鏡よりも手入れがかなり面倒である。鏡面は,かなり頻繁に使っていても,数年間良好な状態を保つこともあるし,数か月,数週間でだめになることもある。とくに煙の多い都市部で使われる望遠鏡では,後者は決して珍しい数字ではない。何よりも重要なのは,鏡面への露の付着を防ぐことであり,あるいは他のいかなる形でも濡らさないことである。というのも,水滴が乾くときには,ほとんど必ず斑点を残してしまうからである。

鏡面の損傷を防ぐために,さまざまな工夫が提案されてきた。使用していないときに常にかぶせる,鏡面にぴったりと合う金属製カバーは,多くの場所で良好な結果を与えてきた。とくに条件が厳しいところでは,このカバーの内側に乾いた脱脂綿を敷きつめ,鏡面にかなり近いところまで下げておくこともある。この「防寒具」が乾いて清潔で,鏡面よりもわずかに温かい状態でかぶせられれば,かなり効果的に働くようである。望ましいのは,望遠鏡を使っていないときには,周囲の空気よりもわずかに高い温度に鏡を保つことであり,そうすれば露が付着しにくくなる。

実際に鏡面を保護する方法として,本当に効果があるのは,ごく薄いラッカーの被膜だけのようである。これは最初に,パリ天文台の Perot によって試みられた。著者は10年ほど前,実験室用の鏡をガスや湿気から守る問題に取り組み,市販の上等な白色ラッカー――銀器の仕上げに用いられるものと同種のもの――を,そのラッカーに付属のシンナーで6~8倍に希釈すると,きわめて優秀な結果を与えることを見出した。ラッカーは所定の倍率まで薄めた後,ろ過しておくのがよい。

この希釈ラッカーを,綿密にホコリを払った鏡面にたっぷりと流しかけ,素早く全体に行き渡らせたのち,すぐさま鏡を縦に立てて液を切り,乾燥させると,ごく薄いラッカー層が鏡面に残る。その厚さは波長の一部分にすぎず,広い領域にわたる干渉色が現れるほどである。

このように処理し,乾燥状態に保てば,被膜は相当不利な条件のもとでも,数か月にわたって銀の光沢を保護してくれる。著者はこの方法をかなり徹底して試験したのち,ハーバード天文台の24インチ反射望遠鏡に適用し,以来ずっと用いられている。著者が最初の被膜を塗布したのは1913年春であり,それ以前には数週間ごとに再銀引きを要していたのが,その後はおよそ半年に一度で済むようになった。

このとき用いられたラッカーは,ニューヨークの Egyptian Lacquer Company 製の,いわゆる「Lastina」ラッカーであったが,同種の品質を持つ製品は他にも市場に存在するに違いない。これはコロジオンラッカーであり,近年では,付属のシンナーよりも,市販のアミルアセテートを薄め液として用いる方が望ましいことがわかっている。おそらく戦時中の材料調達の困難から,他の多くの場合と同じく,本来の目的には十分であっても,望遠鏡鏡面の保護という極端な条件のもとでは,それほど好ましくない代用品が使われたせいであろう。

ここで推奨した程度まで薄めたラッカー被膜は,数年にわたるハーバードでの定常観測の経験が示すところでは,像のシャープさを損なうような影響をまったく与えない。にもかかわらず,一部の実験者は困難を経験しており,それは確実に,ラッカーを厚く塗りすぎたためである。鏡面を湿気から遠ざけているかぎり,ラッカー被膜の耐久性と,表面の元の光沢を保持する力は,非常に驚くべきものである。

著者は,一枚の実験室用鏡を取り出して試験したことがあるが,それは7年前に被膜を施され,乾いた場所に保管されていたものであった。その反射率は,今なお0.70を少し上回る程度であり,綿束で触れるとほとんど粉のように感じられるほど乾いていたにもかかわらず,である。当初,この鏡は保護なしである程度使用されており,そのときの反射係数はおそらく0.80前後であったと思われる。銀の被膜が,実用上可能な範囲で十分に厚く形成されているなら,被膜に曇りが生じた段階で,ラッカーをアミルアセテートと綿束で洗い流し,ほとんど完全に除去したのち,通常の方法で銀を磨きなおし,さらに再びラッカーをかけ直すことができる。

銀引きには多くの処方が用いられており,どの方法を選ぶか――小さな鏡であれ大きな鏡であれ――は,多分に個人の好み,とくに経験によるところが大きい。この国でもっともよく用いられている二つの方法は,ブラシア博士と,Alvan Clark Corporation の代表である Lundin 氏の方法であり,いずれも,大口径鏡の製作に豊富な経験を持つこれらの製作者によって,徹底的に試験されている。

この二つのプロセスは,いくつかの重要な点で互いに異なっているが,どちらも非常にうまく機能するようである。どちらの方法を用いるにしても,基本となるのは,銀引きされるガラス面が化学的に清浄でなければならないということである。もし既に銀引きされた鏡を再銀引きするのであれば,古い銀は濃硝酸で除去し,銀の痕跡が完全になくなるまで十分にすすぐ。場合によっては,最初の処理のあとに,再度硝酸処理を行い,さらにすすぎを行うとよいこともある。酸処理の後には,c.p.苛性カリ10パーセント水溶液(あるいは,洗い流しが容易なためにc.p.アンモニア水を用いる者もいる)で処理し,これもきわめて入念にすすぎ落とさなければならない。

一般論として,最後のすすぎには蒸留水を用いるべきであり,このすすぎの後,銀引きの工程に入るまで,ガラス面は乾いた状態になってはいけない。鏡全体を,銀引きの直前まで水の中に保っておく必要がある。ブラシア博士の方法では,つぎの二種類の溶液をあらかじめ調製する。まず還元溶液は次のとおりである:

ロックキャンディ(氷砂糖) 重量20部
濃硝酸(比重1.22) 1部
アルコール 20部
蒸留水 200部

この溶液は,しばらく寝かせることで性質が向上する。もし急いで準備しなければならない場合には,酸と砂糖と蒸留水をまずいっしょに煮沸し,溶液が冷めてからアルコールを加えるべきである。

第二に,銀溶液を三つの部分に分けて作る。まず銀溶液本体は次のとおり:

  1. 硝酸銀 2部
      蒸留水 20部

第二にアルカリ溶液は次のとおり:

  1. c.p.苛性カリ 1と1/3部
      蒸留水 20部

第三に予備銀溶液は次のとおり:

  1. 硝酸銀 1/4部
      蒸留水 16部

つぎに,作業用の銀溶液を次のように準備する。まず,銀溶液1に対して,濃アンモニアをゆっくりと,かつ絶えず攪拌しながら徐々に加える。最初,溶液は濃い褐色に変化し,その後徐々に澄んでくる。アンモニアは,溶液が完全に澄み切るのに必要なところまで,ぎりぎりの量だけを加えなければならない。

つぎにアルカリ溶液2を加える。すると再び混合液は濃い褐色を呈するので,やはりアンモニアを慎重に加えて,沈殿がなくなるまで澄み切らせるが,その色は麦わら色になる程度にとどめる。最後に予備銀溶液3を,攪拌しながらごく慎重に加えていくと,溶液は色が濃くなり,攪拌しても消えない微細な浮遊物が現れ始める。この段階で,全体を脱脂綿を通してろ過し,沈殿物をすべて取り除けば,使用準備完了である。この時点で,実際の銀引き作業に入ることができる。

この方法には,鏡面を上に向ける「表向き」処理と,鏡面を下に向ける「裏向き」処理の二つのやり方がある。前者の利点は,銀膜が形成される様子をよりよく観察できること,および大きな反射望遠鏡では,実際に鏡をセルから取り外さずに銀引きできることである。実際,月一回の再銀引きが必要であった Alleghany 天文台の大反射望遠鏡では,常にこの方法が用いられていた。溶液は,望遠鏡全体を前後に揺すってやることで,処理中ずっと攪拌されていた。

表向き銀引きの場合,鏡は銀引き槽の底を形成するように配置され,鏡の縁の周りには何重かに巻いたパラフィン処理またはワックス処理された紙や布が,鏡の厚さの半分ほどの高さまで立ち上がるように巻き付けられ,銀溶液を保持する枠となる。この帯は鏡の縁にきつく結び付けられ,水密な継ぎ目を形成する。Ritchey 氏は,鏡の縁に合わせた銅製の帯を用い,ネジで締め付けてから,パラフィンと温めたコテで仕上げをして水密とする方法を用いている。

裏向き銀引きの場合には,鏡面を下にして,浅い皿(できれば陶製)の底から少し浮かせた位置に吊るし,その皿に溶液を入れる。支持方法にはさまざまな工夫がある。たとえば,小さな鏡であれば,光学用の硬いピッチで鏡の裏面に接着した桟木で支えることができるし,また鏡のごく縁だけをクランプでつかむための特別な装置を備えることもある。

裏向き銀引きは,いくつかの点で不便なところもあるが,ブラシア法で表向き銀引きを行う際に本質的な問題となる,強い銀溶液から沈殿する大量の堆積物から,作業者を解放してくれるという大きな利点がある。この問題点は,銀膜がかなり形成され始めてから完了するまでの間,液中からレンズ面を,脱脂綿を巻いたタンポンでごくやさしくなでることにより,ある程度軽減することができる。

ブラシア法は,65~70°F の温度範囲で最も良好に機能し,どれだけの量の還元溶液を銀溶液に加えるべきかを見きわめるには,ある程度の経験が必要である。Ritchey 氏は,使用する硝酸銀の総重量の半分に相当する砂糖を含むだけの還元溶液を加えることを勧めている。混合後の溶液量は,鏡面を約1インチの厚さで覆う程度が適当である。溶液が多すぎると沈殿の問題が増し,きれいな皮膜が得られない。所定量の還元溶液を銀溶液に注ぎ,ただちに,もし表向き銀引きなら,水に浸しておいた鏡の上に,そのまま(下にあった水を抜くことなく)注ぎ込む。

裏向き銀引きでは,鏡面はまず薄い蒸留水の層に浸されており,そこへ混合した溶液を皿に注ぎ入れる。いずれの場合も,処理中は溶液をかなりしっかりと揺り動かし,よく攪拌しておく必要があり,およそ5分ほどで処理は完了する。銀引きを長く続けすぎると,表面に粗い白っぽい外層が形成され,磨き上げがうまくいかなくなるおそれがあるが,そこまで行きすぎない範囲では,被膜は厚ければ厚いほどよい。厚い膜は再研磨に耐えるが,薄いものはそうはいかないし,また薄すぎる膜では,価値ある光が透過してしまうほどになることもある。

銀引きが完了したら,溶液をすみやかに注ぎ捨て,縁の囲いを外すか,鏡を溶液から持ち上げて取り出す。その後,まず水道水で,つづいて蒸留水でよくすすぎ,残っている沈殿物をやさしく拭い取る。それから鏡を縦に立てて乾燥させる。最後にアルコールを流しかけ,扇風機などで風を当てると,乾燥が早まる。

Lundin 氏の方法では,初期の洗浄工程はブラシア法と同じであるが,硝酸を完全にすすぎ落としたのち,塩化スズ飽和溶液を脱脂綿の束につけて,鏡面をやさしく,しかし徹底的にこすり洗いする。ていねいにこすったあとは,塩化スズ溶液を,できればぬるま湯で,きわめて完全に洗い流さなければならない。塩化スズで鏡面を完全に清浄にすることと同じくらい,その塩化スズ自体を完全に洗い落とすことも重要である。そうしないと,あとに筋が残り,そこには銀被膜がうまくつかない。

この工程が正しく行われると,水の薄い膜で表面全体を濡らしても,鏡をわずかに傾けた程度では,水の膜がそのまま張りついていて,流れ落ちないようになる。ブラシア法の場合と同様,Lundin 法においても,鏡は常に水に覆われている状態にしておかなければならない。Lundin 氏は,大きな鏡を銀引きする際には常に表向き法を用いており,鏡の縁に巻き付けた包帯用布に蜜蝋をしみ込ませ,まだ温かいうちに二本の金属棒で挟んで引き抜き,蝋を均一に分布させることで水密な継ぎ目を作り,これをしっかりと鏡の縁に巻き付けて縛る。最後に,その紐を濡らしてさらにきつく締め上げる。

この間,水は鏡を3/4インチ以上覆っていなければならない。Lundin 法では,通常の水道水が蒸留水と同様に有効であることが多いが,こうしたことを,何の検証もなく当然視するのは危険であり,必ず試験用のガラス片で事前に確かめるべきである。

この方法では,つぎの二種類の溶液を用意する。まず銀溶液は,

硝酸銀 2.16部(King, Pop. Ast. =30=, 93 参照)
水 100部

つぎに還元溶液は,

Merck 社製ホルマリン(ホルムアルデヒド) 4部
水 20部

である。この還元溶液の量は,銀溶液100部につき上記の量を用いる。調製する総量は,上で述べたように,鏡面を覆うのに必要な液量によって決まる。

銀溶液は,ブラシア法と同じように,濃アンモニアを用いて慎重に完全に澄み切らせる。その後,銀溶液と還元溶液を混合し,鏡を覆っていた水をすばやく捨て,ただちに銀引き溶液を注ぎ込む。鏡は静かに揺らしてやりながら,銀被膜の形成を注意深く観察する。

処理が終わりに近づくと,比較的粗い黒い粒状の沈殿が現れるようになる。この沈殿が目立ち始めたら,溶液を注ぎ捨て,流れる水で鏡をすすぎながら縁の囲いを外し,最後に濡れた脱脂綿で,残っている沈殿物をきわめてやさしく拭い取る。その後,鏡を立てて乾燥させればよい。

Lundin 法は,ブラシア法よりもかなり希薄な銀溶液を用い,作業中の清潔さという点でかなり優れている。また,経験豊かな作業者によれば,ブラシア法よりもかなり低い温度で最良の結果を与えるが,その際でも鏡は常に溶液よりわずかに温かい状態に保たれている必要があるという。一部の作業者は,塩化スズ処理を省略し,より一般的な方法で鏡面を清掃することで良い結果を得ている。Lundin 法では,溶液が十分に透明なので,鏡の下に白熱電球をかざすことで,銀被膜の濃さを大まかに判定することができる。良好な被膜の場合,たとえガス入りランプであっても,フィラメントの輪郭が,かすかにかろうじて見える程度でなければならない。

どちらの銀引き法を用いるにせよ――そしてどちらもよく働く――最終的な鏡面のバーニッシング(磨き上げ)は,鏡が完全に乾いてから,同じ方法で行われる。まず,非常に柔らかい脱脂綿を,きわめて柔らかいセーム革で包み,ボール状に縛ったものを用意する。

この磨き器は,最初は何もつけずに用い,短く軽い円運動で全面をくまなく撫で回すことで,皮膜を平滑にし,圧密していく。こうして全体が十分に清浄になり,わずかに光沢を帯び始めたら,今度は最も細かい光学用ルージュをごく少量,同じ磨き器か,できれば別の磨き器につけ,同様の手つきで全体を根気よく磨いていくと,鏡面は見事な光沢を得る。

この作業を行う際には,表面にホコリが降り積もらないよう,細心の注意を払う必要がある。さもないと,必ず傷の原因になる。また,鏡の上に息がかかったり,他のいかなる形でも表面をわずかでも湿らせたりしないよう,最大限の注意を払わねばならない。そうでないと,満足のいく光沢は到底得られない。

銀引きに関する指示は,文献の中に実に数多く見出され,いずれも何らかの形で成功を収めたことがある。しかし,この全過程の根本は,使用する特定の処方そのものよりも,鏡を清浄にし,銀引きが完了するまでその状態を保つという,きわめて几帳面な注意にある。また,均一で高密度の銀被膜を得るように作業するには,相応の経験が必要である。

第十章

望遠鏡の据え付けと収容

望遠鏡を使用状態に置き,かつ適当な保護を与えることに関しては,まったく性格の異なる二つの状況が現れる。第一は可搬式器械または仮設架台に載せた器械に関するものであり,第二は位置観測用の器械に関するものである。一般に前者は主として通常の観測目的での使用を意味し,後者は少なくとも精密測定の可能性を含み,ふつう目盛環と駆動時計を備えた架台を伴う。可搬式望遠鏡には経緯台式と赤道儀式のいずれもがあり得るが,恒久的に据え付ける器械は,現在ではほとんど例外なく赤道儀である。

