ウクライナ軍が8日に発表。35機の「シャヘド」特攻機が襲来したが、その全機を撃墜したよ、と。

 しかし空対地ミサイルや地対地ロケット弾の攻撃も各地に多数あり、それで市民の被害が出ている。

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 Stetson Payne 記者による2023-5-6記事「Russian Tank With ‘Cope Cage’ Covered In Explosive Reactive Armor Emerges」。
    露軍戦車が「屋上屋」を重ねて、トップアタック兵器の爆発からせめてスタンドオフ距離を取ろうとする努力が進化中。ついに、「屋上屋」の「バーベキューグリル」上にERA(爆発反応装甲)の「コンタクト-1」を敷き詰めた。

 ちなみにこのごろの英文記事ではこの「屋上屋」のスラットアーマーのことを「コープ・ケージ」と称するのが流行。ウクライナ兵がそう呼ぶのだという。
 直訳すれば「いなしの檻」「対策檻」とでもなろうか。

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 NYTの2023-5-8記事「Russia-Ukraine WarRussian Evacuation Orders Sow Confusion in Some Occupied Areas」。
    ザポロジアとヘルソンでは、宇軍の反攻を予測したロシア軍が、占領地住民に対して、ロシア本土へ引っ越すように命じたのだが、住民はほとんど誰も応じていない。『NYT』は住民数十人に電話で確かめている。

 露軍はそのかわりに物資と金品を撤収させはじめた。商店には食料品はない。ATMには現金が無い。病院からも備品を持ち出し、病院ビルは無期限封鎖した。

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 Aaron Sarin 記者による2023-4-28記事「China’s Missing Million」。
  ※記者は中共内の新コロの実態を調べている専門家。

   2022年末から2023年にかけての冬だけでも、中国では100万人もの新コロ病死者が出たのではないかという、おどろきの推計が、提出されている。

 すなわち、アメリカ合衆国が3年のあいだに出している病死者数を、中国では2ヵ月のあいだに追加したらしいのだ。

 2022-11の人民による「白紙デモ」に熊プーは屈し、いきなり何の準備もなしにロックダウンを解除した。
 その結果、12月に爆発感染が起きた。最初の20日間のうちに2500万人が新コロに感染した。

 『エコノミスト』紙は2022-12前半に試算した。中国で1日に4500万人〔?〕が新規感染したなら、病死者は68万人に達し得る、と。

 その後、上海、香港、米国の別々の大学でも試算。1日に150万人が新規感染した場合、中共国内の病死者は100万人~160万人になるであろう、と。

 中共の感染対策予防センターの「呉 尊友」氏いわく。総人口11億3000万人のうち、80%が、2022-12-7から2023-1-21のあいだに、新コロに罹ったと。そして彼が推定している「死亡率」は0.09%から0.16%のあいだだという。それをあてはめれば、100万人死んだことになる。

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 Alex Horton, Mustafa Salim and Steve Hendrix 記者による2023-5-7記事「Iran hid weapons among earthquake aid to target US troops, leak says」。
    リーク文書でまたわかった。
 今年の初めの、死者数千人を出した地震の直後、IRGC(イラン革命防衛隊)とその手下の現地グループが、「人道支援物資」の中に武器弾薬を隠してシリア領内まで持ち込み、それを使ってシリアにある米軍基地を攻撃したのだと。


下から見るとシルエットが似ている「TB2」とロシア製「コルサル」の識別点は、主脚が格納されているかどうか。「TB2」の主脚は、飛行中も出っ放しである。

 2023-5-7記事「Ukrainians are very happy with the old-fashioned M101 howitzers. Here is why」。
    M101は、1941年からある、米軍の牽引式105mm榴弾砲である。
 原型はさらに古い。

 第一次大戦中に、米軍は、複数のタイプのドイツ軍の105mm野戦榴弾砲を鹵獲した。

 それらを参考にして、米国内で1920年にこしらえてみたのが「M1920」で、それがのちに「M1」という105mm砲になった。

 そこからさらに小改良が蓄積され、「M2」の名での製造がスタートしたのが、1939年である。
 1941年にその砲架等が小改良されて「M1A1」となり、第二次大戦を通じておびただしく量産された。

 1962年に、米軍の火砲の命名法が整理され、「M1A1」の名称は「M101」にあらたまった。これが、今日でも、米海兵隊などでは愛用されているのである。

 米国内での「M101」の製造は、1953年に終了している。しかし韓国などでは今もライセンス生産が続いている。

 この砲についてウクライナ軍兵士は、こう評している。M101は、それぜんたいを、ふつうのトラックの荷台に載せて運べるので、超便利だ。信頼性も抜群で、1門が1000発以上も発射しても、特に問題が起きない。

 この大砲は射程を欲張っていないおかげで、夜間でも、砲口焔が敵の目を惹かない。発砲音も、そんなに遠くまでは届かぬ。昼間でも、発砲煙が敵方から発見され難い。
 戦場ではこうした特性が、砲兵の生残性を高めてくれる。敵にこっちの陣地の位置を気取られないことは、プライスレスにありがたい。

