みなさん、文京区シビック小ホールでお目にかかりましょう!

 たぶん29日の当日入場もぜんぜんオッケーな筈。
 八木京一郎師匠、29日の朝っぱらでよければ、お連れの方とともに、回転寿司をおごらせていただきますよ!
 ところで、この場を借りて、ぶしつけなお願いです。
 『自衛隊装備年刊』の2005年度版以降のご不要になった古本を、JSEEO事務局に寄付してくださる方、もしいらっしゃいましたら、事務局の住所までご寄贈ください。(揃った時点で「事務局からみなさまへ」で告知します。)
 それから、航空雑誌の各社で出している「世界航空機年鑑」のようなもの、こちらは、2002年度版以降の古本がございましたら、ご寄贈ください。
 何が目当てかというと、そういう年鑑の巻末には、必ず「未来予想」の文章が書かれているでしょう。それを一通りチェックしたいのです。用が済んだら、あとは事務局の備品に致します。
 (なお『防衛白書』と『防衛ハンドブック』は、毎年の最新バージョンが拙宅まで届けられていますので、ご寄贈ご無用でございます。)


清水政彦氏著『零式艦上戦闘機』(新潮選書)を読了す。

 いきなり古典が出たぜ……。
 本書はWWIIおよび一般戦史の研究者にとってはもう必読の好資料となるしかない運命にあります。
 ですので「旧軍機マニア」を誇る人なら、他人より一刻も早く買って読了しておくべきでしょう。一日それが早ければ、一日無知を晒さずに済みますけん。これは老婆心であります。
 いま韓国の衛星打ち上げロケット(サイズとしてM-Vそっくりだというところが、もうね……。中共の軍事新聞はこれがハッキリとSSMだと看破してるよ)がなかなか上がらないので韓国人が半泣きなんだが(次の予定日は25日だと21日に発表したそうですけど…)、少数の技術者や当路者が優秀だったり頑張ってみたって、国家の全局の趨勢は一挙に変えられるもんじゃないんだという、あたりまえな「戦訓」が、清水さんのこの本から明瞭に得られるはずですよ。
 これは政治や選挙でもそうだけど、戦史研究でもまったく同様に言えることで、一人の著述が突出して良いことを言っていても、それだけじゃ社会が聴く耳を持ってくれない。全体の水準が上がらねば、「戦史の教訓学」も進歩しないのです。その意味で本書は、日本の戦史研究が着実に前進しているというひとつの心強い指標でもあります。
 (それにしても新潮社内の担当編集者は誰なのだろう? 「おわりに」で全然ふれられていないので気になる。名編集者なくして名著なし、ですからね。)
 あ、そうそう……皆さん、これを書店で購われるついでに、是非、拙著『たんたんたたた――機関銃と近代日本』(光人社NF文庫)のお求めも、ひとつお忘れなく!


NYさま

 インターネットの開通おめでとう存じます。
 いったいこれから何日間で「放送形式」を#1から全部イッキ読みできるものか、わたしも個人的にたいへん興味を覚えますので、よかったら後で教えてください。
 また落ち着かれましたところで、《月刊『正論』クロスライン》の各号解説を手短かに纏められ、リファレンスとして逐次にアップロードして公開していただけると幸いです。
 なにしろクロスラインのタイトル(これは編集長がつけています。送稿時に著者はタイトルをつけていません)だけ分かっても、内容の見当がつかぬため、書いた本人すら過去分の参照には悩まざるを得ないという状態なのです。
 今まで、誰かがやってくれるんじゃないかと期待していましたが、皆さんそこまでお暇じゃないようですので、この際、長文を短くする才能のある新人の方にお願いしようと思いました。
 まあ、一円も出ないんですけど、皆さんが新たな娯楽を発見することになるでしょうから、間違いなく、この世の中に徳を積むことにはなります。
 もちろん、辛辣な一口評をいちいち付記していただくのも大歓迎です。
 ご健闘を祈ります。


