原題は『Glass Manufacture』、著者は Walter Rosenhain です。
例によって、プロジェクト・グーテンベルグさま、ITに詳しい御方はじめ、各位に深謝いたします。
図版は省略しました。
以下、本篇です。(ノー・チェックです)
*** PROJECT GUTENBERG 電子書籍「GLASS MANUFACTURE」開始 ***
翻刻者注記(Transcriber’s Note)
本電子書籍のプレーンテキスト版では、上付き文字は ^{}、下付き文字は {} で示し、 イタリック体は 二重のアンダースコア_ で、太字は =等号で囲んで= 表している。
巻末の広告における下線は 二重のアンダースコア で示されており、
イタリック体との区別はしていない。
「ウェストミンスター」叢書
ガラス製造
ガラス
製造
著者
WALTER ROSENHAIN B.A. B.C.E.
国立物理研究所
冶金学および冶金化学部
監督官
[挿絵]
ニューヨーク
D. VAN NOSTRAND COMPANY
23 MURRAY および 27 WARREN ストリート
1908年
BRADBURY, AGNEW, & CO. LD., 印刷所
ロンドンおよびトンブリッジ
序文(PREFACE)
本書『Glass Manufacture(ガラス製造)』は主としてガラスの使用者の便宜のために
書かれたものであり、したがってガラス製造そのものに従事している人々に対する、
十分な指針または助けとなることを主張するものではない。そのため、本書における
製造工程の記述はできるだけ非技術的なものにとどめてあり、設備や装置の詳細な
図面は掲げず、また、長々しい言葉による説明を避ける目的で、わずかないくつかの
説明用の図を挿入したに過ぎない。各工程を記述するにあたっては、既知あるいは
理解されている範囲で各段階の道理(ラショナーレ)を示し、それによって個々の
操作の詳細な技術的手引きを与えるというよりも、むしろ、その工程およびそこから
得られる製品の可能性と限界を示すことを目的としている。本書の実用的な目的は、
ここで記述される諸工程が、廃止されたと明記されているものを除き、著者が明確に
把握している範囲において、現時点で商業的に使用されているものである、という事実
によって、さらに保証されている。このため、既往のガラスに関する書籍に記述されて
いる、見たところ巧妙で美しい多くの工程は、本書ではまったく言及されていない。
というのも、著者はそれらが実際に用いられた痕跡を、関係する諸特許の記録以外には
見い出せなかったからである。
一方で、読者はガラス製造業界の特異な事情を念頭に置かなければならない。すなわち、
製造業者が自らの工程を可能なかぎり秘密にしておくという慣行が存在するためである。
そのため、ある特定の部門で使用されている最新かつ最良の工程について、正確な記述を
与えようとする著者の仕事は、きわめて大きな困難にさらされることになる。著者は
このような事情のもとで取りうる最善の道を歩もうと努めてきたが、英語で書かれた
ガラスに関する文献が乏しいという事実そのものが、ここで述べた困難を裏づけるもの
であると考えている。
こうした主として商業的配慮から生じる困難に加えて、ガラスに関する書物の著者は、
決して小さくない技術的困難にも直面する。すでに述べたように、本書の著者の目的は、
諸工程を単なる経験則や「我流」の製造操作の記述として示すのではなく、原理や方法の
観点から説明することであった。しかし、その際、科学の側面から見ると、ガラス製造の
分野の大部分がいまだ“terra incognita(未知の土地)”である、という事実に、
あらゆる場面で行く手を阻まれることになる。このように述べるにあたって、著名な多くの
科学者たちの努力が忘れられているわけではない。とはいえ、この分野全体は、あまりにも
広大であり、また実験上の困難があまりにも大きい。そのため、Fraunhofer や Faraday、
Stokes、Hopkinson、Abbé、Schott といった名を含む長大な研究者の一覧に挙げられる人々の
労苦をもってしても、なお経験的データの蓄積以上の成果は得られていないのである。
それらのデータは直接的な実用面において大きな成果をもたらした一方で、ガラスの科学は
いまだきわめて初歩的な段階にとどまっている。
この事実を例示するために二つの例を挙げよう。ひとつは、屈折や分散といった光学的性質と、
ガラスの化学組成との関係の問題であり、もうひとつは、より機械的な側面に属する問題、
すなわち、圧延や成形といった、高温のガラスと金属との接触を伴うあらゆる工程が、
なぜガラス表面の粗化を生じるのか、という問題である。前者については、上述の研究者
のうち数名によって研究され、とりわけ Schott と Abbé は、この問題の研究に莫大な労力と
資金を投じた。しかしその科学的観点から見た成果は、期待を裏切るものであった。これらの
研究者は、長期にわたる実験と、試行錯誤という高価な方法を用いて、重要で新規な有用ガラス
の一連の系を生み出すことに成功したが、特定の化学組成をもつガラスの光学的性質を予測できる
ような法則はいまだ見い出されていない。既知の事実を総括する段階になっても、特定の性質を
もったガラスを製造しようとする者にとっての指針となりうるのは、きわめて漠然とした一般原則
にすぎないのである。他のほとんどの性質についても、状況は同程度であり、おそらく密度と熱膨張
だけが例外と言える。限られた種類のガラスについて得られた既知データから一般化を試みようと
すると、多くの場合、完全な失敗に終わる。われわれが認めざるを得ない結論は、ガラスの本性や
構成を支配する基礎原理は、いまだ発見されていないということである。
上述の知識の限界を示すもうひとつの例として、先に挙げた別の問題を考えても同じ結論に至る。
すなわち、圧延機や鋳型がガラスに及ぼす粗化作用を克服するために、ほとんど果てしない数の
発明家がさまざまな工夫を凝らしてきたにもかかわらず、真に成功した例はひとつとしてない、
という事実である。同様の例はほかにも多数挙げることができる。ガラス製造の過程で遭遇する
多くの現象に関わる物理的・化学的原理について、われわれの知識は嘆かわしいほど不十分なのである。
したがって、現時点でガラス製造について真に科学的な記述を行うことは不可能であるということを、
読者には理解しておいていただきたい。そのうえで、本書における化学的あるいは物理的説明が、
望まれるほど頻繁でなかったり、十分でなかったりする場合があるとしても、それを容赦して
いただきたい。
ここまで、ガラス製造に適用されるわれわれの科学的知識の限界をやや強調して述べてきたが、
この状況が、今さら改めて述べるまでもなく、この分野全体に対するさらなる研究の最強の動機と
なるべきことは明らかであろう。とはいえ、そうした研究は、通常の研究室におけるボランティア的な
研究者によって遂行できる性質のものではなく、ガラス製造者が自らの工場において積極的に関与して
初めて可能となる、という難点もある。ガラスは本質的に、少量では満足に取り扱うことのできない
物質であり、とりわけ、ガラスが高温の間に生じるあらゆる現象に関してはそれが顕著である。
容器の材質、炉内ガス、急冷といった要因は、実験に用いるガラスの量がオンス単位か、
あるいはハンドレッドウェイト(百ポンド)やトン単位かによって、その影響が極端に誇張される。
しかも、これらの影響や、それと同種のほかの影響は、小規模な実験室での操作の結果すべてに
本質的な影響を与える。したがって、ガラスに関する科学的知識の進歩――そして現在なお
「経験則」と「実務経験」が過度に支配的であるこの産業を、その状態から発展させること――
は、業界関係者自身の手に委ねられていると言ってよい。
もちろん、このような研究に着手することは、製造業者にとって多大な時間と費用の負担を
意味する。また、この分野はあまりにも広く、問題はあまりにも複雑であるため、
即時的な 見返りを十分に約束することはできない。一方で、この分野の広大さと問題の困難さ
そのものは、究極的な報酬の偉大さをも意味している。ガラスに関して真に重要な科学的発見が
なされれば、その結果として、どこまで発展するか予測できないほどの産業上の展開が
連なって生じることは確実であろう。イエナの Schott のガラス工場の産業上の成功は、
まさにこの分野における純粋な科学研究の成果が商業的成功に結びついた、輝かしい実例として
しばしば引用される。さらに規模の大きい例としては、ドイツのアニリン染料工場が挙げられる。
これらは純粋な科学的達成の上に築かれたものである。現代生活における絶対必需品の一部を
供給している産業である以上、ガラス工業は大きな成功報酬を提供しうるはずであり、
他の産業の例からも、適切に行われ、粘り強く続けられる科学研究には、最終的な 成功が
必ず報いることが示されている。ガラス製造の分野ほど、そのような研究が切実に求められて
いる分野はほかにないと言ってよい。
なお、本書の著者は、本書の校正および内容に関するさまざまな提案について、
W. C. Hancock 氏から貴重な助力を得たことをここに記しておきたい。
目次(TABLE OF CONTENTS)
ページ
序文 v
第 I 章
ガラスの物理的・化学的性質
「ガラス」という語の定義――すべてのガラス質物体に共通する
無晶質構造――ガラスは凝固した液体であること――ガラスは
明確な化学的化合物ではなく、複雑な溶液であること――
ガラス製造に用いられうる化学組成の範囲――化学組成を
決定する際の考慮事項――物理的性質に及ぼす組成の影響――
ガラスの化学的安定性――ガラス表面の恒久性――
ガラスに対する水、酸、アルカリの作用――光のガラスへの
作用 p. 1
第 II 章
ガラスの物理的性質
機械的性質:引張強さ、圧縮強さ、弾性、延性、および硬さ――
ガラスの熱的性質:耐熱衝撃性、膨張係数、熱伝導率――
温度計用ガラス――ガラスの電気的性質――ガラスの透明性と
色 p. 18
第 III 章
ガラス製造の原料
一般的考察――化学的純度、水分および物理的状態、品質の
一定性――シリカの供給源、砂および砂岩――長石――アルカリの
供給源:ソーダ灰(炭酸ナトリウム)、ソルトケーキ(硫酸ナトリウム)、
パールアッシュ(炭酸カリウム)――アルカリ硝酸塩――
アルカリを含む天然鉱物――その他の塩基の供給源:石灰、
白亜、石灰石、消石灰――石膏(硫酸カルシウム)――
バリウム化合物――マグネシアと亜鉛――酸化鉛、鉛丹――
アルミニウム、マンガン、ヒ素――炭素――コークス、木炭、
無煙炭 p. 35
第 IV 章
ガラス溶融用るつぼおよび炉
耐火粘土および珪石れんが――ガラス溶融用ポットの製造――
ポットの乾燥および初回加熱――タンク炉およびその他の
炉用ブロック――珪石れんがの用途――炉――石炭焚き炉と
ガス焚き炉――ガス発生炉――蓄熱炉、シーメンス炉の原理と
構造――熱交換式炉――現代のタンク炉の一般的構成――
タンク炉とポット炉の相対的長所 p. 54
第 V 章
溶融の工程
原料の手混ぜおよび機械混合――装入作業――炭酸塩混合物および
硫酸塩混合物の溶融時に生じる化学反応――反応に及ぼす炭素の
影響――清澄(ファイニング)の工程 p. 73
第 VI 章
ガラスの加工に用いられる諸工程
ひしゃく取り、巻き取り、および鋳込み――ひしゃく取りの限界――
圧延ガラスにはひしゃく取り、吹きガラスには巻き取りを使用――
ガラスの圧延――吹きの工程と操作――鋳型の使用――
プレス成形――型押し p. 84
第 VII 章
ビン用ガラス(ボトルガラス)
原料――炉――タンク炉の優勢――手吹きによるビンの製造工程――
巻き取り、マーヴァリング、吹き――耐火粘土および金属
製鋳型の使用――口部の形成――改良された装置、鋳型および
工具――機械によるビンの製造――「ブーシェ(Boucher)」型
ビン吹き機――ビンの徐冷(アニーリング)――大型ビン、
カービョイ――吹き工を助ける器具――Sievert の工程――
浅くて大きな器、浴槽 p. 95
第 VIII 章
吹きガラスおよびプレスガラス
原料――ボヘミアガラスとフリントガラス――巻き取りと吹き――
「椅子仕事(chair work)」――「手仕事(hand work)」――
手作業によるタンブラーの製造――吹き製品への色ガラスの
適用――吹きの補助としての鋳型の使用――鋳型の粗化効果――
再加熱による火炎研磨――圧縮空気の使用――プレスガラス――
鋳型とプレス機――プレス成形工程の能力と限界 p. 108
第 IX 章
圧延またはプレートガラス
圧延プレートガラス――炉――原料――ひしゃく取りの工程――
圧延テーブル――徐冷――切断と選別――圧延ガラス上の模様――
「模様入り(figured)」圧延プレート――二重圧延用機械――
研磨プレート(ポリッシュド・プレート)――原料――
溶融ポットからの鋳込み――鋳込み専用ポット――圧延テーブル――
平坦度の重要性――徐冷窯――研磨および光沢出し工程――
研磨に用いる機械――ガラスの保持方法――研磨剤および
研磨材料――研磨工程の理論――研磨プレートの大きさの限界――
研磨プレートの均質性――プレートガラスの用途――曲げ
研磨プレート――鏡――面取り(ベベル加工)、工程および機械――
ワイヤー入りプレートガラス(圧延・研磨)――困難および
限界――ワイヤー入りガラスの利点 p. 122
第 X 章
シートガラスおよびクラウンガラス
シートガラスと研磨プレートの比較――シート用原料――炉:
各種タンク炉――吹きの工程――巻き取り、ブロック上での
巻きの成形、シリンダーの肩の成形、シリンダーの吹成、
シリンダー端部の開口、シリンダーの吹き棹からの離脱――
「キャップ」の切断――シリンダーの割り開き――シリンダーの
平開および徐冷――シートガラスの切断と選別――シートガラスの
欠点――工程の変法――圧延によって「シート」ガラスを製造
しようとする試み――Sievert の工程――直接引き上げ工程――
アメリカ式シリンダー引き上げ法――Fourcault の諸工程――
困難および限界――クラウンガラス――吹きの工程――限界 p. 149
第 XI 章
色ガラス
色ガラスの定義――色の物理的原因――着色物質:銅、銀、金、
炭素、スズ、ヒ素、硫黄、クロム、ウラン、フッ素、マンガン、
鉄、ニッケル、コバルト――得られる色調の範囲と濃さ――
高度に着色されたガラス――「フラッシング」の工程――
「フラッシュ」ガラスの性質――ガラス上に絵付けすることに
よって得られる色:着色「グレーズ」を絵具として用いる――
古代のステンドグラスと現代のガラス――色ガラスの技術的用途、
写真、鉄道および海上信号 p. 178
第 XII 章
光学ガラス
光学ガラスの性質と特徴――均質性――溶液およびガラス中に
生じる縞(ストリエーション)の形成と除去――透明性と色――
「脱色」ガラスにおける光吸収――屈折および分散――
定義――屈折率、分散、平均分散、量 ν――特定のスペクトル線
による光学特性の規定――代表的光学ガラスとその光学定数
の表――クラウンガラスとフリントガラス――旧来のガラスと
新種ガラスにおける屈折と分散の関係――Abbé と Schott の
研究――新種ガラスの応用――各種ガラス間における分散の
非比例性――その結果としての色消しの不完全さ――ガラスの
相対部分分散――完全な色消しを与えるガラスの組合せは未だ
十分には利用可能でない――Schott の天体望遠鏡用クラウン
ガラスおよびフリントガラスの定数――光学ガラスの範囲の狭さと
それに伴うレンズ設計上の限界――この範囲が狭い理由――
拡張の可能な方向――光学ガラスの化学的安定性――不完全な
徐冷に起因する光学ガラスの複屈折 p. 205
第 XIII 章
光学ガラス
光学ガラスの製造――原料――混合――炉およびるつぼ――
ポット加熱用窯――窯から溶融炉へのポットの移送――カレットと
原料の装入――清澄(ファイニング)工程、その困難および
限界――攪拌工程――ガラスの最終冷却――ガラス片の粗選別――
成形および成形ガラスの最終徐冷――検査用の板および円板の
研磨と光沢出し;得られる歩留まりの低さ――完全なガラス
大塊を得ることの困難 p. 223
第 XIV 章
雑多な製品
ガラス管――通常管の巻き取りおよび引き出し――特殊種類の
管――燃焼管――ガラス状シリカ管――ガラス状シリカの
種類――透明でガラス状のシリカ器具――製造コストの高さ――
電気的に製造される半透明「乳白」シリカ器具――ガラス状
シリカの優れた耐熱衝撃性――高温において、すべての塩基性物質
に対する化学的作用への感受性――ガラス棒および繊維――
グラスウール――石英繊維――ガラスビーズ――人造宝石――
貴石を模倣するために着色された高屈折フリントガラスの使用――
模造品を見分ける手段――人工的手段で製造される宝石――
急冷ガラス(チルドガラス)――急冷ガラスの高い強度と脆さ――
ルパート雫(Rupert’s drops)――Siemens による「焼入れ
(tempered)」ガラスの製造――De La Bastie の工程――
建築および舗装ブロックに用いられる大塊ガラス――水ガラス
(ケイ酸ナトリウムまたはカリウム)、タンク炉による製造――
灯台レンズおよびサーチライト反射鏡用ガラス――鉄製鋳型への
ガラス鋳込みによる製造――製造されるレンズおよびプリズムの
大きさと種類 p. 238
付録――ガラス製造に関する書誌 p. 253
ガラス製造
第 I 章
ガラスの物理的および化学的性質
「ガラス」という語は、いくつかの明確で特徴的な性質を共通にもつ一群の物体を
指すものであるが、その語自体の満足な定義を与えることは困難である。たとえば、
「ガラス」という言葉からただちに連想される性質は透明であることだが、実際には
透明でない真のガラスが多数存在し、その中には半透明ですらないものさえある。
硬さやもろさもまた、多少ともガラスに特徴的な性質ではあるが、この点についても
きわめて広い差異が見られ、鉱物や金属の中には、ガラスよりも硬いものも、また
ガラスよりもはるかにもろいものも存在する。おそらく、ガラスに真に普遍的と
言いうる唯一の性質は、非晶質構造をもつことであり、その意味でガラス質の物体全体は
「構造をもたない」固体の典型と見なすことができる。すべての物体は、液体であれ
固体であれ、最終的にはなんらかの構造――それが原子状であれ、分子状であれ、
あるいは電子状であれ――をもたねばならないが、ここで言う構造とは、個々の分子の
構造そのものではなく、むしろ分子どうしの集まり方・集合の仕方を指している。
鉱物その他の無機物の大多数においては、固体相における分子は一定の配列をとって
おり、その物体は結晶構造をもつと言われる。この構造の証拠は、たいていの場合、
肉眼でも認められ、あるいは顕微鏡によって明らかにすることができる。これに対し、
ガラス質の物体は、そのような構造がまったく存在しないことを特徴とし、この種の
物体の機械的・光学的・化学的挙動は、その分子が液体に見られるのと同じ配列――
あるいはむしろ配列の欠如――をもっていると仮定してはじめて首尾一貫して
説明できる。
ガラス質の物体と真の液体との間の密接な類似は、真の液体が多くの場合、結晶性の
物体の凝固に際して見られるような、挙動の不連続や臨界的変化をまったく示すこと
なく、ガラス状態へと移行しうることを理解すると、いっそう強く印象づけられる。
後者の種類の物質では、液体から結晶状態への移行はある一定の温度で起こり、この
変化はかなりの熱の発生を伴うため、物体の冷却は一時的に停止する。これに対し
ガラスの場合、液体から見かけ上固体状態への移行は、きわめて緩やかで完全に
連続的であり、もっとも精密な計測器を用いても、熱の発生や冷却の遅れは観測され
ない。したがって、ガラスを「凝固した液体」と呼ぶことは正当である。この場合の
凝固過程には、構造の変化も分子の再配列も伴わず、単に液体がしだいにこわばって
粘度がきわめて大きくなり、その物体が固体のようにふるまうようになる、という
意味にすぎない。しかしながら、まさにこの、常温まで冷却されたときにきわめて
硬く、あるいは粘性が非常に高くなりうる性質こそが、ガラス質物体の存在を可能に
しているのである。すべてのガラスは、適当な温度に十分長時間保たれると、結晶状態
へと変化しうる。このとき起こる過程は「失透(devitrification)」として知られており、
しばしば製造上重大な困難の原因となる。
溶融ガラスは、多数の化学物質――通常はケイ酸塩やホウ酸塩――の相互溶液と見なす
ことができる。通常の方法で冷却された場合、これら諸物質は互いに溶け合ったまま
残り、したがって普通のガラスは単なる凝固した溶液にほかならない。しかし、
溶けている諸物質にはそれぞれ固有の凝固点があり、もし溶融体がそれらの凝固点の
一つよりわずかに低い温度に、ある時間保たれると、その特定の物質が結晶として
別個に固まり始める。その起こりやすさは、構成成分の性質およびそれらがガラス中に
存在する割合によって左右される。ある場合には、この失透がきわめて容易に始まり、
ほとんど防ぐことができないほどである一方、別の例では、結晶化を起こさせるために
ガラスを適当な温度に何時間も保つ必要があることもある。いずれの場合でも、
結晶化を防ぐのに十分な速さでガラスを冷却したとすると、その後の冷却過程で起こる
事象の順序は次のようになる。すなわち、温度が、溶けているある物質の自然の
凝固点からさらに下がるにつれて、その物質が結晶として分離しようとする傾向は
最初は急速に増大する。しかし温度が下がるにつれ、液体が分子運動に対して示す抵抗は、
それよりもなお急速に増大する。したがって、一方には結晶化への傾向の増大という力が、
他方にはあらゆる変化に対する抵抗のいっそう急激な増大という力が存在し、二つの
相反する力が働くことになる。したがって、どのガラスについても、結晶化の力が
内部抵抗にうち勝つ傾向が最大となる、ある臨界温度範囲が存在する。この範囲を通過
するときには、失透を避けるために比較的速い冷却が必要となる。それより低い温度に
なると、結晶化の力がなんらかの目に見える効果を生じるためには、ますます長い時間が
必要となり、ついには常温に近づくにつれて、内部抵抗の力が結晶化のあらゆる傾向を
完全に阻止する。
以上に述べた現象は、実際にはガラス状態で得ることのできる物質の範囲に対する自然の
限界をなすものである。この限界に近づくにつれ、そのガラスは臨界温度範囲をより急速に
冷却することを必要とし、それだけ製造工程中に失透しやすくなる。ついには、どれほど
急速に冷却しても、その物質をガラス状態に保っておくことが工業的には不可能となる点で、
限界が定まる。
ガラス状態で得られる物質の範囲はきわめて広いが、工業用のガラスに通常取り入れられる
物質はごく少数である。光学レンズや温度計、あるいは特殊な処理に耐える容器の製作
など、ある種の特殊な科学用ガラスを除けば、すべての工業用ガラスは、少数の塩基――
すなわちアルカリ金属ナトリウムとカリウム、アルカリ土類金属カルシウム、マグネシウム、
ストロンチウム、バリウム――および鉄とアルミニウムの酸化物(通常はごく少量)、
ならびに酸化鉛の混合ケイ酸塩である。これら種々の元素が互いにどのように結合し、
溶け合うかという点は多く研究されており、その一般的な結論の多くはすでに前述の内容に
含まれている。ガラスは明確な化学的化合物ではなく、むしろ一連の明確な化合物が、
さまざまな割合で互いに溶け合った溶液である、ということは疑いなく明らかである。
多くの場合、工業用ガラスの実際の組成はきわめて複雑であり、少なくとも現時点では、
それを化学式で十分に表現することは不可能である。
ガラスのありうる組成範囲を制限する要因の一つはすでに述べたが、これからさらに
二つの要因について述べなければならない。工業的観点からすると、原料のコストと希少性が、
ある段階で致命的な制約となる。たとえば、リチウムやタリウムといった元素の使用は、
あまりに高価で事実上不可能である。別の方向では、ガラス製造者は炉の到達温度によって
きわめて有効に制約を受ける。シリカ、石灰、アルミナなどが過度に多量に存在すると、
ガラスを自由に溶融させるために必要な温度が上昇し、その温度が 1600℃ を大きく上回る
ようになると、通常の炉ではそのガラスの製造は不可能になる。たとえば、純粋なシリカは、
非常に価値の高い性質をもつガラスへと転化させることができるが、ガラス製造者が通常使用
するような蓄熱式ガス焚き炉では、その溶融に必要な温度を得ることができない。したがって、
この種のガラスの製造は、もっぱら実験室用の炉――酸素‐アセチレン炎で加熱する炉――に
よって小規模に行われてきたにすぎない。近年では、やや完全さに欠ける種類のシリカ
ガラス器具が、電気炉の助けによって大規模に製造されるようになっている。しかしこの種の
方法は当然ながら、特別な価格を許容できるごく特殊な製品に限られる。
化学成分の選択に対するさらなる制限は、ガラスの実際の化学的挙動――製造中と使用中の
両方――によってもたらされる。製造中の化学的挙動に関しては、ガラスが化合物という
より溶液であるとはいえ、これらの溶液が飽和状態へ傾くという事実を念頭に置かねばなら
ない。すなわち、シリカに富み塩基に乏しいガラスは、接触するあらゆる塩基性物質を容易に
溶解する。一方、塩基に富み、シリカ、ホウ酸、アルミナといった酸性成分に乏しいガラスは、
周囲から酸性の物質を容易に取り込む。溶融工程では、ガラスは普遍的に耐火粘土製のるつぼに
保持される。これらは自らの化学組成が、溶融ガラスに対し、そのガラスが欠いている
少数の成分だけを与えるように選ばれている。しかしこの点にも限界がある。光学用に
製造される非常に高密度の鉛ガラスやバリウムガラスのように塩基にきわめて富むガラスは、
接触するあらゆる耐火粘土を急速に侵食してしまうからである。完成したガラスもまた、
接触する大気中の水分や炭酸ガスなどの作用に対する化学的挙動によって、その化学組成を
露わにする。たとえば、アルカリを過度に含むガラスは、著しく吸湿性が高く、とくに湿気の
多い大気中では急速に分解を起こすことが知られている。
以上のような制約の範囲内で、ガラス製造者は、そのガラスが意図される用途に応じて化学
組成を選ぶ。ごく一般の工業製品に対しては、所要の外観をもつガラスが得られるかぎりで
もっとも安価で入手しやすい原料が用いられる。一方、特殊な目的に対しては、可能なかぎり
物理的性質の化学組成への依存性が利用され、当該の要求に特に適したガラスが得られるよう
工夫される。たとえば、卓上用品や装飾用品に用いられるフリントガラスやバリウムガラスは、
鉛やバリウムの高密度で屈折力の強い酸化物に由来する光輝性と重量感をその特徴としている。
また、これらの塩基の存在によってガラスに与えられる融けやすさと軟らかさは、製造工程で
必要となる複雑な操作を容易にすることによって、用途への適合性をいっそう高めている。
ほとんど正反対の極にある例として、赤熱に加熱しても目立った軟化を起こさずに耐えることを
意図した、もっとも硬い「燃焼用ガラス管」を挙げることができる。この種の管は、ガラス中の
塩基の含有量、とりわけアルカリの含有量を可能なかぎり低く抑え、石灰、マグネシア、
アルミナといったもっとも耐火性の高い塩基をできるかぎり多量に用いることによって製造される。
当然ながら、このようなガラスは溶融が困難であり、その製造には特殊な炉が要求される。
しかし一方で、この材料は、通常のソーダ石灰ガラスやフリントガラスの管では到底満たすことの
できない要求を満たすことができる。こうした耐火性ガラスの別の例は、イエナ製の特殊温度計用
ガラスや、フランス(Tonnelot)の「Verre dur(硬質ガラス)」に見ることができる。これらの
うち最良のものは、500℃ に近い温度でもほとんど、あるいはまったく塑性を示さず、これにより
水銀温度計の測定可能範囲をかなり広げることが可能になった。さらに化学組成を修正することに
よって、温度計用ガラスとして用いられた場合に、普通のガラスに見られるような徐々の変化――
初期の温度計の精度を損ねていた変化――に、はるかに影響されにくいガラスが生み出された。
化学組成を望ましい物理的性質の達成に合わせて改変した、さらに広範な例は、主として
Schott と Abbé の光学ガラスに関する研究の成果として得られた。これら両氏の研究と、
彼らがイエナに創設した工場およびその他の場所における、その後の発展は、ガラス質物体の
クラスが包含する可能性の範囲に関するわれわれの認識を根本的に変革し、「ガラス」という語が
かつてもっていた狭く限定的な意味を、現在からは想像することすら難しいものにしてしまった。
ガラスの光学的性質の化学組成への依存については、第 XII 章「光学ガラス」で詳しく述べるが、
ここでの性質と組成の関係の概略は、これらドイツ人研究者による先駆的業績に触れずして終える
ことはできない。
すでに言及したガラス表面の化学的挙動は、あらゆるガラス使用者にとってきわめて重要である。
ガラスの相対的な化学的中性は、実際、そのもっとも有用な性質の一つであり、透明性に次いで、
多くの用途における採用の決定因子となっている。たとえば、卓上用品へのガラスの全面的な利用は、
ガラスが接触する食物や飲み物の組成や風味に、無視しうる程度以上の影響を与えないという事実に
第一義的に依存している。この性質は、貴金属でさえ、ごく部分的にしか共有していないものである。
また、風雨にさらされる場所で窓ガラスが用いられることも、窓ガラスが水や大気中のガスによって
目立って侵されないという事実がなければ不可能であろう。これら一般的な目的に関しては、確かに
ほとんどの普通ガラスは十分な耐性を示す。しかしこの水準に到達するまでには、実際のガラス職人が
その背後に数世紀にわたる経験を積み重ねてきたことの結果にほかならない。
ところが、熱帯の湿潤な気候への暴露に耐えねばならない場合や、腐食性液体の容器として用い
られる場合のように、特殊用途のためにより高い化学的耐性が要求されると、通常の要求に応える
ための経験則だけではもはや十分でなくなる。とくに、ガラスにほかの厳しい条件も同時に
求められる場合にはそうである。実際、ガラス職人が、色調を改善しようとしたり、欠陥のなさや
表面の光沢といった品質を高めようとして努力するうちに、その製品の化学的耐久性を台なしに
してしまった、ということはしばしば起こってきた。その理由は、一般的な意味では古くから知られて
いるが、アルカリ含有量の増加はガラスの化学的耐性を低下させる一方で、ガラス職人が他の点で
自らのガラスを改良するため――すなわちガラスをより融けやすくし、あらゆる操作を容易にするため――
もっとも手っ取り早い手段が、まさにアルカリを増やすことだからである。
ガラス表面の化学的安定性の問題は、19 世紀の後半にかなりの注目を集め、特にシャルロッテンブルクの
ドイツ帝国物理研究所(Reichsanstalt)で綿密な研究が行われた。この分野でも Schott と Abbé の
業績は有益なものとなり、今日ではイエナ社が実験室用器具の製造に用いているガラスや、
その他の同種の特殊ガラスが、きわめて厳しい要求にも応えうるものとなっている。
アルカリをおおむね 15% 以上含むような劣悪なガラスを除くと、主要な化学試薬に対するガラス表面の
挙動は、おおよそ次のように要約できる。純水は程度の差こそあれ、どのガラスも侵す。もっとも良質の
ガラスでは、冷水が長時間作用しても、ごくわずかなアルカリ分を抽出するにとどまるが、品質の劣る
ガラスでは、常温で長時間さらすと抽出量はかなり多くなり、温度が上がればその進行は急速に深刻に
なる。過熱水――すなわち蒸気圧下の水――は、強力な腐食剤となり、最良のガラスでさえ、その作用に
耐えうる時間は限られている。現在一般的な高圧で運転される蒸気ボイラーの水面計用ガラス管には、
特に耐久性の高いガラスが必要であり、実際に入手可能でもあるが、市販の水面計用管の多くは、
ここで問題としている化学的耐性の点から見ても、また強度や「耐熱衝撃性」の点から見ても、
この目的にはまったく不適当である。
ある種のガラスでは、とくに高温の水の作用が、表面のみにとどまらず、ガラスの内部への
ある程度の深さまで及ぶ。こうした作用の正確な機構はわかっていないが、著者は、ガラス中に存在する
シリカまたはケイ酸塩の一部が部分的に水和されることに由来すると考える傾向にある。この種のガラスを
通常の方法で乾燥してから加熱すると、表面は微細な亀裂でびっしりと覆われ、ときにはガラスが
はがれ落ちることすらあり、全体として表面は曇ってしまう。このような浸透的作用は、劣悪なガラスに
おいては、ガラスが単に湿った場所に保管されているだけでも、大気中の水分によって起こるため、
しばしば「失透」と誤解される。しかし、後者の現象が常温で起こることは知られておらず、ガラスを
炎で加熱したときにしばしば観察されるとはいえ、それは先ほど述べた表面の「腐食」とはまったく別個の
現象である。アルカリ物質を溶かし込んだ水は、すべてのガラスに対して比較的急速に作用する。まず
ガラスからシリカを取り去り、その後になってアルカリや石灰が溶解または機械的に除去される。
これに対し、酸性物質を溶かし込んだ水――すなわち希酸――は、ほとんどの種類のガラスに対して、
純水よりもむしろ作用が弱く、アルカリ性溶液と比べると格段におとなしい。この特異な挙動は、
おそらく酸がシリカの水和を妨げる傾向をもつことに依存しており、その結果、シリカが、水による
ガラス中のアルカリ成分への溶解作用に対する障壁として働くことができるのだと考えられる。
良質なガラスはまた、強酸の作用にもほとんど侵されない。ただし、リン酸やフッ酸のような一部の酸は、
あらゆる種類のガラスに対して急速に作用する。塩基成分を過剰に含み、さらにホウ酸やリン酸のような
物質を多量に含むごく一部の特殊ガラスだけが、塩酸や硝酸のような強酸によって完全に分解されうる。
この場合、塩基成分は酸と化合し、ケイ酸やその他の酸は遊離する。
酸によるガラスへの作用に関連して、実用上重要ないくつかの特殊な作用に触れておかねばならない。
ガラスに対するフッ酸の溶解作用は、もちろんよく知られている。実用上は液体および気体の両形態、
さらには(フッ化アンモニウムやフッ化ナトリウムのような)容易にフッ酸を放出する化合物の形で
用いられ、ガラスの「エッチング」や、化学分析のためのガラスの分解に利用される。これに次いで重要
なのが、二酸化炭素ガスの作用、とくに水分が存在するときの作用である。この作用はおそらく間接的な
性格のものである。すなわち、まず大気中の水分がガラス表面に凝縮し、その水分が溶解作用を及ぼして、
ガラスから一定量のアルカリを引き出す。このときアルカリは、最初はほぼ確実にアルカリ水酸化物
(ヒドロキシド)として溶液中に入る。しかしこのアルカリ性溶液はすぐに空気中から二酸化炭素を
吸収し、アルカリ炭酸塩が生成する。ガラスが乾くと、この炭酸塩はガラス表面にごく小さな結晶の被膜を
形成し、表面に曇った、くもりガラスのような外観を与える。この現象は、通常ソーダガラスにおいてのみ
見られる。というのも、炭酸カリウムはきわめて吸湿性が高く、普通の大気中では乾いた固体の状態を
保つことができないからである。カリガラスは、それ自体としてはソーダガラスより化学的に安定という
わけではないが、上述の理由から、表面の曇りを示す傾向は少ない。ソーダガラスの場合に、この曇りが
あまりひどく進行していなければ、表面を水で洗うことによって、その光沢をほぼ元どおり取り戻すことが
できる。水により炭酸ナトリウムの微小な結晶は容易に溶解し、分離したシリカも機械的に洗い流される
からである。同じ曇った表面を乾いた布などでこすって「掃除」しようとすると、結局は表面を完全に
台なしにする結果にしかならないだろう。鋭い小さな炭酸ナトリウムの結晶が表面の上をあちこち
引きずり回され、あらゆる方向に細かい傷をつけてしまうからである。
劣悪なガラスの場合、曇りの過程はアルカリ炭酸塩の生成にとどまらない。ガラス表面に形成される
アルカリ溶液の薄い被膜は、ある種の細菌や菌類にとって格好の繁殖地となり、それらの生育は部分的に
ガラスそのものを犠牲にして行われる。これらの作用の正確な性質はまだ十分には研究されていないが、
ケイ酸塩鉱物――ガラスもその一つに数えられる――が細菌による分解を受けることは、ほぼ疑いない
ところである。別の例としてよく知られているのは、粘土を暗所に保存することによる「熟成」であり、
このとき粘土の変化にはアンモニアガスの発生が伴う。ガラスについては、有機性の塵埃の小さな斑点が
表面に落ちると、その部位に局所的な分解が生じることが示されている。この点に関連して、ガラス中に
少量のホウ酸が存在する場合の効果は興味深い。ホウ酸が少量含まれていると、ガラスは大気の作用に
対してより抵抗性を増し、とりわけガラス表面に付着した有機性塵埃の影響に対して敏感でなくなることが
知られている。ホウ酸が表面の水分被膜中に溶け込み、そのよく知られた防腐作用を発揮して、細菌や
菌類の活動からガラスを守っているのだろう、と考えられており、おそらく正しいであろう。
大気の作用に対するガラスの耐久性は、それほど重要な問題であるため、この性質を実際に、悪条件下で
使用した経験を待つことなく把握できるような、満足な試験法を確立しようとする試みが、これまでに
数多くなされてきた。最初期に提案された試験法の一つは、ガラス表面を塩酸の蒸気にさらすというもの
であった。すなわち、強い塩酸をガラスまたは磁器の皿に入れ、その上に試験対象となるガラスの細片を
何本か渡し、その全体を鐘形ガラスで覆うのである。数日後にガラスを取り出して観察すると、一般に
耐久性の低いガラスほど、耐久性の高いガラスと比べて、表面がより強く曇っていることがわかる。
より満足のいく形の試験法は、水‐エーテル溶液が、耐久性の低いガラスと容易に反応するという事実に
基づいている。ヨウ素エオシンのような適当な染料をこの水‐エーテル溶液に溶かしておくと、試験対象の
ガラスを浸したとき、耐久性の低いガラスの表面には強固に付着したピンク色の膜が形成される。その色の
濃さをもって、ガラスの安定性の尺度と見なすことができる。もっとも良質なガラスでは、長時間浸しても、
ほとんど着色膜が形成されない。やや性格を異にする試験法として、イエナガラス工場の Zschimmer 博士が
考案したものがある。これは、湿った空気による分解作用が、ガラス周囲の空気の湿度と温度の両方を大きく
上げることによって、非常に加速されうるという事実に依拠している。この方法では、試験片を約 80℃ に
保たれた飽和湿り空気の流れの中に、一日あるいはそれ以上さらす。これには、一定の湿潤空気流を通し続ける
ための特別に工夫された恒温槽が用いられる。この暴露の後で――表面の拭き取りやその他の清掃を一切行わずに――
ガラス面を調べると、ガラスの種類によってきわめてさまざまな外観を示すことがわかる。もっとも良質で
安定なガラスはまったく影響を受けず、安定性のやや劣るものは小さな斑点を示し、さらに不安定なものでは、
これらの斑点が互いに融合して、全体として曇った表面となる。この試験法が、ガラスを鋭く分類しうることは
疑いないが、その分類が実際の使用条件における真の相対的耐久性と一致するかどうかは、まだ証明されていない。
著者は、必ずしもそうではないのではないかと考えている。というのも、この試験によって安定性に劣る
グループに分類された幾種類かのガラスが、世界各地での実用において、この点できわめて満足のいく性能を
示しているからである。
ガラスの化学的挙動の話を終える前に、光やその他の放射線の作用によってガラスが受ける変化についても
触れておかねばならない。強い光、とくに日光、さらには紫外線や高地における強い日光に長期間さらされると、
事実上あらゆる種類のガラスが、一般に色調の変化という形で現れる変化を受ける。マンガンを含むガラスは、
とくにこのような条件下で紫色ないし褐色の色合いを帯びやすい。また、ラジウムから放射される線の強い作用は、
マンガンを含まないガラスでも同様の変色を引き起こしうる。これら後者の効果については、まだほとんど何も
わかっていないが、それはさておき、光の作用がガラス内部に化学的変化をもたらすことに疑いはない。
しかし、その変化の真の性質を明らかにすることは容易ではない。それらの変化は、おそらくガラス中に存在する
酸化物どうしの間で酸素が移動することから成り立っていると考えられる。ガラスがこれらの変化の過程で、
なんらかの構成元素を失ったり得たりすることは、まだ決定的に証明されたわけではないものの、きわめて
考えにくい。日光の作用によってガラスが受ける変化の好例は、天窓にしばしば見られる。もっとも古いガラス板は、
設置当初にはなかった明瞭な紫色の色合いを示すことがある。また、気象観測所で日照時間を記録するのに用い
られる装置のガラス球も、光による変化を示す。これらの球のガラスは、新品のときには淡い緑色味を帯びて
いるが、長期間の使用後には明らかな黄色へと変化する。ステンドグラス窓に用いられている色ガラスもまた、
長期にわたる光の暴露の結果として、色調が変化した痕跡を示す。古い窓から取り外されたガラスでは、
鉛の桟によって光の直接作用から守られていた部分のほうが、それ以外の部分よりも濃い色調を示すのが普通で
ある。そして古いガラスの美しさが、少なくとも一部は、図柄を構成するいくつかの色調に対する光の「熟成効果」
に負っているのではないか、という点については、いまだ議論の余地がある。このガラスの感光性は、写真乾板の
製造に関連しても重要である。濃いネガのガラス板を洗浄すると、ガラスには以前の像の明確な痕跡が残り、
同じガラスを再び感光乳剤で被覆して再度露光・現像を行うと、その旧像が「ゴースト」として再び現れることが
ある。優良な乾板メーカーはこの事実を十分承知しており、一度ネガの製作に用いたガラスを再び乳剤で被覆する
ことはしない。
第 II 章
ガラスの物理的性質
ガラスの機械的性質 は、多くの面でかなり重要である。ガラスが、重大な機械的応力を直接受け持つような
形で使用されることはまれだが、大型窓や天窓のガラス張りにおける、ガラスの通常の用法は、その強度にかなり
大きく依存している。たとえば、もっとも大型の板ガラスを取り扱う際には、その板の機械的強度に相当程度
頼らざるをえず、このことが安全に取り扱い・据え付けのできる板の大きさを、実際に制限している。同じ制約は
シートガラスにも当てはまる。シートガラスは重量が軽いぶん自重で破損するおそれは小さいが、その断面が
薄いため、偶発的な破損を受けやすいのである。特殊な場合には、ガラスの機械的強度にかなり大きく依存せざるを
えない。高圧ボイラーの水面計用管、船舶の舷窓ガラス、地下採光窓に挿入されるガラスプリズム、フランスで
ある程度用いられているガラスレンガ、さらにはシャンパン瓶や炭酸飲料瓶、サイフォン瓶などは、いずれも
ガラスが直接応力にさらされる用途の例である。したがって、金属や木材、その他あらゆる材料の機械的性質が、
可能なかぎり詳細に研究されてきたにもかかわらず、ガラスの機械的性質については、少なくとも公表された
データに関するかぎり、ほとんど注意が払われてこなかったという事実は、やや意外である。このような状況の
一因は、おそらくガラスのようにもろくて硬い物体の強度を測定することが、決して容易ではないという点に
あるのだろう。その結果、現時点で利用可能なわずかなデータでさえ、第一近似と見なすほかない。以下に挙げる
数値は、ガラスに期待しうる強度のおおよそのオーダーを示すことだけを目的としている。
引張強さ(Tensile strength):
1~4 トン/平方インチ (Trautwine)
1/3~1 1/4 トン/平方インチ(Henrivaux)
2~5 1/2 トン/平方インチ (Winkelmann および Schott)
5~6 トン/平方インチ (Kowalski)
圧縮強さ(Crushing strength):
9~16 トン/平方インチ (Trautwine)
3~8 トン/平方インチ (Winkelmann および Schott)
20~27 トン/平方インチ (Kowalski)
上記の数値のうち、Winkelmann および Schott による実験が、おそらくもっとも信頼性が高い。
しかしそれらのデータは、化学組成が機械的性質に及ぼす影響を調べる目的で特別に選定された一連の
イエナ製特殊ガラスについてのものであり、残念ながら、この系列には通常の実用に供されるガラスに
近いものはまったく含まれていない。引張強さや圧縮強さを化学組成と結びつけようとする試みも、ごく
部分的な成功にとどまった。しかしその結果から、ガラスの機械的強度が化学組成にきわめて大きく
依存していることは明らかであり、系統的な研究を通じて、現在知られているものよりもはるかに高い
機械的強度をもつガラスを生み出すことが、おそらく可能であろうことが示されている。この点に関連して、
ガラスの機械的性質が、その試験片が受けた冷却速度にかなり大きく依存することを指摘しておく必要が
ある。急冷、すなわち焼き入れによって、ガラスの硬さがかなり増大することはよく知られているが、
同様の処理によって引張および圧縮の両方に対する強度も増大し、この効果を実用に供しようとする方法が
多数提案されてきた。不幸なことに、このようにして得られた「硬化」ガラスは、きわめて小さな傷に対しても
非常に敏感であり、一度表面が傷つけられて、常に存在していた大きな内部応力が解放されるや否や、
粉々に砕け散ってしまう。こうした特性の程度は、もちろんガラスがどれほど急速に冷却されたかによって
左右されるため、この分野の発明家たちは、焼き入れによる強度増加と、それに伴う脆さの増大との間で
最適な妥協点を与えるような急冷法を工夫しようとしてきた。たとえば、蒸気噴流中で冷却したり、熱い油や
グリース浴で冷却したりすることによる「焼き戻し(tempering)」法が提案されている。しかし、この種の
ガラスはある程度製造されているものの、きわめて広範な実用には到っていない。
ガラスの弾性および延性.――Winkelmann および Schott が調査した一連のガラスでは、
弾性率(ヤング率)は 3500~5100 トン/平方インチの範囲にあり、その値はガラスの化学組成に
大きく依存していた。通常の条件下では、測定可能な延性はガラスには認められていないが、
シャンパン瓶の内圧試験の場合だけは例外である。この試験では、瓶を破裂させるに至らない内圧――
およそ 18~30 気圧程度――をかけることによって、容量が数 10 分の 1 立方センチ程度恒久的に増加する
ことがわかった。この小さな永久変形は、ガラスに微細な亀裂が生じ始めたことに起因すると考えられて
おり、おそらく正しい説明であろう。一方で、著者の見解では、ガラスは比較的小さな力であっても、
長時間 作用すれば、かなり顕著な流動を生じうる可能性が高い。加工された大径光学ガラス円板の挙動は、
そのような作用の存在を示唆しているが、この見解はまだ十分な実験的裏付けを欠いている。
硬さ は、ガラスの多くの用途において重要な性質である。取り扱いを受けたり、定期的な清掃にさらされる
ガラス製品の耐久性は、おおむね、ガラスが傷付きにくいかどうかに左右される。これは板ガラスの窓や鏡、
眼鏡レンズその他のレンズ類についてとりわけ重要であり、卓上用品にも多少は当てはまる。一方で、
硬さの厳密な定義やその測定手段は、いまだ十分に確立されていない。たとえば、二種類のガラスが硬さに
おいて大きく異なる場合でも、条件を適切に選べば互いに相手を明確に傷つけることができる点が示すように、
直接的な引っかき抵抗を測定する試みは、実験者にとってきわめて困難である。そのため、硬さの測定には
別の方法が採用されてきた。実験的な観点からもっとも満足な方法と思われるのは、Hertz によって原理が
示され、Auerbach によって実験的に精緻化されたものに基づいている。これは、同じガラスから作った球面
レンズを、平板ガラスに既知の荷重で押し付けたときに生じる円形接触面の大きさを測定するものである。
Auerbach 自身、このようにして求められる「圧痕係数」とガラスの実際の硬さとの正確な関係を決めることに
苦労している。この方法はしたがって、硬さの理論的研究には興味深いが、実用上の硬さ試験としては
あまり役に立たない。より実用的な試験としては、試験対象のガラス片を回転する鋳鉄円盤に押し付け、
この円盤にエメリなどの研磨材を供給しながら摩耗させ、既知の接触圧力のもとで一定時間研磨した結果生じる
重量減少を測定する方法がある。複数のガラス試料を同時にこの試験にかければ、摩耗に対する抵抗力を
非常によく比較することができる。この試験がガラスの実際の「硬さ」を測っているかどうかは必ずしも
明らかではないが、少なくともその摩耗抵抗についての情報を与えてくれる。そして多くの用途にとっては、
この摩耗抵抗こそが重要な要素なのである。
以上のように硬さという用語そのものがやや曖昧であるため、化学組成がガラスの硬さに及ぼす影響について、
精密な記述を与えることはできない。一般的に言えば、シリカと石灰に富むガラスは硬く、アルカリや鉛、
バリウムに富むガラスは軟らかいと考えてよい。ただし、急冷や、あるいは適切な徐冷(アニーリング)の
欠如は、もっとも軟らかいガラスでさえも、その硬さを非常に大きく増加させることを忘れてはならない。
したがって、特定のガラス試料の実際の挙動は、その化学組成と同じくらい、あるいはそれ以上に、
それが受けた加工工程の性質に依存することになる。
ガラスの熱的性質 は、機械的性質ほど普遍的に重要というわけではないが、多数の実用的用途において
かなりの関心を引くものである。おそらくこれらのうちもっとも重要なのは、「耐熱衝撃性」と呼ばれる
性質であり、これはガラスが破損の危険なしに耐えうる、急激な加熱や冷却の程度を示すものである。
白熱ガス灯用のガラス煙突、ボイラーの水面計用ガラス、実験室用器具、さらには食卓用や家庭用の器具でさえ、
ときに急激な温度変化にさらされることがあり、多くの場合、そのガラスの価値は、破損することなく
そのような扱いに耐えうるかどうかにかかっている。「耐熱衝撃性」そのものは、多少とも独立した多数の
要因に依存しており、急激な温度変化がガラスに応力を生じさせ、時として破壊を引き起こす仕組みを追って
いけば、その影響を容易に理解できる。冷たい器に熱い液体を注いだとしよう。器の材料に対して最初に
起こるのは、内面の温度上昇である。この温度上昇の影響で、内層の材料は膨張しようとするが、依然として
冷たい中央および外側の層の抵抗によって、その膨張が妨げられる。その結果として、内層は圧縮状態に、
外側および中央の層は引張状態に置かれる。したがって、このようにして生じた引張応力が十分に大きければ、
外側の層は引張に耐えきれず破断し、その亀裂が広がって器全体が粉砕されることになる。以上の説明から、
膨張係数が大きいこと、および弾性率が低いことが、破壊を助長することがわかる。一方、引張強さが高いことは
破壊を抑制する方向に働く。また、ガラスの熱伝導率も結果に影響する。というのも、冷たい層に生じる
引張応力の強さは、ガラス内部に存在する温度勾配に依存するからである。したがって、もしガラスが良導熱体
であれば、隣り合う層どうしに破壊を生じさせるほど大きな温度差をつくり出すことは決してできないだろう。
同じ理由から、きわめて薄いガラスの器は、肉厚の器よりも温度変化による破損を起こしにくい。薄い器の内外層
の間には、どれほど急激な温度変化を与えても、非常に大きな温度差は生じえないからである。また、冷えた
ガラス器を両側から同時に加熱あるいは冷却すれば、一方の側だけから加熱する場合に比べて、はるかに急激な
温度変化に安全にさらすことができることも、ここから理解できる。一方、きわめて大きな塊のガラスを加熱する
場合には、加熱を非常に徐々に行う必要がある。というのも、外側に加えられた温度上昇が中心部に達するまでには、
どうしてもかなりの時間を要するからである。さらに、ガラスの熱伝導率に加えて、その熱容量すなわち比熱も、
この問題に関わってくることに注意しなければならない。というのも、自身の温度上昇により多くの熱を吸収する
ガラスほど、熱が内部へ浸透するのに時間がかかることは明らかだからである。このように、「耐熱衝撃性」は、
膨張係数、熱伝導率、比熱、ヤング率、および引張強さという、上述の要因に依存する複雑な性質であることが
わかる。
熱膨張係数は、ガラスの種類によってかなり変化し、ここでは通常観測される上下限値のみを述べるにとどめる。
下限は 37×10^{-7}、上限は 122×10^{-7} である。これらの数値は、ガラスの単位体積あたりの 1℃ 当たりの
体積膨張(立方膨張)を表しており、鋼および黄銅についての対応する値は、それぞれ約 360×10^{-7} と
648×10^{-7} である。適切な成分の選択によって、極端に膨張性の低いガラス質物体を得ることも可能であるが、
そのうちのいくつかは白色不透明体であり、またいずれの場合も、化学組成からアルカリや石灰を避けねば
ならないため、製造上大きな困難を伴う。