 ※この野砲は陸自でも絶賛されていた。各部が頑丈なので、もし敵の砲弾の爆発でひっくりかえっても、人力で起せばまた発砲できるのだと言っていた。陣地進入が人力で素早くできる野砲としてはこれが日本最大だったろう。つまりノリとして旧軍の「野・山砲」に近いところがあって、それが「日本軍の遺伝子」にはフィットしたのだと思う。あらためて、これ用の安価な「砲側員ロボット」を開発したら、現代に復活できるんじゃないか? 人手不足はのりこえられるし、「ランセット」も怖くなくなる。SPのようにシステムがインテグレートされてしまっていると、1発の特攻ドローンがどこかに当たっただけで全機能を喪失するが、牽引砲と砲側員、牽引トラクター車、指揮通信車、弾薬トレーラー車といった諸要素をわざとバラバラにしておけば、特攻ドローンが雨あられと降り注いでも、NBC環境下となっても、しぶとく戦闘を継続できる。これ、重要でしょ? ロボットにガスマスクは要らないんで……。既著にも書いたが、古い105㎜野砲をヘリで尖閣の任意の海岸に1門据えつけただけで、全島を十全に火制してしまえる。偶然にも、日本の離島戦争にあつらえむきのちょうどよさ、になっている。

 ※追加情報。英軍の105mm野砲である「L119」は、米軍の105mm砲弾「M1」をそのまま使える。豪州でも「L119」がライセンス生産された。英軍は「L119」を2005年で倉庫に仕舞った。豪州軍も、この大砲は第二線部隊用に格下げしている。しかしユーザーは今も多く、米軍も使っている。射程は、普通弾で11.4km、ロケットアシスト弾で17.5km。チューブ状の脚は開脚するようにみえるが、じつは開かない。構造機能としては「単箭」で、それなのに、大仰角で後退する砲尾にはぶつからぬ。大発明である(旧軍の「改造38式野砲」はこの発明に失敗したといえる)。しかも、1人の砲兵が人力で、この砲身を360度、旋回させられる。4名いれば、持続砲戦できるという。定員は6名だ。

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 2023-5-7記事「Military showed Western handgrenades collection」。
   ウクライナ軍が貰ったり鹵獲したりして使っている各種手榴弾をズラリと並べた映像が公表されている。

 なんか登山者用の湯沸しガスバーナー用のカセットボンベみたいな手榴弾があったら、それはロシア軍の「RG-60TB」である可能性がある。重さ240グラムで、燃料空気爆薬が詰まっている。すなわち、サーモバリック手榴弾だ。

 珍しいところでは、フィンランド製の「M/50」という破片手榴弾。50ミリの軽迫撃砲の弾丸に、フライオフレバーと信管をねじ込んで、手榴弾に改造したものだ。これをテーブルの上に立てて置けば、小さな花瓶のようにベース部が狭くて上縁が末広がりなので、見ているだけで不安になる。

 ※これからの「大消耗戦軍備競争」を考えるときに、この着眼は要注目だ。想像するといい。軽迫(もしくは擲弾筒)と、RPG弾頭と、手榴弾を、対人用に関してはぜんぶ基本要素を共通化してしまえたら? 町工場を総動員して大量生産させられるのである。このレベルなら、第三世界の工場でもじゅうぶんにそれが可能だ。径50ミリというのは、旧軍の重擲弾筒と同じだ。つまり旧日本軍の手榴弾とも同じだ。それが今でも通用するのである。またウクライナ軍は、82ミリ迫撃砲弾を、RPGに強引にとりつけて、無反動砲のようにして市街戦の近接直接支援火力としている。50ミリとか60ミリならば、もっと簡単だろう。「重擲」を現代の素材技術で再生させたら、緊急援助兵器として、こんな心強いものがあろうか? 研究すべし!

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 ウクライナ国防情報部の2023-5-7リポート。
  ロシア中央銀行が1万4000社を調査したところ、ロシア経済はもっか、1998年以来最悪の人手不足状態にあることが判明。

 直近の3年間で、ロシアの人口は200万人減少している。
 2022年には、ロシア国外へ130万人が逃散した。多くが高度教育を受けた専門職労働力である。
 ロシア逓信省いわく。2022年にロシアのIT系技能者の10%=10万人が、国外へ逃亡してしまった。

 これに、基礎人口減、社会の高齢化、そして軍隊への動員が重なっている。

 この労働力減少は、ロシア経済の潜在成長力を殺ぐ。またインフレをしのびよらせるであろう。

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 AFPの2023-5-4記事「Ukraine ‘realistic’ about not joining NATO during war: Zelensky」。
   木曜日にゼレンスキーはオランダ首相&ベルギー首相と会い、そのあとでヨーロッパ向けに語った。ロシアとの戦争中にNATOに加盟しようなんて思っちゃいませんよ、と。

 ※これでますますロシアとしては戦争状態を終らせるわけにいかなくなった。休戦すれば、ウクライナがNATOに加盟してしまうからである。

 次。
 ストラテジーペイジの2023-5-7記事。
   ドイツ、スウェーデン、英国は、合計437両の「BV410」重連装軌車を発注した。これは「BvS10 ヴィーキング」の最新版で、全地形対応の補給車両である。もともとは、英ロイヤルマリンズがアフガニスタンで用いるために改良した。

 「ヴィーキング」は2005年から英軍に導入された。製造工場はスウェーデンにある。
 軽度に装甲されていて、自動小銃の弾丸くらいならボディで止められる。

 必要ならばさらに追加装甲を貼り付けることができ、その場合は14.5ミリ銃弾まで止められるという。
 IED/地雷から乗員を守る対策を特に講じたバージョンは「CATV」と呼ばれることもある。