「米印日豪同盟」(西太平洋&インド洋=大東亜条約機構)が濃厚に

 2009-8-16にUPIがニューデリーから寄稿した「Boeing’s P-8I deal with India set to roll」という記事を漫然と読んでいたら、最後の方に、新華社通信のワシントン観測が紹介されていて喫驚!
 こんどの米印条約(米国から売られた軍事技術をインドは第三国に漏らさないと約束する)を核に、アメリカ=インド=日本=オーストラリアの四国同盟を、アジア版NATOにするつもりじゃないかとシナ人は勘ぐっているのだ。
 「東アジア共同体」の方は「だが断る」だが、こっちは歓迎できる。久々に明るい話だと思った。
 金大中氏が病死したという。あの、金大中誘拐事件という重大な主権侵害事件は、いまだにキッチリとオトシマエがつけられていない。自民党と韓国政府の関係は、腐っていたと言う他ない。だから北鮮も調子に乗るし、竹島も今のようなことになるし、対馬も危ないのだ。民主党はこの腐臭漂う戦後の対韓関係をどう清算するつもりなんだ? 選挙期間中にハッキリさせるが良い。
 大東亜条約機構に特亜を入れないということは、日本はそれ以後は韓国とパキスタンに冷たくしますよということだ。それでいいんだ。
 韓国は米韓合同演習のさなかにKSLV1を打ち上げてしまいたいようだな。さあどうなるでしょうか、というしかない。
 シナの軍事新聞が朝日を引用して報じている。2009-4月出港、9月帰港予定の海自の遠洋航海の訓練艦隊(駆逐艦3隻)が、香港への立ち寄りをことわられたと。そんなことがあったのか。けっこうけだらけだ。
 台北09-8-17日電。台湾の中部の2700人の軍隊キャンプで爆発的に新兵が感染。すでに374人も。
 例のインフルエンザ?
 これはクーラーの効いた室内でなまけているのが原因だとは少しも考えられない症例ですね。
 ロッキード・マーチンは世界最大の軍需企業のくせして、どうしてJLTV(Joint Light Tactical Vehicle)なんていう軽量耐地雷4×4市場に飛び入ってきたのか、あまり関心がなかったので無関心で居ったが、ミリテクの8-17記事で、アルコアが一枚噛んでいると書いてあって納得。飛行機の技術であるアルミ特殊合金で装甲車構造を軽量化しようってんだな。
 飛行機も新素材採用ばやりで世界的に特殊アルミの需要が減っちまったもんだから、余剰生産物を車両に使ってくれというわけか。M113のときと、同じや!
 じつに懲りない奴等だ。アルミ構造は鋼構造よりぶあつくなるから、命中したRPGのHEATのメタルジェットが経路で気化する分子量がそれだけ増え、車内は余計に悲惨なことになるのだ。それがベトナムでのM113の教訓だったはずだ。ヒズボラのロシア製ATMは、メルカバを4両も貫通してるんだぞ。いまや土人ゲリラが精密誘導兵器をバカスカ撃って来る時代なのだ。フォークランド紛争でアルミ船体がエグゾセのHE弾頭の熱で燃え上がった。彼らはみんな忘れてしまったのか。
 三菱重工はぜったいにこんな真似しないようにね。アルミ製の73式APCは立派なスキャンダルでしたから。
 vivek raghuvanshi氏の2009-8-13記事。インド陸軍はBMP-IIを無人偵察車に改造してテスト中。将来は無人戦車をつくるつもり……だと……。
 さすが米国が最重要同盟国として日本からサッサとのりかえようとしているインドだぜ。この方向は正しいよ。無人AFVならアルミだってOKさ!


