パブリックドメイン古書『塹壕戦の基礎・銃剣訓練』(1917)を、AIには委託せずに私訳した。

 原題は『Elements of Trench Warfare: Bayonet Training』、原著者は William H. Waldron 。

 ウィリアム・H・ウォルドロン中佐(米陸軍歩兵第29連隊)の軍歴は、1905に歩・騎学校卒。
 1906、陸軍幕僚学校卒。
 1911、陸軍大学校卒。
 1911~1912、陸大幹事。

 既著に『斥候と巡視(Scouting and Patrolling)』『戦術的歩行(Tactical Walks)』あり。
 要するにエリート・コースの少壮参謀です。

 序

 欧州の前線で発達を遂げた塹壕戦について教える。
 兵士諸君がこれを読んで一人でも学ぶことができるように、イラストを考えて添えた。
 兵隊の頭でもわかるような話にしている。意図的に。
 冊子のサイズも、戦闘服のポケットに入れておいていつでも参照ができる「袖珍版」にした。
 値段も、兵隊が買える価格帯にした(75セント、送料別)。

 第一章 組織

 一般的な塹壕陣地の構成について、前方から後方へ、順番に解説しよう。

 前縁塹壕のさらにずっと向こう側に、敵歩兵の足をひっかける鉄条網が横一線に設けられている。

 このワイヤー線のすぐ近くに「きき耳の穴倉(listening post)」と称する監視壕がある。このポストと最前縁射撃塹壕線(first line fire trench)とのあいだは、電光状の交通濠(communicating trench)によって行き来ができるようになっている。

 次に、三脚付き機関銃で増強された射撃塹壕線。

 これらの立射壕はとにかく狭いので、数ヤード後方には、交通連絡・指揮統制のための通路があり、それは待機壕(dugouts)までつながっている。

 射撃塹壕戦より、100~200ヤード後方には、臼砲・迫撃砲・爆弾擲射器の塹壕がある。
 それらにも複数の連絡壕がつながっている。

 前縁の射撃壕から100~400ヤード後方には、支援壕(supporting trench)が、概略並行に、掘られる。支援壕は鞏固な掩蓋付きで、部隊のための地下待機空間も備わる。

 ここまでが「第一線塹壕陣地帯」である。数線の塹壕は、相互に電光状の交通濠で結んでおく。

 上記の「第一線塹壕陣地帯」の後方2000ヤードから5000ヤードのところに、同様な「第二線塹壕陣地帯」を構成する。

 「第一線塹壕陣地帯」中には点々と、だいたい800ヤードから1500ヤードごとに「支闘点(supporting points)」が築城される。
 「支闘点」は、要塞化された村落、もしくは迷路化された鞏固な塹壕網で、そこには現代的な重火器を集めておく。敵は、この「支闘点」を占領せずに、わが塹壕陣地帯を越えて前進して行くことはできない。なぜならそこから強力な「側防火力(flanking fire)」が発揮され、もし塹壕戦を浸透通過しようとすれば、背後から猛射を受けることになるからである。

 第二章 障碍物

 防衛線には、鉄条網などの障碍物が伴っているべきである。
 障碍物に期待される機能とは。

 味方防衛線が敵からの奇襲を蒙り難くしてくれる。
 敵の攻撃の勢いを殺いでしまう。そこを超えるときに整然とした陣形は必然的に乱され、相互協働ができなくなるので。
 攻めてくる敵兵はこちらの防禦火力に長時間暴露し、こちらはそれに有効な射撃を加え続けることがたやすい。

 望ましい障害物の、大事な要件とは。

 守備兵の目の前、だいたい50ヤードから100ヤードの間合いにあること。50ヤード未満だと近すぎてよくない。なぜなら、敵が障碍物の間際から投擲した手榴弾がこちらの塹壕まで届いてしまうので。

 なるべく敵眼からは見分けにくいこと。障碍物が遠くからはっきり分かると、事前砲撃によってその障碍物は啓開されてしまう。しかも、障碍物の50~100ヤード先に、こちらの最前縁の散兵壕が存在するはずだという見当も、敵は簡単につけることができてしまう。