 生物に関節があることをArticulateという。
 ここから、関節を有する、連結型のトラックやバスのことを「アーティキュレイテド」と呼ぶ。
 「BvS10」も、「アーティキュレイテド・ヴィークル」に属する。自重は14.2トン。荷物は5トン載せられる。その結合部によって、エンジン動力も操向動作も共有される。

 「前車」は重さ4.9トン。「後車」は3.1トン。
 唯一の不利は旋回半径で、15.2m必要である。

 「前車」には4人座れる。「後車」には8席ある。
 そのままで浮航できる。水上速力は毎時5km。
 陸上では65km/時まで出せる。

 装軌式の連結車両は、積雪シーズンが長く、湿地と山岳が重畳する、スウェーデンが最初に必要とした。
 接地圧はきょくたんに低く、おかげで普通の対戦車地雷の踏圧信管を反応させずに乗り越えることも可能なほど。

 「BvS10」および「BV410」は、オーストリーやフランスなどでも採用されている。先にウクライナにはオランダから28両の「BvS10」が寄付された。

 ※ここで雑学。スノーモビルを気温30度の夏に草地で走らせたらどうなるか? 英文ネットで調べてみたところ、低速ならオーバーヒートはしないが、車体各部は確実に傷むことになり、かつまた、そういうことをやる乗り手はつい高速を出してしまうものだから、けっきょくエンジンも壊れるという。空冷式であっても、ダメだそうだ(液冷式の場合、冬でもオーバーヒートすることがあるという。気の利いた製品は、液温82度になるとエンジンが自動停止するという)。おどろいたことに、どうやら夏冬兼用のスノーモビル型マシンは存在しないようである。えっ、なんで? 夏の保管方法も、納屋にほったらかしとかではダメで、じつに繊細な管理が必要なのである。これじゃ世界中の「非リゾート」の田舎地方では絶対に流行らんぞ。それにしてもどうも理解できぬこと。ここに有望なニッチ市場があるのに、なぜ誰も製品を開発しようとしない? オールシーズン使いまわせる、原付バイク並に軽量なモノトラック・ヴィークルを開発してくれよ! 北海道の冬の「お遣い」に使いたいから。


キンジャルがペトリオットによって空中破壊された。5月4日の未明02時40分、ハイパーソニック弾が実戦で初めて阻止された。

 Jakub Palowski 記者による2023-5-5記事「Western fighters for Ukraine? Air to Air Missiles are the Key」。
   ロシア空軍に詳しいジャスティン・ブロンク教授に対するインタビュー記事。

 しつもん。ウクライナ空軍には西側は何をくれてやるのがいいんですかね?

 教授:まず「長射程の空対空ミサイル」ありき――の話となります。機体の話はその次。ただし、AMRAAMかメテオールを運用できない機体は、論外です。

 宇軍が僅かな機数の西側製戦闘機を保有しても、それで地上戦は変わりません。しかしいっぽうで、もしロシア空軍が戦場上空の航空優勢を確立するようなことがあれば、たいへん面白くないことになる。「休戦」交渉が宇側に不利になります。そうはさせないようにしなくてはならない。

 一部のマニアが好きなA-10や、練習攻撃機の「ホーク」のような機体ではダメな理由はそこです。それらの機体は空対空戦力としてはカウントできないので。

 宇軍の飛行機が低空から及び腰でHARMを発射しても、露軍のS-300やS-400を破壊できないことは、もうわかったでしょう。

 また、ウクライナ空軍は、高性能戦闘機の出撃基地を、極限まで分散する必要もあります。敵は各種のミサイルを放って、ウクライナ領内のあらゆる飛行場を空爆できるからです。

 しつもん。ペトリオットの供与では何にもなりませんか?

 教授:数が問題です。ウクライナに与えられるペトリは数が限られる。それが相手にする標的も、よくよく選ばなくてはならない。

 それに、空中から発射される弾道ミサイルである「キンジャル」などは、ペトリの防空網を突破してくるでしょう。

 もっかのところ、敵はウクライナ領内の航空基地をハイパーソニック弾では攻撃していません。が、もし西側が高性能軍用機を供給したら、かならずその配備先の飛行場をめがけてハイパーソニック弾を集中してきますよ。

 これまで宇軍の戦闘機は、飛行場を転々と変えることで、生存できています。西側から供与するにしても、やはり、それと同じ運用が可能な機材でなくてはいけない。田舎の、設備の悪い、短い滑走路や道路上からでも運用できる戦闘機でなくては、ダメです。

 しつもん。するとオプションは何になるのですか?

