盛岡市内を観光案内してくださる奇特な方を公募。時期は3~5月中で。

 ウェブ版『NYT』のOp-Ed に、2010-2-26に、レーガン政権で国防長官の補佐官をしていたLawrence J. Korb氏がSEAN E. DUGGAN氏と連名で「Putting the Coast Guard Out to Sea」という記事を寄せている。
 米沿岸警備隊は4万1000人いて、今もハイチ救援などに大活躍。
 しかし、やはり警備艇(米語ではコーストガードの保有船はどれほど大型であっても「カッター」と云い、海軍のヴェッセルと意識的に区別を立てる。ちょうど、海兵隊員がソルジャー=陸軍歩兵ではなくあくまで「トゥループ」を名乗るのと同じノリ。ちなみに日本の海保も「船艇」と自称し、海自式に「艦船/艦艇」とは呼ばない)は、艦齢が軍艦よりも酷いことに……。
 米軍艦が平均14年だというのに、コーストガードの警備艇には 41年なんてすごいものもある。このような予算配分は不合理である。
 軍と沿岸警備隊の予算を別々に考えるのはもうやめよう。F-35関係の予算だけでコーストガード全体の2011予算より多く使うなんておかしくないか。
 いったい冷戦後の今、ヴァージニア級の新型原潜×1隻に $2.7 billion も支出するなんていかがなものか。(米海軍のFY2011建艦費全体は、 $16.1 billion である)。
 ――というのだが、日本でも海保全体の予算がイージス艦×1隻より少ないんだから困ったもんだ。
 ところで、新設HPである Podcast28 を皆様はもう試聴してくださいましたでしょうか?
 パイロット版をお聴きになった方は、ご意見をお寄せ下さい。
 (ちなみに加藤氏との対談は南長崎の「ココス」で録音しました。小生もケーキをパクつきワインをすすりつつ対談したのは前例がない。)
 みなさまのご意見にもとづいて「本放送」の番組スタイルを工夫してみたいと思います。
 それから、このインターネット・ラジオ局で「ゲスト単独講演」「対談」「座談」をやってもいいという「自称軍事マニア」の方もご連絡ください。(ノンプロの方には出演料は出ませんので、あくまでシャレの気持ちにてご応募くださいませ。)
 あと、「軍事ラジオ・ドラマ」も公募するぜ。MP3で作ってくれ。思い切りバカバカしいモノをな! 「シーシェ○ード対プレ○ター」とかの阿呆ネタを聞かせてくれる勇者は居ないか?
 げんざい小生は『大日本国防史』の執筆に時間のほとんどを吸引されているため、放送講演用の原稿を書いているヒマがないのです。それで、しばらくゲストの演説等で試験放送コンテンツを充実させておこうという魂胆であります。


南米沖で「対潜水艦作戦」が17年も進行中。既に50隻以上も沈没か?