 障碍物の線まで攻めてきた敵兵には、こちらの火線から身を隠せる地形も地物もないこと。

 攻めて来た敵兵は、障碍物のすぐ近くに至ってはじめてその存在を承知し、意表を衝かれる如く、按排すべし。

 敵兵が除去しようとしても除去しにくいような術工となっていること。強いて除去しようと試みれば、作業中にこちらの防禦火力によって死傷は必至であると敵をして観念させること。

 敵兵が障碍物の近くからこちらの塹壕を火制できないように考えること。障碍物が非連続になってしまう地点には地雷を埋設し、ギャップからの浸透を阻止せよ。

 障碍物の種類には、「アバテー(Abatis=逆茂木)」、低鉄条網、高鉄条網、バリケード、地雷、「フガス(fougasses=指向性対人地雷)」、鉄菱(crows feet)、鉄条網付き落とし穴、水壕(inundations)、などがある。

 アバテーは、鹿砦(ろくさい)である。枝付きの樹木を多数、幹から切り倒して、梢を敵方に向けて寝かせる。それらは密接に並べられ、枝同士は有刺鉄線によって結合される。
 葉と小枝は除去し、上部な枝の先を削って尖らせておく。幹の後端はガッチリと何かのアンカーに固定し、なおかつ、そこに土砂をかぶせる。
 素材が十分に多数得られる場合は、一列分のアバテーの上に重ねるようにして、もう一列分のアバテーを置く。すると、障碍の高さが地表から5フィートになる。

 アバテーのうち、幹を完全には切断しないで、梢を敵方に倒し、根株をそのままアンカーにしているものを、「スラッシング(inundations)」と呼ぶ。

 鉄条網障碍の種類。
 障碍物の構成用に、最も多用されるのが、有刺鉄線である。

 警報用のワイヤー障碍。地面から少し浮かせて張り渡し、敵兵が足をひっかけると打音が鳴り渡るように音源物体を結びつけておく。

 立木・灌木に結びつけた鉄条網もある。

 蛇腹鉄条網は、急速に設置でき、敵としては破壊がし難く、通過も困難というメリットがある。味方の火力の照準界の邪魔にもならない。

 低い鉄条網の設置の仕方。
 まず杭を打ち込む。地上に18インチほど出るように。杭と杭のあいだは6フィート。隣接の障碍列とは、千鳥足状に端部が重複するようにして、隙をなくする。

 ワイヤーは、杭の頂部と頂部を直線で結ぶようにする。杭を1回巻くようにして、かすがいでとめて行く。
 複数のワイヤーが交差するところでは、互いを結びつけておくとよい。

 これをもっと巧妙にした方式は、ワイヤーを緩く張り、杭の側面にかすがいで止め、その杭は完全に地面とツライチになるまで打ち込んでしまう。これは敵方から見て視認し難く、緩いようで通過し難く、除去もし難い。

 高い鉄条網の設置の仕方。
 杭は、地表に4~6フィート、出ているように打ち込む。間隔は等間隔にはしないこと。短い間隔で5フィート。長い間隔で8フィートにする。
 そしてワイヤーは、地面に水平に張り渡すのではなく、1本の杭の頂部から、隣接する杭の基部に向けて斜めに張り渡す。ワイヤーには弛みを与えておくこと。杭には1回巻き付けて、かすがいで止める。

 1本の杭と隣の杭の間は、4本のワイヤーが結んでいるようにする。すなわち上記流儀の1本の他、地表9インチの高さで水平に結んだ「トリップ・ワイヤー」。さらに、高さ1フィートのところでも水平に1本を渡す。そして花輪状の有刺鉄線を「蛇腹鉄条網」として不規則にひっかけておく。その蛇腹鉄条網は杭の基部にかすがいで止めるようにする。

 杭の頂部に大きな釘の頭を飛び出させておくこともあり。
 また、針金の光沢を消すために、ペンキ缶の中をくぐらせる一手間もかけるべきである。
 ワイヤー同士がクロスしているところでは、相互に縛り付ける。
 杭にも偽装色を塗ることあり。