 教授:巷間、言われているのはF-16とグリペンですよね。

 F-16は、近年、AMRAAMを発射できるようになったので、露空軍のあらゆる戦闘機と、視界外の遠距離からわたりあえる、有力オプションです。その場合、こっちは低空から発射しますので、敵のレーダーからは終始、見えません。ただし、AMRAAMにもバージョンがある。理想的には最新型の「AIM-120D」が米国から供給される必要があるんですよ。でも、その供給余裕や供給意思が、米国にはあるかどうか……。

 というのはですね、米軍戦闘機が中共戦闘機とわたりあう予定のAAMも、「AIM-120D」にほかなりません。とっておきの秘密兵器のようなものです。それを今、ウクライナへくれてやっては、米軍じしんの対支戦備にさしつかえる可能性があるわけです。

 AMRAAMの最新型を宇空軍に供給すれば、それはまず確実にロシア本土上空まで到達し、いくつかは外れて地上に落下します。ロシアはそれを回収し、性能を解析すると同時に、中共やイランにも現物をプレゼントして、技術情報を漏洩させるでしょう。米軍としてはこの点を重視しないわけにいきますまい。

 ロシア製のSAMは、まったく、あなどれません。たとい最新のステルス戦闘機でも、ロシア製SAMから撃たれない用心として、戦場では低空を飛ぶ必要があるし、そうなればますます、AAMとしても、最低でもAMRAAMクラスのレンジのポテンシャルがどうしても必要になるのです。さもないと空対空戦闘中のこっちの戦闘機がロシア製SAMに近づきすぎることになり、SAMにやられてしまうんですよ。

 ウクライナという戦場にかぎれば、短射程のドッグファイト用のAAMなどまったく無価値で、AMRAAMとその同格品――たとえば「メテオール」――だけが、空対空兵装として意味があるのです。その価値は「プライスレス」です。あるかないかで、天と地の差になる。

 初期型のAMRAAMは、高空から高速で発射することを前提にしていました。その前提が、今のウクライナ戦線では、ありえない。敵のS-400/300が、有効だからです。そうなると、低空から低速で発射しても遠くまで届いてくれる、AMRAAMの最新型だけが、使えるAAMだと言えるわけです。

 そのAAMは、自機よりも高いところを飛んでいる高速目標を捕捉する必要がある。空気の濃いところからスタートさせて、その空気抵抗を排除しつつ、重力にさからって高空まで駆け上る、超高性能のロケットモーターが不可欠です。そんな無理をしても、ある程度の射程は達成してくれるのが、AMRAAMの最新バージョン。

 ロシア軍戦闘機はR-77-1という中射程のAAMを運用します。同じモノをウクライナ空軍ももっている。しかし実戦場では、射程は3倍も、違ってくるんですよ。露軍機は、それを高空から高速で発射して、低空のこっちの戦闘機を狙う。こっちは、低空から低速で発射して、高空の敵機を狙わねばならない。その違いから、同じAAMでも、レンジは3倍、違ってしまうのです。それほどの不利を、こっちは克服しなければならない。それができるのは、AMRAAMの最新型しかありません。

 しつもん。グリペンは「メテオール」を運用できますよね?

 教授:グリペンはF-16より重い。ぎゃくに言うと、F-16は、軽すぎるのです。華奢に造られている。グリペンは、荒れた滑走路で乱暴に離発着させても壊れないように、重くなったのです。エアインテイクも、F-16のは、滑走路面上にデブリが存在することをまったく想定していません。

 F-16を運用するためには、航空基地に、複雑な支援設備が必要です。グリペンには、それは必要ありません。

 ウクライナ空軍は、開戦からこのかた、「ミグ29」と「スホイ27」を、全滅させずに、しぶとく運用し続けて来られています。この2機種も、粗末な滑走路で運用できる機体だからです。もし宇軍の装備機がF-16だったなら、いまごろ、1機も飛んでいないでしょう。ウクライナの田舎の飛行場からは、F-16を持続的に運用することは、不可能なのです。

 スウェーデン空軍の地上整備兵は、徴兵なんですよ。彼らはたったの3ヵ月しか整備教育を受けていないのに、グリペンをメンテできる。F-16だったなら、とてもそうはいきません。

 「メテオール」をウクライナに供給するためには、フランス、ドイツ、イタリー、スペイン、スウェーデン、英国がぜんぶそれを承認する必要があります。ただし、AMRAAMと違い、米国の承認は要らない。

 しつもん。グリペンは数が少ないじゃないですか?

 教授:少なさも、ちょうどいいんですよ。というのは、ウクライナ空軍の整備兵で、英語が分かって技術教養があるという人材のプールは、小さいからです。

 もしF-16が供給されるとした場合でも、機数は、2個スコードロン分くらいになるんじゃないでしょうか。
 タイムフレームを考えると、グリペンに決めた場合と、大差なくなるはずですよ。
 つまり、どちらにしても、ことしじゅうに戦力化するわけがないんですから。来年以降の話となります。

 しつもん。英国にできることはありますか?

 教授:こういう可能性は考えられましょう。RAFがもっているユーロファイターを、スペイン空軍に渡す。そしてスペイン空軍は、その保有機である「F/A-18 ホーネット」を、ウクライナ空軍に渡す。そんなトレードが。ホーネットはグリペンより古いですが、短い滑走路で運用できますのでね。整備も、F-16よりは容易です。ただしネックが……。それは、果たして米国政府が、最新バージョンのAMRAAMを、そのF-18用として、供給してくれるかどうか、です。そこは、誰にもわかりません。しかし、もしもAMRAAM抜きとなったら、F-18には何の意味もなくなります。

 念のため、申し添えましょう。もし米国政府が、最新バージョンのAMRAAMの対宇供与を渋ったとしても、それは非難されるべきじゃない。この最新ミサイルなしでは、米軍の対支戦争準備は、根底から揺らいでしまうのですからね。不発弾がロシアに拾われ、技術情報が中共へ漏洩した場合でも、米軍の優位は台無しです。そんなおそれが確実にある以上、「供与しない」という判断を米政府がしたとしても、誰も文句は言えません。