耐熱衝撃性の問題とは別に、ガラスの膨張特性が重要になる場合がある。たとえば、「フラッシュ」色ガラスの
製造工程のように、複数の種類のガラスを接合しなければならない場合、それらの熱膨張係数ができるかぎり一致
していなければならない。そうでないと、赤熱状態で接合されたガラスが冷却される際に、かなりの応力が発生する。
一方、このような二種類のガラスの熱膨張の違いによって生じる相互の応力を利用して、特別な強度をもつ管や
その他のガラス製品を作ることも行われている。膨張係数が互いにかなり異なる二層から成るガラスで管を
引き延ばし、適切な冷却を行うと、内層と外層の両方がかなりの圧縮応力を受けているような管を作ることが
できる。ガラスは、前にも見たように、引張に比べて圧縮に対してははるかに大きな強度を示すだけでなく、
圧縮応力下にあるガラスは、はるかに靭性の高い材料であるかのようにふるまい、傷や打撃による損傷を受けにくく
なる。さらに、このような状態の管を加熱し、ついで急冷すると、冷却の最初の効果は表層の収縮であり、
結果として当初存在していた圧縮応力の状態が緩和されることになる。したがって、これらの管は急冷には
きわめて強く、一方で急加熱にはむしろ敏感である。この点で、それらは普通のガラスとはまったく異なっている。
通常のガラスは、冷却が急激な場合のほうが加熱が急激な場合よりも、特に物体のすべての表面に同時に熱や冷気が
作用するときに、破損しやすいのである。上述のような二層ガラスから作られた特殊な管は、イエナガラス工場で
製造されており、もっとも重要な用途はボイラーの水面計用ガラス管である。また、ガラス質シリカの顕著な
耐熱衝撃性――赤熱に加熱した後に冷水に投入しても破損の危険がほとんどないこと――は、その非常に低い
膨張係数に主として起因することも、ここで述べておくべきであろう。
別の観点からは、ガラスの膨張特性は、ガラスが金属に剛結されるあらゆる場合に重要となる。今日では、白熱
電球や「ワイヤー入り」プレートガラスなど、いくつかの工業製品において、この種の接合が行われている。
ある種の白熱電球では、金属線がガラス球に封入されており、この目的に使用できる金属は(少なくとも最近まで)
白金だけであった。白金は、ほとんどの金属と比べて膨張係数が小さいうえ、高温に加熱しても酸化されにくく、
ガラスと金属との間に清浄な接合を形成するのが容易だからである。近年では、ニッケル鋼のある種の合金を
用いる方法に特許が与えられている。ニッケル鋼合金は、「インバー」として知られる合金のように、
普通の鋼に比べて膨張がほとんど無視できるものから、さまざまな値の膨張係数をもつものまで作ることが可能で
ある。したがって、その系列から適切な合金を選べば、接合しようとするガラスとまったく同じ膨張係数を
もつ金属を得ることができる。ガラスと接合するのに必要な高温に加熱したときのニッケル鋼の酸化は、
気密な接合部を得るうえで大きな障害となり、これを避けるためのいくつかの工夫が特許化されている。
白熱電球では、ガラスと金属との接合部には完全な気密性が要求されるものの、両者が接触する長さはごく
短いだけである。他方、ワイヤー入りプレートガラスでは、ガラスの二層の間に金網が一面に挿入され、
圧延工程の途中でワイヤーが埋め込まれる。この場合、ワイヤーの酸化は多少生じても深刻な問題ではなく、
むしろいくつかの気泡ができるだけであるが、それらの存在はガラスの強度や実用性を損なうものではない。
しかし、熱膨張係数にかなりの差があると、相互に長い距離にわたって接合されたガラスと金属の間に、
きわめて重大な結果が生じる。この点を軽視しているメーカーもあり、そのため市販のワイヤー入りガラスの
多くは、製造者の手を離れてしばらく経ってから自発的にひび割れを起こしやすく、また製造工程中にも多くの
破損が発生している。
熱膨張は、ガラスのもう一つの用途においてもきわめて重要な因子である。われわれの日常的な温度測定器具で
ある水銀温度計は、ガラスの膨張挙動に非常に大きく影響される。水銀温度計を加熱すると、ガラス球および
管よりも水銀のほうが大きく膨張するため、管内の水銀柱は上昇する。ガラス製水銀温度計の目盛りの付け方や
補正の問題はきわめて広範なものであり、本書の範囲をやや超えるが、この問題に関連して発見されたガラスの
挙動の特異性については、ここで触れておくべきであろう。その一つは、温度計の球部が吹き上げられた直後には、
最終的な体積に達するまでにかなり長い時間を要するという事実であり、その結果、新しく作った温度計に
目盛りを刻んでも、しばらくすると零点がかなり変化してしまう。通常、その変化は球部の体積がわずかに増加した
ことを示す方向で起こる。特別な徐冷、すなわち「エージング」処理を施すことで、この変化を温度計に
目盛りを付ける前の比較的短時間のうちに完了させることができる。しかしなお、いくつかの温度計には
顕著に見られ、最高級の現代ガラスにおいてもごくわずかしか抑えられていない、さらなる特異性が存在する。
これは、温度計を高温にある時間さらしたのちに零点の明確な変化として現れ、その零点は時間の経過とともに
徐々に元の位置に戻っていく。こうした現象を示しやすいガラスで作られた温度計では、ある温度に対する
指示値が、その温度計が直前にどのような温度履歴をたどったかに大きく依存する。だが、イエナ工場の
おかげで、このような欠点をほとんど完全に免れた温度計用ガラスが現在では入手できるようになっている。
この問題に関連して興味深い事実として、カリとソーダの両方のアルカリを含むガラスは、いずれか一方のみを
含むガラスに比べて、上述の熱的異常をはるかに顕著に示すことが観察されている。
熱伝導率 は、耐熱衝撃性に及ぼす影響を除けば、それ自体としては実用上きわめて大きな重要性をもつ
わけではない。しかし、ガラスが常に比較的不良な熱伝導体であるという事実は、たとえば温室や温室栽培施設の
建設など、その多くの用途において利用されている。とはいえ、この場合でさえ、ガラスが長波長の熱放射に
対して不透明であるという性質のほうが、低い熱伝導率よりも重要である。同様のことは、さらに強い意味で、
ガラスの比熱の問題にも当てはまる。
ガラスの電気的性質は、はるかに大きな実用的意義をもつ。ガラスは電気器具においてしばしば絶縁媒体として
用いられるからである。ガラスの絶縁性および比誘電率と呼ばれる性質は、材料の化学組成によって大きく
変化する。一般に、もっとも硬いガラス、すなわちシリカと石灰にもっとも富むガラスが、もっとも優れた
絶縁体であり、一方、鉛やアルカリに富む軟らかいガラスは、この点でかなり劣る。実用上、とくにガラス絶縁物
が多少とも湿った大気にさらされる場合には、ガラスの種類は別の意味でも絶縁性に影響する。ほとんど
すべての種類のガラスは、その表面に大気中からかなり明瞭な水分の薄膜を凝縮させる性質をもち、そして前に
見たように、この吸湿性の程度はガラスによって非常に大きく異なる。軟質ガラスは硬質ガラスに比べて
ずっと吸湿性が高く、その結果生じる表面の水膜は、ガラスの絶縁性を低下させ、ときには完全に破壊してしまう。
電気はこの水膜に沿って漏洩してしまうのである。きわめて高い電圧を扱う静電気用装置では、この漏洩を
防ぐため、ガラス表面にシェラックなどのワニスを塗布する試みがなされることがあり、ある程度の範囲までは
有効な手段となる。ごく最近、比較的低い電気抵抗をもち、ある種の用途向けには導体として用いることのできる
ガラスが開発された。このガラスはそれ自体興味深いが、電気伝導性をもつガラスに対して想定されうる限られた
用途でさえ、あまり役に立つとは思えない。というのも、このガラスはアルカリに非常に富んでおり、大気だけの
作用に対してさえ化学的に不安定である可能性が高いからである。
ガラスのもっとも価値ある、そして多くの点でもっとも興味深い性質――透明性――については、まだ触れて
こなかった。光学ガラスに関する章(第 XII 章)でガラスの光学的性質全般をより十分に扱う予定であるため、
この話題への言及を本章の末尾まで意図的に先送りしてきたのであり、ここではごく簡単に触れるにとどめる。
実用上のほとんどすべての用途において、ガラスが他のより強い、あるいはより安価な材料ではなく用いられる
のは、その透明性という基本的かつ本質的な性質によるところが大きい。この意味でいう透明性の中には、
単なる半透明性も含めておきたい。というのも、しばしば妨げのない視界を避けることが、採光を確保することと
同じくらい必要とされるからである。実際、ガラスが広く用いられている用途で、光を透過させる機能が実用上
あるいは審美上の目的の達成に大きく関わっていないものを見つけることは難しい。ごくわずかな例外としては、
壁面の被覆に使われる現代的なオパールガラスや、まだ広く普及してはいないが、レンガや舗装石として用いられる
プレスガラスブロックが挙げられる。これらの場合、ガラス質物体が他の材料に優れるのは、その硬さと表面の
滑らかさによる。しかしこれらの特殊な例を除けば、世界で使用されるガラスの 95% 以上が、光の透過が
所望の結果――実用上であれ、美観上であれ――を達成するために不可欠であるような目的に用いられている
という事実が残る。光を透過させる能力は、多くの固体が共有する性質ではないことは興味深い。ゼラチンや
セルロイドのようなコロイド性有機物の一部は、ガラスに匹敵する程度の透明性をもつが、石英や蛍石のようないくつかの
鉱物結晶は、もっとも高品質のガラスさえ上回る透明性を示すことがある。また、ガラスのほかの光学的性質の
いくつかは、ダイヤモンドやルビーのような天然物質によってはるかに凌駕される。しかし、このような例が
きわめて少数であるという事実そのものが重要である。なぜなら、透明性はガラス質物体に共通する唯一の特性
では決してないからである。
ガラスの透明性がそれほど価値ある、そして実際不可欠な性質であるにもかかわらず、完全に透明なガラスは
一種として存在しないことを忘れてはならない。どれほど完全に研磨されたガラス表面であっても、その表面に
入射する光の相当部分は入射面で反射され、またガラスから出ていく際にも再び反射によって失われることは別として、
光がガラスを通過する間には、ガラス内部によって一定割合の光が吸収され、透過光はそれだけ弱められる。
もっとも純粋で優れたガラスでは、この吸収はごくわずかであり、適当な厚みの試料であれば、きわめて高感度の
測光器を用いない限り、光量の減少を示すことはできない。しかし、どれほど優れたガラスでも、厚さ 20 インチ
以上を通して観察すれば、光の吸収の影響が明らかに認められる。さらに、すべてのガラスは光を吸収するだけでなく、
光の色によって吸収の程度が異なる。したがって、白色光がガラスを通過すると、その構成成分のうちある色は他の色
よりも強く弱められ、その結果、出射光はわずかに着色される。もっとも純粋で白いガラスであっても、非常に厚い
塊を通して観察すれば、常に明らかな青または緑の色調を示すが、この色調は数インチの厚みを通して見る場合には
まったく認識されない。ところが、通常の市販ガラスは、このような完全な透明性からは程遠い。もっとも良質な
板ガラスでも、熟練した観察者が、適当な厚さの 1 枚の板を白い紙の上に置いて見たとき、かすかに緑がかった
青味を帯びているのがわかる。こうしたガラスの板を横から見て、光がかなりの厚みを通過するようにして観察すると、
ガラスの緑がかった青みは、いっそうはっきりと認識される。長さを揃えたさまざまな種類のガラス片の端面を
並べて観察することで、「無色」に見えるガラスの色を比較する簡便な方法が得られるが、こうしてみると、
ガラスの種類によって色がいかに著しく異なるかがわかる。シートガラスは通常、研磨板ガラスよりも明らかに
色が濃く、圧延プレートガラスはたいていずっと緑色が強い。この種のガラスでは、多くの場合、板を普通に
透して見るだけでも、その色がはっきりわかる。
ガラスの色が、透過する光の価値にどの程度の影響を与えるかという問題の答えは、その光が照らす空間が
どのような用途に供されるかによって決まる。色の微妙な比較が行われる場合や、色覚を駆使する繊細な作業が
行われる場合には、入射光にいかなる着色も生じさせないことが不可欠であり、もっとも無色のガラスを用いるのが
望ましい。また、写真スタジオでは、日光に含まれる化学的に有効な光線(とくに短波長光)が、できるかぎり
吸収されずに透過するガラスを用いることが重要であり、そのための特殊ガラスが市販されている。現状では、
この種のガラスの価格が、スタジオの天窓全体のガラス張りに用いるには高すぎるかもしれないが、人工光を
もっとも有効に利用しようとする場合には、その使用がきわめて有利であることがわかっている。一方、日常的な
用途においては、普通のシートガラスや板ガラス、さらには緑がかった圧延プレートガラスによる、わずかな色調の
変化は、光の質にまったく悪影響を与えない。大多数の人は、その存在にまったく気づかないだろう。ガラスによる
光の透過、吸収、屈折、分散などは、総称してガラスの「光学的」性質と呼ぶのが適切であり、光学用ガラスの
製造に関する章において、これらを一括してより詳しく扱うことにする。
第 III 章
ガラス製造の原料
ガラス製造のあらゆる部門における原料の選択は、きわめて重要な問題である。
一般に、一度ガラス溶融用ポットや炉の中に投入された「固定」物質は、最終的な
ガラス中にすべて現れるが、揮発性または可燃性の物質は、溶融の過程で多少とも
完全に除去されてしまう。したがって、化学工業においては、製品をろ過や結晶化、
その他の分離操作によって精製することができるのに対し、ガラス製造者は、望ましく
ない成分を炉に投入する前にすべて除去しなければならない。そして、ガラスの透明性の
ために、色や品質に関する欠陥の検出がきわめて容易であることから、この条件の厳格さは
さらに増すのである。したがって、最高級のガラスを製造する場合には、原料として
用いる物質に対して、きわめて厳しい純度の規準が適用される。製品の品質が低くなるに
つれて、原料の純度に対する要求も低くなり、やがて、最も粗悪な緑色ビンの製造とも
なれば、玄武岩質岩石のようなきわめて不均一な物質や、他のガラス工場から出る破片、
欠陥品、半溶融ガラスなどの雑多な残滓といったものまで、多少とも満足に利用されるに
至る。
したがって、最高級ガラスに対して原料にもっとも望まれる性質は、商業的条件の許す
かぎり純粋に近いことであり、その次に、組成の変動ができるだけ少ないことである。
たとえば、1 トンの砂に含まれる水分量は、得られるガラスの組成に明瞭な影響を
与えるので、砂を完全に乾燥した状態で入手できない場合には、少なくとも常に一定割合の
水分を含んでいなければならない。そうでないと、日々使用する砂について、その都度
化学分析によって水分百分率を決定し、その結果に応じて使用量を調整しなければならず、
このような手順は、もちろん全工程を著しく複雑にする。他の場合には、組成の変動を
ここまで容易には補正できず、その結果として、ガラスの組成に制御不能な変動が生じる。
そのため、ときには品質が理由もなく低下したり、ガラスが通常の温度では自由に溶け
なくなったりする。原料および各種製品の両方を化学分析によって系統的に管理すれば、
この種の好ましくない事態の原因を、しばしば製造者が突きとめられるようになる。
しかし、このような管理がいかに必要であるにせよ、組成や物理的性状の変動が大きすぎる
原料を使用することによる欠点を、完全に補うことはできない。ガラス製造においては、
化学組成だけでなく、原料の物理的状態や物性もまた重要である。したがって、ガラス溶融に
用いる原料は、適度に細かい粉末の状態で入手できなければならないが、この点に関連して、
きわめて硬い物質も柔らかい可塑性物質も、粉砕が非常に困難であることを忘れてはならない。
さらに、ある物質が天然に粉末として産出する場合、その粉末は粒度が均一で、しかも細か
すぎないことが望ましい。とりわけ、その物質が融剤というより耐火性成分に属する場合は、
そうである。この場合、粗い粒子が多く含まれていると、それらは炉内で溶解しきれず、
完成ガラス中に未溶解のまま残ってしまい、それを避けるには、これらを溶かすために
過度の高温と長時間の「溶融(ファウンディング)」を行わなければならない。このことは、
主として珪酸質および石灰質成分に当てはまるが、硬化したソルトケーキ(硫酸ナトリウム)
の団塊も同様の挙動を示すことがある。
原料選択においては、貯蔵の容易さもまた考慮すべきである。たとえば、石灰石を、大きな
石塊の形で貯蔵しておき、必要に応じて粉砕する場合には、その保管はきわめて容易であり、
風雨にさらされたとしても有害な変化は生じない。一方、硫酸ナトリウム(ソルトケーキ)は、
比較的乾燥した場所に貯蔵した場合でさえ、急速に固まって硬い塊となり、その際、一定量の
水分も吸収する。このような性質は、必ずしも常に避けられるわけではなく、たとえば
ソルトケーキは、現在多くの種類のガラス製造において不可欠な原料である。しかし、その
ような事情で、ある物質の価値が実際上かなり低下してしまう場合もある。
ガラス製造に通常用いられる原料は、つぎの三群に分けることができる。――
(1) シリカの供給源。
(2) アルカリの供給源。
(3) アルカリ以外の塩基の供給源。
(1) シリカの供給源.――シリカの主たる供給源は砂である。この物質は、地質学的な堆積物
として天然に産出し、その分布面積や層厚が非常に広大なものも少なくない。こうした砂の
堆積物は、つねに珪酸質岩石の風化・崩壊によって形成されたものであり、こうして生じた
破片は、水の作用によってふるい分けられ、運搬される。その結果、これらは河川によって
海(海成堆積物)あるいは湖(湖成堆積物)に運び込まれて沈積する。運搬中または堆積後に
おいて、水の作用により、個々の粒子が丸みを帯びた粒状に磨かれていることが多い。
このような成因のため、砂の化学組成は、その堆積をもたらした母岩の性質によって大きく
変化する。シリカに非常に富む岩石、あるいはほぼ純粋なシリカから成る岩石が浸食を受けた
場合、そこから生じる砂はしばしば非常に純粋であり、シリカ含量が 99.9% に達する堆積物も
知られている。しかし、より一般的には、その砂には、ある程度風化した長石の破片が含まれ、
そのためアルミナ、鉄、アルカリが組成中に導入されている。最後に、前述の純粋な砂から、
鉄とアルミナに非常に富む粘土質マールに至るまで、あらゆる組成範囲の「砂」が知られて
いる。
光学ガラス、フリントガラス、もっとも白色度の高いシートガラス、および最高級のボヘミア
ガラスといった最高級ガラスの製造には、非常に純粋な種類の砂が必要であり、できれば鉄を
0·05% 未満、アルミナ、石灰、アルカリなど他の不純物を合わせても 0·05% を超えない
ものが望ましい。実際問題として、このように鉄の少ない砂には、測定可能な量の不純物として
アルミナ以外はほとんど含まれない。ヨーロッパでもっともよく知られたこの種の砂の鉱床は、
パリ近郊のフォンテーヌブローにあるが、同等の良質砂がドイツのリッペでも産出し、そこからは
シリカ含量 99·98% を保証した砂が市販されている。このような砂ほどではないにせよ、
きわめて良質な砂が、ドイツ(ザクセン)のホーエンボッカや、ヨーロッパの他の数か所でも
得られる。イギリスでは、現在のところ、このような高純度砂の鉱床は開発されていない。
これらきわめて純粋な砂に次いで価値の高いものは、ベルギー産のガラス用砂、なかでも
エピナルの砂である。これらは通常 0·2~0·3% の鉄と、やや多めのアルミナを含んで
いるが、シートガラスやプレートガラスの製造に非常に広く用いられている。さらに品質基準を
緩めれば、利用可能な砂の鉱床は多数存在し、各地域の製造者は、より局地的な供給源を
多少なりとも利用している。たとえばイギリスでは、ベッドフォードシャーのレイトンや、
東海岸のリンの砂が広く使用されている。最後に、もっとも低廉なビンの製造には、鉄を
2% まで含み、その他の物質もかなりの割合で含有する砂が用いられる。
シリカは、さまざまな純度状態で、砂以外にも多くの形で自然界に存在する。これらのうち
もっとも一般的なものは、「砂岩」と呼ばれる、ある程度緻密な堆積岩の形である。化学組成の
観点から言えば、これらの石の中には、最高級ガラスの製造にきわめて適したものもあるが、
一般に、良質な砂層に比べると岩石はそれほど均質ではないという欠点がある。さらに、岩石を
ガラス製造に用いるには、あらかじめ粉砕して粉末にしなければならないが、その粉砕産物は、
通常きわめて微細な粉から、粉砕機に付属するふるいを通過しうる最大粒径の粒子に至るまで、
あらゆる大きさの粒子が混在することになる。ガラス職人の立場から言えば、このような
ごく微細な粒子の存在は明らかな難点であり、おそらく水洗によってこの粉塵を除去する必要が
あるだろう。この操作自体が粉砕石のコストを増大させると同時に、材料のかなりの割合を失う
原因となる。同様の異議は、粉砕した石英や火打石をガラス製造用のシリカ源として用いる
場合にも当てはまるが、こちらのほうが状況はさらに悪い。しかも、これらの物質はきわめて
硬く、粉砕が困難であるため、その価格はガラス製造用としては到底容認しがたいものとなる。
したがって、粉砕石英や火打石の使用は、現在では陶磁器工業にほぼ限られており、そこで
これらは素地および釉薬双方のシリカ源として用いられる。しかし、かつては粉砕火打石が
最高級ガラスの製造に広く用いられており、その名残として現在も「フリントガラス」という
名称が残っている。
長石類の鉱物は、本質的にはアルミナと一種またはそれ以上のアルカリのケイ酸塩から成り、
ガラス製造に広く用いられている。その高いシリカ含有量(70% に達することもある)が、
有効なシリカ供給源となるためである。ただし、シリカ源としてみれば、多くの長石は
あまりに高価であり、その使用はもっぱら、それに含まれるアルミナとアルカリを目的と
するものである。
(2) アルカリの供給源.――もともとガラス中のアルカリ成分は、植物や海藻――いわゆる
「ケルプ」――の灰から得ていた。いずれの場合も、アルカリは炭酸塩の形で得られ、通常
きわめて不純な状態のまま用いられていた。しかし現在では、工業用アルカリの原料は、主に
ナトリウムおよびカリウムの塩化物の天然鉱床その他の供給源に求められている。現在のところ、
塩化物の自然な形のままでアルカリをガラス原料に導入することは、工業的にはまだ不可能で
ある。最大の難点は、塩化物がガラス溶融炉の温度で揮発しやすく、また熱いシリカによって
分解されるのは水蒸気の存在下に限られるという点にある。したがって、通常のガラス炉に
これらの塩を投入すると、望まれる二重ケイ酸塩の形で他成分と結合する前に、蒸気として
追い出されてしまうだろう。
そのため、アルカリは、より揮発しにくく、より容易にシリカの作用を受ける形でガラス原料に
導入される。これらのうち、炭酸塩は歴史的に古く、現在工業的に遥かに重要なのは硫酸塩で
ある。炭酸ナトリウム(ソーダ灰)は、いくつかの特殊ガラスの製造に用いられ、また
イギリス製フリントガラスの原料でもあるが、これは二つのよく知られた化学的製法のいずれかに
よって生産される。その一つは「ブラックアッシュ」または「ル・ブラン(Le Blanc)法」であり、
この方法では、まず塩化物を硫酸の直接作用によって硫酸ナトリウムに変え、ついで、これを
炭酸カルシウムと石炭の混合物とともに焼成して炭酸塩に変える。こうして生成した炭酸ナトリウムは、
溶解とその後の蒸発によって分離される。より純粋な炭酸ナトリウムは、「アンモニアソーダ法」
によってきわめて安定した品質で得ることができる。この方法では、塩化ナトリウム溶液にアンモニアと
炭酸ガスを圧力下で作用させる。現在、この方法で製造されたソーダ灰は、ガラス製造用として、
きわめて高い純度と一定した組成の状態で、定期的に供給されている。その大きな利点は、まさにこの
性質にあるが、その比較的高価なことから、用途は特殊なガラスにほぼ限られている。このような用途では、
前述の性質がきわめて重要となる。
シートガラスや各種プレートガラスの製造のような、ほとんどのガラス製造においては、アルカリは
ソルトケーキ――すなわち 硫酸ナトリウム――の形で導入される。この製品は、ル・ブラン法
の第一段階、すなわち塩化ナトリウムに硫酸を作用させる工程の結果として得られる。したがって、
ソルトケーキは比較的粗悪な製品であり、その使用は、ガラス製造に利用しうるアルカリ源として
圧倒的に安価であるという事実に基づいている。しかし、その使用にはいくつかの欠点がある。
その最大のものは、シリカがソルトケーキを分解するには、還元剤の助けを要するという事実である。
かかる還元剤は、炉内気相――炎のガス――によって部分的に供給されるが、これに加えて、コークス、
木炭、無煙炭などの形の炭素を、ソルトケーキを含むすべてのガラス原料に一定割合加えなければならない。
この目的のために用いる炭素量がわずかにでも誤ると、悲惨な結果を招きうるし、最良の条件下でさえも、
この方法で作られたガラスから硫黄化合物の痕跡を完全に取り除くことは容易ではない。さらに、ソルト
ケーキに関しては、その製造法の如何を問わず、ある程度有害な不純物を必ず含んでいるという点からも、
トラブルの危険が生じる。製造法の細部によって、ソルトケーキには、未反応の塩化ナトリウムか、あるいは
遊離の硫酸、もしくは硫酸カルシウムの形で硫酸が、常にわずかな過剰として残存する。とはいえ、良質の
ソルトケーキは、少なくとも 97% の無水硫酸ナトリウムを含み、塩化ナトリウムまたは硫酸はいずれも
1·0% を超えてはならない。純粋な硫酸ナトリウムは水に容易に溶けるが、通常のソルトケーキは必ず
不溶性残渣を残し、それは多くの場合、製造炉のライニングや取扱いに用いた道具から混入した微小な
粘土粒やその他の物質から成る。このような不純物が多量に存在すると、ガラスにとって有害になりがちで
ある。不溶性残渣は 0·5% を超えてはならず、良質のソルトケーキでは通常 0·2% 未満である。
ソルトケーキには、ガラス製造原料として扱ううえでやっかいな性質がいくつかある。たとえば微粉砕した
ソルトケーキは、長期間、とくに湿った空気にさらすと、大気中の水分を吸収し、「芒硝(Glauber 塩)」
と呼ばれる結晶性形態へと部分的に変化する。この過程の結果として、きわめて硬い塊が形成される。
したがって粉砕済みソルトケーキは、長期にわたる貯蔵には適さず、再粉砕の必要に迫られる。また、この
凝集作用は、ソルトケーキを一成分として含むガラス原料混合物を貯蔵する際にも生じる。実際上、ソルト
ケーキは必要に応じて粉砕するほかなく、その物性のため、細かい粉末にまで挽くこと自体が困難である。
さらに、粉砕の際に生じる粉塵は、健康に重大な害を及ぼすものではないにせよ、特有の強い刺激性をもって
いる。
カリウムは、ガラス製造にはほとんど専ら炭酸塩の形、すなわち一般に「パールアッシュ」と呼ばれる
炭酸カリウムとして用いられる。もともと木材やその他の陸上植物の灰に由来していたが、現在では、
原料となる塩化カリウム(スタスフルトなどの天然鉱床から得られる)に、前述のソーダと同様の方法を
適用して製造される。市販のパールアッシュはかなり純粋な物質ではあるが、その使用は、この物質が
強い吸湿性をもち、大気中から水分を急速に吸収するという事実によって複雑になる。一定組成のカリ
ガラスを製造しようとする場合には、パールアッシュの水分含有量を頻繁に分析によって測定し、その
結果に従ってガラス原料の配合比率を調整する必要がある。
アルカリはまた、硝酸塩の形(硝酸カリウム=硝石、および硝酸ナトリウム=チリ硝石)でガラスに
導入されることもある。しかし、これらはガラス中のアルカリ源として働くとはいえ、その本質的な目的は、
それらに含まれる酸素にある。この種の酸化剤は、もちろん硫酸塩および炭素を含むガラス原料に加えられる
ことはなく、炭酸塩を含む原料、特にフリントガラスを酸化し精製するために用いられる。これらの物質は
ごく少量しかガラス原料に加えられないため、その極端な純度はガラス職人にとってそれほど重要ではなく、
どちらの硝酸塩についても、通常の「精製」品であれば、もっとも高度な要求にも十分応えうる純度を備えて
いる。
アルカリを相当量含む天然鉱物のうち、ガラス製造の原料として利用されるものが若干ある。その中でもっとも
重要なのは、すでに述べた長石類の鉱物である。ただし、これらはかなりのアルミナを含み、もっとも純粋な
種類を除けば、たいていは多かれ少なかれ鉄も含んでいる。アルミナを望ましくない成分とみなすガラス職人も
いれば、その逆の見解をとる者もおり、長石質鉱物の利用可否は、こうした見解に左右される。もっとも安価な
種類のガラス、たとえばビンガラスなどでは、長石質鉱物や花崗岩、玄武岩のような岩石が原料として自由に
用いられている。アルカリとアルミナの両方を含む別の鉱物にクリオライトがある。この鉱物は、ナトリウムと
アルミニウムの二重フッ化物であり、とくにオパールガラスおよび乳濁ガラスの製造にきわめて有用な性質を
示す。ただし、単なるアルカリ源としてみれば、クリオライトはあまりに高価である。
(3) アルカリ以外の塩基の供給源.――この中でもっとも重要なのは石灰と酸化鉛であり、前者は
各種プレートガラスおよびシートガラス、ならびにビン、さらにかなりの割合のプレス・吹きガラスの製造に
必要である。一方、鉛はすべてのフリントガラスに欠かせない成分である。ガラス製造に関連して商業的に
意味をもつその他の塩基としては、酸化バリウムがもっとも重要であり、酸化亜鉛やマグネシアその他いくつかの
物質は、科学的・光学的・技術的用途に供される特殊ガラスの製造に使用される。着色ガラスの製造に用いられる
金属酸化物も、もちろん塩基性物質である。これらについては、マンガン酸化物を除き、色ガラスの項で扱う。
マンガン酸化物は、多くの普通の「白色」ガラスの製造に大量に用いられるので、ここで取り上げておく。
酸化カルシウム(石灰)は、一般に炭酸塩あるいは水和酸化物(消石灰)の形でガラス原料に導入される。
炭酸塩は天然起源のものか、あるいは化学的に製造されたものであり、水酸化物はつねに、炭酸塩を焼成して
石灰を得たのちに、その石灰を「消化(スレイキング)」することで得られる。天然の炭酸カルシウムは、
チョークおよび石灰岩の形で多量に産出し、両者ともガラス製造に用いられている。チョークは柔らかく
もろい物質であり、とくに天然の産物が多少湿っているのが普通であるため、粉砕工程で目詰まりを起こし
やすい。チョークの大部分はしばしば非常に高い純度で産出するが、その一方で、火打石の散在塊によって
しばしば汚染されている。化学的には、これはガラス職人にとってあまり問題となる不純物ではない。というのも、
ごく少量のシリカを導入するだけであり、その存在を配合計算で特に考慮する必要はないからである。
しかし、火打石の破片が混合物中に残ったまま炉に投入されると、非常に耐火性が高く、最終ガラス中に不透明な
包有物として現れやすい。天然石灰岩も、世界の多くの地域で非常に高純度のものが得られる。一般に硬く、
やや脆い岩石であり、所要の細かさまで容易に粉砕することができる。この物質では、火打石のノジュールが
混在することはそれほど多くないが、その一方で、マグネシアや鉄による汚染がしばしば見られる。マグネシアは
少量であってもガラスを硬く粘稠にする傾向があるため、とくにプレートガラスやシートガラスなどの硬質ガラス
には、マグネシア含有量ができるかぎり低い石灰岩を用いなければならない。白色ガラスを得たい場合には、
石灰岩中の鉄分も低く抑える必要があるが、同じ重量のガラスを製造するのに用いる石灰岩の量は、砂の量より
少ないので、砂と比べればやや高い鉄含有率も許容される。それでもなお、良質なガラスに用いる石灰岩では、
鉄は 0·3% を超えてはならない。
消石灰は、炭酸ガスの発生を避けることが工程上望ましい特殊ガラスでは、石灰源として用いられることがある。
すなわち、炭酸塩を加熱しシリカの作用を受けさせると炭酸ガスが発生するが、消石灰を用いると、水和物中の
水蒸気が放出されるだけであり、これははるかに低い温度で起こる。消石灰を得るには、まず十分に純粋な石灰岩を、
できれば大きな石塊の形で、炭酸ガスが完全に追い出されるまで焼成し、冷却したのち、その石灰を手作業で
消化する。このようにして得られる生成物は、しかし、水分および炭酸ガス含有量の両面で変動しやすい。
炭酸ガスは、大気から容易に吸収されるからである。このため、この材料を用いて一定品質のガラスを得ようと
する場合には、石灰含有量を頻繁に分析により確認し、その結果に対応して原料配合を調整しなければならない。
石灰を、石膏あるいは硫酸カルシウムの形でガラス原料に導入することも理論上は可能であるが、この化合物の
分解も硫酸ナトリウムの場合と同様に還元剤――炭素など――の介在を必要とし、そのためソルトケーキ使用に
伴う困難が、カルシウム化合物の場合にはさらに増大する。かなりの純度の石灰岩は多くの地域で少なからず
産出するので、ガラス製造用としての硫酸カルシウムの商業的価値は、きわめて低いと考えられる。
バリウム化合物 は、化学的にきわめて石灰化合物に近縁であるので、この段階で扱っておくのがよい。
バリウムは、天然に重晶石(barytes, heavy spar)およびウィゼル石(witherite)としてかなり大量に
産出する。前者は本質的に硫酸バリウムであり、後者はバリウム炭酸塩である。硫酸塩の利用は、上で述べた
硫酸カルシウムの場合と同じ理由で問題があるが、バリウム化合物のほうが石灰化合物よりもはるかに容易に
還元・分解される点は異なる。天然鉱物であるウィゼル石は、バリウムガラスの製造にかなりの程度で用いられ、
これらのガラスは、用途によっては鉛ガラスの代替として有用であることがわかっている。一方、光学用のような
最高級バリウムガラスには、バリウムは人工的に製造された塩の形で導入される。その中でもっとも重要なのは
炭酸塩であり、商業的には「沈澱炭酸バリウム」と呼ばれる。この沈澱物は、しかし、通常は化学的に純粋な
物質ではなく、多少とも硫黄化合物を含んでいる。こうした不純物が有害か否かは、製造しようとするガラスの
種類に大きく依存するため、個々の場合ごとに決めるほかない。バリウムの硝酸塩および水酸化物も市販されて
いるが、もっとも高価な種類のガラスの製造に用いる場合でさえ、これらはきわめて高価な原料である。
もっとも、これらはかなりの純度で入手可能ではあるが、水酸化物のほうは、大気中から炭酸ガスを急速に
吸収して炭酸塩に変化してしまうというやっかいな性質をもつ。
マグネシア は、化学的にはカルシウムやバリウムと近縁の、もう一つのガラス形成塩基である。この
元素は通常、炭酸塩または酸化物の形でガラス原料に導入される。炭酸塩は、天然ではマグネサイトの形で
ある程度純粋に産出し、これを焼成することで酸化物が得られる。天然鉱物およびその焼成品は、もちろん
もっとも安価なマグネシア供給源であるが、この元素は比較的少量しか用いられないので、人工的に沈澱させた
炭酸マグネシウムや焼成マグネシアが好まれることも多い。マグネシアは、特別な価値をもたらす特性が
期待される特殊ガラスにのみ、意図的にかなりの量が添加される。通常の石灰ガラスでは、すでに述べたように、
この元素は望ましくない不純物とみなされる。
酸化亜鉛 は、化学的には、一方ではこれまで述べた塩基群に、他方では酸化鉛に挟まれた位置にある。
この元素は、特殊な光学ガラスにのみ添加される。特別な「亜鉛クラウン」ガラスが、ある程度用いられている。
化学的に製造された酸化亜鉛が、ほとんど唯一の供給形態であるが、ガラス原料に導入する際には、この物質が
非常に揮発しやすいことを念頭に置く必要がある。
鉛 は、ガラス原料の中でもっとも広く用いられる成分の一つである。この物質を相当量含むガラスは、
いずれも多かれ少なかれ共通した性質――高い密度と大きな屈折力――を示し、一括して「フリントガラス」
と呼ばれる。鉛は現在、ガラス原料にはほとんど例外なく鉛丹(レッドリード)の形で導入されており、他の
酸化鉛もほぼ同様に使用可能ではあるが、ほとんど用いられない。鉛丹は、2 種類の酸化鉛(PbO および
Pb_{2}O_{3})の混合物であり、その割合は、おおよそ Pb_{3}O_{4} という式に相当する。この物質は、
適切な炉で金属鉛を焙焼することによって製造され、そこで溶融鉛が熱い空気流にさらされる。製品はかなりの
純度で得ることができ、炉床から混入するシリカや、鉛を取り扱う際に用いる道具から混入する鉄が、良質な
鉛丹に見られる主な異物である。銀は望ましくない不純物であるが、近年の鉛脱銀法がきわめて完全である
ため、鉛製品中にこの元素が見出されることはまれである。鉛丹を原料として使用する際には、分析による
管理とそれに基づく配合調整が必要であり、一定品質のガラスを得ようとする場合には不可欠である。
この必要性の理由は、酸素含有量、したがって酸化鉛(PbO)含有量が、製造ロットごとにかなり変動すること、
さらに納入された実際の材料には、ときにかなりの水分が含まれていることにある。
鉛丹の取扱い方法については、ここで一言触れておくべきだろう。というのも、この物質の粉塵を吸入することが、
作業者に有害な影響を与えるからである。ガラス製造用としては、陶工が用いるように、まず鉛を「フリット化」
して、それを比較的不溶性かつ無害なものに変える方法は採用しがたい。仮にそうしたとしても、問題は単に
一段階前に移動するだけであり、そのフリットを製造する者が、同じ困難に対処しなければならないだろう。
著者の見解では、この問題の正しい解決は、鉛粉塵の発生自体を適切に防ぐか、少なくとも作業者がそれを
吸入する危険から守ることにある。毎日取り扱う鉛ガラスの量が少なく、一度に取り扱う鉛の量も少ない
場合には、この作業に従事する労働者に、作業中は常時着用する有効な防塵マスクを支給し、さらに清潔の
保持や適切な食堂の設置など必要な予防措置を講じて、鉛粉塵が食物を直接・間接に汚染する危険を避ければ、
十分であるだろう。しかし、毎日大量のフリントガラスを製造する場合には、適切な混合・輸送機械を備えた
設備を設け、鉛を他の成分と混合するときには、粉塵が外部に出ないよう密閉された状態で機械的に取り扱う
ことが、可能であり、かつ当然求められる。公正を期すために述べておくと、ガラス製造業者は本国において、
自主的な取り組みと当局からの圧力の双方によって、こうした要件をおおむね適切に満たすようになっている。
アルミニウム.――アルミナをかなりの割合で含むガラスにはいくつかの種類があり、その代表的な例が、
ある種の光学ガラスや多くのオパールガラスである。一方、ほとんどの普通ガラスにも、この物質は多少なりとも
含まれている。後者の場合、アルミナは、溶融ガラスを保持する耐火粘土製のるつぼや炉壁から、不可避な溶解
作用によって導入されるが、場合によっては、長石を原料の一成分として用いて、意図的に少量(Al_{2}O_{3}
として約 2~3%)加えることもある。より多量のアルミナが必要な場合には、市販されている水和物を用いる。
これはほぼ化学的に純粋な状態で入手できるが、当然ながら対応する高いコストを伴う。オパールガラスでは、
アルミナは部分的ないし全量が長石から、あるいは場合によっては鉱物 クリオライト から供給される。
クリオライトは、アルミニウムとナトリウムの二重フッ化物であり、主としてグリーンランドに大きな天然鉱床が
存在する。しかしこの鉱物は高価であるため、その組成と性質がほぼ同一の人工代用品が開発され、ガラスおよび
ホーロー工業で成功裏に用いられている。
マンガン.――この元素の酸化物は本来、着色成分の範疇に属するが、普通の「白色」ガラスの製造にきわめて
広く用いられているため、ここで扱うのが適当である。マンガンは通常、二酸化物(MnO_{2})の形でガラス原料に
導入されるが、下位酸化物(Mn_{3}O_{4})も使用可能である。市販の材料は通常、主としてロシアで採掘される
天然マンガン鉱石である。もっとも純粋な鉱石は、ほとんど完全に二酸化物から成るが、「褐色」鉱として知られる、
より低次の酸化物を多かれ少なかれ含む鉱石も、実際に用いられており、良好な結果を与えている。これらの鉱石は
かならず少量の鉄やシリカを含んでいるが、鉄が多量でないかぎり、その価値は含有するマンガン量によって
決まる。マンガンの着色および「脱色」作用については、後の章で述べる。この目的に関して、マンガンの代替
もしくは改良材料として提案されている物質として、ニッケル、セレン、金などがあり、ここではその名を挙げる
にとどめる。
ヒ素 もまた、「白色」ガラス原料にしばしば加えられる物質である。この元素は、商業上の白色ヒ素――すなわち
亜ヒ酸(As_{2}O_{3})――の形で普遍的に導入され、これは昇華によって純粋な状態で得られる。この物質は
きわめて毒性が高いので、ガラス製造の原料として使用する場合には、中毒の危険を避けるために特別の注意が
必要である。
炭素.――すでに述べたように、ある種のガラス原料には、適切な形の炭素を混合することが不可欠である。
この目的のための炭素は、木炭、コークス、無煙炭のいずれかの形で用いることができる。このうち、木炭は
疑いなくもっとも純粋な炭素源であるが、本国ではきわめて高価である。コークスの品質は、原料とした石炭の種類
によって大きく変動するが、いずれの場合も鉄に富む灰分をかなり含み、またいくばくかの硫黄も含む。
無煙炭は、きわめて純度の高いものが得られ、多くのコークスに比べて灰分も少ない。そのため、この用途には、
おそらくもっとも扱いやすい炭素源と言えるだろう。
第 IV 章
ガラス溶融用るつぼおよび炉
溶融によって生成される物質を成功裡に製造するには、適切な耐火材料の使用がきわめて重要である。
ガラス製造では、炉やるつぼを形成する物質に、二重の難題が課せられる。すなわち、炉の高温下で長時間に
わたって軟化や溶融に耐えるだけでなく、溶融ガラスそれ自体の溶解作用にも耐えなければならない。
ガラス製造に用いられる耐火材料は、このように二つの明確な群に分けられる。一方の群は、上述の両条件を
満たし、溶融ガラスと直接接触する位置に用いることができる材料であり、他方は、熱や炎のガスの作用には
耐えるが、ガラス自体の溶解作用には耐えない材料であり、当然ながら、溶融ガラスが触れない位置にのみ用い
うる材料である。まず前者の群から扱うことにしよう。
溶融ガラスに触れるガラス溶融設備の部分は、ほとんど例外なく、ある種の耐火粘土(fire-clay)で作られて
いる。この目的にもっとも適した耐火粘土の組成や性質を詳細に論じるには、本書全体の分量を費やしても足り
ないほどであるから、ここでは主要な原則だけを述べるにとどめる。まず、るつぼまたは「ポット」の製造に
用いる粘土を考えると、その成形に用いる粘土は、湿っている間に一定の可塑性をもち、乾燥後にかなりの強度を
示すことが必要である。乾燥および焼成後の材料は、ガラス溶融で用いられる高温に耐え、溶融や顕著な軟化を
起こさないほど十分な耐火性を備えていなければならない。化学組成や物理的性質の異なる各種粘土は、
溶融ガラスの化学的侵食に対する抵抗力にも非常に大きな差がある。いかなる粘土も、この条件下では多かれ
少なかれ溶解するが、その速度だけでなく、その溶解の「仕方」も重要である。そのため、しばしば、速やかに
ではあるが一様に溶解する粘土が、より遅くはあるが不規則な溶解を示す粘土よりも好まれる。後者では、
未溶解の粒子が剥離しやすく、それが不透明な包有物――いわゆる「ストーン」――としてガラスを汚すから
である。また、最良の結果を得るには、用いる粘土を、そのるつぼで溶融しようとするガラスの種類に応じて、
慎重に選び分けることが不可欠であることにも注意すべきである。イギリスでは、この問題は十分な関心を
払われてきたとは言いがたいが、ドイツやアメリカでは、国内に存在する耐火粘土資源が系統的に研究・利用
されてきた。その結果として、ガラス製造者は、物性・化学的性質が正確に知られた多くの材料の中から選択
できるようになっている。そして、これらの性質と炉内での「ポット」の実際の使用結果とを慎重に照合する
ことにより、製造者はもっとも適切な材料を選定できるだけでなく、現在の良好な銘柄の供給が途絶えた場合に、
改良や代替を求めるべき方向をも、ある程度見通すことができる。
ここで、耐火粘土製のポットまたはるつぼの製造工程を簡単に追ってみよう。るつぼの大きさと形状は、
それが用いられる目的によって決まる。容量 4 cwt. から 2½ トンまで、さまざまな大きさのるつぼが
各種ガラスの製造に用いられているが、もっとも普通の大きさは、直径 30 インチから 50 インチの範囲に
ある。多くのガラスにおいては、ポットの形は単純な開放型の鉢状――平面形は円形または楕円形で、縁の
直径が底の直径より大きい――をしている(図 1)。しかし、フリントガラスや、炎や炉内ガスとの接触から
保護すべきその他のガラスを製造する場合には、いわゆる「覆い付き(covered)」ポットが用いられる。
この場合、鉢部分――こちらはより円筒に近い形状をしている――はドームで覆われ、小さな庇付きの開口部
(フード)のみが設けられている(図 2)。覆い付きポットは、折りたたみ可能な木製型の上に築き上げられ、
ポットの乾燥を始める前に型を取り外す。
[図 1(FIG. 1)――ガラス溶融用の開放「ポット」またはるつぼ。]
[図 2(FIG. 2)――フリントガラスおよび光学ガラスに用いられる、覆い付きガラス溶融用ポット。]
ポット製造用の材料は、まずきわめて注意深く準備される。適切な種類の粘土を選定したのち、それを
適当な粉砕機で細粉に砕き、慎重にふるい分ける。この細かな粘土粉に、あらかじめ焼成した耐火粘土を
粉砕したものを、正確に定められた割合で混合する。工場によっては、この焼成材料を、使用済みポットの
破片をそのまま粉砕して得ることもあるが、よりよい方法は、この目的のために特に選んだ耐火粘土を
別途焼成して用いることである。この焼成材料の添加量は、使用する生粘土の化学的性質、とくに可塑性に
よって決まり、いわゆる「脂性(fat)」すなわち非常に可塑性の高い粘土には、焼成材料を最大 50% まで
加えるが、イングランドのストウブリッジ地区に産するような「痩せた(lean)」粘土には、はるかに少量しか
加えない。この焼成材料(シャモット)を加える目的は、完成ポットの安全な乾燥を容易にするとともに、
塑性粘土を乾燥させたとき、さらにその乾燥物を焼成したときに生じる収縮量を、全体として希釈することに
ある。焼成材料は、これらの収縮過程をすでに経験済みであるため、全体量を希釈する中性成分として働く
だけでなく、全体の骨格として働いて強度を高め、亀裂の発生傾向を抑制する。
生粘土とシャモットを十分に混合したのち、適量の水を加えて「練り起こし」、通常は適したペグミル中で、
長時間にわたり力強く練り合わせる。この工程を経て出てくる粘土は、かなり固いものの塑性をもった
練り土であるが、この種の粘土混合物のもつ本来の強靭さと可塑性は、湿った塊の状態で長期間貯蔵することに
よってはじめて十分に発達する。つぎの段階で、この可塑粘土は太い棒状にまとめられ、「ポット職人」に
渡される。職人は、この棒状粘土を用いて、最下部が上部を支えられる程度に乾いていくのを見計らいながら、
日ごとに少しずつポット(るつぼ)を築き上げていく。こうして大型ポットを築造する作業には数週間を要し、
その間、ポットのいかなる部分も早く乾燥しすぎないよう、十分な注意を払わなければならない。完成後は、
まずはゆっくり、それから亀裂の危険が小さくなってからはより強く乾燥を進める。使用に供する時点で、
ポットは通常すでに数か月が経過しており、十分に空乾きしている。ただし、この時点でも粘土はまだ水和
状態にあり、すなわち化学的に結合した水を含んでおり、これは焼成工程の初期段階でようやく追い出される。
焼成は、溶融炉の近くに設けられた比較的小さな炉または窯で行われる。ここでポットは、温度をきわめて
徐々に上昇させながら加熱され、最終的に明るい赤熱に達する。この工程はきわめて繊細であり、とりわけ初期
段階では、温度をゆっくりかつ均一に上昇させるのに大きな注意が必要である。そうしないとポットに亀裂が
入り、使用に耐えなくなってしまうからである。最後に、明るい赤熱状態を少なくとも 1 日維持したのち、
ポットは炉内に据え付ける準備が整う。通常これは、ポットと炉の両方が赤熱状態にある間に行われ、一度焼成
されたポットは、二度と冷却されることはない。
耐火粘土はまた、ガラス溶融炉の建造に必要な、さまざまな大きさのれんがやブロックの製造にも用いられる。
ここでは、溶融ガラスが触れると予想される部分――たとえばタンク炉の「タンク」または槽の壁や、ポット炉の
ポットまたはるつぼより下の部分――にのみ耐火粘土が使用される。後者の位置では、破損したポットからの
ガラスの漏れやあふれが起きた場合に、床や炉壁、通路などに溶融ガラスがたまりやすい。こうした位置に用い
られる耐火れんがは、通常ポット製造に用いるものよりはるかに質の低い耐火粘土から作られているが、これは、
るつぼに求められる条件の一部がここでは不要だからである。しかし一方で、より耐火性の高いれんがを用いれば、
炉の寿命は長くなるだろう。なお、この種のれんがは炉の建造に際してモルタルで積み上げるのではなく、水に
溶かした耐火粘土の薄いペーストの上に据え付けられ、継ぎ目はできるだけ薄く保たれることにも注意すべきで
ある。「シージ(siege)」と呼ばれる炉の部分――すなわちポットを載せる炉床(フランス語で「座」を
意味する「siège」に由来)――は、通常きわめて大きな耐火粘土ブロックで構築され、これには高い強度を得る
ために粗い材料が用いられる。炎が炉内に入る位置の近くでは、これらのブロックは急速に摩耗するが、その
原因は部分的には溶融であり、主としては摩耗作用による。すなわち、高速で流れる炎は、きわめて顕著な
研磨作用を示すようである。
タンク炉において溶融ガラスを保持する実際のタンクまたは槽も、同じく大型の耐火粘土ブロックで造られる
が、ここでは可能なかぎり最高品質の材料が用いられ、その扱いも、少なくともるつぼと同程度の注意を払って
行うべきである。というのも、その形状や大きさから、こうしたブロックはるつぼよりも大きな強度をもつ
一方で、平均的なるつぼよりもはるかに長期間、溶融ガラスとの接触に耐えることが期待されるからである。
タンク・ブロックに必要とされる条件を理解するには、次節の内容を少し先取りしておく必要がある。
すなわち、タンク炉では、溶融、精製、作業の各段階を通じて、ガラスは大型ブロックで組まれた槽の中に
保持される。このブロック同士は、いかなる接着材でも接合されておらず、「空積み」の状態で組まれ、外側
から鉄棒やタイロッドのシステムによって支持される。溶融ガラスは、ある程度までブロック同士の隙間に
浸透するが、ブロックの外側は意図的にできるだけ冷たく保たれているため、ガラスはこれらのすき間を
進むうちに急速に粘性を増して固くなり、こうして固まったガラスがブロック同士を強固に結び付け、漏れを
防いでいる。このように、ブロックは内側からは炉の高温とガラスの腐食作用にさらされ、外側からは冷却される
ことがわかる。この状態は、亀裂の発生を促す傾向があるので、ブロックにはやや粗い材料が用いられる傾向が
ある。他方で、ブロックの素材は、内外両面から加熱されるるつぼ壁ほど高温にはならないので、極端な耐火性は
それほど必須ではない。
タンク・ブロック用材料の選択について、詳細に立ち入る余裕は本章にはない。この問題については、まだ最終的に
満足のいく結論には至っておらず、上に述べたことから、選択の基礎となるべき考慮事項の性格が理解されれば、
ここでは十分であろう。
つぎに、溶融ガラスと接触しない位置に用いられる第二種の耐火材料――すなわちガラス溶融炉の構造材――を
簡単に考察しよう。ここでは、機械的強度と耐火性がほとんど唯一の要件であるが、タンク炉の天井アーチ
(「クラウン」)や、開放ポットを用いてガラスを溶融する炉のクラウンでは、れんがの材料が有色酸化物を
相当量含まないことも重要な条件となる。というのも、小さなはく片などが溶融ガラスの上に落下してガラスを
著しく着色させる危険があるからである。したがって、クロム鉱れんがのような材料は、この用途には不適当で
ある。実際には、何らかの形の「珪石れんが」が普遍的に用いられている。「ディナスれんが」として知られる
この材料(最初に産出したウェールズの地名にちなむ)は、およそ 98% のシリカ(SiO_{2})から成る。
純粋なシリカは、それ自体では成形や焼成によって一体化したれんがにすることができない。湿らせても可塑性を
示さず、焼成しても結合力をもたないからである。しかし、約 2% の石灰と少量のアルミナを混合することで、
湿潤状態で成形し、焼成によってかなり強固な一体ブロックとすることが可能になる。この材料は、工業用の
ガス焚き炉で到達しうる最高温度でも十分に耐えうる耐火性をもち、その機械的強度も、かなり大きなスパンの