決定的情報ぱねえッす

 田中健Q様から、グーグルブックで調べたら、ブリタニカ百科事典のOrdnanceという項目にそれらしき言及があるというご指摘を頂戴しました。
 そして当該箇所の用語であらためて検索をかけてみましたら、ブリタニカの1911年バージョンがほとんどHTML化されていて利用可能であることを知りました。
 みなさまは 
http://www.1911encyclopedia.org/Ordnance
 で、ご確認いただけます。
 Classic Encyclopedia Based on the 11th Edition of the Eycyclopaedia Britannica(pub.1911) の Ordnanceという項目です。
 以下、ちょっと引用。【 】は兵頭の補註。
 The British 15 pr. used in the South African War (1899-1902) had a spring spade carriage designed by Sir George Clarke. 【これはスペードと単箭の間にバネをかませてショックを緩和しようというもので、三十一年式野砲のデザインとは無関係です。】
 Similar equipments were introduced by several continental powers.
  The Japanese gun used in Manchuria (1904) had dragshoes attached by wire ropes passing round drums on the wheels to a strong spring in the trail.【これがまさしく三十一年式野砲のことです。日英同盟中にもかかわらず、日本陸軍はイギリスに対してロクに装備情報を通知してなかったのでしょうか。タイプナンバーが知られていなかったようです。】
  On recoil the wheels revolved backwards, compressing the spring; after recoil the pull of the spring on the wire ropes revolved the wheels forward and returned the gun to its former position.
 The Italian 1902 semi-Q.F. carriage was constructed on a very similar principle.【クイック・ファイア=速射砲です。セミというのは、これが駐退復坐機による方式ではなく、また、水平スライド式鎖栓でもないからでしょう。1902年といえば明治35年です。有坂砲は明治30年にプロトタイプ完成。陸軍省は明治32年に仏と独に量産用のパーツを発注しています。】
  All these semi-Q.F. equipments were open to【非難を招く】 the objection that the gunners had to stand clear of【~から離れて立つ】 the shield every time the gun was fired. They have since been superseded by Q.F. gun-recoil equipments.
 【引用おわり】
 このイタリアの1902年の75mm野砲の写真がないか、画像検索しましたが、ヒットしませんでした。どなたかお持ちでしたら、幸いにもアップロードしてご教示くださいますれば、視界の研究前進のため、嬉しく存じます。
 しかしどうやら、三十一年式の独特な復座方式は、有坂成章の発明だったのだと確信が持ててきました。田中さま、ありがとうございます。
 さてそうなりますと問題は、イタリア人は誰からそのアイディアを知ったかです。わたしは、有坂成章が直接に教えたのではないかと疑います。有坂は明治32年のハーグ会議に、工兵科の上原大佐とともに随員となって参席しました。有坂は、ハーグ市もしくは欧州のどこかで、かつての恩人のグリローの関係者と懇談しているのではないでしょうか?
 乃木希典が明治41年1月に、陸相の寺内のところにやって来て、28榴の恩人の伊軍人グリローに叙勲してはどうか、と具申をしています(寺内日記)。
 ひょっとして、グリローの仲間のイタリア人たちは、有坂成章が明治20’sに渡欧した折にも、有坂を支援していたのではないでしょうか?
以下、欧米の検索者のための基礎情報呈示。
about arisaka’s 75mm field gun of type 31. 31 means that they started to product them in 31th year of meiji, i.e.1898. type 31 was the main field gun of japanese divisions during russo-japanese war, 1904-1905. precisely speaking, a test bed of type 31 was trialed in 1897, and an improved version was finished in 1898, and the mass-production was started in 1899, i.e. meiji 32. japanese army also adopted the arisaka’s 75mm mountain gun of type 31.


議事堂を見下ろす高層ビルこそ「反民主主義的」と何故心付かぬ?