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 Neil MacFarquhar and Anton Troianovski 記者による2023-5-6記事「Car Bombing Injures Prominent Russian Nationalist Writer, State Media Reports」。
    2014年のウクライナ切り取り工作作戦での活動歴があり、その体験をもとに《プーチン作戦よいしょ》の小説も書いて政府から表彰されているザハール・プリレピンは、モスクワでは有名人である。
 土曜日、彼の乗った「アウディ」のSUVに爆弾が仕掛けられ、雇われ運転手が即死。プリレピンは片足を粉砕された。命に別状は無い。
 現場は、ロシア本土のニジニノヴゴロド市。

 アウディはまっぷたつになり、車体前半部分はどこかに消し飛び、後半部分は裏返った。地面にはクレーター。
 ※こんなIEDをアマチュアが準備できるかっての。

 運転手は、やはりウクライナ従軍歴のある男だった由。

 プリレピン自身が数々のテロの黒幕になってきたとウクライナの公安局は見ていて、2017年に指名手配している。

 プーチンに気に入られたプリレピンは2021にロシア議会の議員に選ばれたが、すぐに辞めてしまった。プー之介の言うなりに、法案に賛成するだけの、超退屈で誰でもできる仕事だからだ。そんな数百人もの馬鹿議員とは俺は違うんだというプライドがあって、より高い役職を求めていた。

 「テレグラム」というSNSの中では、彼のフォロアーは30万人もいるそうである。

 彼の本性は反政府だ。2006年に書いている『サンキャ』という小説は、不満だらけのギャングのボスが、政府警察の機動隊と戦争するという内容だ。

 この小説が2013年に英訳されたとき、序文を寄せたのはナワリヌイである。したがってプリレピンが今、爆死したとしても、それでプーチンが腹を立てることはないであろう。

 ちなみにナワリヌイはこう持ち上げた。共産主義を知らない世代、そして、腐敗し切った現今のロシア経済システムには未来など無いと肌で感じているわれわれ世代の、代表選手の作家であると。

 ※このテロは、プリゴジンに向けて《いつでもお前なんか殺れるんだぞ》と釘を刺すための、ショイグ配下のGRUによる汚れ仕事ではないのか? プリゴジンによる糾弾ビデオの公開の後、露軍は、申し訳程度に、クラスター型焼夷弾の雨をバフムト市街に降らせた。それは《絵的》には派手なのだが、塹壕を守備しているウクライナ兵に対しては、ほぼ、何の効果も無い。すなわち「露軍にはほんとうに普通の砲弾が無い」のだという傍証が世界へ提出された形。ショイグはこのようにして、ワグネルからのリクエストにしぶしぶ、応えてみせた。と同時に、プリゴジン個人を脅迫しておかなければならないとも感じた。ロシアには、国家公安系機関が「ファルスフラッグ」を演出する多彩な伝統がある。プー之介自身が、FSBに都市部で爆弾テロをやらせて、「チェチェンの仕業だ」と叫び、自国の無辜市民の死体の上に、独裁権力を築いてきた鬼畜なのだ。

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 Sakshi Tiwari 記者による2023-5-6記事「Russia’s ‘On-Point Jamming’ Has Made Life Miserable For HIMARS, EW Attacks Cause It To Miss Its Target」。
    CNN報道によると、露軍はGPSスプーフィングの能力を向上させており、そのため宇軍のHIMARSが当たらなくなってきたという。終末誘導をGPS電波信号に依存する兵器だから、とうぜん、そこを逆手に取られるわけだ。

 先のリーク文書でも、露軍のGPS信号攪乱戦術によって、米軍が供与したJDAMが、ただの無誘導爆弾になってしまったという話が漏れていた。

 また露軍は、S-300によって、GMLRSを途中迎撃することが、しばしばあるという。
 ※これは価格的には同じくらいか? どちらにとっても持続不可能では?

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 2023-5-6記事「Ukrainian air defense shoots down a Russian Kartograph UAV」。
    土曜日に宇軍のAA部隊は、めずらしいロシアの「マップ撮影用」無人機を撃墜した。
 場所は、ドニプロペトロウスク地区。

 1回の航過でパノラマ写真を撮影するために、多数の望遠レンズを腹の中に詰め込んでいる。またそれとは別にビデオ映像もリアルタイムで送信するようになっている。

 機体は「オルラン10」の一部流用かもしれぬ。

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 2023-5-5記事「Russia Restores Rail Traffic on Controversial Crimean Bridge」。
   クリミア大橋の鉄道線路の修復が完了したと金曜日にロシアがアナウンスした。昨年10月から修理にかかっていた。7ヶ月かかったわけだ。

 ※ここを追加でミサイル攻撃しないのも、スプーフィングが特濃だからか?

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 Boyko Nikolov 記者による2023-5-5記事「MQ-9 drone ‘shot down’ by Su-27 recovered from seabed by Russians」。
    ロシアのツァーリグラードのネット報道によると、露軍は海中から「MQ-9 リーパー」の残骸を引き上げたそうである。

 ※なぜその作業を魚雷で妨害しない? 黒海における両軍の作戦は、謎すぎる。


ロシア版《戦陣訓》出来?