 2010-2-24付けでアップされている「The Battle For the East Pacific」という記事。
 エクアドル国境に近い海域で、コロンビアの海軍が、麻薬密輸団の「半潜没式輸送艇」を撃沈した。
 フネは長さ17m、コカイン8トンを積める。
 30人が働く秘密の造船所も発見された。
 2009にはこの種の半没艇を20隻、海と陸で検挙した。
 この種の半潜航艇は17年前に初登場し、いらいコロンビア政府は合計54隻を拿捕してきた。
 ほとんどの場合、ヒュミントにもとづいて網を張って捕える。空からの捜索ではめったに発見はできないのだ。
 コロンビア北岸で、毎年75隻、こいつは建造されているとみられる。
 平均スペックは、乗員4名、積荷7トン(コカイン末端価格で2億ドル)。 1回北米に達したら、そこで捨てる。ワンウェイトリップである。
 麻薬密輸出団は、「1隻+積荷」につき、原価1000万ドルをかけている。
 乗員はコロンビア漁師が多い。その家族は犯罪組織の人質である。
 途中で沈没する危険率は1割。フネは「棺桶」と仇名されている。
 乗員は、もし沿岸警備隊などにつかまったら、自沈弁を抜くように言い含められている。
 そこで取締りのため法律が改められ、沈んだ船から逃げ出してつかまった男も麻薬密輸の現行犯で有罪にできるようになった。
 ボートの運航はほとんど自動化されている。
 密輸の航路は太平洋側である。
 コロンビアからは毎年800トンのコカインが北米に密輸される。その三分の一はこの半没艇が運び込む。いちどに最も多量に運ぶ手段なのだ。
 だが、これまでに半没艇全数の1割弱しか捕えられてはいない。
 典型的なコロンビア麻薬団の半没艇は、幅4m。船体はファイバーグラス製。主機はディーゼル・エンジン。
 上甲板とちっちゃな「覘き窓付き塔」だけが波の上に出る。この塔からエンジンと乗員に対して新鮮な空気が供給される。
 商用潜水艦が1000万ドルで市販されているが、その建造と販売は法律で規制されており、ギャング団はそんなお役所相手のペーパーワークに興味などない。
 ギャング団の半没艇は、建造原価はだいたい1隻につき70万ドル以上だ。最大でコカイン10トンを運ぶサイズ。造船所は、太平洋に注ぐ川の上流に秘匿されている。
 1航海はだいたい1000kmの旅になる。速度は15~25km/時である。
 しかもひるまは極度に減速するので、平均して到着までに2週間かかる。減速しないと、ウェイクが生ずるので、それが米国沿岸警備隊の航空機のセンサーに探知されてしまうのだ。※このセンサーとはレーダーではないようだ。なぜならレーダーならば昼も夜も関係はあるまい。
 初期には、この半没艇を、大型汽船が曳航して長距離を運んだ。そしてカリフォルニア沖で曳索を外した。この方式は、コロンビア=北米航路では廃れているものの、スペイン沖やスリランカ沖では現存。
 最近は排気ガスを冷却する装置がついているので赤外線でも発見しにくいといわれる。
 次。
 「North Korea Foiled Again  Democratic Republic of the Congo (formerly Zaire)」という2010-2-24のニュース。
 北鮮→シナ→マレーシア→コンゴのルートでT-55のパーツを密輸出しようとした船が3ヶ月前に南アにとっつかまっていた。
 コンゴへの武器輸出は国連が禁じている。マレーシアは今やこの種の密輸の基地と化している。
 次。
 『ポピュラー・サイエンス』のウェブ版2010-2-23に Eric Hagerman 記者が寄稿している「The Present and Future of Unmanned Drone Aircraft: An Illustrated Field Guide」は面白い。
 UAVにこれまで関心がなく、しかし、急にてっとり早くその全体イメージを把握したいんだという人には、とても親切なビジュアル事典となっている。
 現役および開発中の代表的UAV×30機種が写真付きでズラリと解説されている。
 ひとむかし前までなら、このくらい要領よくまとめてあってしかも面白い英文記事は、ほぼそっくり無断で翻訳をされて、趣味系の雑誌に日本文の記事として載ったかもしれない。しかしいまは欧文ソースに目を光らせている人も増えたので、そんな海賊原稿は商業雑誌には掲載できないだろう。
 防衛省およびメーカーの人で、これからUAV予算をとるためにプレゼンをしなければならない人は、この記事を保存しておくとよいでしょう。いかに日本が遅れてしまっているか、よく伝わってきます。
 おまけ。
 サーブ社のCEOに対するインタビュー記事。2010-2-21付『ディフェンス・ニューズ』。
 ブラジルとインドがグリペンを買ってくれなくとも、政府はこんご30年、グリペンを使うことにしているから大丈夫。
 グリペンと同サイズのUAVも開発中。そのデモ機は3年以内に飛ばすであろう。
 無人ヘリの「スケルダー」は、操縦はPCでOK。
 欧州合同で無人潜航艇もつくる。海底油田開発にだって無人潜航艇は必要になるのだ。
 UAVが大成するかどうかは、sense-and-avoid technology 次第。さもなければ有人機と空域を分けるしかないのだから。