 雑誌『表現者』のもうひとつの座談会で宮崎正弘さんが、「昔は皇居を見下ろすなんてとんでもなかった。皇居の前のビルは全部上限十二階だったんですよね。」「尊皇の心なんてないのではないか。」(p.24)と言っておられるのは、趣意としておおむね正しい。
 関東大震災が起きる前の大正9年に、もう政府は「市街地建築物法」を制定していた。別名これを「百尺規定」という。
 100尺=31mである。
 オフィスビルでは1フロア分が垂直3~5mをとると考えれば、この規定に従ったビルが、12階にもなることはないだろう。
 「十二階」とは、震災で半壊し、赤羽工兵隊によって爆破処分されている浅草の「凌雲閣」の別名で、その避雷針までの高さは52mあった(兵頭・小松共著『日本の高塔 写真&イラスト』1999刊を参照)。
 100尺=31mは、あとかたなくぶっこわされちまった旧丸ビルの軒高である。隣の旧国鉄ビルも同じ軒高で揃っていたものだ。
 それは決して威圧的でない高さで、空も広々と見える高さであった。
 要するに東京のビルの高さ規制は特別に皇居周縁だけに適用されたわけではなかったので、昭和38年に建築基準法が改正されるまでは、都心に丸ビルを超える商用ビルは、民用としては新築が不可能だったのだ。
 旧丸ビルの高さであったら、かりに皇居の内堀に面して建てたとしても、大内山の九重の奥を覗く事は物理的に不可能であったろう。
 だから大正9年以後は、安全基準が、同時に不敬防止になっていたともいえるわけだが、効能は決してそれだけにとどまるものではなかった。
 この軒高統制のおかげで、昭和40年くらいまでは、首都の公共建築物に、無理なく美的な威厳が備わっていたのだ。
 たとえば国会議事堂は65.4mで、いまなら超高層というものではないけれども、周辺がぜんぶ百尺どまりだから、巍然として聳え立って見えたわけだ。
 オレがまだ函館に引っ越す前に、この国会議事堂の近くに、とんでもない高層ビル(ホテル?)が建てられた。(『表現者』最新号の表紙の空撮写真の右上に、それが見えている。)
 これをつくったオーナー&工事会社もとんでもないが、これを許可した役人も、心底が見えたという感じだ。こんな蕪雑な高層ビル(ホテル?)に見下ろされている国会議事堂を、いったい誰が有り難がるんだ? 国会議員も一人くらい、怒ったらどうだ? もうあのビルの計画が許可された瞬間、日本の戦後民主主義なんて、メッキの剥げ落ちたマッチ箱細工も同然に煤けてしまったのだ。
 役人が徹底的に立法府をバカにしていることが、代議士がそれに甘んじていることが、もののみごとなぐらい情けない景観により、世界中に広告され続けている。
 日本の議会制民主主義は、進駐軍から戦後に与えられたもんなんかじゃねえんだっていうメッセージを、あの戦前竣工の国会議事堂は、そりゃあ力強く発信していたんだぜ。その明治自由主義維新のシンボルを、てめえたちでビル蔭に抹消しちまいやがってよぉ……。
 ふさわしい。鳩山氏がこんな埋没した国会議事堂で総理大臣に選ばれるのは。
 もういっそ遷都した方がいいと思うよ。東北以北ならノドンは飛んできませんから。
 AFPが8-12に、アメリカの軍人その他が6月からシリアをしきりに訪問していると報じた。
 そしたら8-14に共同が、北鮮製のミサイルをシリアが5月後半に国内の南から北向きに2発試射して2発ともコースを逸れ、町に落下した1発で死者20人とか報じている。
 こういうSSMはもうブースト段階で飛行機(無人機ふくむ)からAAMで撃墜しちまおうという案にさいきん米国は熱心なのだが、David Fulghum 氏の2009-8-14寄稿の記事にはブッとんだ。やはりそうか。
 ジェネラルアトミックス社いわく、「プレデターC」の対日販売は、MTCRに抵触する……だと!
 欲しくても買えねえんだよ。外国の高性能の攻撃用無人機は。
 どうするんだ、F-15の翼下に吊るすようなオモチャみたいな偵察用無人機を4機試作しているだけの防衛省さんは? もう周回遅れなんてレベルじゃねーぞ。おーい。