可搬式望遠鏡は普通小型であり,口径約2½インチから約5インチ程度までである。前者は,天体観測を考えるうえでぎりぎり最小と見なし得る大きさである。もし十分に良く作られ,しっかりした架台に載せられていれば,この大きさでも実際的に有用である。一方,5インチ望遠鏡は,通常の構造と装備で作られるかぎり,可搬式と見なし得る最も重いものであり,本来は固定架台に値する。

経緯台の据え付けは,可能なかぎり簡単な作業である。通常の三脚に載っていれば,持ち出して三脚をおおよそ水平にし,方位回転軸がほぼ鉛直になるようにすればよい。ときには,あえて傾けて据え付けることもある。そうしておけば,高度のいくぶん異なる二つの対象のあいだを,方位軸だけの回転で素早く行き来することができるからである。

図69のような卓上三脚を扱う場合には,手近にある水平で堅固な台の上に置けばよい。大事なのは,のぞきやすい位置に置くことである。これはすべての小型屈折望遠鏡にとって重大な問題であり,接眼部がありとあらゆる届きにくく不自然な位置を向きがちだからである。

もちろん,直角プリズム付き接眼鏡(対物側で90度折り曲げる接眼部)はこの不便を解決してくれそうに見えるが,小口径の望遠鏡では,光量の損失や,しばしば像質の低下をもためらわせる。またファインダーを使うには観測者がほとんど逆立ちせねばならない。良く調整された目盛環がありさえすれば――これは通常固定架台に付いているが――目標天体の導入は容易である。可搬架台では,おそらく最も簡単な対策は,鏡筒の接眼部とは反対側,すなわち対物レンズ側近くに粗視準用の照準器をよく整列させて一対取り付けることである。こうすれば,鏡筒を天頂方向に向けたときにも手の届く位置に照準器が来る。著者は,安物の肘掛けなし籐張りロッキングチェア(ベランダ用として売られているようなもの)が,この種の苦痛な観測条件のもとで非常に役に立つことを経験しており,これを心から推奨できる。

さらに良いのは,観測用の箱と平たいクッションである。その箱は,蓋のない単純な箱で,滑らかな7/8インチ厚の板材でしっかり釘打ちまたはネジ止めしたものでよい。三つの辺の長さを互いに異なる値にしておけば,箱を立てる向きを変えることで,三通りの高さに腰掛けたり立ったりできる。Chambers(『Handbook of Astronomy』II巻215頁)が最初に示した寸法は21×12×15インチであったが,著者は18×10×14インチの方が具合がよいと感じている。

実のところ,市販の標準的な望遠鏡三脚は,座って使うにはやや高すぎ,立って使うにはやや低すぎる傾向がある。やや背の低い三脚は,安定という点でも,また天頂から30°以内(シーイングが最良の領域)を観測する際の接眼部の届きやすさという点でも有利である。そして座位姿勢の方が立位姿勢よりも,楽に見上げられる範囲がずっと広い。

赤道儀架台を使用する場合には,調整の問題に最も広い意味で直面することになる。ここでもまた,望遠鏡の使用状況にはまったく異なる二つの場合がある。第一は,位置や大きさの精密測定を伴わない,一般目的の通常の眼視観測である。

この場合には,厳密な追尾は必要ではなく,駆動時計はあれば便利だが,決して不可欠ではない。目盛環さえなくても,少し余計な時間さえ我慢すれば何とかなる。これは,移動用赤道儀に普通みられる状況である。このような用途では,極軸を完璧な精度で北極に合わせる必要はなく,ただ追尾が容易にできる程度に合わせればよい。さもなければ,経緯台と比べてほとんど利点がなくなってしまう。

これとは全く別の範疇に属するのが,規則的なマイクロメータ観測を行ったり,長期にわたる分光観測計画に着手したり,精密光度計を使用したりする器械であり,まして写真撮影を行う場合はなおさらである。このような場合には,ほとんど必ず恒久的な架台が必要となり,調整も,可能な限りの精度で行わなければならない。目盛環が大いに役立つことは言うまでもなく,駆動時計がないことは,重大な不利,あるいはそれ以下ではない。

さらに,この後者の場合にはたいてい,恒星時に合わせて調整された何らかの時計を備えており,かつ必要とする。これなしでは赤経環はほとんど役に立たないからである。

要するに,大まかに言えば扱うべき状況は二つある。第一は,可搬式架台に載せられ,目盛環を持つこともあれば持たないこともあり,通常は恒星時計も駆動時計も備えておらず,便利な場所に設置される望遠鏡である。第二は,恒久的な場所に固定架台で据え付けられ,通常は目盛環と駆動時計を備え,何らかの恒久的な建物に収容された望遠鏡である。

では,図168に示すような5インチ器械を持っているとしよう。これは三脚架台にも,その隣に示した固定柱架台にも載せ得る。この器械をどのように据え付ければよいか。固定架台に載せる場合は,どのようにして保護したら良いか。

赤道儀を実用状態にするうえで根本となるのは,望遠鏡の光学軸を架台の極軸と正確に平行にし,その極軸をできるだけ正確に天の北極の方向に向けることである。

赤道儀望遠鏡の標準的な調整項目は以下のとおりである。

  1. 極軸を天の極の高度に合わせる。
  2. 赤緯環の指標を調整する。
  3. 極軸を子午線に合わせる。
  4. 望遠鏡の光学軸を赤緯軸に対して直角にする。
  5. 赤緯軸を極軸に対して直角にする。
  6. 赤経環の指標を調整する。
  7. ファインダーの光学軸を望遠鏡本体の光学軸と平行にする。

さて,最も単純で一般的な場合――すなわち,三脚架台に載った可搬式赤道儀で,ファインダーはあるが目盛環も駆動時計もない場合――を考えよう。この場合,調整項目2と6は自動的に不要となり,5も,それを行うための手段がないため省略される。また図168に示したような高精度の架台では,4の項目は,この器械で行うあらゆる目的に照らして,無視し得るほど小さいとみなしてよい。

残るのは1,3,7であり,簡便のため7,1,3の順に行うのがよい。まずファインダーの接眼部焦点位置には十字線が入っている。次の段階として,望遠鏡本体の接眼部にも同様の十字線を設ける必要がある。

もし最初から備わっていなければ,これは容易に自作できる。正立接眼鏡の前にあるスプリングカラー,または通常のヘンゼン(Huygenian)接眼鏡なら絞りの位置に,ぴったりはまる円形の厚紙片を切り出す。厚紙を切るために描いた円周上に二本の直径線を引き,中心で直交させる。それから中央に開口部を切り抜き,この直径線を目安にして,非常に細い糸か金属線を二本張り渡し,蝋やシェラックで固定する。

[図168――三脚およびピアに載せたクラーク5インチ屈折。]

次に,視野内で最も遠くに見える鮮明な物体に望遠鏡を向け,接眼部のスプリングカラーまたは接眼鏡そのものを回転させる。このとき糸の交点が真の中央にあれば,その交点は回転中も常にその物体の上にとどまるはずである。そうでなければ,糸を慎重にずらして誤差を修正する。

こうして交点を物体に合わせたまま鏡筒クランプを締めて固定し,今度はファインダーに注意を向ける。ファインダーチューブ全体がその支持金具の中で調整可能であるか,あるいは接眼部直前にある小ネジによって十字線が調整できるようになっているはずである。いずれの場合も,ファインダーの管または十字線を動かして,本体望遠鏡の十字線に合わせた物体とまったく同じ位置にファインダーの十字線も重なるようにする。そのうえで調整ネジをしっかり締めれば,ファインダーの同軸調整は完了である。

次に1および3の調整であるが,目盛環がないため,通常の天文学的方法は使えない。しかし,水準を利用すればかなり良い近似が得られる。良質の機械工用水準器は非常に感度が高く,信頼できる。著者は,金物店の在庫から取り出した長さわずか4インチの水準器で,2分角の傾きをはっきり検出できるものを所有している。

図168のような架台の多くには,極軸支持部に基準線が刻まれており,その片側の側板には緯度目盛が付いている。この場合,まず赤緯軸(または他の適当な平らな部分)に水準器を載せて水平にし,その状態を保ったまま赤道儀ヘッドを回転させても気泡が動かないようになるまで三脚の脚を調整してやる。それから緯度目盛を用いて極軸を正しい緯度に合わせれば,目的に対しては調整1は完了である。

緯度目盛がない場合には,水準器と紙製分度器を用いて自分で緯度を刻み込むのが賢明である。そのためには,まず極軸を水平にし,鏡筒も水平にして赤緯クランプで極軸と平行を保つ。次に,赤道儀本体の支持部に細長い木片を結び付けるかネジ留めし,そこに分度器を固定する。赤緯軸をクランプしたまま,木片に打った釘から細い糸の下げ振りを垂らし,分度器の読みを記録しておく。それから極軸を,その場の緯度だけ持ち上げる。

この作業を終えたら,極軸スリーブとその支持部の両方にナイフの刃でくっきりした基準線を刻んでおく。これによって,次回以降赤道儀ヘッドを慎重に水平出ししたうえで,極軸をほぼ瞬時に緯度に合わせられるようになる。

次に行うのは調整3――極軸を子午線に合わせる作業である。まず望遠鏡鏡筒を極軸と大雑把に平行に向け,その外側面に沿って目視で照準をつけながら赤道儀ヘッドを方位方向に回転させ,鏡筒の延長線がほぼ北極星を指すところまで持っていく。ここから,より精度の高い調整に移る方法がいくつかある。

現在(本書執筆当時),ポラリス(Polaris)は真の天の北極から約1°07′離れており,24時間ごとにその半径の円を描いて運動している。ポラリスに対する極の正しい位置を知るには,少なくともその小さな円周上での位置,すなわち星の時角について,大まかな知識が必要である。星にある程度馴染みがあれば,これは時計の文字盤を読むのとほとんど同じくらい容易に空の上で読み取ることができる。図169は,実際上,宇宙の巨大な時計の文字盤であり,巨大な時針が空を掃いている。走りながらでも読めるほど明瞭である。

[図169――宇宙時計。]

これは,ある意味で奇妙な時計である。大陸の鉄道時刻に合わせた一部の時計や懐中時計のように,24時間目盛を持っている。時針は逆方向――すなわち「反時計回り」に回転する。そして,文字盤上で垂直方向に来るのは,正午ではなく,恒星時で1時20分のときである。この巨大な時針の両端をなす二つの星は,それぞれδ Cassiopeæ(カシオペヤ座δ星)とζ Ursæ Majoris(おおぐま座ζ星)である。前者は,大きな「椅子」の背もたれの折れ曲がったところを示す星であり,後者(ミザール Mizar)は北斗七星の柄の先端から二番目の星である。

これらのうち少なくとも一方は,北半球のどこでも地平線上に常に見えている。さらに,この二つの星を結ぶ線は,ほとんど正確に天の北極を通り,かつポラリスのすぐ近くを通る。ポラリスはこの線上で,極とδ Cassiopeæのあいだに位置している。したがってポラリスの時角を知りたければ,宇宙時計を一目見て,δ Cassiopeæが文字盤上で垂直線(XXIV時)と水平線(東がVI時,西がXVIII時)との間のどこに位置しているかを見ればよい。

その位置を30分刻み程度まで見積もることは容易であり,またこの巨大な時針が垂直になる(δ Cassiopeæが上に来る)のは恒星時1^h 20^m,あるいは(ζ Ursæ Majorisが上に来る)のは13^h 20^m であることを知っていれば,恒星時のおおよその値をかなり正確に推定できる。

少し経験を積めば,この宇宙時計を天体位置の見当付けにきわめて有効に用いることができるようになる。そしてこうして知ったポラリスのおおよその時角は,そのまま調整3の実行に使える。ここで,ファインダーの十字線のある焦点位置に,半径約1°15′の円形絞り板(金属または紙)を差し込む。これは焦点距離1フィートあたり直径0.52インチに相当する。

調整1を終えた後の状態で望遠鏡の赤緯クランプを締めたまま,極の両側を横切るように方位方向に望遠鏡を振ると,ポラリスが視野に入ってくる。ファインダーが正立像でない(倒立または左右反転)場合は,肉眼で見た位置とは反対側から入ってくる。すなわち裸眼でIV時の方向にあるなら,視野にはXVI時の方向から入ってくるように見える。ポラリスがちょうど視野の内側ぎりぎりに入ったところで,望遠鏡の光軸はほぼ天の北極を指していることになる。

この作業は,ポラリスを視野に導入してから絞り板を差し込む方がよい。もし視野のかなり上や下から入ってくるようなら,極軸の高度をわずかに調整して誤差を補正すべきである。この程度の近似設定は,どんなに小さなファインダーでも可能であり,観測が試みるに値するような夜なら,いつでも実行できる。

口径1インチ以上のファインダーがあれば,図170を用いて,はるかに素早く,かつかなり高精度に子午線合わせができる。図170は,北極から半径1°30′以内にある8等以上の恒星をすべて示した星図である。この領域にはポラリスのほかに目立つ星が三つしかなく,一つはポラリスのすぐ近く,残り二つは図中の三角形の頂点として示されている。左側にあるのは等級6.4等の星で,B.D. 88°112番星,右側は等級7.0等の星でB.D. 89°13番星である。

北極の位置は,この世紀いっぱいについて,図中の縦の矢印の上に示されている。ファインダーの視野にこれらの星が入った状態で,望遠鏡本体の赤緯クランプを締めたまま,十字線が天の北極を指すように調整すれば,数分角以内に極軸を合わせることができる。これは可搬式架台の通常の使用には十分過ぎるほどの精度である。これらの作業は,本体望遠鏡でも行えた方がより良いのだが,実際にはそれに十分な広い視野を持つ接眼レンズはきわめてまれである。

[図170――星々の中の北極。]

いずれにせよ,このような調整において犯し得る誤差の影響は,この用途に対しては深刻ではない。たとえば,極軸の合わせに1分角の誤差があったとしても,最も不利な場合でも,星が視野内でこの全量だけずれるには6時間を要する。つまり,ある接眼レンズで許される誤差が視野半径に相当するとしても,星が不便なほど中心から外れるまでには1~2時間の追尾が可能である。

ここまで,このような簡易的な据え付け法にかなりの紙数を割いたのは,通例与えられている説明が,目盛環やしばしば駆動時計の存在を前提としているからである。

場合によっては,空の開けた場所を確保する必要から,ポラリスが見えない場所に可搬赤道儀を据え付けなければならないことがある。そのとき最も良い方法は,まずポラリスが見える場所で,とくに水準出しに最大限の注意を払って架台を正確に調整しておくことである。そのうえで,赤緯軸のまわりに望遠鏡を180°回転して両方向を見通し,子午線方向にある適当な距離の杭二本に照準をとってマーキングし,このようにして子午線標を二つ設ける。次に測量用テープを用いて,この子午線ライン全体を東または西にずらし,空が十分に開けている場所に移設すればよい。

都市近郊の観測者で良好な「空き地」を得られる者は少ない。家屋,樹木,あるいはまぶしい街灯にさえぎられ,望遠鏡はしばしば,異なる空域を得るために場所を移さねばならない。このような場合には,三脚の設置位置を明確に定めることで,望遠鏡に最初の「住まい」を与える一歩を踏み出しておくのが賢明である。

そのためには,まず三脚の三本の脚を伸びない鎖でしっかり連結すべきである。このとき,各脚を共通の一点にまとめるのではなく,脚と脚を直接結びつけることが重要である。さらに,各脚には太くてほどよく鋭い金属の石突きを備えておく。そして,支持点の位置関係をこうして決定したうえで,古典的な「点‐溝‐平面」支持(point‑slot‑plane bearing)を次のように構成する。

まず,望遠鏡を立てたい地点(あるいは複数の地点)に,三脚の三本の脚がほぼ円周上に載るような大きさの円を,地面に引っかき描いておく。その円周上に,120°ずつ離れた三点を印す。それぞれの点に,長さ12~18インチの短い柱をよく防腐処理(タール塗りなど)してから地面にしっかり打ち込み,上端をできるだけ水平に整える。次に,各柱の天端に,厚さ約1/2インチの真鍮または鉄の角板あるいは丸板をボルト止めする。全体の配置を図示したのが図171である。

a には,1インチのツイストドリルでほとんど貫通するまで穴を開けることで,円錐状のくぼみを作る。その角度は,三脚の脚先の角度よりほんの少し広くしておく。板 b には,同じくらいの角度を持つV字型の溝を,その軸が板 a の円錐孔を指すような方向に,平削りで刻む。板 c の表面は,完全な水平面のまま残しておく。