「カラテRobo」ができるんじゃないかという話

 先回紹介した、アフガンの家屋内捜索をする米兵には、今後は「立ち技系」の徒手格闘スキルや、持兇器格闘の心得が必須となる――という報道を読んで、誰もが感ずるであろう素朴な疑問は、「だったら、最初から〈テーザー警棒〉でも用意してけば?」――だろう。
 ところが、これは空想されるほどに簡単な解決法とはならない。
 住民懐柔策として、シチュエーションは、さいしょはあくまで友好的なムードから始めねばならないのだ。いきなりテーザーをバチバチ鳴らしてドアを蹴破って民家に押し入るような真似は、マクリスタルの方針がゆるしてくれない。
 武術の道場で遊んだことのある者ならわかるだろうが、狭いスペースで相手と近接して立っていた場合、どんな良さそうな武器も、不意をつかれて簡単に相手に奪われてしまう可能性があるのだ。まして相手は複数人だ。
 最初から敵対的な家宅捜索をしたいのなら、むしろ着剣小銃を擬して進入する方がマシだろう。米兵が得意とする床尾板打撃を多用するためには、M-4のバットストックはもっと頑丈なデザインに変える必要もあるだろう。
 また、腰の拳銃には、ハサミやナイフでは切断できないワイヤー入りの紐を結んでおく必要も生ずるかもしれない。
 米兵が格闘に備えて簡単に追加できる装備は、あまり多くない。簡単には奪われ難くしかも相手からはそれと視認がし難い「防刃グローブ仕込みメリケンサック」だとか「肘撃ちに使える外板の固いアーム・プロテクター」……ぐらいではないか。
 将来は必ずこの分野にもロボットが投入されるであろう。音響、光学、電気、化学ガス等々、非殺傷系のあらゆる装備を幾重にも纏った、護衛&格闘制圧専用のロボットだ。もちろんキネティックな制圧力も有する。十手や刺股や梯子やトンファーを手にしているかもしれない。あるいは、パンチがバネでボヨヨン……と飛んでくる、そんな過去のマンガが現実になるかもしれない。もちろんその前に、「網」でも発射するのが合理的だろうが……。
 わたしの無人兵器系の講演でよくぶつけられた質問が「その無人兵器を敵が奪ったらどうするんですか?」というご心配だった。みんな、古い『鉄人28号』の心象が強すぎるようだ。
 今日では、高度な無人兵器のシステム立ち上げには各機に固有の暗号が必要なので、操縦インフラ一式を奪わない限り、戦場で鹵獲した無人兵器を即時に自由勝手に逆用することなどできない。報告されている鹵獲ロボットの逆用例は、単純な「爆発物運搬」だけで、それは農業用トラクターをガレージで改造したってさせられるようなミッションにすぎないのだ。
 むしろ、携帯電話や、IEDジャマーの無線電波が、味方のUAVの操縦信号を妨害してとつぜん墜落させてしまうというケースの方が、深刻なようである。