本当にあるずうずうしいお願い

Bernard Graefe, 1990, “VOM EINZELSCHUSS ZUR FEUERWALZ”
 という洋書をお持ちの方、その
p.68
 にある「1896年式 固定砲架野砲」とやらの図版を御覧になり、
それが、日本陸軍が明治31年に制定した「三十一年式野砲」と、
特にリコイルシステムが、どのくらい似ているものか、至急に、わたくしまで、お知らせくださいませんでしょうか?
 ちなみに三十一年式野砲のリコイルシステムは、単箭の尾部内部にある筒(皿型バネが何枚も重ねて入っている)の圧縮バネに結合された左右2本のワイヤーロープが、発射反動で後ろに回転する2輪のハブ内側のキャプスタンにギュッと巻きつき、それが、バネが戻る力によって車輪を逆回転させて砲車全体を元位置に復座させるという、インターネットではまずヒットしない、独特なシロモノです。
 これが有坂成章の独創であるのか、それともクルップかなにかの真似であったのか、決定的な情報をお知らせくださった方には、10月頃にできる見通しの『有坂銃』のNF文庫版(改訂版)が刊行されました暁に、サイン入りで進呈いたし度いと存じます。
 じつは上記洋書の情報はある有名な御方から1999-3-10にご教示を賜ったのですが、洋書なんて買えない貧乏暮らしが長かったため、今日の今日まで確認努力を怠ってきました。まったく情けないッス。(この御方は「それじゃコピーを送ってください」と気楽に頼めないくらいに偉い方なのです。ぶっちゃけ、長谷川慶太郎さんです。)
 以下、余談。
 小生が「近代未満の軍人たち」を連載しています『表現者』の最新号(vol.26)が昨日届きました。お盆進行なんですね。
 この中に、平沼赳夫、中川昭一、安倍晋三の現役代議士が出ている座談会があったんですが、その3氏の中で、安倍氏が、世襲問題のみならず軍事に関しても、いちばん「おかしく聞こえない」発言でまとめているのに、感心しました。
 ほんの一部を摘録しましょう。
中川「……、正直言って中国の方が日本よりもGDPが上というのは、許せないとは言いませんが(笑)、厄介なことです。……」(p.129)
平沼「……。例えば中国の原子力潜水艦が、アメリカの機動艦隊の五マイルのところまで接近した。……。しかしこれは軍事的に見ると、五マイル以内に近づいたということは、原子力潜水艦には核弾頭がついていますから、アメリカの機動艦隊を破壊することだってできるという、そういう情勢になっている。……。……台湾によく行きます。そうすると台湾海峡を目指して、中国の中距離ミサイルが千三百発配備されているんです。毎年二百五十発ずつ増えている。角度をちょっと日本のほうに変えれば、日本は射程に入るわけです。……」(p.132)
中川「……。空からくる核も恐いですけれども、やはり潜水艦の持っている核が物凄く恐いわけです。これは中国とロシアですね。そうすると戦略型原子力潜水艦に対抗できるのは、それを防ぐための、名前が誤解を招くんですが攻撃型原子力潜水艦です。……、これを日本が持つか持たないか。原子力潜水艦というのは非核三原則とはちょっと違います。……、私はこの攻撃型という名の防御型原子力潜水艦を一刻も早く日本も持つべきだと最近強く思っています。」(p.133)
中川「僕も核廃絶が究極の目標だと思います。だから日本は核を持つべきなんですよ。極端に言えば世界中が持てばいいんです。そうすれば止めますよ。それしかないと思う。」(p.141)
安倍「……。日本がそれを見誤って、キッシンジャーさん達が、言わば目をキラキラ輝かせている人達と同じだと思ったら大きな間違いです。だからアメリカは断固としてクラスター爆弾にしろ、地雷にしろ、禁止条約には加盟しない。……。そしてオバマ政権といえども核の先制使用を否定しない。先制攻撃論を完全には否定していません。……」(p.142)
 兵頭いわく、すべて物は言い様なので、この種の座談では「おかしく聞こえない」ように話すことが、プロの政治家には求められるでしょう。言葉は政治家の商売道具ですよね。
 (p.129)発言は、許容範囲です。ここで止めときゃ、いいんですよ。それが大衆政治家としての適正感覚でしょう。有権者も官僚も、代議士が敢えて言わなかったこと、発言を自制したところも、ちゃんと見ています。それで、支持をしたり、信頼をするんです。
 (p.132)発言は、この発言者は台湾に何度招待されているか知らないが、軍事に関しては簡単に騙されてしまう人だな、と思わせます。
 (p.141)発言は、この発言者が核武装論を言う資格がないことをとうとうハッキリさせました。雑誌は「著者校正」を経ているのですから、これを活字に残したということは、もう致命的発言です。タリバンがパキスタンの核爆弾を入手したらどうすんの? イランの核武装に反対しないんだな? 米国政府が中川氏を信頼することは今後もうないでしょう。
 (p.142)発言は、厳密には正確ではないかもしれませんが、他の2氏のように、明らかにおかしく聞こえる発言を口走らない自制ができているところが重要です。安倍氏が現実政治で敗退したのは、これだけの言語能力があるのに、それが「戦闘精神」と結びつくことが終始なかったためでしょう。
 みなさん、書店で『表現者』の「南次郎」を立ち読みするついでに、文庫本コーナーで、光人社のNF文庫の『たんたんたたた』をお買い求めになることを、どうぞお忘れなく。みんなが『たんたんたたた』を買ってくれたから、こんどは『有坂銃』も文庫化されるんだよ。ありがとう。