このようにしておけば,三脚の一脚をa の円錐くぼみに,もう一脚を b のV溝に,残る一脚を c の平面板の上に載せたとき,毎回必ず同じ高さ,同じ向きに三脚が据え付けられる。したがって,最初に一度だけ赤道儀を慎重に据え付けておき,ヘッドの方位クランプを締めたままなら,望遠鏡本体だけを屋内に持ち帰っても,次に据え付け直すときには最初と同じ調整状態をほぼ完全に再現できる。もし観測位置を別の場所に移す必要がある場合でも,同じような支点を設けておけば,極軸の調整を保持したまま素早く移設でき,毎回の再調整の手間を省くことができる。

[図171――三脚の恒久的な足場。]

器械に赤緯環が付いている場合には,初回の据え付けはさらに簡単になる。三脚を――赤道儀ヘッドを載せた状態でも載せていない状態でもよい――水平にし,極軸を垂直または水平に向ける。その状態で,対物セルの上に赤緯軸と直角方向に水準器を当てるか,または鏡筒を水平にしたうえでその長手方向に沿って水準器を置き,鏡筒を水平にする。そしてこの状態で赤緯環を読み取り,そこから余緯(co‑latitude)または緯度を読み出し(状況に応じてどちらか),赤緯クランプを締めて鏡筒の傾きを固定したまま,極軸を上下させて鏡筒がちょうど水平になるように調整すればよい。

架台が大きく角度調整できない構造だったり,緯度目盛を持たない場合には,緯度テンプレートを作り,赤道儀ヘッドの下に定規を当てるか,極軸自体から下げ振りを垂らすなどして,機械的に所要の緯度角に合わせるしかない。

さて,同じ器械を扱うとして,今度は柱架台に恒久設置することを考えてみよう。この場合には,調整をできるだけ精密に行う価値があり,多少時間をかけるべきである。柱は普通,ボルトでしっかりと組み上げられ,レンガまたはコンクリートのピアの上に据え付けられる。予備調整の手順はすでに述べたとおりである。

まず柱の天面を水平に出し,その上に赤道儀ヘッドを載せ,さきほどと同様に水準器を用いてヘッド自体を水平にする。この調整は,柱の下に金属製のくさびを挟むか,架台に備わっていればレベリングスクリューを用いて行う。次に,緯度目盛または赤緯環を用いて緯度を設定し,前述の方法で極軸をおおよそ子午線の方向へ向ける。

この段階では,まだ数分角程度の残留誤差が残っている可能性が高く,固定架台では,これを可能なかぎり小さくしておくべきである。まず最初に,望遠鏡本体の光学軸の赤緯を極軸の赤緯――すなわち天の北極の赤緯――に合わせる。これは図172から分かるような方法で行う。

ここで p は極軸,d は赤緯軸である。望遠鏡を用い,十字線を使って子午線近くにある星を導入する。すなわち,赤緯の変化が非常にゆっくりな星を選ぶ。最初に,望遠鏡を極軸の東側に向けた位置 A から観察し,次に望遠鏡を極軸のまわりに180°回転させて西側の位置 B に持っていく。このとき,視線の延長 b は図のように,最初の位置の延長 a よりも低く見える。これは,位置 A において望遠鏡が高く向き過ぎている場合を示している。

[図172――光学軸の整列。]

言い換えれば,この星の見かけの高度は,A 位置と B 位置とで,Ap(極軸)のなす角の二倍だけ異なる。赤緯環の読みをこの二つの位置で読み取り,その中間値をスロー・モーションで取ることで,赤緯環の目盛精度が許すかぎり正確に補正できる。

この段階で,望遠鏡はまだ星を正確には指していないかもしれない。しかし鏡筒を A から B へ,そして B から A へと振ると,視野内の星々は円弧を描いて動く。その円弧は,接眼レンズ内の絞りで定まる視野中心のまわりにほぼ同心円となるはずである。もしそうでなければ,赤緯スロー・モーションをほんのわずか一方または他方に調整してやれば,かなり高倍率の接眼レンズを用いた場合でも,十分な精度で同心円運動となるようにできる。

こうして,望遠鏡本体の光学軸は極軸と平行になったが,予備調整にもかかわらず,極軸自体がなおわずかにずれている可能性がある。そこで再び図170の極域星図に立ち返り,望遠鏡を A から B へ振り,また B から A へ戻しながら,北極の両側0.5°以内にある数個の8~10等級の星――口径3~4インチの望遠鏡なら容易に見える――を用いて,星の描く円弧が天の北極のまわりで同心になるように,極軸の方向を慎重に微調整する。このときも,望遠鏡本体の赤緯クランプは締めたままにしておく。粗い調整には,より広い視野を持つファインダーを利用すればよい。

もし,刻みが1分角またはそれ以下の目盛環を備えていれば――中型器械ではふつうそこまで細かくないが――,これらの読みを利用して極軸および赤緯環の設定や,他の調整を行うこともできる。

それができない場合には,まず光学軸を極軸と平行にした位置で赤緯環を90°と読み取るように調整し,その後で極軸の調整を完了したうえで,赤経環を合わせる。赤経環は,望遠鏡を子午線内で振り上げ,既知の赤経を持つ任意の星が視野中央の十字線を通過する瞬間を待って,そのときの赤経を赤経環の読みとしてクランプすればよい。

残る可能な調整は二つある。極軸と赤緯軸の直角性,および望遠鏡光学軸と赤緯軸の直角性である。一般に,これらについては調整機構が与えられていない。これらは製作者が出荷時に調整済みと仮定されているからである。もし後者の調整が無視できないほど狂っていれば,光学軸と極軸の平行出しを行う際に,視野の横揺れとして現れる。その場合には,鏡筒を抱える鞍の一端の下に,錫箔や紙の薄いスペーサーを挟み込むことで修正できる。前者――極軸と赤緯軸の直角性――の調整は,厳密には製作者の仕事である。

大型器械に対する厳密な調整方法の詳細については,読者は Loomis 著『Practical Astronomy』28頁以降[31]を参照されたい。ここで扱った調整は,駆動時計,細かい目盛環,および正確な恒星時の知識を持たずとも効果的に行えるものである。ただし,これら三つの補助手段のうち,最初と最後は,図168のような大きさの望遠鏡を固定架台に載せる場合には,本来備えておくべきものである。

[31] Sir Howard Grubb による二つの有用な論文も参照されたい。The Observatory 第VII巻9頁,43頁。ならびに『Journal of the Royal Astronomical Society of Canada』1921年12月号,1922年1月号。

極軸を天極に合わせる方法として,接眼部に特別なグラティキュール(特殊十字線)を用いたり,望遠鏡に補助装置を取り付けたりする,いくつかのかなり洗練された手法がある。その一般的な原理は,ポラリスと天の北極との距離を,適切な時角の位置に自動的にセットできるようにすることにある。Gerrish による方法(Popular Astronomy =29=, 283)は,非常に簡潔で美しい例である。

しかしながら,ここで概説した簡易法は,通常の目的には概して十分な精度を与える。さらに高精度が必要な場合には,より伝統的な天文学的方法に頼らざるを得ない。

図171に示したような恒久的な足場を望遠鏡に与えれば,極軸調整をやり直す必要はほとんどなくなる。ここまで検討してきたような柱架台では,望遠鏡本体は屋内にしまっておき,使用時に再び据え付けても,設定を乱す危険はごくわずかしかない。しかし,少なくとも架台の方には何らかの雨風よけを用意しなければならない。

ターポリン(防水シート)が推奨されることもあり,とくにその前にゴム布製の袋をゆったりと被せてからかけるなら,実際によく機能する。さらに良いのは,銅板または亜鉛鉄板で作った箱型カバーであり,柱にボルト留めしたベースを深く覆うように密着させ,継ぎ目にパッキングを挟んで水密にする方法である。

しかし実際に,図168のような5インチ級の良質な器械を扱うとなると,たちまち恒久的な建物(好みなら「天文台」と呼んでもよい)を設ける問題が持ち上がり,簡単には引き下がってくれない。

もちろん,望遠鏡が常に所定の位置に置かれ,いつでもすぐ使えるようになっていることは,いつでも便利である。観測者の中には,望遠鏡をまったくの屋外に置いた方が観測条件としては好ましいと感じる者もいる。しかし大半は,たとえ部分的であっても風よけを好み,厳しい天候のときには,どんなに簡素であれ,何らかの屋根の保護をありがたく思うものである。

結局のところ,問題は主として気候によって決まる。シーイングの質が最良である夜に,風がほとんどなく,望遠鏡の鏡筒が揺れない程度の微風しか吹かない地方では,望遠鏡は屋外で,たとえ使っていないときだけ単純な防水カバーをかけるにとどめても,まったく差し支えない。

他の地方では,最も澄んだ夜が,しばしば一様な環境をもたらす,穏やかで持続的な風を伴う夜であり,その代償としては,器械のときおりの振動と観測者自身の不快さを受け入れねばならない。そのため,望遠鏡の収容方法には実にさまざまな実践例があり,そこに常に費用という避けがたい要因が加わることになる。

最も単純な収容法は,固定された器械に対して,望遠鏡をすっぽり覆い隠せる移動カバーを設け,観測時にはそれを持ち上げるか横へ滑らせて,望遠鏡を完全に屋外空間にさらすようにすることである。この方式では,風にはさらされるものの,ドームの開口部付近に発生するような乱流からは解放される。こうした廉価で簡素なシェルターは,小型・大型を問わず,古くから使われている。

[図173――最も簡単な望遠鏡小屋。]

たとえば,ハーバード大学天文台の機器のうち,いくつかの小型アストログラフは,図173に示すように設置されている。ここには,短いピアの上にフォークマウントを持つ器械が二台あり,亜鉛鉄板製のフードで覆われている。フードは二つの部分から成り,手前のカメラに見られるように,下方へ開く縦型ドアと,基板に蝶番で取り付けられた本体フードからなる。後部ドアのロックを外して開くと,本体フードは基板を支点として後ろ側へ倒すことができる。少し奥には,フードを閉じた同型のアストログラフが見える。全体としてきわめて単純,安価であり,焦点距離がせいぜい2~3フィート程度までの器械には非常に有効である。

ごく似た方式が反射望遠鏡にも成功裏に適用されており,その一例が図174である。ここに示した器械は,口径8½インチのBrowning製赤道儀である。カバーは図173と同様の開閉方式で設けられており,非常に効果的であることが確認された。似た構成でドームの開口部から外をのぞく反射望遠鏡と比べて,はるかに均一な観測条件を保つことができ,結果としてより良好な像質が得られる。

[図174――小型反射望遠鏡用カバー。]

屈折望遠鏡の場合は,ピアが高くなり,鏡筒も長いため,この種のカバーは扱いにくくなる。しかし,若干の工夫を加えれば,屋外での運用が有利な気候条件のもとでは,きわめて良く機能する。良い例として,ハーバード天文台のジャマイカ・マンデビル観測所にある赤道儀が挙げられる。この11インチ屈折望遠鏡は,およそ20年間図175に示すような方法で収容されている。

この11インチ屈折望遠鏡は,主として惑星表面の詳細観測に用いられており,12インチ口径・焦点距離135フィート4インチの極望遠鏡の隣に設置されている。後者は月面写真アトラスの作成やその他の特殊研究に用いられる。赤道儀の収容建物は,鏡筒を低く向けた状態でちょうど収まる程度の大きさで,南側に開口し,観測時には北側へレール上を転がして図示の位置まで移動させる。そこまで動かすと,建物は器械から十分に離れ,望遠鏡は完全に開放状態で使用できる。

[図175――11インチ屈折用のスライディング・ハウジング。]

ジャマイカの気候は極めて湿潤であるにもかかわらず,年間を通じてかなりの部分で驚くほど良好なシーイングをもたらし,望遠鏡を完全な屋外状態で使っても,観測者にはほとんど不都合がない。この方式やそれに類するあらゆる収容方法の成否は,何よりもまず局地的な気候に左右される。とりわけ,良好なシーイングの時間帯における風の状態が決定的である。すっかり露出した器械は,ドームに収容されたものよりも突風にはるかに影響されやすい――これが問題の核心である。ただしドームは,ごくわずかながら,極寒の際に観測者を保護する効果も持っている。

[図176――大型反射望遠鏡用スライディング・ハウジング。]

適切な架台を用いれば,非常に大きな反射望遠鏡でさえ同様の方法で収容できる。例えば図176は,故Dr. Common の36インチ反射望遠鏡を示したものであり,開放フォーク式赤道儀に載っていた。図中の破線が,短いピアとフォーク付き極軸を含む望遠鏡本体を示している。

その周囲に建てられているのは,観測台と一体化した可動式の建屋であり,車輪 T によって円形レール R 上を回転できる構造になっている。建屋は,図では一部破断して示されているような,低い波板鉄板の側壁と妻壁から成り,鏡筒を南向きにほぼ水平近くまで下げたときに,ちょうど収まる程度の寸法に作られている。側壁上部には,十分後方まで延びるよく補強されたレール WW が設けられている。このレール上を,前端に観測者用の小ドアを持つ屋根部 X,X,X が前後に滑走する。

部材 U は,この建屋および観測用プラットフォーム全体を支える骨組みであり,プラットフォームへは梯子 Z で上がる。梯子には,カウンターウェイト付きの観測椅子が備えられている。観測を始めるには,まず屋根端のドアを開け,屋根を図中の破線位置まで後退させ,鏡筒を持ち上げる。次いで,建屋全体を回転させて,鏡筒を必要な方向に向けられるようにする。

この構造はよく機能したが,風雨の影響を受けやすく,やや扱いにくい面もあった。鏡筒がスケルトン構造であり,かつ気候が穏やかならば,この計画は非常に優秀な大口径望遠鏡用シェルターとなり,きわめて低コストで優れた保護を与え得る。

フォークマウントでは鏡筒を水平近くまで倒せるので,口径8~10インチ程度までの器械であれば,ベースにぴったり合う軽量なカバーを作り,全体を一体として持ち上げてかぶせる方式で非常に良く保護できる。

しかし,これらのシェルターが成功するかどうかは,やはり気候条件に大きく依存する。これらはいずれも,三脚架台と同様,屋外観測が可能な状況を前提としており,風や寒さからの保護はほとんど与えない。観測者に完全な保護を提供しようとすれば,第5章で示したような特殊な装置に頼るほかないが,常設の観測小屋――質素なものから凝ったものまで――に望遠鏡を据え付けることで,条件をかなり改善することはできる。

「天文台」という語は,いささか大げさに響くかもしれないが,ごく控えめなものであれば,最も簡素な自動車用ガレージよりも少ない費用で建てることができる。経済的に見て大きく異なる点は,どんなに酷評される自動車であっても,拾い上げて裏玄関に運び込むわけにはいかないということであり,本来は雨ざらしにしておくべきではないのに対し,望遠鏡はもともとその程度の扱いが可能だ,ということである。

次の発展段階は,屋根を一つまたは複数(通常は二つ)の部分に分けてスライドさせる,いわゆる「スライディング・ルーフ」式望遠鏡小屋である。この場合,建物自体は簡単な正方形の構造であり,器械本体に動き回る余裕ができる程度の大きさにする。側壁の高さは,鏡筒をほとんど水平まで倒したときにも干渉しない程度,かつ観測者に十分な頭上空間を与える程度にとどめる。屋根は中央で密着して重なり合い,各半分は建物両端から外に張り出したアウトリガー上のレールを走って外側へとスライドする。

望遠鏡を使用するときには,屋根の各セクションを十分に動かして,観測に足る広さの開口部を作る。しばしば図177に示すように,ほとんど全開にすることもある。ここに見られるのは,ハーバード天文台にある16インチ Metcalf 写真用ダブレットの小屋であり,この器械は図139に示したような開放フォーク式架台に載っている。

[図177――スライディング・ルーフ式観測所。]

スライディング・ルーフ型は,観測者と器械の双方にある程度の保護を与える構造としては,全体としてもっとも単純な「天文台」と言える。フォークマウントの望遠鏡にとっても,実用上十分な空の開け方を与える。というのも,多くの場所では,地平線から30°以内のシーイングは著しく悪いからである。もしそれより低い高度まで視野を広げたいなら,ピアを少し高く積み増してやればよい。

このスライディング・ルーフ形式には,少し考えれば無数の変種が思いつくだろう。その一例として興味深いのは,ハーバード天文台の24インチ反射望遠鏡(焦点距離11フィート3インチ)の収容方式である。これは図139に示された元のドーム式駆動装置を持っていたのと同じ器械であるが,現在では観測所の下部構造のみが残り,上部構造は,原理的には図176のCommon博士3フィート反射のハウジングと非常によく似たものに改造されている。カバーを開いた状態を示したのが図178である。観測所の北側にはアウトリガーが張り出しており,その上を上部のハウジングがスライドして,低く回転するターレットから十分離れた位置まで移動できる。ターレットは,一般には写真乾板ホルダーを,必要に応じて追尾用接眼部をも取り付けるための口金にアクセスする役割を果たしている。