 これだけは忘れるな。鉄条網をピンと張ってはいけない。

 「可搬式鉄条網」は、木箱/木枠などのまわりに有刺鉄線を緩くぐるぐる巻きにしたもので、ギャップ閉塞が急に必要な箇所までそれを転がして運んで行き、据える。

 障碍物の修繕は、夜間に実施する。
 修繕時の注意点。敵はまたそこを破壊しようとするから、杭を特に抜きにくくしなくてはいけない。敵は、「巻き上げ機」からロープを延ばし、その先につけた鉄鉤で、鉄条網を引き倒そうとする。その引っ張り力に、抵抗できるようにしなくてはいけない。

 バリケードは、道路や橋を閉塞するために用いる。大きな家具。タイヤを除去するか、天地を逆さにした自動車。石ころ満載の荷車や俵、などが活用される。
 道の脇に立木があるなら、それを横倒しにして道路を塞ぐ。枝同士は鉄条網で結ぶとよい。
 倒木と倒木が「オーバーラップ」して、隙間をつくらないようにする着眼も必要である。

 「フガス」は、視発式地雷で、爆発させると、多数の岩石砕片を敵方へ弾き飛ばす仕掛けである。
 地面に円錐の穴を掘るのだが、その軸を仰角45度にして、敵が来る方位へ指向させる。穴の底には火薬箱をセットし、厚さ10インチ未満の板をかぶせ、その上に岩石片を填圧する。発火は、電線と電気雷管による。装薬の量等は、発破実技の「最小抵抗線」の計算を応用すべし。

 飛ばしたい岩石の総重量(ポンド)を150で除すると、必要な装薬量(ポンド)が求められる。
 もし70ポンドの装薬でフガスを構成したなら、総量5トンの岩石を、奥行き160ヤードまで飛散させることができる。そのときの散開幅は120ヤードになるだろう。

 垂直型フガス。
 1辺が1フィートの立方体の岩石は、だいたい重さが100ポンドある。
 垂直型フガスは、25ポンドの装薬の上に、1立法ヤードの岩石を置いて起爆させるもので、爆砕された岩石破片は、「200ヤード×100ヤード」の範囲に飛散して、敵兵を殺傷する。

 小型地雷。
 深さ2ヤードに地面をボーリングして25ポンドの炸薬を底部に仕掛けるものと、深さ3ヤードに地面をボーリングして80ポンドの炸薬を底部に仕込むものとがある。生成されるクレーターの直径は、深さの約2倍となる。

 この地雷は、1列もしくは数列に、点々と、敷設する。地雷と地雷の間隔は、生成されるクレーターがぎりぎり重ならないほどにするのがよい。どこに地雷を敷設したのか敵からは分からないように地面をアレンジせよ。

 ぶっ倒し樹木障害(Inundation)。

 水中障害。
 浅い水流であっても、それは補強された障害物になる。不規則に穴を掘っておいたり、水中に鉄条網を張るとよい。
 工事の着眼点は、天然の岩や人工の橋によって、誰もが渡河に利用しようとするであろう箇所の周囲の水流である。
 桶などの容器に砂利を充填したものは、水中障害物として使える。砕石の隙間を藁や草や粘土によって埋めるとなおよい。

 ダム状の構造物は、敵の砲撃によりすぐに崩壊して、頼りにならぬことは、忘れるな。

 第三章 監視&聴き耳の哨所

 通例、そこに哨兵を配するときは、胸壁だけでなく天蓋でも覆わなくてはならない。そして敵方に向けた監視孔をいくつかしつらえておく。
 哨兵の任務は、敵に何か動きが見えたとき、それをいちはやく報告することである。

 彼我の陣地が近接しているときは、敵の工兵がこちらの火力交戦塹壕等の真下に向けて発破用の坑道を掘っていないかどうか、その音にも注意する。

 こうした、監視用の哨所は、味方の最前縁の散兵壕よりも、さらに前へ設ける必要がある。
 とうぜん、後ろから味方の火器で撃たれてはかなわないから、哨所は、後方からの流れ弾に被弾しないようにする配意も不可欠である。

 もとからある堤、築山、生垣、建物の残骸などを哨所に利用すると、昼間でも敵眼から目立つことなく、監視ができる。

 監視のために壁に開ける孔は、外側へ行くほど細くなるように。

 掩蓋の利用ができないときは、潜望鏡型の望遠眼鏡があると、重宝する。

 哨所とその後方の散兵壕は、狭隘なジグザグ連絡壕かトンネルによって結ばねばならないが、けっしてその存在を敵の偵察者にわかりやすくしてはならない。たとえば、排土は壕の縁に積んではならぬ。