アフガンに行くなら立ち技の徒手格闘も必修だと米陸軍

 2010-2-16の浜松基地リポートがアップロードされたようです。本サイト内の「資料庫」のいちばん下をクリックしてください。
 書き忘れましたが、浜松基地内の「資料館」には、WWII中に帝国海軍が製造させた、陶磁器製のロケット燃料貯蔵容器の実物が保存展示されています。秋水などの酸化剤をいれておいた容器ではないかと思います。
 それと、AWACSの尾翼は民間機型よりもやや大きいです。これはレドームがのっかっている関係です。全日空に訓練を委託していますのは、B-767のシミュレーターが自衛隊にはないからです。
 次。
 『スターズ・アンド・ストライプス』に2010-2-23にSeth Robson記者が書いている記事「Army revising Combatives handbook to focus more on striking, grappling」。
 格闘技教範が改訂される。イラクとアフガンに派遣される兵隊にはこのレベル1が必修となる。
 イラクとアフガンで住民相手にじっさいに素手ゴロを体験させられた数百名の兵隊を調査した結果、米陸軍の初級格闘教範には打撃技も組み技も必要であると再認識。
 格闘のうち3割は、しまいには銃の発砲でケリがついた。武器を支配した側が、このような格闘では勝者になるのだ。
 米陸軍の格闘技学校はジョージア州のフォート・ベニングにある。
 米軍規定の格闘技能力レベルは4段階。
 従来のレベル1と2は、寝技が中心だった。
 しかし新改訂教範のレベル1と2では、パンチ、キックと組み技が、綜合されている。
 立ち技で、しかも full-gear 状態での徒手格闘と用武器格闘とを学ばねばならぬ。
 家宅捜査では、狭い屋内で、非殺傷的な強制力を、抵抗する家人たちに対して発揮しなければならぬ場合がしばしばあるからだ。
 そうさ。モスールでは、男をタックルして数種類のチョークで制圧し、そいつの手足を zip ties で縛り上げる必要があったよ、と一兵士。〔入隊前の地方の〕学校でボクシングとキックボクシングを習っていたのが役に立ったね、と語る。
 レベル1の最終日の受講内容は clinch drill である。
 レベル2では、4人のガサ入れ隊に対して二十数人の現地の男が clinch holds せんとするのを、いかにしてさばくか。
 なお、ちかぢかドイツのバムベルグ基地で、米軍内の格闘技トーナメントが開催される運びという。
 次。
 ABCニュースの特種。DAVID KERLEY と LUIS MARTINEZ記者による2010-2-23の「Navy to Lift Ban on Women Serving Aboard Submarines  Women Will Be Assigned to Subs if Congress Does Not Object」というリポート。
 米海軍はいよいよ女子の潜水艦乗組みを認める。
 まずは将校からはじめるだろう。人数は 12 ~ 18人で、海軍兵学校卒だけでなく、ROTC組も含める意向。
 ただし米海軍の潜水艦将校になる者はぜんいん1年以上、「原子力学校」でまず予習せねばならぬから、じっさいの乗艦は先の話だ。
 既製の潜水艦に、女子の下士官・兵用の居室・風呂・トイレを新たに区分することは、予算的に不可能。
 女子1名での乗組みも認めない。必ず1艦に2名以上を配属する。
 ちなみに水上艦では1993から女子の乗組みはある。
 妊娠中の女子は水上艦であれ潜水艦であれ乗組みを認めない。
 早ければ17年後の米海軍に、女の原潜艦長が登場する可能性がある。ただし、それには連邦議会の承認が必要である。


空自の現役操縦者たちにも日航の破綻はショックだったそうだ。

 『ナショナル・ディフェンス』の2010-3月号に、Austin Wright 氏が「If You Can’t Afford a UAV, Rent One 」という記事を寄せている。
 米軍以外の連邦の機関が、UAVを民間会社から臨時&随時にレンタルする。しかも操作は会社員に委託すればいい――という、新ビジネス・モデルの紹介だ。
 RQ-7C「シャドウ」のメーカーである米国AAI社が提案している。
 現在イラクとアフガンではAAI社員約60名が米陸軍に雇われてシャドウを操縦&操作している。もちろん、シャドウは非武装であるから、発砲命令のループにいかにして正規軍将校を常時介在させるかという厄介な顧慮も不要だろう。
 政府が機体を保有し、メーカーが操縦運用を担当するという GOCO (government-owned, contractor operated) モデルの他に、政府は機体を保有せず、メーカーがオペレーターごとレンタルするという契約の fee-for-service モデルが考えられている。
 たとえばコロラド大学はすでにAAI社に大気サンプル集めの仕事を発注している。機体は「Aerosonde Mark 4」という無人機。
 これが4機、すでに南極上空を130時間も飛行しているという。
 そこで兵頭の意見。日本の民間会社もこれを見習ったらどうだい。ヤマハ発動機などは死ぬ気でこれに挑んでみたらどうなんだ。
 これからの地方空港は、鉄道駅が構内にあって即時に鉄道=飛行機の乗り継ぎができぬような不便なところは、みな淘汰されてしまうだろう。
 その淘汰確実などうしようもない地方空港をショバとして安く借り、無人機貸し出し事業を展開したら良いじゃないか。
 (機体そのものをAAI社から買ったっていい。どうせ日本のUAVメーカーはAAI社と比べても月とスッポンのノウハウしか持ってないんだから。)
 レンタルならば、たとえばそれを使おうというお役所に、恒常的な装備費・ランニングコストを発生させないから、たとえば海上保安庁や水産庁が臨時需要を満たすことだってできる。財務省もそれならばシブい顔をしないはずだ。いつでも切れるのだから。
 防衛省も、大綱の別表(装備表)に無い装備を臨機に民間からレンタルすればいいじゃないか。(サマーワの警戒用無人ヘリは「ヤマ発」製であったと聞いている。)
 こういう方向をとっとと経営者が打ち出さないと、「日本人がシナ軍の毒ガス撒布作戦に参加か――◇◇戦線に約◇◇人の元◇◇◇社員 無人ヘリ操縦など担当」な~んていうニュースの見出しを、数年後にわれわれが見るようになるかもしれないでしょ。