海でも山でも周回遅れ――と分かってウンザリなトピックス集

 本日、書店で『Voice』9月号を立ち読みするついでに、光人社NF文庫の『たんたんたたた』を買うことをお忘れなく!
 『Voice』ではあいかわらず伊藤貫氏は、日本が長射程の巡航ミサイルを国産でき、その巡航ミサイルは何の問題もなく韓国/北鮮領空を侵犯することができ、シナ軍保有のソ連製防空システムでは撃墜もできないという誤った前提に立っているように見えるが、その大誤解部分を脳内削除すれば、正しい議論のまとめをしてくれている。
 伊藤氏はSSMが侵略的でCMは非侵略的だと思っているらしい。伊藤氏の年齢とこの主張に関するこれまでの一貫性から推して、残念ながら斯かる価値判断はもう一生改まらないだろう。
 「空手に先手なし」という言葉が、庶民には誤解されているように思う。
 そもそも沖縄空手の「上段受け」は、刀をもっていない農民が、武士の刀の攻撃を受け流すためのものだったはずで、したがって肘はまっすぐ伸ばさねば受け流すことなどできず、直角に曲げて受けたら前腕を切断されてしまう。
 もちろん、二回続けて受けることはない。受け、即、攻撃・制圧とつなげねばならず、しかも、こちらの最初の一連の攻撃で敵を完全に制圧できなければ、二の太刀でこっちが殺されてしまう。
 現代の多くの流派が見せる空手の型では、刀で襲ってくる敵に対する合理的な自衛(=致死的な反撃)は不可能であり、それは要するに古態を伝えていないのである。
 さて、ディフェンスニューズに09-8-10に Todd Neff And ben iannotta氏が寄稿している米軍の次期通信衛星の話。
 現有の米軍のマイクロ中継衛星(8基のコンステレーション)は「UFO」という1993登場の古いものなのだが(といっても軍事通信衛星ゼロの自衛隊とは比較にならぬが)、もし一人のユーザーがビデオ動画を送るためには、他のユーザーに通信を切れと命じなければならない。
 そこで通信量の最も多い米海軍が主導して、「MUOS」という、4基の静止衛星(+予備1基)で、全地球上の移動ブロードバンド通信ができる軍事衛星中継システムを、ロッキードマーチン社に開発させて、2010年に間に合わせるはずだった。
 ところが、このシステムのコンセプトが野心的すぎた。
 なんと、携帯電話の3G方式を、衛星コンステレーションで実現しようというものなのだ。最寄のアンテナ局が通信発信者をロックオンして、そのユーザーの移動にともない、信号をアンテナ局間でリレーする方式を、衛星でやろうというのだ。
 しかもUFOだと同時600通信しかできないのに、MUOSは同時7000通信を狙っている。〔もちろん重い動画データの送受ではなかろう。〕
 あんまり野心的すぎて完成が延びに伸び、2011-2まではシステムの切り替えは不可能。つまりそれまでに製造する車両には、UFO用のかさばるパラボラ・セットの別途搭載が必要なのだ。(MUOS完成後に製造される車両は、平面アンテナをとりつけておくだけでよくなる予定。)
 この記事で見落とせないのは、米海軍が、〈太平洋にはミサイル防衛に必要なワイドバンド衛星通信が確保できていない〉と認めていることだ。
 兵頭は断言する。日本がマイクロ中継衛星を打ち上げて米軍にリースしない限り、次世代のMDも不可能だろう。
 MUOSの完成が遅れている理由の一つは、米軍としては、古いUFO対応器材への下位互換性も、どうしても確保せにゃならんこと。
 日本にはこんなハンデはないのだから、準天頂衛星を複数打ち上げて、先にやっちまったらどうだい? ガラパゴスばんざいだ。
 とにかく米軍の衛星通信チャンネルの需要は伸びる一方だから、米軍相手の衛星通信回線を有料リースするビジネスはとても有望ですよ。現に彼らは民間の「Leasat 5」を借り上げている、と記事にもある。三菱電機は筋悪なDSPを諦めて、こっちに賭けたらどうですか?
 つぎは『LAタイムズ』のAlexandra Zavis氏の09-8-8寄稿記事だ。
 アフガンでは、IED=路傍爆弾が4発爆発もしくは駆除されると1人の米兵が死ぬ。
 2008年には3594発はぜた。前年の2倍以上だ。
 2009はすでに154人死亡。イラクでは34人なのに。
 しかもイランがイラクに自己鍛造爆弾を流している疑いがある。遂に路肩爆弾にセルフフォージングが登場だと。
 イラクの道路はほとんど舗装だ。だから地雷は使えない。
 リモコン装置は、携帯電話の他、車庫の自動扉にコマンドを出すリモコンも利用される。
 他方、イラクよりも教育レベルが低いアフガンでは、無線ではなく、有線式起爆。または、原始的な踏み板方式。そもそも舗装道路がないから地雷式でいいのだ。車両の真下で爆発する方が、もちろん、より致命的。農薬も爆弾材料に使われている。
 そこで、米軍は地中レーダーを考えている。しかし地面の18インチ下には何でもあるから困る。
 アフガンは人口もイラクより多い。
 米軍は車輪つき地雷警戒ロボットも投入しているが、ペンタゴンの本格回答は、2200両の耐地雷車だ。
 舗装道路の多いイラクは、やたら装甲しまくりの重い車両でもいい。しかし、アフガンは不齊地の山地だから、とにかく軽くなきゃダメ。〔高地だから酸素も少ない。エンジンの負荷を減らしてやらねばならず、できるだけ軽くすべきだろうね。〕