 地中聴音のために上番する監視哨兵は、武器も装具も一切、身に付けない。それらはノイズ源となってしまい、仲間の聴取者に、あたかも敵兵の坑道掘削音が聞こえたかのように、錯覚されてしまうからである。

 聴音壕には常に人を配し、けっして、無人にしてはならない。
 聴音壕の入口には、小火器と手榴弾を置いておくこと。とつぜん地中から敵兵に襲撃されることもあるので。

 集中的な聴音は、ランダムに時刻を決めて行なう。あらかじめ示達された時刻に、陣地内のすべての味方哨兵は動きを止め、しばしのあいだ、聴音の邪魔になるノイズを立てないようにする。

 散兵壕でも補助的な「聴音」をすることがある。その場合は、壕底よりもさらに6フィート深くに、長さ20フィート以上の「管」を埋め、その管の端に耳を当てるのである。

 聴音のための土工作業はすべて、位置秘匿のため、静謐にせねばならない。掘った穴に向かって大声を出すようなことは厳禁である。

 塹壕内で敵の坑道掘削音を聞いたなら、ただちに区画担任の将校に報告せよ。

 第四章 野戦塹壕

 一直線の塹壕は、「縦射」の餌食になる。壕内で敵の砲弾が1発炸裂したら、破片が端から端まで届いてしまう。
 そこで、塹壕は必ずジグザグに掘る。これを「traverse」式と称す。

 敵方から見て、丘の裏側の斜面に構築した塹壕は、砲撃を受けても最も損害が少なくて済む。

 ジグザグの折り返し。長くても18フィートの直線塹壕を掘ったら、そこからは角度を変えて電光状に掘り進めねばばならぬ。

 立射壕の深さは、歩兵の身長の「六分の五」あると、小銃射撃しやすい。

 排水をどうするか。
 塹壕内は極力、乾燥させていなくてはいけない。
 どんな兵隊も、水浸しの塹壕内では健康を保てない。士気も体力も奪われる。殊に冬季。
 壕底には傾斜を付け、滞水を一ヵ所から後方へ導き、そこに水槽を置いて溜め、あるいは手桶で汲み出してドレーンしてしまう仕組みを考えなくてはいけない。

 敵弾が近距離から集中してくるような胸壁には、まっすぐに敵方へ向けた覘視孔をあけてはならない。それは敵の狙撃兵からは丸見えだからである。斜め左向きと、斜め右向きの覘視孔を2つ、開けるとよい。

 覘視孔(兼・銃眼)の円錐の開口角(スプレー)は、手前側にむけて60度にするのが通例だが、胸壁が厚くなるほどに、その角度は狭くすべし。

 土嚢を積んだ胸壁に銃眼を設けるために、四角いスチール板が製造されている。ドイツ兵は小銃用の徹甲弾でこれを狙ってくるから、プレートを二重にするとよい。

 銃眼を敵から見えなくすることはできないので、むしろ逆手をとって、ダミーの銃眼を多数こしらえ、また土嚢に絵模様を描いて銃眼のようにみせかける方法を工夫すべし。

 覘視孔の最少サイズは、径2.5インチである。それより細いと両眼によって敵情を見ることはできず、距離感が掴めなくなる。

 胸壁には避弾径始の傾斜角をつけるべきである。
 銃眼の射角の広狭を確認するためには、ボルトを分解して外した小銃の銃腔から敵方を覗くとよい。

 連絡交通濠について。
 射撃壕は狭くて混雑しており、その中を指揮官将校が横行することは容易ではない。だから、火力交戦用の散兵壕のすぐ後ろに、指揮官将校が横行するための交通壕を並走させるようにする。

 ダグアウトについて。
 敵がこちらの陣地を砲撃している間、最小限の人数だけ塹壕に残し、それ以外の者は、塹壕より少し後方の、掩蓋付きの地下空間で休む。移動は地下トンネルによる。分隊用の小規模なダグアウトもあり。