浜松基地リポートは……

 写真がなぜか電送できぬため郵送で大阪まで送ることにしますので、別枠コーナーが開設されるのは再来週となるでしょう。AWACS面白情報等は、お気長にお待ちください。(しかしいつになったら日本のデジタル通信は、黒ダイヤル電話時代並の確実性を確立してくれるのだ?)
 ところで、「F-2は対艦ミサイル×4吊るして、ハイG機動できるんですかい?」と質問したら、「やっぱりエンジン1基なので鈍重にならざるを得ません。それと、ASM×4発もっていく情況が滅多にないでしょう」といった趣きのご返事であった(ただしこの方、空中勤務者には非ず)。
 『いや~、空対艦とみせかけて実は空対地特殊武器ミサイル×4というオプションもやっぱり考えておくべきではな……うわ何をするヤメロ……』という展開も予想できましたので、それ以上は敢えてお訊ねをしませんでしたが。
 あと、〈ブラジルの軍事博物館&警察博物館の写真取材を無料でやってやってもいいぜ〉という命知らずなアドベンチャー野郎を複数公募し、かれこれご相談など致したいものと思っております。管理人さん宛て、ご連絡請う。ただし応募者全員に返事はしませんから、予めご諒解ください。こちらから連絡が行かねば、この一件はご放慮くだされ度し。


館内放送

Uさま
 すいません、メール28通のうち17通が不達になったようなんですけど、どの写真がまともに送られたか、教えてくれますか?
 それと、もしかしてメルアドの変更とかはなかったでしょうか?