鏡筒は完全に水平までは下ろせないが,この地点で実際に観測上利用価値のある空域は十分カバーできる。また,使用していないときに与える保護も非常に完全である。観測所を閉じるときは,鏡筒を南北に向けて低くし,スライディング・ルーフを元の固定位置まで戻せばよい。ターレットは手で容易に回転できる。

[図178――ハーバード24インチ反射のターレット式ハウジング。]

観測者に対して最大限の保護を与えることを求めつつ,しかも第5章で述べたような高度に特殊な収容方式を用いない範囲で「標準型」を考えるとすれば,おなじみのドームが,天文学者の主たる頼みの綱であり続けている。大きなドームでは通常,鋼鉄骨組みに木材を張り,外側を銅板または鉄板で覆う。小型ドームでは,フェルトにルーベロイドを貼ったものがよく用いられ,木製骨組みに塗装キャンバスを張る例も時折見られる。

しかし,伝統的な構造を取るドームは,もっとも小さなものでさえ重くて高価になりがちであり,とくにシャッターおよびシャッター開口部周りの構造に関して,自作には多くの困難が伴う。半球体は骨組みを組むのも覆いをかけるのも簡単ではなく,曲面を走るスライド式シャッターはとりわけ厄介である。

[図179――元祖「ロムジー」観測所。]

そのため,小型観測所には,他の形の回転屋根が望ましく,最も簡単で安価な仕組みは,半世紀ほど前にロムジーの牧師で優れたアマチュア天文家であったE.L. Berthon 氏が考案した「ロムジー(Romsey)型」観測所に具現されている。この構造のポイントは,回転屋根に非対称な棟を設けることで,通常の縦スライド式シャッターの代わりに,屋根窓のように蝶番で開閉する平板シャッターを用いられるようにした点である。このシャッターを開けば天頂を越えた空まで露出し,閉じれば立ち上げたコーミング(立ち上がり縁)に密着して防水接合を形成する。

Berthon の原著によるこの観測所(9¼インチ反射を収容)の説明は,English Mechanic and World of Science 第14巻に見られ,そこから図179が転写されている。この図のうち,図1は全体の立面図,図2は平面図であり,いずれも縮尺は1フィートあたり1/8インチである。平面図で A,A は主梁,P は望遠鏡用のピア,T はトランジット用ピア,C は時計である。図3,4,5は各部の詳細図であり,図5では A が母屋,b が基礎リング,c が壁の上枠,d が屋根を支えるサッシローラー,e が屋根を側方から押さえるガイドローラーである。

この構造は,トランジット用の付属室なしでごく容易に建てることができるし,実際現在では,多くの観測者が時刻を無線で取得する方をはるかに容易と感じている。主となる回転リングは,普通の7/8インチ厚板から,10枚か12枚(あるいはそれ以上),都合のよい枚数のセクションとして切り出し,継ぎ目を互い違いに重ねてネジでしっかり締め付けて組み上げる。これを二重リングとして重ね,場合によっては三重にすることもある。

原型の「ロムジー」観測所では屋根は塗装キャンバス製であったが,ルーベロイドや亜鉛鉄板にルーフィングペーパーを内張りしたものでもよく機能する。シャッターは片開きでも両開きでもよく,必要に応じてカウンターウェイトでつり合いを取ることもできる。壁の骨組みは,図に示すような地面に埋めた柱でもよいし,基礎の上に土台(シル)を据えた通常の枠組みでもよい。外壁材も何でもかまわない――本実例のような本実板張りのほか,ワイヤラップにモルタルを塗ったもの,中空タイル,コンクリートブロックなどで構成できる。

Chambers の『Handbook of Astronomy』第II巻には,「ロムジー」型観測所についてのかなり完全な詳細説明が載っており,原典よりもアクセスしやすい。

[図180――より堅固な「ロムジー」型。]

この計画を非常にうまく応用した例が図180であり,その説明は Popular Astronomy =28=, 183 に載っている。この観測所は直径約9フィートで,4インチ望遠鏡を収容しており,粗いコンクリート基礎の上に高さ6フィートの中空釉タイル壁を築き,その上端をよく水平に仕上げている。その上に二層構造のリングプレートを載せ,その上面には2インチ幅の木片で二重の走行レールを作り,両者のあいだに数インチの間隔を取っている。このレール溝のなかを,6個の2インチ径トラックキャスターが走り,それが同様のリングプレートに取り付けられている。ドーム骨組みはこの上に組まれている。全体としてきわめて整然とした堅実な構造であり,多くの部分を所有者自身の手で製作したが,ほとんどどこでも非常に少ない費用で建設可能である。

同じ巻には,この一般的な計画の別の興味深い変種も掲載されており,それが図181である。これも4インチ屈折用で,ドーム部の直径はわずか8フィート4インチである。基礎は前例同様コンクリートだが,壁はスプルース材で枠組みを作り,本実板張りと「ビーバーボード」内張りで構成されている。

リングプレートは3層構造で,各層12枚のセクションからなり,ドームを載せる側のリングも同様の構成だが,ドームの形状に合わせて十二角形のまま残されている。重量は4個のゴムタイヤ付きトロリーローラーで支えられ,図179と同様の側方ガイドローラーも備えている。

ただしドームそのものは完全な亜鉛鉄板製であり,12枚のゴア板を立ち上がりシームで接合し,折り曲げ,リベット留めし,はんだ付けしている。天頂付近には短いスライド式シャッターがあり,内部の枠の上に引き込まれる。メインシャッターは外側から取っ手で取り外す形式になっている。

[図181――小型観測所用軽金属ドームの詳細。]

「ロムジー」型および類似の観測所は,ごく控えめな費用で建てることができる。場所によってかなり差はあるが,現在の物価でおおむね200ドルから600ドル程度であり,口径4~6インチの屈折を収容するには十分な大きさを持つ。回転屋根の直径は9~12フィートの範囲になるだろう。反射望遠鏡を用いる場合には,同じ大きさの建物で,およそその倍の口径の鏡を収容できる。というのも,同じ口径なら反射望遠鏡は通常,屈折に比べてはるかに短いからである。

スライディング・ルーフ式や,さらに単純なスライディング・シェルター式の収容施設は,採用する構造に応じてやや安価に済む。れんが造りにすれば,前述の金額がおよそ倍になる可能性があるが,それほどの堅牢さは通常は不要である。ただし,高価な器械の覆いは耐火性を持ち,容易に破られないものであることが強く望ましい。対物レンズや付属品の盗難は,残念ながら皆無ではなく,破壊行為の危険も忘れてはならない。

しかしながら,これらを勘定に入れても,望遠鏡を収容する建物を設けることはそれほど難しくない。そして実際のところ,ごく控えめな自動車一台分の価格で,実際に役に立つだけの大きさの望遠鏡を購入し,かつそれを収納する建物まで整えることができるのである。

第十一章

シーイングと倍率

天体を初めて望遠鏡でのぞいたときほど,しばしば人を落胆させるものは少ない。初心者は,火星が精妙な模様に満ちた大きな円盤として描かれた地図をさんざん見せられているのだが,実際に目にするのは,小さくびくびく動く光の玉であり,目に見える細部と言えば卵以上のものはほとんどない。実際には,まずまずの衝において,たとえ最小クラスの天体望遠鏡であっても,火星はまさに満月と同じ大きさに見えているのだと信じるのは,ほとんど不可能である。同じく二重星を見ようとするときも,二つの,小さく色あざやかな円板を見る代わりに,形も色もわからないあいまいなちらつきしか見えないことが多い。

実際のところ,世界のほとんどの場所で,ほとんどの時間,シーイング条件は悪く,望遠鏡は本来の力を発揮する機会を与えられていない。そして概して言えば,望遠鏡が大きくなればなるほど,その機会は悪くなる。著名なイギリス人天文学者の一人は,当時としても大型に属する優秀な屈折望遠鏡を所有していたが,過去15年間に「第一級」と呼べる夜をたった1回しか経験していないと述懐している。

だが実情は,この言葉の含意ほどには悲観的ではない。というのも,かなり条件の良くない気候であっても,多くの夜で,どこかの時刻に1~2時間程度のかなり良好なシーイングが得られるからである。さらには,直前の天候状態とはほとんど関係なく,いわゆる一般向け天文学書の挿図が本当になるような夜がふいにやって来ることがある。そのときには,星はくっきりした環に囲まれた静かな点に縮み,どれほど高い倍率をかけても足りないように思われるほどである。

悪いシーイングの実のところをよく理解するには,熱いストーブをはさんでオペラグラス越しに新聞を読もうとしてみればよい。もし大気中の実際の運動を可視化できるならば,そこには奇妙で乱流に満ちた光景が現れるだろう――障害物の周囲を回り込みながら曲がりくねって吹き上がる急流,ゆっくり動く渦,外洋船の四分の一船長線上でカモメが頼りにするような上昇斜流,航空機乗りの恐れる大きな下降気流,そしてそのすべての上に,あらゆる方向へ絶え間なく伝わるさざ波である。

そして空気の運動には,たいていストーブの上のように温度変化が伴い,屈折率を変動させ,遠方の星から来た光線をゆがめて,像をすっかり台無しにしてしまう。

良好な解像を得る条件は,われわれが見通す大気が,その温度・湿度・流れの向きがどうであれ,一様であることである。不規則な屈折こそ最も恐れるべきものであり,とりわけ急激で頻繁な変動が問題である。そのため,地表付近や建物のまわり――とくに屋根や煙突が熱を放射するあたり――では,ごく普通にトラブルが起こる。これは天文台のドームの内外であっても例外ではない。

多様な気候的「気まぐれ」を経験してきた W. H. Pickering 教授は,北大西洋岸地方に,自身の知るかぎり最悪の観測条件という不名誉な第一位を与えている。著者もこれに喜んで同意する。しかしそれでも,ときおり――とくに真夜中を過ぎたあたり――には大気が静まり,他の条件さえ良ければ,像質はかなり満足できるものになり,ときにはじつに優秀になる。

温度と湿度そのものは,どうやらそれほど大きくは影響しないようであり,風が器械を揺さぶらないかぎり,適度に安定した風は比較的無害である。そのため,ハーバード天文台マンデビル(ジャマイカ)観測所,標高7000フィートで冬には雪に閉ざされるフラッグスタッフ(アリゾナ),イタリア,エジプトといった,きわめて異なる環境の地点で,きわめて素晴らしいシーイングが得られている。最初のマンデビルは温暖で,降雨量と露の付着が非常に多い。第二のフラッグスタッフは乾燥しており,季節による気温変化がかなり大きい。他の二つはそれぞれ温帯と高温の地域である。

均一性の重要性を示す,おそらく最も印象的な証拠は,Evershed がインドのある観測所で得たものである。そこでは,田に水が張られた直後に,条件が急速に良化した。田に水を張ることで気温が安定化する傾向が生じたためだと思われる。山頂観測所は,フラッグスタッフ,ハミルトン山,ウィルソン山のように非常に良い場合もあれば,パイクスピークのようにきわめて悪い場合もある。後者はおそらく,局所的な条件のためであろう。

実際,トラブルの多くは,広域の大規模な気流というよりも,近くにある波やさざ波のような大気のゆらぎに起因している。しかもそのさざ波は,しばしば望遠鏡の口径と比べて小さく,ときには鏡筒の内部やそのすぐ外側にまで存在する。

これらの困難とは別に,大気の透過性――浮遊物に関する透過性――に関する問題もある。これは像の解像そのものには影響しないが,光量を減らし,微光星や星雲の観測を深刻なまでに妨げることがある。都会近くの煙はこの状況を悪化させるが,とくに問題となるのは,持続的または一時的に現れる天候の一般状態である。

しばしば,この大気の透明度さえ欠けなければシーイングは申し分ない,という夜がある。その場合は,月や惑星表面の模様,それからあまり暗くない二重星の研究などは,ほとんど妨げられることなく続行できる。しかし実際の光量の損失は,空に雲が一片もなく,霧も目立った霞も見当たらない日中であっても,恒星等級で1等級以上に達することがある。

1921年には,一年のうちかなり多くの夜に,ミザールの小さな伴星であるアルコル(80 UMa,ほぼ4等星)が,かろうじて見えるか,まったく見えないことさえあった――それ以外の点ではシーイングは十分良かったにもかかわらずである。通常,本当に澄んだ夜なら6等星は見えるはずであり,温帯の輝く冬空や,熱帯の澄んだ空気のもとでは,多くの人の目がこれより良い結果を示し,6.5等や7等,ときにはさらにいくらか暗い星まで見える。

空気の波やその他の不規則性と望遠鏡視界との関係は,20年以上前に Douglass によってかなり徹底的に研究され,非常に興味深い結果が得られている(Pop. Ast. =6=, 193)。要するに,口径4インチから24インチまでの望遠鏡で慎重な観測を行った結果,実際の問題は,いわば「さざ波」にあることがわかった。すなわち,おおよそ4インチから3/4インチ,あるいはそれ以下の波長を持つ乱れである。長い波は稀であり,相対的に重要度は低い。というのも,それらの効果は像全体を押し動かす方向に働き,像の細部を破壊することが主である短い波とは異なるからである。

この大気の「さざ波」は,おそらく大規模な雲の形として見えるような気流中の接触変位に対応している。明らかに,屈折率差をともなうこうしたさざ波が望遠鏡対物レンズの前方に存在すれば,対物レンズ全体での有効焦点距離は場所ごとに異なることになり,安定でシャープな像を得ることはまったく不可能になる。

大ざっぱに言えば,Douglass は,波長が口径の半分を超えるような波は,像全体を少し揺らす程度であり,像を本質的に悪化させることはないのに対し,波長が口径の1/3以下の波は,分解能に重大な悪影響を与え,しかも波長が短いほど,また像の大きさや細部が小さいほど,その害は増大することを見いだした。

したがって,場合によっては,絞りを用いて対物レンズの有効口径を減らすことで,さざ波の相対的波長を長くし,シーイングをかなり改善できることになる。これは実際の観測においても確認されており,とくに大口径でシーイングが明らかに悪いときに顕著である。言い換えれば,人はしばしば,解像力(resolving power)の減少で失う以上のものを,像の安定性の増大で得ることができるのであって,実際に得をするかどうかは,そのとき行おうとしている観測の種類にもよる。

こうして我々は,いやおうなく,いささか抽象的な「解像力」の問題へと導かれる。これは本質的には光の回折理論に依拠し,実際には回折像の性質やその構成要素の見え方を修正する,多くの要因に左右される。

光が穴やスリットを通るとき,光波は縁で曲げられ,互いに重なり合って干渉し合い,開口部の大きさと形に依存する明暗のパターンをつくる。これは,開口の明るい中心像のまわりに分布する。遠方の街灯を,開いている傘越しに眺めてみるとよい。この効果がよくわかるだろう。パターンの外側に現れる像は,中心像から離れるにつれてだんだん暗くなっていく。

ここで当面,詳細は後にまわしておくとして,望遠鏡視界における効果を述べると,実際の角直径がまったく無視できるほど小さい星(たとえば0.001″程度)は,理想的条件のもとでは図154のような像として表される。これは,はっきりとした大きさを持つ中心像(円板)と,そのまわりに弱いが鋭く縁取られたいくつかの環があり,それらの強度は外側へ向かって低下していくような像である。シーイングが悪いときには環はまったく見えず,中央の円板も,本来の大きさの数倍の拡がりを持つ明るいぼんやりとした斑点に過ぎない。

星像の見え方の変化は,シーイングの質を示す非常に良い指標である。したがって,この見え方を明確に規定しておけば,世界の異なる場所にいる二人の天文学者が,互いのシーイング条件を比較的定量的に理解することができる。この目的のために,主として W. H. Pickering 教授の努力によって,かなり一般に用いられるようになった標準シーイング尺度がある(H. A. =61= 29)。これは口径5インチの望遠鏡での観測に基づき,次のように定義されている。

標準シーイング尺度(STANDARD SCALE OF SEEING)