 ダグアウトの天蓋の覆土は、12~18フィート厚とする。そのくらいあれば、重砲弾にも耐えてくれる。

 天蓋の材料の強度見積り。

 榴霰弾の弾子に対しては、2インチ厚の板の上に12インチの覆土があれば、じゅうぶんに耐える。

 口径3インチの野砲から発射される榴弾に対しては、厚さ4インチの板+4フィート厚の覆土。さらにその表面には大石を敷き詰める。そうすることで、敵砲弾の信管が、砲弾が地中に深く刺さる前に轟爆するようにしてやる。

 口径6インチ以下の榴弾は、12インチの角材梁と、厚さ8フィートの覆土で防げる。

 口径6インチを超える加農砲からの射撃に対しては、15フィートから25フィート厚の覆土でないと、耐弾できない。

 200ヤード離れたドイツ兵の7.92mmライフルから発射される「S弾」(ボートテイル形銃弾)の貫通力は、土嚢に対して24インチ、通常土に対して50インチ、ポプラの材木に対して58インチ。煉瓦に対しては14インチ。岩石に対しては6インチ。

 迫撃砲(塹壕臼砲)は、高性能爆薬を充填した、重さ25ポンドから100ポンドほどの弾丸を、距離300~1800ヤード先の敵塹壕に向けて、高い擲射弾道で飛ばすことができる。

 現地で急造したカタパルト(爆弾投射器)を配備することもあり。

 機関銃について。
 それを据えたところがどこなのか、敵からは分からないようにせよ。また、機関銃を、射弾が有効に当たるかどうかはっきりしない状況で撃ってはならぬ。必殺のタイミングでのみ、猛射すること。

 わが陣地に迫る横一線の敵歩兵部隊を縦射できる位置に配置するのが理想的である。(すなわち「側防」火器。)
 わが陣地に、障碍帯のカバーしていない、無障碍の切れ目があるとき、機関銃の火制により、その隙を埋める。

 わが機関銃の射撃開始は、陣地を攻撃して来る敵部隊にとって必ず「奇襲」になるように考えるべし。

 機関銃座には「プラットフォーム」が不可欠である。それは幅が3フィート、長さが6.5フィートあるべし。その周囲は土嚢で囲む。
 掩蓋付きの機関銃座とする場合、塹壕陣地の他の箇所との視覚的な差異があらわれないように注意せよ。銃眼は、射撃しないときには敵眼からまったくわからないようにする細工をするべし。

 機関銃座は、三脚架のうち2脚の前端を、正面胸壁土嚢の基部にもぐらせるようにするとよい。すなわちそこだけ土嚢を削るのである。すると銃身が胸壁に近づくので射界が広くなる。射手も、胸壁に近寄っていた方が、よく防護される。

 破片が反射しない素材のシェルターを、機関銃班のために準備すること。

 彼我の塹壕が近いときには、機関銃座の位置選定は昼にしておき、工事作業を暗夜に実施せよ。

 こちらの2座の機関銃座が、相互に支援できるように、配置位置を考えること。

 こちらの塹壕内に飛び込んできた敵兵を縦射してやろうと意図する機関銃座には、特別な「カポニエ」(capioniers)が必要である。これは塹壕の屈曲部に設けられる天蓋付きのトーチカである。

 村落の防禦。
 陣地前縁から700ヤード後方に村落があるようにする。これは軍隊が建設した小屋の集合で、その周りは要塞化される。1村落が1個中隊を収容できるようにする。それを点々と設ける。1つの村落中には1個中隊を4日間養えるだけの糧食を常備する。
 村落との連絡壕は、深さ6フィート。

 電話線は、連絡壕の底部に木杭を打ち、壕底から数インチ浮かせるようにして張る。

 村落からの監視には立ち木を利用する。そこに登る偵察員は、顔面を緑のマスクで覆い隠すこと。

 村落の土工には工兵を使わない。歩兵だけで作業する。工兵は坑道掘りに専心させる。

 第五章。天然の被覆物の利用。

 わが小銃兵の姿を敵眼から隠してやるために、生垣、畑作物、下草などはすべて利用せよ。
 シェルターの出来があまりによすぎると、歩兵はそこに籠ることを好んで、立射壕には出てきたがらなくなる。