館内放送。ドクター伊藤、メルアドを知らせてください。

 6日間もたてつづけに出張してきたが、そのあいだの面白いニュースは一つしかない。それは william matthews 記者が2010-2-15に載せている「The Nuclear Option  Are New, Small Reactors Answer to U.S. Military’s Power Needs?」です。
 米議会は2009秋に、米軍基地が固有の原発で電力をまかなえるかどうか研究しろ、と注文を出していた。
 これはチープ且つ単純な特殊原発に見込みがある。
 (米国といえども本格的商用原発の建設には23年もかかってしまったりするのだ。それでは急場に間に合わぬ。)
 いま、一メーカーから提案されているその超小型原発は、家庭の風呂桶×2コ分のサイズでしかない。中心システムの重さは20トンに納まる。つまり陸上可搬の設備とすることができるのだ。こいつを地下深くに据えつける。
 1基のコストは $50 million で済む。出力は25メガワット。町でいったら2万軒の家庭用電力がまかなえる。
 ポータブルなので、廃炉の面倒がない。地下から引き上げるだけ。燃料の寿命は7年~10年なのだが。
 10年経ったら、燃料はふたたび濃縮【?】されて再使用される。
 炉心で発生した熱は、「鉛・ビスマス」の液体状の合金が伝達する。
 鉛・ビスマス液は加圧されていないので、万一漏れてもどうということもない。
 濃縮ウラン燃料は、セラミックのペレットに入っている。
 ボロン・カーバイドの制御棒が12本。
 炉心反応の緊急停止用として、それとは別に、6本のボロン・カーバイド棒。
 万一、その緊急停止棒がうまく動作しなかったときには、ボロン・カーバイド球を中央部に投入してバックアップする。
 ただしこの提案、いまのところ、机上のシステムでしかない。実物はどこにもないのだ。
 別の会社×2も、小型原発を軍に提案している。
 その一社は加圧水型。40メガワット。寸法は、60×14フィート。
 以下、兵頭コメント。米空軍は、〈基地が必要とする電力を自前の小型原発で安定的にまかないたいものじゃのう〉と前々から観測気球をブチ上げていました。詳しくは3月11日発売の『「グリーン・ミリテク」が日本を生き返らせる!』でも読んでくれ。
 今月、オバマ大統領も、〈エネルギー独立と環境保護を一挙両得できる原発に政府が金融支援するぜ〉と演説してくれたので、それに合わせて米陸軍も要求をあげようというわけでしょうか。
 この調子ですと、嘉手納や横田にだって将来は原発が導入されることになりそうですなぁ。
 なお、米海軍は、発電所よりも、むしろ艦隊の原子力化の方を強く議会に働きかけたいという下心がございますので、横須賀住民はこのニュースは気にしなくて可いでしょう。
 さあ、日本のメーカーも超小型のHTTR炉を開発しようぜ。1都市1原発が理想ですよ。
 次。
 Bruce Mulliken記者が『 Green Energy News』に2010-2-14に「SOLAR FOR SAUDI ARABIA」という記事を寄稿しています。
 サウジが初めて太陽熱を利用した海水蒸留装置を建設するんですと。
 そのサウジ王国は、世界の蒸留事業の18%をやっている。もちろん、これまでは、火力発電所の予熱などを利用しているのです。
 しかし、太陽発電で国内の石油消費を抑制すれば、それだけ余分に原油を輸出して、もっとカネを稼ぐことができるわけ。
 2010-2-16の浜松基地の面白リポートは、また別枠にて写真付きでご報告をします。来週までお待ち下さい。


「需品」を闇に沈めるな

 Michael Squires記者が寄稿している「Government backs down on army uniforms made in China」という記事。
 豪州軍の戦闘服をシナのメーカーに安く外注すべきかどうかで、同国内が大揉めになっているという話。
 驚くのが、アフガニスタンに参戦している各国軍のうち、唯一、すでにシナ製の軍服を使っているところがあるという。それは英国兵で、発注は北アイルランドの会社に対してしているのだが、その会社が、シナで縫製しているようなのだ。
 以下、兵頭の感慨。
 かつて英軍は、インド兵やグルカ兵を「帝国軍」に仕立てて植民地で戦争をさせていたものです。仏軍ならばズアーブ歩兵。ところが今のアフガンでは、米国の顔を立てる必要から、そういう、犬をけしかける式の戦争が、もうできない。米軍などはトリガーハッピーな海兵隊員にすらポジティヴ・アイデンティフィケーション(撃つ前に本当に敵かどうかその目で確認汁)を求めて精神疾患においやっているほどです。英軍としてもアジア=アフリカ兵を第一線の手下としては使いにくい時代になったんだが、しかし、後方兵站としてなら、いくらでも駆使すれば可いじゃないかという、旧帝国主人的な鷹揚さが残っているのかもしれんですね。
 感慨〈II〉。防衛省の需品がシナ製に未だ汚染されていないのは、制服に関しては縫製が刑務所工場だからだと思うのですが、他はどうなんだろ? 既製利権関係がガチガチだから安泰なのか? だいぶ前に耳にした、プラスチック製弾帯のバックルが割れるというクレームなどは、解決されたのだろうか。
 これからは日本の受刑者も、シナのアパレル工場と価格競争をさせられるのでは、つらいでしょうね。