 最近捕虜にした露兵のポケットから、「ナチスの捕虜にならないためにはどうするか」という印刷されたリーフレットが出てきた。「手榴弾を取り出し、安全ピンを抜き、防弾ヴェストの中へ首の隙間から押し込み、顎で上からしっかり押さえるべし。」「死は恥よりも良し。」などと書かれている。

 さらに雑報によると、プリゴジンがSNSにビデオ投稿し、5月10日までに弾薬が補給されないならワグネルはバフムトから撤退する、と宣言し、ついでにショイグ〔発音はショイーーグらしい〕とゲラシモフを口汚く罵った。これを視て思ったのだが、チャットGPTでこのレベルの動画(背景は夜の暗闇)は捏造できるんじゃね? 「いまから逐次に各個後退を開始せよ」と、ビデオを通じてフェイク命令を出したらどうなんの? それはともかくとして、この調子で行くとプリゴジンは「ポスト・プーチン」として有力株になるんじゃないかと思う。

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 AFPの2023-5-4記事「Ukraine Arrests Odesa Mayor in Corruption Case」。
    ウクライナ警察は、オデッサ市長を逮捕した。開戦前からの汚職が理由という。

 この市長は2014年から現職。同年に、ウクライナの反汚職運動も始まった。EUに加盟するためには、行政が腐敗していてはならないのだ。

 こやつは経営破綻した工場を、適正価値の2倍の公金で買収した。金額は220万ユーロ相当。

 もともと、プロ・ロシアのヤヌコビッチの子分で、素性が怪しかったのである。

 オデッサはウクライナ最大の港であった。同時にそれは、密輸ビジネスの巣窟であることも意味した。

 次。
 Phoebe Grinter 記者による2023-5-4記事「Sky Power Showcases Drone Engines at XPONENTIAL 2023」。
   デンバー市で5-8から5-11まで開催される商品見本市。
 ここに、フランクフルトに拠点がある「スカイパワーインターナショナル」社からエンジンを供給された「UASグローバルサービス」社(テキサス州)の新作無人機が2機種、出展される。

 その1つは「アンゼン EG-1250」というバートル型の無人輸送ヘリ。飛行中に幾度でも物料投下できる。最大離陸重量250ポンド。EGという記号は、電動モーターと、ケロシン燃料の内燃機関の両方を備えることを表すという。

 内燃機関はヴァンケル機関(ロータリーエンジン SP-180 SRE)である。

 同社は、他の機種用には、ピストン・エンジンのラインナップも用意しており、対応に隙は無い。

 ※スカイパワー社はさすがに良い処に目を着けた。世界中の輸送用の無人機の市場はこれから爆増する。その機体システムを売るのではなくて、エンジンだけを各国の地元機体メーカーへ供給しようという路線だ。そのさい、小型ロータリーを押し出すことで、ライバルのカナダのレシプロエンジンメーカーとは、出力/重力比の性能勝負ができる。VTOL機なら決定的な意味をもつスペックだ。他方で、小型ガスタービンのライバルメーカーには、燃費で勝てるわけだ。電動モーターとは勝手の異なる、経験蓄積のハードルも高めて行けようから、中共のメーカーなどが後から参入しようとしても、追いつかれるおそれはない。何故、これと同じことをサクッと考えられる日本の経営者/機関投資家が現れないか、ほんとうに理解に苦しむ。世界市場を支配できる最短コースの、好見本だろう。

 次。
 Mike Stone 記者による2023-5-5記事「Drones over Kremlin likely launched from inside Russia, experts say」。
    ダナ・ゴワードは、GPSはもっと妨害に強いものにしなければダメだと主唱している米国内のNPOの代表。彼いわく。
 2015年いらい、モスクワ市心にはGPS攪乱のための電波妨害設備がフルセットで揃っているから、国境外から無人機が悠々とそこへ到達できるとは思えない。

 またいわく。
 今回のクレムリン突入UAVのサイズは中型だ。おそらくGPSを頼りにはしていなかった。おそらく目視リモコンで操縦されていただろう。ということは、すぐ近くから発進したのである。リモコンをしなかったという可能性もある。すなわち、飛翔するアジマス方位角を最初に確定し、その方位角をひたすらキープさせる。そしてプリプログラムによって、時刻ごとの高度を変化させるのだ。

 このようにすれば、GPSスプーフィングや、リモコン電波ジャミングを、はねのけられる。

 ロシアのSNSで公開されているビデオによると、UAVは2機、たしかに飛来したようだ。
 2機とも、同じコースでやってきている。
 どちらも、クレムリン「上院」のドームをめがけてきた。
 1機目は、煙をちょっと噴き出した感じで、自壊した。
 2機目は、炎を上げ、残骸をドーム上に遺した。

 ドローン・メーカー「BRINC」社の設立CEOである、ブレイク・レズニックいわく。
 GPSを頼りにせず、また地上からリモコンもしないようにすれば、ジャミングやスプーフィングをかわせますよ。