 顕著な生垣を利用するのは、まずい。敵の砲兵はもうそこを標定済みのはずだから。

 なにもないところに散兵壕を掘るときは、まず伏射壕をこしらえ、そこから座射壕に拡張し、最後に立射壕に仕上げる。

 倒木は、防弾力はさほどではないので、その後ろ側に1フィートほども土をかきあつめておかないと、小銃手が安心できる胸壁としては利用できない。

 林縁に塹壕を構成するときは、藪よりも引っ込んだところに掘り、排土は敵方に積み上げておく。ただし藪よりも高くなるほどに積んではならない。目立たないことの方が、大事なのだ。

 射界を得るためにでも、森林をやたらに伐採してはいけない。できるだけそのまま残して、内部に陣地を築く。

 第六章 法面の表面保護や滑り止め等。

 これを「REVETMENTS」という。

 土嚢は、粗い黄麻布製の袋である。縦33インチ×幅14インチ。その中に、土砂をおよそ「0.5立法フィート」填実する。
 土嚢を積むときはシャベルでよく叩いて、隙間ができないように圧する。1個の土嚢で「20インチ×13インチ×5インチ」の空間が、塞がれる。

 土嚢100個分の布地の重さは62ポンドにすぎない。
 スプリンターの吸収に、土嚢はとてもよい。
 唯一の弱点は、長持ちしないこと。袋にはすぐに穴が開いて、中味の土砂は洩れ出てしまう。

 6人からなる分隊は、1時間で150袋の土嚢に土砂を満たすことができる。作業は分業式流れ作業にすべし。1人がつるはしをふるい、2名が円匙で掬い、1人が袋の口を開けて保持し、2人が填実された袋の口を綴じる。
 すでに土嚢が多数、できている場合、10人が1時間それを積む作業にかかれば、75平方フィートの斜面を土嚢でカバーしてやることができる。そのさい、4人は土嚢を敷き並べて平らに叩く係、6人は土嚢を持ってくる係、と分担する。

 刈り取った灌木も、法面を覆う材料として使える。ただし枝の径が1インチを超えるものは使うな。径0.5インチの木杭を、固着のための助けに打ち込む。

 粗朶束。
 長さ18フィートに刈った灌木を、束ねて、その集合径が9インチになるように縛る。
 粗朶束の1個の重さは140ポンドぐらいである。
 作業の都合により、鋸で、束の長さを半分にしたり三分の一にしたりして、法面にかぶせて行く。

 密に束ねたいので、横に伸びた小枝は切る。葉も残さない。

 蛇篭(Gabion)。
 ワトル(wattling=しがらみ。縦杭列に、横S字状に枝を縫わせて、籠状の垂直面を構成する)で包む。

 第八章。

 手榴弾の歴史は古い。1536年に使われた記録があるという。
 18世紀にきりかわる頃、軍隊内に「擲弾兵」が選抜されて教練を受けるようになった。膂力で爆弾を投擲する任務兵だった。
 初期には、各連隊に数名。のちには、擲弾兵だけからなる中隊が組織された。

 彼らは平地の野戦では出番がなかった。陣地防禦か、攻城のシチュエーションで、頼りにされたのである。
 日露戦争では、相互の塹壕に、さかんに手榴弾が投げ込まれた。ことに旅順攻防戦ではそれが熾烈であった。

 今日、歩兵小隊の中には、擲弾分隊が1個ある。
 手榴弾投擲を任せる兵隊は、筋力にすぐれ、戸外スポーツを愛好する、物に動じない奴がいい。

 手榴弾投擲分隊の構成。
 先頭とその次を、着剣小銃兵が進む。
 3人目が投擲兵である。
 4番目に進むのが分隊長。
 その後衛として、2人の手榴弾箱運搬兵と、2人のバリケード担送兵が続行する。