  1. 像の直径が,通常,第3環のほぼ2倍。
  2. 像の直径が,ときおり,第3環の約2倍。
  3. 像の直径が,第3環とほぼ同じで,中心がやや明るい。
  4. 円板がときどき見え,明るい星では環の円弧が時折見える。
  5. 円板が常に見え,明るい星では円弧がしばしば見える。
  6. 円板が常に見え,短い円弧が絶えず見える。
  7. 円板が時に鋭く定義され,(a) 長い円弧が見える。(b) 環が完全な輪として見える。
  8. 円板が常に鋭く定義され,(a) 長い円弧が見える。(b) 環が完全な輪として見え,すべてが動いている。
  9. 環が (a) 内側の環は静止して見え,(b) 外側の環はときおり瞬間的に静止して見える。
  10. 環がすべて静止して見え,(a) 環と環の間の細部が時折動いて見える。(b) 環と環の間に細部は見えない。

この尺度の1~3は非常に悪いシーイングを,4~5は悪いシーイングを,6~7は良いシーイングを,8~10は卓越したシーイングを表す。1~3のシーイングがどれほどひどいかは,第3の明るい回折環の直径が,本来あるべき星の円板の直径の約4倍であることを思い出せば,おおよそ見当がつくだろう。

留意すべきは,一定の大気条件のもとでは,大口径望遠鏡ほど,この尺度上の評価が低くなるという点である。すでに述べたように,大気の通常のさざ波は,5インチ開口にはほとんど影響を与えない大きさであっても,15インチ開口には非常に大きな悪影響を及ぼしうるからである。

Douglass(前掲論文)は,最大24インチ開口までの望遠鏡でシーイング条件を慎重に比較した結果,4~6インチの開口と18~24インチの開口とのあいだに,尺度上2~3段階に及ぶ体系的な差が存在することを見出した。最小の開口では,像は単に大きく揺れ動くだけであったが,その原因となっている大気の波は,大口径では像を深刻に損なうようなものであった。これは予想された通りである。

また,天頂近くの星と地平線付近の星とでは,平均的なシーイングの質に大きな差がある。これもまた,後者の方が大気の乱れにさらされる経路が長いことによる。Pickering の実験(前掲論文)によれば,高度20°と70°とでは,尺度上ほぼ3段階に及ぶ差があることが示されている。この,たいへん重要な差は,図182に示されている。これは彼の報告から転写したものである。

下側3本の曲線はケンブリッジでの観測に基づくものであり,その他はジャマイカ各地で得られたものである。これらは,地域ごとの体系的な違いを明瞭に示すとともに,高度40°以下で像質が急速に悪化していることを示している。これは,高度40°以上で無理なく観測できるように配慮することの重要性を物語っている。

[図182――高度によるシーイングの変化。]

[図183――エアリーの回折パターン。]

最良の瞬間に現れる回折パターンと,理論的な形との関係は非常に興味深い。理論的に完全な対物レンズによる回折像は,かなり以前に Sir George Airy によって解析され,中心円板ならびにそれを取り巻く環における光の分布が正確に計算された。

その結果を中心から外側へ向かって示したのが図183である。この図では,縦軸(座標)は相対強度を,横軸は任意のスケールによる光軸からの距離を表している。一見してわかるように,星像は中心で最大の輝度を持ち,最初は急速に,その後は次第にゆっくりと強度が低下して極小に達し,そこから非常にゆっくりと増加して第一の明るい環の極大に至る。さらに同様にゆっくりと減少して第二の環で再び増加し,以下同様に続く。

[図184――星に対する回折立体。]

星円板の中心の明るさを1としたとき,第一環の最大輝度は0.017,第二環は0.004,第三環は0.0016である。環は等間隔であり,星円板の半径は環間隔とほぼ等しい。人間の視覚は,円板の縁や環の強度がゼロになるところまで追っては見えない。そのため,円板の見かけの直径は,第一の暗環までの理論的直径よりもかなり小さくなる。また,環そのものも,横軸のスケールをどれほど縮小しても,図に示されているよりも実際には細く鋭く見える。明るい部分が存在するとき,人間の目は,そのそばにあるごく弱い光を,閾値まで忠実に感じ取ることはできないからである。

三次元的に考えると状況がより鮮明になる。それを示したのが図184であり,星に対する「回折立体」である。この概念は M. André(Mem. de l’Acad. de Lyon =30=, 49)によるものである。ここでは,立体の体積が受光した全光量を表し,任意の点での高さがその点での光の強度を示す。

どこかで水平面による断面を取れば,その位置での円板の見かけの直径が得られ,頂点までの高さがそのときの強度,さらにその断面より上の体積が残りの光量を表す。理論的には,総光量のおよそ85%が中心の円錐部分に属している。

明るい点の存在下で,空の背景から識別できる光は,一定の強度以上のものに限られるとすれば,弱い星ほど円板が小さく見える理由や,濃いフィルターで全体の光を落とすことで,「立体」の周縁部の弱い光を消してしまえる理由がよく理解できるだろう。実際には,回折によって定まる像そのものは星の等級に依存しないにもかかわらず,生理的な要因が星像の見え方を強く変化させているのである。

実際には,暗い星では全体的な輝度が低下するため,円板(星像)の見かけの直径は小さくなり,背景の空に対して見える環の数も減少する。

回折パターンのスケールは,望遠鏡の解像力を決定する。Airy の原論文(Cambr. Phil. Trans. =1834= p. 283)では,このスケールが次式で与えられている。すなわち,環系の任意の極大または極小までの角度 α は,

sin α = n λ / R

によって定義される。ここで λ は当該光の波長の数値(寸法)であり,R は対物レンズの半径である。

したがって環系の大きさは,対物レンズの口径に反比例し,考慮する波長に比例して変化することがわかる。すなわち,対物レンズが大きいほど円板とその周囲の環は小さくなり,波長が長い(より赤い)光ほど回折像全体は大きくなる。理屈から言えば,環には色がついているはずだが,照度が非常に低いため,その色が実際に見えることはほとんどない。

今,Airy の一般理論によれば,最初の暗環(第一暗帯)に対しては n = 0.61,第一明環(第一明帯)に対しては n = 0.81 である。したがって,もし二つの星を,片方の中心円板がもう一方の第一暗環の位置に来たときに分離して見えると仮定するならば,両星の中心間の角距離 α は

sin α = 0.61 λ / R

となる。ここで λ をスペクトルの最も明るい部分,すなわち黄緑域の約560 μμ とし,sinα≒α(ラジアン)と見なせば,任意の口径に対するこの「仮定上の」分離限界を計算できる。560 μμ は,ほぼ 1/45,500 インチに等しい。5インチ望遠鏡を仮定すると,この式から,中心間隔が約1.″1の二星を分解して見せうるはず,という結論になる。

実際には,これよりもやや良い結果が得られることが多い。これは,すでに述べた理由から,中心円板の見かけ直径が,第一暗環までの理論直径よりも実際には小さいことを示している。もちろん,星の明るさも関係する。きわめて明るい星では,円板は大きく見え,逆にきわめて暗い星では,そもそも一つの星を認めること自体が難しくなり,二重星を見分けるのはなおさら困難である。

この解像力の問題について最も徹底的な研究を行ったのは,かなり以前に Rev. W. R. Dawes である(Mem. R.A.S. =35=, 158)。彼は,長年にわたって様々な口径の望遠鏡を用いて観測を行い,その最終結果として,後に「Dawes の限界(Dawes’ Limit)」として知られるようになった規則を確立した。

Dawes の結論を要約すると,平均的には,口径1インチの望遠鏡で,6等星どうしの二重星を,中心間隔4.56″ まで分離して見ることができる,というものである。一般化すれば,中程度の明るさでほぼ等光度の二重星に対して,任意の望遠鏡の分離能はおよそ

4.″56 / A

で表されることになる。ここで A は望遠鏡の口径(インチ)である。

長年にわたる経験は,この近似則がきわめて便利であることを示してきたが,同時に,あくまで近似でしかないことも率直に認めねばならない。これは,先ほど中央波長に対する回折理論に基づいて得られた値よりも,明らかに厳しい限界になっている。両者を一致させようとして,回折理論において波長を 1/55,000 インチと仮定する試みもあったが,この値は可視域でもかなり青側に寄った部分に相当し,輝度が低いため,望遠鏡の視覚観測では事実上重要ではない。

実際には,二つの近接した光点を別々のものとして認識できるかどうかは,物理的要因と生理的要因とが複雑にからみ合った結果に依存しており,その正確な関係はまだ解き明かされていない。出発点としては,すでに説明した回折の原理があり,それによって星円板と第一暗環との関係が定義される。しかし,どんな場合でも,人間の目がこの第一暗環まで星円板の縁を見通すことはない。視覚は像のごく弱い縁までを知覚しないからである。したがって回折立体の見かけの直径は,底面よりもいくらか高い位置で切った断面に対応しており,その高さは観測者の眼の鋭敏さ,円板中心の明るさ,および隣接する星の対応する要因によって決まる。

[図185――円板に対する回折立体。]

好条件のもとでは,この見かけの直径を,第一暗環までの理論直径の約半分と見なしても,大きな誤りにはならないだろう。実際,次に見るように,良好な観測者が好条件で達成できる値は,だいたいこの程度に相当する。

一方で,星がかなり明るい場合には,「照明(irradiation)」と呼ばれる現象により,円板の見かけの直径が増大する。これは,網膜上で本来の像よりも光が広がることであり,写真乾板の上で小さな明るい点がハレーション(光のにじみ)を生じるのにかなりよく似ている。

逆に星が非常に暗い場合には,利用可能な光量が少なすぎて,背景からのコントラストが不十分になり,二つの星を別々のものとして識別できなくなる。また,一方が他方よりはるかに明るいペアでは,明るい方の星が強いグレアを生じてしまい,暗い方の光を完全に覆い隠してしまうことがある。

その顕著な例がシリウスの伴星であり,これは普通の望遠鏡には極めて難物である。伴星との距離は約10.6″,等級は約8.4等であり,大星の光がなければ,ごく小口径でも非常に容易な二重星になるはずの条件であるにもかかわらず,である。もう一つの悪名高い難物は δ Cygni であり,美しい二重星ではあるが,小さい伴星が主星の第一回折極大の付近に位置しており,そこで主星の光に紛れて見失われがちである。

したがって「Dawes の限界」は,多くの修正要因を伴ったものだと言わざるをえない。Lewis は前掲の論文群(Obs. =37=, 378)で,非常に見事な解析を行った。彼は,口径4インチから36インチまでの望遠鏡を用いて観測していた,およそ40名の熟練観測者による二重星観測結果を系統的に調べ上げたのである。

この膨大なデータから,いくつかの際立った事実が浮かび上がった。第一に,同程度の口径の望遠鏡を用いていても,「Dawes の限界」と照らし合わせたときの観測能力には,観測者ごとに大きな差があることがわかった。これは,生理的要因の違いと,器械的要因の違いの双方の影響を示している。

第二に,等光度で明るいペア,等光度で暗いペア,および光度差の大きいペアの観測のしやすさには,非常に大きな差があることも明らかになった。これもまた,生理的・物理的要因の両方がからんでいることを強調している。

最後に,小口径望遠鏡と大口径望遠鏡とでは,「Dawes の限界」に達する,あるいはそれを超える能力に,極めて明確な違いがあることが示された。小口径の望遠鏡の方が,この基準に対して明らかに効率が良いのである。これは,先ほど述べたように,通常避けがたい大気のさざ波が,大口径には小口径よりはるかに大きな影響を与えることから予想されることである。

光学的観点から見れば,大口径と小口径とで望遠鏡の品質に差はない。しかし,二重星観測者が通常追い求めるような,「きわめて良い」条件であっても,大口径は一般に大気乱流から大きなダメージを受けるため,結果としては,小口径の方がはるかに良い仕事をすることが多いのである。どれほど大口径の器械が,異常に良い条件ではすばらしい性能を見せるにしても,である。

このことは,おそらく歴史上最高の二重星観測者と言ってよいであろう,故 Burnham 氏の見事な業績を解析することで,非常にはっきりと示されている。彼が口径6,9.4,12,18.5,36インチの望遠鏡を用いて行った新二重星の発見記録を比較すると,通常の大気のさざ波によってあまり乱されない器械ほど,理論的限界に近づいて仕事をしやすいことがわかる。

6インチ開口で Burnham は,平均して Dawes の限界の0.53倍の角距離まで分解しており,これは先ほど粗く見積もった数値にかなり近い。9.4インチ開口でも Dawes の限界をよく下回るところまで到達している。しかしそれ以上の口径では,この限界に到達できた例はなく,その差は15%から60%に及んだ。同一人物というきわめて熟練した観測者が,すべて新しい二重星を発見するという形で観測しているので,既知の対象に対する慣れによって助けられる余地もない。この事実は,サイズが大きくなることで解像力という利点は増すが,同時に大気による制約という重大な不利も持ち込まれることを,きわめて明瞭に示している。

とはいえ,大口径開口には,潜在的な分解能以外にも,決して割り引くことのできない利点がある。すなわち「集光力(light grasp)」――暗い天体を見分ける能力である。これは,小口径の望遠鏡が本質的に太刀打ちできない部分である。望遠鏡の集光力は,主として対物レンズの面積に比例し,視覚観測に限るなら,大口径レンズだからといって増えるガラスの厚みによる吸収増加は,二次的な影響にとどまる。

現在普遍的に用いられている恒星等級の慣習では,星の明るさの差は,2.512という比率に基づいて分類されている。この数の対数は0.4であり,40年ほど前に Pogson によって提案された関係である。したがって,2等星は1等星の約40%の光しか与えず,3等星は2等星のさらに40%弱,といった具合に減少していく。

ところが,望遠鏡の口径を2倍にすれば,対物レンズの面積は4倍になり,したがって集光力も4倍になる。さらに大きくすれば,集光力は口径の2乗に比例して増える。たとえば口径10インチの対物レンズは,口径1インチのレンズに比べて,約100倍の光を集めて届けることができる。Pogson の尺度に従って等級を追っていくと,この100倍という比はちょうど5等級差に相当する。したがって,もし1インチ開口で9等星が見えるなら,10インチ開口では14等星まで見えるはず,ということになる。

実際にもおおむねその通りであり,この事実から,Dawes の限界に基づく分解能と同じように,口径に対する最微光星等級の表を簡単に作ることができる。図186には,この両方の関係がグラフとして示されている。すなわち,開口とともに変化する分解能と,開口に対する「集光力」の変化(恒星等級で表したもの)である。

[図186――集光力と分解能。]

言うまでもなく,どちらの場合にも個人差や観測条件による差はかなり大きく,集光力に関しては,0.5等から1等くらいの振れはざらにある。このグラフは,1インチ開口で9等星がちょうど見えるという仮定に基づいているが,実際には,条件や観測者によって,8等から10等の範囲でばらつく。とはいえ,これらの関係はきわめて便利な作業上の指針であるが,あくまで「よい近似」に過ぎないことを,常に念頭に置いておく必要がある。

回折理論でさえも,近似にすぎない。なぜなら,光学面が完全無欠ということはあり得ず,また普通の屈折望遠鏡には,残余色収差が必然的に存在し,さらに残留球面収差も少なからず残るからである。

実際 Conrady は,Rayleigh 卿による著名な研究(Sci. Papers =1= 415)を発展させる形で,ある程度の収差であれば,像質に目立った悪影響を与えずに許容できることを示した(M.N. =79= 575)。これは非常に幸いなことである。というのも,すでに見たように,二次スペクトルは焦点距離の約1/2000に相当する収差を表しているからである。

この程度の収差(およびわずかな球面収差)の主な影響は,回折パターンの中央円板の最大輝度をやや低下させ,そのまわりにごく薄い「もや」を生じて暗環をわずかに照らしてしまうことである。しかし円板の見かけ直径や内部での相対強度分布はあまり変化せず,主な結果は,光の総量のわずかな損失と散乱である。

収差がさらに大きくなれば,これらの影響はより深刻になるが,対物レンズ中心部を通る光線と周辺部を通る光線との光路長の差が λ/4 を超えないかぎり,解像に対する損失は本質的には無視できる。最適ピント位置に像を合わせたときには,この損失はほとんど消えてしまい,中央円板の最大輝度は20%未満しか低下しない。

この値の2倍程度の収差でも,それほど深刻な問題ではない。しかも,焦点位置をごくわずかに変えることで大部分を補正できることが,美しい形で示されている。詳細は Buxton の論文(M.N. =81=, 547)を参照されたい。そこには,どのような変化によってどのように像が改善されるかが詳述されている。

Conrady は,光路長の変化 dp と,これに対応する焦点位置の線形変化 df の関係を,

df = 8_dp_(f/A

と表している。ここで A は開口,f は焦点距離である。この式から,通常の相対口径(F数)を持つ望遠鏡では,dp をλの範囲内に保つために,焦点位置のずれ df は±0.01インチ程度まで許容されることがわかる。