アーチを築くのに足りる。しかしその一方で、この材料は加熱を非常に徐々に行わねばならず、炉温が大きく
上昇または低下する際には、常に注意深い監視が必要となる。というのも、珪石れんがは加熱中に非常に顕著な
膨張を示すため、これで築いたアーチに横方向の膨らみ余地を与えなければ、アーチが大きく持ち上がったり、
ひどい場合には完全に崩壊したりするからである。この危険は、アーチを締め付けているタイボルトを徐々に
緩めることで回避され、炉を止めてアーチが冷却するときには、逆にボルトを締め直して「ゆるみ」を取る。
局所的な急熱も、この材料には破滅的であり、激しいはく離を引き起こす。きわめて高温に耐え、かつ機械的
強度が要求される位置には、珪石れんがはきわめて価値ある材料であるが、その化学組成のため、溶融ガラスや
塩基性成分を多量に含む物質に急速に侵食されるので、珪石れんがはガラスに触れない位置にのみ用いることが
できる。
ここで、代表的なガラス溶融炉の一般的な設計と配置を、きわめて簡単に検討しよう。もっとも古く、単純な
形式の炉は、本質的には、耐火れんがで築かれた箱で、その中心にるつぼが置かれ、両側に薪や石炭の火床を
設けたような形である。しかし、このような手段で高温を得ようとする場合には、箱(炉室)の大きさ、とくに
火床の大きさを、るつぼの寸法と、それぞれ互いに適切に比例させる必要がある。火床は一般に広く深く造られ、
炉室全体を覆う背の高い円錐形の煙突が設けられ、小さな開口部を通じて炉室と連絡している。さらに洗練された
炉では、炉室自体が二重構造となっており、炎はまず内室の中でるつぼのまわりをめぐってから、外室と内室の
間の空間を通って煙突やコーンに向かう。これら原始的な炉は、現在では実質的に使われていないので、それ以上
詳しく述べる必要はないだろう。現代の炉では、燃焼過程は二つの明確な段階に分けて行われる。第一段階は、
「ガス発生炉(ガスプロデューサー)」と呼ばれる補助装置において行われ、そこで燃料が本来発生しうる熱の
一部が、可燃性ガスの生成に利用される。このガスは、そのまま、すなわちプロデューサーを出たときの高温の
状態で、またはある程度運搬されたのちに炉の廃熱で再び加熱されてから、本炉に送られる。いずれの場合にも、
ガスは本炉に入るときには高温であり、ここで同じく炉の廃熱で予熱された空気流と出会う。高温のガスと高温の
空気は、急速かつ完全に燃焼し、適切な割合で混合されれば、きわめて高温を生じる。この方式では、燃料の
燃焼によって発生する熱の一部が補助装置で生じ、その分だけ炉に供給される熱が損なわれるにもかかわらず、
旧来の、燃料をすべて炉内で燃やす「直火式」方式に比べて、はるかに高い効率が得られることは、一見すると
意外に思われるかもしれない。しかし、この新しい方式の利点は、燃料を気体の形で扱うことにある。第一にして
もっとも重要な利点は、炉から熱い燃焼生成物(煙道ガス)として逃げていく熱を、炉に入る未燃ガスと空気に
移し、その熱を炉に戻すことができる点である。この熱交換がどのように行われるかは後で述べるが、ここで
指摘しておくべき点として、いくつかの炉では、炉から出る燃焼生成物がこれほどまでに徹底的に冷却されるため、
炉の煙突に十分なドラフト(通風)を生じさせることができないことがある。ガス燃料使用のもう一つの利点は、
固体燃料を完全に燃やす際に必要とされるほど大量の空気を用いなくても、完全燃焼が得られることである。
このため、ガス燃料でははるかに高い温度を容易に得ることができ、またガスと空気を予熱することも高温達成を
助ける。さらに、適切なバルブを用いることでガスおよび空気の流量をきわめて容易に調節できるため、炉の
運転をはるかに安定させることが可能となる。最後に、近代的なガス発生炉では、そこで生成され、したがって
炉には戻せない「顕熱」の量を非常に低く抑えるよう工夫されている。すなわち、プロデューサーにおける
石炭の部分燃焼によって発生する熱の大部分が、水蒸気の分解、すなわち水蒸気を水素と一酸化炭素に変える
反応に吸収されるようになっている。その結果、プロデューサーから出るガス自体の温度はそれほど高くなく、
この段階で失われる熱の割合は、旧式のガス発生炉に比べてはるかに小さい。
本章の分量の制約上、ガス発生炉の構造や運転の詳細に立ち入ることはできない。ここでは、多くの近代的
プロデューサーが、厚い燃料層を満たした塔状構造をしており、その中で燃料が一部燃焼し、一部は空気と
水蒸気の混合流の作用でガス化される、という事実を述べるにとどめる。ここで起こる化学反応は複雑であるが、
最終的な結果として、炭酸ガス 2~8~10%、水素 10~20%、一酸化炭素(CO)8~25%、メタン(CH_{4})
1~3%、窒素 45~60% を含み、さらに水蒸気、タール状物質、アンモニアなどを含むガスが生成する。
良質なプロデューサーガスでは、可燃成分(水素、一酸化炭素、メタン)の合計は、全体の 30~48%(体積比)
であるべきだが、期待される正確な組成は、プロデューサーの型式と用いる燃料の種類に大きく依存する。
中には、きわめて低品位の燃料を扱うことが可能なプロデューサーもあり、それらから得られるガスでも、
最高温度を達成するのに十分である。これは、こうした燃料を直接炉内で燃やそうとすれば不可能だったであろう。
[図 3(FIG. 3)――蓄熱炉の配置を示す概略図。]
プロデューサーを出たガスは、耐火れんがで囲まれた煙道を通って本炉へ送られるが、その通路は炉の形式に
よって多少異なる。現代のガス焚き炉は、炉から出る燃焼生成物の熱を、炉に入るガスと空気の加熱に再利用
する方式に応じて、「蓄熱式(regenerative)」と「熱交換式(recuperative)」という二つの明確な型式の
いずれかに属する。蓄熱式炉では、炉室本体を出て煙突に達するまでの間に、燃焼生成物は、内部が耐火れんが
でゆるく充填された室を通過する。これらの室(レジェネレーター)は、ガスの熱を吸収して急速に高温に
なる。これらの室または「蓄熱室」が十分高温になったところで、ガス流の経路が変更される。すなわち、
炉ガスは第二の蓄熱室群へ送り込まれ、これを加熱し、一方、炉に入るガスと空気は、すでに熱せられた
蓄熱室群を通って炉室本体へと導かれる。流入するガスと空気は、通過の際に蓄熱室のれんがに蓄えられた
熱を吸収して予熱される。明らかに、二組の蓄熱室があれば十分である。一方の組は、炉から出る燃焼生成物に
よって加熱され、他方の組は、炉に入るガスと空気に熱を与える。これらの過程がある程度進行したところで、
適切なバルブ操作により両組の役割を入れ替えればよく、この切り替えを繰り返すことで、理論上、無期限に
運転を続けることができる。図 3 に、この方式の概略が示されている。
熱交換式炉(レクペレーティブ炉)では、同じ原理がやや異なる形で利用される。すなわち、炉から出る
燃焼生成物は、耐火粘土ブロックの内部に設けられた管状の通路を通過し、炉に入るガスと空気は、同じブロック
の外側を流れる。こうして、出口側ガスの熱が、耐火粘土の壁を介した伝導によって入口側ガス・空気に
移されるのである。両方式の優劣は、しばしば激しく論争されてきた。蓄熱方式の利点は、熱交換において
耐火粘土の熱伝導にあまり依存しないこと、そして、熱交換式で必要となるような複雑な管状ブロックを必要と
しないことである。一方、熱交換式では、「切り替え(リバース)」バルブや、その定期的な操作が不要であり、
また必要とする設置面積もいくぶん小さい。いずれの方式でも、ガラス溶融に必要な温度を十分に得ることが
できる。
どちらの方式においても、予熱されたガスと空気は別々の耐火れんが製煙道を通じて炉に導かれ、炉室本体に
入る直前で混合される。炉の省エネ性と効率は、ガスと空気の混合のされ方に、大きな程度で依存する。もし
急速かつ完全な混合が行われれば、炎はきわめて激しく高温だが、短く局所的なものとなる。一方、混合が
ゆっくりであれば、炎は長くなり、炉室全体に熱が行き渡る傾向がある。しかし、混合が遅すぎると、ガスが
炉を通過する短い時間の間に燃焼が完了せず、燃焼が炉出口の煙道や蓄熱室で継続したり、通路が狭すぎて
燃焼が妨げられ、未燃ガスが煙突まで達したりするおそれがある。ポート(開口部)の寸法が適切に設計され、
煙突のドラフトが適切に調整されている場合、燃焼は炉室を出る直前でちょうど完了するのが理想的であり、
そのときには炉のすべての開口部から、小さく鋭い炎の舌が噴き出すのが観察されるだろう。ガス焚き炉から
大きな煤けた炎が立ち上るのは、不完全燃焼を示すものである。
[図 4(FIG. 4)――覆い付きポットを用いる蓄熱式ポット炉の断面概略図。]
すでに述べたように、ガラスはさまざまな形と大きさのポットまたはるつぼか、開放型のタンク炉において
溶融される。覆い付きるつぼを用いるポット炉の一般的な構成は、図 4 に示されている。この炉では、ガスと
空気が炉室に入るポートは炉床に設けられているが、これらの開口は、側壁や端壁、さらには中央の柱に設け
られることも少なくない。いずれの場合も、すべてのポットをできるかぎり均一に加熱し、特定のるつぼに
集中した局所的な高温を避けることが目的である。局部的な高温は、その位置のるつぼを危険にさらすだけで、
炉本来の仕事にはほとんど寄与しないからである。ただし、より耐火性の高い種類のガラスを溶融するポット炉
では、炎がポットの下部をもっとも強く加熱するように、炉内の炎の回り方を意図的に調整するのが一般的に
望ましいとされている。ガス焚き炉内の温度分布の均一性に関連して、蓄熱式炉では、バルブを切り替えるたびに
炎の流れの方向が反転し、実際にはおよそ 30 分ごとに切り替えが行われることにも触れておくべきだろう。
この操作は、炉の両側の温度を均一にするのに大いに役立つ。一方、熱交換式炉では炎の向きは変えられないため、
しばしば「ホースシュー(馬蹄形)」炎と呼ばれる、環状の炎の流路が採用される。これは、炉の片側(片端)
に、入口ポートと出口ポートを並べて設けることで得られる。燃焼中のガスの運動量と急速な膨張によって、炎は
炉の向こう側まで押し出され、最後には煙突のドラフトによって入口側に引き戻されて出口ポートから出ていく。
炎の形状は図 5 に示されている。
[図 5(FIG. 5)――「ホースシュー」炎をもつ炉の概略図。]
ガラス溶解用タンク炉の全体配置は、平炉製鋼用のオープンハース炉とよく似ている。すでに述べたように、
タンクまたは槽は大型耐火粘土ブロックで組み上げられ、その内部に深さ 20 インチから 42 インチ(炉の設計と
溶融するガラスの種類によって異なる)の浴槽を形成する。ガスと空気の入口ポートおよび燃焼生成物の出口
ポートは、ほとんどの近代的炉では、ガラス面のすぐ上の側壁に設けられ、全体は珪石れんがで組まれたアーチで
覆われる。図 6 および図 7 は、圧延プレートガラスの製造に用いられるような単純な形式のタンク炉の一般的
配置を示すものである。図の炉は、炎の方向を交互に切り替える蓄熱式運転を想定して描かれている。熱交換式
タンク炉では、常にホースシュー炎が用いられ、瓶製造などの分野では、この図と同種のポート配置が、蓄熱式
タンクにも採用されることがある。シートガラス製造用のタンク炉では、炉が通常二つ以上の区画に分割され、
不純物をせき止め、清澄なガラスだけが次の区画に進めるようにするため、さまざまな絞りが設けられているが、
煙道やポートの配置という観点から見れば、この種の炉には非常に多くの共通点がある。
[図 6(FIG. 6)――タンク炉の縦断面概略図。]
[図 7(FIG. 7)――タンク炉の横断面概略図。蓄熱室およびガス・空気通路を示す。]
本書の範囲を超えるので、タンク炉とポット溶解炉の相対的な優劣を詳しく論じることはしない。一般に、
用途に応じて十分な品質のガラスをタンク炉で製造できる場合には、その圧倒的な経済性が、ほかの方式を
一掃してしまう傾向がある。たとえばビン用ガラスは、現在では専らタンク炉で製造されているし、普通の種類の
圧延プレートや、シートガラスの大部分についても同様である。他方で、比較的少量しか必要とされない特殊な
ガラスや、品質に対する要求が極めて厳しいガラスを製造するには、ポット炉が依然として不可欠である。
光学ガラスや色ガラスがその代表例であるが、中には需要量が多く、小型タンク炉を用いて製造する価値のある
有色ガラスも存在する。タンク炉がより経済的である理由は多岐にわたり、個々の製品の詳細な要求によっても
左右されるが、そのもっとも重要な要因をまとめれば、次のようになるだろう。――
(1) タンク炉では、炎の熱をより効率的に利用できる。すなわち、タンクではガラス浴が炉の全床面を覆っている
ため、ガラスが炎に全面的に曝されるが、ポット炉では、炉内に空いた未使用空間が多く存在する。
(2) タンク炉では連続運転が可能であり、一端から原料を投入しながら、他端から溶融ガラスを取り出して加工
することができる。したがって、炉に火が入っているあいだ、休止期間がなく、炉各部は常にほぼ一定の温度に
保たれる。同じ規模の設備で比較すると、タンク炉は、燃料消費量が相対的に少ない一方、はるかに大きな
生産量をあげることができる。
(3) タンク炉では、コストと手間のかかるポットやるつぼを必要としない。これらは、製造が面倒なだけでなく、
早期に破損する危険があり、定期的な交換が必要で、そのたびに炉の停止による大きな時間的損失を招く。
(4) 最後に、タンク炉の溶融ガラスは、常にほぼ一定のレベルに保たれ、吹き竿やひしゃくでの取り出しに常に
都合のよい状態にある。
一方ポット炉では、ガラスの組成をより正確に調整できる上、溶融ガラス自体を、炉内ガスの作用や落下物に
よる汚染から、より効果的に保護できる。また、ポットでは、タンクの開放浴槽では充分な時間接触させておく
ことのできない原料同士を、実際に融着させることも可能である。
第 V 章
溶融の工程
すでに述べたように、ガラス製造に用いる原料は、適度に細かく粉砕された状態であることが求められる。必要とされる細かさの程度は、成分の性質によって大きく異なり、おおまかな原則として、より耐火性が高く化学的に安定な材料ほど細かく粉砕する必要がある。一方、ソーダ灰やソルトケーキのように、容易に溶融・反応する物質は、それほど微細に挽く必要はない。
原料が適切な粒度で用意されていると仮定すると、溶融工程の第一段階は、これらを所定の割合で混合することになる。この混合は、完全に手作業で行う場合、手作業と機械の併用で行う場合、完全に自動的に行う場合がある。手作業による混合作業は、比較的少量の原料に対してのみ適用可能であり、不十分な混合を避けるには非常に注意深い監督が必要となる。多くの場合、実際の「はかり取り」は手で行われ、混合は機械によって行われる。この方法では、各原料を一輪車(barrow)やスキップから量り取りし、大きなホッパーに投入する。ひとたび一回分のバッチが揃うと、それは混合機の混合室へ送られる。混合機は、鋼製のかくはん腕が回転して内容物をかき混ぜる円筒室に過ぎないこともあるが、より新しい装置では、軸を傾けて設置した回転ドラムやシリンダーの形をとり、その内部には適当な棚やバッフルが設けられている。この中で原料はよく振り混ぜられ、十分に混合される。手作業による混合を採用する場合には、各バッチの原料を大きなビンに投げ入れ、スコップで何度もひっくり返して混ぜ合わせ、最終的には適当な目の金網ふるいで全量をふるい分ける。いずれの場合でも、得られた混合物は色調・手触りともに完全に均一でなければならず、異なるサンプルの分析結果は、ごくわずかな変動しか示さないはずである。このようにして混合された原料に、再溶融する「カレット(cullet)」すなわち破砕ガラスを加える。理想的には、これも均等に分散させるべきであるが、大規模な実際の現場でそこまで行うことはほとんどない。
次の段階は、この混合物を炉内に投入することである。タンク炉の場合、この作業は比較的簡単である。タンク炉では、炉温ができるだけ一定に保たれており、原料はほとんどいつでも投入できるからである。投入量は、溶融ガラス、すなわち「メタル」の液面ができるだけ一定に保たれるよう調整される。実際の投入は、炉の「溶融端(melting end)」と呼ばれる側に設けられた大きな開口部(ドア)から行われる。通常、この開口部は鎖で吊った大型の耐火れんがブロックでふさがれており、チェーンは滑車を介してカウンターウェイトに接続されている。装入を始める際には、このブロックを引き上げて開口部を開く。原料は、長柄のスコップを用いて人力で投入するか、あるいはまず長いスコップ状の容器に原料を満たし、それを機械的に炉内奥まで送り込んでから半回転させて内容物をあけ、すみやかに引き抜く方法で投入する。
この装入操作は、30 分ごとに繰り返す場合もあれば、4 時間ごとにより大量を投入する場合もあり、炉ごとの慣行によって異なる。
ポット炉の場合、装入作業はそれほど単純ではない。ここではまず、作業工程でほとんど空になったポットに、最初の原料を投入しなければならず、その時点で炉の温度もかなり低下している。新しい原料を投入する前に、炉温を十分に回復させておかなければならない。そうしないと、溶融の過程は異常な経過をたどり、きわめて不完全な結果を招くことになる。さらに、一度に投入する原料の量は、ポットの容量に慎重に見合うように調整しなければならない。溶融の初期段階では、多くのガラス原料混合物が大きな泡立ち(フォーム)の塊を形成し、もし装入量が多すぎると、この泡がポットからあふれてしまう。その結果、貴重な原料が失われるだけでなく、炉床や通路がガラスでふさがれてしまう。もっとも、ある程度のあふれ出しと、欠陥ポットからの漏れは避けられないため、この目的で各ポット炉には必ず、あふれたガラスが流れ込む「受け」室が設けられている。こうして、ガラスが蓄熱室や、もし入り込めば炉の運転に支障をきたすその他の部分に侵入するのを防ぐのである。ただし、これらの受け(“pockets”)にたまったガラスは、ときどき炉外から取り除かなければならず、これはガラス製造に付随する作業の中でもっとも骨の折れる仕事のひとつである。泡立ちが起こること、そして原料がガラスに比べて体積を大きく占めることから、一度に大量を装入できないため、新しい原料バッチでポットを満たす作業を何度も繰り返さなければならない。原料がまだ大量に残っている段階では多く装入できるが、次第にその量を減らしていく必要がある。この「埋め(filling)」を何回行うかは状況によって異なるが、ガラスの種類やポットの大きさに応じて、4 回から 8 回の埋めが一般的である。また、新しい原料バッチをどの段階で投入するかも、慎重な注意を要する問題である。用途によっては、前のバッチが完全に溶けきるまで待たなければならない場合もあれば、前のバッチの一部がまだポット内のガラス表面に浮かんでいる段階で、新しい原料を追加してもよい場合もある。
ここで、熱した炉内に投入された原料混合物の中で起こる化学反応を考えてみよう。これらの反応の正確な経過は、さまざまな条件の下で生じる中間生成物の性質を詳細に研究しなければ分からないような問題であり、その意味で十分には知られていない。この種の研究が行われれば、溶融過程全体について多くのことが明らかになるであろうが、それ自体がきわめて困難な課題であるため、まだ十分にはなされていない。したがってここでは、最終生成物と、いくつか知られている中間生成物から推測される範囲でしか、化学変化を説明できない。もっとも単純な場合として、砂、炭酸石灰、および炭酸ソーダを適切な割合で混合した原料を考えてみよう。このような場合、単に熱を加えるだけで二つの変化が起こることが分かっている。すなわち、炭酸ソーダは溶融し、炭酸石灰は炭酸ガスを放出して「焼かれ」、苛性石灰に変化する。したがって、溶融初期段階では、おそらく砂粒と、分解しつつある炭酸石灰粒子が、溶融した炭酸ソーダによってセメント状に結び付けられた状態の塊が形成される。この塊の内部は泡で満たされている。泡の一部は、元の原料粒子の間に存在していた空気が、塊の溶融によって閉じ込められたものであり、他の一部は、炭酸石灰の分解によって放出される炭酸ガスから成る。ところがこの温度では、シリカは強酸として振る舞い、たとえば室温における塩酸のように炭酸石灰を攻撃するだけでなく、単独の加熱ではほとんど分解されない炭酸ソーダに対しても作用する。これらの反応の正確な順序は、炉の温度と、原料混合物の混合の良否によって変わる。時間が十分に経てば、最終的な化学組成そのものは、どのような経過をたどっても同じになると考えられるが、技術的な成功の多くは、反応がどの順番で進むかに依存しているに違いない。というのも、それがガラス内に形成される泡の数や大きさ、および泡が抜け出さなければならない塊全体の流動性を支配するからである。しかし現時点の知識では、最終的には、存在する化合物から炭酸ガスが完全に追い出され(ただしガラス中に泡として閉じ込められたまま残ることはある)、石灰およびソーダのケイ酸塩が生成される――このケイ酸塩は、完成ガラス中では、相互に化学的に結び付いた状態と、相互に溶け合った状態との混合物として存在する――ということしか言えない。
いま述べた溶融過程の説明は、普通の石灰ガラスと同様、フリントガラス原料の溶融にも、多少の修正を加えればそのまま当てはまる。ただし、石灰ソーダガラスの炭酸石灰が、フリントガラスでは鉛丹に置き換えられ、鉛丹の分解で生じるガスが炭酸ガスではなく酸素である、という点のみ異なる。石灰ガラスとフリントガラスの双方において、上記の主成分以外にも、通常はいくつかの物質が少量ずつ添加される。これらの物質は、最終的な化学生成物に大きな影響を与えるわけではないが、溶融過程の中間段階には大きな影響を与えるため、化学変化の経過を好ましい方向に導くことで、所期の目的を果たしている。こうした目的に用いられる代表的な物質は、ヒ素とソーダまたはカリの硝酸塩である。ヒ素の作用機構は非常に不明瞭であり、ここで詳しく論じることはできないが、その主な要因は、ヒ素の揮発性と、条件に応じて酸素を吸収したり放出したりできる性質にある。硝酸塩の作用は、おもに熱分解によって放出される酸素に依存している。この酸素は、場合によっては他の原料成分に一時的に取り込まれ、ずっと後の段階になってから放出されることがある。そのようにして遅れて放出された酸素ガスは、ガラス中に残っている最後の微小な空気泡や炭酸ガス泡を追い出す助けとなる。また硝酸塩の酸化作用は、おもに有機物を分解し、原料中の鉄を完全に酸化する働きをする。これらはいずれもガラスの色調を改善する方向に働く作用であり、とりわけフリントガラスの場合には、鉛が還元されてしまう危険を避けるために、こうした酸化性添加物の存在が不可欠である。鉛が還元されると、ガラス全体が完全に黒化してしまうからである。
ソーダ石灰ガラスのアルカリを、部分的または全量、硫酸ナトリウム(ソルトケーキ)の形で導入する場合には、反応はさらに複雑になる。すでに述べたように、ソルトケーキの急速な分解を達成するには、熱とシリカの作用だけでは不十分であり、還元剤の介在が必要である。この目的のため、ソルトケーキを含むすべての原料混合物には、コークス、木炭、無煙炭などの形で一定量の炭素が加えられるが、炉内大気(炎のガス)の還元性もまた、そこで起こる反応に重要な役割を果たす。ここでも、起こる現象を完全に説明することはできず、不完全な記述にとどまらざるをえない。この過程の理論的骨子は、おそらく、亜硫酸ナトリウム(Na_{2}SO_{3})は、硫酸ナトリウム(Na_{2}SO_{4})自体よりも、熱いシリカによってはるかに分解されやすい、という事実にある。したがって、還元剤の本質的な働きは、硫酸塩から酸素の一部を奪ってこれを亜硫酸塩の状態に還元し、ケイ酸の攻撃を受けやすくすることにある、と考えられるだろう。しかし、このような反応を通常の化学方程式で表し、必要な炭素量を計算してみると、実際に必要とされる炭素量は、この理論から得られる値よりもはるかに少ないことが分かる。そのため、この非常に大きな還元作用を、炉ガスのみによるものと考えるか、あるいは実際に起こっている反応は、ここで述べたような単純なものではない、と考えるかのいずれかになる。実際には、両方の説明が一部ずつ当てはまっているのであろう。実務上、ある種の混合物と炉に対してどれだけの炭素を用いるべきかは、類似の型式の炉から得られた結果を参考にしつつも、最終的には実験によって見いだすほかない。最終的な生成物はやはりケイ酸塩の混合物であるが、この種のガラスには必ず、ある程度の未分解の硫酸塩が残存し、また硫黄酸化物ガスが大量に炉から排出される。例外的な場合には、ガラス中にナトリウムまたはカルシウムの硫化物、さらには懸濁した炭素が含まれることさえあるが、これらは異常な成分であり、ガラスを著しく着色してしまう。
このように、還元剤として炭素を含む混合物に対しては、硝酸塩のような酸化剤を添加することはできない。しかし、ヒ素や二酸化マンガンは、酸化剤としての不利を補って余りある有用な性質をもっているため、少量添加される。
ここまで、溶融そのものの過程を簡単に見てきたので、次にガラス溶融の第二段階に移る。管理の行き届いたガラス炉では、未分解の原料の最後の痕跡が消えた時点で、ガラスは全体として透明な塊となっているが、その内部にはガス泡が密に分散している。多くの用途において、最終的な加工に移る前に、このガラスをできるだけ気泡から解放しておく必要がある。この気泡除去、すなわち「清澄(fining)」の工程は、溶融ガラスをさらに強く、かつ長時間加熱することで行われる。これによりガラスはより流動性を増し、内部の気泡が上昇して表面に抜けやすくなる。これは、泡が大きいほど容易に起こる。ごく微小な泡は、実際には粘性塊の中を上昇しようとする傾向をほとんど示さない。したがってガラス職人は、原料配合を工夫して、できるだけ大きな泡が生じるようにするか、それが難しい場合には、溶融塊に大量の大きな泡を発生させる物質を添加する。その上昇過程で、これらの大きな泡が小さな泡を巻き込んで運び去ってくれるのである。添加物としては、ヒ素のような揮発性の無機物を用いることもあるが、より一般的には、水分を多く含む植物性物質を溶融ガラス中に導入する。もっとも普通の方法は、フォーク状の鉄棒の先にじゃがいもを刺し、それを溶融ガラス中に差し込むやり方である。熱によってじゃがいもの水分はすぐに蒸発し始め、同時にじゃがいも自体も分解するため、溶融ガラス全体に激しい沸騰現象が起こる。この「ボイルアップ(boiling up)」工程は、清澄を大いに助けると同時に、ポット内のガラス全体を非常に良くかき混ぜる働きもするが、一方でいくつかの欠点も伴う。たとえば、この操作に使う鉄棒から酸化鉄がガラスに入り込み、また、ポットの内壁に付着していた汚染物が、強いかき混ぜ作用によってはがれ落ちてガラス全体に混ざってしまう、などである。また、こうした処理はポットで溶かしたガラスにしか実施できないという事実も、重要な制約である。タンク炉の溶融ガラスの大部分は、このような方法ではまったく手の届かない位置にあるからである。したがって、タンク炉で溶かす配合物は、そのような外的援助なしに、自力で気泡を抜くことができなければならない。実際、タンク炉における溶融過程全体は、炉温が意図的に変化されることは決してないという点で、ポット炉の場合とはかなり異なった様相を呈する。その代わり、溶融中のガラスは炉内を移動し、各区域で行われる溶融過程の段階に応じて温度が調整された領域を順次通過するようにされている。全体として言えば、ポット炉の運転条件は、溶かそうとする配合物に合わせてかなり自由に変えることができるのに対し、タンク炉では炉自体の「ラン(run)」は容易に変えがたく、むしろ配合物のほうを炉の要求に合わせて厳密に調整しなければならない、という事実は疑いようがない。
清澄工程の完了は、通常、ポットやタンクからガラスを採取し、その中に残る気泡を検査することで判断される。試料の採取方法はいろいろあるが、もっとも一般的なのは、平らな鉄棒を溶融ガラスのごく表面下に差し入れ、そのまま垂直に引き上げる方法である。そうすると、棒を浸した瞬間にその位置にあったガラスが、平らな面に付着して持ち上げられる。この試験片(“proof”)を注意深く観察し、気泡がまったく認められなければ、一般にガラスは「清澄した(fine)」と見なされる。しかし、こうしたごく小さな試料に気泡が見当たらないからといって、大量のガラス全体が完全に気泡を含まないと言い切ることはできない。その点については、溶融作業者の経験によって、「proof」がどの程度信用できるかを判断することになる。ガラスが清澄すると、しばしば溶融面が異物の斑点で汚染されていることがある。これを取り除くために、作業に取りかかる前には必ずガラス表面を「すくい取る(skim)」操作を行う。これは、適当な形状の鉄棒に小さな溶融ガラスの塊をまず「巻き取って(gather)」から、それを使って表面の薄いガラス層を引きはがすことで行われる。最後に残されたのは、溶融および清澄の際に保たれていた高い温度から、実際の加工が行われる、より低い作業温度まで、ガラスの温度を下げる工程である。ポット炉では、炉全体の温度を下げることでこれを達成し、タンク炉では、清澄したガラスをあらかじめ作業温度に保たれているタンクの作業室へと流し込む。
第 VI 章
ガラス加工に用いられる諸工程
前章では、ガラスの溶融および清澄(ファイニング)の過程を概略的に追い、その結果得られた溶融物が最終形状へと加工される準備が整うところまでを見てきた。その段階までは、個々の工程において用いられる炉やポット、道具類、あるいは各段階で加熱される温度こそかなり異なるものの、ガラスの種類によって工程は非常によく似ている。しかし、加工工程そのものは、製品の種類ごとにまったく異なっている。プレートガラス板を製造する工程が、ワイングラスを製造する工程とほとんど共通点を持ちえないことは、言うまでもない。一方で、加熱したガラスの加工方法そのものは、実際に生み出される製品の種類ほど多くはないため、産業のさまざまな部門において、きわめてよく似た装置や操作が繰り返し現れることになる。そこで本章では、ガラス加工の主な方法そのものをまとめて説明し、それぞれの方法が特定の製品にどのように応用されるかという詳細については、各製品に関する章で述べることにする。
すべてのガラス加工の第一段階は、炉から適量の溶融ガラスを取り出すことである。実際には、利用できる方法はたった三つ――すなわち、ひしゃく取り(ladling)、注ぎ出し(pouring)、および巻き取り(gathering)――しかない。物性がガラスにいくらか似た身近な物質として、たとえば濃い糖蜜を瓶や壜に閉じ込めたものを想像してみよう。これを瓶から取り出す方法としては、三つの明らかな方法がある。すなわち、スプーンで汲み出すこともできるし、瓶全体を傾けて注ぎ出すこともできるし、あるいはスプーンやフォークを濃い液体の中に差し入れて、ゆっくりと引き上げながら回転させることで、スプーンやフォークに丸く付着した「巻き取り(gathering)」状の糖蜜塊を引き出すこともできる。溶融ガラスの場合、操作としてもっとも簡単なのは、圧倒的にひしゃく取りであるが、この方法には非常に明確な制限および欠点が存在する。その主な原因は、ひしゃくを溶融ガラスの中に差し入れると、少なくとも多数の気泡によってガラス全体を汚染してしまう、という事実にある。ひしゃくの金属面には、かなりの量の空気が密着して付着しており、これが熱いガラスと接触している間に部分的に剥がれ落ちるため、ひしゃくの中身だけでなく、炉内に残ったガラスまでもが気泡によって汚染されてしまう。このような泡は、もし熱したひしゃくを用いればある程度防げるかもしれないが、その場合にはガラスが金属表面へ強く付着し、ひしゃくを使うたびに入念な清掃が必要になってしまう。したがって実際には、ひしゃく取りは、ある程度の気泡(“air‑bells”)の存在が害にならない種類のガラスの製造にのみ用いられ、ひしゃくは使用のたびに水へ浸して冷却される。しかし、この冷えたひしゃくを使うことにはさらに別の欠点がある。すなわち、ひしゃくで汲み上げたガラスの一部が、冷たい金属との接触によってかなり冷やされてしまい、その部分は加工工程を満足に受けられないほど硬くなってしまう、という点である。この「冷えた」ガラスは、したがって各ひしゃくごとに廃棄せざるをえず、これは単にガラスの損失を意味するだけでなく、その不良片と良品とを分別する手間も必要とする。
圧延(ローリング)の一般的な工程自体は、ここで詳細に述べる必要はほとんどない。原理的には二つのまったく異なる方法が用いられる。ひとつは、ガラスを平板の上に流し出し、その上を可動ローラーが移動して転がし延ばす方法であり、もうひとつは、ガラスを二本の回転ローラーの間を通し、その後にシート状になったガラスを可動テーブルまたはスラブの上で受け取る方法である。前者は、通常の圧延プレートガラスの製造に用いられる。テーブルおよびローラー双方の表面が滑らかであれば、ガラスも比較的滑らかな表面をもつが、それでも表面は決して平坦ではなく、不規則性からもほど遠い。実際、ローラーやテーブルと接触するガラスが、鉄の面に押しつけられた際に「座屈(buckling)」を起こすことから、こうした不規則性は完全には防ぎ得ないことが分かっている。圧延の温度では、ガラスは表面張力の作用によって自ら完全に滑らかな表面を回復できるほど柔らかくはないため、ローラーおよびテーブルの痕跡をそのまま保持してしまうのである。しかも、ローラーを完全に滑らかに仕上げることもできない。というのも、そのようなローラーはガラス表面の上を滑ってしまい、ガラスをきちんと延ばすことができないからである。したがって、今日一般に用いられているような材料でテーブルやローラーを作るかぎり、直接圧延によって真に平滑な表面をもつガラスを得ようとするあらゆる試みは、ことごとく失敗してきており、今後も失敗に終わるものと思われる。もっとも、固定テーブル上での圧延工程自体は、プレートガラスの製造に用いられている。しかしこの場合も、圧延された直後の板は、通常の「圧延プレート(rolled plate)」と同様に粗い不整な表面をもっており、この表面は、後の機械的な研磨および光沢出し工程によって削り取られ、真に平滑な研磨面に置き換えられる。第二の圧延法、すなわち「静止」した二本以上のローラーと可動テーブルを用いる方法は、特殊な表面模様やパターンをもつ圧延プレートガラスの製造に用いられる。「フィギュアード・ロールド・プレート(figured rolled plate)」として知られる、深いレリーフ模様をもつ圧延ガラスは、この方法によって作られる。この方式には、はるかに複雑な機構が必要であり、その一部は現在も特許権で保護されている。
このように、ひしゃく取りは本質的に比較的粗悪なガラスの製造に限られるため、より良質なガラスの製造には、巻き取り(gathering)または注ぎ出しのいずれかに頼らなければならない。巻き取り法は、一度に扱えるガラス量という点で制約があるものの、一本のパイプで驚くほど大量のガラスを巻き取ることができる。それでも現代の研磨プレートガラス製造に必要とされるような巨大なガラス塊は、この方法ではとても扱えない。そのため、この場合には注ぎ出し法が採用される。注ぎ出しでは、溶融が行われたポットそのもの、またはそのために特別に設計され、溶融ガラスがそこへ移し替えられた別のポットを、強力な機械装置によって炉から丸ごと引き出す。こうして吊り出されたポットは、オーバーヘッドクレーンによって圧延台のある場所まで運ばれ、そこでポットを傾けて溶融ガラスを流し出し、圧延テーブル上に溜まったガラス溜りを形成させる。最後に巨大なローラーを通過させることで、ちょうどめん棒で生地をのばすように、この溜りを板状に圧延する。この方法は、当然ながらポットやるつぼの大きさに適切な範囲があるうえ、温度変化が非常に激しいためポットにとって非常に過酷な方法でもある。タンク炉の場合には、適切な大きさの堰(sill あるいは weir)の上からガラスを流れ出させ、そこから直接圧延や引き上げを行って板を形成するための、多くの装置が特許化されてきたが、著者の知るかぎり、これらの装置のいずれも実用化には至っていない。その理由として、おそらく、流れ出すガラスに対して滑らかな面を提供できる材料を見つけるのが難しいことが挙げられる。たとえば耐火粘土を用いれば、はく離した微片によってガラスが汚染されやすくなり、一方、金属を冷やして用いると、ガラスが局所的に冷やされてしまうのである。したがって、炉から直接シート状ガラスを引き出す各種プロセスに、今後きわめて大幅な改良が加えられないかぎり、窓ガラス板のような大型製品の製造においてさえ、手作業による巻き取りが重要な位置を占め続けるだろう。
本質的には、巻き取り工程とは、加熱した鉄の棒または管をガラス中に差し入れ、その先端に少量のガラスを付着させる操作である。棒とガラスは一緒に炉から引き出され、先端に付着した小さなガラスの球は、自重を支えられる程度に十分硬くなるまで冷やされる。その後、棒と付着ガラスを再び炉に差し入れると、棒にすでにあるガラス球の表面に新たなガラス層が付着する。再び引き上げて冷まし、また炉に戻す――こうして必要量のガラスが棒または管に付着するまで、この一連の操作を繰り返す。とくに 30~40 ポンドものガラスを巻き取らなければならないような場合、これらの操作には高度な技能と注意が求められる。というのも、巻き取りをガラス中に差し入れるたびに気泡が入り込み、ひとたび気泡が混入すると、その塊全体が台無しになるだけでなく、るつぼ内のガラスまでも汚染するおそれがあるからである。また、その後の工程では、棒またはパイプに付着した高温ガラス塊が自重で流れ落ちたり、適切な回転操作を怠ると、完全に脱落してしまう危険もある。さらに、作業者が負担する体力的労働と熱への曝露は、この作業のコストを押し上げる要因となる。そこで、各種の機械的補助装置が考案され、実際に一部では使用されているが、それらは主として、巻き取りの後期段階におけるガラス塊の重量を作業者から軽減するためのものである。
このように、ひしゃく取りがほとんど常に圧延の前工程であるのと同様に、巻き取りは通常なんらかの吹き作業の前工程であり、またしばしば、あるいは場合によっては吹き作業を機械的なプレス加工が完全に置き換えることもある。吹き作業を行う場合には、巻き取りは必ずガラス職人用の吹き竿(ブロウパイプ)上で行われる。このパイプは 4~6 フィートの鉄製の中空管で、一端には木製の柄(ハンドル)が付き、他端には吹き込み用の口金が設けられている。パイプの下端(“butt”)の形状は、吹き上げる製品の種類や大きさによって異なる。小物を作る場合には、パイプは細く軽い必要があるが、大型のシートガラスを作る場合には、パイプの「尻(butt)」は直径 2~3 インチの円錐形突起に延長される。また、パイプの内径も、用途によって両端で異なる。すべての吹き作業の最初の段階は、パイプに息を吹き込み、圧力で付着ガラス塊を膨らませて中空球を形成することである。通常は、人の息の圧力だけで、このホットなガラス塊が徐々に膨張する。こうして得られた原初的な中空球から、さまざまな形状の吹き製品が、一連の操作によって作り出される。この一連の操作は、製造部門ごとに大きく異なるが、一般的には、ガラス塊を、手道具または特別な型やブロックで押し当てたり転がしたりすることで、段階的に形を変えていく――このとき、パイプ内部から息を吹き込む場合もあれば、吹き込まずに行う場合もある――というやり方がとられる。こうした木型や金型・ブロック類への依存度は、高級な手吹き花瓶や飲みグラスの製作から型吹きボトルの製造まで、ほとんど連続的なグラデーションをなしている。前者では、仕上がり製品の形と直接的な類似をもたない手道具だけがほぼ専用されるのに対し、後者では、細長く中空になったガラス塊を型の内部へ入れ、内圧――空気圧や蒸気圧――を利用してガラスを型内面に押しつけ、その形状をそのまま最終製品の外形とする。
吹き職人の技術はさらに、高温で粘性の高いガラス特有の物理的性質を最大限に利用している。すなわち、ガラスは重力や遠心力の作用の下で流動し、人の息の圧力と相まって、頭上に掲げられたり、回転させられたり、振り回されたりすることで、さまざまな形状に成形される。こうした多くの用途では、作業者の巧みな手さばきだけで十分であるが、より重労働となる工程を助けるため、各種の機械的補助装置が用いられ、さらに、ボトルのように単純な形の製品が大量に必要とされる分野では、全工程が自動機械によって行われるようになっている。吹き職人が利用できる機械的補助のうち、もっとも一般的なものとしては、先に述べた手道具、ブロック、および各種型(モールド)がある。これらに次いで重要なのは、大型あるいは重量物の吹き製品に用いられる圧縮空気である。人の息で得られる圧力には限界があり、供給できる空気量もさほど多くないうえ、胸郭と肺を酷使するため、作業者にとって大きな負担となる。こうした理由から、多くの工場では吹き作業台に圧縮空気が供給されており、必要に応じて吹き竿をフレキシブルな接続具を介して空気供給源に接続できるようになっている。主な困難は、用途ごとに最適な空気圧をどのように正確に制御するか、という点にあるが、この問題は、各作業者の手元に設けられた精巧なバルブ機構によって解決されている。吹き職人は、このバルブを用いて、自分の作業に最適な圧力に微調整することができる。この種の設備を使いこなすには、作業者側にも多少の慣れが必要だが、一度操作に習熟してしまえば、その結果は口吹きによって得られるものよりも、はるかに良好で、かつ安定したものとなる。上述のような圧縮空気の供給方法以外にも、吹き職人が中空製品の内部圧力を生じさせるのを助けるさまざまな工夫が行われている。そのうちもっとも単純なものは、加熱によって中空体内部に閉じ込められた空気の膨張力を利用する方法である。たとえばシートガラス用シリンダーを吹上げる場合、吹き竿の口元を親指でふさぎ、シリンダーの閉じた端を「吹き穴」と呼ばれる加熱口に近づけると、その部分のガラスを軟化させる熱は内部の空気にも作用し、急速な膨張によって軟化したシリンダー端を破って開口させる。この方法は、実際にシリンダーの両端を開く手段としてよく使われている。もちろん、この目的には空気以外の膨張性流体を用いることも可能であり、実際いくつかの吹き作業では古くから、中空体内部に少量の水またはアルコールを注入し、それが熱ガラスによって急速に蒸発する際の蒸気の膨張力を利用して、内部圧力を生じさせている。この、熱ガラス自身の熱によって生じる蒸気膨張力の利用という考え方は、ドレスデンの P. Sievert によって大きく発展させられており、その方法については第 VII 章で述べる。
いかなる機械的補助を用いるにせよ、ガラス吹きはいずれも、かなり高度な技能を要する一連の操作で構成されており、また、狭い口をもつ瓶やフラスコの製造の場合をのぞけば、材料利用の面では本質的にかなり「ぜいたく」な加工法でもある。このように言う理由は、吹き作業では、完全に閉じた、またはほぼ閉じた中空体しか直接的には作り出せない、という事実にある。たとえば、吹き製ワイングラスやタンブラーは、そのままでは、飲み口を覆う「フード(hood)」またはドームで閉じられた形で成形され、このフードやドームは、その後、強い局所加熱や研削などの補助工程によって切り落とされ、切断面はさらに滑らかに仕上げられる。小物のグラス程度であれば、こうした余分部分に起因する材料損失もそれほど大きくはないが、浅く広いボウルや皿のような大型器物を吹き上げて製造しようとすると、その上部を覆うドーム部分の損失はきわめて大きなものとなる。このような無駄は、プレス加工によってほぼ完全に避けることができる。すでに瓶の製造に際して型を用いる方法について述べたが、こうした場合に最終製品が中空容器であるのは、ガラスを型に密着させる際、内部の空気や蒸気圧を利用することができるからである。これに対してここで取り上げているプレス法では、熱ガラスを内側から押す「プランジャー」を用い、高い力でそれを押し下ろして型に押し付ける。この方法を用いれば、完全に閉じた器をまず作ることなく、平板や浅い器物を直接成形できるうえ、適切な形状の型を用いれば、非常に複雑で精巧な形状も容易に作り出せることは明らかである。もちろん、プレス製品には、吹き製品に特有の、火炎によって自然に形成される滑らかな光沢面(いわゆる「火炎研磨面」)が見られないという事実はあるし、この方法で容易に適用できる華美な表面装飾の存在は、意匠上の洗練をむしろ損なう方向に働いてきたかもしれない。それでも、多数の安価で実用的な家庭用ガラス製品を、一般大衆の手に届くものとしてきたのは、このプレス工業の発展によるところが大きい。
通常のプレスガラスは、溶融状態から直接成形される。溶融ガラスは、巻き取りによって、あるいはひしゃくを用いてプレス機に供給される。ただし、特殊な用途では、一度いったん固化させたガラスを再加熱し、機械的圧力を加えて、プレスまたは型押しによって最終形状に仕上げる場合もある。これは主として最高級の光学ガラスに対して行われる。こうした場合、ガラスはまず、溶融したままるつぼの中で冷却され、その後、適当な大きさの塊に砕かれる。その際、品質の劣る部分は選別によって取り除かれ、品質の良い部分だけを特別な焼成炉で再加熱し、手道具または強力なプレス機を用いて所定形状の型に押し込むことで、目的の形状を得る。小型レンズについては、求められる品質がそれほど厳しくない場合もあり、そのようなレンズは、るつぼ内の溶融ガラスから小さな巻き取りをとり、直接プレス成形されることもある。
第 VII 章
ビン用ガラス(ボトルガラス)
ビンは、ある意味ではガラス製品の中でもっとも安価で粗野な部類に属するが、その用途は数え切れないほど多く、生産量も膨大であるため、その製造はガラス産業におけるきわめて重要な一部門を成している。
通常のビンを製造する際には、原料の選択にあたって、必然的に第一に考慮されるのは「安さ」である。天然鉱物や他産業からの副産物、そしてもっとも粗悪な薬品類が、適切な割合に配合することで、ビン用途に求められる、やや粗い要求水準を満たすガラスが得られるかぎり、広く利用される。これらの要求のうち、もっとも重要なものは、ビンが、発酵液や炭酸飲料の保存に伴って内部から受ける圧力、ならびに日常使用で生じる衝撃に十分耐えられる強さをもつこと、そしてガラスそのものが、内部に収められる、ある程度の「腐食性」をもつ液体の作用に耐えうる化学的耐久性をもつことである。また、ビン製造者の立場からすると、ガラスが低温でよく溶け、加工しやすく、かつ徐冷(アニーリング)しやすいことも望ましい。ガラスの他の部門では、ガラスの融点を下げるためにアルカリ含有量を増やすことがしばしば行われるが、ビン作りではこれは認められない。というのも、高価なアルカリを多量に使うことはコスト面で不利であり、またアルカリ含有量が増加すると、ガラスは化学的攻撃を受けやすくなってしまうからである。一方、多くの種類のビンにおいては、ガラスの「色」はほとんど、あるいはまったく問題にならない。このため、酸化鉄を比較的多量に含ませることが許容される。酸化鉄は融剤として働き、アルカリ含有量の少ないガラスでも、十分に溶けやすく加工しやすい組成にする助けとなる。ボトルガラスに含まれる少量のアルカリは、多くの場合、長石質鉱物に由来するが、これらの鉱物には通常、かなりの量の鉄も含まれている。また、これらを用いることで、アルミナも相当量ガラスに導入される。特定の種類のビン、なかでも高級ワイン用のビンでは、特定の色調が求められることもある――よく知られた「ホックボトル(Hock bottle)」の色がその一例である。ガラス中の鉄は、緑または緑がかった黄色を呈し、その量が非常に多くなると黒色不透明にまで至る。こうした緑色の比較的淡い色調は、ガラスにマンガンを加えることで「中和」でき、その結果、淡いアンバー色から紫まで、さまざまな色合いが得られる。また、ニッケル酸化物が着色剤として用いられることもある。
通常ビンの製造には、現在では、連続式タンク炉が完全に旧来のポット炉に取って代わっている。この種の製品の性格は、とりわけタンク炉による連続的な生産方式に適している。近代的なビンガラス用タンクは、一般に片端が半円形の長方形の槽である。炎はしばしば「ホースシュー(馬蹄形)」型をなし、タンクの平らな側(装入側)からガスが入り、同じ側から燃焼生成物が出ていく。原料はタンクの四角い端から投入され、ガラスは連続的に炉内を流れて、より低温の半円形端へと向かう。そこには作業孔(ワーキングホール)が設けられている。この位置には耐火粘土製のリングがガラス面に浮かべられており、ギャザー(巻き取り)作業者は、このリング内からガラスを巻き取る。リングは、溶融ガラスとともに流れてきた比較的粗大な不純物を、この部分にとどめる役割を果たす。こうした炉の生産能力は、ビンが手吹きで作られる場合ですら、かなり大きい。たとえば、作業孔が 10 個あり、通常約 85 トンの溶融ガラスを含む炉では、年間約 400 万本のビンを生産することができる。さらに大容量の炉も実際に稼働している。
ビン製造の方法は、現在まさに転換期にあるといってよいだろう。19 世紀半ばまで、実用されていた工程は中世の技法とたいして変わらなかった。その後の近代的発展の第一歩は、古来の手作業工程そのものは温存しつつ、それを補助する道具や器具の改良という形で始まった。さらに最近では、ビンをまったく別の、純機械的な工程で製造し、熟練作業という不確定要素そのものを排除しようとする、多くの発明が行われている。こうした発明の初期のいくつかは、非常に巧妙ではあるものの、華々しい失敗に終わったことを認めなければならないが、他の多くの製造工程におけると同様、ここでも最終的には機械製品が手作業製品に取って代わることは、ほぼ間違いないと思われる。実際すでにアメリカやヨーロッパでは、機械による製造工程が多数の工場で実用化されており、近年のいくつかの博覧会では、品質のあらゆる点で、最良の手作り品よりも優れているとも言える機械製ビンが展示されている。
手作業によるビン製造および多くの機械製造法に共通する第一段階は、必要量のガラスを巻き取ることである。ビン吹き職人の吹き竿は 5~6 フィートの長さをもち、先端には「ノーズ」と呼ばれるわずかに膨らんだ部分が備えられており、ここにガラスが巻き取られる。通常のビンの製造には 3 回の巻き取りで十分であるが、特別に大きなビン、とくにカービョイ(大型薬品壜)の場合には、より重い巻き取りが必要であり、その際にはギャザー(巻き取り)担当者は 4 回、5 回、さらには 6 回も炉へ足を運ばなければならない。吹き竿に必要量のガラスが集まったら、その塊をいわゆる「マーヴァー(marver)」と呼ばれる平らな金属板、あるいは木製(まれに金属製)の半球状ブロック上で転がし、整形する。こうして、ガラス塊はよく丸い、対称な洋梨形の塊に成形される。次に吹き手(ブロワー)は息を吹き込みながら竿を振り、ガラス塊を徐々に膨らませていく。このときの動作によって、ガラスの大部分が下方へ引き伸ばされ、パイプに近い部分には、ビンの首部の原型となる、より薄く冷えた部分が残る。最も古い形の工程では、次の段階として、出来上がりのビンの外径に相当する直径をもつ円筒形の耐火粘土製型を用いる。洋梨形のガラス塊は、この工程のために再び溶融炉へ入れて加熱され、その後、耐火粘土製型の中に差し込まれる。力強い吹き込みと素早い竿の回転によって、ガラス塊は型の円筒形状へと押し広げられる。この段階では、ビンの首部を形成するガラスはすでに十分冷え硬くなっており、これ以上変形しない。続いて行われるのが、ワインやビールのビン底部に見られる「凹み(キックアップ)」の成形である。これは、型から出したばかりの、まだ軟らかいビン底のガラスを、別の作業者が「ポンティル(pontil)」と呼ばれる鉄棒を用いて押し上げることで作られる。ポンティルには、あらかじめ小さなガラス塊が巻き取られており、このガラスはビン底に付着するため、ビンは一時的にポンティルおよび吹き竿の双方に支えられた状態になる。続いて吹き手は、「ウェッティング・オフ(wetting off)」と呼ばれる局所的な冷却操作を行い、ビンを吹き竿から切り離す。これは、ビンの首部が終わる位置を狙って行われる。こうして未完成のビンはポンティルにのみ支えられた状態となる。首部を再び炉上で加熱して軟らかくし、特別な形のトングを用いて、所望の形状に整える。最後に、「リム」と呼ばれる首の厚みを作るため、首の先端にガラスの糸を一巻き巻き付ける。こうして完成したビンは、まだポンティルに付着した状態で徐冷窯へ運ばれ、所定位置に置かれた後、ポンティルの根元を鋭く一撃することで、ポンティルに付いていたガラス塊をビン底から切り離し、完全に分離する。
上記の形で説明したこの工程は、すでに何十年も前から実用的には廃れており、その後、工程の各段階を容易にする改良器具が徐々に導入されてきた。もっとも重要な改良点は、古い時代に用いられていた耐火粘土製の型を金属製型に置き換えたことである。これら金属型は、ペダル操作によって自在に開閉できるようになっており、底の凹みが別工程で付けられる場合を除き、ビン全体を最終形状まで成形できるよう設計されている(底の凹みも、場合によっては型底部に設けられた凸状部によって同時に成形される)。首部のリムを成形する工程でも、重要な機械的補助がほぼ普遍的に用いられている。これらは、ローラーを備えたトングであり、全体が軸回りに回転できる構造となっていて、その軸端にはビンの首の内部に差し込む円錐形のスパイクが付いている。トングを握ってローラーを首の外側に押し当てた状態で全体を回転させると、ローラーが首部をなぞりつつ回転するため、首部のリムが短時間で正確に形成される。