ハドソンといっても札幌にあったソフト会社ではなく……。

 モデルガンメーカーのハドソンが廃業したという話を浜松の京野一郎先生から聞きました。それでネットを見てみたら、知らぬうちにMGCも廃業しているじゃないですか! 誰も、時の流れには勝てぬのか……?
 ハドソンのモデルガンには特別な思い出があります。中2で新聞配達のアルバイトを始めたのは、当時店頭価格7200円(消費税はまだ存在せず)もした「モーゼル大型拳銃」のモデルガン(亜鉛ダイカストに金メッキ、そしてバレルを塞いでいた金属はCMCのように硬いものではなかった)を手に入れるためでした。信濃毎日新聞の朝刊を70軒、1か月配ると5500円くらい貰えました。すなわちこれを2か月やらねば、1梃の軍用拳銃のモデルガンは買えなかったのです。垂涎のアイテムであった長物・MP-40(もちろんMGC製でなく、カートリッヂの孔をドリルで掘り下げて薬量を多くでもしない限りは2度とブローバックなどしてくれず、しかもそのあと蝋の残滓の掃除で大変になる方)を狙うなら、3ヶ月のバイトが必要でした。
 では何で最初の1梃を南部十四年式やコルトの軍用.45オートその他にしなかったのかといいますと、やっぱり店頭でのインパクトが違うんですよね。大きいので。しかも、あのショートリコイルのメカニズム。これを目の前で店員さんに手にとって説明されると、わたしはその機械的美しさに一発で参ってしまった。店頭で、あれと競合し得るほどの妖しい輝きを放っていたのは「ルガーP08の8インチ砲兵モデル」だけでした(むろんこれまたMGC製ではなく、引き金を引けばトグルが動いた方です)。そしてその「砲兵モデル」は同級生の友人が買うつもりだと言う。だったら、わたしは違うものにするしかないじゃないですか! また別な同級生で「P38」や「ガヴァメント(正確にはコマンダー、しかも規制前の真っ黒)」を持ってるやつもいたし……同じものを揃えたって、面白くないでしょ?
 で、付属の説明書きによると、ボルトコッキングピースを引いて放せばチャンバに初弾が装填され、引き金を引くと、ハンマーが倒れて、カートリッヂ内につめた巻き火薬を撃発させる……ことになってるんですけど、その通りにやると、チャンバに送り込まれたと同時に「暴発」してしまうのが、ハドソン仕様でした。撃針というものがなく、「ボルト=ハンマー打撃伝達媒体」なので、そうなるのはとうぜんなのです。
 いきなりこのような不条理世界に投げ込まれ、世間知らずであった田舎の中坊も、いささか精神的に鍛えられたという気がいたします。
 MGC製品だとそんなことにはならないのだと知るのは、は~るか後のことです。
 泣きそうになったのが分解結合でした。堅く嵌合しているフレームをハンマーで叩きながら引き出すと、バネが1~2本、部屋の隅へ吹っ飛んで行く。これを元に戻すのでもう大汗。(MGC製だと実銃に近いフィーリングでお手軽に整備できると知ったのも、遥か後の話です。)
 しかしこういう体験のあったおかげで、その後、ジョン・ブラウニングの単純オートマチックピストルの発明がいかに当時として画期的なものであったのか――なども、実感的に理解することができるようになったなぁと思っております。
 あと想い出されますのは、友人から中古の安物金属トイガンをいっぱい買い集めて、それを全部、部屋の壁に釘を打ち、家の外からでも見えるような高さに陳列して至福感に浸っていたら、前の道を自転車に乗った警察官が通りかかり、『……?』とその窓を見上げ、通過後に「ブホッ…!」と噴き出していた後ろ姿でしょうか。すでにMP-40もコレクションしていたのでインパクトはあったはずです。
 また当時は「モデルガンもどき」としか言いようのないような安物金属製金鍍金トイガンが、田舎の店頭で2000円前後で売られていたものです。今でも、手に持ったときの、あの異常に軽々しい、しかしながらあくまで冷たい金属肌の印象が忘れられません。たとえば、4インチバレルくらいの6連発のコルト系スウィングアウトリボルバーで、シリンダーの前が完全に塞がっていて、ハンマーは有鶏頭なのにダブルアクションしかできず、しかも内部のバネが非力な「キックばね」なんていうシロモノも……。エキストラクターはついておらず、エジェクター・ロッドはダミーで動きません。