相対口径の大きい(F値の小さい)器械では,これよりはるかに厳しい焦点精度が必要となり,一般に収差に対する要求も厳しくなる。その厳しさは,開口比(二次的には開口径)のおおよそ二乗に比例する。したがって,反射望遠鏡に対してきわめて厳密な面精度が求められるのはこのためである。F/5 や F/6 で動作する器械は焦点に対して非常に敏感であり,dp をλ/4~λ/2程度の許容範囲に収めるには,非常に高い面精度が要求される。

さらに,ある与えられた dp の値と,色収差に対する関係(すなわち f/2000 程度)とがわかっていれば,fA の間に,収差を許容範囲内に収めるための関係も定まる。この条件式は

f = 2.8_A_²

となる。これは,口径約5インチに対してほぼ F/15 という一般的な比率に相当する。より小口径では,さらに長焦点(大きなF数)を用いることができるし,より大口径では,相対的により長い焦点が求められる。そうしないと,回折像のまわりにハロー状の光が広がり,弱いコントラストがかなりひどく損なわれる。

これは,大気の影響以外に,大口径屈折望遠鏡が本来の利点を十分に生かしきれない要因の一つである。すでに述べたように,わずかな球面収差は,ある程度ピント位置を調節することで打ち消せる。しかし,そのときの焦点位置の変化 df の符号は,残余収差の符号とともに変わらねばならない。そして,焦点の内外で像の見え方が異なるかどうかは,球面収差の存在を即座に示す,きわめて敏感で確実な試験となる。

既存の収差を正確に知ることの重要性を強調するために,図187を見てみよう。これは,世界の代表的な大口径対物レンズ群に対するハルトマン試験の結果を示したものである。すべてのレンズにある程度の残留ゾーンが見られるが,その大きさと位置は図中のスケールが示すように大きく異なっている。最も顕著な収差はポツダムの大口径写真屈折望遠鏡に見られ,最も少ないのはロウェル天文台の24インチ屈折である。前者はその後 Schmidt によって再研磨されており,新しいデータはまだ公表されていない。後者は,最後の Clark 一族の死後に,Lundin 一家によって最終仕上げが施されたものである。

図の曲線を見ると,ポツダム望遠鏡の初期状態(I)では,不良ゾーンが周辺近くに位置していたことがわかる。そのため,影響を受ける面積は大きく,また Conrady の式で見ると,そのゾーンは相対口径が大きいため,df が著しく増大している。これに対して,図中IIIの段階にあるポツダムの対物レンズや,オタワ15インチ対物レンズのように,軸近くに不良ゾーンがある場合は,同様の理由から害はずっと少ない。こうした違いは,絞りの効果とも直接関係する。すなわち,周辺に収差がある場合には絞りは有効であるが,軸付近に欠陥が集中する場合には逆効果になりうる。収差の状態を知らないかぎり,絞りの効果について一般的な結論を引き出すことはできないのである。

ロウェル望遠鏡(図188)がその良い例である。図に示すように,鏡筒の先端部には大型のアイリス絞りが取り付けられており,接眼部から操作できるようになっている。これは多くの観測者によってその価値が実証された装置であり,ロウェル博士は,大気の影響を抑え照度を下げる目的で,しばしばこの絞りを利用していた。しかし,この器械の図187に示された収差分布からすると,絞りは面形に関しては何ら寄与しえなかったはずである。

[図187――望遠鏡に対するハルトマン試験(Hartmann による測定結果)。]

また,小口径の器械が,本来の分解能の限界にもかかわらず,大口径よりも良い仕事をする場合もある。とくに極端なコントラストの細部を見ようとする場合にはそうである。このことは Nutting(Ap. J. =40=, 33)がよく指摘しており,その指摘は,Barnard が直径1½インチ・焦点距離5½インチの安物ランタンレンズを用いて成し遂げた驚異的な仕事によって,さらに鮮やかに補完されている(Pop. Ast., =6=, 452)。

結局のところ,すべての観測課題はそれにふさわしい器械を求めるものである。そして,観測結果の解釈は,単なる幾何光学の枠をはるかに超えており,視覚的問題すべてに支配的な生理学的要因を必然的に含んでいる。

物体の可視性に関しても,一般的な回折理論が再び登場する。たとえば明るい線について考えてみると,その回折像はもはや図183のような円錐状ではなく,それと類似した長い楔形の立体になり,その側面に星像の回折環に対応する波状の肩を持つ。こうした線の可視性は,理論的な「楔」における強度分布だけでなく,眼の鋭敏さ,背景の性質などにも依存する点で,星円板の場合とまったく同じである。

もし眼が生来あるいは順応状態として,細部には強く反応するが,わずかな明度差にはあまり敏感でないとすれば,その線は楔のごく先端近くを切る断面として見えるであろう。言い換えれば,線は細く鋭く見える。星の回折環がしばしばそう見えるようにである。

これに対して光とコントラストのわずかな変化にも敏感な眼では,同じものが楔の基部近くの断面に相当する像として見える。すなわち,縁がややぼやけた幅広い帯として見える。ここでも,照明(irradiation)と背景の性質が見え方に影響する。

もし同時に多くの細部が見えているならば,それぞれの回折パターンは複雑に重なり合い,観測者ごとの観測結果を比較して調和させることが,どれほど難解になるかは容易に想像がつく。とくに惑星や月面のような細部構造を扱うときにはそうである。

惑星の場合,全体の像は,図185のような回折立体が惑星の縁で複雑に重なり合ったものである。図中の点線は,惑星の真の直径におおよそ対応しており,縁の部分では照明や照度のにじみ(irradiation)によるさらなる複雑化が加わる。

[図188――アイリス絞りを取り付けたロウェル屈折望遠鏡。]

このような円板の上に細かな模様が重なっている様子を想像してみれば,観測結果を解釈することがいかに難しいか,鮮やかに理解できるだろう。

すべての望遠鏡使用者にとって,非常に有益なのは,顕微鏡に関する短期でもよいので系統的な講習を一度受けることである。そうすれば,分解能,シーイング条件,さらには像の解釈に関して,実践的な理解が飛躍的に深まるからである。こうした問題に関する原理は,研究用の二大器械たる望遠鏡と顕微鏡とで,本質的に同じである。

望遠鏡における「線形」開口,および顕微鏡におけるいわゆる開口数(numerical aperture)は,解像力との関係においてまったく同等であり,いずれも最小可分解細部は,ここで用いられる意味での開口に反比例する。

さらに,大気の乱れは顕微鏡観察においては直接の妨げにはならないが,同様の乱れとして「不適切な照明」が存在する。照明を少し誤るだけで,美しく見えていた細部を,顕微鏡像から完全に消し去ることはきわめて容易である。これは,シーイングの悪い空気が望遠鏡像に対して行うことと,実質的に同じである。

倍率に関しても,両者はきわめてよく似た振る舞いを示す。器械の分解能によって正当化される以上の倍率をかけても,実際上ほとんど何の得にもならない。新しい細部が見えるようにはならず,低倍率ですでに見えていた細部が,いっそう明瞭になるわけでもない。

顕微鏡観察者は,早い時期に高倍率接眼鏡を避けることを身にしみて学ぶ。高倍率接眼鏡は扱いにくいだけでなく,非常に高い解像力を持つ対物レンズの場合を別としては,器械の性能をほとんど向上させないからである。さらに,細部の解釈に関して学ぶべき教訓も,顕微鏡と望遠鏡とで本質的に同じである。違うのは,前者が「無限小」の世界に向かい,後者が「無限大」の世界に向かうという点だけである。

分解能,倍率,細部描写の真実性との関係をつかむうえで,最も教育的なのは,顕微鏡でよく知られた標本を観察することである。たとえば図189には,ごく普通の珪藻である Navicula Lyra(ナビクラ・リラ)を粗く写したスケッチを示している。この小さな珪酸質の殻は,解像力がほんのわずか不足する対物レンズのもとでは,このように見える。標本全体の形状は明瞭にわかり,中央部の模様も,種名を連想させるほどにくっきりと見える。しかしそれ以上細かな構造は全く現れず,照明を工夫しても倍率を上げても,ここに描かれている以上のものは決して見えない。実際,この図は,数値開口(numerical aperture)がこのスライド上の珪藻の細部を解像するにはわずかに不足している対物レンズを用い,カメラ・ルシダを使って写し取ったスケッチである。

図189_a_ は,同じ倍率で,わずかに開口数の大きな対物レンズを用いた場合に起こる変化を示している。ここでは,殻の表面全体に細かな縞模様が現れ,まるで銅版画の線のように美しく鋭く見える。解像力が約20%増しただけで,全体の印象ががらりと変化するのである。ここでも,倍率をさらに上げても新しい細部は何一つ現れず,輪郭がややぼやけて見え,むしろ観察が不満足になるだけである。

[図189――解像の各段階。]

最後に図189_b_では,同じ標本を同じ倍率で観察しているが,用いた対物レンズの開口数は,最初の図に使ったものより60%大きい。この場合,鋭く見えていた縞模様は,その真の姿をあらわにする。もともとそれは,非常に明確に分離した点列から成る線であり,その一つひとつの点が完全に分離して見える。これは,前の段階では,対物レンズの解像力がそこまで届かず,細かな点列が単なる鋭い線状の回折パターンに見えていたためである。当時の目にとっては,どれほど倍率を上げても,それ以上に細かい構造を分解することは不可能だったのである。

ここには,異なる口径の望遠鏡で天体の細部を観察した際に現れるのと同じ種類の違いが,きわめて明瞭に示されている。小さい開口ではまったく見えなかったものが,大きな開口ではまったく別の姿で現われることがある。そしてそれぞれの段階で,像の見かけのシャープさと明瞭さが予想外なほど高いことも,同様である。

さらに図189_b_のように,高開口数レンズの解像力を使い切っている場合には,焦点合わせを少し怠るだけで像が完全に壊れてしまい,前の段階で見えていた線状模様以外には何も構造がないように見えてしまうことさえある。このとき倍率をさらに上げても,良いことは何もなく,悪いことばかりが増える。同様に,図189_a_でも,照明を少し誤ると縞模様が見えなくなる。Navicula Lyra を含む多くの珪藻では,縞の分解は照明条件にほぼ全面的に依存しており,少し照明を調整するだけで細部が突然はっきり浮かび上がったり,逆にまったく見えなくなったりする。その変化は,観測者を驚かせるほど急激である。「照明」を「大気」と読み替えれば,望遠鏡像に実際に起こっている状況そのものになる。

倍率に関しては,ここまで述べてきたことから,おおよそ次のことがわかる。すなわち,一般的には,対物レンズの解像力の範囲内にある細部を,肉眼に示してくれる最も低い倍率が,最も満足度の高い倍率であるということである。

これ以上倍率を上げると,望遠鏡自身の光学的欠点と,大気による困難とをすべて拡大して見せることになるだけでなく,眼に入る出射瞳径(emergent pencil)が小さくなりすぎて,視力自体が著しく低下する。なぜなら,眼も他の光学装置と同様,有効開口が小さくなると分解能を失うからであり,さらにごく細い光束しか入ってこない場合には,眼内の浮遊物(浮遊ぼんやり,所謂「飛蚊症」のようなもの)の影響が非常に大きくなってしまうからである。

図190は,Cobb の実験(Am. Jour. of Physiol., =35=, 335)をもとに,眼の開口を変化させたときの視力の変化を示している。この曲線から,出射瞳径が1ミリ(1/25インチ)以下になると,視力がほぼ瞳径に比例して低下することが明瞭にわかる。この範囲では,出射瞳を絞り込むことによる利得はほとんどなく,強いて言えば,二重星の分離を試みるときに,細い星像を得ることで星円板の縁の目立ち方を少し抑えられる程度である。

なお,直径約1ミリの出射瞳でも,平均的な眼が利用できる分解能を引き出すには,やや不足気味である。そのため,視力そのものは低下しても,少し過大な倍率をかけることで,かえって細部の見え方が改善される場合もある。

[図190――眼の分解能。]

同じ倍率であれば,より大口径の対物レンズを用いることで――解像力が増すことは言うまでもなく――視力も向上する。しかしその分,大気の乱れによる問題は相対的に大きくなる。

眼の分解能そのものについて数値を述べると,繰り返し行われた実験から,背景とのコントラストが十分高い二つの点は,標準的な眼ではおよそ3′の角距離で別々のものとして認識できることがわかっている。人間の視力にはかなりの個人差があるので,中にはこれより良い値を示す人もいれば,ずっと視力の低い人もいる。後者の場合,4′から5′ほどの分離がなければ,二つの点を区別できないことがある。

たとえば二重星 ε₁,ε₂ Lyræ(こと座 ε₁,ε₂)は,離角3′27″で,それぞれおよそ4等星と5等星である。視力の良い人なら裸眼でも二つに分離して見える。一方,ミザールとアルコルのように11′も離れた星は,ほとんどすべての人にとって「大きく離れた二つの星」に見える。これに対して,プレアデス星団中のアステロペ(Asterope)は,約2½′しか離れておらず,等級も6.5等と7.0等で暗いため,著者の知るかぎり,これを裸眼で二重に見分けられた人は一人もいない。また,同じくプレアデスのプレイオネ(Pleione)とアトラス(Atlas)は,およそ5¼′離れており,等級はそれぞれ6.5等と4等だが,これは非常に容易に別々に見える。

最大限に甘く見積もって,眼の分解定数を約5′と仮定すると,任意の望遠鏡について,その解像力をフルに活かすために必要な倍率を容易に見積もることができる。すでに見たように,ほぼ等光度で中程度の明るさの二重星については,望遠鏡の解像力はおよそ 4.56″/AA は口径(インチ))である。したがって,口径4.56インチの対物レンズは,1″の分解能を持ち,これを眼にとって5′の分解能に引き上げるには,およそ300倍(口径1インチあたり約65倍)が必要となる。これは,普通のF比を持つ望遠鏡では,焦点距離0.20~0.25インチ程度の接眼レンズを必要とし,出射瞳径は約0.02インチ(0.5mm弱)まで小さくなる。これは生理的にはかなり行き過ぎの値である。このような極限分解を狙った観測を別にすれば,この半分から2/3程度の倍率の方が望ましく,この限界を超えて有利に倍率を使える条件は,非常に稀である。

本当に良く作られた対物レンズや主鏡であれば,口径1インチあたり100倍まで倍率を上げても,顕微鏡の言葉で言ういわゆる「像を壊す(break down the image)」には至らないだろう。しかし十中八九,その結果には満足できないはずである。

器械の相対口径が大きくなるにつれて,同じ倍率を得るためには,ますます短焦点の接眼レンズが必要になり,すぐに問題が生じる。焦点距離0.20インチ以下の接眼レンズは,ごく少数しか作られておらず,0.15インチ程度のものが稀に用いられる程度である。通常F/15という相対口径が一般的なのは,対物レンズの補正が容易になるという理由だけでなく,きわめて短焦点の接眼レンズを避けたいという事情も大きいと思われる。

経験豊かな観測者の実際の使用例を見ると,理論が示すところはよく裏付けられている。多くの二重星観測者の倍率の使い方に関するデータが記録されており,The Observatory 誌の老練な編集者である Lewis 氏は,そのうち主要なものを大変手間をかけて整理し,「Double Star Astronomy(重星天文学)」に関する優れた論文の一つ(Obs. =36=, 426)にまとめている。そこから得られる一般的な結論は,中口径の望遠鏡では,口径1インチあたり50倍前後の倍率が常用されており,ときおり特別な場合に70倍/インチ程度まで上げられるにとどまる,というものである。

しかし,このデータを詳しく見ると,すでに示唆したことがはっきりと確認される。すなわち,通常の大気の乱れから強い影響を受ける大口径望遠鏡は,理論上許される倍率を実際には使いこなせないということである。24インチを超える屈折望遠鏡では,もし高倍率が真価を発揮する場があるとすればそれは二重星観測においてだが,その分野でさえ,実際の使用倍率は口径1インチあたり30倍程度にとどまることが記録からわかる。

さらに Lewis 氏は,熟練観測者たちの実例を詳しく解析し,最良の使用倍率がおおよそ次の経験式で表せることを見いだした。

m = 140 √A

もちろん実際の数値は,観測地点の条件,シーイングの一般的な質,および観測対象によって相当に変化する。二重星観測以外の用途では,倍率は一般にこれより低めに選ばれる傾向がある。階調差に依存する細部描写は,ある程度まで解像できる倍率を超えて拡大すると,たいていは改善されるどころか,かえって悪化する。これは顕微鏡の場合と全く同じである。