以上のような改良によって、古来のビン吹き工程は大きく改善されたが、それでも依然として、この方法には大きな欠点が残されている。それらは工程の経済性および作業者の健康に直接かかわる問題であり、したがって、多くの発明家が「純機械的」なビン製造を追求してきたのも不思議ではない。ビン製造機械に関しては、じつに多数の特許が出願されている。その中で最初に一定の成功を収めたのはアシュレー(Ashley)の考案によるものであったが、当時は大きな期待が寄せられたにもかかわらず、その方式は広く普及するには至らなかった。今日では、実際に機械によるビン製造を行っている工場が相当数存在し、その中でもっとも成功しているものの一つが、コニャックのブーシェ(Boucher)による機械である。1900 年のパリ博覧会に出品されたこの機械の製品は、最良の手作業製ビンと比べても遜色がないどころか、むしろ優れているとさえ言えるものであった。ブーシェの機械は、完全自動機械というわけではないものの、各種レバーを適切な順序・タイミングで操作する作業者一名を除いて、高度な技能をもつ労働者を必要としないという特徴をもつ。
特許明細書その他の公表資料に示されたこの機械の構造はやや複雑であり、機種によって細部は異なるが、基本原理および作動方式はすべての型式に共通しているので、ここではその概略を簡単に述べるにとどめる。
ブーシェの方法では、最初に炉からガラスを巻き取る点は手作業と同じだが、吹き竿を用いないため、巻き取りは軽い鉄棒の先端で行う。これにより、重い吹き竿を運ぶ手間が省け、ギャザー担当者の労力が大幅に軽減される。こうして得られた所要量のガラスは、まず機械の最初の型、すなわち「計量(measuring)」モールドに落とし込まれ、作業者が手で「糸(thread)」を切り取ることで、適切な量だけが型に残る。つづいて、この計量型からガラスは「首」モールドへと送られる。ガラスは自重でこのモールドに流れ込み、さらに上方から圧縮空気を作用させることで、モールドの形に押し込まれる。この段階で、まだ内部は充実した「固まり」であるが、外形はすでにビンの首部の形をしている。次に、首内部の空洞を形成する工程へ移る。これは、首モールド内を満たしている「固体状」のガラス塊の中に、プランジャーを押し込むことで行われる。プランジャーは首の中心部分を「打ち抜き」、首内部の通り道を形成する。プランジャーが引き抜かれるとすぐに、形成された空洞内に圧縮空気が送り込まれ、同時にガラス塊全体が反転されて、ボトルの「肩」に相当する部分が下方へ垂れ下がるようにしながら、内部からの圧力で膨らませていく。この膨張はある程度のところで制限され、ついで第三のモールドが近づいてきて、これに接触することでガラス塊に目的の輪郭を与える。この際、ボトル肩部の外側には、一列に並んだ圧縮空気ノズルからの噴流が当てられ、所定の延伸に達したガラスが、すみやかに十分な硬さに冷やされるようになっている。この段階で、ガラス塊は手吹き瓶製造でいうところの「パリソン(parison)」に非常によく似た形状となり、かなり硬さも増している。最後に、このパリソンを仕上げモールドに挿入し、強い空気圧で吹き広げてモールド内面に完全に密着させることで、胴部および底部の最終形状を得る。なお、底の凹み(キックアップ)は、別個の機械またはプレスで成形される場合もある。これらの操作の間、首部は一貫して首モールドにしっかり固定されており、前述した各種の動作はすべて、首モールド全体を動かすためのレバー機構を介して行われる。当然ながら、モールドの動きに合わせて、首に固定されたガラス塊もともに移動する。仕上げモールドからビンを解放する最後のレバー操作では、首モールドも同時に開き、こうしてビンは完全に完成した状態で解き放たれる。
この機械では、各工程が手作業のビン吹き工程をできるだけ忠実になぞるように構成されていることが分かるだろう。ただし、実際の手作業工程の中核をなす、熟練吹き職人による重労働かつ難易度の高い操作は、すべて機械による規則的な動作に置き換えられている。一台の機械は、1 本 1¾ ポンドのビンを 1 時間に 120 本生産できる能力をもつが、これは、一部のモールドを二重構造にし、それらを交互に使用するような配置を採用してはじめて達成される。機械には、操作レバーを扱う「モルダー」一名と、完成したビンを徐冷窯へ運ぶ少年一名が付くほか、もちろんギャザー担当の作業者も必要である。この種の機械を備えたビン工場の光景は、手吹き工場のそれと著しく対照的である。手吹き工場では、各作業孔の周りに多くの男たちがひしめき、過酷な温度と悪い空気環境のもとで重労働に従事している。一方、ブーシェ機械による工場は、はるかに整然とした環境となる。最後に強調しておくべき点として、ブーシェ機械の用途は、もっとも粗末な安価ビンの大量製造に限られているわけではなく、むしろ高い内圧に耐えなければならないシャンパンボトルその他のビンの製造に、特に適しているという事実がある。この機械製ボトルは、圧力試験の結果が非常に良好であることが示されている。また、この機械は白色ガラス製のモールド・ガラス器物の製造にも使用されており、実際には、型吹きによって作りうるあらゆる種類のガラス容器の製造に応用することができる。
ビンの徐冷(アニーリング)は、かつてはきわめて単純な構造の大きな窯または炉室で行われていた。そこでは、あらかじめ所定温度まで暖めておいた窯の内部に、ビンを製造順に積み上げていき、窯が一杯になったところで、簡易な方法で入り口をふさぎ、そのまま自然に冷却させることで、窯内に積まれたビンを徐冷していた。しかし、この分野でも連続式徐冷炉が旧来の方式に取って代わっており、現在ではビン製造にはほぼ例外なく連続式徐冷炉が用いられている。これらの炉は長いトンネル状構造をしており、一端は高温、他端に向かうにつれて徐々に温度が下がるようになっている。ビンは、台車(トラック)の上に積み上げられ、このトンネルを高温側から低温側へとゆっくり通過する。低温端に到達したところで台車は荷降ろしされ、その後、炉外の経路を通って再び高温端へ戻される。ただし、ビンを積み上げるのは、台車がトンネルの高温端へ入り、その地点の温度に十分暖まってからでなければならない。やや異なる形式の炉では、ビンは鉄板で作られたコンベヤーベルトに載せられ、トンネルを通過するが、その原理は他の種類のガラスに用いられる場合も含め、いずれも似通っている。
以上に述べたビン製造の説明では、主としてワイン、ビール、蒸留酒などの貯蔵に用いられるごく一般的なビンの製造方法に焦点を当ててきた。つぎに、これと密接に関連した他の部門についても少し触れることにしよう。
ガラス工業の重要な一部門として、大型容器の製造がある。一般ビンともっとも関係が深いのは「カービョイ(carboy)」と呼ばれる容器で、これは化学薬品、特に酸類のバルク貯蔵および輸送に用いられる。かつては、これらも普通のビンとほぼ同様の方法で手吹きで作られていたが、ギャザーおよび吹き手が扱うガラス塊の重量はきわめて大きく、また吹き手の肺活量だけでは必要な膨張量を得ることができない。以前、吹き手が利用できた唯一の補助手段は、工程の早い段階で、中空ガラス体の内部に少量の水またはアルコールを注入することであった。この液体はガラスの熱で瞬時に蒸発し、吹き手が吹き竿の口元を親指でふさいでおけば、生じた蒸気の膨張力が、ガラスを所望の大きさまで吹き広げるのに役立つ。より近年になってからは、大型容器の製造に対し、まずガラス塊と吹き竿の重量負担を軽減するための機械的装置――吹き竿とガラス塊全体を支持しつつ、吹き手の操作自由度を損なわないような支持腕など――が導入され、さらに必要に応じて吹き竿に接続できる圧縮空気供給が用意されるなど、いくつかの機械的補助手段が利用できるようになっている。
しかし近年、ドレスデンの P. Sievert によって、純粋に機械的手段だけで非常に大きな中空ガラス器を製造する方法が開発された。この発明により、成人男子が余裕をもって入浴できるほどの大きさのガラス浴槽など、従来は考えられなかったような巨大容器の製造が可能になっている。この方法では、まず大きな鋳鉄板の表面にガラスを広げる。鋳鉄板には多数の小さな孔が設けられており、必要に応じてそこから蒸気または圧縮空気を吹き出すことができる。粘性の高いガラス板がこの鋳鉄板上に適切な厚さに広がった時点で、その外周部のガラスは、適当な形状の鉄製カラーで鋳鉄板に押し付けられ、気密に密着した状態に固定される。こうしてガラスを気密に固定した鋳鉄板全体を、今度は裏返しに反転し、ガラスが鋳鉄板の下面から垂れ下がるような姿勢にする。ガラスはただちに自重で垂れ下がり始め、その変形を助けるために、鋳鉄板とガラスの間隙へ蒸気または空気を吹き込む。浴槽をこの方法で成形する場合には、ガラスが所望の深さまで下方に膨らむのを待ち、所定の深さに達したところで、ガラスの下側へ平らな支持板を押し付ける。このとき、ガラスは内部からの空気圧によって支持板に押しつけられるため、浴槽の平底部が形成される。この工程では、容器の外形は、鋳鉄板上でガラスを押さえつける際に用いるクランプバーまたは固定枠の形によって決まり、この枠の形を工夫することで、比較的単純な形状の容器であれば、ほぼ任意の平面形状を与えることができる。
この方法はまた、中空体の外側に任意形状のモールドを配置し、そのモールドにガラスを押しつけて正確な外形を与えるためにも用いることができる。ただし、小さな容器の場合には、外部から別途生じさせた蒸気を吹き込む必要はなく、ガラス自体の熱によって生成される蒸気を利用することができる。そのためには、まず適量のガラスを濡れたアスベスト板上に落とす。ガラスは、このアスベスト中の水分が熱によって連続的に蒸発することで生じる蒸気層の上に、文字どおり「浮いた」状態で存在する。この方法に用いるモールドの縁には鋭い刃またはリップが設けられており、ガラスが十分な大きさの板に広がったところで、モールドをひっくり返してその縁をガラスに押し付ける。モールドの鋭い縁は、その部分のガラスをアスベスト面にしっかり押しつけ、モールドの輪郭どおりにガラスとアスベストが密着する。こうして、モールド縁で囲まれた領域内では、ガラスと濡れたアスベストとの間に閉じ込められた空間が生じる。ガラスの熱は、その後もアスベスト中の水分に作用し続けるため、その空間内では蒸気が急速に発生するが、いまや蒸気はガラスとアスベストの境目から外へ逃げることができない。したがって、蒸気はガラスをモールド内部へと吹き上げ、最終的にはガラスはモールドの内面に密着するまで膨らむ。ここまで達すると蒸気圧はさらに急激に高まり、ついにはモールドとガラス全体をわずかに持ち上げるようになる。この瞬間、余分な蒸気がモールド縁から外へ逸散し始め、それが「吹き上がり」が完了したしるしとなる。工程全体に要する時間は、ほんの数秒にすぎない。この方法は、適切な組成のガラスと適切な形状のモールドを用いるかぎり、非常に良好な結果をもたらすことが示されている。もちろん、この方法で一般的な狭口ビンを製造することは不可能であるが、広口ビンや壺などはこの方法で作ることができる。そして、このプロセスの主な有用性は、むしろプレス加工には適さないような、比較的浅い形の器物の製造にあると言えよう。
第八章
吹きガラスおよびプレスガラス
瓶の製造に用いられる工程は、型の有無にかかわらず吹きガラスによって作られるあらゆる中空ガラス器の製造に用いられる工程と、多くの点で非常によく似ている。
しかし製品そのものの形状は別として、瓶と、より上等な種類の中空ガラス器との主な相違は、ガラスそのものの組成と品質にある。この点で、医薬瓶に用いられる淡い緑色ないし青色のガラスから、最も完全に無色で輝きの高い「クリスタル」またはフリントガラスに至るまで、あらゆる製造等級が存在する。このガラスの完全さの段階差は、そのまま、原料の選択やガラスの溶融における諸操作に注がれる注意の度合いの段階差を表している。
すでに見たように、色や品質が問題にならないごく一般的な瓶の場合には、あらゆる種類の融けやすい材料が利用され、シルト分や鉄分を含んだ砂や、あらゆる種類の屑ガラスが用いられる。やや高い要求を満たさなければならない場合には、シリカ源としてより純粋な砂を用いなければならず、石灰とアルカリもより純度の高い形で導入されねばならない。アルカリは最も安価な品質のソルトケーキの形で、石灰は鉄とマグネシアをあまり含まない石灰石の形で導入される。最後に、ガラスの最高級品には、入手しうる最も純粋な砂が用いられ、しばしばシルト分を完全に除去するために特別に洗浄される。一方アルカリは、その良質品では有害な不純物を実質的に含まない化学製品である炭酸塩の形で導入される。
これら高級品においては、性質のまったく異なる二種類のガラスが見られる。一方のクラスは、ボヘミアン・クリスタルがその最高の例であり、化学的にはアルカリ・石灰シリケートに属し、ボヘミアガラスの場合、アルカリとしてカリ(ポタッシュ)が用いられる。他方の種類のガラスには石灰が含まれておらず、その代わりに鉛が用いられ、その代表的な例が英国のフリントガラスである。ガラスの一部の種類では、鉛がバリウムによって部分的または全体的に置き換えられるが、この材料は主としてプレスガラスの製造に用いられる。
原料により高い精製度を要求するこのような高品位ガラスは、その溶融に用いられる炉や設備についても、より高い精製度を要求する。瓶の製造において主流であるタンク炉は、より上質な中空ガラス器の製造にはほとんど用いられない。医薬瓶やその他中程度の品質の品物であればタンクで生産することも可能であるが、そのような用途に必要なガラスの量は、そのための大規模な設備投資を正当化するほど大きくないことが多い。最高級の無色ガラス器に関しては、タンク炉は、色調および欠陥のなさという点の両方で、その製品がポット炉の最良品には決して及ばないため、使用することができない。とりわけフリントガラスに対しては、炉内のガスの還元作用や塵埃による汚染から溶融ガラスを十分に保護するため、ふた付きのポットまたはるつぼを用いなければならない。ポットの材料も、そこから着色性またはその他有害な不純物が持ち込まれる危険を避けるという観点から選ばれる。
すべての中空ガラス器製造工程では、前に述べた「ギャザリング」の操作によって、ポットからガラス(「メタル」)が取り出される。プレス製品とは異なり吹き製品を作る場合には、初期段階として、必ずガラス吹き工のパイプの先端に小さな中空球またはバルブを形成することから始まる。その後の操作は、製造すべき品物の性質に依存する。品物は、全面的に手作業、より正確には、通常「チェア・ワーク」と呼ばれる椅子仕事によって作られるか、あるいは型を利用して作業を容易にし、製品を安価に――もちろん、その性格も変えて――することもできる。型は、製品を所定の形に成形し、さらに一定の装飾的なモールディングや模様を押し付けるために用いられる。すでに見たように、普通の瓶は現在ではすべて型を用いて吹かれており、同じことが医薬瓶、ランプ・チムニー、電灯用バルブについても当てはまる。ランプ・チムニーについては、平底とドーム形の頂部をもった円筒形瓶として型吹きされ、端部は後で切断されることを付け加えておかねばならない。
安価な種類のタンブラーやグラスの多くも型を用いて吹かれるが、手作業で作ることも可能であり、実際にそうされることもある。そしてその製造法は、あらゆる手吹き中空器物の製造法の代表例であるから、この種の仕事の一例として、ここでやや詳しく説明することにする。
この仕事にガラス吹き工とその助手が用いる道具は、数も少なく単純である。最大の道具は、ガラス吹き工の作業台または「チェア」であり、これは、二本の突出した側桟(アーム)を備えた、粗末な木製のベンチにすぎない。仕事の仕上げの際、吹き工はこのベンチに腰掛け、パイプはその前方にある二本の桟の上に渡される。こうして、パイプを桟の上で前後に転がすことで、パイプに緩やかな回転を与え続けることができる。通常の吹き竿(ブローパイプ)と、作業中の品物を保持するために少量のガラスを付着させる「ポンティル」または棒のほか、吹き工の使う道具は、種々の形状の鋏やピンセット数本のみであり、これらは、必要に応じてガラスを切断し、押し込んだり、広げたりするために用いられる。さらに、ガラスの成形には平らな木板と、石または金属の板、すなわち「マーヴァー」も用いられる。
すでに述べたように、タンブラーのような物体を製造する最初の段階は、パイプに適量のガラスを巻き取って小さなバルブに吹き広げることである。このバルブを適当な大きさまで吹き広げ、次にパイプを軽く振り子のように振って細長くする。次に行うのは、バルブの下端を、「マーヴァー」と呼ばれる平板上で軽く押し当てて平らにする操作である。このようにしてグラスの平底が形成され、バルブは仕上がりのグラスと同じ形になるが、肩と首の部分でなおパイプに付いている状態である。
古い方法では、タンブラーを所定の長さになる位置でパイプから切り離し、残る操作は、いったんポンティルに付け替えてから炉に差し入れ、割れ口の縁を加熱することであった。こうすることで縁が丸くなり、グラスを回転させたり、木片を押し当てて内外に押し広げたりして、飲み口を広げたり形を整えたりすることができた。しかし現代の方法では、これは通常行われず、ガラスは肩より十分上でパイプから切り離され、その形のまま徐冷(アニール)される。その後、グラスは仕上げ室または作業場に送られ、所定の位置で切断され、吹管バーナーの炎で粗い縁を丸めて仕上げられる。切断操作には多くの方法があるが、もっとも普通なのは、局部的かつ急激な熱作用を利用する方法であり、特別な形の扁平な吹管炎や、電熱線によって行われる。こうした切断と、続く縁取りの自動仕上げを行う機械も使われているが、しばしばこの後の工程は、縁を軽く研磨して光沢を出す方法で代用される。
[図8.—コップの生成過程を示す断面図。]
いま述べた、図8に模式的に示されている普通のコップの生成過程は、中空ガラス吹き全体の典型例である。しかし、器物の形が複雑になるにつれて、工程の数も、各段階に要求される注意と技能も急速に増大することは言うまでもない。最高級の仕事では、作業者の側にもかなり高度の芸術的な感覚と判断が必要になる。というのも、物体の形や色彩および装飾の選択はデザイナーが行うものの、吹き工はデザイナーの図面をガラスに翻訳しなければならないからである。吹き工の技能はかなり忠実な再現を可能にするものの、それでも細部にはなお彼の裁量に任される点が多く残り、その適切な処理は作品全体の成功に少なからぬ役割を果たす。
この点に関連して、この種のガラスに施される色彩やその他の装飾について触れておくべきであろう。この方面で現在ガラス工が利用できる効果の範囲は非常に広い。まず第一に、対象となる品物の本体ガラスそのものを、溶融ガラスや原料に適当な着色剤を加えることで着色することができる(第十一章参照)。しかしこの方法には、きわめて明白な制約がある。たとえば、普通のワイングラスのように、ボウル・脚・台座の三部がそれぞれ別々のギャザリングで作られる場合には、これら各部分に異なる色のガラスを用いることができ、実際に、ボウルをルビー色や緑色にし、脚と台座を白にしたワイングラスは一般に作られている。
さらに色彩応用を変化させる方法として、同じパイプに二度以上ギャザリングを行い、小さな色ガラスのギャザリングの上に、より大きな白ガラスのギャザリングを重ねることがある。これは第十章で述べる「フラッシング」板ガラスの製法に類似しており、この方法を使うと、対象物上の有色層をほぼ任意の方法で分布させる種々の操作が可能になる。しかしこの方法の主な難点は、吹き工が同時に使用したいすべての色の溶融ガラスのポットを手元に用意しておかねばならない点であり、これは経済的に見てそう容易なことではない。そのため、また操作も簡単であることから、吹きガラス器に応用する有色ガラスは、あらかじめ作っておいた短い棒状で用いるのが通例である。この棒を適当に加熱して、作業中の器物の任意の場所に、必要な量だけ有色ガラスをつけることができる。このとき、互いに接触する二種のガラスが、その化学組成および物理的性質に関して適切な関係を保っていれば、両者は容易かつ完全に融け合い、その結果は、溶融状態の有色ガラスを直接用いた場合と全く遜色のないものとなる。
その他の装飾としては、完成したガラスに施される金彩や他の金属光沢、さらにはさまざまな種類の虹色光沢(イリデッセンス)がある。金属光沢は、実際の金属微粒子の層をガラス表面上に置き、軽く融着させることで得られる。場合によっては、まだ熱いガラス器を目的の金属箔の塊の中で転がし、十分な量が容易に付着するようにする。別の場合には、還元されやすい金属化合物を多量に含むフラックスまたは釉薬の形で金属を塗布し、その後、熱の作用によって、時には煙やその他の還元性ガスの助けも借りて、金属状態に還元する。酸性蒸気の腐食作用によって、特定の種類のガラス表面に虹色光沢を生じさせることもできる。実際、硫黄を含む煙で汚染された地域では、普通の窓ガラスの表面に虹色の光沢が見られることはごく普通である。
吹きガラスやその他のガラスの装飾には、このほかにもカット、エングレービング、エッチング、銀引きなど数多くの方法があるが、これらはもはやガラス製造そのものの範囲を超えるため、本書の範囲外の問題としてここでは扱わないことにする。
手作業による中空ガラス器の製造において、ガラス吹き工は、ガラスのもっとも特徴的な性質、すなわち適切に加熱するとペースト状あるいは粘稠な状態をとる性質を十分に活用する。材料の温度を上げ下げすることで、吹き工はガラスを必要に応じて固くも流動的にもすることができる。吹くことによりガラスを膨らませ、重力や遠心力の助けで引き伸ばし、さらに適当な形の棒や鋏で成形することもできる。また、ガラスを上方に保持したまま自重で垂れ下がらせ、房状に垂らすこともある。こうした操作を自在に操る熟練工は、ガラスを意のままに扱い、多種多様で美しい器物を作り上げることができる。
しかしこのような手作業で作られた器物には、その製造工程の痕跡が必然的に残る点に留意しなければならない。すなわち、それらは機械製品に見られるような寸法や形状の極端な規則性を持つことがない。曲線や房飾りの正確な形状にはある種の自然な揺らぎがあり、それは機械的工程の産物には見られないものである。ある目的にとっては、この揺らぎは欠点となることがあり、またある人々の目には欠陥と映るかもしれない。このため、ガラス吹き工の仕事を補助する目的で、型を利用して形状の厳密に揃ったガラス器を製造する方法が考案されてきた。こうした手作業補助法は、純粋に芸術的な観点から見れば製品の価値と美しさを損なう面があるのは否めない。しかし一方で、型の使用によって比較的技能の低い作業者でも外見の整ったガラス器を生産できるようになり、産業全体の大規模な拡大が可能になったのである。
前に述べた手吹きによる瓶製造の説明の中で、すでに吹き工が望みの大きさと形に品物を成形する際に型を用いる例を見てきた。しかし、型を用いることで、もっとはるかに複雑で装飾的な品物を作ることもできる。たとえば、軽くて適切な形状である限り、ガス、油、電気などのランプ用グローブやシェードのような品物は、ガラスのバルブを型に吹き込むことで作るのが普通である。型の内部で、これらは最終的な外形だけでなく、将来目にすることになる詳細な装飾模様までも獲得する。この場合も本体は閉じた中空容器のままであり、吹きや成形のすべてが終わった後、最後の段階で開口され、所定の形に縁を整えられる。
このような方法で吹かれた品物には、多くの場合「型痕」が残る。これは、熱いガラスが比較的冷たい型の表面に触れることで、ロール成形の場合とよく似たシワやざらつきがガラス表面に生じるためである。この効果は、型の内面に適当な油脂性の塗布剤を塗ることである程度軽減できる。塗布剤に求められる主な性質は、熱いガラスに付着せず、型の中で徐々に焼失する際にも残渣をほとんど残さないことである。型の適切な手入れと維持は、この工程およびプレスガラス工業全般において、成功の第一条件である。もっとも好条件の下であっても、型に吹き込まれたガラスの表面は、冷たい材料に触れることなく冷却された手吹き品の表面に比べて劣っており、したがって溶融状態から自由に固まる際に自然に生じる「火磨き」の輝きを完全には保持できない。
このような型成形品やプレス品の表面に、手吹き品と同様の輝きを与えようとする試みとして、最終形状に達した品物を炉内の熱にさらし、その表面をわずかに軟化させてから、表面張力の支配のもとで再び静かに固化させる方法がしばしば行われる。これは、最初から自由に固化させた場合とほぼ同様の効果を狙うものである。残念ながら、この方法を用いると、品物全体が多少なりとも軟化せざるを得ず、そのため、対象物の深刻な変形を防ぐには高度な熟練が必要となる。また、すべての鋭い角や稜がある程度丸くなってしまうことは避けられない。
大きく、場合によっては複雑な形のガラス片全体を型の表面にしっかり押し付けるために必要な空気圧は、時として非常に大きくなる。吹き工の肺の力だけでは往々にして不十分であるため、多くの工場ではこの目的のために圧縮空気を供給している。パイプの口元を空気主管につなぐ装置が用いられ、作業者はこれを素早く接続できるようになっている。また、適当なバルブによって圧力を精密に調節できるようにもなっている。蒸気圧を用いたジーヴェルト(Sievert)の型成形法については、すでに前に述べた。
産業の発展の歴史が必ずしもこの順路をたどったわけではないにせよ、粘稠なガラスを空気圧で型に押し当てる方法から、適切な形の固体プランジャーの圧力でガラスを押し出す方法へと発展することは、それほど大きな飛躍ではない。これこそが、広く用いられているガラス・プレス法の本質である。第一に、この製法は、球状バルブからの発展では作りにくい、固体または平坦で浅い形の品物に明らかに適している。一見したところ、プランジャーが容易に出入りできる凹部形状の品物にしか適用できないようにも思われる。しかし、閉じた、またはほとんど閉じた容器の二つの半分を隣接する二つの型の中で同時にプレス成形し、その後まだ十分に高温であるうちに二つの半分を押し合わせて一体化するという巧妙な方法によって、完成品にはプランジャーを到底挿入できないような水差しなどの器物も、プレスだけで製造することが可能になっている。
プレス工程は純然たる機械的操作であり、非常に複雑な設備も高度な技能もほとんど必要としない。このため、市場には安くて極めて実用的な品物が大量に供給されるようになり、ガラスの用途範囲を著しく広げる結果となった。他方で、この方法は、手吹きやカットガラスなど他の工程の製品を模倣する品物の製造にも、ある程度用いられてきた。その結果、美的観点から到底美しいとは言い難く、実用性も乏しいガラス製品が大量に作り出されることになった。
すでに述べたように、ガラス・プレス法の本質的特徴は、機械的に作動するプランジャーの圧力によって、ガラスの層を型の内面に押し付ける点にある。このためには、適切な型とプランジャー、そして前者を保持し後者を駆動するためのプレス機が必要である。型は通常、特別な品質の緻密な鋳鉄で作られ、吹きガラス用の型とほぼ同様の方法で修整・整備される(ただし吹きガラス用型は木製である場合もある)。完成品の取り出しを容易にするため、型は一般に複数の部品から成り、それらは互いに組み合わさり、蝶番によって分割できるようになっている。これらの型で非常に重要なのは、各部品どうしが正確に密着することである。そうでないと、わずかな隙間にもガラスの薄い「バリ」が押し出され、完成品の表面にその痕跡が残るからである。こうしたバリの発生を完全に防ぐほど完全な嵌合は、実際には、新品の型の場合を除けばほとんど達成し得ない。そのため、あらゆるプレス製品には一般にバリの痕跡が認められ、上級ガラス器を模倣しようとする製品を容易に見分ける手掛かりとなる。
プレス機は一般に手動レバー式である。動力プレスも理論上は使用可能であろうが、手動プレスには、作業者が手応えによって十分な圧力がかかったかどうかを判断できるという大きな利点があるとされる。これはきわめて重要な点である。過度の圧力をかけると、ガラスが型からはみ出してしまうか、あるいは型を破損またはひどく痛めてしまう恐れがあるからである。実際のプレス機は、プランジャーの動きを制御する垂直ガイドとレバー、型を載せるテーブルから構成され、一部の機械では型の開閉を行うクランクとレバーの機構も備えている。
プレス工程自体はきわめて単純である。まず固い鉄棒に必要量のガラスをギャザリングし、それを型の中に落とし込む。型内のガラスと棒に残ったガラスとをつなぐ「糸」の部分は、鋏で切り離す。次にプランジャーを型内に下げて所定位置まで押し込み、ガラスが形を保てる程度に固まるまでそのままにしておく。その後プランジャーを引き上げる。この過程では、ガラスは比較的冷たい型とプランジャーの表面に密着させられており、その間、ガラスは型の形状に容易に追随できる程度に十分な可塑性を保っていなければならない。そのため、プレス法が成功裡に用いられるのは、この目的に特別に適合した種類のガラスに限られることは少しも不思議ではない。特定の種類のフリントガラスや一部のバリウムガラスがこの用途に用いられるが、とりわけ大陸において生産されるプレスガラスの大部分は、ソーダとポタッシュの両方を多量に含み、石灰分が比較的少ないアルカリ石灰シリケートから作られている。このガラスは、ほとんどの用途に対して十分な耐久性を持ちつつ、粘稠状態では特に柔らかく成形しやすい。
比較的冷たい金属にガラス表面が触れると生じる有害な影響については、すでに上で述べた。これこそが、ガラス・プレス法が直面する主要な困難である。この問題は、前述の再加熱法を用いることである程度軽減されるものの、それでも完全な解決には程遠い。大多数のプレス製品では、表面全体を溝、螺旋模様、リブなどのレリーフ装飾で覆い隠すことによって、この問題を可能な限り避けようとしている。カットガラスの外観を模倣しようとする試みも時折行われるが、再加熱の際に角が丸くなってしまうため、鋭いカットの印象は失われ、模倣であることが容易に見破られてしまう。さらに、型による装飾が非常に安価で済むことから、しばしば過度の装飾が施される結果となり、そのため多くの製品が美的価値を完全に失ってしまっているのである。
第九章
ロールドガラスまたは板ガラス
本章では、第一段階としてガラスをロールによって板または板状スラブに成形する、すべての製法について扱うことにする。すでに、ロール成形工程の一般的性格について述べ、熱く粘稠なガラスはシートやスラブに容易に延ばすことができるが、その表面を平滑に、完全に平らに仕上げることはできないことを見た。実際、ロールドガラスの表面は常に、テーブルやロールの表面に存在する微細な凹凸との接触によって多少なりとも曇るし、シートのあちこちで起こる座屈によって、より大きな表面の乱れが生じる。
こうした制約は、ロールを伴う製造法で生産しうるガラスの種類を決定し、ある一見奇妙な結果をもたらした。すなわち、最も安価で粗末な種類の板ガラスと、最も高価で上質な板ガラスの双方が、ロール成形によって製造されているのである。一方の極端な例は、作業場や鉄道駅の天窓に使われる、普通の粗い「ロールド板」であり、他方の極端な例は研磨板ガラスである。この一見した矛盾は、研磨板ガラスの製造においては、ロールを通ったばかりのガラス表面の状態がきわめて重要性の低い要素であることに注目すれば理解できる。というのも、その表面は、その後の粗研磨、スムージング(細研磨)、およびポリッシングの工程によって、完全に消し去られてしまうからである。
粗い「ロールド板」と研磨板ガラスとの中間には、ロールされた表面に、ロール工程中に印された模様によって、その見た目を完全または部分的に隠した各種のガラスが存在する。たとえば、縦リブ模様や菱形模様のついたロールド板、あるいは「ムラネーズ(Muranese)」の名でも知られる、きわめて複雑で深く刻まれた模様を持ち、きわめて華麗な効果を示す「フィギュアード・ロールド」板ガラスなどがそれである。
ロールド板ガラスは、実用上ほとんどもっとも粗く安価な板ガラスであり、その主な用途は外観がさほど問題にならない場所である。その最大の要件はしたがって低価格であるが、ガラスが通す光の量と性質に影響するため、色調と品質もやはり重要である。低価格という要件から、第四章で述べたとおり、そのようなガラスを経済的に生産できるのは、大型タンク炉だけであることは明らかであろう。実際、この用途には例外なくタンク炉が用いられている。この種のガラスでは、小さな異物や空泡(エアベル)が含まれていないことに対する要求はそれほど厳しくないため、炉の形もごく単純であるのが普通である。ガラスを完璧に精製(ファイニング)するため、炉内各部の温度を精密に調整するような工夫は不要であり、原料を一端から投入し、他端に設けられたいくつかの開口部から、柄杓(ラドル)でガラスを汲み出すだけの、長方形の炉室またはタンクで足りる。もっとも、経済的に運転するためには、炉を高温で操業できることが必要である。というのも、安価なガラス配合は必然的にやや溶けにくい――少なくとも色を重視する場合にはそうである――からである。ガラスの融けやすさはそのアルカリ含有量に依存し、アルカリはそのようなガラスの成分のうち最も高価であることを思い出せば、この点は理解できるであろう。
ロールド板ガラスの製造に用いられる原料は、砂、石灰石、ソルトケーキであり、これに必要量の炭素や融剤・精製剤を加える。こうした材料は、完成品の低価格が許すぎりぎりの範囲内で、できるだけ高い純度と組成の一様性を目標に選択される。これらの材料はきわめて大量に扱われ、一基の炉から週に60〜150トンのガラスを生産することも決して珍しくない。そのため、原料の取り扱いと炉への装入には、可能なかぎり機械的な手段が採用される。
ガラスは大型の鉄製ラドルで炉から汲み出される。これらのラドルには大小さまざまな容量のものがあり、求める板のサイズに応じて、必要量のガラスを収容できるように使い分けられる。大きいサイズが求められることもあり、180〜200ポンドものガラスを収めるラドルが用いられることもある。ラドルはガラスで満たされると、手で運ばれるのではなく、頭上のレールに取り付けられたトロリーに吊り下げられて運ばれる。
ラドル係の作業者は、体をフェルト製の前掛けで覆い、顔は緑色ガラスをはめ込んだ覗き穴付きの面をかぶって保護している。まず、冷却のため水槽に浸しておいた空のラドルを取り出し、炉前の開口へと続く緩やかな傾斜路を上って行き、そこでラドルを溶融ガラスの中に差し入れる。そしてラドルを半回転させて、「固まり」として十分な量のガラスをすくい取る。その後、ラドルを2、3度すばやく上方にしゃくり上げることで、ラドルに入ったガラスを、炉内から伸びてきている板状・糸状のガラスからできるだけ切り離す。次に、ラドルの碗部付近の柄を頭上トロリーのフックに載せ、柄の反対側の端に自分の体重をかけて引き下げることで、ラドル全体を溶融浴から引き上げ、作業口から外へと引き出す。この操作は数秒で完了するが、その間ラドル係は強い熱にさらされる。というのも、作業口からはしばしばかなり激しい炎が吹き出し、それが炉のフードの下へと吸い上げられて行くからである。炉から出たラドルは、通常助手の少年に手伝われながら、ロールテーブルへと運ばれ、そこでロールのすぐ前方のテーブル上にガラスを注ぎ出す。
このとき二つの明確に異なる方法がある。一つは、ラドルを徐々に傾けて完全に流動状態にある部分だけを注ぎ出し、ラドルの壁に接して冷め始めたガラスは中に残し、その後まだ温かいうちに炉へ戻す方法である。他方は、ガラスの冷却をできるだけ最小限に抑え、ラドルを素早く一挙に反転させて中身をすべてテーブル上にあける方法である。後者では、最も冷えている部分が、他の部分から十分離れた位置へ飛んで行くようにこの動作が調整される。シートがロールされた後、この冷えた部分は、その色が他の部分より暗いことですぐに見分けられ、シートの一端全体にまとまって存在するので、次の工程に進む前に切り離される。どちらの方法にも、これといった決定的な優劣はないようである。
[図9.—ロールド板ガラス用ロールテーブル。]
ロールド板のためのロールテーブルは、本質的には、予定される最大サイズのシートを受けるに足る大きさの鋳鉄製スラブであり、その上を、手動または動力――もっとも今日ではほとんどすべて動力――で回転させる重い鉄製ロールが動く構造になっている。ロールされる板の厚さは、テーブルの両側に取り付ける鉄製スペーサー(スリップ)の厚さによって調節される。これらのスペーサーは、ロールがテーブル表面にそれ以上近づかないようにするストッパーの役目を果たす。ガラスの層がスペーサーより厚い間は、ロールの全重量が柔らかいガラスにかかってそれを押しつぶすが、所定の厚さまで達するとロールの重量はスペーサーに支えられ、それ以上ガラスは薄くならない。
シートの幅は、図9に示すように、ロールの前面とテーブル面にぴったり合う形の一対の鉄製ガイドによって決められる。ロールが前進すると、これらのガイドを押しながら進み、その間にガラスが閉じ込められて幅が規定される。ロールがガラスの上を通過し終えると、シートは赤熱状態で柔らかいままテーブル上に残されるが、安全に移動できる程度に冷え固まるまで、しばらく待たなければならない。この間に、もし冷えた部分がある場合には、それを長い鉄製のナイフ状の道具でシートに切れ目を入れて部分的に分離する。次に、平らな鉄板の刃を持つ工具で、テーブルとシートの間にすばやく滑り込ませて一気に引き抜くことで、シートをテーブルから剥がす。このシートは、まず石板の上に引き出され、その後アニール炉または「リア(lear)」の口へと押し込まれる段階へと移される。このとき、冷えた部分は、先に入れた切れ目に沿って一撃で完全に折り取られる。
ロールド板用のアニール炉は、本質的には、片端が高温に保たれ――そこで焼きたてのシートが投入される――もう一端が冷たく、その間の温度が炉の長手方向に沿って徐々に下がっていく、長くて低いトンネルである。シートはこのトンネル内をゆっくりと移動しながら冷却され、切断などの工程に耐えうる程度に焼きなまされる。このように原理は単純だが、これら「リア」炉の適切な設計と運転は決して容易ではない。成功は、炉の長さに沿った温度の正しい分布と、シートの適切な移動速度にかかっており、またシートを支え運ぶ方法によって、その平坦さと無割れが大きく左右されるからである。
シートの実際の移動は、炉の長手方向に沿って走る可動グリッド(格子)によって行われる。シートは通常、炉床を構成する石板の上に平らに横たわっており、その下にはグリッドバーを収めるための溝が切ってある。一定の間隔ごとに鉄製のグリッドバーが持ち上げられ、シートが石床からわずかに浮き上がると、グリッド全体が炉の長手方向に少し動いてシートを前方へ運び、その直後に再び石床の上にシートを降ろす。グリッドは、その後炉床面より低い溝の中で元の位置まで戻される。
アニール炉(リア)から出てきたロールド板ガラスのシートは、切断および選別室へ運ばれる。ここでシートは寸法どおりに切断され、縁を整える。ロールテーブルから出たままのシートでは、縁がやや不規則で、ところどころビーディング(玉縁)状に膨らんでいることもあり、端部は必ずきわめて不規則である。そのため、端と縁はカッティングダイヤを用いて直角に整えられる。この作業では、シートを平らなテーブルに載せ、より平滑な面を上にして置く。熟練した作業者が、十分な大きさと品質のよいダイヤモンドを使い、長さ6〜8フィート、幅わずか半インチの長い細片を切り出すこともある。最終的な分離は、ガラスの裏側を、切れ目の真下から軽くたたくことで助けられ、必要であれば、適当なトングで折り取る。
ロールド板ガラスについては、特に精巧な選別はほとんど必要ない。ただし、ガラスの色合いは時にわずかに変動することがあり、特定の注文を満たす際には、一つの色調のガラスにそろえるのが望ましいことが多い。この点を除けば、ロールド板の切断工は、ガラスの有用性を著しく損なうような大きな欠陥を切り落とすだけでよい。すでに述べたように、この種のガラスでは、気泡や微小な不透明異物はそれほど問題視されない。しかし大きな不透明塊は、見た目が粗悪であるだけでなく、自発的な亀裂の発生危険をはらんでいるため、一般に切り取られて廃棄されねばならない。事実、大きな「ストーン」と呼ばれる異物の周囲には、ほとんど常に目に見える亀裂が存在する。これらの異物は、原料の不完全な溶融や、原料への不融性不純物の混入など、さまざまな原因から生じ得るが、この点で最もやっかいなのは、炉内張りの崩壊である。耐火煉瓦の小片が部分的に融けた状態でガラス中に混入するのである。
適切に構築され、適切に操業されているロールド板用タンク炉では、この種の異物のために切り落とさなければならないシートの割合は、炉が古くなって内張りの崩壊傾向が強まるまでは、きわめて小さく抑えられるべきである。
ここでロール工程に話を戻すと、わずかな変更で、一方の面に模様を押し付けたロールド板ガラスを作ることができることがわかる。この変更とは、ロールテーブルの鋳鉄製ベッドプレートの表面をインタリオ(沈み彫り)で彫り込み、ガラス上に浮き出しで現れる模様を刻むことである。実際には、この方法で作られる模様は、ごく単純なものに限られる。たとえば、密な平行縦リブや菱形模様などである。その理由は、おそらく、こうしたテーブルのベッドプレート全体に複雑な模様を刻むコストが非常に高くつくためであろう。さらに、これらのテーブルやベッドプレートは非常に重く、容易に取り換えたり、使用しないまま置いておいたりすることができない。そのため、この方法が経済的に成り立つのは、ごく大量に需要のある模様に限られる。
こうした不利は、ダブルロール機の導入によってかなりの程度まで克服されている。この機械では、やや複雑な構造の詳細には立ち入らないが、ガラスは、固定軸のまわりに回転する二本のロールの間を通過することで、所定の大きさと厚さのシートに成形される。出来上がったシートはもう一本のロールの上を通って外へ出て行き、その際、シートが送られていくのと同じ速度で前進する石板の上に載せられていく。
この機械では、模様を刻んだ第四のロールを用いて、柔らかいシートが最後のロールを通過する際に、容易に模様を押し付けることができる。模様ロールをシートの上から押し付けると、その模様が鮮明かつ深く刻み込まれる。この機械のロール配置の概要は、図10の断面図に示されている。
[図10.—「フィギュアード・ロールド」板ガラス用ロール機の断面模式図。]
この機械から出てきた「フィギュアード・ロールド」板ガラスは、その後の工程が、普通のロールド板とまったく同じである。ただし、フィギュアード板には通常やや柔らかい種類のガラスが用いられるため、アニール炉の温度調整が多少異なる必要がある。切断作業にもいっそうの注意が必要であり、この種のガラスは、ダイヤモンドによる切断が平滑な側にしか効かないことに注意しなければならない。凹凸模様がレリーフになっている側は、ダイヤモンドで傷をつけてもほとんど影響を受けないからである。この点が、両面に模様を施したガラスの製造が実用的でない理由の一つである。
フィギュアード・ロールドガラスは、本質的に装飾用の材料であり、通常、きわめて白く輝くガラス、あるいは特別な色合いのガラスで作られる。それぞれに用いられるガラス配合は、当然ながら各メーカーの企業秘密である。とはいえ、白さを得るには、きわめて純度が高く、したがって高価な材料を用いなければならないことは明らかである。着色板ガラスの製法一般については、第十一章で述べる。
研磨板ガラスの製造は、ここまで述べてきた諸製品とはかなり性格を異にしており、共通するのは最初にロール成形を行うという点だけと言ってよい。
板ガラス用の原料は、可能な限りの注意を払って選ばれ、その純度と組成の一様性が確保される。というのも、板ガラスでは、かなりの厚みのガラスが用いられることもあり、またシートの線寸法が大きく、内部反射が多数起こり得るため、ガラスの色が少しでも濃いと、その色調が不快なほど目立ってしまうからである。実際に用いられる原料は、工場によって多少異なるが、一般的には、砂、石灰石、ソルトケーキに少量のソーダ灰を加え、さらにヒ素、マンガンなどの融剤・精製剤を通常どおりに加えたものが用いられる。ガラスは一般にポットで溶融され、溶解と精製(ファイニング)の各段階では細心の注意が必要である。というのも、この種のガラスでは、ごく微細な欠陥でも仕上がり後には容易に目立ち、その価値をきわめて大きく損なうからである。
溶解ポットからロールテーブルへガラスを移す方法は、工場ごとに多少異なっている。多くの場合、大きな溶解ポットそのものを炉から丸ごと取り出し、そのままロール機のベッドプレート上にガラスを注ぎ出す。他の工場では、まずガラスを小さな「鋳造用」ポットに移し、この中で再び加熱して、移し替えの際に混入した気泡を抜いてから、これら小型ポットを用いてロールテーブル上にガラスを流し込む。後者の、より複雑な方法の利点は、おそらく、大きな溶解ポットが、溶解初期の高温と化学作用にさらされるだけでなく、さらに炉外に持ち出されて冷たい外気に長時間さらされるという追加の負担を負わずに済む点にある。機械的な破損の危険に加えて、このような扱いは、巨大な温度差に伴う不均一な膨張収縮のために、ポットを破損させる深刻なリスクを招く。
一方、鋳造用の小型ポットは、炉内でそれほど長時間高温にさらされず、原料が与える化学的攻撃にもさらされない。そのため、これら補助ポットには、溶解ポットに必須の高級耐火粘土とは別種の、急激な温度変化によりよく耐える材質を用いることもできるであろう。他方で、溶解ポットから鋳造ポットへのガラスの移し替えは、ラドル作業という重労働と、それに続く再精製、そしてそれに伴う時間と燃料の消費を必要とする。最後に、タンク炉で板ガラスを生産するには、こうした鋳造ポットを利用し、タンクからラドルで汲み出したガラスをポット内で再び精製しなければならないが、これはタンク炉の経済性を著しく損なうことになるうえ、タンク炉で溶かしたガラスの色と純度を、ポット炉の最高級品に匹敵する水準にまで高めることは、決して容易ではない。
溶融ガラスを満たしたポットを炉から引き出す作業は、今日では例外なく強力な機械装置によって行われる。ポットの外面には突起が設けられており、適切な形状のトングやクレードルでつかめるようになっている。炉壁の一部は、操業ごとに仮設で築かれており、その部分を崩して取り外す。次に、テコを使ってポットを炉床(シージ)から持ち上げ、強力なフォークで全体を持ち上げて炉外に出す。ポットはクレーンによって吊り上げられ、ロールテーブルの上方の所定位置まで運ばれる。そこでポットを傾け、ガラスを気泡が入り込まないよう注意しながら、一定の流れでテーブル上に注ぎ出す。ポットが空になると、できるだけすばやく炉内へ戻され、その間にガラスは機械でスラブ状にロールされる。
板ガラス用ロールテーブルは、サイズと重量が大きいことを除けば、すでにロールド板のところで述べたものと同様である。ガラスがポットから直接流し込まれるため、冷えた部分を取り除く必要はない。さらに、大型のシートが求められることが多く、ロールテーブルのベッドを一枚の鋳鉄板で作ることは実用的でない。むしろ、丁寧に継ぎ合わせた複数の板で構成する方が、熱いガラスによる反りが少ないという利点がある。
ロール設備全体を設計する際の最重要事項は、できるだけ均一な厚さを持つ、平坦なガラス板を作る必要があるという点である。粗ロールシートの最も薄い部分の厚さより、最終的な研磨板の厚さをわずかでも小さくしなければならない。したがって、厚さに大きなばらつきがあると、研磨工程でシート全体の一部ではきわめて厚い層を削り取らねばならないことになる。もしシート全体が湾曲したり反ったりして平面から大きく外れていれば、この問題はいっそう深刻になる。この二つの場合を、図11に誇張された断面図で示す。上図が研磨前、下図が研磨後のシートを表す。
[図11.—湾曲または不規則な板ガラス研磨時のガラス損失を示す断面図。]
ロールテーブルを慎重に設計すれば、このような望ましくない形状のシートの発生傾向をある程度まで抑えることはできるが、アニール工程や、ロールテーブルからアニール炉へシートを移動する間の変形を完全に防ぐことは、はるかに困難である。扱うガラス板の寸法が非常に大きく、さらに平坦さに対する要求がきわめて厳しいため、ロールド板で用いられるような、熱端から冷端へガラスが連続的に移動するトンネル式アニール炉は、板ガラスの焼きなましには採用されていない。その代わり、他の種類のガラスにトンネル式アニール炉が導入される以前に使われていた古い形式の焼きなまし炉と、本質的に同じ方式の炉が、現在も板ガラスには用いられている。
これらの炉は、熱いガラス板を内部に密閉し、比較的長い時間をかけてゆっくり均一に冷却する、単純な炉室から構成される。板ガラスの場合、スラブは炉の床の上に平らに置かれる。この炉床は、綿密に削った石材か、砂を介して敷設した耐火レンガのブロックから成り、横方向(面内方向)に自由に膨張できるように敷かれている。もしブロック同士をすき間なく固く組み合わせると、加熱による膨張で床が隆起してしまうからである。
炉室全体はあらかじめ、ガラスがまだわずかに可塑性を保つ程度の温度にまで熱せられている。ロールテーブルから来た熱いガラス板は、この炉床の上に並べて置かれ、通常一つの炉室に数枚ずつ収められる。最初の数時間のうちに、板は徐々に炉床の形になじみ、それ以後、完全に冷めて取り出されるまで、その形と位置が乱されることはない。現代では、炉の冷却には4〜5日をかけるのが普通である。この程度の冷却速度であっても、炉のすべての部分が均一に冷えるよう注意を払わなければならない。そのために、炉壁や炉床の下に特別な通風路を設け、そこに空気を通すことで、炉全体がほぼ同じ割合で冷却されるようにしている。もしこうした配慮をしなければ、炉の上部は下部よりもはるかに速く冷え、ガラス板の下面の方が上面よりもずっと高温に保たれることになってしまうであろう。
アニール炉から取り出された板ガラスのスラブは、外見上、ロールド板とよく似ており、透明度も十分であるため、おおまかな検査を行い、最も顕著な欠陥部分を取り除くことができる。より微細な欠陥は、ガラスを研磨した後でなければ発見できないが、この予備検査を行うことで、労力のかかる研磨作業を、無駄なガラスに費やさずに済む。
板ガラスの研磨・ポリッシング工程は、大きく三つの段階から成る。第一段階では、ガラス表面を研削して、できるだけ完全な平行平面にする。この作業をできるだけ迅速に行うため、粗い研磨材が用いられ、その結果、ガラス表面にはザラザラした灰色の面が残る。第二段階、いわゆるスムージングでは、いくつかの段階に分けて、より細かい研磨材でこの粗い灰色面を研ぎ進め、最終的にきわめて滑らかな灰色表面を残す。第三段階の最終工程では、この滑らかな灰色表面を、私たちがよく知るあの鏡のような光沢面に変えるため、ポリッシング剤が用いられる。
もともと、研磨とポリッシングの各段階はすべて手作業で行われていたが、今日では、これと同じ作業を手作業よりはるかに速く、かつ完全にこなす一連の巧妙な機械が開発されている。現在なお用いられている研磨・ポリッシング機械の各種構造を、ここで詳細に説明することは到底できないので、その設計と構造を左右する主要な要件を概観するにとどめることにしよう。
まず第一に、板ガラスの表面に力強い機械的作業を加える前に、その板を機械装置に対して確固とした位置に固定しなければならない。しかし、局所的な破損を避けるには、板はその全面にわたって支持されなければならないため、この固定は決して容易なことではない。ロールテーブルから出たばかりの板の表面はまだ凹凸が激しく、その状態ではしっかりと据えつけることが難しいため、まず石膏(プラスタ)に埋め込まなければならない。この作業では、石膏とガラスの間に気泡が入り込まないようにしなければならない。もし気泡が残れば、そこはガラスが支持されていない箇所となるからである。研磨やポリッシングの間に、これらの未支持部位は、かかる重圧に耐えきれず局所的にたわみ、その結果として、仕上がった表面に不規則が生じる。
ガラスと石膏の最も確実な密着は、ガラス板の表面を上に向けて置き、その上に石膏ペーストを塗り広げてから、研磨テーブルの鉄製ベッドプレートをその上に降ろすことで得られる。その後、板と石膏を付着させたままベッドプレートを反転させ、研磨機に据え付ける。一方の面をポリッシュし終えた後は、板を湿った布の上に置くことで十分な固定が得られることが多い。布に板がしっかりとくっつき、さらにテーブルの縁に取り付けた数個の当て木が、ガラス板の側面を押さえて横滑りを防ぐからである。しかし多くの工場では、第二面の研磨とポリッシュにも、第一面同様に石膏による据え付けを用いている。