 垂直離着陸機協会の専門家、ダン・ゲティンガーは言う。400km以上を飛行できる無人機を製造している国は多くありません。ウクライナには、製造できます。

 しかしもしロシア国内から発進させればよいのであれば、今回のようなミッションを実行できる小型UAVは世界中に無数にあり、どれを使ってもいいでしょう。

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 Defense Express の2023-5-5記事「Russia Manufactures Wooded Drones For Reconnaissance And Ukraine’s Air Defense Distraction」。
   5月4日にウクライナ軍が1機の露軍の固定翼ドローンを撃墜したところ、それが「全木製」であったのでビックリ。中味には、市場で調達されたカメラなどが搭載されており、レッキとした偵察任務機であった。

 動力は、モーターハンググライダー用と思われる小型のレシプロエンジンを串形に双発配置。

 ところで、ロシアには「E95M」という、巡航ミサイルをAAで迎撃するための訓練に用いられる標的無人機がある。これはガソリンのパルスジェットエンジンで30分だけ飛行する。コストは、開戦前の話だと、1機5万ドルしかしない。「ペニー・ドローン」と言っては大袈裟だが……安い。

 「安く大量にドローンを生産する競争」が、すでに始まっているのである。
 敵の防空アセットを飽和させ、敵の高額なSAMを無駄射ちさせるのに、それはとても役に立つのである。

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 2023-5-5記事「The launch of the Chinese DJI Mavic drone on the front line. Photo from open sources」。
   ウクライナの民間技師が、市販の「Mavic 3」を有線テーザー式に改造している。地上から給電することにより、上空35mに、時間無制限に浮いていられるのである。

 いまのところ、操縦信号は無線のままで、手をつけていないのだが、これもいずれは有線操縦に改造してしまうつもりでいる。それができれば、もう、こっちからは無線電波を輻射しないので、敵のESMにも探知されなくなる。電波妨害も効かないわけである。

 本体には緊急着陸用の小型バッテリーは残す。それにより、有線給電が事故で途絶えた場合にも、自動で機体が安着することができる。

 この改造によって余計に増える本体重量は100グラムでしかない。
 給電は220ボルトでも、12/24ボルトでも可能。
 操作員が感電しないプロテクトも、考えてある。
 ケーブルはウインチから最大で500m、繰り出される。
 通常は高度25mに浮かせておく予定。

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 Tom Porter 記者による2023-5-5記事「Putin has given up on ambitions to conquer Ukraine after military losses that could take a decade to repair, says US intel」。
   米国の国家情報局長が上院の軍事委員会で証言。プー之介は、ウクライナ征服は諦め、次等の目標として「ウクライナをせめてNATOには加盟させない」ことを、再設定した。

 ※これでますます戦争の短期終息は見えなくなってきた。バイデンの選挙対策本部としては、大統領選が本格化するタイミングで、対露の直接交戦が今にも始まるような危機が醸成されてくれるのが理想的であろう。つまり、あと1年半、プーチンに粘ってもらった方が、米政府としては嬉しいのだ。ただし、一寸先は闇とも言う。もし突如としてプーチンが暗殺されたり病死したりすれば、米大統領選挙前の劇的な「手打ち」が起きるかもしれない。その場合、クリミアは勢いで奪回され、ロシアの頭首はプリゴジンになっているだろうと私は予想するが、それはともかく、そうなった場合には、バイデンは選挙で負けてしまうであろう。また全然かんけいないが、米共和党員はいったい何を考えているんだ? 英国王の戴冠式に米大統領は参席するべきだ――とトランプが発言しているんだぞ。《リパプリック》とは何だ? それは君主を戴かないという精神の標榜である。トランプは、自分は王党派だと自白したようなものだ。いやしくも「米国共和党員」なら、そんな発言できるわけがない。即時、追放に値するであろう。

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 Irene Wright 記者による2023-5-4記事「Coast Guard helicopter nearly plunges into sea during rescue, terrifying video shows」。
     クルーズ客船『カーニバル・ドリーム』内にて76歳の老人が心臓麻痺の症状に陥り、米コーストガードのメディヴァック・ヘリがホイスト救出のため米本土から飛来。

 アラバマ州沖300海里。4月29日の早朝。気象は、よくなかった。
 機種は「ジェイホーク」――すなわちブラックホークのバリエーションたるMH-60T。

 この模様が、上甲板から、他の船客によってビデオ撮影されたが、たまたま現場海域は強風が吹いていて、ヘリはウインドシアにとつじょ押し付けられ、危うく海面に突っ込むかという、きわどいハプニング。甚だ貴重な映像資料が偶然に得られた。

 ※陸自のUH-60がやられた原因も、まずコレでしょう。あっという間の急落下だからパイロットにもコーパイにもメイデイを叫ぶ余裕などない。そもそも急降下の原因が咄嗟に理解できぬはず。機械のせいなのか? 気流のせいなのか? それをまず把握しようと全力を五感に集中する間、ついでに通信なんかしてられるかっつーの。

 1機目のヘリはホイストを諦めた。船の真上にホバリングすることすらできぬ乱気流。

 当該急患は、2機目のヘリがホイストに成功し、ニューオリンズの病院まで空輸され、そのご容体は安定しているとのことである。


2022-11にシリアにて、米軍のリーパーに対して露軍がSA-22を発射し、距離40フィートで爆発した話を『Air & Space Forces Magazine』が詳しく伝えている。