 かつてアメリカ軍のハンヴィーを真似てトヨタにジャンヴィーをつくらせた(米軍様の先躡を踏襲しますので…という説明だけが、大蔵省を首肯させ得る)防衛省は、こんどは困ったことになった。日本国内の運用に限れば、IED対策なんて必要ないんだから。
 必要が認められたとして、こんどは、米軍の新車両のうち、「イラク戦域型」を模倣するのか、「アフガン戦域型」を模倣するのか? オバマ=クリントンはまちがいなく日本に、〈アフガンに兵隊数万人を出せ〉と要求してくるぞ。どうする民主党?
 未来は、次の記事の中にある。
  kris osborn氏が09-8-10にディフェンスニューズに寄稿してる記事。
 アフガンで無人の輸送用車両を来年から実験する。すでに米国内で完成しつつあるものだ。
 SMSSというロボットの小型トラック。歩兵分隊~小隊の荷物をぜんぶ載せて、部隊のあとから一定の距離をおいて勝手についてくる。そういう自律行動ソフトができつつある。
 リモコンでも動くし、あらかじめ指定された数点のGPS座標を自動で辿ることもできる。
 最適の障碍回避路はじぶんでみつける。もちろん味方の兵隊を大きく避けて通りすぎる機能もあり。
 1000ポンド搭載可能というから、昔の最強の騾馬×5頭分の働きをしてくれるようだ。
 ジョンディーア社が、これに対抗した別のロボット車両を提案中だが、SMSSに対して歩が悪そうだ。
 穴やガケのような、みおとしやすい障碍も自律探知&回避。
 ルートを記憶するから二度目からは完全自動で何往復でもしてくれる。
 この自律車両にミニロボットを乗せる。するとミニロボットの機動距離が倍化する。
 もちろん兵士がとびのってマニュアルで操縦することもできる。
 自衛隊も、すべての車両に、これからはリモコン装置を標準装備とすべきだろうね。
 ていうか、米軍用に気の利いた無人車を提案して売り込めよ。
 お次は、台湾の国民党の退役中将(元歩兵)で米陸大卒のShuai Hua-Ming氏へのディフェンスニューズのインタビュー。09-8-10。
 台湾が66機の F-16C/D Block 50/52 を売って欲しい理由は、電子戦の能力だと。台湾はそこが遅れているんだと。※つまり中共も遅れているということだね。米国は海峡上に低レベル・バランスを作ろうとしているのだから。
 過去60年、海峡の航空優勢をたもっていたから、台湾は侵攻されずにすんでいた。主戦場は海峡中にこそあり、島の中ではない。F-16A/Bと Mirage 2000-5 は古くて、最新のJ-10s and Su-27s には対抗しにくいので。
 ※これは信用できない話だ。wendell minnick氏の09-8-7の別記事によれば、台湾のミラージュ2000は独自メンテができずに運用休止状態だとある。日本のファントムはもっと古いぞ。
 Shuai氏は続ける。米国がF-16を売らないなら、その予算は訓練に回されるだけだ。
 中共の1000発のSSMを防禦しようとおもったら、すべての重点ごとに2000発のPAC-3を置くしかない。まったくコストイフェクティヴではない。
 そして現状ではパトリオットは6ユニットしかないのだ。台湾の3大都市を守れるだけだ。
 台湾は潜水艦を8隻欲しい。しかし国産するとなっても、兵装とエンジンは輸入するしかない。
 8隻製造しても輸出できないとしたら、その投資が無駄である。
 ※台湾人の根性無しなところが遺憾なく告白されている。国防問題を経済問題と考えているのだ。じゃあせめてスマート機雷とか長距離ホーミング魚雷でもつくったらどうだ。やる気を見せろ。
 いまさらP-3Cを売るといわれたって、すぐ製造中止じゃないのか。※P-8Aができてますからね。
 とにかく米国兵器は古く、しかも無力化措置がとられているのだ。
 台湾向けダウングレード・モデルを「Tモデル」と言っている。そんなものはいやだ。
 Q:米国兵器が大陸に流出しちゃうのでは?
 A:ありえん。
 台湾陸軍がついに全志願制になったのは良いことだ。台湾も人口減少しつつあるし。
 前政権が徴兵年限を2年から1年にしてしまった。しかも休日が100日もある。実質200日の訓練で近代軍の新兵をつくれるか? もはや徴兵制の時代は終ったのだ。
 台湾軍には将軍が多すぎる。これは蒋介石の意向で、大陸に反攻したときに農民をかきあつめて大量の旅団や師団を急造するためであった。
 おしまいは、インドの英字新聞に09-8-9に載っている、北鮮貨物船の記事。
 タイで砂糖をつんでイラクへ向かうはずの北鮮船。インド領海に不法投錨し、しかもインドの軍艦をみて逃げようとしたので警告射撃して臨検した。
 インドは過去10年に2隻の北鮮貨物船をつかまえている。不法侵入で。
 1999にとっつかまえたのは、名目は13000トンの砂糖と浄水装置となっていた。しかしこの船はパキスタンに核関連部品を送ろうとしていた。
 2006-10にとっつかまえた2隻目はカラッポだった。
 米軍がインドにP-8を贈りたくなるのも分かりますね。
 ところで小泉元総理が北鮮から人質を連れ帰れたのは、その直前に工作船の撃沈命令を下しているからですよ。しかも何度も靖国に参拝してシナにも嫌がらせをし続けた。これができるような首相でなかったなら、北鮮とは交渉なんかできないのです。人材が絶えたから、自民党が滅びる。もうしょうがないでしょう。
 8-29の文京区講演では、こういう話もしましょうか。