研磨・ポリッシング工程は、いまなお多くの板ガラス工場で、「荒研ぎ(ラフ・グラインディング)」「スムージング」「ポリッシング」という三つの別個の工程として扱われている。古くは、この三段階は完全に別々に行われ、最初は手作業で、のちには三台の別々の機械で行われた。だが最新の工場では、荒研ぎとスムージングは同一の機械で行われ、必要なのは、段階ごとに前段階より細かい研磨材に切り替えることだけである。ただしポリッシング工程では、研磨具そのものを別種のものに替えなければならない。荒研ぎとスムージングには普通、鋳鉄製の「ラバー」(研磨盤)が用いられるのに対し、ポリッシングにはフェルト貼りのパッドが用いられるからである。そのため、ガラスを取り付けるテーブルは可動に作られ、荒研ぎとスムージングが終わると、テーブルごとポリッシング装置の下へ移動し、装置全体を上昇させてポリッシングパッドをガラスに押し付けるようになっている。
最初期の研磨機は、テーブル側に往復運動を与え、ガラスを載せたテーブルを前後に動かす方式であった。あるいは逆に、テーブルを固定し、研磨具の方を前後に動かす方式もあった。その後、回転式の機械が導入され、その優位性を急速に実証した結果、現在では、事実上すべての板ガラスが回転テーブルで研磨されている。中には直径30フィートを超えるテーブルもある。研磨「ラバー」は重い鉄板、または鉄板を張った木箱であり、テーブルに比べるとずっと小径である。ラバー自体も回転し、その駆動には、下のテーブルの回転に伴う摩擦駆動を用いる場合と、別個の駆動機構を用いる場合がある。いずれにせよ、ラバーとガラスとの相対運動が、ガラス板のどの部分においてもほぼ同一になるように設計しなければならない。さもなくば、平面ではなく曲面が形成されてしまう。この条件は、ラバーの回転軸をテーブル直径上の適切な位置に配置することで満たすことができる。
研磨材は水で溶いたペーストの形でガラス上に供給される。一つの等級――すなわち粗さの段階――で必要な仕事を終えると、テーブル全体を水でよく洗い流してから、次のより細かい等級へと切り替える。最初の、もっとも粗い研磨材の役割は、表面の凹凸を削り取り、粗いながらも平面な面を作り出すことである。通常、この工程には鋭い砂が用いられる。ただしこの段階の初期には、テーブル上のラバーが、周囲より高く突き出した比較的小面積のガラス部分だけで支えられることがあるため、加えられる圧力は比較的軽く抑えなければならない。突出部分が削られ、ラバーがより大きく均一な接触面を取るようになると、より大きな圧力をかけられるようになる。
その後の細かい研磨材の各段階の目的は、粗研ぎで残った深いピット(くぼみ)を消し去ることだけである。より細かい研磨材は、前の段階の深いピットを、より浅いピットに置き換え、これを何段階か繰り返して、きわめて滑らかな「灰色面」が得られた時点で、スムージング工程が完了する。次に、回転テーブル(プラットフォーム)を駆動装置から切り離し、専用のレールに敷かれた車輪上を移動させて、ポリッシング装置の下へと持って行く。そこで新たな駆動装置に接続し、テーブルを持ち上げてガラスをフェルト貼りのポリッシングラバーに押し付けるか、またはラバー側を下げてガラスに接触させる。
ポリッシングラバーは、木または鉄製の大型板にフェルトを貼ったものであり、相当な力でガラスに押し付けられる。その運動様式は研磨ラバーのそれに非常によく似ているが、研磨材のかわりに、ルージュ(酸化鉄)と水の薄いペーストが供給される。ポリッシングに必要な時間は、スムージングの出来ばえに大きく左右される。条件がよければ、2〜3時間で灰色面を完全な鏡面に仕上げることができる。しかし、ガラスにやや深めのピットが残っていると、ポリッシングに必要な時間は大幅に長くなり、得られる光沢もそれほど完全なものではなくなる。
ルージュのようなポリッシング剤の作用機構は、今日では、最も細かい研磨材のそれともまったく異なる性格を持つことが認識されている。研磨材の粒子は、その硬さと鋭い縁によってガラスを微小に欠き取り、研磨の進行とともにガラスは一定量ずつ重量を失う。これに対し、ポリッシング工程では、ガラスの重量はほとんど減少せず、表面の微細な凹凸のうち、突出した部分のガラスが引き伸ばされて周囲に「塗りつぶされ」、ピットやくぼみが徐々に埋められていくと考えられている。ポリッシング剤の役割は、おそらく化学的作用と物理的作用の両方を含んでいるが、その結果として、ラバーの圧力と相まって、ガラス表層の分子に、粘性液体の分子に似たある程度の自由な動きを与える。これにより、ガラス表面の層は、ポリッシャーの作用のもとで流動し、静止した液体表面に特有のあの見事に滑らかな平面が形成されるのである。
このようなポリッシング過程の説明から、ポリッシングペーストの適切な濃度や、ラバーの回転速度と加圧力の適切な調整が、成功の鍵を握る理由が理解される。また、ガラス表面が摩擦によってわずかに温められ始めたときにこそ、ポリッシングが急速に進行するというよく知られた事実も、これで説明できる。
平均すると、板ガラスのスラブは、研磨・ポリッシング工程で元の重量の3分の1を失うと推定されている。これほど大量のガラスを削り取るには、多大な機械エネルギーが必要であり、そのため設備費と保守費も比例して大きくなる。この製造においては、完成した1平方ヤードあたりのガラスから削り取る必要のある重量を少しでも減らす、あるいはその除去コストを低減するあらゆる要素が、きわめて重要である。アニール炉から出てくる板の平坦さについてすでに触れたが、研磨やポリッシングの工程に関しても、なぜ無数の特許が出願されてきたのか、その理由は明らかであろう。近代建築における板ガラス使用の急速な拡大と、板ガラス価格の着実な低下とは、この分野における発明家と製造業者の努力が成功したことの証左である。
現在では、板ガラスは非常に大きなサイズで製造されており、長さ26フィート、幅14フィートに達するものもある。厚さも、普通用途には3/16インチ程度から、特殊用途には1½インチ以上までさまざまである。同時に、今日のガラス品質は、過去に比べてはるかに高い水準にある。この高品質は主として、原料の選別がより慎重になったことと、溶解・精製過程で生じる欠陥が大幅に減少したこと、そして仕上げ後のガラスに対する厳格な検査が行われるようになったことに起因する。検査では、暗室の中で板を立て、斜めから光を当てたランプの光線によって、あらゆる微細な欠陥を可視化する。発見された欠陥はチョークで印を付け、その後ガラスはこれらの欠陥を避けるように切り分けられる。
現代の板ガラス品質のうちで、おそらく最も注目すべき点は、その相対的に高い均質性であろう。第一章で見たように、ガラスは化学的に均質な物質ではなく、異なる密度や粘度を持つ多種類の物質の混合物である。この混合が十分に細かく行き渡っていないところでは、光線が異なる密度の媒質の境界で屈折するため、その存在はストリエとして現れる。特別な攪拌工程を経たガラスを除き、ストリエがまったく存在しないガラスはない。しかし、ガラス職人の腕は、これらをできる限り少なく、かつ微細に抑え、その位置と方向をできるだけ目立たないように制御することにある。板ガラスでは、この点がきわめて巧みに達成されており、通常の観察――すなわちガラスをその最も薄い方向から普通に覗いた場合――では、ストリエはまったく見えない。ところが、同じガラスを横方向から、すなわちエッジを研磨してその方向から透かしてみると、ガラス全体が無数のストリエで満たされているのがわかる。これらのストリエは一般に、研磨された表面に平行な、細い線状に走っている。
ストリエのこのような一定方向性は、一部は、ガラスが最初にスラブに成形される際、ロールの作用によってガラスがその方向に流されたことから生じるものである。しかし、この工程だけで、溶解直後にガラスに存在していた深刻な密度不均一が完全になくなるわけではない。したがって、良好な結果を得るには、ガラスの溶解過程の段階から、できる限りの均質性を確保するべく、最大限の注意を払わねばならないのである。
今日、おそらく板ガラスの大部分は、各種窓ガラス――とりわけ店舗のショーウィンドウ――として用いられている。この用途では、ガラスは研磨後に所定寸法に切断された時点で完成品となる。唯一の追加処理として、しばしば特定の曲率に曲げる加工が求められることがある。曲げられた板ガラスのウィンドウは、非常に頻繁に目にすることができる。この曲げ加工は、ガラスが完全に研磨された後、すなわち完成ガラスに対して行われる。ガラスは特別な炉で慎重に加熱され、柔らかくなったところで、所望の曲率を持つ石製または金属製の型に、そっと押し付けられる。この操作では、ガラスを傷つける危険が非常に大きい。型や炉床、またはガラスを扱う道具の表面に不規則な凹凸があると、そこへ接触した部分のガラス表面が荒れ、修復不能となるからである。また、あらゆる塵埃を完全に排除しなければならない。というのも、熱いガラス表面に落ちた微粒子は、そのまま表面に「焼き付け」られ、二度と取り除くことができないからである。小さな欠陥であれば、その後局所的な手磨きで取り除くことも可能であり、曲げ加工のように、完成ガラスを再加熱する必要がある場合には、この作業がほとんど必ず行われる。
板ガラスは、通常の意味での窓ガラスとしての用途のほかにも、さまざまな目的に用いられる。その中で最も重要かつ頻繁な用途は、上等な鏡の製造である。この用途では、ガラスの縁を面取り(ベベル)することが多く、鏡の表面にある程度のカット装飾を施すこともある。面取りは、専用の研磨・ポリッシング機で行われ、現在では多種多様な機械が用いられている。作業の本質は、ガラス板の角を削り取り、切断ダイヤモンドが残した粗い垂直の側縁を、表面から下の縁まで45〜60度の斜面で滑らかに磨いた面で置き換えることである。除去すべきガラス量は比較的少ないため、小型の研磨ラバーのみが用いられる。最新の機械の中には、高速回転するエメリーホイールやカーボランダムホイールを用いるものもある。これらの研磨ホイールは、最も硬い金属の研削にも成功していることから、ガラス工業での用途が、主として高級フリントガラスや「クリスタル」ガラスのカット作業にほぼ限定されているのは、やや意外に思われるかもしれない。
その理由は、おそらく、この種のホイールでは局所的にかなりの熱が発生するという事実にあるだろう。ガラスは熱伝導率が低いため、この効果はいっそう強調される。試みに、回転中のエメリーホイールにガラス片を軽く押し当ててみると、その接触部分が目に見えて赤熱してくることがわかる。この局所加熱は、ガラスの欠けやひび割れを誘発しやすく、これは実際に大きなガラス片に対してエメリーやカーボランダム研磨を試みたときに経験されるトラブルでもある。ただし、少なくとも一種の最新式面取り機では、作業全体を水中で行うことにより、こうした局所加熱の悪影響を完全に防いでいると主張されている。
鏡として用いるために、板ガラスにはしばしば銀引き処理が施される。この処理はきわめて大規模に行われており、今日ではガラス製造そのものとは本質的に別個の、独立した一大産業を成すに至っている。そのため、本書ではこの問題に立ち入らないことにしよう。ただし、ガラスそのものの性質と品質が、各種銀引き法の容易さと成功に大きく影響することだけは付け加えておきたい。普通の板ガラスは、どの種の銀引き被膜もきわめて容易かつ均一に受け入れる。しかし、この点はあらゆる種類のガラスに当てはまるわけではない。とはいえ、実用に耐えるだけの安定性を持つガラスであれば、おそらくどんな種類であっても、適切な銀引き法さえ選べば、満足な被膜を施すことができると言ってよいであろう。
着色ガラスを研磨板の形で用いる需要はほとんどないが、完全に不透明な板ガラス――黒色および白色――は特定の用途に用いられている。たとえば、店舗のファサード上部に掲げる看板板、カウンターや陳列棚の天板、さらには墓碑などにも、黒または白の研磨板ガラスが用いられることがある。ガラス製造の観点から見ると、これらの品物は、白または黒の不透明性を得るために原料に特定の添加物を加えている点を除けば、通常の板ガラスと変わるところはない。後の処理工程も、一般の板ガラスと同一であり、唯一の違いは、これら不透明ガラスが両面研磨を要求されることは稀であるため、その分だけ工程が簡略になるという点である。
粗ロールド、フィギュアード、研磨仕上げを問わず、あらゆる種類の板ガラスの用途には、かつて特定の制約が存在した。すなわち、火災時にガラス製の間仕切りがひび割れ、粉々に砕けて周囲に飛散し、自身の破壊以上の被害をもたらしながら、火の進行に対して無防備な通路を開けてしまうという問題である。この欠点を克服するため、ガラス内部に金網やワイヤメッシュを埋め込んだ製品が考案された。ガラスと金網とが適切に結合するように作ることさえできれば、この種の補強ガラス(ワイヤー入りガラス)は、きわめて有用な特性を示すはずである。たとえ何らかの原因――火災や強打など――で破損しても、ガラスはひび割れこそすれ、その破片はワイヤーメッシュがしっかりと保持し、板全体としては元の位置に留まる。したがって、飛散片による被害を起こさず、火災や、場合によっては侵入者に対する防御壁としても機能し続けるのである。このような材料の有用性は、すぐに広く認識されたが、その製造には大きな困難が伴う。
最大の問題は、ガラスと埋め込む金属線の熱膨張係数の差がかなり大きいことである。ワイヤーは、ロールや鋳造の際、赤熱したガラスの中に挿入される。その後、ガラスとワイヤーはともに高温から室温へと冷えていかなければならないが、その過程でワイヤーはガラスよりもはるかに大きく収縮する。その結果、即座に破損を生じるか、あるいはガラスを強い残留応力状態のまま残し、のちの自発的なひび割れを誘発するおそれがある。この問題を克服しようとして、熱膨張係数がガラスに非常に近いニッケル鋼合金線を用いる試みもなされた。しかし、実際には、この膨張係数の一致が確認されているのは、ごく限られた中程度の温度範囲にすぎず、合金を赤熱温度まで加熱した場合にもこの関係が保たれるという保証はない。
別の方向からの解決策としては、冷却時に生じる応力に対して十分に塑性変形し得る、きわめて延性に富んだ金属線を用いる方法がある。理論的には、銅線などはこの目的に適していると思われるが、銅の高価格が実用化を妨げる大きな障害となっている。
ワイヤーメッシュをガラスに埋め込む際には、もう一つの困難がある。それは、ガラスと金属との界面で良好な接着を得ることが容易ではないという点である。大半の金属は、加熱されるとかなりの量のガスを放出する。このガスが、金属がすでにガラスの中に埋め込まれてから放出されると、無数の気泡が生じる。その結果、ガラスは非常に見苦しい外観となるだけでなく、ワイヤーとガラスの付着も著しく弱くなる。この問題は、最初の熱膨張の問題ほど深刻ではなく、金属表面を清浄に保ち、ワイヤー内部に含まれるガスをあらかじめ加熱で追い出すことで、かなりの程度まで解決できる。
とはいえ、総じて見れば、ワイヤー入りガラスは、いまだ発展途上の製品とみなすべきであろう。製造法がさらに改良されれば、この材料にはきわめて大きな可能性が秘められていることは疑いない。
第十章
シートガラスおよびクラウンガラス
前章では、窓開口部のグレージングなどに用いられる、もっとも粗末なものからもっとも完全なものまでの平板ガラスの製造法を扱った。これから取り扱う製品は、その中間的な性格をもつものであり、シートガラスは、研磨板ガラスの多くの性質を備えているが、きわめて重要な性質のいくつかを欠いている。すなわち、シートガラスは、観察者がほとんど乱れなく、あるいはまったく乱れなく、その向こう側を見ることのできる程度には十分透明であり――最良の種類のシートガラスでは、その不規則さが引き起こす光学的ゆがみはきわめて小さく、ガラスはほとんど研磨板ガラスと同じくらい完全に見える――一方、ごく一般的な窓のグレージングに用いられる安価なガラスでは、見える物体に非常に不快で、時にはきわめて滑稽なまでの歪みを生じさせるような板がしばしば用いられている。興味深いことに、こうした劣悪なガラスの使用が、かなり良質な住宅においてさえ何の異議もなく容認されていることである。一般大衆は、この点について驚くほど無頓着であるように見える。
別の観点では、シートガラスは板ガラスに対して大きな利点を持つ。それはシートガラスの方がはるかに軽い――少なくとも、より薄く、したがってより軽く作ることができる――という点である。しかしこの利点には、それに伴う不利益がある。つまり、シートガラスは通常板ガラスよりもずっと弱く、そのため、はるかに小さな寸法でしか用いることができない。とはいえ近年では、比較的薄い板ガラスの製造が大いに進歩し、今日ではほとんどあらゆる建築用途に十分薄く軽い研磨板ガラスを得ることが可能になっている。最後に、シートガラスのもっとも重要な利点であり、多くの場合に板ガラスよりも優先的に使用されることを保証している唯一の利点は、その安価さである。普通のシートガラスの価格は、同じ寸法の板ガラスのおよそ 4 分の 1 である。
シートガラス製造用の原料は、砂、石灰石、ソルトケーキ(硫酸ナトリウム)、およびヒ素、酸化マンガン、無煙炭またはコークスといった少数の補助物質からなり、これらは工場ごとの慣行によってかなり異なる。これらの材料については、一般的な説明をすでに第三章で行ったので、ここでは、シートガラス製造者が、明らかに相反する二つの考慮事項を念頭に置かねばならないことを付け加えるだけでよいであろう。一方では、シートガラスに要求される色と純度の条件から、原料の厳格な選択と、少しでも疑わしいものの排除がきわめて望ましい。他方、この製品に関するもっとも重要な商業的考慮は、その安価さであり、低い販売価格を維持しつつ利潤を上げるためには、製造者は高価な原料を厳しく排除しなければならない。
このため、ベルギーやドイツの一部のように、工場近くに純粋な砂の大鉱床を有するシートガラス工場は、そうでない土地にある工場に比べて非常に大きな利点を持つ。というのも、砂はガラス全体のきわめて大きな割合を占めており、運賃がしばしば砂そのものの価格を上回り、場合によってははるかに上回ることさえあるからである。同じことは、石灰石やソルトケーキのような他のかさばる材料についても、程度の差こそあれ当てはまる。しかしこれら二つの材料は、シートガラス製造に十分な品質を備えたガラス用砂に比べると、一般にもっと容易に、そして適正な価格で入手できる。
普通の「白色」シートガラスは、現在ではほとんど例外なくタンク炉で生産されており、そのために用いられる炉には非常に多くの種類が存在し、また推奨されてもいる。これら各種炉の構造を詳説し、それぞれの相対的な長所短所を論じることは、本書の範囲を超えるであろう。ここでは、もっとも重要な形式のシート用タンク炉の主要な特徴だけを簡単に概説するにとどめる。
シート用タンク炉は、いくつかの重要な点で互いに異なっている。それは、タンクが一つ、二つ、あるいは三つの、多少とも分かれた炉室に区分されているかどうか、溶融ガラス浴の深さと炉室天井(クラウンまたはボールト)の高さ、ガスと空気を炉内に導入する開口部(ポート)の形状と位置、それに伴って決まる炎の形と分布、そして最後に、排ガスから熱を回収して炉へ戻すための蓄熱装置(レジェネレータ)の位置と配置などである。
これらの主要点を順に見ていくと、ある種のシート用タンク炉では、炉全体が一つの大きな炉室となっていることがわかる。この形式の炉では、ガラスの溶融と精製(ファイニング)の全過程がこの単一の炉室内で行われる。原料を溶かさねばならない高温側の端から、ガラスを吹き竿に巻き取れるだけの粘稠さを保たねばならない低温側の端まで、炉温を適切な形で勾配をつけて制御しようというわけである。だが、このような単一室型炉における温度制御は、炉が分割されている場合ほど完全なものにはなりえないことは明らかである。
実際のシートガラス製造では、このような分割炉の方がはるかに多く用いられているが、その分割方法と程度については、工場ごとに大きな差がある。極端な形式では、ガラスはほとんど三つの独立した炉を順々に通過し、それぞれの炉は比較的小さな開口部によってのみつながり、その開口を通ってガラスが流れ移るようになっている。もし熱と溶融ガラスの作用に無期限に耐えうる材料で炉を築くことができるならば、この極端な形式こそもっとも優れたものとなるだろう。というのも、この形式では炉の操業者は、溶融炉室から精製炉室へ、また精製炉室から作業炉室へとガラスが流れる際、溶け残りの原料が精製炉室へ流入することのないよう、また十分に精製されていないガラスが作業炉室へ出ていくことのないよう、ガラスの流れを制御できるからである。
しかし現実には、このような極端な分割は、大量の炉壁の存在を伴い、それらが熱と溶融ガラスの両方に曝されることになるため、非常に重大な不利を招く。すなわち、炉の建設・保守・更新に要する費用が大きく増加し、また炉壁の侵食によるガラス汚染の危険も増大するのである。このような理由から、もっとも成功しているシートガラス用炉は、構造上、単純な開放型炉と完全に分割された炉との中間に位置しているのは当然のことである。ある場合には、作業炉室が、溶融・精製炉室と、ガラス面より上方に設けられた横方向の壁によって仕切られている。この横壁のすぐ下、溶融ガラス中には、浮遊する耐火粘土ブロックが配置されており、これが仕切りを補完するとともに、炉内を流れてくる表面不純物を捕えて留める役割を果たす。
タンク内ガラスの深さについても、実際の運転慣行は大きく異なっている。深い浴を用いる利点として挙げられるのは、炉底の耐火粘土がより低い温度に保たれるため、ガラスからの侵蝕が少なくなり、この部分の炉が多年にわたって使用に耐えるようになるということである。他方、適度な温度の巨大なガラス塊が存在すると、その部分で結晶化、すなわち「失透(デヴィトリフィケーション)」が生じやすくなり、その領域から上方の高温ガラスへと広がって、ガラスを汚染するおそれがある。また、何らかの理由でタンクの内容物の一部または全体を取り除く必要が生じた場合、深い浴を持つタンクでは、その大量のガラスが大きな障害となる。しかし総じて言えば、近代の慣行は、より深い浴の採用を支持しているようであり、2 フィート 6 インチ(約 75 cm)あるいは 3 フィート(約 90 cm)の深さがきわめて普通であり、4 フィート(約 1.2 m)に達するものも用いられてきた。
炉天井(クラウンまたはボールト)の適切な高さの問題は、タンク炉を適正に操業する上でかなり重要である。もっとも完全な燃焼を得るためには、現在では大きな自由炎空間が必要であると考えられている。初期のガラス溶解タンクは、初期の製鋼炉と同様、非常に低いクラウンで造られ、炎を溶融ガラス表面に押しつけるようにしていた。これは、炎とガラスとを直接接触させて直接加熱を強めることを目的としたものである。しかし近代の傾向は、明らかにより高いクラウンの方向に向かっており、ガラスの加熱を伝導ではなく主として放射によって行わせようとしているのである。ある限度までは、炎空間を拡大することによって、作業の清浄さが増し、燃料の一定の節約がなされることに疑いはないが、炉天井が過度に高くなれば、経済性はかえって低下する。ガラス面からクラウン頂部まで 6 フィート(約 1.8 m)に達する炎空間が用いられた例もあるが、より一般的な高さは 2〜5 フィート(約 60〜150 cm)の範囲である。
予熱したガスと空気を炉内に導く開口部(「ポート」)の形状も、炉によって大きく異なる。ある場合には、ガスと空気を炉に入れる直前の小さな燃焼室内で合流させるが、他の場合には、ガスと空気は完全に別個の開口から炉内に入り、炉室内で初めて混合される。後者の方式では、強い還元炎が生じやすく、ソルトケーキの還元には有利であるが、燃料消費の点から見れば決して経済的ではない。他方、前者の方式のポートでは、炉に入るガスと空気を適切な割合で十分に混合させることができるため、炉内にほとんど任意の性質の炎を作り出すことが可能であり、一般により酸化性の炉内雰囲気を作りやすい。細部には種々の変形があるものの、この後者型のポートは、今日ではシート用タンク炉でほとんど例外なく採用されている。
近代のタンク炉はすべて、炉から出る高温燃焼ガスから熱を回収し、その熱を利用して炉に入るガスと空気を予熱するという「蓄熱(regenerative)」原理に基づいている。しかし、この原理を実現する手段は、設備の種類によってかなり異なっている。おそらくもっとも広く用いられている炉形式は、シーメンスの原始的な蓄熱炉の直接の子孫であり、四つのレジェネレータ室を備え、ガスと空気の流れを交互に切り替える仕組みを持つ。これにより、二つ一組の室が、交互に排ガスの熱を吸収し、つぎにはその熱を、片方の室を通る入気(空気)と、他方の室を通る入炉ガスに戻すようになっている。この種の炉では、レジェネレータ室は通常溶解炉の直下に設けられ、耐火レンガで造られ、その内部は積み上げられたレンガで満たされている。これらレンガが、熱を吸収し、また放出する役割を果たす。
この型の炉のもっとも近代的な形式では、ガス用レジェネレータは完全に省略され、空気のみがレジェネレータで予熱される。その一方で、ガスは発生炉から直接炉内に送られ、燃料のガス化の際に発生炉で生じた熱を携えてくる。この構成は、疑いなく経済的ではあるが、とくにシートガラスの製造においては重大な不利を伴う。すなわち、ガスが発生炉から直接炉内に噴き込まれるため、ガスは大量の塵や灰を運び込むが、旧来の炉型式のように長い煙道内でそれらを沈降させる機会がないのである。
一般的な蓄熱炉型式におけるもっとも深刻な不利は、レジェネレータ装置そのものがかなり大きな寸法を必要とする点に由来する。そのため、建設費の高い構造となり、多くのスペースを占有する。また、排ガスと入気とを交互に流すために、バルブの切り替え操作を周期的に行う必要があり、炉の運転に従事する作業員に特別な注意を要求するとともに、高温と埃という機械装置にとって好ましくない条件の下で、バルブ機構の建設と維持を行わなければならない。
こうした不利のすべてが、いわゆる「レクペレーティブ(recuperative)炉」と呼ばれる種々の炉型式によって、かなりの程度まで克服されていると主張されている。これらの炉では、ガス流の方向切り替えは行わず、レジェネレータ室は「レクペレータ」に置き換えられる。レクペレータは、耐火レンガで構築された塊を、互いに直交する二方向に貫通する多数の小さな煙道またはパイプから構成される。片方の方向に走るパイプ内を排ガスが煙突へ向かって流れ、もう一方の方向のパイプ内を、入炉ガスと空気が流れる。二つのガス流のあいだで、耐火レンガ内部を通じて熱の移動が起こり、かくして排ガスは連続的に冷却される一方、入炉ガスは加熱される。この熱移動は、蒸気機関のサーフェスコンデンサ内で起こる熱交換に、ある程度類似している。
理論的には、これは独立したレジェネレータ室を用いる方式よりずっと簡単な構成であり、実際にもある程度まで有利であることが見いだされている。しかし、この方式には、レクペレータの材料として耐火レンガを用いざるをえないことに起因する、いくつかの欠点が存在する。第一に、耐火レンガの熱伝導率はあまり高くないため、十分な効率を得るには、大型のレクペレータが必要となる。また個々のパイプの内径は小さく抑えなければならないが、全体としての通過断面は、ガスが比較的ゆっくり流れられるよう十分な大きさでなければならない。次に、耐火レンガは、高温に長時間さらされることで、反り・収縮・亀裂などを生じやすい。その結果、一方のパイプ群から他方のパイプ群へガスが漏洩するのを防ぐことが難しくなる。もし漏洩が軽度にとどまるなら、燃焼可能なガスの一部が煙突へ直接逃げることと、炉へ入るガスが、排ガス側からの燃焼生成物によって希釈されることといった影響が出るだけである。これはもちろん炉の効率を大幅に低下させ、炉温を所定水準に保つためには燃料消費を増やさざるをえなくなる。
しかし、もし漏洩がさらに深刻になり、その性質いかんによっては、入炉ガスと空気が煙道内で混合するような事態になれば、重大な爆発を引き起こすおそれがある。これらの点から、レクペレーティブ炉は、構造的にはやや簡単で安価ではあるものの、むしろ従来型の蓄熱炉よりも、いっそう注意深い保守管理を必要とするという結論が導かれる。
本国(英国)でシートガラスを生産するタンク炉は、通常、月曜日の早朝から土曜日の夜遅くまで連続運転され、日曜日には吹きガラス作業を中止するものの、炉温自体は維持される。一方、大陸、とくにベルギーでは、これらの炉に関する作業は日曜日にもまったく中断されない。英国内のやり方は、望ましい慣行であるかもしれないが、同じ能力を持つ炉の出力を、およそ 10 パーセントほど不利にしていることになり、その際、作業経費はほとんど軽減されない。
イギリスのガラス工場におけるシートガラス吹きの作業は、一般に三人一組で行われる。すなわち「パイプウォーマー(pipe-warmer)」「ギャザラー(gatherer)」「ブロウアー(blower)」である。ただし、仕事の正確な分担は、事情に応じて変わる。パイプウォーマーの仕事は、まず吹き竿を、副炉から取り出すことにある。吹き竿は、厚い「鼻」端部をあらかじめ温めておくために、事前にこの副炉へ入れておかれている。シートブロウアーのパイプ自体は、長さ約 4 フィート 6 インチ(約 1.35 m)の鉄管であり、一端には木製の外套(柄)とマウスピースが備えられ、他端はがっしりとした円錐状に肥厚し、丸い先端を持つ。
パイプウォーマーは、パイプをタンク炉の作業開口へ差し入れる前に、熱い端部にスケールや汚れが付着していないかを確かめ、パイプ内に閉塞がないかどうか、息を吹き込んで検査しなければならない。その後、パイプの根元(柄側)を炉の開口部に置き、溶融ガラスとほぼ同じ温度にまで温める。この状態になったら、パイプをギャザラーに渡すか、あるいは通常は若者であるパイプウォーマー自身が、さらに一段階先の作業まで行ってから、より熟練した作業者に手渡すこともある。その次の段階とは、パイプに最初のガラスを巻き取る(最初の「ギャザリング」を取る)ことである。
そのために、熱くなったパイプの鼻部を溶融ガラス中に差し入れ、1~2回ゆっくり回転させてから引き上げる。この際、パイプが持ち上がるとガラスが糸を引くが、その糸状の粘稠ガラスは、作業開口前方に溶融ガラス上を浮いている耐火粘土製のリングにこすりつけて切り取る。こうして、パイプ先端には少量のガラスが残って付着する。この第一のギャザリングは、その後かなり固まるまで冷却され、その間、パイプ全体を回転させて、この最初のガラス塊がきれいな球形を保つようにする。同時に、パイプに弱く息を吹き込み、ガラス塊の内部にごく小さな空洞をつくることで、パイプの孔がふさがれないようにしておく。
第一のギャザリングを構成するガラスが十分に冷え、扱える程度に固まったら、ギャザラーは二度目のギャザリングをその上に取りに行く。パイプを再び炉内に差し入れ、徐々に溶融ガラス中へ浸していくが、このとき、すでにパイプについているガラス層と、新たに取り込む高温のガラス層とのあいだに空泡が入り込まないよう、きわめて注意深く操作しなければならない。熟練したギャザラーは、パイプをガラス中へ下ろす際に徐々に回転させることで、この空泡の発生を防ぐ。こうすることで、二つのガラス層は、ゆっくり「転がりながら」互いに接触し、間に挟まれた空気が逃げる時間を与えられるのである。パイプを完全に浸したのち、数回回転させ、それから引き上げ、再び糸状のガラスを切り取る。
パイプ端部のガラス塊は、先ほどよりもかなり大きくなっており、ほぼ球形に保つために、より注意深い操作が必要になる。ここで再び冷却工程が続くが、この間パイプは、水でなみなみと満たされた鉄製の溝の上に渡して置かれる。この溝はパイプ自体を冷却する役目を果たし、同時に、パイプを溝の上で前後に転がすことで、簡単に回転させることができる。ガラス塊全体が、急激に変形するおそれなく扱える程度まで再び冷えたら、第三のギャザリングが、先ほど第二回目を取ったのとまったく同じ方法で行われる。必要なガラス量が多い場合や、ガラスそのものが非常に高温で流動性が高く、一度のギャザリングで付着するガラス量が比較的少ない場合には、さらに四回目、あるいは五回目まで繰り返すこともある。しかし、パイプと付着ガラスの全重量は、ギャザリングのたびに増加するため、作業は次第に重労働となる。また、ガラス塊がより大きな球面をなすようになると、高温のガラスはより流れ落ちやすくなるので、ギャザリングを「落として」しまわないよう、いっそう高い熟練が要求される。
これらギャザリング作業をどれだけ注意深く、熟練して行うかが、出来上がるシートガラスの品質をかなり大きく左右する。ギャザリングの形が少しでも不規則であれば、シートの部分によって厚みが変わるのは必然であるし、また、注意を欠いたギャザリングは、気泡や「ブリスター(blister)」その他の模様を生じさせる。冷却途中の段階では、ガラスはあらゆる種類の塵や汚れから保護されなければならない。というのも、熱いガラスの上に落ちる小さな微粒子は、そこでガスを発生して微小な泡となり、選別室でははっきりと目につくものになるからである。
最後のギャザリングを取り終え、その塊が十分冷えて、落下の危険なく持ち運べるようになると、ガラスはおおよそ球形の塊となり、その中心付近にパイプの鼻端がある状態になる。次の段階では、このガラス塊の形を予備的に整え、ガラスの大部分がパイプの先端よりも外側へ出るようにする。その後、パイプの先端直下の位置に、所要の径を持った筒状のガラスを吹き出すための、薄くてより冷たい「肩」部分を形成する。この作業は、ガラスを図 12 に示すような形へと順次変形させながら進められる。成形には、特別な形をした木製ブロックやその他の成形具を用い、その中でガラスを回転させ、また吹き広げる。最終的に得られる形は、ガラスの大部分を下端部に含むずんぐりとした筒であり、その上部は、前述のように薄くてより冷たい首・肩部分を介してパイプに接続している。
[図 12.—シートガラス用円筒成形の初期段階。]
この段階に達すると、パイプとその先端に付いたガラス塊は、本職のブロウアーに引き渡される。この作業者は、「ブロウイングホール(blowing holes)」と呼ばれる小炉の前に設けられた特別な作業台の上で仕事をする。ただし、工場によってはこれら小炉を使わず、溶解炉の前に直接作業台を設けるところもある。シートブロウアーの作業台は、吹き竿と円筒を腕いっぱいに振り回すための空間を確保するよう、適当な深さのピット(穴)の上または脇に設けられたプラットフォームである。
吹きの工程そのものは、実のところそれほど多くの「吹く」という行為を必要とせず、むしろ重力と遠心力の作用に依拠して、ブロウアーが開始時に持っている短い円筒から、細長い大きな円筒を形成する。作業は、円筒の厚い下端部を加熱炉内に差し入れて十分に熱し、その後炉から取り出して、作業ピット内で振り子運動をさせることによって行われる。こうして、円筒は自重で引き伸ばされていく。潰れようとする傾向は、必要に応じて口から空気圧を加えることで抑えられ、また時には、パイプをその軸のまわりに急速に回転させることもある。このような円筒下端部の再加熱は数回繰り返され、最終的にガラスは全体にほぼ均一な厚さをもつ長い円筒となる。ただし、下端は丸くドーム状に閉じている(図 13 参照)。この丸い端部を、次に開かねばならない。
[図 13.—シートガラス吹きの後期段階。]
比較的薄く軽い円筒の場合、この端部の開口は次のようにして行う。まず、パイプのマウスピースを親指でしっかり塞ぎ、完全な気密状態にする。そのうえで、円筒の先端をブロウイングホール内で加熱する。熱によって、円筒端部のガラスが柔らかくなると同時に、内部の空気が大きく膨張するので、その結果として円筒端部が破裂して開く。その後、円筒端部のガラスが非常に柔らかくなって、波打ったカール状を呈するまで、さらに少し加熱を続ける。そこでブロウアーは円筒を炉から引き出し、作業ピット内で円筒を垂直に下向きに保持しつつ、その長手軸のまわりに高速回転させる。すると、端部の柔らかいガラスは遠心力によってただちに外側に開き、ブロウアーは、柔らかいガラスが円筒残部の真の延長となるよう十分に開くまで回転速度を高める。この位置でガラスを静置して固化させる。
厚く重い円筒の場合、端部を開く最初の操作は別のやり方で行われる。助手が鉄棒に少量の熱いガラスを取り、その塊を円筒の閉じた端の中央に置く。この熱いガラス塊の熱によって、円筒のガラスが柔らかくなり、作業者は特別な形の鋏を用いて、この柔らかくなった部分から小さな円形の片を切り取ることで、端部に穴を開ける。開いた端部を真っ直ぐに広げる最終操作は、軽い円筒の場合とまったく同じ方法で行われる。
完成した円筒は、まだパイプに付いたまま、吹き場から運び出され、木製の棚の上に横たえられる。その後、ブロウアーは冷たい鉄片を手に取り、円筒とパイプとをつなぐガラスの首部に当てて亀裂を生じさせ、次いで短い鋭い一振りで、パイプを完全に円筒から切り離す。少年がパイプを引き取り、それを冷却台のスタンドに持って行き、そこで付着ガラスが自然に割れて落ちるのを待つ。その後、パイプは再びパイプウォーマーの元に戻され、次の使用のために加熱される。
木製の棚の上で、円筒は一定程度まで冷却され、その後、図 13 に見られる円筒上端の首・肩部分が取り除かれる。この作業は少年が行い、軟らかい熱ガラスの糸を、切り取りたい位置で円筒のまわりに一周巻き付けることで行われる。この熱ガラスの糸は、局部的な強い加熱を行うためだけに用いられ、糸自身は十分に固くなったら押し外される。その後、糸が当たっていた部分に、冷たい、あるいは湿った鉄を当てる。通常、この操作をすると、熱線に沿って円筒の周りを一周する亀裂がただちに走り、「キャップ」部分が取り除かれる。こうして、両端が開いた均一な円筒形のガラスが得られるが、これを平板に開いて、初めて私たちにおなじみのシートガラスの形にしなければならない。
開板工程の第一段階は、円筒の「縦割り(スプリッティング)」である。そのために、円筒は専用の台へ運ばれ、そこに水平に横たえられる。ここで、円筒の母線(縦方向の直線)に沿ってひと筋の亀裂または切れ目を入れる。この操作は、熱した鉄棒を当てて、その後必要に応じてわずかに湿らせることで行うか、あるいは、円筒の内側に沿って、重いダイヤモンドを巧みに引き下ろして切り線を付けることで行うこともできる。
ここまでの工程からわかるように、ガラスはまだ本格的なアニール(焼きなまし)を受けていない。ただし、ブロウアーは、円筒が棚の上で自己の内部応力によって割れない程度には、「吹き」の工程の間にも、できるかぎり急冷を避ける形で「アニール」することが求められている。この程度の焼きなましであれば、内部応力による破壊は防げることが多い。しかしガラス表面は、特に外側が、急冷されたため、明らかに硬化している。そのため――このほかにも理由はあるが――縦割りの切れ目は、常に円筒の内側から入れられる。
円筒の外側と内側の冷却速度の差は、さらに別の影響をもたらす。それは、円筒を割った瞬間に顕在化する。外側がまだ内側が比較的柔らかい間に硬化したため、冷えた円筒では外層のガラスは圧縮状態、内層は引張状態にある。ところが、円筒に縦に切れ目を入れると、これらの応力はある程度解放され、内層は自由に収縮し、外層は自由に膨張できるようになる。その結果、円筒の曲率は増し、直径はわずかに小さくなって、切れ目の両縁が互いに重なり合う。もし円筒がやや急激に冷却されていたり、ガラス自体の膨張係数が高かったりすると、この内部応力の解放はきわめて顕著となり、円筒一本一本が、小さな爆発音を立てて割れることもある。内部応力がさらに激しい場合には、縦割り線を入れたとたんに円筒全体が粉々に飛散することさえある。
シートガラス製造における次の段階は、平坦化とアニールである。そのために、縦割りされた円筒は、通常「リア(lear または lehr)」と呼ばれる特別な炉へ運ばれる。ここで、まず円筒は鈍い赤熱状態まで加熱される。その後、円筒は一枚ずつ、ガラスが柔らかくなるのに十分な高温が保たれた炉室内の、平滑な石板または鉄板の上に持ち上げられる。ここで、円筒は割れ目を上にして置かれ、木製の道具を用いて、ガラスをゆっくりと左右に広げていく。最終的には、「ラグル(lagre)」と呼ばれるこの平板の上に、完全に密着した平らな板状へと押し広げられる。
この平板から、いまやシート状となったガラスは、平坦化炉と連通したアニール炉へ送られる。ここも他の種類のガラスについてすでに述べた連続式アニール炉と同様、長いトンネル状で、一端は平坦化炉と同じ温度、他端はほぼ室温に保たれている。シートは、このトンネル内を一定の低速で移動していくが、その移動は、格子状の鉄棒からなるグリッドの働きで行われる。グリッドは一定の間隔ごとに持ち上がってシートを炉床からわずかに浮かせ、短い距離だけ前進させた後、再び炉床上にシートを下ろす。グリッド自体は、その後炉床の下に設けられた溝の中を後退して元の位置に戻るため、シートの位置には影響しない。
アニール炉を出たシートガラスには、炉内の燃焼生成物とガラス自身との相互作用から生じた白い堆積物が付着していることがある。この堆積物は、単純な機械的摩擦によっても取り除けるが、通常は、弱い酸浴にガラスを浸す方法がとられる。酸が白い膜を溶解し、ガラスは透明で輝く状態となり、使用に供することができる。
アニール炉から出た完成シートは、選別室へ運ばれ、そこで良好な光源を背に黒い背景にかざして検査され、用途別に選別される。
シートガラスに見られる欠陥は、原料から完成シートに至るまでの長く複雑な工程を思い起こせば予想されるように、きわめて多種多様である。そのすべてを技術用語とともに列挙する必要はないだろうが、主要で頻度の高いものについて説明しておくことは有益である。欠陥は、その発生源となる工程段階に応じて分類するのが便利である。
第一の分類は、炉の作業側(ワーキングエンド)におけるガラスの状態から生じる欠陥である。このうちもっとも重要なのは、「ストーン(stones)」と呼ばれる白色不透明の包有物である。これは、原料中に不融性不純物が混入していた場合や、溶解温度や時間が不十分で原料の一部が溶け残った場合、あるいは炉内張り(耐火レンガ)の状態が悪く、小さな耐火レンガ片がガラス中に混入した場合など、炉内部のさまざまな原因から生じうる。さらに、炉の一部が低温に保たれすぎていたり、ガラス組成が不適切であったりすると、ガラス中で結晶化が起こり、白い結晶性の斑点が生じ、これが最終的なシート中に入り込むことがある。
炉内ガラスの状態から生じるもう一つの欠陥は、「シード(seed)」と呼ばれる無数の小さな気泡である。これらはブローイングの過程で引き伸ばされ、とがった楕円形となり、シートガラスから完全に消し去ることはまれである。これらの気泡は、炉内における精製(ファイニング)の不十分さ、またはギャザリングの最中にガラスが微細な塵粒と接触することによって生じる。
ガラスそのものに起こりうる別の欠陥としては、色が濃すぎる場合が挙げられる。これは、ある程度の大きさのシートを側面から観察してはじめてよくわかる。というのも、普通のシートガラスは、通常の見方で透かしてみるだけでは、ほとんど無色に見えるからである。この事実から、実際の用途、すなわち光が常に一枚分の厚さだけを通過するような場合においては、わずかな色の違いは、他の欠陥に比べればごく小さな問題とみなすべきであることがわかる。
ギャザリング工程もまた、別の欠陥群の原因となる。ギャザリングに起因する欠陥のうち、たとえば汚れたパイプを用いることから生じるものなどは、選別室で決して合格品として通されることがないため、ガラス使用者にとってはほとんど問題とならない。それでも、使用されうるガラスに痕跡として残る欠陥としては、「ブリスター(blisters)」と「ストリング(string)」がもっとも重要である。ブリスターは、ギャザリングを重ねる際に層と層のあいだに空気が入り込むことで生じる、やや大きめで扁平な気泡である。「ストリング」は、あらゆるシートガラスにきわめて一般的に見られる欠陥である。その一部は、ガラス自体の不均質性から生じることがある。もしガラスが、密度と粘度の異なる層からなっていると、ギャザラーはそれらをひとまとめに巻き取り、最終的には円筒全体、したがってシート全体にわたって走る厚い筋(リッジ)を形成する。こうしたストリーエ(striæ)は、ガラス内部の不均質性に由来し、フリントガラスではよく見られるが、シートに用いられるソーダ石灰ガラスにも皆無ではない。
しかし、仮にガラスができる限り均質であっても、ギャザラーはなお、耐火粘土製リングの端近くからガラスをすくい取ることによって、こうしたストリーエを生じさせることがある。ガラスは常に耐火粘土に対して化学的に作用し、その表面に、炉内容物全体よりはるかに多くのアルミナを含む厚いガラス層を形成する。このような層は、シート用タンクの各リング表面に形成されるが、ギャザリングをリングの中央付近から行うかぎり、この粘稠でアルミナに富んだガラス層は動かされずに残る。しかし、ギャザラーがパイプをリングの側面に近づけすぎると、ガラスはこの異なる層の一部をギャザリング上にひきずり出すことになる。このガラスは、シートのあちこちに厚い筋やストリーエを形成してしまう。ギャザラーが一般に責任を負うべき別の欠陥は、一枚のシート内で厚さが不均一になることである。ただし、この欠陥は、ブロウアーの操作によっても生じうる。
吹きの工程そのものにおいても、さらに別の欠陥が持ち込まれる。とくに問題となるのは、工程のある段階で生じた小さなガラス片が、円筒の熱い表面に落ちて付着してしまう場合である。これらの片は、そのまま円筒に融合し、永久的な突起や筋として残る。より重大で、かつ頻度の高い欠陥は、円筒自体の形崩れである。ブロウアーの手を離れたガラスが、真円筒以外の形をしていると、平坦化炉で完全な平板に広げることは不可能になる。実際には、円筒が一方の端で他方より太くなっていたり、さらに悪いことには、膨らみとくびれが交互に現れる不均一な直径を持っていたりすることがある。このような円筒をラグルの上で広げようとしても、完全に平らにすることはできず、あちこちに凹みや盛り上がりが残り、シートの平坦性を損ない、使用時に光の規則的な通過を妨げる。
最後に、平坦化の工程自体も、それ固有の欠陥を生じがちである。もっとも一般的なのは、平坦化用の道具が残す擦り傷である。実際、すべてのシートガラスについて、その表面を注意深く観察すれば、平坦化用の道具がどちら側で使われたかを見分けることができる。シートガラスには、必ず一方の面が他方よりも明らかに光沢があり、表面状態のよい側が存在し、そのよい側とは、平坦化の際にラグルの上に接していた面である。他方、ラグル自体が完全でなかったり、その上に異物が載っていたりすると、その面にはそれに対応した傷や跡が残る。
以上述べてきたシートガラス製造法の説明は、一つの代表的な工程を概略したものであるが、実際にはほとんどすべての段階が、工場ごとの慣行や条件に応じて種々の変形を受けうる。ここでは、一般的に重要性の高い一、二の特別な変形について述べることにする。
まず溶融工程についてである。普通のシートガラス生産には、タンク炉がほとんど完全にポット炉に取って代わったとはいえ、特別な事情のもとでは、ポット炉にもなお優位を保ちうる分野が残っている。たとえば、ある特別用途のために、ガラスそのものに起因するすべての欠陥――とくに色に関する欠陥――が、可能なかぎり少ないシートガラスが要求される場合には、ポットでの溶解が有利であることがわかっている。きわめて特別な用途のためには、被覆(フード)付きのポットが用いられることさえある。このような特別な用途向けには、原料から硫酸ナトリウムを完全に除き、その代わりに炭酸ナトリウム(ソーダ灰)を用いることが多い。着色シートガラスの製造においても、ガラスを全体に着色する場合であれ、薄い着色層で覆う「フラッシュ(flashed)」ガラスを作る場合であれ、タンク炉よりもポット炉での製造が一般にとられている。ポットの場合の方が、ガラスの正確な性質と組成を遥かに良く制御できるからである。
吹きの工程もまた、実際には多くの変形を持つ。そのもっとも重要な差異は、円筒の形状と寸法に関するものである。イギリスおよびベルギーの工場では、円筒の長さが最終シートの長辺となり、円筒の直径が短辺となるような寸法が選ばれる。一方、ドイツの一部では、その逆の方式が採られており、円筒をより短く、かつ非常に太く吹き上げ、その周長が最終シートの長辺となるようにしている。しかしこの後者の方法には重大な欠点があることが、ほぼ一般に認められている。ただし、この方法により、いくぶん完全に近いガラスが得られるとも主張されている。
「ブロウンプレートガラス(blown plate glass)」として知られる特別な種類のガラスの製造には、この短く太い円筒を吹く方法がいまなお採用されている。これは非常に純粋なシートガラスであり、厚く小さなシートとして吹かれ、その後で板ガラスと同様に研磨される。この用途では、厚さが非常に大きいため、長い円筒を吹くことが非常に困難であり、やむなく後者の形式が採られているのである。これに対し、もっとも良質の普通シートガラスを研磨して作るイギリスの「パテントプレートガラス(patent plate-glass)」では、ここまで詳細に説明してきた通り、長く細い円筒からガラスを吹き上げる方式がとられている。
前述の吹き工程は、わずかな変更を加えることで、普通シートガラスの平滑な面とは異なる表面を持つガラスをも作り出すことができる。たとえば、フルーテッドガラス(溝付きガラス)や「マフド(muffled)」ガラスは、ほぼ同じ方法で製造される。ただし、それぞれのガラスに特徴的な溝模様や不規則な表面パターンは、工程の比較的初期段階で円筒表面に押し付けて刻み込まれる。
ここまでの概略説明から明らかなように、シートガラス製造法は、長く、複雑で、労力を要する工程であり、高度な熟練労働を必要とし、ごく単純な形――すなわち平板――を得るために、まずはるかに複雑な形――閉じた円筒――を作らなければならない。このため、直接機械的手段によって、少なくとも普通シートガラスと同等の「火磨き(fire polish)」を持つ平板ガラスを製造する方法を見いだそうと、多くの発明家が取り組んできたし、今なお取り組んでいることは、少しも不思議ではない。
初期の発明家たちはほとんど例外なく、ロール成形法の改良を通じて、満足すべき表面を持つロールシートを得ようと試みてきた。われわれはすでに、こうした試みがなぜ成功してこなかったのか、またそれが今後も成功を収める見込みが薄い理由を述べた。これとはまったく異なる路線を採ったのが、ジーヴェルト(Sievert)であり、機械的な吹きガラス製品の製造に関する発明の項で前に言及した人物である。この発明家は、大型ガラス製品の蒸気吹き法を利用して、平板ガラスを直接生産しようと試みた。彼の方法は、別章で述べた蒸気法によって、大きな立方体の容器を吹き上げるものである。その側面の平坦さは、平らな側面を持つ型の中へ、あるいはその型に押しつけながら吹くことで確保される。この平坦な側面を持つ容器を、最終的には五枚の大きなシートに切り分けようというのである。
しかしこの方法もまた、ガラスを炉から吹き装置のプレートへ移送する手段に関して、ロール成形における主要な困難のいくつかをはらんでいるように見える。実用上も、発明者はシートガラス用途として十分良好な表面を持つガラスを、まだ生産できていない。
別の系統に属する方法群は、溶融ガラスを炉から機械へいったん移動させる手段を完全に避け、溶融浴そのものから直接作業する点に特徴がある。こうした方法の中には、実際にアメリカで実用運転されているものもあり、ヨーロッパで実験されつつあるものもある。ただし、その完全な技術的・商業的成功は、いまだ証明されていない。しかし、これらの方法が、機械によるシートガラス生産の前途を阻んでいた数多くの困難のうち、もっとも大きなものを克服したことには、ほとんど疑いの余地がない。そのため、近い将来、問題を完全に解決することになるのは確実と思われ、その場合、これらの方法は当然、手作業の工程を急速に駆逐していくであろう。
これらの直接法のごく初期のものの一つでは、溶融ガラスを炉から外へ流し出し、タンクの側壁や底に設けた狭いスリットを通して、下方へと引き出そうとした。しかし、こうした狭い開口部を開いたまま維持しつつ、同時にガラスの流量を制御することは不可能であることがわかり、この提案は実行不能であった。ただし、最近のあるプロセスでは、この種の引き抜き開口の使用が復活している。
アメリカで実用運転されていると言われるプロセスも、完全な意味で満足のいくものとは言えない。というのも、これは平板の直接製造ではなく、円筒を機械的に製造する方法であるからであり、そのため、縦割りと平坦化という補助工程は、従来どおり必要とされるのである。この方法では、炉の上方から、鉄製リングを溶融ガラス浴の中へ降ろす。ガラスがリングに付着したところで、リングを機械でゆっくり引き上げると、それとともにガラスの円筒が引き上げられる。放っておけば、表面張力の作用でこの円筒はすぐにすぼまり、ちぎれてしまうが、アメリカ方式では、円筒が形成されるそばからその箇所を急冷することで、この作用を抑えている。これは、槽から現れたばかりのガラスに、両側から空気流を吹き付けることで行われる。こうして、任意の長さと直径の円筒を、浴から直接引き抜けると主張されている。この操作に付随する機械的困難は、たぶん克服されているのであろうが、そのために装置の単純さは犠牲になっていると思われる。このプロセス全体が、手作業による工程と比較してどれほど経済的であるかは、まだ十分には示されていない。