場合によっては,濃いフィルターを適切に使うことで,細部が見えやすくなることもある。ただし,ここで述べたのは主として高倍率側の話であって,場合によっては最低限どの程度の低倍率まで下げてよいかも考える必要がある。この問題は,接眼レンズの出射瞳径の上限――すなわち最大実用出射瞳径――の問題に帰着する。

かつては,出射瞳径1/8インチ(約3mm)が上限であり,これが口径1インチあたり約8倍の倍率に相当するとよく言われていた。しかし,現在の眼の特性に関する知見から見ると,これは瞳孔の開口を過小評価した数字である。10年以上前からよく知られているように,暗い環境に十分順応した目では,瞳孔径はこの2~3倍まで開く。そして今では,1/5~1/4インチの出射瞳径でも,眼が完全に暗順応していれば十分に活用できることには疑いがない。したがって,微光対象の探索や彗星捜索などの用途には,非常に広い視野を持ち,口径1インチあたり4~5倍程度の倍率を与える接眼レンズを備えておくべきである。ここでのポイントは,とにかく可能なかぎり広い視野を確保することにある。

この目的には,非常に広い見掛け視野を持つヘンゼン型接眼レンズを用いてもよいし,十字線を必要とする場合には,ケルナー型を用いてもよい。どちらの形式でも,50°程度の見掛け視野は十分に実現可能である。残りの接眼レンズ構成については,観測者自身の好みと資力に従ってよい。一般に,最大倍率の約半分程度の接眼レンズが非常に便利であり,高倍率・低倍率のいずれよりも頻繁に用いられることが多い。中間倍率の接眼レンズや,特定の用途向けの特殊接眼レンズも,たいていは自然と望遠鏡装備の一部になっていくものである。

最後に一言。悪い条件を,倍率を上げることで改善できると期待してはならない。低倍率ですでにシーイングが悪いなら,望遠鏡にキャップをかぶせて,より良い機会を待つほかないのである。

付録

望遠鏡でできる仕事

まず第一に,天体を自分の目で直接知ることそれ自体が,十分に価値あることである。これは,心を全く新しい「究極的価値」の感覚へと導いてくれるからである。実を言えば,現代人の多くは,全体として,天を見上げる親密さにおいて,祖先よりも劣っている。彼は腕時計をちらりと見て時刻を知り,暦を開いて日付を知る。だが星座の昇り沈みも,惑星が星々の間をさまよう姿も,太陽の道筋が季節とともに移ろうことも――こうしたものは彼にとって閉ざされた書であり,その背後にある精妙な神秘は,ほとんど全く意識されていない。

望遠鏡は,宇宙のベールを持ち上げる道具であり,単に壮観を見せるというだけでも,きわめて深い啓発の源となる。しかし,真剣な学徒にとっては,人類の知識を真に前進させる機会を提供する。その機会の大きさを過小評価することは難しい。確かに,近代の巨大天文台は,個人研究者を圧倒するほどの規模でデータを集めることができる。しかしこの分野では,執念深い者に味方する女神がいる。すなわち,ゆっくりと腰を据えて一つの研究課題に取り組み,粘り強くそれを追い続ける観測者は,たいてい何らかの成果に行き当たるのである。大型器械でなければ手が届かない対象が非常に多いため,そうした望遠鏡は,主としてそれぞれの特定の用途に向けられている。

慎ましい装備にも,まだまだ多くの仕事が残されている。変光星の研究は,広大な開拓地である。おそらくもっとも実り多いのは,不規則長周期変光の研究であり,この種の変動はわたしたちの太陽自身にも見られる。太陽の研究でさえ,突発的爆発や急激な変化といった一時的現象については,スペクトル・ヘリオグラフの目をすり抜けてしまうことが多く,小型望遠鏡を用いた黒点の分光観測によって,優れた成果が上げられてきたし,これからも上げられるだろう。

肉眼やごく小口径の器械で見えるような新星(temporary stars)は,数年ごとに出現するが,その発見はたいてい,星空を自分のアルファベットのようによく知り尽くした,やや稀な部類の天文学者――職業・アマチュアを問わず――の手に委ねられてきた。ここ数回の重要な新星はすべてアマチュアによって発見されており,そのうち二つは同じ人物によるものである。彗星もまた,粘り強い観測者が,十分な集光力と広い視野を備えた望遠鏡を用いてさえいれば,手に入れることができる。ある著名なアマチュア観測者は,小さな彗星は実はごく普通に存在しているはずだ,という考えに基づいて探査を行い,数日のあいだに二つの彗星を発見した。ここで付け加えるべきなのは,こうした探索は星雲の見分けに熟達した観測者にとって,とくに容易であるということである。

そして,私たちの小さな惑星系の内部だけでも,何世代分もの研究課題がある。われわれは各惑星の表面の様相についてさえほとんど知らず,その物理的状態に至ってはさらに知らない。金星や海王星の自転周期さえ,いまだに確定していない。多くの謎を解く手がかりは,強力な装備よりもむしろ「不断の警戒」によって得られる。なぜなら,一時的に現れる変化が,全体の物語を物語ってしまうことがあるからである。

かつて天体の完全な不変性を信じていた古い世代の天文学者たちは,多くがすでに世を去った。そして今や私たちは,変化こそ宇宙の普遍的法則であることを理解している。太陽系内部だけを見ても,惑星表面の継続的な監視,小惑星の変光や性質の変化を探る観測,流星群とその母天体との関連付け,掩蔽現象の精密観察など,やるべきことは尽きない。そして,これらに事欠くようなら,もっとも身近な隣人である月が,まだ物理的にはよく知られていない荒々しい世界を,われわれに提供してくれている。そこには動的変化の兆候があると,かなりの根拠をもって疑われており,さらに言えば,ごくわずかながら生命の残り火が存在する可能性すらささやかれている。

こうした仕事の多くは,口径3~6インチ程度の器械で十分到達しうる範囲にある。成功する研究の鍵は,自分の装備の能力の範囲内にある対象に注意を向ける戦略をとり,的を絞って攻めれば成果がありそうな問題を選ぶことにある。そしてそのためには,他の観測者たちとの連携のもとでの活動を強く勧めたい。変光星観測者協会(Variable Star Association)などの団体が果たしている役割の有用性は,いくら強調してもしすぎることはない。こうした組織は,重要な共通目的に向けて活動を統合するだけでなく,個々の観測者の士気を高める上でも,非常に大きな力となるからである。

索引

A

Abbé, 屋根型プリズム, 162

Aberration(収差), 焦点のごく小さな移動で補償される, 266
回折の暗環を照らす, 265
焦点と口径との関係を決定する, 266

Achromatic long relief ocular(長アイレリーフのアクロマート接眼レンズ), 146
Achromatic objective(アクロマート対物レンズ), 77

Achromatism(色消し), その条件, 78
決定法, 78
不完全さ, 87

Adjustment where Polaris invisible(ポラリスが見えない場合の調整), 235

Air waves(空気の波), 波長, 255

Alt-azimuth mount for reflector(反射望遠鏡用経緯台マウント), 102
Alt-azimuth mounts, with slow motions(微動付き経緯台マウント), 102
Setting up an alt-azimuth(経緯台の据え付け), 228

Anastigmats(アナスチグマット), 84

Annealing, pattern of strain(焼きなまし中の応力模様), 68

Astigmatism(乱視収差), 84, 209
of figure(面形状による乱視), 210

Astronomy, dawn of popular(天文学の大衆化の夜明け), 19

B

Bacon, Roger, 望遠鏡の記述とされるもの, 6

Barlow lens(バーローレンズ), 152

“Bent” objective(「曲がった」対物レンズ), 86

Binocular(双眼鏡), 2
advantage of, exaggerated(利点の誇張), 151
for strictly astronomical use(純粋な天体観測用としての), 152
telescopes for astronomical use(二眼式天体望遠鏡), 163

C

Camouflage, in optical patents(光学特許におけるカモフラージュ), 97

Cassegrain, reflecting telescope の設計, 22

Cassegrain, 彫刻家および像の鋳造家, 22

Cell, taking off from a telescope(望遠鏡からセルを外すこと), 202

Chromatic aberration(色収差), 11, 76
investigation of(調査), 210
correction, differences in(補正の相違), 91
error of the eye(眼の色収差), 90

Clairault’s condition(クレローの条件), 81
two cemented forms for(それを満たす2種の貼り合わせ形式), 81

Clarks, portable equatorial mounting(クラークによる可搬赤道儀マウント), 109
terrestrial prismatic eyepiece(地上観測用プリズム接眼レンズ), 158

Clock, the cosmic(宇宙時計), 233

Clock drive(駆動時計), 110, 174

Clock mechanism, regulating rate of motor(モータ回転数を調整する時計機構), 179

Coddington lens(コディントンレンズ), 137

Cœlostat constructions(コエロスタットの構造), 126
tower telescopes(タワー式望遠鏡), 127

Color correction, commonly used(一般に用いられる色補正), 211
examined by spectroscope(分光器による検査), 211
of the great makers(大メーカーの色補正), 90

Coma-free, condition combined with Clairault’s(コマのない条件とクレロー条件の併用), 83

Comet seeker, Caroline Herschel’s(カロライン・ハーシェルの彗星探索用望遠鏡), 118
seekers with triple objective(三重対物レンズ付き彗星探索望遠鏡), 119

Crowns distinguished from flints(クラウンとフリントの判別), 64

Curves, struggle for non-spherical(非球面のための奮闘), 18

D

Davon micro-telescope(ダヴォン・マイクロ望遠鏡), 148

Dawes’ Limit(Dawes の限界), 261
in physiological factors(生理的要因における影響), 263

Declination circle(赤緯環), 108
adjustment of(調整), 239

Declination circle, adjustment by(赤緯環を用いた調整), 237
facilitates setting up instrument(据え付けを容易にする), 110

Definition, condition for excellence of(優れた像質の条件), 254
good in situations widely different(大きく異なる環境での良好な像質), 254

DeRheita, 12
constructed binoculars(双眼鏡を製作), 13
terrestrial ocular(正立接眼レンズ), 13

Descartes’ dioptrics, publication of(デカルト『屈折光学』の刊行), 11
lens with elliptical curvature(楕円曲率レンズ), 12

Dew cap(露よけ筒), 219

Diaphragms, importance of(絞りの重要性), 43

Diffraction figure for bright line(明るい線に対する回折像), 269
pattern(回折パターン), 256
solid, apparent diameter of(回折立体の見かけ直径), 262
solid of planet(惑星に対する回折立体), 269
solid for a star(星に対する回折立体), 260
spectra(回折スペクトル), 190
system, scale of(回折系のスケール), 260
varies inversely with aperture(口径に反比例して変化する), 260
through objective(対物レンズによる回折), 258

Digges, account suggests camera obscura(カメラ・オブスクラを示唆する記述), 7

Dimensions, customary, telescope of(望遠鏡の一般的寸法), 24

Discs, inspection of glass(ガラス円板の検査), 66
roughing to form(円板への荒削り), 69

Distortion(歪曲収差), 86

Dolland, John, 28
published his discovery of achromatism(色消しの発見を公表した), 29
Peter, early triple objective(初期の三重対物レンズ), 29

Dome wholly of galvanized iron(全面亜鉛鉄板製のドーム), 250

Domes(ドーム), 246

Driving clock, a simple(簡単な駆動時計), 174
pendulum controlled(振り子制御式), 177
clocks spring operated(発条駆動式時計), 175

E

English equatorial(イングリッシュ赤道儀), 110
mounts, mechanical stability of(その機械的安定性), 113

Equatorial, adjustments of(赤道儀の調整), 230

Equatorial, coudé(クーデ式赤道儀), 124
mount, different situations in using(赤道儀マウント使用時のさまざまな状況), 229
mount, first by Short(ショートによる最初の赤道儀マウント), 104
mount, pier overhung(オフセット・ピア式マウント), 115
mount in section(断面図), 107
two motions necessary in(必要な二つの運動), 106

Equilibrating levers, devised by T. Grubb(T. グラッブ考案の平衡てこ), 39

Evershed, direct vision solar spectroscope(エヴァーシェッドの直視型太陽分光器), 189

Eye lens, simple, preferred by Sir W. Herschel(単レンズの接眼を好んだハーシェル), 136

Eyepiece, compensating(補償接眼レンズ), 142
Huygenian(ヘンゼン型接眼レンズ), 139
Huygenian, achromatism of(ヘンゼン型の色補正), 140
Huygenian, with cross wires(十字線付きヘンゼン型), 140
Huygenian, field of(ヘンゼン型の視野), 141
Huygenian focal length of(ヘンゼン型の焦点距離), 143
measuring focus of(接眼レンズの焦点測定), 136
microscope form(顕微鏡型接眼鏡), 147, 148
monocentric(モノセントリック接眼レンズ), 139
a simple microscope(単純顕微鏡としての接眼), 134
Tolles solid(トールズのソリッド接眼), 141

F

Field, curvature of(像面湾曲), 85
glass, arrangement of parts(フィールドグラスの構成), 151
Galilean(ガリレオ式フィールドグラス), 150
lens diameter possible(得られる対物レンズ径), 150

Field lens(フィールドレンズ), 139

Figuring locally(局所研磨), 73
process of(成形(フィギュアリング)の工程), 73

Filar micrometer(フィラ・マイクロメータ), 172

Finder(ファインダー), 108, 132
adjustment of(調整), 230

Fine grinding(精密研磨前の仕上げ研磨), 69

Fixed eyepiece mounts(固定接眼部マウント), 118

Flints, highly refractive due to Guinand(ギナンによる高屈折フリント), 36

Foucault, 39
development of silver on glass reflector(ガラス鏡への銀鍍金の発展), 41
knife edge test(ナイフエッジ試験), 212

Foucault, methods of working and testing(作業および検査法), 41

Fraunhofer, 36
applied condition of absence of coma(無コマの条件を適用), 82
form of objectives(フラウンホーファ型対物レンズ), 37
long list of notable achievements(数々の顕著な業績), 38

“Front view” telescope(フロントビュー望遠鏡), 32
mechanical difficulty of(機械的困難), 33

Furnaces, glass, classes of(ガラス炉の種類), 59

G

Galilean telescope, small field of(ガリレオ式望遠鏡の狭い視野), 9

Galileo, exhibited telescope to senators of Venice(ヴェネツィア元老院に望遠鏡を示す), 8
grasps the general principles(原理を理解する), 7
produces instrument magnifying 32 times(32倍の望遠鏡を製作), 8

Gascoigne, William, first using genuine micrometer(初めて本格的マイクロメータを用いた), 12

Gauss, Objective(ガウス対物レンズ), 82

Gerrish, application of drive(駆動機構の適用), 181
motor drive(モータ駆動), 179

Ghosts(ゴースト像), 137

Glass, dark, as sunshade(サングラスとしての濃色ガラス), 166
forming and annealing(成形と焼きなまし), 62
inspection of raw(原料ガラスの検査), 61
losses by volatilization(揮発による損失), 58
materials of(ガラス原料), 59
origin of(ガラスの起源), 57
persistent bubbles in(残留気泡), 58
a solid solution(固溶体としてのガラス), 57

Grating spectroscopes(回折格子分光器), 190

Gratings, spectroscope(分光用回折格子), 189

Gregory, James, 自身の名を持つ構造を記述, 19
material success を得られなかった, 20

Grubb, Sir Howard, objectives(グラッブ卿の対物レンズ), 74

Guinand, Pierre Louis, improvements in optical glass(光学ガラスの改良), 36

H

Hadley, disclosed test for true figure(真の面形を知る試験を示した), 27
John, 実質上の反射望遠鏡の発明者, 25

Hadley’s reflector, tested with satisfactory results(ヘドリー反射望遠鏡の満足な試験結果), 26

Hall, Chester Moor, first achromatic telescope を設計, 27
had telescopes made as early as 1733(1733年までに既に望遠鏡を作らせていた), 27

Hand telescope, magnifying power(手持ち望遠鏡の倍率), 150
monocular(一眼式望遠鏡), 151

Hartmann test(ハルトマン試験), 213
on large objectives(大口径対物レンズへの適用), 267
principle of(原理), 214

Hartness, turret telescope(ハートネス塔望遠鏡), 130, 131

Heliometer, principle of(ヘリオメータの原理), 171

Hensoldt, prism form(ヘンゾルト型プリズム), 163

Herschel’s discovery of Uranus(ハーシェルによる天王星の発見), 32
forty foot telescope(40フィート望遠鏡), 34
Sir John(ジョン・ハーシェル卿), 35
Sir John, proposed defining condition(定義条件を提案), 81
Sir William(ウィリアム・ハーシェル卿), 31