 先頭の2名の着剣小銃兵は、目の前の敵塹壕内で手榴弾が爆発した直後の好機に、すかさず乗ずべし。

 投擲手は、自己意思で投げるのではなく、先頭2名の小銃兵か、分隊長が、投げろと促したときに、それに即応して投げる。

 分隊長は、適時に、自らも手榴弾を投げる。

 2名の弾薬運搬兵は、持てるだけの手榴弾を持ち運ぶ。手榴弾が少なくなったら、貯蔵所まで取りに戻り、弾薬を切らせてはならない。

 バリケード担送兵は、土嚢袋と、そこに土を入れる土工具を担ぐ。また、予備手榴弾も携行する。行進は最後尾だが、分隊長の命令によって、先頭へ進出してバリケードを築く。

 すべての分隊員は、必要とあらば、いつでも別な隊員の任務を代行できるよう、習練しておくべし。

 敵の塹壕陣地に対する攻撃は、三段階からなる。まず味方の砲兵による準備砲撃。ついで歩兵が突撃する。仕上げに、占領した壕内へ味方兵士を適宜に配置して、敵の逆襲突撃に備える。

 手榴弾を、後方から最前方へ、リレー式に手渡ししてはならない。かならず、後方から1人の男が大量に抱えて最前線まで運んで、投擲手に届ける。空になったら、また後方へ戻る。

 手榴弾の大きなものはPetards(破城爆薬)とも呼ぶ。
 ドイツの手榴弾は機構が凝りすぎており、そのため50%もが不発になる。

 小銃で英式の手榴弾を発射すると、400m飛ぶ。

 第9章。毒ガス戦。

 毎時5マイルの風が敵方へ吹いていないならば、ガス戦は仕掛けられない。風速がそれより早くても、ガスは効かない。無風だと、真上に消えるか、味方塹壕に降りてくる。

 雨が降っているときも、使えない。
 敵にとってタイミングが「奇襲」でないといけない。うまくガス奇襲できたときには、敵の塹壕はたちまち空っぽになって、易々と占領できる。

 風まかせということは、ガス攻撃のタイミングを事前に「何時何分」などと決めることはできぬ、ということ。最適な風が吹いているときに、やるしかない。

 1ポンドのガス手榴弾は、敵塹壕を20分~30分、いたたまれなくしてくれる。

 ガスマスクのことを「スモーク・ヘルメット」と称する。
 ガスマスクのゴーグルが曇ったら、額の皮膚にすりつけると、クリアになる。

 第10章。
 2人用の立射壕での前哨勤務は、1時間で人を交替させる。

 第11章。
 こちらの第2波は、こちらの第1波が敵塹壕に到達した瞬間に攻撃発起させる。

銃剣訓練。

 ガードの姿勢。
 敵の刺突攻撃から防禦するときは、右手で我がライフル銃の「navel」(へそ)のすぐ前を握る。左手は我がライフル銃のリアサイトの上から掴む。※逆ではないかと思えてならない。
 このとき、上体を反り返らせてはいけない。

 ハイポートの姿勢。
 握り方はガードの姿勢と同じ。
 左手首を左肩と同じ高さに。右手はベルトと同じ高さに。

 「ロング・ポイント」※直突とでも訳すべきか?
 左腕と左手が銃剣の切っ先と一直線になる。

 「ロング・ポイント」からの「引き抜き」。
 右手を腰の後ろまで引いて、「ガードの姿勢」に戻る。

 人体の急所(Vulnerable Parts of the Body)はどこか。

 でき得るならば、敵の喉を突くのがよい。容易に刺さって、数インチの深さで致命傷となるので。
 敵が背中を見せているときは、腎臓のエリアを狙うべし。

 刺突の深さは4~6インチで十分である。そのくらいなら、速く引き抜くこともできる。それ以上深く刺してしまうと、なかなか引き抜けないときがある。

 塹壕の中に人形を置いて、刺突訓練をすること。人形は「絞首台」(gallow)に縛り付けて、立姿を再現する。

 「ショート・ポイント」は、「ロング・ポイント」より近い間合いでの刺突動作である。塹壕内ではそうなることがある。彼我の距離は3フィート。

 突撃の実質距離は、20歩である。

 ※機械翻訳の利用に慣れてしまうと、こういう手作業がすこぶる億劫に思えてしまう。途中を大幅に省略した。反省、反省・・・。

 ※「しがらみ」の英訳が偶然に分かったことが、嬉しい。西南戦争の田原坂では、「しがらみ」が工作されている。写真が残っている。それは欧州軍の教範からの学習だったと思しい。