フォルコー(Fourcault)の発明は、ヨーロッパで現在、あるガラス製造業者の組合によって開発が進められているが、より直接的な方法を目指している。ここでもガラスは、溶融浴から直接、鉄製の引き上げ具によって引き上げられるが、この場合、浴に浸されるのはただの真っ直ぐな棒であり、目標は平板の引き上げである。この場合、表面張力の作用により、ガラスは細糸状にすぼまろうとする傾向がある。単純に出てきたガラスを急冷するだけでは、この作用を十分に抑えられないようであり、付随的な装置が追加されている。特許化されている装置の一つには、連結した金属棒を用いた機構が含まれている。これは、縦方向に引き上げられるシートと一緒に、ガラス中に浸されては連続的に引き上げられるように配置されており、そのことでガラスの縁を支持し、横方向への収縮傾向に対抗するのを助けるのである。別の装置は、溶融ガラスの表面に浮かべた大きな耐火レンガに開けられたスリット(またはオリフィス)を用いる。このスリットを通して、所望の厚さと幅のガラスが引き上げられるわけである。
しかし、このスリットの利用は、製品の完全性に明らかな悪影響を及ぼす。この方法でつくられたガラスのすべてには、スリットの縁の不可避な不規則性に起因する、長手方向のストリーエ(縞模様)がはっきりと現れる。また、この方法では、薄いガラスを引き上げることが実用上不可能なようであり、厚さ 2.5~3 mm(約 1/8 インチ)が、破損の少なさから見て許容しうる最小限である。このプロセスは、現在の開発段階においては、たしかに有望ではあるものの、シートガラスの機械製造という問題を解決したとは言い難い。というのも、シートガラスの利点がもっとも顕著に現れるのは、薄く軽い種類のガラスにおいてだからである。
一方で、この引き上げ法――あるいはそこから派生する何らかの発展形――が、研磨板ガラスの製造において、鋳込み法に取って代わる可能性は十分ありうる。ただし、この用途でも、もっとも大きなサイズの製品に対しては、関連する重量物の取り扱いの困難と危険が、重大な障害となるかもしれない。
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クラウンガラス(Crown Glass)
この製造分野は、ほとんど廃れたとはいえ、ここで簡単に触れておく価値がある。その理由は、一つには、特定の品物の製造にはいまだに用いられていること、もう一つには、ガラスの利用と操作に関する興味深い可能性を示しているからである。
クラウンガラス吹きの工程は、おおまかには次のように要約できる。まず、おおよそ球形の中空球を吹き、その後その一側に開口を設け、大きな加熱炉の開口前で高速回転させることによって、遠心力を利用して平板状の円盤にまで広げるのである。もちろん、実際の工程では、シートガラス製造とほぼ同じ要領で、適量のガラスをギャザリングするという前段階がある。このギャザリングは、中空の球状器に吹き出される。その後、この器物は、パイプとは反対側の一点に、小さな量の熱いガラスを付着させることで、副次的な鉄棒に取り付けられる。この棒は、ポンティル(pontil または punty)と呼ばれる。つまり、器物は一時的にパイプとポンティルの両方に付いている状態となる。その後、元のガラスの首部を割り取ってパイプから切り離し、ポンティル側には、開口部を持つボウル状のガラスが残る。
次に、このボウルを、特別な炉の大きな開口前で、きわめて強く再加熱する。開口部を火に向けて構え、ポンティルを水平に保ちながら回転させる。ガラスが軟化すると、その回転によって縁が次第に広がっていき、最終的には、炉口の前で高速回転している単純な平板状の円盤となる。この平板、すなわちクラウンガラスの「テーブル(table)」は、ある程度冷やされたのち、鋭い一振りでポンティルから切り離され、その後、簡単な炉でアニールされる。アニール炉では、ガラス円盤を積み重ねて入れ、炉を密閉し、自然な冷却に任せる。
この方法では、非常に大きな寸法の板ガラスを作ることはできないのは明らかである。直径 4 フィート(約 1.2 m)のテーブルは、すでにかなりの大きさであり、しかもその中央には、ポンティルに取り付けられていた痕跡として、ガラスの塊(「ブリオン(bullion)」)が残るため、テーブル全体を一枚のシートとして使うことはできない。したがって、テーブルは必ずずっと小さなシートに切り分けられる。装飾目的、特に「アンティーク」な外観が求められる場合には、この中央のブリオンがかえって好まれることがあるが、実用上は、このブリオンはガラスの使用を著しく妨げる要因である。実際、中央のブリオンから数インチほど離れた部分でさえ、クラウンガラスには同心円状の波紋が現れるのが普通であり、古い建物の窓に用いられたガラスを見分ける有力な手掛かりとなるものの、ガラスの完全性という点では明らかに欠点である。
他方で、クラウンガラスは、顕微鏡用スライドやカバーガラスなど、特定の用途ではいまなお高く評価されている。これらの用途では、平坦化工程に起因するような表面の傷がまったくない、完全に滑らかな表面が望まれるからである。したがって、普通のシートガラス用途という意味では、この製法はもはや歴史上の関心事にすぎないが、特殊な場合には、いまなお用いられている。
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第十一章
着色ガラス
これまでの各章で、ガラスの色とそれに影響する要因について、折にふれて言及してきたが、そこでの議論は主として、可能なかぎり無色に近いガラスを得るという観点からなされてきた。当然のことながら、ガラスが使用される用途の大部分では、目に見える着色がないことが望ましく、あるいは不可欠でさえある。しかし一方で、明確な着色が求められる用途も数多く存在する。
工業的・技術的用途としての着色ガラスには、鉄道信号灯、車両の尾灯、自動車の赤色尾灯、さらには港湾灯や灯台の赤・緑セクターなどに用いられるルビーガラス・グリーンガラス・紫ガラスがある。また、写真術においても、ルビー、グリーン、イエローなどの着色ガラスが広く用いられている。色の正確さに対する要求が比較的ゆるやかな用途としては、公共建築や住宅建築における建築・装飾目的での使用があり、ここでも着色ガラスは非常に広く使われている。さらに、ステンドグラス工芸においては、着色ガラスが芸術的創作の土台そのものとなっている。また別の方向では、装飾品や、ある種の食卓用器物にも着色ガラスが用いられる。
今日、ガラス職人が持つ色彩資源が、多くの場合、残念ながら無駄な方向に使われていることは認めざるをえないが、真に芸術的な手に委ねられた場合、他にこれほど美しい成果をもたらしうる材料はほとんど存在しないと言ってよい。
ガラスの「色」とは、ふつう、そのガラスを比較的薄い板状にして透過光で見たときに観察される色調を指す。したがって、実際の色は、ガラスの種類一般に帰属する性質というよりも、同一溶解回から取られた各個別片の厚みによって左右される性質である。同じ溶解回から採られた厚い片と薄い片とでは、見える色が異なる。すでに述べたように、シートガラスや板ガラスのように、通常の見方ではほとんど無色透明に見えるガラスでも、かなりの厚みを通して見ると、はっきりした緑色を呈する。また、「フラッシングルビー(flashing ruby)」と呼ばれるガラスは、ごく薄い層では鮮やかな赤色を示すが、1/16 インチ(約 1.5 mm)の厚みに達すると、透過光でも反射光でも、ほとんど黒く見えるほど不透明になる。同様に、コバルトブルーガラスを薄層について分光器で調べると、かなりの割合の赤色光が透過していることがわかるが、厚い片ではこれらの赤色光が完全に遮断される。
これらの現象は、透明媒体における色が、その媒体が異なる色の光に対して異なる吸収力を持つことに起因することを思い出せば、容易に理解できる。すべての透明物質――そしてガラスももちろん――は、実際には「部分的」にしか透明ではない。そうした物質を透過する光波はすべて、媒体内部で徐々に吸収されていき、その吸収の程度は、波長によって異なる。常に、ある特定の波長に対して、その物質が入射光のエネルギーを吸収し、自身の分子または原子の熱振動に変換する能力を持つ領域が存在する。もっとも透明で無色に近いガラスの場合、可視光の波長範囲に限って言えば、この吸収は無視しうる程度に小さい。しかし、可視光の範囲を超え、スペクトルの紫よりもさらに短い波長領域に目を向けると、普通の無色ガラスであっても、そこで強い吸収を示すことがわかる。たとえば、黄色光を生じさせる波長のおよそ半分の長さを持つ光波に対しては、普通のガラスは、金属が白色光に対してそうであるのと同じ程度には不透明である。
このような広い意味では、すべてのガラスは「着色されている」と言ってよい――すなわち、すべて選択的吸収の能力を持っている。しかし、通常の意味でほとんど無色と見なされるガラスでは、この吸収が当てはまるのは、われわれの目が感じ取れる可視範囲より、かなり短いか、あるいはかなり長い波長に限られる。一方、通常の意味で「有色」に見えるガラスは、その吸収能力が可視スペクトルの領域にまで及んでいるがゆえに、そのように見える。たとえば、青または紫のガラスは、赤色光に対してほとんど不透明であり、逆に赤色ガラスは、青・緑・紫の光に対して不透明である。
このことを印象的に確かめるには、濃い青色または緑色ガラスの片と、濃いルビーガラスの片とを、それぞれ単独で見て透明であることを確かめたうえで、二枚を重ねて見ればよい。そうすると、この組み合わせは、ほとんど完全に不透明に見えるはずである。
ここで自然に生じる疑問は、たとえば、白色ガラスと赤色ガラスとの本質的な違い――言い換えれば、後者が青色光を吸収する能力を持つ理由――はいったい何か、ということである。現在の知識の段階では、完全に満足のいく答えを与えることはできないと、著者は考えている。しかし、ある程度までは、この違いを説明することができる。この違いは、第一に、無色ガラスに特定の化学元素を追加導入することによって「生み出される」。こうした物質は、一般に「着色酸化物」と呼ばれているが、必ずしも酸化物の形で導入されるとは限らず、しばしばガラス中では全く別の形で存在している。これらの元素や化合物は、可視スペクトルの特定の領域の光波を強く吸収する能力を持つ。
こうした着色物質は、おおまかに二つの群に分けることができる。第一の群(おそらくもっとも大きな群)は、ガラス中に真の溶液として存在するものであり、金属元素はケイ酸塩(シリケート)やその他の化合物(ホウ酸塩、リン酸塩など)として結合した形でガラスに溶解している。この場合、ガラスに与えられる色は、その元素固有のものであり、たとえば硫酸銅を水に溶かしたときに生じる水の着色と同じように説明できる。
第二の群は、全く違った挙動を示す。これらは、ガラス中で極めて微細な粒子として存在し、真の溶液状態ではなく、むしろ「コロイド溶液」と呼ばれる状態に近い、機械的懸濁として保持されていると思われる物質である。ジーデントプフおよびシグモンディ(Siedentopf & Szigmondi)の超顕微鏡的粒子に関する研究のおかげで、次のことは疑いなく知られている。すなわち、ルビーガラスをもっともよい例とする特定の着色ガラスにおいて、着色物質(たとえそれが金であれ、一酸化銅であれ)は、ガラス中に微小ではあるが分子や原子よりはるかに大きな粒子として存在し、その形で懸濁されているということである。これらの粒子の存在は、光学的手段によって証明されているが、それらが「見える」とまでは言えない。いずれにせよ、これらの懸濁微粒子は、それぞれが一つの単位として、ガラスに与える色に対応する波長の光を吸収していると考えるのが自然である。
このように考えると、なぜこれらのガラスの色が、加熱や冷却の速度といった操作によって、きわめて容易に変化したり損なわれたりするのかが理解しやすい。冷却が速すぎると、たとえば懸濁微粒子の分布や大きさ、形状が変化し、その結果、色調が大きく変わったり、あるいは懸濁状態が完全に消失してしまうこともありうる。その場合には、着色元素が再びガラス中に真の溶液として入り込んでしまい、もはや特有の色を与えなくなるのである。
本書の目的からすれば、ここでさまざまな着色ガラスの配合レシピを列挙することは、まったく適切でない。しかし、通常ガラスに添加される各元素が、どのような色または色の範囲を生じうるかを大づかみに述べておくことは、有用であろう。一般的に言えば、軽い元素は、通常、ガラスに顕著な着色を与える傾向がなく、逆に、重い元素は、ガラス内に溶け込むか懸濁状態で保持されさえすれば、きわめて強力な着色効果を持つ。鉛元素は、この規則からの顕著な例外のように見えるが、これは次の事実による。すなわち、他の多くの重元素のケイ酸塩が多少とも不安定なのに対し、鉛のケイ酸塩は非常に安定であり、還元剤の作用を受けない限り分解されないということである。しかし、鉛ケイ酸塩がこのように分解されると、そのガラスはただちにきわめて濃い色を呈するようになり、不透明な黒に変化する。薄い層では、むしろ濃い褐色に見える。
他方、鉛を多量に含むガラスは、常に明らかな黄色味を帯びており、この着色は、不純物によるものではなく、鉛ケイ酸塩そのものの色に起因することが示されている。ここまで述べたことは、稀金属タリウムとその化合物にも、わずかな修正を加えるだけでほぼそのまま当てはまる。タリウムは特殊目的のためにガラスに導入されることがある。
これら二つの例外的物質をひとまず脇に置き、以下では元素を化学的分類に従って順番に見ていく。稀元素については、実務上影響を及ぼす場合(たとえば微量混入が結果を左右する場合)を除き、考慮しないことにする。
アルカリ金属――ナトリウム、カリウム、リチウムなど――およびその化合物は、それ自体として特有の着色効果を持たない。ただし、ソーダやポタッシュの存在は、マンガン、ニッケル、セレンなどの色に影響を与える。
銅は、その多くの化合物が濃く着色していることからも予想されるとおり、ガラスに強力な着色効果をもたらす。二価銅(Cu²⁺)のケイ酸塩は、強烈な緑色から緑がかった青色までの色調を与える。銅を金属または酸化物の形でガラスに添加すると、通常はこの緑色が生じる。しかし、銅の完全な酸化が還元性物質の存在によって妨げられ、かつガラスをゆっくり冷却したり、再加熱と徐冷を繰り返したりすると、強烈なルビー(赤)着色が得られる。実用上は、この色は銅に加えてスズを混合することで得られ、溶融条件を酸化より還元が優勢になるよう調整する。こうすると、銅はガラス中に微細で均一な懸濁状態で残る。粒子の大きさと分散状態がちょうどよい場合、美しい赤色が得られる。しかしこのガラスは、きわめて着色力が強いため、非常に薄い板でしか使用できず、通常は無色ガラスの表面に「フラッシュ」して、実用上必要な強度と厚みを確保する。
また、銅の配列状態をわずかに変えるだけで、たとえば粒子をやや大きく成長させるなどすると、その結果、色はにごった不透明の縞状物質となり、シーリングワックスに似た色と外観を持つ。このような製品は、ガラス製造者の観点から見れば、もちろん役に立たない。さらに、極めてゆっくり冷却し、その他の有利な条件が揃った場合には、銅粒子(一酸化銅粒子であれ金属銅粒子であれ)が成長して、目に見えるほどに大きくなり、きらめく微細な鱗片として現れることがある。こうして、アベンチュリン(aventurine)として知られる美しい物質が生じる。
銀は、ガラス混合物に添加されることは決してない。というのも、あらゆる銀化合物から銀が非常に容易に金属状態へと還元されるため、ガラス中に溶解させて保持することができないからである。その結果、微細な金属銀の懸濁体となって、ガラスを、フリントガラスにおける鉛の還元の際に見られるのと同様、黒く金属的な外見にしてしまう。一方、銀はガラス表面に塗布して焼き付けることで、美しい黄色のステインを与えるため、その用途では広く用いられている。
金は、鮮やかなルビー色を与える目的でガラスに導入される。金の挙動は、基本的に銅とよく似ているが、この貴金属は、還元剤を加えなくとも、容易に金属状態へ戻る傾向を持つ。そのため、銅ルビーの場合のようにスズを併用する必要はないが、溶融時の加熱と冷却の速度を適切に調整しなければならない。急冷した金含有ガラスは、特別な着色を示さないが、その後再加熱して徐冷することで、濃いルビー色が現れる。金による着色は、銅に比べて明らかに安定で均一であり、そのため、より淡い赤色の陰影を得ることが可能である。「ゴールドルビー」は、ふつうのシートガラスの厚みにおいても利用できる程度の色深度で作ることができ、銅ルビーのように必ずしもフラッシングを必要としない。
第 2 族元素であるマグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、亜鉛、カドミウムなどの化合物は、カドミウムを除けば、ガラスに特有の強い着色を与えることはない。カドミウムも、硫黄と結合した硫化カドミウムの形で存在する場合に限って、かなりの着色力を持つ。この化合物は、ガラスに豊かな黄色を与える。硫化バリウムもまた、濃い緑色や黄色をつくりやすく、多量のバリウムを含むガラスでは、これらの色の発生を避けることが非常に難しい。亜鉛に着色効果を認める記述も見受けられるが、実際には事実と合致しない。
第 3 族元素のうち、ガラス中に顕著な量で存在しうるのは、ホウ素とアルミニウムだけである。ホウ素はホウ酸またはホウ酸塩として存在し、この形では着色効果を持たない。また、遊離のホウ素がガラス中に分離して存在する傾向も見られない。アルミニウム化合物も同様に、固有の着色力を持たない。ただし、ある種のアルミニウム化合物は、特定用途向けの白色不透明ガラス(いわゆる「オパール」ガラス)を作るために利用される。この場合の作用は、スズ酸化物やアルミニウムフッ化物の場合とよく似ており、これらの物質はガラス中に完全には溶解せず、微小粒子として懸濁される形で残ると考えられている。
第 4 族元素は、ガラスとの関係でより重要である。炭素は、ガラス中に導入されると、二種類の大きく異なる着色効果をもたらす。一つは間接的なものであり、炭素が他の物質に対して還元剤として働くことに由来する。もう一つは直接的なものであり、微細な炭素粒子や炭化物自体がガラス中に分散することに由来する。この後者の効果は、銅、金、鉛などの微細粒子が存在する場合と同種であるが、炭素粒子は比重が小さいため、赤や黒よりも、むしろ黄色や褐色系の色を生じやすい。また、炭素の化学的性質から、これらの色は急冷にも比較的影響されにくい。つまり、ガラス中の炭素粒子の着色は、冷却速度にあまり敏感ではない。
他方、炭素の還元作用は、ガラス中にごくわずかな割合で存在するだけでも顕著な影響を発揮しうる。前章までに見たように、ソルトケーキを含むガラス配合には、コークス、木炭、無煙炭などの炭素源が、還元剤として定期的に加えられる。この目的に対して、もしわずかにでも過剰な炭素が用いられると、ナトリウムおよびカルシウムの硫化物や多硫化物が生成し、これらの硫化物は、すべての硫化物がそうであるように、ガラスに緑がかった黄色の色調を与える。その際、他にも有害な結果を伴う。
ケイ素は、ケイ酸(シリカ)およびその化合物として、あらゆる種類のガラスの基本成分を構成しており、この形では着色物質ではない。しかし一方で、特定の条件下では、通常のガラス炉内温度でも金属状態のケイ素が生成されうることは疑いなく、もしガラス中にこうした状態で存在すれば、ケイ素はガラスを着色するものと思われる。したがって、強力な還元剤――固体炭素であれ、炉内ガス中の炭素成分であれ――が、普通ガラスに見られる特有の着色をもたらす場合、その一部はガラス中でのケイ素の還元に起因している可能性がある。
スズは、それ自体としてガラスに特別な着色効果を持たない。酸化スズは、微細な懸濁状態で存在する場合に、オパール様の乳濁や、大量に用いれば白色不透明を生じさせる。しかし、スズは銅と組み合わせて銅ルビーを作るために用いられる。
鉛とタリウムについてはすでに触れたので、ここでは、それらが他の物質の着色効果を増強することを付け加えるだけでよいであろう。これは、おそらく、一般に密度が高く屈折率の大きいガラスほど、低屈折率・低密度のガラスに比べて着色剤に対して敏感であるという事実の一例に過ぎない。同じことはバリウムについても当てはまる。すなわち、鉛・タリウム・バリウムを含むガラスは、いずれも着色剤に対して敏感である。
リンは、リン酸の形でごく少数のガラスに存在するが、この形では着色効果を示さない。リン酸カルシウムは、ガラスにオパール様の乳濁を与える目的で用いられることがある。その作用はおそらく、前述の酸化スズやアルミニウムフッ化物と類似しており、これらもまた、完全にはガラス中に溶解せず、微細粒子として懸濁する。
ヒ素は、ガラスそのものの着色には寄与しない。また、その揮発性のため、特別な条件下を除けば少量しかガラス中に保持されない。ヒ素には「脱色」作用があるとされることがあるが、もしそのような作用が存在するとしても、それはヒ素化合物が酸素のキャリアとして働き、ガラス内に酸素を供給することで、他の不純物の酸化を助けることに帰せられよう。ヒ素に関するこの点については、後述するマンガン化合物の項で再び触れる。
アンチモンは、特殊なガラス配合によく加えられるが、これ自体、顕著な着色効果を示すことはない。ただし、多量に含めれば白色不透明を生じさせる可能性がある。硫化アンチモンには着色力があるが、その揮発性と不安定さのため、その効果は一定しない。
バナジウムは、稀少であるため着色目的でガラスに意図的に添加されることはないが、ごく微量であっても、鮮やかな黄色や黄緑色の色調を生じさせる能力がある。一方、バナジウムは、スタウアブリッジ地区を含む多くの耐火粘土に微量含まれており、そのため、こうした粘土で作ったポットでガラスを溶かすと、ポットからガラスにバナジウムが移行し、色を損なう危険がある。
硫黄は、そのさまざまな形での存在が、ガラスの色に多様な影響を及ぼす元素である。すでに述べたように、ナトリウム・カルシウム・カドミウム・アンチモンの各硫化物は、いずれも着色作用を持つ。硫黄は、おそらくガラス中に遊離元素として存在することはないと思われるが、硫黄やその酸化物は、炉ガス中にしばしば含まれており、高温ガラスに対して顕著な作用をおよぼすことがある。ブロウイングホールやアニール炉の雰囲気に硫黄ガスが含まれると、ガラス表面付近に、特有の黄味がかった乳濁が生じるが、これはガラス内部のかなりの深さにまで浸透し、その後いかなる処理を施しても除去できない。とくに、ソルトケーキを原料に用いたガラスでは、硫黄の溶融体や蒸気との接触によって、ガラス器物が徐々に劣化することがある。これらの作用の正確な機構はいまのところ不明であるが、おそらくガラス内に硫黄化合物が形成され、それに伴って微小な気泡が発生するのではないかと推測される。
セレンは、化学的には硫黄にきわめて近い元素であり、比較的稀少ではあるが、着色および脱色剤としてガラス製造に利用されつつある。適切な条件のもとでガラス混合物にセレンまたはその化合物を導入すると、特有の黄味がかったピンク色の着色が生じるか、あるいは生じる傾向を持つ。生成される色の強さは、ガラス全体の化学的性質と、当然ながら、溶融工程終了時にガラス中に残存するセレンの量に依存する。後者は、溶融工程の時間と温度によって決まる。セレンガラスのピンク色は、とくにバリウムを塩基成分とするガラスでよく現れ、また鉛ガラスでも見られるが、ソーダ石灰ガラスでは色が出にくい。脱色剤として用いる場合、セレンの作用は、ガラスの緑色または青色の色調を「覆い隠す」ために、補色の色を付加するという形で現れる。覆い隠すべき元の色調の深さが小さい場合、セレンはこの用途に非常にうまく用いることができる。ただし、この用途にしてはかなり高価な物質であることは否めない。セレンやその化合物には、酸化剤としての「洗浄」作用は認められない。
クロムは、ガラス職人にとってもっとも強力な着色物質の一つであり、広範に利用されている。その利点は、比較的安価であること、純粋な化合物の形で容易に得られ、その着色効果を事前に正確に見積もることができること、さらにクロムによって得られる着色は、酸化的・還元的条件や、溶融の長さや温度にほとんど影響されず、非常に安定していることである。実際に色に大きく影響する要因は、おそらく冷却速度だけである。クロム単独で得られる色は、明るい緑色のさまざまな深さであり、その濃さは、ガラス中のクロム含有量と、ガラス自体の純度に応じて変わる。クロムはしばしば、鉄や銅と組み合わせて、いわゆる「冷たい青」や「セラドングリーン(青磁色)」といった中間色を作るのにも用いられる。
クロムは、通常、二クロム酸カリウムとしてガラス配合に導入される。ほかの化合物を使うことも理論的には可能だが、この物質はいくつかの利点を持つ。まず第一に、クロムの着色力は非常に強いため、ごく微量しか加えることができない。もしクロム酸化物そのものを用いるとすると、配合ごとの秤量はきわめて厳密に行わねばならない。これに対し、二クロム酸カリウムには有効成分であるクロムの割合がずっと小さいため、より大きな重量を扱うことができ、その分だけ秤量誤差への許容範囲も広がる。もう一つの理由は、クロム酸化物がきわめて難融であり、ガラスに溶け込みにくいこと、そしてその存在がガラスを粘稠で溶けにくいものにしてしまうことである。この点、二クロム酸塩を用いれば、一緒にアルカリ分がガラスに供給されることになり、これが溶解中のクロムの溶解を助けるとともに、最終的なガラスの流動性と柔らかさを回復させるのに役立つ。ただし、クロムの溶解過程には一定の時間が必要であり、クロムを含むガラスは、溶融時間が不十分だと、まだら模様を呈することがある。
ウランは、高価で稀な元素であるが、ごく少量加えるだけで、美しい蛍光性の黄色を与えるため、特殊用途のガラスに用いられる。この黄色はきわめて特徴的で紛れがなく、そのため他の黄色ガラスをウランガラスの代用品とすることはできない。しかし、その高価さゆえに、使用範囲は広くはない。ウランは、通常、酢酸ウラニルや硝酸ウラニルなどの化合物の形で配合に加えられる。これらはどちらも、小さく鮮烈な黄色結晶として得られる。
フッ素は、多くのガラスにアルミニウムフッ化物などのフッ化物として存在する。フッ素自体は本質的な着色物質ではないが、アルミニウムフッ化物は、いわゆる「オパールガラス」をつくるためのもっとも一般的な手段である点で、ここで触れておく価値がある。このフッ化物は、しばしばフッ化カルシウムと長石を組み合わせて導入されるか、あるいは天然の氷晶石(クリオライト――ナトリウムとアルミニウムの複フッ化物)として導入される。
マンガンは、ガラス職人にとってもっとも重要な着色元素の一つである。マンガンを、他の着色剤を含まないガラスに加えた場合、マンガン化合物は、淡いピンクがかった紫からスミレ色にわたる色調を作り出す。その正確な色合いは、ガラスが鉛を塩基とするか、石灰を塩基とするか、あるいはバリウムを塩基とするかによって変わり、またアルカリ成分としてソーダを用いるかポタッシュを用いるかによっても変化する。しかし、一定割合のマンガンが与える色の性質と強さは、混合物に含まれる塩基の種類だけでは決まらない。溶融(「ファウンド(found)」)の温度と持続時間、およびその間の炉内雰囲気――酸化的か還元的か――が、色に大きく影響する。たとえば、マンガンによってわずかにピンクまたは紫の色調を帯びたガラスであっても、還元性ガスを作用させたり、一片の木片のような還元剤を加えたりすると、完全に無色透明に戻ってしまうことがある。
このように、マンガンはガラス職人にとって非常に有用な元素ではあるが、その使用には高度の技術と注意が必要であり、多くの場合、希望する色を得るために何度かの試行錯誤的操作を伴う。
実務上、マンガンは、他の着色剤と併用して「複合」色を作る目的で用いられることが多い。この場合、マンガンは「暖かい」成分――すなわちピンクまたは紫の成分――を提供する。こうした用途の一つとしてもっとも重要なのが、マンガンを「脱色剤」として用いることである。ガラス職人が「脱色剤」と呼ぶのは、原料の性質や溶融条件のために、望ましいよりも緑がかった色になってしまうガラスの色を改善するために用いる物質のことである。もっとも完全で満足のいく方法は、もちろん、より純度の高い原料を用い、ガラスを汚染しにくい溶融法を採用することである。しかし、費用の点からこの根本策がとれない場合には、望ましくない色を、それ自体同じくらい望ましくない補色の色で「覆い隠す」という、やや妥協的な方法をとらざるをえないことが多い。
この手法の理屈は、人間の目が、ごくわずかな光の吸収であれば、それが可視スペクトル全体にほぼ均一に分布する限り、ほとんど感知しないという事実に基づいている。言い換えれば、透過光の色がほぼ中性であれば、総吸収量が多少増えても目にはほとんどわからない。ところが、同じ程度の吸収がスペクトルのある一部分に集中していると、実際にはより多くの光が通っているにもかかわらず、透過光に色がつくために、目にはすぐにわかってしまうのである。
さて、マンガンをごく微量加えたガラスに生じる色は、通常の、やや不純なガラスに見られる青緑色の色調に対して、ほぼ補色関係にあることが知られている。そのため、このようなガラスに適量のマンガンを加えると、透過光の色はほぼ中性――わずかに黄色味を帯びることも多い――となり、全体としての吸収は少し増えるものの、それは厚い板で見た場合にかろうじてわかる程度にとどまる。このようにして、元の緑がかった色調が視覚的に覆い隠されるのである。この「カバー」は、ソーダフリントガラス(硝子食器用の透明ガラス)でもっとも完全に成功するが、シートガラスや板ガラスに用いられるソーダ石灰ガラスについてもある程度用いられている。
マンガンをこの目的で加える場合、通常は天然鉱石として十分な純度で入手できる黒色酸化マンガン(マンガン二酸化物)の粉末として配合に導入される。この形で加えられたマンガン化合物は、二重の作用を行う。一方では、二酸化物の分解によりガラス溶融中に酸素が放出される。この酸素は、有機物を酸化して除去し、冷却後に還元剤として悪影響を及ぼすことを防ぐとともに、ガラス中に存在する鉄化合物を、より高次の酸化状態(フェリック状態)に変える。この状態の鉄は、より低次の状態(フェラス)に比べて、着色力がはるかに弱い。これらの作用が、酸化剤が持つ「洗浄」効果の一部である。他方で、マンガン自体の着色作用が後から現れ、前述のような結果をもたらす。
鉄やその他の化合物による緑がかった色調をこのようにマンガンで覆い隠せるのは、それらの不純物がごく微量しか含まれていない場合に限られる。より多量の鉄化合物などがガラス中に含まれると、マンガンを加えても全体の色は変化するものの、もはや中和することはできない。鉄とマンガンの比率を変えることで、非常に広い範囲の色調を得ることができるが、そのもっともよく知られたものが、「ホックボトル(hock-bottle)」と呼ばれる暖かな褐色である。これと、鉄だけによる明るい緑、マンガンだけによる紫とのあいだのあらゆる中間色が、適切な比率で得られる。マンガン色が溶融条件に敏感であるという点は、こうした混合色ではいっそう顕著である。ここでは、鉄化合物とマンガン化合物の両方が酸化状態の変化を受けやすく、その変化が色調に強く影響するからである。銅とマンガン、クロムとマンガンの組み合わせによる色も用いられる。実際、ほとんど任意の数の着色物質を同時にガラス配合に加えることができ、通常、その結果として現れる色は単純な加成的合成である。
鉄は、地殻を構成する物質の中に広く分布しているため、どのようなガラスからも完全に排除することは非常に困難である。もっとも純粋なガラスには、ごくわずかな痕跡しか含まれていないが、安価なガラスには常に測定可能な量の鉄が含まれており、最も安価なガラスでは相当に多く含まれている。鉄の着色効果については、これまでの節やマンガンの項などで断片的に触れてきた。ここで付け加えておきたいことは多くない。低次の酸化状態(フェラス)の鉄化合物が常にはっきりした緑色を呈するように、ガラスもまた、一般的なガラス炉の還元性雰囲気のもとで鉄を含んでいる場合には、明瞭な緑色の色調を示す。その強さは、ガラス中の鉄の量に応じて変わる。ただし、マンガンなどの「脱色剤」が加えられていない場合に限る。
フェラス化合物は、硝酸塩などの酸化剤により、容易により高次の酸化状態(フェリック)へと変換されるが、同様の変化は、溶融ガラス中でも起こりうる。フェリック化合物は、対応するフェラス化合物に比べると、ずっと弱い黄色味を呈し、その濃さもずっと控えめであるが、同じことがガラス中の鉄にも当てはまる。そのため、ガラスに酸化剤を導入することの「洗浄」効果が生じるのである。ただし、酸化されるのは鉄化合物だけではないことを忘れてはならない。多くの種類のガラスでは、有機物、炭素、硫黄化合物などの酸化も、色調の改善にきわめて重要な役割を果たしていると思われる。
ニッケルは、その多くの化合物が濃く着色していることからも予想されるように、ガラスに対して強い着色力を持つ。その正確な色合いは、ガラスの種類とニッケルの酸化状態によって変化するが、通常は緑がかった褐色調が多い。ただし、特別な条件のもとでは、より鮮やかな色彩も得られる。実用上、ニッケルは着色剤として広く用いられてはいないが、「脱色剤」として用いることが提案されたことがある。しかし、著者の知るかぎり、この目的で成功裏に使用された例はない。実際、ニッケルが生じさせる色は、通常のガラスの緑や青の色調に対して、補色関係にあるとはとても言えない。
コバルトは、ガラスに対してもっとも強力な着色剤の一つであり、あらゆる種類の青色ガラスの製造に広く用いられている。コバルトによって得られる青は、おそらくガラス職人が利用できる色のうちでもっとも「確実な」ものであり、他の色を変化させるような多くの要因にもほとんど影響されない。コバルトの唯一の難点は、その着色力が非常に強いため、ほとんどの場合、ごく微量しかガラス配合に加えることができないという点である。かつてコバルトは「ザフル(zaffre)」という不純な酸化コバルトの形でガラスに加えられていたが、現在では、より高価ではあるものの、はるかに望ましい純粋な酸化コバルトがほぼ例外なく用いられている。この物質はきわめて一定した組成を示し、正確な秤量によって、ガラス職人は配合ごとに必要な量のコバルトを精確に導入することができる。
こうして見てきたように、現代のガラス製造者が利用しうる色調の範囲は、ほとんど無限とも言える広さを持つ。各色素を単独で用いることもできるし、いくつかを組み合わせて中間色を作り出すこともできる。そのため、実務上もっとも大きな困難は、特定の色調を再現する――すなわち、同じ種類のガラスについて、異なる時期に製造したロット同士でも自由に組み合わせて使えるように、色をできる限り一定に保つ――ことである。この理想は完全には達成されていないかもしれないが、特別な技術用途向けのガラスでは、きわめて高い程度まで実現されている。
また、ガラス職人は、多数の異なる色調を作り出すだけでなく、同じ色調についてさまざまな濃さを作り分けることも求められる。多くの場合、これは単純に着色物質の添加量を変えることで容易に実現できる。着色力がそれほど強くない物質であれば、この方法によって色の濃淡を比較的自在に調整できる。しかし、銅ルビーのように、きわめて強い着色力を持つガラスでは、この方法が利用できない。銅ルビーガラスを、一般的なシートガラスと同じ厚さで使用できる程度まで薄い赤色にすることは、事実上困難である。
このような場合にとられる手段が、「フラッシング(flashing)」と呼ばれる方法である。これは、濃い色のガラスを極めて薄い層として、普通の無色ガラスの表面に被覆する方法である。通常は、フラッシュガラス用の溶解ポットを、無色ガラスのポットのすぐ横に置き、吹き竿で最初に少量のルビーガラスを取り、その上に後続のギャザリングとして無色ガラスを巻き取る。このようにして得られた複合ギャザリングを、前章で述べたように円筒に吹き上げると、ルビーガラスは円筒の内面に薄い層として分布する。ギャザラーとブロウアーには、この層を均一な厚さに保ち、ちょうど望ましいルビー色になるように分布させるために、高度な注意と技能が要求される。着色層が極めて薄いので、厚みのわずかな不均一が色の濃さに大きな差となって現れ、実際、成功度の低い円筒では、色むらがしばしば見られる。
このようなフラッシュガラスでは、ルビー層と無色層の化学組成をうまく選んで、両者の線膨張係数をできるかぎり一致させておく必要がある。もしこの条件を満たさないと、ガラス内部に大きな残留応力が生じ、破損を招きやすくなる。また、ルビーガラスの膨張係数が無色ガラスより大きいと、平坦化後のシートはフラッシュ側から反り上がる傾向を持ち、アニール炉から完全に平らな状態で取り出すことができなくなる。
フラッシング法は、もっとも頻繁には銅ルビーに適用されるが、他の色にも広く用いられる。このようなフラッシュガラスは、エッジ方向から見るとすぐに見分けがつく。側面から透かして見ると、シートのほとんど全厚が、普通のシートガラスに特有の緑がかった色を示し、着色層はごくわずかな厚みしか占めていないことがわかる。同様に、このようなフラッシュガラスを、表面の着色層が部分的に除去されるように切断したりエッチングしたりすると、白い地色に色付きの地が現れる。これは、特定の装飾効果を得るために用いられる。なお、ここで説明したフラッシング法は、ギャザリングから吹き上げられるあらゆるガラス器物に適用することができ、着色層を器物の内側に置くことも、外側に置くことも可能である。
ガラス職人が供給する色付きガラスの「パレット」に加えて、ステンドグラスの芸術家には、さらにもう一つの色彩源がある。それは、ガラス表面に塗布され、その後「焼成(firing)」によって発色と半永久的な定着を得るステインや透明色である。こうして得られる色もある意味では一種のガラス――より正確にはガラス質の釉――であり、その原料は絵付師の筆によってガラス上に塗られ、加熱によって初めてガラスと結合し溶け合う。
ただし、この場合に適用しうる温度には、いくつかの制約がある。まず、母材となるガラス自体が軟化しすぎないよう、温度を制限しなければならない。また、多くの顔料自体が高温に耐えうるものではない。そのため、これらの焼き付け色に含まれるフラックス(溶融剤)は、極めて融点の低いものでなければならず、その結果、ガラス自体に比べて化学的安定性が大きく損なわれることは避けられない。
ガラス絵付けを、審美的側面を抜きにして技術的観点からだけ見ても、その全体像はきわめて広大であり、本書の範囲を超える。したがって、ここではこの問題に踏み込まず、ただ一点だけ、ステンドグラスとガラス絵付けに関する技術的な事項に触れておく。それは、技術的に「完全」であるということが、必ずしもすべての用途にとって望ましいわけではない、という一例である。
近代において技術的に優れた着色ガラスが生産されるようになったことは、一見意外なことに、ステンドグラスの芸術的品質の著しい低下を伴った。そのため、かつてのステンドグラスの技法は「失われた技術」とされ、ガラス職人は、昔のような鮮やかで美しい色を再び作り出せないと非難された。しかし、より綿密な研究により、問題の本質は、現代のガラスの色彩が、少なくとも古いガラスと同じくらい鮮やかで多彩であるにもかかわらず、その内部構造があまりにも完全に均質であることにあると判明した。すなわち、現代のガラスは、改良された設備と方法のおかげで、気泡やストリーエなどの不完全さをほとんど完全に排除してしまっていたのである。
窓ガラスや食器用ガラスのような一般用途では、この純度の向上が製品の美観を大いに高めるのは言うまでもない。そのため、ガラス職人が、芸術用の着色ガラスについても同様の「改良」を試みるのは自然なことであり、実際にはおそらく、ステンドグラス職人自身が、より「よい」ガラスを求めてこの改善を促したのかもしれない。しかしながら、より詳細な検討が進むにつれ、このような完全に近い近代ガラスが、芸術的用途、少なくともステンドグラスという用途には、むしろ適さないことが明らかになった。
完全に平滑な表面と、内部にまったく不規則のないガラス片に当たった光は、色が変化するだけで方向はほとんど変えられずに通り抜ける。そのため、そのようなガラス越しには、外界の物体がはっきりと見え、ガラス自体の神秘的な魅力は大きく損なわれてしまう。他方、表面が不規則であり、内部にもストリーエや気泡、さらには微小な固体の包有物まで含んでいるガラスに光が当たると、光はあらゆる方向へ散乱され、屈折され、偏向される。その結果、光がガラス自体の内部から発しているかのような印象が生じ、ガラス全体が自ら光を放っているように見える。外界の物体はほとんど見分けがつかなくなり、窓全体が、一つの光り輝く自照体のように感じられる。
この事実に気付かされて以来、近代のガラス製造者たちは、より安定したガラス組成と広い色彩範囲を維持しながら、古いガラスの望ましい性質を再現する努力を行い、かなりの成功を収めてきた。古いガラスの不規則な表面は、普通の吹きガラスではなく、ロールドガラスや「マフド」ガラスを用いることで模倣される。また、内部組織を均一でない状態にするために、固体や気体の包有物を意図的に導入し、さらにはガラスを異なる密度の層として残すような操作を行う。その結果として現れる層状構造は、完成したガラスではストリーエとして目に見える。このような工夫により、現代のカラーガラス職人は、少なくとも古典期のステンドグラス工芸家が利用できたものと同等、あるいはそれ以上に適した材料を手にしていると主張しても、あながち誇張ではないであろう。
着色ガラスの技術的用途については、すでにいくつか触れたが、なお検討すべき点が一、二残っている。鉄道や船舶用信号のような用途では、経験則の積み重ねにより、特定の色――とくに赤と緑の特定の色調――がもっとも適しているとされている。他方、写真術に関連するさまざまな用途においては、ガラス職人はまだ十分に新たな要求に応えていないようであり、そのため、写真暗室用ランプの被覆や、オルソクロマチックあるいは三色分解写真用の光学フィルタとして、本来なら着色ガラスで作るべきところを、むしろゼラチンやセルロイドに有機染料を染み込ませた薄く頼りないスクリーンが使われている。
これらの用途では、特定の波長範囲の光だけを透過させる、きわめて厳密な透過・吸収特性を持つ透明着色媒体が求められる。ガラス職人は、着色媒体として限られた種類の元素しか使えないという制約を受けており、このような厳密なスペクトル特性を持つガラスを作るのは容易ではない。他方で、ガラスの着色に関して、この観点から系統的に研究された例は、いまのところほとんどない。唯一広範な研究が行われたのは、イェーナのショット社に関連してであり、彼らは分光特性が正確に知られた一連の着色ガラスを市場に送り出している。
しかし、この分野には、まだ大きな拡張の余地が残されていることは疑いない。ガラス職人が、吸収スペクトルの観点から着色ガラスを徹底的に研究するならば、この分野はさらに広がるであろう。ただし、実際のところ、ゼラチンにアニリンその他の染料を染み込ませて得られるフィルタの性能を、着色ガラスが完全に再現できるかどうかについては、相当の疑問が残ると言わざるをえない。
第十二章
光学ガラス
光学ガラスは、他のあらゆる種類のガラスときわめて大きく性質を異にしており、その製造はほとんど独立した一つの工業と見なしてよいほどである。実際、そのためだけに一冊を割いた専門書があってもよいくらいである。本章では、光学ガラスのもっとも重要な性質の概要を述べ、次章でその製造に用いられる工程の主要な特徴を説明することにする。
光学ガラスの価値を左右する性質は、おおまかに二つの群に分けることができる。第一は、狭い意味での「光学的」性質――すなわち、光がガラスを通過する際の挙動に直接影響する性質――であり、第二は、より一般的な性質のうち、光学用途に用いられるガラスにおいてとくに重要となる性質である。
ガラスの光学的性質――この点に関してもっとも本質的な性質は、「均質性」である。すでに述べたように、ガラスは決して一つの一定した化学物質・化合物とは見なせず、通常は各種の複雑なケイ酸塩、ホウ酸塩などが互いに溶け合った「相互溶液」から成っている。溶液というものは、本質的に二種以上の物質の混合物であるから、完全な混合が行われたときにのみ真の均質状態に達することができる。身近な例として、砂糖を水に溶かす場合を挙げることができる。砂糖の近くにある水は砂糖で飽和され、その他の水とは密度が異なるようになる。ここで液体を軽くかき混ぜると、非常に特徴的な現象が現れる。すなわち、純水と濃い砂糖溶液とは、すぐには完全には混ざり合わず、より密度の高い液体が、より粗いあるいは細かい線・層・渦の形で液全体に拡がった状態のまま、しばらく存在する。このとき、まだ完全には混ざっていない二つの液体が、光に対して異なる作用を及ぼすために、それらが目に見えるのである。
ただし、砂糖水の例では、扱っているのは非常に流動性の高い液体なので、ティースプーンで数回かき混ぜれば混合は完全となり、しばらくの間にごくわずかな濁りを示していた液も、やがて均一で透明な状態にもどる。
ガラスの場合、原料が溶融されると、砂糖水の場合と同様、密度の異なる液体からなる混合物が形成される。しかし、溶融ガラスは、通常の水のように流動性の高い液体であることは決してなく、また製造の通常の過程では、水の入ったグラスをスプーンでかき回すような徹底した「混合作用」を受けることもない。したがって、通常の製造法によるガラスにおいては、溶融時に生じた不均質性が、最後まで持ち越されることは、少しも不思議ではない。厚いガラス片を注意深く調べれば、その内部に、密度の異なる細い糸状あるいは層状の部分がところどころに存在することが認められるが、これがその証拠である。これらの欠陥は「ストリエ(striæ)」または「ヴェイン(veins:すじ)」と呼ばれ、このような欠陥が、上等な光学作業に用いるガラス中に存在する場合、そのガラスは使用に適さない。
後述するように、光学ガラスの製造においては、ガラスをできる限り均質にするための特別な手段が取られる。実際、光学ガラス製造の初期の歴史は、この欠陥――すなわちストリエ――を克服しようとする試みの歴史そのものであったと言ってよい。しかし、この問題は、化学的にも物理的にも容易ならざる困難を伴い、現代のもっとも優れた製造技術においてすら、一溶解、すなわち一つのポットいっぱいのガラスのなかで、完全にストリエやヴェインを欠く部分は、ごく一部に限られている。多くの場合、これらの欠陥は非常に微細であり、完成したレンズの段階に到るまで気付かれないことさえある。しかし、その段階に至ると、像のシャープな結像を著しく妨げるため、その存在はきわめてはっきりと現れる。このような場合には、結果として役に立たないガラス片を研磨・ポリッシングするために、時間と費用を無駄にしたことになる。
そこで、ガラスを加工する前に、その中にごく細かいストリエが存在しないかどうかを検査する方法が用いられる。これらの方法は、平行光束が均質なガラス板を通過する限り何の乱れも受けないが、ストリエが存在する部分に当たるところでは、その部分で光束が平行性を失う、という原理に依拠している。したがって、このような照明条件の下では、ストリエは暗線または明線として現れ、容易に検出される。一例として用いられる装置の一形式を、図 14 に示す。
[図 14.—ストリエ検査装置の概略図。
L:光源、S:スリット、A および B:単純な凸レンズ、G:被検ガラス、E:観察者の目。矢印は光線の経路を示す。]
透過性および色も、ガラスの本質的に重要な性質である。ある意味では、均質性は透過性の前提条件であるが、ここで問題にしているのは、ガラスを規則的に透過する光が、どれだけ吸収されるか、という点である。まず最初に断っておくべきことは、どのようなガラスも完全に透明ではなく、言い換えれば、完全に無色ではない、という事実である。もっとも優れた光学ガラスにおいてさえ、光の吸収はごくわずかではあるものの存在し、かなりの厚みを通して見ると、緑がかった黄色あるいは青みがかった色調を示す。他方、現在もっとも優秀なレンズにも用いられているある種の光学ガラスは、光の吸収が非常に強く、あるいはそれ自体が非常に濃く着色されているため、数インチの厚みがあれば、その欠点がはっきりとわかるほどである。
この点については、やや一般の嗜好・世論にも責任の一端があるように思われる。というのも、わずかにでも「緑がかって」見えるガラスが、高級な光学器械に用いられることを、世間が好まないからである。実際には、ガラス職人がごくわずかに緑味を帯びたガラスを作ることは十分可能な場合が多いが、そうした緑色を打ち消すために、あえてガラスに着色酸化物を加え、もとの緑色とおおよそ補色関係にある色をわずかにつけることがしばしば行われる。その結果、一見中性に近い色調のガラスが得られるが、これは本来の緑がかったガラスに比べて、光をずっと多く吸収してしまう。しかも、そのようなガラスはしばしば写真用レンズに用いられるため、この「緑」を避けるために犠牲にされている光線は、スペクトルの青側の端付近にある波長の光であり、その結果としてレンズの写真用感度は、明らかに低下してしまうのである。
屈折および分散――ガラスが入射光・透過光に与える作用を支配する量的な性質は、光学用途においては言うまでもなく基本的な重要性を持つ。各種光学ガラスのもっとも基本的な光学定数は、その「屈折率」と呼ばれる数値である。この数は、本来、光波がそのガラス中を伝わる速度と、自由空間中を伝わる速度との比を表すものである。この比は、ガラスの化学組成と物理状態が変化するごとに変わるだけでなく、光波の波長そのものによっても変化する。言い換えれば、青色光のような短い波長の光は、赤色光のような長波長の光とは異なる速度でガラス中を伝わる。その結果、白色光の光束をプリズムに通すと、スペクトルを構成するあらゆる色の光に分かれ、それぞれが本来の順序で広がっていく。青色光は元の進行方向からもっとも大きく偏向を受け、赤色光はもっとも小さな偏向しか受けない。
このようなときに、さまざまな色の光線がどれだけ、また互いにどのような割合で偏向されるかは、当該ガラスの性質に依存する。したがって、ある種類のガラスの光学的性質を完全に特徴づけるには、ただ一つの屈折率を示すだけでは不十分であり、スペクトル全域にわたって適切に分布する、複数の波長に対する屈折率を示す必要がある。
この目的のために、スペクトル中のいくつかの明瞭な線が基準として選ばれているが、今日一般に用いられている具体的な線群を定め、その体系的使用を始めたのは、イェーナのアッベおよびショットである。彼らは、ガラスの光学的性質をこの方式で規定する体系を導入した。実際に選ばれているのは、波長 0·7677 マイクロミリメートルに対応する A′ 線、および C, D, F, G′ と呼ばれる線であり、それぞれの波長は同じ単位で 0·6563, 0·5893, 0·4862, 0·4341 である。ただし、A′ 線はスペクトルの赤端に近すぎるため、そのデータが必要となることはあまり多くない。
実際のところ、多くの光学ガラスの表では、ナトリウム光(D 線)に対する屈折率だけが記載され、ガラスの分散特性は、他の線に対する屈折率との差を並べることで示される。すなわち、表には C-D, D-F, F-G′ という欄が設けられ、それぞれ C 線と D 線、D 線と F 線、F 線と G′ 線の屈折率の差が記されている。これらの値は、通常、ガラスの「C から D への分散」「D から F への分散」等と呼ばれる。
これらとは別に、ガラスの「平均分散」と呼ばれる量を表に併記するのが普通である。これは、C 線と F 線に対する屈折率の差、すなわち C-F の値であり、視覚上もっとも重要なスペクトル部分を代表する間隔として採用されている。さらに、アクロマートレンズの計算に際してとくに重要となる定数が、D 線の屈折率から 1 を引いた値を平均分散で割ることによって得られる(通常 (C-F)/(n_{D}-1)=ν と書かれる)。この量は、まだ適切な名称が見いだされていないが、ガラスの分散力と全体としての屈折力との比を表すものであり、慣例的にギリシア文字 ν で表される。
次ページの表は、バーミンガムにあるチャンス社(Messrs. Chance)によって製造された光学ガラスの一覧であり、1905 年光学会議のカタログから採録したものである。この一覧は、フランスやドイツの光学ガラスメーカーが公表しているリストに比べればそれほど長くはないが、現在利用可能な光学ガラスの代表的な種類をひととおり含んでいる。ただし、レンズ計算に実際に用いるデータとしては、光学ガラスメーカーの最新版カタログを参照することを勧める。というのも、入手可能なガラスの種類の範囲や、一部ガラスについての数値自体が、時々刻々変化しうるからである。
光学特性表
(1905 年 Optical Convention カタログより。Messrs. Chance 社製品)
--------------+------+----+------+-----------------------------------
| | | | Partial and
| | |Medium| Relative Partial Dispersions.