Herschel’s time, instruments of(ハーシェル時代の器械), 35

Hevelius, construction for objective of 150 feet(150フィート対物の構造), 17
directions for designing Galilean and Keplerian telescopes(ガリレオ式およびケプラー式望遠鏡設計の指示), 14
invention of first periscope(最初の潜望鏡の発明), 15
Johannes(ヨハネス・ヘヴェリウス), 13
mention of advantage of plano convex lens(平凸レンズの利点に言及), 14
mentions telescope due to DeRheita(DeRheita の望遠鏡に触れる), 14

Housing reflector of 36 inch aperture(36インチ反射の収容法), 243
rolling on track(レール上を走るハウジング), 242
simplest instrument for fixed(固定器械用の最も簡単な覆い), 241

Huygens, Christian, grinding & polishing の方法を考案, 16

Huygens’ eyepiece, introduction of(ヘンゼン接眼鏡の導入), 24

Huygens, sketch of Mars(火星のスケッチ), 16

I

Image, correct extra focal(正しい焦点外像), 208
critical examination of(像の厳密な検査), 204

Image, curvature of(像面の湾曲), 87
seen without eyepiece(接眼鏡なしで見える像), 134
showing unsymmetrical coloring(非対称な色づきの像), 208

Interference rings, eccentric(偏心した干渉環), 205

Irradiation(照明(イラジエーション)), 262

J

Jansen, Zacharius(ザカリアス・ヤンセン), 4

K

Kellner, ocular(ケルナー接眼レンズ), 145

Kepler, astronomical telescope(ケプラー式天体望遠鏡), 10
differences of from Galilean form(ガリレオ型との違い), 10

Knife edge test of parabolic mirror(放物面鏡のナイフエッジ試験), 212

L

Lacquer, endurance of coating(ラッカー被膜の耐久性), 223

Latitude scale(緯度目盛), 232

Lenses, determinate forms for(決定されたレンズ形状), 80

Lens, magnifying power of(レンズの倍率), 134
“crossed”(クロスレンズ), 24
polishing the fine ground(仕上げ研磨済みレンズのポリッシング), 70
power of(レンズの屈折力), 78
triple cemented, a useful ocular(三枚貼り合わせの有用な接眼レンズ), 138
simple achromatic(単純アクロマート), 137
single, has small field(単レンズの狭い視野), 137
spotted, cleaning of(斑点のついたレンズの清掃), 217

Light grasp and resolving power(集光力と解像力), 265
small telescope fails in(小望遠鏡が不得意とする点), 264

Light ratio of star magnitudes(恒星等級間の光度比), 264

Light transmitted by glass(ガラスの透過光), 53

Lippershey, Jan(ハンス・リッパーシェイ), 2
discovery, when made(発見時期), 5
retainer to(~の臣下であった), 3

Lunette à Napoleon Troisiéme(ルネット・ア・ナポレオン・トロワジエム), 154, 155, 162

M

Magnifying power, directly as ratio of increase in tangent(倍率と接線増加率の比例関係), 135
powers, increase of(倍率の増加), 273

Marius, Simon(ジーモン・マリウス), 5
used with glasses from spectacles(眼鏡レンズを用いた), 5

Marius, picked up satellites of Jupiter(木星の衛星を「拾い上げた」), 5

Meridian photometer(子午線光度計), 194

Metius, James(ヤコブ・メティウス), 4

Metius, tale of(メティウスの物語), 4

Micrometer, double image(二重像マイクロメータ), 171
square bar(角棒マイクロメータ), 171

Micrometers(マイクロメータ), 168

Micrometry, foundations of(位置測定学の基礎), 12

Mirror’s, aberrations of(鏡の収差), 92
adjustment of(調整), 206
concave spherical(球面凹面鏡), 92
final burnishing of(最終バーニッシング), 226
hyperboloidal(双曲面鏡), 96
lacquer coating for surface(表面保護ラッカー), 221
mounting, by Browning(ブラウニング流の鏡支持), 49
parabolic oblique, shows aberration(斜入射放物面鏡の収差), 95
surface, prevention of injury to(表面損傷の防止), 220

Mittenzwey ocular(ミッテンツヴァイ接眼レンズ), 141

Mountain stations, good or very bad(山岳観測所の賛否両論的条件), 254

Mounts, alt-azimuth and equatorial(経緯台と赤道儀マウント), 98

Myopia, glasses for, came slowly(近視用眼鏡の普及の遅れ), 2

N

Navicula Lyra, stages of resolution of(Navicula Lyra の解像段階), 271

Newton, abandoned parabolic mirror(放物面鏡を断念したニュートン), 21
blunder in experiment(実験上の誤り), 20
gave little information about material for mirrors(鏡素材についてほとんど情報を与えなかった), 23
Isaac(アイザック・ニュートン), 20 による反射望遠鏡の試み

Normal spectra(ノーマルスペクトル), 190

O

Objective, adjustable mount for(調整可能な対物レンズセル), 44
adjusting screws of(調整ネジ), 44
Clark’s form(クラーク式対物レンズ), 83
cleansing(清掃), 203
examination of(検査), 202

Objective, four-part(四枚構成対物), 85
Fraunhofer flint-ahead(フリント前置フラウンホーファ式), 83
how to clean(清掃法), 216
spacers, to take out(スペーサーの取り外し), 217
typical striæ in(典型的なストリエ), 203

Objective prism, photographing with(対物プリズムによる撮影), 185, 187

Objectives, crown glass equiconvex(クラウンガラス両凸対物), 80
over-achromatized(過度に色消しされた対物), 90
rated on focal length for green(緑色光での焦点距離による定格), 24

Observatories, cost of Romsey(ロムジー型観測所の費用), 252

Observatory at small expense(低コストの観測所), 249
Romsey, description of(ロムジー型観測所の記述), 249
with simple sliding roof(簡易スライディングルーフ付き観測所), 245

Observing box(観測用箱イス), 229

Oblique fork alt-azimuth(斜めフォーク式経緯台), 100

Ocular, apparent angular field of(接眼レンズの見掛け視野角), 146
terrestrial(地上用接眼レンズ), 147
Tolles terrestrial(トールズの地上用接眼), 147
typical form(代表的な形式), 45

Oculars, radius of curvature of image in(接眼レンズ内の像曲率半径), 146
undesirability of short focus(極短焦点接眼の好ましくなさ), 275

Open fork mount(開放フォーク式マウント), 115
well suited to big reflectors(大口径反射に適する), 117

Optical axis, to adjust declination of(光学軸の赤緯を合わせる), 238

Optical glass, classes of(光学ガラスの分類), 63
data and analysis of(データと解析), 64
industry, due to single man(光学ガラス産業を興した一人の男), 36
production of(製造), 60

Orthoscopic ocular(オルソスコピック接眼レンズ), 145

P

Parallactic mount(パララックティックマウント), 104

Petition for annulment of Dolland’s patent(ドーランド特許無効の請願), 29

Photometer, artificial star Zöllner(ゾルナー人工星光度計), 194
extinction(消光光度計), 198
photoelectric cell(光電池光度計), 199
precision of astronomical(天文学用光度計の精度), 199
selenium cell(セレン光度計), 199
Zöllner(ゾルナー光度計), 197

Photometers, three classes in stellar(恒星光度計の三分類), 193

“Photo-visual, objective”(フォトビジュアル対物レンズ), 89

Pillar-and-claw stand(ピラー・アンド・クロースタンド), 98

Pillar mount(柱架台), 240

Pitch, optician’s(光学用ピッチ), 71

Placement for tripod legs(三脚脚部の固定位置), 236

Polar and coudé forms of reflector(ポーラ型およびクーデ型反射望遠鏡), 125
axis, adjustment of by level(水準器による極軸の調整), 232
axis, alignment to meridian(極軸の子午線合わせ), 232
axis, setting with finder altitude of(ファインダーを用いた極軸高度合わせ), 234
telescope(極望遠鏡), 119, 122

Polaris, hour angle of(ポラリスの時角), 233
a variable star(変光星であること), 199

Polarizing photometer(偏光光度計), 193

Pole, position(天極の位置), 234

Polishing machine(研磨機), 70
surface of tool(研磨工具の表面), 72
tool(ピッチ盤), 71

Porro’s second form(ポロ第二型), 157
work, original description of(ポロの原著説明), 156

Porta, description unintelligible(理解し難いポルタの記述), 7

Portable equatorial, adjustment of(可搬赤道儀の調整), 230
telescopes, mounting of(可搬望遠鏡のマウント方法), 228

Porter polar reflector(ポーター極軸反射望遠鏡), 130

Position angle micrometer of Lowell Observatory(ロウェル天文台の位置角マイクロメータ), 173

Powers, lowest practicable(実用的な最低倍率), 276

Prismatic inversion, Porro’s first form(プリズムによる像の反転―ポロ第一型), 155

Prismatic inverting system, the first(最初のプリズム正立・反転系), 154

Prisms, Dove’s(ドーブ・プリズム), 154

Prism field glasses, stereoscopic effect of(プリズム式双眼鏡の立体効果), 159

Prism glass(プリズム双眼鏡), 152
loss of light in(光量損失), 160
objectives of(対物レンズ径), 161
weak points of(欠点), 160

R

Resolving constant, magnification to develop(解像定数を生かす倍率), 275
power and verity of detail(解像力と細部の真実性), 2
power of the eye(眼の解像力), 274

Reticulated micrometer(格子マイクロメータ), 169

Reversion prism(反転プリズム), 153

Right ascension circle(赤経環), 108

Ring micrometer(リングマイクロメータ), 169
computation of results of(結果の計算), 170

Ring system faults due to strain(応力に起因する環系の欠陥), 205

“Romsey” observatory type(ロムジー型観測所), 248

Rack motion in altitude(高度方向のラック駆動), 100

Ramsden, ocular(ラムスデン接眼レンズ), 144

Reflection, coefficient of, from silvered surface(銀面の反射係数), 54

Reflector, costs(反射望遠鏡のコスト), 55
cover for(反射望遠鏡用カバー), 242
development in England(英国における発達), 41
for astrophysical work(天体物理用途の反射望遠鏡), 56
light-grasp of(反射望遠鏡の集光力), 53
relative aperture of(相対口径), 50
section of Newtonian(ニュートン式の断面), 45
skeleton construction(スケルトン構造), 49
suffers from scattered light(散乱光の問題), 56
working field of(有効視野), 55

Refractive index(屈折率), 63

Refractors and reflectors, relative advantages of(屈折望遠鏡と反射望遠鏡の相対的利点), 52
few made after advent of reflector(反射望遠鏡出現後に作られた屈折は少ない), 27
in section(屈折望遠鏡の断面), 43
light transmission of(透過光量), 53

Refractors, relative equivalent apertures of(屈折望遠鏡の等価口径の比較), 54
tubes of(屈折望遠鏡の鏡筒), 42

S

Scheiner, Christopher, Kepler’s telescope の使用, 11
devised parallactic mount(パララックティックマウントを考案), 11

Secondary spectrum(二次スペクトル), 87
new glasses reducing(これを減らす新ガラス), 88

Seeing(シーイング), 257
conditions, for difference of aperture(口径差に対する条件), 257
conditions generally bad(一般に悪い条件), 253
standard scale of(標準シーイング尺度), 256
true inwardness of bad(悪いシーイングの真相), 253

Separating power, to compute(分解能の計算), 261

Short, James, paraboloid figuring の技術を習得, 27
Gregorian construction を成功裏に採用, 27

Shortened telescope(短縮型望遠鏡), 152

Sights, on portable mount(可搬マウント上の簡易照準器), 229

Silver films, condition of(銀膜の状態), 54

Silvering, Lundin’s process(ルンディンの銀引き法), 225
processes(銀引き法), 222
process, Dr. Brashear’s(ブラシア博士の銀引き法), 222

Sine condition, Abbé’s(アッベの正弦条件), 82

Slit, spectroscope, Abbé type(アッベ型スリット分光器), 184

Snow cœlostat telescope(スノウ・コエロスタット望遠鏡), 127

Solar diagonal(太陽用対物プリズム/ソーラーダイアゴナル), 166
eye piece diaphragms in(その接眼部絞り), 168
early spectroscopes(初期の太陽分光器), 188
polarizing eyepiece(偏光接眼レンズ), 167
spectroscope(太陽分光器), 187

Spacers(スペーサー), 44, 218

Spectacle lenses, combination of(眼鏡レンズの組合せ), 2

Spectacles for presbyopia(老視用眼鏡), 2
invention of(発明), 1

Spectra, visibility of stellar(恒星スペクトルの見えやすさ), 183

Spectro-heliograph, principle of(スペクトロヘリオグラフの原理), 191
simple type of Hale’s(ヘールの単純型スペクトロヘリオグラフ), 191

Spectroscope(分光器), 182
construction of astronomical(天文用分光器の構造), 182
of Lowell refractor(ロウェル屈折用分光器), 185
ocular, McClean form(マクリーン式接眼分光器), 183

Specula, small, methods of support(小型反射鏡の支持法), 49

Speculum metal composition of(スペキュラム合金の組成), 24

Sphenoid prisms(くさび形プリズム(スフェノイドプリズム)), 158, 163

Spherical aberration(球面収差), 11
amount of(量), 80
annulling in both directions(両側の補正), 84
examination for(検査), 207
quick test of(迅速な検出), 267
remedy for(補正法), 79
concave mirror, errors of(凹面鏡の誤差), 22

Star, appearance of(星像の様相), 204
artificial(人工星), 66, 203
diagonal(星見ダイアゴナル), 165
disc, apparent diameter of(星円板の見かけ直径), 259
image of reflector(反射望遠鏡の星像), 206

Steinheil, achromatic ocular(シュタインハイルのアクロマート接眼), 144
Karl August, silvering specula(カール・アウグスト・シュタインハイルによる銀引き), 39

Striæ, location of(ストリエの位置), 67

Surface, treatment of deterioration of(表面劣化への処置), 218

T

Taylor, triplets with reduced secondary spectrum(二次スペクトルを減らした三重レンズ), 89

Telescopes, choice and purchase of(望遠鏡の選択と購入), 201
early in 1610 made in England(1610年ごろイングランドで早くも製作された), 6
first(最初の望遠鏡), 3
the first astronomical(最初の天体望遠鏡), 9
improvement of early(初期望遠鏡の改良), 11
lineage of(望遠鏡の系譜), 1
name devised(名称の制定), 9

Telescopes, portable and fixed(可搬式と固定式望遠鏡), 108
1609, for sale in Paris(1609年,パリで販売されていた), 5
size and mounting of early(初期望遠鏡の大きさとマウント), 14

Telescopic vision, discovery of(望遠鏡視界の発見), 2

Templets, designed curves of(設計曲線用の型板), 69

Tests for striæ and annealing(ストリエおよび焼きなましの検査), 68

Transparency, lack of in atmosphere(大気の透明度不足), 255

Triplet, cemented(三枚貼り合わせレンズ), 85

Turret housing of reflector(反射望遠鏡のターレット型ハウジング), 244

V

Variable stars(変光星), 192

W

Wedge calibrated by observation(観測で較正されたくさび), 197
photographic(写真用くさび), 197
photometer(くさび光度計), 197

Wind, shelter from(風よけ), 240

Z

Zeiss, binocular of extreme stereoscopic effect(極端な立体効果を持つツァイス双眼鏡), 161

Zöllner, photometer modification of(ゾルナー光度計の改良型), 198

Zonal aberration(ゾーン収差), 209

   *       *       *       *       *

書誌作成者の注記(Transcriber’s Notes)

明白な植字上の誤りは,断りなく修正した。ハイフンやアクセントの表記揺れは統一したが,それ以外の綴りや句読法はすべて元のまま残してある。

イタリック体は italic,太字は =bold=,下付き文字は _{s},下線は次のように示す:underline=。

図49のキャプション「Fig. 49.—Spherical Aberration of Concave Lens.」において,Concave を Convex に変更した。

「An objective of 4.56′ inches aperture has a resolving constant of 1″ and to develop this should take a magnification of say 300,」という文中の 1″ は,原本では手書きで修正されており,1′ を意味している可能性がある。

表「Characteristics of Optical Glasses(光学ガラスの特性)」は,紙面の幅制限に収まるよう,分割して組んだ。

*** プロジェクト・グーテンベルク電子本『THE TELESCOPE』 終 ***
《完》