緑の島に集結した方々、残念でした

 今日は朝9時半から予行演習するというので、自転車で「ともえ大橋」に上ったのですが、下の方までガスがかかっていて、そこから近くの函館山すら見えない視程の悪さ。これでは僚機を視認できないから曲技飛行などは不可能だと確信して帰宅しました。
 さきほどFMいるかで中止決定がアナウンスされました。わたしは百里の特等席でブルーインパルスを拝観したことがあるので、それを脳内で再生しつつひきこもることにいたしますが、皆様、残念でした。
 「遠路はるばるやってきたが、一日時間が余って困っている」という兵頭ファンの人がもしいらしたら、駅前の「おやど青空」に連絡してくだされば、連絡が拙宅まで通じる場合があります。
 またもし将来ブルーインパルスがまた函館港上空で乱舞するときがあったとしたら、おすすめの撮影ポイントは、「薬師山」の要塞の土手の上ではないかと思いますので、何の役にも立たぬ情報ですけれども、いちおう書いておきたいと思います。
 


講演会前後の予定について

 8月28日の午前10時以降から、8月30日の午前9時までの間に、わたくし兵頭二十八に面会の御用の方は、JSEEO事務局にアポイントメントをお取り下さるよう、お願い申し上げます。
 なお29日の講演会は、FAXが無い方でも、eメール、もしくはハガキだけで、申し込みが可能です。(携帯とスキャナーの普及で、固定電話とセットのファクシミリを持っている個人は、むしろ例外的になりつつありますよね。)
 それと、10日発売の『voice』9月号を見てください。ノドンは東京には届かない、と考えられるわけを説明しております。
 本屋に行ったついでに、かならず、NF文庫をチェーック! 『たんたんたた』を買い求めることをお忘れなく! これが売れませんと、たとえばフル図版付の改訂版の『日本海軍の爆弾』だって文庫化できなくなっちゃうんですぜ。
 あと余談。クリントン(夫)を見習って日本の要路の政治家も平壌に飛べとか言い出す阿呆が必ず湧いて出るだろうと思うけど、B-2用の新型爆弾の開発計画リリースだって、ミッション訪朝事前の対敵プレッシャー演出の一環なのですぜ。そういう軍事的な「脅し」ができない国に、どんな交渉迫力があるっていうの?