| | | Dis- +------+----+------+----+------+----
Name. |n_{D}.| ν. | per- | |C-D | |D-F | |F-G′
| | | sion.| C-D. |--- | D-F. |--- |F-G′. |---
| | | C-F. | |C-F.| |C-F.| |C-F.
--------------+------+----+------+------+----+------+----+------+----
Extra Hard | | | | | | | | |
Crown |1·4959|64·4|·00770|·00228|·296|·00542|·704|·00431|·560
Boro-silicate | | | | | | | | |
Crown |1·5096|63·3|·00803|·00236|·294|·00562|·700|·00446|·555
Hard Crown |1·5175|60·5|·00856|·00252|·294|·00604|·706|·00484|·554
*Medium Barium | | | | | | | | |
Crown |1·5738|57·9|·00990|·00293|·296|·00697|·704|·00552|·557
*Densest | | | | | | | | |
Barium | | | | | | | | |
Crown |1·6065|57·9|·01046|·00308|·294|·00738|·705|·00589|·563
Soft Crown |1·5152|56·9|·00906|·00264|·291|·00642|·708|·00517|·570
*Medium Barium | | | | | | | | |
Crown |1·5660|56·3|·01006|·00297|·295|·00709|·704|·00576|·572
Barium Light | | | | | | | | |
Flint |1·5452|53·5|·01020|·00298|·292|·00722|·701|·00582|·570
Extra Light | | | | | | | | |
Flint |1·5316|49·0|·01085|·00313|·288|·00772|·711|·00630|·580
Extra Light | | | | | | | | |
Flint |1·5333|48·5|·01099|·00322|·293|·00777|·707|·00640|·582
Boro-silicate | | | | | | | | |
Flint |1·5623|47·4|·01187|·00343|·289|·00844|·711|·00693|·584
*Barium Light | | | | | | | | |
Flint |1·5833|46·6|·01251|·00362|·288|·00889|·711|·00721|·576
Soda Flint |1·5482|45·8|·01195|·00343|·287|·00852|·713|·00690|·577
Light Flint |1·5472|45·8|·01196|·00348|·291|·00848|·709|·00707|·591
Light Flint |1·5610|43·2|·01299|·00372|·287|·00927|·713|·00770|·593
Light Flint |1·5760|41·0|·01404|·00402|·286|·01002|·713|·00840|·598
Light Flint |1·5787|40·7|·01420|·00404|·284|·01016|·715|·00840|·591
Dense Flint |1·6118|36·9|·01657|·00470|·284|·01187|·716|·01004|·606
Dense Flint |1·6214|36·1|·01722|·00491|·285|·01231|·715|·01046|·608
Dense Flint |1·6225|36·0|·01729|·00493|·286|·01236|·715|·01054|·609
Extra Dense | | | | | | | | |
Flint |1·6469|33·7|·01917|·00541|·285|·01376|·720|·01170|·655
Densest Flint |1·7129|29·9|·02384|·00670|·281|·01714|·789|·01661|·678
--------------+------+----+------+------+----+------+----+------+----
上の表の最初の列には、各種ガラスの通称(商品名)が記されている。これらの名称はやや恣意的ではあるが、そのガラスのおおまかな化学的性質を示している。たとえば「フリント(flint)」という語は、必ず鉛を含むガラスを意味し、その結果、比較的高い屈折率と小さな ν 値を持つ。これに対し「クラウン(crown)」という語は、本来は石灰ケイ酸塩ガラスだけに用いられていたが、現在では ν の値が大きいガラス一般に用いられる。
次の列には、D 線に対する屈折率 n_{D} が、三列目には ν の値が示されている。表を見ればわかるように、ガラスはこの ν 値の大きいものから順に並べられている。この二列をざっと眺めると、多くのガラスについて、屈折率が高くなるにつれて ν の値が小さくなる、という関係が成り立っていることに気付くだろう。この関係の例外に当たるガラスには、表中で * 印が付けてある。
実際のところ、この関係は、イェーナのアッベおよびショットによる現代的な光学ガラス製造の進歩がもたらされる以前、すなわち商業的に利用可能だったすべてのガラスに対し、おおよそ成立していた。屈折率と ν の値とのあいだに、ほぼ単純な反比例関係がある、というのが、旧来のクラウンガラスおよびフリントガラスに対して成り立つ法則である。光学器械設計に必要な条件を洞察したアッベは、この比――すなわちガラスの分散力と屈折力との比――がこのような単純な関係に縛られていることが、大きな制約となっているのを理解し、それを打破する必要性を認識したのであった。
ショットとの協力のもとで、彼は従来知られていなかった一連の光学ガラスの新種を生み出すことに成功した。これらのガラスでは、n_{D} と ν のあいだに、旧来のクラウンおよびフリントガラスに見られたような単純な反比例関係は成立しない。そのなかでももっとも価値が高く、また多くの点でもっとも典型的なのが、「バリウムクラウン(barium crown)」と呼ばれる一群である。これらは、軽フリントあるいは場合によっては高屈折フリントガラスに匹敵する高い屈折率と、通常のクラウンガラスに相当する高い ν 値とを兼ね備えている。
これら新しいガラスの出現によって、レンズ設計にどのような可能性が開かれたかを、ここで詳しく述べるのは、話が光学系設計の領域に深入りしすぎるので控えるが、ごく簡単に言えば、アポクロマート顕微鏡対物レンズ、アナスチグマート写真レンズ、現代の屈折望遠鏡対物レンズなど、19 世紀末から 20 世紀初頭にかけての光学上の大躍進は、いずれもこれら新しい光学媒体の利用を土台としている、ということである。そして、現在では、フランスやイギリスの光学ガラス工場においても、イェーナ工場と同等以上の品質と量で、こうした新種の光学ガラスが生産されているにもかかわらず、これらの偉大な光学的成果は、アッベとショットの先駆的業績の永続的な記念碑として残っている。
上記光学ガラス表の最後の六列には、それぞれのガラスがスペクトルの各部分をどのような割合で分散させるかを特徴づける数値が記されている。C-D, D-F, F-G′ の各列は、すでに述べたように、それぞれ C 線と D 線、D 線と F 線、F 線と G′ 線に対する屈折率の差を表している。これに対し、列の間に挿入された小さな数値は、それぞれの差を平均分散 C-F で割った値――すなわち「相対部分分散(relative partial dispersions)」――を示している。もし、あらゆるガラスがスペクトル各部をまったく同じ割合で分散させ、ただ全体としての分散量だけが異なるのであれば、これらの比はすべてのガラスについて同じ数値になるはずである。実際には、表からもわかるとおり、これらの値はガラスの種類によって大きく異なっている。
ここで少し考えてみれば、二種類のガラスを組み合わせてレンズを作る際――すなわち、お互いの分散を打ち消し合う(アクロマート化する)目的で用いる際――に、完全なアクロマート性を得るためには、この相対部分分散の比が、二つのガラスで一致していなければならないことがわかるであろう。より具体的に言い換えると、あるガラスによって生じるスペクトルが、赤側の端で比較的長く引き伸ばされ、青側の端で比較的圧縮されている一方、もう一つのガラスが、これとは逆に青側で長く、赤側で短いスペクトルを与えるならば、その二つのスペクトルを完全に重ね合わせて互いに打ち消し合うことは決してできない、ということである。どちらか一方のスペクトルが、青側の端では優勢となって残り、逆に他の一方が赤側の端で優勢になって残る。こうしたガラスでアクロマート化されたレンズでは、像の輪郭部分にごくわずかな色縁(色収差)が常に残ることになる。
アッベとショットが新種の光学ガラスを生み出す際に掲げた目標の一つは、この相対部分分散ができるだけよく一致しつつ、ν の値ができるだけ大きく異なる、という一対のガラスを得ることであった。イェーナの研究者たちは、当初、この方向である程度の成功をおさめたと報告していた。しかし残念ながら、この点でもっとも有望と思われた一部のガラスは、実用上の安定性に欠けることが判明し、最終的には製品から外さざるをえなかった。現在、イェーナ社が提供している、真に完全な意味で相互にアクロマート化しうるガラス対は、下表のものだけである。表からわかるように、この二つのガラスは、相対部分分散の値こそきわめてよく一致しているが、ν の値の差はせいぜい 10 に過ぎず、少なくともその一方は、実用上満足できる光学品質で入手することが難しい。
一方で、実際には、ほぼ完全にアクロマート化されたレンズ(一般に「アポクロマート」と呼ばれる)が、とくに顕微鏡用としてツァイス(Zeiss, Jena)によって製造されている。これは、上述の意味で適切に組み合わせられた複数のガラスを用いた結果である。この問題の解決は、こうしたレンズでは二種類以上のガラスを相互補償のために用いることができるうえ、天然鉱物である蛍石(フッ化カルシウム)も併用されているという事情によって、いっそう容易になっているとも言える。しかし、ガラス職人の立場から見れば、依然として「互いに完全にアクロマート化しうる満足な一対のガラス」を生み出すという問題は、いまだ解決されてはいないのである。
イェーナ社が提供するこの「望遠鏡用クラウン」と「望遠鏡用フリント」のデータを、参考までに次表に示す。
---------+------+----+-------+------+------+------+------+------+-----
| | | | | c-d | | d-f | | f-g′
Name. | n_{D}| ν | C-F. | C-D. | --- | D-F. | --- | F-G′.| ---
| | | | | c-f. | | c-f. | | c-f.
---------+------+----+-------+------+------+------+------+------+-----
Telescope| | | | | | | | |
Crown |1·5254|61·7|·00852 |·00250| ·292 |·00602| ·707 |·00484| ·568
Telescope| | | | | | | | |
Flint |1·5211|51·8|·001007|·00297| ·294 |·00710| ·705 |·00577| ·573
---------+------+----+-------+------+------+------+------+------+-----
上掲の光学ガラス表は、フランスやドイツの光学ガラスメーカーのリストに比べれば簡略ではあるものの、実際に利用可能なガラスの範囲をほぼ網羅している。そして、ざっと見ただけでも、その範囲がいかに狭いものであるかが、ただちにわかるだろう。屈折率は、およそ 1·49 から 1·71 の間にしか変化しておらず、仮に一部メーカーが供給しているごく極端な品種――この範囲を一方に 1·40、他方に 1·80 まで広げうるとされている品種――を実用的と見なすとしても、この議論の本質は変わらない。
もちろん、屈折率 1·0 や 1·10 のようなガラスは、理論的に存在しえない。というのも、物質の密度そのものがその屈折率を左右する因子の一つであり、水(屈折率約 1·3)より軽い密度を持つガラスというのは、ほとんど考えられないからである。他方、高い屈折率の方向では、ガラスで見られる上限は、一部の天然鉱物によって大きく超えられている。たとえばダイヤモンドは屈折率 2·42 を持ち、ざくろ石(ガーネット)は 1·75 から 1·81 の範囲の屈折率を示す。ν の値について見ると、表中の光学ガラスの範囲はさらに狭く、67 から 29 の間に収まっているが、蛍石のような鉱物は 95·4 という値を示す。
これらの事実は、現在われわれが持っている光学ガラスがカバーしている狭い範囲を、はるかに超えた光学定数を持つ透明物質が、物理的には十分可能であることを示している。そして、そのように拡張された範囲の材料が利用可能になれば、光学器械設計者の手には、はるかに広い可能性が開かれるであろうことは、わざわざ述べるまでもない。したがって、現時点で光学ガラスの範囲がなぜこれほど限定されているのか、その実際の原因を問うことは、たいへん興味深い問題である。結論から言えば、その限界はガラスという物質そのものの性質によって定められている。
平均的な光学特性を持ち、分散力が旧来のクラウンおよびフリントガラスについて成り立った逆比例則におおよそ従うような、比較的一般的な種類のガラスは、化学的に安定であり、冷却中に化学変化を起こしたり結晶化したりする傾向はほとんど示さない。ところが、より極端なガラスでは、このような好ましくない性質が、現在利用可能な範囲の端に近づけば近づくほど、ますます顕著になる。特定の光学特性を異常な方向へ押し進めるために、特殊な物質をガラスに添加して組成を「無理に」変えれば変えるほど、ガラスの化学的・物理的安定性は急速に低下していくのである。
極端な組成のガラスは、実質的に活性の強い化学物質のように振る舞い、周囲の比較的不活性な物質に対しても容易に反応・結合しようとする。すなわち、それらは溶融中に、それを収める耐火粘土製のるつぼに対して激しい作用を及ぼし、完成品になってからも、酸、湿気、さらには温かい空気にさえ容易に侵される。また、多くのガラスは、冷却時のある臨界温度範囲を急速に通過させないと、結晶性(かつ不透明)の集合体の状態へと移行してしまう。その傾向が一定の限度を超えると、ガラスの自己破壊的な性質を抑えることが現実的に不可能となり、生産そのものが成り立たなくなる。したがって、現在われわれが持つような系統のガラスに関しては、光学媒体の範囲を大きく拡張することは、あまり期待できないように思われる。
他方で、透明な結晶性鉱物に知られている光学特性が示しているように、もし十分な大きさと純度を持つ人工結晶を光学用途に供しうるようになれば、光学定数のとりうる範囲は、はるかに広くなりうる。著者は、こうした方向――すなわち人工鉱物結晶の製造――こそが、将来の光学材料の進歩が最終的には進むべき道であると考えている[1]。
[1] 現著者による論文 “Possible Directions of Progress in Optical Glass”
(光学ガラスにおける進歩の可能な方向)参照。
Proceedings of the Optical Convention, London, 1905.
必要な光学定数、良好な色調(すなわち実質的な無色)、完全な均質性に加えて、優れた光学ガラスには、さらにいくつかの性質が不可欠である。これらは、一般によいガラスに要求される物理的・化学的性質であるが、光学ガラスにおいては、その要求水準が他のいかなる種類よりも厳しくなる。
まず、化学的安定性はきわめて重要である。たとえ光学性能がどれほど優れたレンズであっても、大気中の湿気に対して弱い性質を持っていれば、短期間のうちに役に立たなくなってしまう。ポリッシュされた表面はすぐに曇り、やがてレンズ全体が使用不能になる。ガラスの化学的安定性を左右する要因や、その試験法については、すでに第一章および第二章で述べた。上記表に挙げた「ハードクラウン(Hard Crown)」や「ボロシリケートクラウン(Boro-silicate Crown)」のような硬質光学ガラスは、おそらくあらゆるガラスの中でももっとも耐久性に富み、化学的にも安定したグループに属する。しかしすでに触れたように、極端な光学特性が要求される場合、そのために必要となるガラス組成は、常にある程度この化学的安定性を犠牲にすることを意味し、ついには、いかに優れた光学特性を持っていても、その急速な崩壊傾向によって長所が相殺されてしまうような限界点に達する。そうなれば、そのガラスは実用的には採用できない。
特殊な場合としては、そのように不安定なガラスで作ったレンズを、安定なガラスで作ったレンズで挟み込むようにセメント貼りすることで、ある程度保護することも理論上は可能である。しかしこの方法は、光学系の設計上、さまざまな制約を伴うため、実際にはほとんど用いられない。いずれにせよ、レンズ設計者は、使用するガラスの相対的な安定性を十分考慮に入れ、光学系のどの位置にどのガラスを配置するかを決めるべきである。言うまでもなく、もっとも外側で大気の湿気に直接さらされ、また扱う人間の不注意な「手入れ」にもさらされる位置には、硬くて耐久性の高いガラスを配置するのが望ましい。
後者の要因――すなわち人間の手入れによる影響――は、レンズの寿命にとってきわめて重要である。まず、ガラス表面は、たとえ「清潔な」指で一度軽く触れただけでも、その指紋として残る極薄い有機物の膜によって、きわめて大きな影響を受ける。ガラスの品質が悪いと、こうした指紋は簡単に虹色の斑点へと発達し、やがて黒いシミとなることさえある。同様に、ガラス表面に降り積もった微細な塵粒も、後に同様の作用を及ぼしうる。したがって、レンズ面を鏡筒やハウジングの内側に機械的に封じ込めておくことは、それだけで表面保護の上で非常に有効である。
しかし一方で、光学器械の内部金属面が、製造後かなり長い間蒸発性の気体を放出するようなニスで塗られている場合もある。そのような例では、内部レンズがその蒸気によって曇らされる危険がある。他方、外側のレンズは、取り扱い時の機械的損傷や、「掃除」と称する不適切な擦り拭きにもさらされる。しばしば、ソーダを含むガラスでは、湿った場所に長時間放置すると、表面にごく薄い曇りが生じることがある。この曇りは主として、表面に析出した微小な炭酸ナトリウム結晶によるものであり、これらの結晶は、ガラス面の上でこすり動かすと、ガラス自体を傷つけるほど硬く鋭い。こうしたレンズを、たとえどれほど清潔で柔らかい布であっても、乾いた布でそのままこすると、研磨面に回復不能なダメージを与えることになる。これは、レンズをきれいな水で一度洗い流すか、あるいは最初の拭き取りだけでも濡らした布を用いることで、容易に防ぐことができる。
ガラスの機械的硬さは、この種の有害な取り扱いや、固く鋭い物体との偶発的接触に対する耐性を大きく左右する。ガラスの硬さについては、すでに第二章で一般的な議論を行ったので、ここで付け加えることは多くない。大まかに言えば、屈折率が低いガラスほど、硬度が高い傾向がある。この傾向は、硬さの差がかなり大きい場合――たとえばハードクラウンと高屈折フリントを比較する場合――には、確かに成立している。しかし、屈折率や密度の差が小さい場合には、軽いガラスの方が必ずしも硬いとは限らない。
「硬さ」という性質に関与する諸要素は、ガラスを研磨・ポリッシングする際の挙動にもきわめて大きな影響を及ぼす。良好な光沢を得る難易は、ガラスの種類によって大きく異なり、もっとも硬いガラスと、もっとも柔らかいガラスの両極端が、いずれも磨きにくい傾向を示す。硬いガラスは、研磨中に偶発的な傷を受けにくく、一般にきれいに作業が進む利点はあるが、その分、分子が移動に抵抗するため、満足なポリッシュを得るまでに要する時間はかなり長くなる。したがって、最良の結果を得るためには、研磨作業中の速度や押し付け圧力を、そのガラスの性質に合わせて注意深く調整しなければならない。
最高級の光学ガラスに欠かせないもう一つの性質は、内部応力の欠如である。この問題は、光学ガラス製造におけるアニール工程の項であらためて取り上げるので、ここでは簡単に触れるにとどめる。ガラス中の内部応力は、偏光器(ポラリスコープ)によって容易に検出できる。完全にアニールされ、内部応力をまったく持たないガラスは、偏光された光束を通しても何の影響も与えないが、わずかな応力を持つガラスも、顕著な複屈折性を示すようになる。多くの光学用途において、このような複屈折は望ましくない、あるいはまったく許容できないことが多い。というのも、複屈折はガラス塊の部分ごとに有効屈折率にわずかな差を生じさせてしまうからである。さらに、観測される複屈折がかなり大きい場合には、それはガラスが破壊寸前の応力状態にあることを意味し、とくに研磨工程の初期段階や、衝撃にさらされたときに、簡単に割れてしまう危険がある。
後に見るように、完全にアニールされたガラスを得ることは可能であるが、そのためにはきわめて特殊な手段が必要であり、光学ガラス製造にとってはかなりの負担となる。そのため、光学設計者の側でも、アニールに関して不必要に過剰な要求を行わないことが望ましい。優良な光学ガラスにしばしば見られるごくわずかな複屈折は、ほとんどの目的に対してはまったく無害である。
第十三章
光学ガラス
最高級光学ガラスの製造工程は、ごく簡潔に言えば、「もっとも純粋で均質なガラスで満たされた一つのるつぼを得て、それをその場(in situ)で徐冷・凝固させる」ことに尽きる。こうして得られたガラス塊の中から、もっともよい部分を選び出し、光学用途に応じた形状に成形するのである。
ここからすぐにわかるように、この工程には、本書でこれまで述べてきた他のどの製造法とも本質的に異なる点が一つある。それは、ガラスが溶融状態にある間は、決して溶解ポットから取り出されることがなく、ギャザリング、注ぎ出し、圧延、プレス、吹きなど、これまでに説明したいかなる加工も施されない、という点である。一見すると不合理に思えるこのやり方がとられる理由は、光学用途に必須の完全な均質性を得るには、非常に手間のかかる方法が必要であり、いったん達成された均質性も、ガラスを乱さずにそのまま凝固させない限り保つことができないからである。もしパイプやラドルを差し込んでガラスを動かせば、ほぼ確実にストリエやその他の好ましくない欠陥を生じてしまう。
特定の光学特性を持つガラスを製造する際に選択される原料とその配合比は、所望の光学定数を与える化学組成が、実験によってあらかじめ決められていることによって支配される。そのため、光学ガラスの配合は、炉の条件に合わせて調整したり、溶融や精製を容易にするために変えたりすることができない。要するに、通常のガラス製造でガラス職人が用いる多くの「手段」は、もっともその助けが欲しいはずの光学ガラスの分野において、ほとんど利用できないのである。
他方で、製造者には、同じ化学成分をどのような形で配合に導入するかについて、ある程度の選択の余地が残されている。たとえば、ある成分を酸化物として用いるか、炭酸塩として用いるか、硝酸塩として用いるか、水酸化物として用いるか、といった選択である。この選択は、溶融の初期段階において、ガラス全体にどのような挙動をさせたいか――たとえば、どの程度の酸化力・還元力を持たせるか、どの程度の発泡作用を期待するか――などによって決められる。また、各物質が市販されている状態での純度も、選択を決定づける重要な要因である。原料の純度が高ければ高いほど、ガラスの良好な色――すなわち、ほぼ完全な無色――を得ることが容易になるからである。
均質性が最終製品にとってきわめて重要である以上、光学ガラスの原料は、他の種類のガラスよりもはるかに念入りに混合されなければならない。そのため、原料は一般のガラスよりもずっと細かく粉砕した状態で用いられることが多い。通常、光学ガラス一回分の配合量はそれほど大きくないので、機械的混合装置を用いるほどの規模にはならず、きわめて注意深い手混ぜが行われるのが普通である。
理論的には、原料のみから直接ガラスを溶かしても、十分成功した溶解が得られる。しかし実際には、前回の同種溶解から得られた「クレット(cullet:屑ガラス)」を一定割合で混ぜる方が好ましい。こうして用いるクレットは、まず目視検査で選別され、はっきりした不純物を含んでいる片は取り除かれる。ただし、ストリエの見られる片は、通常この段階では除外されない。クレットの大部分は、原料と均一に混合されるが、その一部は、後に述べる別の目的のために残しておく。
光学ガラス製造に用いられる炉の形式は、工場ごとに大きく異なる。ある工場では、旧式の円錐形石炭炉がいまだに用いられているが、その欠点よりも、構造の単純さと調節の容易さの方が勝る、と製造者たちは考えている。他方、別の工場では、最新式のガス焚き蓄熱炉が設置されており、その中でも最高品質の光学ガラスを生産することができる。
もっとも、光学ガラス用炉は、一般のポット炉と比べて一つの顕著な違いがある。すなわち、通常のガラス工場では、一つの炉に 4 〜 12 個、多いときには 20 個近いポットを同時に収めるのに対し、光学ガラス用炉は、たいてい一つのポット(るつぼ)だけを収めるように設計されている。こうした容量の制限は、光学ガラスでは配合を炉の条件に合わせて自由に変えられない以上、炉の方をできる限り溶解すべきガラスの性質に合わせて運転する必要があり、その結果、各ポットごとに加熱温度と加熱時間を細かく調整しなければならない、という事情によって説明される。複数のポットを同一炉で加熱する場合、これを完全に満たすことは、困難どころか事実上不可能である。また、光学ガラスの溶解には、他のガラスに比べてはるかに多くの注意と手間がかかるので、たとえ一つの炉に多くのポットを入れたとしても、結局はそれぞれに専任の作業員をつけなければならず、炉を大型化するメリットはほとんど得られない。
光学ガラス工場の設備のうち、単一ポット溶解炉のほかに、とくに重要なのが、複数の加熱窯(キルン)である。これらは、各種るつぼの予備加熱や、場合によっては最終冷却にも用いられる。類似の窯は他の分野のガラス工業でも使用されているが、その場合、いったん炉に入れたポットは数週間から数ヶ月にわたって使用されるのが普通である。これに対して光学ガラスでは、一つのポットは一度の溶解にしか用いられない。したがって、新しい溶解のたびに新しいポットが必要となり、予備加熱用の窯は頻繁に稼働することになる。これらの窯は、通常、十分な火格子と煙道を備えた耐火レンガ製の炉室であり、4〜5 日かけて徐々に赤熱状態まで温度を上げることができる。また、冷却の際には、研磨板ガラスのアニール窯と同様に、炉口を密閉して自然冷却に任せることができる。
光学ガラスの溶解に用いられるポット(るつぼ)は、通常、第二図に示したフリントガラス用の蓋付きポットと同じ形状をしている。ただし光学ガラス用ポットは、フリントガラス用に比べて壁をかなり薄く作る。というのも、光学ガラス用ポットは、フリントガラス用ポットのように、長期間にわたり溶融ガラスにさらされるわけではないからである。他方で、この用途に用いる耐火粘土は、鉄分その他の不純物がガラス側へ移行するのを極力避けるため、とくに慎重に選定しなければならない。特殊な一部ガラスの製造には、普通の耐火粘土では間に合わず、特別な材料から作られたポットが必要となることもある。というのも、それらのガラスは溶融時に、普通の耐火粘土に対して急速な化学的攻撃を行うからである。
すでに述べたように、溶融ガラスはつねに耐火粘土に対してある程度溶解作用を及ぼすため、ポットのアルミナ分は少しずつガラス中に取り込まれていく。このようにして汚染された部分のガラスは、一般にポット内の他の部分よりも粘稠であり、そのため通常は、るつぼの内壁付近にある程度まとまって付着したまま残る。しかし、溶解および精製(ファイニング)過程に伴う種々の撹乱によって、この粘稠なガラスの一部は、ストリエとなってるつぼ全体へと拡散してしまう。このストリエは、後述の「攪拌(stirring)」工程の際にようやく除去される。しかし一方で、ガラスが溶融状態にあるかぎり、こうした粘稠層の生成は絶えず続いているため、工程後半で撹乱を十分に抑えないと、凝固直前になって新たなヴェイン(すじ)が生じてしまうおそれがある。
光学ガラスの実際の溶解操作は、まず上述の予熱窯内でポットを徐々に昇温することから始まる。ポットが十分な赤熱状態に達すると、窯の扉が開けられ、車輪付きの長い重い鉄製フォークによって、ポットが引き出される。このフォークを窯口から差し入れ、先端のツメをポットの下に差し入れて持ち上げ、そのまま窯から引き出すのである。
この間に、溶解炉の温度は、予熱窯が達していた温度とほぼ同じになるように調整されている。したがって、ポットをできるだけ素早く予熱窯から溶解炉へと移動させるとき、急激な加熱による大きな温度差を与えずに済む。もし、新しいポットをいきなり完全な溶解温度にある炉へ入れようとすれば、耐火粘土は急激に収縮し、るつぼ全体が崩壊してしまうであろう。もっとも慎重に運んでも、ポットがこの段階――あるいは少し後の段階――で亀裂を生じ、破損することを完全に避けることはできない。とくに後者の段階で破損が生じるときは、すでにポットは溶融ガラスで満たされていることが多く、その場合ガラスはすべて流出して失われてしまう。
空のポットを所定の位置に据え付けたら、溶解炉の前面は、大形の耐火レンガを積み上げた仮設の炉壁で慎重に封じられる。このとき、ポットの蓋(フード)の口だけは、炉壁に設けた開口によって外からアクセスできるようにしておく。この開口部は、一枚または複数枚の耐火板で閉じることができ、これを取り外すと、原料の投入やその他の操作のための作業口が現れる。
ここまで準備が整うと、あらかじめ混合を終えた原料を積んだ台車が、通常炉の前まで運び込まれる。ただし、原料をポットに投入し始めるのは数時間後であり、その間に炉を強く焚いて、溶解温度に近い状態まで上げる。
炉とポットが必要な温度に達したら、原料投入の前に、まず先に残しておいたクレットの一部だけをポットに投入し、溶かす。この操作を経てはじめて、最初の原料配合がポットに入れられる。この手順の目的は、ポットの底部と壁の一部を、薄い溶融ガラスの層で予め覆っておくことである。こうしておけば、原料が炉の高熱にさらされた際に起こる激しい化学的・物理的作用から、ポットの内壁をある程度保護することができる。
その後、ポット内を溶融ガラスで満たす作業は、原料配合を少しずつ追加投入することで進められる。配合物は、それが変化してできるガラスよりも体積が大きく、また溶融の際にはかなり泡立つため、ポットから半溶融ガラスが噴きこぼれないように、それぞれの投入量を慎重に加減しなければならない。ポット内のガラスが増えてくると、未溶融配合物を加えられる空きスペースもどんどん減ってくるため、後期に投入される配合量は、初期に比べてかなり少なくなる。
最終的に、ポットをほぼ満たすだけの原料を投入し終えると、工程は次の段階へ進む。最後の原料が溶けきった後のポット内には、大小さまざまな泡を大量に含んだ、やや粘稠な液体状態のガラスが満たされている。この泡をすべて追い出して、ガラスを純粋かつ「ファイン(fine)」な状態にすることが不可欠であり、そのためには、炉温をさらに上げてガラスをより流動的にすることが必要となる。温度の上昇は、泡内部のガスを膨張させるため、泡を大きくし、浮き上がりやすくもする。このように、温度上昇は、泡の離脱を二重の意味で促進する。そのため、炉温は可能なかぎり高温まで上げられ、この極端な高温状態が、泡が消失するまで維持される。
より融けやすい種類のガラスでは、この目的のために必要な温度は、それほど極端に高いわけではなく、むしろ他の不都合を避けるために、あまり高温になりすぎないよう注意しなければならない。一方、硬いクラウンガラスなどの場合には、十分な温度を得ること自体が困難である。というのも、炉やポットの寿命を脅かすことなく、それだけ高い温度を維持するのが難しいからである。泡の除去の困難さは、光学ガラスの範囲を一方向に制限する要因の一つである。もっと硬いガラスを溶かすこと自体は不可能ではないが、それらを「ファイン」な状態に保つのに必要な流動性を得るほどの高温を、長時間維持することは現実的でないのである。
別種のガラスでは、ガラスを非常に高温で完全に流動的にしても、溶融塊から泡を完全に取り除くことが不可能になる場合がある。その正確な原因はまだ知られていないが、ある種のガラスでは形成される泡が非常に微細であり、たとえガラスが完全に流動的であっても、泡が浮き出る傾向をほとんど示さないようである。また別の種類のガラスでは、温度を上げて既存の泡を取り除こうとすると、そのたびに新たな微小泡が絶えず発生するような挙動を示す。しかも、このような性質は、もっとも価値の高い新種光学ガラスの一部に見られるため、光学設計者やユーザーは、これらのガラスから作られたレンズやプリズムの中に、ごく微小な泡が存在することを、事実上受け入れざるをえなくなっている。
ただし、これらの泡はきわめて小さいため、光学性能に与える影響はごくわずかであり、泡に当たった光のうちごく一部が吸収・散乱されるにとどまる。そのため、この欠点は、むしろ避けがたい小さな不利として、十分に上回る利点と引き替えに容認されている。
再び溶解工程にもどると、泡を取り除くために必要な高温は、場合によっては 30 時間にも及ぶ長時間にわたって維持される。この間、ガラスはときおり抜き取り検査され、泡の残存状況が調べられる。検査は、ポットから少量のガラスを取り出し、それを観察して泡が残っているかどうかを調べることで行われる。ある工場では、細いパイプの先端にごく少量のガラスを取り、そのまま小さな球状フラスコに吹き広げる方法を採る。こうしたフラスコを適切な光の下で観察すれば、ごく微小な泡であっても容易に検出できる。他の工場では、より簡単な方法が用いられ、小さな鉄棒の平らな端に、ポットから少量のガラスをすくい取り、そのまま棒の上で冷やす。このガラスを棒から押し出すと、長さ 8〜10 インチ、幅約 1 インチほどの小さなガラス棒が得られ、これを透かして見れば、泡の存在はすぐにわかる。このような検査片は、ガラス職人の間で「プルーフ(proof)」と呼ばれている。
このようにして得られたプルーフが、泡の消失を示すようになれば、炉の極端な高温状態は徐々に和らげられ、ポットの口を覆っていた耐火板が取り外される。次の工程は、ガラス表面の「スキミング(skimming)」である。汚染源となりうる物質の多くは、溶融ガラスよりも比重が小さいため、ポット内ガラスの表面に浮いている。そこで表面層を取り除くことで、偶然混入したが溶けずに残っている物質や、ガラス全体に溶け込まず表面に残っている物質を除去するのである。
続いて行われるのが、溶融ガラスの攪拌(stirring)であり、ガラスをできるかぎり均質にし、ストリエを取り除くことを目的とする。このために用いられる撹拌棒は、あらかじめ焼成・予熱された耐火粘土製の円筒である。その一端には深い四角い穴が設けられており、最初はこの穴に小さな鉄棒を差し込んで保持する。この状態で赤熱した耐火粘土円筒をポット口から差し入れ、やがて溶融ガラスとほぼ同じ温度になるまで炉内に保つ。その後で、円筒をガラス中に差し入れると、やがてガラス中に浮かぶようになる。
攪拌を開始するときは、長い鉄棒の先端を L 字に曲げ、その四角い先端を耐火粘土円筒の上端にある四角穴に差し込む。こうして、耐火円筒はガラス中で垂直に支えられ、その状態でゆっくりと回転運動を与えられる。これが攪拌動作である。このために用いる長い鉄棒は、上方に設けた滑車(スイベルホイール)の上を通るように設置されており、作業者は棒の端に取り付けられた大きな木製ハンドルを操作して、円筒を一定速度で回転させる。この作業は、常に重労働かつ過酷なものである。作業者はポットの開口部から放射される強烈な熱に直接さらされるため、交代要員が短い間隔で交互に作業にあたらなければならない。
攪拌の初期段階では、ガラスはまだ高温で流動性が高い。しかし攪拌は、ガラスが次第に冷えて粘稠になり、もはや撹拌棒をほとんど動かせなくなるまで続けられる。この頃には、ガラスが撹拌棒の動きにほとんど抵抗しない初期とは違い、棒を動かすだけでもかなりの力を要する。実際に必要となる攪拌時間は、ガラスの種類やポットの大きさによってさまざまであり、4 時間程度で十分な場合もあれば、20 時間に及ぶ場合もある。
ガラスが十分に粘稠になり、これ以上攪拌できない状態に達したら、最終的な冷却の準備に入る。耐火粘土製の撹拌棒をガラスから引き抜くこともあるが、この作業は大変な労力を伴い、粘ついたガラスが円筒に多量にまとわりついて、貴重なガラスが無駄に取り除かれてしまう。そのため、通常は撹拌棒をガラス中に埋め込んだままにしておく。
次に達成すべき目的は、ガラスが完全に「セット」するまで、すなわち明らかに固体状になるまでの間、できるだけ早く、しかし安全な範囲内で急冷することである。その目的は、対流やその他による内部流動によって、ストリエが再び生じるのを防ぐことにある。この急冷は、工場ごとにさまざまな方法で行われる。一つの方法では、炉自体に多数の開口部が設けられており、それらを開くことで外気を炉内へ引き込み、ポットとガラスを、それらを動かすことなく冷却する。この方法の利点は、ポットを動かさずに済むため、粘稠なガラス塊が乱される危険が最小限に抑えられる点にある。しかし、炉の内部で得られる冷却速度には自ずと限界があり、炉自体も冷やされてしまう。また、ポット内のガラスがある程度冷えた時点で、急冷を停止しなければならない。さもなければ、ポットの中身全体が亀裂を生じ、粉々に砕けてしまうからである。
ポットを炉内に残したまま急冷を行った場合、冷却速度を落とすには、炉全体を一時的なレンガ積みと耐火粘土の目地で密封し、炉全体を一種のアニール窯として用いなければならない。この状態で、ガラスが常温近くまで冷めるのを待つことになるが、その所要時間は、溶解の大きさに応じて 1〜2 週間におよぶ。こうした長期間にわたる炉の「遊休」は、経済的観点からはきわめて好ましくない。
そこで一般には、攪拌終了後、ポット全体を炉から引き出して冷却する方式がとられる。この方法では、急冷段階を経たのち、ある温度までガラスが冷えたら、別に用意したアニール窯へ移し替えることで、炉をすぐに次の溶解に使えるようにすることができる。
ポットを炉外へ取り出すには、まず炉前面の仮設レンガ積みを取り壊す。その後、長いバールでポットの底をこじ上げ、炉床(シージ)から切り離す。炉床には、溶融ガラスや半溶融耐火粘土がこびりついているため、ポットは強く貼り付いており、これを引きはがす作業はかなりの力を要する。ポットが一時的に持ち上がったら、その下に耐火レンガ片を差し込んで支え、その間に、車輪付きの重い鉄製フォークのツメをポットの下へ潜り込ませる。次に、長いハンドル付きの鉄製締め輪(バンド)をポットの周囲に巻きつけ、滑車装置を使ってポットを前方へ引く。続いてフォークのツメを少し持ち上げると、ポット全体がフォークに載せられ、そのままフォークを押して炉外へ運び出し、適当な支持台の上に降ろす。この位置で、ガラスが完全にセットするまで十分に冷却される。つぎに再びフォークで持ち上げ、あらかじめ適温に温めておいたアニール窯へ移す。
こうして、灼熱した大きな質量の物体を何度も移動させる作業は、大きな労力を要するだけでなく、ガラスがまだ十分固まる前にポットに亀裂が入れば、ガラスが一挙に失われる危険も伴う。そのため、この種の事故を防ぐためにあらゆる注意が払われる。たとえば、ポットの外周を鎖で巻き締めたり、外側から補助支持を与えたりして、小さな亀裂が即座に大きな破断に発展しないよう工夫する。
このような溶解が炉またはアニール窯内で十分に冷却され、取り扱い可能な温度にまで下がったら、ポット全体が取り出される。その外側を包んでいる耐火粘土の殻は、たいていすでに多数のひび割れが入っているので、ハンマーで比較的容易に打ち砕くことができる。順調な場合には、内部のガラスが一つの巨大な塊として残っており、その重量は半トンを超えることもある。しかし特別な注意を払わない限り、ガラスはある程度亀裂を生じており、比較的大きな塊がいくつかと、それに混じって大量の小片とが得られるのが普通である。
次にこれらの破片を選別し、目に見える欠陥を含まない片、あるいは小さな欠陥部分をチッピングハンマーで容易に切り落とせる片だけを取り分ける。
続く工程では、この粗い破片を、光学的用途に必要な形――たとえば板状、ブロック状、円板状など――に成形する。ここで用いられる成形装置は工場ごとに異なるが、いずれの場合も、ガラス片を徐々に加熱して軟化させ、あらかじめ用意された型の形に忠実に従わせる、という点で共通している。型は耐火粘土で作られることもあり、この場合はガラスを自重でゆっくりと沈み込ませて形をとる。他の場合には鉄製の型が用いられ、木または金属の成形工具で軽い圧力を加えながら、ガラスを型の形状に沿わせていく。さらに、比較的小さく薄い円板や、中凸・中凹のレンズに近い形にあらかじめ成形したい場合には、プレス機を用いることもある。
いずれの成形方法にしても、その後には必ず最終的なアニール工程が続く。これは、成形時の赤熱状態から、常温に至るまで、ガラスをきわめてゆっくりと冷却する工程である。この冷却に要する時間は、対象物の大きさと、残留内部応力をどの程度まで取り除きたいかによって、大きく変化する。一般的な用途であれば、大きな窯の中で 6〜8 日かけて自然冷却させるだけでも十分なことが多い。しかし、完全な複屈折の除去が求められる特殊用途向けには、さらに高度なアニールが必要である。その場合、温度を精密に制御・維持できる特別なアニール窯が用いられる。こうした窯では、1℃の温度低下に数時間を要するような、非常に緩やかな冷却速度を維持することができるため、大型の円板やブロックであっても、きわめて完全にアニールされたガラスを得ることができる。
アニール窯から取り出された光学ガラスの板や円板は、研磨・ポリッシング工場へ送られる。そこで、必要に応じて特定の面や縁が研磨・ポリッシュされ、前章で述べたような方法――すなわち透過光やストリエ検査装置を用いる方法――によって、泡、ストリエその他の欠陥がないか詳しく検査される。ガラスがまだ粗い破片の状態にある段階で行いうる選別はごく限られているため、成形・アニールを終えた後の最終検査で、かなり多くのガラスが不合格となり、廃棄されることになる。したがって、一つのポットから得られる完全な光学ガラスの量は、ポット内容積全体の 10〜せいぜい 20 パーセント程度にとどまるのが普通であり、それより少ないことも決して珍しくない。この事実を念頭に置けば、光学ガラスの価格が、他の種類のガラスに比べて相対的に高い理由も、自然と理解されるであろう。
完璧な光学ガラス片の製造に関わるさまざまな要素を考え合わせると、そのコストと困難は、作りたいガラス片の重量が増すにつれて急激に増大することがわかる。したがって、大型の天文望遠鏡用レンズに必要なような巨大な単一光学ガラス円板の価格が、ある大きさを超えると事実上「天文学的」な値に達し、事実上製造不可能になってしまうのも、それほど驚くべきことではない。たとえば、一回の溶解から、5〜6 ポンドずつの比較的小さな片に分けて用いるのであれば、総計 100 ポンド分の良質ガラスを得ることは、さほど難しくない。しかし、単一ブロックとして 100 ポンドの完全無欠なガラス塊を得ることは、はるかにまれである。
前者の場合には、もっとも良い部分だけを選び取り、粗い破片の段階で大きな欠陥をチッピングで取り除き、さらにその後の成形段階でも、必要に応じて不良部分を切り落としたり研磨で削り落としたりすることができる。しかし、大型の単一ブロックが必要な場合には、そうした「やり直し」がほとんど利かない。一筋の細いヴェイン――肉眼では見えないほど細い場合もある――が、ブロック全体を貫通するように走っていることがあり、その場合、この筋を完全に取り除くには、ブロック全体を割るか切るかしなければならない。そのような事態は、ブロックの体積が増えるほど高い頻度で起こりうる。さらに、再加熱や成形に伴う困難は、ガラス片の大きさとともに飛躍的に増大し、大型片を加熱・冷却するときには、偶発的破損の危険も非常に大きくなる。
これらの事情を考え合わせれば、現代の屈折望遠鏡の口径がほぼ限界に達しているように見えるのは、決して不思議ではない。むしろ、1 メートル径にも達する光学ガラス円板がすでに製作されているという事実の方こそ、人間の技術と意欲の見事な成果として驚嘆に値するのである。
第十四章
雑多な製品
ガラス製造の分野はきわめて広く、その製品の数と種類もまた非常に多いので、本書の限られた紙幅の中でそれらをすべて完全に列挙することは到底不可能である。とはいえ、その中には、それ自体きわめて重要でありながら、前諸章のいずれの見出しにも容易には含めがたい製品が若干存在する。本章では、そうした製品のいくつかについて、簡単に述べることにする。