 これの音の迫力をなんとか増そうと思って「スタート用雷管」をつめて発火させましたら、ガス抜き孔がどこにもないせいなのか、シリンダーにヒビが入ってしまいましたっけ。
 「いかにオモチャ銃といえども、その銃口を人に向けてはならぬ」と真に体得できましたのも、じつはモデルガンのおかげです。『いまや目隠しをされた状態で左手1本のみを使ってオートマチック拳銃の排莢と装弾ができるまでに研究を重ねているこのオレ様がまさか人に向けて暴発なんてさせるわけがない』――と思っていた矢先、スタート用雷管を詰めたMGCの.44マグナム(初期ABS製品)を、人の後頭部のすぐに後ろで不意に撃発させてしまったことがありました。これが実銃だったらどうなっていたかと今でもゾッといたします。武器を設計する人は、使用者は基本的にどんな阿呆でもやらかすもんだと思っていなくてはなりますまい。わたしはそれ以来「フール・プルーフ」に強い関心を抱き続けているのです。
 たとえば軍用の自動拳銃も、引き金はすべてダブルアクションでしか発火できぬようにするべきではないか。そうすればデコッキングレバーもいらないし、余計な安全装置もいらない(トカレフのように)のではないでしょうか?
ハンマーが割れて目に飛んでくるという事故もなくせるでしょう
 これから数年後、大砲のタマを、火薬の力ではなく、電気の力で飛ばす時代がやってくると思います。これは、整備中の「暴発事故」をどう予防するかを、設計の最初からよくよく考えていないと、きっと「後悔先に立たず」ですよ。
 次。
 Katie Drummond記者の2010-2-9付け記事「Darpa’s ‘Transparent Earth’ Plan Will Find You Underground」。
 あのDARPAが“Transparent【透明な】 Earth”というプロジェクトを考えているそうで、地下5キロメートルまで透視した立体地中マップを2015までにつくるんですと。
 ちなみに、過去に最も深い人工の穴を掘ったのがソ連で、その縦坑の深さは12キロメートルらしい。19年がかりでコラ半島でボーリングしたとか。
 そこから北海油田のお余りでも吸い取れると思ったんでしょうかね?
 次。
 NYTのOp-Ed に、米空軍研究所員のADAM B. LOWTHER氏の寄稿:「Iran’s Two-Edged Bomb」。日付は2010-2-8。
 シーア派のイランが核武装すれば、米国よりもまず隣国スンニ派諸国の脅威になる。だから米国はこれらスンニ諸国に取引をもちかけられる。独裁体制をやめれば核の傘をさしかけてやるよ、と。
 そうなれば米国は、産油国カルテルを破壊できる立場も得る。よって米国は安い石油が買える。もっと増産しろと命じ得るからだ。
 イスラエルがイランから核攻撃されれば、パレスチナ人も被害を蒙る。よってイスラエルとパレスチナは運命共同体となる。
 イラン周辺国へはたくさん武器を輸出できるから米産業は潤う。
 欧州やロシアやシナはイランにはもう武器を売りにくくなるだろう。
 兵頭いわく。ロシアやシナは、もはや米国と軍事的に直接対決するなんて、夢にも考えることはできません。しかしイランのような第三勢力をこっそり応援することで、いくらでも米国を困らすことができるのだと、わかってきました。米国は世界の軍事費の半分をほぼ1国で支出しているのに、それでも世界を思うがままに支配することはできないのです。
 次。
 ちょっと古いニュースですがオバマ大統領の2月3日の発表。
 トウモロコシを原料とするバイオ・エタノールに対する補助金をまた増額するのではないかという期待を、一部の関係者に持たせた。
 これについての兵頭の見方。オバマ政権の真の狙いは、米国の自動車産業にガソリンエンジンを捨てさせることにある。したがって中西部の農民にはいちおう好い顔をみせておくけれども、リアルにエタノールへの補助金を出すことはしないだろう。そのためにいろいろな条件をつけるはず。たとえばライフサイクルでCO2を増やさないことを証明しろ、とかね。けっきょく、北米でのバイオ燃料の主軸は、菜種由来のバイオディーゼルか、海藻由来のバイオ灯油になるでしょう。