ガラス管(Glass Tubing)――
もっとも広く利用されているガラスの形のひとつは、大小さまざまな管である。これは、温度計の製作に用いられる極細の毛細管から、排水その他の目的に用いられてきた重い引き抜き管ないしプレス管に至るまで、あらゆる寸法と形状に及ぶ。製造に用いられる工程は、必要とされる管の大きさや性質によって異なる。
たとえばランプ・チムニーは、短い長さで用いられる一種のガラス管であり、比較的口径が大きく、かつ肉が薄い。もっとも、これらは通常、長い管を作ってから短く切断して作るのではなく――すでに述べたように――薄肉の円筒形びんを型に吹いて成形し、そののち胴部の所定の長さを残して頸部と底部を切り取ることによって作られる。この方法によれば、油ランプ用チムニーに見られるような、長さの途中にくびれた形状も容易に得られる。
より厳密な意味で「ガラス管」と呼ばれる製品は、しかしながら、実際の吹き作業がごくわずかしか関与しない工程により製造される。まず、適当な大きさのガラスを吹き竿に巻き取り、竿からわずかな内空を吹き込んで作る。その後、吹き竿を適当な方法で振り回しながら、この塊を細長く伸ばす。こうして伸ばしたガラス塊のうち、竿から最も遠い端を、第二の作業者が持つ棒(「ポンテ」)に付ける。すると二人の作業者は互いに離れる方向に動き出し、その間に挟まれたガラス塊を引き延ばすのである。
必要とされる管の内径と肉厚に応じて、二人は離れる速度を調節する。より薄い管を作る場合には、ガラスが冷え固まってしまう前に十分に引き延ばせるよう、二人はより速く動かなければならない。もちろん、引き延ばし速度は使用するガラスの性質にも合わせなければならず、この性質は種類により大きく異なる。細い内径の管を製造する場合、作業者たちはかなり早足で離れていかなければならないが、ゲージグラス用のような肉厚の硬質管を引き出す際には、非常にゆるやかな動きで足りる。場合によっては、管が所定の厚さに達した段階でガラスの「据わり」(硬化)を早めるため、送風機による送風を行うか、あるいはもっと原始的な方法として、少年たちに団扇で熱いガラスをあおがせることもある。いずれにせよ、引き延ばされた管を受け止めるための適当な槽が用意されており、そこから管を取り出して、必要不可欠な作業である徐冷(アニール)のために徐冷炉へ送る。
管の製造に用いられるガラスの種類は、用途に応じて非常に幅広い。一般的な種類のガラスであれば、ほとんどいかなるものでも容易に管状に引き延ばすことができるため、どのガラスを使うかの選択はもっぱら他の条件によって決まる。ガラス細工師――すなわち、ガラス吹き用ブローパイプを用いて器具や諸製品を作る「ランプワーカー」――に供給するための管では、繰り返しの加熱・冷却に耐え、結晶化(失透)を起こさないことが要求され、また炎の中で適度なやわらかさを示すことも必要である。さらに、この用途には鉛を含むガラスは適さない。鉛ガラスはブローパイプの炎の作用のもとで黒変してしまうためである。この目的には、アルカリ分に比較的富むソーダ石灰ガラスがもっともよく用いられる。しかしその化学組成の結果として、この種のガラスは、特に湿気の多い場所で長期間保管されると分解しやすい傾向がある。しばしば、この分解は、ガラスを炎で加熱したときにはじめて明らかになる。その際ガラスは砕け散ったり、あるいは表面がくもってざらついたりする。この種のガラスはしばしば「失透した」と言われるが、実際にはそうではない。実際に起こっているのは、大気中の水分がガラスの内部にいくらか浸透し、おそらくシリカの一部を水和させる現象である。加熱すると、この水分が追い出される結果として、数本の大きな亀裂、あるいは無数の微細な亀裂が生じる。後者の場合、ガラスを軟化させてもこれらの亀裂は容易に消失せず、そのため最終的に表面が鈍く粗い状態になってしまう。
高温にさらされる用途には、いわゆる「硬質ガラス」で作られた管が用いられる。これは実質的にはボヘミア・クリスタルの一種であり、その化学組成は石灰分に比較的富むカリ石灰ガラスである。このボヘミア硬質ガラスは、ある程度まで、イエナのショット社が製造する特殊な「燃焼管用ガラス(combustion tube glass)」によって置き換えられている。このガラスはマグネシアを含む非常に耐火性の高いホウケイ酸ガラスであり、硬質ボヘミアガラスよりも高温に耐え、また温度変化に対していくぶん鈍感である。その一方で、一度加熱されると白濁した乳光を呈し始め、やがて完全に不透明化してしまうという不便な性質を持っている。
耐熱性が主として要求される多くの用途において、現在では普通ガラスにとってきわめて手強い競争相手が現れている。それが、商業的に満足できる品質で供給されるようになった「ガラス状シリカ(vitreous silica)」である。この物質の大きな利点は、大部分の通常の用途において、完全に不溶融物とみなしうる点にある。すなわち、シリカを軟化ないし溶融させるには、酸素を供給した炎による非常に強い高温が必要となる。さらに、ガラス状シリカは熱膨張係数がきわめて小さく、また熱伝導係数も比較的高いように思われる。その結果として、この材料で作られた管や他の製品は、驚くべき熱的耐久性を備えている(第II章参照)。
この材料で作られた白熱状態の管や棒は、何の問題もなく冷水中に投じることができる。また、特に大きな寸法や肉厚の品物でない限り、この物質で作られた製品を加熱・冷却する際に特別な注意を払う必要はない。もしそのような大形・肉厚品であっても、ほんの少しの注意が必要なだけである。このような大きな利点に対応して考慮すべき短所は、製品の比較的高い価格と、ある種の化学的作用に対する感受性の高さにある。価格についていうと、現在ガラス状シリカ製品は二つの異なる形で市販されている。第一の形態のものは、外観がごく普通のガラスによく似ており、この種の管や容器の形状や仕上げは、近年著しい向上を遂げている。この種のシリカガラスは、実際には溶融したシリカから、普通ガラスとおおよそ類似した方法で成形されたものであり、その製造費が非常に高くつく理由の一部は、シリカを溶融・加工するために必要となる極度の高温にある。通常、この種のシリカ製品の製造では、その高温を得るため、酸素ガスを惜しみなく――したがって非常に高価に――消費する。
これと対照的なのが、同じくガラス状シリカではあるが、外観がまったく異なる第二の形態である。こちらは、特殊な電気炉でシリカを溶融することにより得られる一連の製品である。石英をいかなる形で溶融する場合でもごく容易に生じる微小な気泡が、この種の製品ではほとんど除去されず、そのまま残っている。しかもそれらの気泡は、しばしば極度に引き伸ばされた毛細状の空孔の形をとり、このために当該製品特有の乳白色の外観が生じる。この種の製品は、主として管の形で使用されるが、相当な大きさの洗面鉢、るつぼ、さらにはマッフル炉用容器なども入手可能である。この第二の種のシリカ製品の価格は、透明な第一種に比べればかなり低く、実際、一級陶磁器よりもはっきり安価である。ただし、その価格でさえ、一級ガラス管よりもかなり高い。
価格の問題とは別に、シリカ製品の用途は、塩基性物質すべてに対して敏感であるという点によっても制約を受ける。したがって、この物質にアルカリ溶液を接触させることはできない。とりわけ温度が高い場合、アルカリ溶液は激しくシリカを侵すからである。高温下では、あらゆる塩基性物質がシリカ製品に対して急速な侵食作用を示し、シリカは事実上、赤熱以上の温度で強い酸性物質として振る舞う。たとえば、酸化鉄や酸化銅のような物質を、加熱されたガラス状シリカに接触させると、その攻撃はきわめて急速に進み、管は数分のうちに完全に破壊される。これは、シリカがケイ酸塩を形成する過程で、全面的な亀裂や崩壊を招くためである。このように、ことに安価な種類のシリカ製品は、確かに大きな利点と可能性を有しているものの、その使用にあたっては、その化学的性質に十分留意しなければならない。
ガラス状シリカは、上述した用途や利点に加え、光学的な観点からも興味深い物質である。というのも、これは、通常のガラスでは完全に不透明である短波長(紫外線)光に対して透明だからである。ごく最近、イエナ工場では、通常のガラスに比べて紫外線に対する透過性の高い特殊ガラスが製造されているが、それでもなお、この点においてガラス状シリカには遠く及ばない。この紫外線透過性の性質は、二つの大きく異なる方面で利用されている。一つは、医療その他の特殊目的のために紫外線を発生させる用途である。ガラス状シリカ製の管の内部で水銀蒸気アークを発生させると、きわめて強力な紫外線源が得られる。もう一つは、顕微鏡学における紫外線の光学的性質を活用する用途である。ここでは、水晶レンズの使用によってこれが可能になる。結晶質の石英は複屈折性を有するため、完全な光学系を構成する目的には利用できないが、この問題は、ガラス状シリカ製レンズを用いることによって解決された。たとえばイエナのカール・ツァイス社が製作する「紫外線顕微鏡」においてである。しかしながら、光学用途に十分なほど気泡の少ないガラス状シリカの大きな塊を製造することは、現在のところきわめて困難であり、実際に光学用途に用いられているのはごく小さなピースのみである。この困難の主因は、単に石英を溶かすこと自体ではなく、その内部に閉じ込められた気泡を除去する点にある。ガラスの場合に一般に行われるように、温度を上げて気泡が表面に浮上するまで待つという方法は、この場合には適用できない。ガラス状シリカでは、融点をやや上回る程度の温度まで昇温すると、シリカそのものが気化しはじめ、激しく沸騰さえしてしまうからである。しかし、ごく最近になって、二人のアメリカ人研究者が、この困難を克服する方法を提案している。それは、溶融初期と後期の段階で、それぞれ真空および高圧を利用することにより、気泡を除去しようとするものである。これが成功すれば、近い将来、気泡もなく完全に透明な、大型のガラス状シリカブロックが製造可能になるかもしれない。
すでに述べたように、ガラス管およびガラス棒は、ガラス工がブローパイプ(あるいは「ランプ」)を用いてさまざまな製品を作り出す際の基本材料となる。このようにして作られるものの中には、とりわけ化学の分野で用いられる多数の科学用器具・装置が含まれている。別の方面では、ガラス管はある種のガラスビーズ製造の基材としても用いられる。これは、適当な直径と色を持つガラス管を加熱し、それを切断して、短いほぼ球状の小片にすることによって作られる。ビーズの色は、必要な色調のガラスそのものを用いることで得られる場合もあるし、無色ガラスのビーズを作って、その内部に着色物質を封入する場合もある。
実心のガラス棒も、またさまざまな目的に用いられる。その製造方法は、中心部に空洞を吹き込まずに、巻き取ったガラス塊をそのまま引き延ばすという点を除けば、管の場合とまったく同じである。ガラス棒が極度に細く引き延ばされたものが、ガラス糸ないしガラス繊維である。これは、熱いガラスを非常に高速で引き延ばすことによって作られ、その結果生じた糸状物は大きな車輪に巻き取られる。かつてはこの材料がかなり広く用いられたことがある。極細のガラス繊維を紡いで織物にすることができ、その布地が衣装用途に利用されていたからである。しかし、この流行がさほど広がらず、かつ長続きもしなかったことは、むしろ歓迎すべきことであろう。というのも、これは健康に対して明らかに重大な害をもたらしうるものだったからである。人体の咽喉や肺に吸入されうる物質の中でも、微細なガラスほど有害、あるいは危険なものはほとんど存在しないことがよく知られている。さらに、ガラス繊維は、絶え間ない屈曲や摩耗にさらされると、必ず頻繁に破断を起こす。その結果、たとえば数着のガラス繊維製ドレスが着用されている舞踏室の空気は、ほどなく無数の細かく鋭利なガラス片で満たされ、それを吸い込んだ人々に有害な影響を与えることになったであろう。現在、ガラス繊維の用途は、おおむね化学実験室で特殊目的に用いられる「グラスウール」に限られている。
溶融石英またはシリカから作られる極細の繊維は、相対的には非常に高い強度を持ち、多くの科学機器に用いられている。その極度の軽さと完全な弾性、そしていわゆる「弾性疲労」がまったくない点は、きわめて貴重な特性である。これらの繊維は、ガラスの場合のように溶融シリカの塊から直接引き出されるのではなく、酸素供給式ブローパイプを用いてシリカを溶かして作った小さな玉に、釘やボルトを付着させておき、その釘やボルトを弩(クロスボウ)で長い通路の先へ向けて一気に射出することにより作られる。その際にシリカのきわめて細い繊維が引き出されるのである。ただし、この操作でもっとも難しいのは、こうして作られた繊維を実際に見つけ出し、扱うことである。
人造宝石(Artificial Gems)――
適切に着色したガラス片は、外見上、しばしばかなりもっともらしい形で宝石に似せることができる。この事実は、あらゆる種類の模造宝石の製造へとつながってきた。この目的に用いられるガラスは、通常きわめて高密度のフリントガラスであり、その高い屈折率が、意図される模倣を容易にしている。宝石の外形は、もちろんガラスを切削・研磨することによって容易に模倣できるし、所要の色彩は第XI章で述べた各種の着色剤によって得ることができる。カジュアルな観察者には、高密度フリントガラス(屈折率約1.8)と、各種鉱物(屈折率1.7~2.2)の間に存在する屈折率の違いから生じる輝きやきらめきの差を見分けることは、そう容易ではない。しかし、少し注意して観察すれば、その差はすぐにわかる。屈折率計を用いて光学定数を測定すれば、模造品であることはたちどころに明らかとなるが、さらに手軽なのが硬度試験である。高密度フリントガラスは本質的にやわらかく、大半の硬い鉱物によって容易に傷つけられる。一方、宝石、特にガーネット、ルビー、ダイヤモンドは非常に硬い。普通の窓ガラスを引っかいてみれば、大抵の真正宝石は容易に傷をつけることができるが、フリントガラス製の模造宝石は、かろうじて表面にわずかな痕跡を残せる程度であり、その痕跡も傷というよりは「こすれ跡」に近い。比重測定もまた、当然ながら有効な試験手段である。フリントガラスは比重が4を超える高密度であり、この点でたちまち正体を現してしまうからである。
カットしたフリントガラスで作られた模造宝石とはまったく別の範疇に属するのが、自然界の宝石とまったく同じ本質と組成を持ちながら、人為的な過程によって生産された「人造宝石」である。筆者の知る限りでは、この種の人造宝石が相当量生産されているのは、ルビーの場合だけである。しかし少なくともルビーに関していえば、人工結晶の生産費は、天然石の購入費より安価というわけではなく、少なくとも同程度に高価であるとされている。とはいえ、溶融および結晶化に関する技術がよりよく知られ理解され、ケイ酸塩鉱物の化学がさらに発展すれば、少なくとも中程度の大きさの鉱物結晶を人工的に生産することは、ますます可能になっていくであろう。その際には、これら鉱物の真に価値ある特性が、人類の役に立つ形で提供されるところまで、その生産技術が完成されることが期待される。
急冷ガラス(Chilled Glass)――
本書で取り上げたあらゆるガラス製造工程において、アニール(徐冷)はつねに重要な役割を果たしてきた。すなわち、熱を用いた最終工程を終えたガラスは、そのままでは内部に残留応力を抱え込んでおり、その応力は通常、ガラスの存続を危うくし、その使用を妨げるおそれがある。そのため、ガラスは必ず段階的な冷却工程にかけられ、内部応力を除去するのである。しかし一方で、表層に圧縮応力を生じさせるような内部応力を負ったガラス表面は、損傷を受けにくく、アニールされて応力を取り除いた状態よりも、見かけ上強くなることが知られている。これに対して、引張応力を負ったガラス表面はきわめて繊細で壊れやすい。したがって、ある観点からいえば、アニールしていないガラスの方が、アニールしたものより強く見える場合もある。
この種の例としてよく知られているのが、いわゆる「ルパートの滴(Rupert’s drop)」である。これは溶融ガラスを水中に滴下することによって作られ、一般に、ほぼ球形の頭部から、糸状に細くなった長い尾が伸びている形をとる。このルパートの滴は、かなり重いハンマーで叩いても、同じ形状・大きさのアニールガラス製の物体なら粉々に砕けてしまうような打撃に耐えることができる。しかしながら、その表面にわずかな傷がつけられたり、尾の先端が折られたりすると、滴全体が、しばしばかなり激しい破裂を伴って、微小な破片へと崩壊してしまう。
デ・ラ・バスティ(De la Bastie)やジーメンス(Siemens)をはじめとする多くの発明家は、このような急冷ガラスの性質を実用化しようと試みてきた。ただし、彼らが目指したのは、ルパートの滴に見られるような極端な内部応力状態そのものではなく、より穏やかな冷却によって内部応力をある程度まで軽減した「強化(tempered)ガラス」である。そこでは、内部応力による硬化の利点を一部残しつつ、アニールガラスにかなり近い安全性を得ようとしたのである。かつては、この種の強化ガラスが珍品としてしばしば目にされた。たとえば床に落としても割れないタンブラーなどがその例である。しかし、こうした製品はえてして、やがて表面にわずかな傷や欠けを生じ、その途端に粉々になってしまうのが常であった。
とはいえ、実際にジーメンス社では現在も、特別な用途向けに一部の強化ガラスを製造している。デ・ラ・バスティの方式もイギリスで試みられ、ある程度の成功を収めたとされるが、現在では商業的に実施されておらず、また大きな重要性を獲得したこともないようである。
質量ガラス(Massive Glass)――
ガラス使用の拡大に熱心な人々は、この材料を実にさまざまな用途に適用しようと試みてきた。その中には、建築物の構築や道路舗装も含まれている。前者の例は、1900年のパリ万国博覧会に見られた。ここでは、素材が光を透過するという特性を利用し、大型のガラスブロックを鋳造して建物を構築したのである。完成した建築物は、見た目にもそれなりに魅力的であったが、この種の用途がその後大きく広まるには至っていない。
道路舗装への応用では、ガラスの硬さと耐久性だけが有用な特性となる。この用途においても――フランスでいくつかの試験的な舗装が行われたものの――新製品が広く普及している形跡は、現時点では見られない。前述の、ガラス粉が有害であるという点は、ガラス舗装にも当てはまる。舗装材の自然な摩耗は、かなりの量のガラス粉の発生を招くだろうからである。ガラス舗装の推進者たちは、しかしながら、ガラスの高い硬度のおかげで実際の摩耗量は大きく減少し、その結果としてガラス粉の発生は大幅に抑えられるだろうと主張する。この点については、長年にわたる使用経験によってのみ判断できることであるが、ガラスブロックが、たとえば優良な花崗岩製の石畳よりも摩耗が遅いと考える明確な根拠はないように思われる。一方で、ガラスブロックは、所定の寸法どおりに鋳造されるため、切断加工の手間が不要となり、その分だけ製造費が安くなる可能性は高い。
「水ガラス(Water-glass)」、すなわちケイ酸ソーダまたはケイ酸カリは、おそらく「ガラス製造」の範疇に含めるにはいくぶん無理があるかもしれないが、いくつかの点でガラスと密接な関係をもっている。たとえば、水ガラスの製造法のひとつとして、ガラス製造用タンク炉に類似した炉で、砂とアルカリを溶融する方法があるし、また溶融したケイ酸塩が冷却するとガラス状の固体となるという点でも、ホウ砂などの物質と同様にガラスに似ている。しかし、ケイ酸ソーダおよびケイ酸カリの用途は、ガラス製造の分野からはかなり隔たっているため、本書ではこれ以上触れないことにする。
本章を締めくくるにあたり、ガラス工場の製品の中から、もう一つだけ取り上げたい。それはガラス工芸のうちでも、とりわけ壮観で豪華な例を含むものである。それが、灯台や探照灯から発せられる強力な光線を支えている巨大な鏡およびレンズである。これらは「鏡」および「レンズ」と呼ばれてはいるものの、その機能としては確かに光学器官としての働きを果たす一方で、その本質や製造方法は、他種のレンズ製造に用いられるガラスとは大きく異なっており、「光学ガラス」の範疇には含めがたい。
光学ガラス製造の特徴は、各るつぼ(あるいは一回の溶解)ごとに、ガラスをそのまま冷却し、不規則な破片に砕けさせたのち、それを再び所定形状に鋳造する点にある。もし灯台用に必要とされる大型ガラス体を、同じ方法で製造しようとすれば、そのコストは天体望遠鏡用対物レンズに用いられる大口径ディスクの価格に近づいてしまうであろう。それではもちろん、まったく実用的でない。さらに、灯台用レンズに求められる色調、均質性、その他の欠陥のなさに関する要件は、良質な一般光学用途において不可欠とされる要件ほどには厳しくない。この違いの理由は、灯台レンズや探照灯用鏡が、あくまで光束に所定の方向性を与えるためだけに用いられ、鮮明な像を結ばせる用途には用いられない点にある。したがって、ガラス中に多少の不均一が存在しても、それはそれほど重大な問題にはならない。
このような事情から、灯台用ガラスは、光学ガラスほど精緻な工程を経ずに生産することができる。もちろん、ガラスを可能な限り完全なものにするための配慮は払われるものの、そのおおよその形状は、溶融ガラスを目的の形をした鉄型に鋳込むことによって与えられる。このようにして鋳型から取り出し、徐冷したガラスは、大きな回転テーブルに固定され、灯台用フレネルレンズの各種形状に応じて、円輪状レンズまたは円環レンズ部材となるよう、研磨・光沢出しが行われる。この方法によって、直径48インチまでの完全なリング状円環レンズを作ることができる。それ以上の大きさのリングは、通常複数のセグメントを組み合わせて作られ、こうして構成されたリングは、ときには半径7フィートにも達することがある。大部分の灯台レンズには、屈折率1.50〜1.52の硬質ソーダ石灰ガラスが用いられるが、特殊な用途には、屈折率1.63の高密度フリントガラスが使用される。
探照灯用鏡の形状および大きさはきわめて多様である。その形は、多くの場合、設計された光束の形状に大きく依存する。たとえば、多くの用途では放物面形状が必要とされるが、扇状の平たい光束を投射することが求められる場合には、水平方向には楕円断面、垂直方向には放物線断面を持つ形状が必要となる。こうした鏡の多くは、あらかじめ必要な温度まで加熱したガラス板を、所定の形状を持つ型の上に載せて曲げ、その後、曲げ加工によって生じた表面の粗さを除去するために再研磨・再光沢出しを行うことで製造される。
別種の鏡としては、「マンガン型(Mangin)」と呼ばれるものがある。これは、中心部が周辺部よりもかなり薄くなるよう、二つの球面を偏心させて配置した形状を持つ。マンガン型鏡では、背面の反射作用が前面の屈折作用によって修正されるが、背面・前面ともに球面であるため、通常の機械的方法によって高精度に研磨・光沢出しを行うことができる。この種の鏡は、単一ガラス片から直径6フィートまでの大きさのものが製造されている。
付録
文献目録(BIBLIOGRAPHY)
ガラス製造に関する既存の文献は非常に少なく、その全体を挙げても、ほとんど一枚の紙で事足りるほどである。とりわけ英語で書かれた書籍や論文はきわめて少ない。フランス語およびドイツ語による文献は、いくぶん数が多い程度である。本書の執筆にあたり、著者が参照した文献を中心に、その内容の範囲と、ある程度その価値についても示しておけば、学生が、目的とする情報がほとんど含まれていないような、入手しにくい文献をわざわざ探し求める手間を省くことができるであろう。
ガラス製造に関する英語の書籍および論文
The Principles of Glass Making(George Bell & Sons)
Powell & Chance 共著。
主としてフリントガラスおよび板ガラスに関する、旧来の工程を明快かつ簡潔にまとめた入門書。
“Glass.” Encyclopædia Britannica 第9版 所収記事。
分野全体をほぼ網羅する詳細な工程解説であるが、記述されている工程の多くは、現在ではほとんど用いられていない。
“Glass.” Encyclopædia Britannica 第9版 補遺 所収記事。
Harry J. Powell 著。
比較的最近の発展についての簡潔な要約。特に英国製美術フリントガラスに関する記述が有用。
Jena Glass Hovestadt 著(J. D. & A. Everett 訳)。
ショット社イエナ工場において行われた、ガラスに関する科学的研究およびその実際的応用について、詳細な記述を含む。とりわけ本書第I章、第II章、第XII章および第XIII章に関連して興味深い。書名が示すとおり、本書はイエナ側の立場から書かれており、他所で行われた業績には十分な評価を与えていないきらいがある。もっとも、本書は訳者たちの手によって、内容面で大いに補強されている。
“Some Properties of Glass.” W. Rosenhain 著。
(ロンドン光学協会会報 1903年)
ガラスの光学用途に関わる諸性質について、簡潔にまとめたもの。
“Possible Directions of Progress in Optical Glass.” W. Rosenhain 著。
(ロンドン光学大会議議事録 1905年)
本書第XII章において本文中で引用した。
Optical Convention Exhibition Catalogue, London, 1905.
光学および灯台用ガラス、ガラス加工機械などに関する歴史的・一般的な解説を含む。
“Glass for Optical Instruments.” R. T. Glazebrook 著。
(英国工芸協会におけるカントール講演)
近代光学ガラス製造についての概説。
Old English Glasses Albert Hartshorne 著。
イングランドにおけるガラス製造史について述べる。
The Methods of Glass Blowing W. Shenstone 著。
実験目的――すなわちランプ作業――のためのガラス吹き操作を記述。
ガラス製造に関するフランス語書籍
Guide du Verrier G. Bontemps 著。
同時代における第一級の専門家による古典的著作。ただし内容の多くは、現在では完全に時代遅れとなっている。この書は、光学ガラス製造技術をイングランドに導入した人物による著作として興味深い。
Verres et Emaux L. Coffignal 著。
本書第VIII章の主題に関連する内容が中心。
Le Verre et le Crystal J. Henrivaux 著(P. Vicq Dunod et Cie., Paris)。
豊富な挿絵を備えた大著で、詳細な情報が大量に盛り込まれている。著者は、当時ヨーロッパ最大級の板ガラス工場の総支配人を務めた人物であり、そのため板ガラス製造の記述はとくに貴重である。本書のかなりの部分は、歴史的・美学的事項に割かれている。
La Verrerie au XX^{ième} Siècle J. Henrivaux 著(Paris, R. Bernard et Cie., 1903)。
実質的には前掲書の続編とみなせる。ただし、記述されている工程や製品の中には、実用性に乏しいものも含まれている。主として板ガラスおよび瓶ガラス製造における近年の発展に関して有用。
ガラス製造に関するドイツ語書籍
Die Glasfabrikation R. Gerner 著(A. Hartleben’s Verlag, Wien und Leipzig, 1897)。
主要なガラス製造工程の大部分について、簡潔で明快な説明を与える。内容はきわめて実務的であり、記載されている情報は信頼できるものと思われるが、必ずしも網羅的ではない。
Die Herstellung Grosser Glaskoerper および
Die Bearbeitung Grosser Glaskoerper C. Wetzel 著
(いずれも Hartleben’s Verlag, Wien und Leipzig, 1900年および1901年)。
大型ガラス製品の製造・加工に用いられる、多数の特殊工程および装置について記述している。ただし、これらの説明の一部は、実際には特許明細書のほとんど逐語的な引用にすぎないように見受けられる。
Glasfabriken und Hohlglasfabrikation R. Dralle 著(Leipzig, Baumgaertner, 1886)。
ドイツでは古典とみなされている書籍。工場全体――炉および付属設備を含む――の詳細な平面図や図面を示し、主として瓶製造を扱っている。
Die Glasfabrikation Dr. E. Tscheuschner 著(Weimar, B. H. Voigt, 1888)。
当時知られていたあらゆる工程について、きわめて詳細な記述を行っている。しかし近年の実務の急速な進歩により、本書の内容の一部はすでに時代遅れになりつつある。
Jenaer Glas Hovestadt 著。
英訳版についてはすでに言及した。
Der Sprechsaal(Schmidt, Weimar)。
ガラスおよび陶磁器産業に関する技術的課題を扱う業界誌。ガラス製造に関する技術的・科学的な内容を含む論文や抄録が、時折掲載される。
* * * * *
上記の書籍や論文のほかにも、世界各国の技術誌・科学誌には、きわめて多数の論文や短報などが散在している。しかし、その中で真に興味深く重要なものは、すでに産業界に何らかの形で影響を与えており、本書の各製造分野に関する記述、あるいは上記に挙げた書籍の中で紹介または引用されているであろう。
索引
A.
Abbé(アッベ), 8, 10, 210, 218
光のガラス中での吸収, 32, 179
酸, ガラスに対する作用, 11
ホウ酸, ガラスに対する作用, 11, 186
炭酸, ガラスに対する作用, 12
フッ化水素酸, ガラスに対する作用, 12
リン酸, ガラスに対する作用, 11
空気, 圧縮空気, 91, 105, 117
アルカリ塩化物, ガラス製造における使用, 41
潤湿性ガラス中の含有量, 6
金属, 184
硝酸塩, 44, 78
供給源, 40
アルカリ性液体, ガラスに対する作用, 11
アルミニウム, 51, 186
アンモニアソーダ, 41
無歪写真レンズ(アナスチグマティック写真レンズ), 213
古い窓ガラスの色, 16, 202
焼きなまし(アニール), 瓶, 103
窯, 103
光学ガラス用, 235
板ガラス用, 135
ロールド板ガラス用, 127
無煙炭, 42, 53, 79
アンチモン, 188
アポクロマート対物レンズ, 213
ヒ素, 52, 78, 105, 117, 188
人造宝石, 246
Auerbach, 22
アベンチュリン, 185
B.
細菌, ガラスに対する作用, 13
バリウム化合物, 47, 186
バリウム・クラウンガラス, 212
バリウムガラス, 7
重晶石(バライト), 48
アルカリ以外の塩基, 供給源, 45
ビーズ, 244
ガラスの化学的挙動, 6
板ガラスの曲げ, 144
面取り(ベベル仕上げ), 145
ブラックアッシュ, 41
気泡(ブリスター), シートガラス中の, 160, 168
耐火粘土ブロック, 58
タンクブロック, 59
吹き工, シートガラス用, 158
吹き工の椅子, 111
ガラス吹き, 89
孔開け, 91, 161, 189
シートガラスの吹き作業, 161
吹きガラス, 装飾, 114
板ガラス, 171
ボヘミアガラス, 109, 240
沸き立ち(ボイリング・アップ), 81
瓶, 焼きなまし, 103
吹き作業, 改良, 99
機械, 100
色, 96
製造, 炉, 97
吹き用型, 98
手作業による製造, 98
原料, 95
強さ, 18
ホウ酸, 11
ホウ素, 186
ホウケイ酸クラウン, 212
Boucher の瓶吹き機, 101
耐火れんが, 58
シリカれんが, 60
光学ガラス中の気泡, 230
除泡, 81
ポットの焼成, 58
C.
カドミウム, 186
炭酸カルシウム, 46
酸化カルシウム, 45, 186
硫酸カルシウム, 47
炭素, 53, 79, 186
炭酸ソーダ, 41
炭酸(炭酸ガス), ガラスに対する作用, 12
大瓶(カーボイ)の吹き作業, 104
板ガラスの鋳込み, 132
椅子, ガラス吹き工用, 111
チョーク, 46
シャモット, 57
Chance, 211
木炭, 42, 58, 79
炉への原料装入, 75
ガラスの化学的挙動, 6
化学組成, 5
光学ガラスの, 217
溶融中の化学反応, 76
急冷ガラス, 247
ガス灯用チムニー, 23
ランプ・チムニー, 238
クロム, 着色作用, 190
レンズの清掃, 220
石炭, 無煙炭, 42, 53, 79
コバルト, 着色作用, 197
コークス, 42, 53, 79
古い窓ガラスの色, 16
ガラスの色, 32
色の理論, 181
光学ガラスの色, 208
シートガラスの色, 167
色付き吹きガラス, 113
色ガラス, 178
技術的用途, 203
燃焼管(コンバスションチューブ), 7, 241
圧縮空気, ガラス吹き用, 91, 105, 117
電気伝導度, ガラスの, 30
熱伝導度, ガラスの, 24, 29
銅, 着色作用, 184
コッパー・ルビー, 184, 188, 198
ガラスの腐食, 11
被い付きポット, 56, 109
クラウン, ホウケイ酸, 219
クラウンガラス, 175, 211
硬質クラウン, 212, 219
軟質クラウン, 212
望遠鏡用クラウン, 215
炉頂(クラウン), 60
るつぼ, 製造, 56
ガラス溶解用, 54
ガラスの圧縮強さ, 19
蛍石, 52
ガラスの結晶化, 3
結晶(鉱物), 218
屑ガラス(カレット), 74
光学ガラス用, 224
ロールド板ガラスの切断, 128
円筒, シートガラス, 161, 171
D.
脱色, ガラスの, 52, 188, 190, 193, 197
吹きガラスの装飾, 114
欠陥, ロールド板ガラス, 129
シートガラス, 166
ガラスの定義, 1
De la Bastie, 248
失透, 3, 11
ダイヤモンド, 屈折率, 216
ガラス面のくもり(曇り), 12
ディナスれんが, 61
シートガラスの浸し作業(ディッピング), 166
分散, 光学ガラスの, 209
部分分散, 214
複屈折, 光学ガラス中の, 221
ローリングマシン(二重圧延機), 130
管の引き出し, 239
ガラスの延性, 20
ガラスの耐久性, 試験法, 14
ほこり, レンズへの作用, 220
ガラス粉塵, 245
E.
ガラスの弾性, 20, 24
ガラスの電気的性質, 29
Epinal, 39
ガラスのエッチング, 12
熱膨張係数, 24, 25
F.
長石, 40, 44
繊維, ガラス, 245
シリカ繊維, 245
模様入りロールド板ガラス, 87, 130
その切断, 131
レンズ上の指紋, 219
精製(ファイニング), ガラスの, 81
光学ガラスの, 229
耐火粘土, ガラスへの作用, 6
ポット用, 55
練り上げ(ウェッティング・アップ), 57
ファイアポリッシュ, 117
フラッシュドガラス, 25, 199
フリント(珪石), 40
ホウケイ酸フリント, 212
高密度フリント, 212, 246
最高密度フリント, 212
超高密度フリント, 212
フリントガラス, 7, 49, 78, 108, 211
軽フリント, 212
ソーダフリント, 212
望遠鏡用フリント, 215
蛍石, 屈折率, 216
Fontainebleau, 38
光学ガラスの溶解(ファウンディング), 227
Fourcault 法, 174
フレネル, 251
炉頂(クラウン), 60
ガス炉, 63
炉, 瓶製造用, 97
ガラス溶解用, 54, 62
光学ガラス用, 225
板ガラス用, 133
ロールド板ガラス用, 122
シートガラス用, 151, 170
ポート(出炎口), 67
エコノマイザー付き(回収式)炉, 66, 156
蓄熱式炉, 66, 155
タンク炉, 59, 69
経済性, 72
溶融, プロセス, 73
ガラスの融点(溶融温度), 5
ガラスの「凍結」(固化), 2
G.
ガス灯, チムニー, 23
ガス発生炉, 62, 64
掬い手(ギャザラー), 158
ガラスの巻き取り(ギャザリング), 85, 88, 158
ゲージ管, 10, 18, 23, 26
宝石, 人造, 246
幽霊像(ゴースト), 写真の, 16
芒硝(グラウバー塩), 43
金, 着色作用, 185
板ガラスの研磨, 137
石膏(ギプス), 47
H.
強化ガラス(ハードンドガラス), 20
ガラスの硬さ, 21
試験法, 22
重晶石(ヘビースパー), 48
Henrivaux, 19
Hertz, 22
ホックボトル色, 195
Hohenbocka, 38
中空ガラス器, 108
ホースシュー炎, 69
フッ化水素酸, ガラスに対する作用, 12
潤湿性ガラス, アルカリ含有量, 6
I.
圧痕弾性率, 22
屈折率, 216
ガラスの絶縁性, 29
鉄, 96
着色作用, 196
ガラス中での酸化, 195
圧延による不規則性, 86
J.
イエナ(Jena), 7, 10, 14, 26, 29, 203, 210, 213, 241
K.
ケルプ, 40
Kowalski, 19
L.
実験室用器具, 10, 23
ガラスの汲み出し(ラドリング), 85
ロールド板ガラスのラドリング, 124
ラグレ(Lagre), 166
ランプ・チムニー, 110, 238
ランプワーク, 240, 244
大型容器, 製造, 105
鉛, 49, 183, 188
リアー(徐冷炉), ロールド板ガラス用, 127
シートガラス用, 165
Leighton, 39
レンズ, 清掃, 220
指紋, 220
小レンズのプレス, 94
光, ガラスに対する作用, 15
灯台用ガラス, 178, 250
消石灰, 45
石灰石, 46
ガラス体の限られた範囲, 4
Lippe, 38
Lynn, 39
M.
機械, 面取り用, 145
二重圧延機, 130
研磨機, 139
ポリッシングマシン, 141
マグネシア, 48, 186
マンガン, 15, 52, 80
マンガン鏡, 252
マーバー, 111
質量ガラス, 249
ガラスの機械的性質, 18
金属, ガラスへの付着, 26
鉱物, 結晶性, 217
鏡, 145
探照灯用, 251
原料の混合, 73
吹きガラス用型, 90, 110, 116
プレスガラス用型, 119
Muffled glass(マッフルド・ガラス), 172
ムラノ(ヴェネツィア)ガラス, 123
N.
ニッケル, 96
着色作用, 197
ニッケル鋼, 27, 148
硝酸塩, アルカリ, 44, 78
O.
対物レンズ, アポクロマート, 213
望遠鏡用, 218
オパールガラス, 45, 52, 186
不透明板ガラス, 146
開放ポット, 56
光学ガラス, 焼きなまし, 235
化学組成, 217
冷却, 233
コスト, 237
精製(ファイニング), 229
溶解(ファウンディング), 227
炉, 225
硬さ, 220
成形(モールディング), 235
プレス, 93
屈折率・分散の範囲, 216
原料, 223
選別, 235
安定性, 219
応力, 221
撹拌(スターリング), 231
収率, 236
光学的性質, ガラスの, 205
P.
ガラス絵(彩画), 201
パラゾン(中間塊), 102
パテント・プレートガラス, 171
舗装石, ガラス製, 249
パールアッシュ, 43
リン酸, 11
リン, 188
写真のゴースト像, 16
レンズ, 無歪写真レンズ, 213
色, 209
パイプ, ガラス職人用, 89
シート吹き用, 158
ウォーマー, 158
板ガラス, アニール窯, 135
曲げ, 144
吹き板ガラス, 171
鋳込み, 132
色, 33
模様入りロールド板, 87
平坦度, 134
炉, 133
研磨機, 139
研磨, 137
鏡, 145
不透明板, 146
ポリッシングマシン, 141
研磨, 137
原料, 132
ロールド板, 86, 123
銀引き, 146
寸法, 143
強さ, 15
条痕(ストリア), 143
網入り, 27, 147
白金, 27
研磨, 理論, 141
ポンテ, 98, 176, 239
カリ(ポタッシュ), 43
ジャガイモ, ガラス溶解時の使用, 81
ポート(出炎口), 炉の, 67
ポット, 焼成, 58
被い付き, 56
乾燥, 58
フリントガラス用, 109
光学ガラス用, 226
製造, 56
開放ポット, 56
ガラスの注ぎ出し, 85, 87
プレスガラス, 92, 118
組成, 120
プレス機, ガラス用, 119
試料(プルーフ), 82, 231
原料の純度, 36
Q.
石英, 40
R.
ガラス体の限られた範囲, 4
回収式炉(レクーペレーティブ炉), 66, 156
鉛丹(レッドリード), 49
屈折, 複屈折, 光学ガラス中の, 221
光の屈折, 光学ガラス中の, 209
屈折率, 216
蓄熱式炉, 66, 155
Reichsanstalt, 10
結晶化に対する抵抗, ガラスの, 4
灯台レンズ用リング, 251
棒(ロッド), ガラス, 245
ロールド板ガラス, 86, 123
焼きなまし, 127
切断, 128
欠陥, 129
模様入り, 130
炉, 123
ラドリング, 124
原料, 124
圧延, 126
選別, 129
表面, 122
ガラスの圧延(ローリング), 86
ルビー, 人造, 247
ルビー, 銅ルビー, 184, 188, 198
フラッシュド・ルビー, 184
金ルビー, 185
ルパートの滴, 248
S.
ソルトケーキ, 37, 42, 79, 189
砂, 38
砂岩, 39
Schott, 8, 19, 203, 213, 241
シートガラスの傷(スクラッチ), 169
探照灯, 250
シートガラス中の種(シード), 167
Siedentopf, 182
包囲ブロック(シージブロック), 59
Siemens, 248
Sievert, 92, 105, 117, 172
法, 105, 117
信号用ガラス, 203
シリカれんが, 61
シリカガラス, 5, 26, 241
シリカの供給源, 37
ケイ素, 着色作用, 187
銀, 着色作用, 185
板ガラスの銀引き, 146
板ガラスの寸法, 142
ソーダ灰, 41
炭酸ソーダ, 41
硫酸ソーダ, 37, 42, 79
硫化ソーダ, 80
亜硫酸ソーダ, 79
ガラスの固化, 1
溶液, ガラスとの類似, 206
ロールド板ガラスの選別, 129
比熱, ガラスの, 25, 29
誘電率(比誘電率), ガラスの, 29
染み(ステイン), 有色, 200
Stassfurth, 44
ロールド板ガラス中の石(ストーン), 129
シートガラス中の石, 167
原料の貯蔵, 37
応力, 光学ガラス中の, 221
ガラスの強さ, 19
条痕(ストリア), 色ガラス中の, 203
光学ガラス中の, 206, 227
板ガラス中の, 143
試験装置, 207
糸状筋(ストリング), シートガラス中の, 168
ストロンチウム, 86
ガラスの構造, 1
硫黄, 着色作用, 189
表面, ガラスの化学的挙動, 8, 10
Szigmondi, 182
T.
テーブル, 圧延台, 126
タンクブロック, 59
タンク炉, 59, 69
経済性, 72
シートガラス用, 152
望遠鏡用対物レンズ, 213
ガラスの融点(溶融温度), 5
強化ガラス(テンパードガラス), 20, 248
ガラスの引張強さ, 19
タリウム, 183, 188
色の理論, ガラスの, 181
研磨の理論, 141
ガラスの耐熱性(熱的耐久力), 23
熱的性質, 23
温度計用ガラス, 7, 8, 28
スズ, 着色作用, 187
Tonnelot, 7
透明性, ガラスの, 31
光学ガラスの, 208
Trautwine, 19
管類, 238
燃焼管, 7
管の引き出し, 239
タンブラー, 111
U.
紫外線顕微鏡, 243
V.
バナジウム, 着色作用, 189
ベイン(筋状不均質), 光学ガラス中の, 206, 227
W.
水, ガラスに対する作用, 10
水ガラス, 250
粘土の練り上げ(ウェッティング・アップ), 57
Winkelmann, 19
網入り板ガラス, 27, 147
ウィザライト(炭酸バリウム鉱), 48
ウール, ガラス, 245
Y.
ヤング率, 20
Z.
ザフル(青色顔料), 197
Zeiss, 213, 244
亜鉛, 着色作用, 49, 186
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索引において、一部の字下げが下位項目を示すのか、あるいは「同上」を意味するのか、転記者には判然としなかったため、ここでは字下げを複数レベルの下位項目として扱った。
*** プロジェクト・グーテンベルク電子書籍『GLASS MANUFACTURE』終わり ***
《完》