 Robert Farley 記者による2023-5-4記事「Did Ukraine Really Try to Kill Putin with a Drone Strike?」。
   5-3のクレムリン空襲は、ウクライナの工作隊の仕事だろう。その目的は、露軍の高射砲兵のアセットを、ウクライナ前線から、より、モスクワへシフトさせることだろう。象徴的な爆発が、象徴的な建物の真上で起きてくれたら、その目的は実現に近づく。

 ※未解明の問題は、特濃のスプーフィング空間であるモスクワ中心市街域で、どうやってUAVをコントロールし得たかということ。「レイヴン」の後期型に使われているような、デジタルのリモコン信号で、しかも、機体を地上から直視できるほどの位置関係での操縦ならば、妨害は受けにくいだろうと想像できる。機体を「手投げ」で発進させた場所は、郊外の廃工場のようなところだろう。まずそこから機載のINSだけを頼りにして市心まで飛ばす。2人の工作員がクレムリン近くの高層ホテルにあらかじめ待機していて、1人が窓から市販品の高性能カメラの望遠ズームで、機体の接近を確認する。そこから、もう1人がリモコン操縦を開始すれば、なんとかなかっただろう。「上院」建物のドームがライトアップされているのが、夜間リモコンを容易にしたかと想像される。狙いは最初から、国旗の爆破だっただろう。

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 ストラテジーペイジの2023-5-4記事。
   米国からの、最新の対宇援助品に「M21」対戦車地雷が含まれている。数千発のオーダーだ。

 この地雷は径229ミリの金属製の円盤型。全重8kg弱。長さ61センチの垂直のロッドが1本立っていて、これは1.7kgの力で横に押されれば倒れる。T-72戦車の腹の下のグラウンドクリアランスは49センチ、T-14は測った奴はいないが23センチという話もあって、いずれにせよ、確実に余裕で倒れる。ロッドが、垂直から20度、傾くと、本体の信管を起爆させる。

 まず黒色火薬により覆土と本体の上蓋が吹き飛び、直後に、4.9kgのコムポジットH炸薬が爆発する。
 金属の雲(自己鍛造弾)が猛速度で垂直に飛び出し、真上にある76ミリ厚の鋼鈑も貫徹される仕組み。

 ロッドを倒さずとも、真上から132kgの重さで踏まれると、やはり起爆する。

 敵軍の戦車やトラックをとりあえず走れなくしてしまうのが狙いだ。しかしソ連戦車には設計思想の欠陥があり、こいつが真下で爆発すると、内部弾薬が衝撃波で殉爆する危険が高い。

 ※気球を空中の「支点」にして、昇騰の運動エネルギーに加えてシーソー・カタパルトを使えば、現代版の「Trebuchet」(平衡錘式投石器)の空中版ができるのではないか。それで、大量に米国内にストックがある「航空用重力爆弾」を抛り投げられるようになるのではかろうか。攻勢をかける正面ではこんなものは役に立たないが、1200kmもある対峙線の、主攻方面と無関係な方面で、多彩で執拗な陽攻をし続けることは重要である。

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 Defense Express の2023-5-4記事「Iran Keeps “Supplying” Ukraine With Weaponry, Now These Are Shells Manufactured In 2023」。
    イランが2023年に製造した122ミリ野砲弾を、ウクライナ兵が証拠として押さえた。
 しかも「ファースト・バッチ」である。


クリミアと露本土をつなぐケルチ橋の近くの石油貯蔵基地で爆発火災発生。水曜日午前。

 Mark Galeotti 記者による2023-5-3記事「What’s the truth about the Kremlin drone attack?」。
   ロシアが公表したビデオ。クレムリン施設群の中でも比較的に大きい「上院」の建物のドーム頂上に立つ旗掲揚竿の中ほどを低速ドローン(不鮮明だが動き方からして固定翼らしい)が緩降下で掠めた瞬間に自爆したように見える。

 この飛来物を対象追随式のカメラで撮影した映像は未だ出ていない。
 ドローンは2機飛来したというが、もう1機の映像は提出されていない。

 この無人機はアマチュアが操縦していたとは思われない。というのはクレムリンの周辺は、衛星航法信号が正常に使えないような電波環境にされているからだ。飛来物を探知するセンサーも万全で、クレムリン域内には「対ドローン」の専用の妨害電波銃を抱えた衛兵たちも常時、警戒しているのである。

 プーチンはこの「爆発」の起きた時、ノヴォ・オゴリョヴォ町に居た。そんなことはウクライナの情報機関が知らないはずがない。
 プーチンは近年、クレムリンには滅多に近寄らず、居るのは影武者であるのは庶民も知る話である。

 ウクライナ国境からクレムリンまでは450kmある。そこを低速機が飛行するあいだ、警報が先に至り、要人は誰もオフィスにはいないであろう。そもそも人が仕事をしていない時刻だ。

 ファルスフラッグかどうかは、これから分かる。1987年にドイツ人青年のマティアス・ラストが、冗談で世間をバズらせようと思い、軽飛行機を操縦してソ連国境を易々と越え、クレムリンのすぐ隣にあるボリショイモスコヴォレツキー橋に着陸した。飛行中、終始一貫、何のインターセプトも受けなかった。この件で、国防大臣ならびに将官多数が、馘にされている。同様の措置が取られるかどうかで、見当がつくだろう。

 ショイグが革職されるとすれば、それはショイグにとっては、むしろ安堵の休息となるであろう。

 ※IAEAによるとザポロッジア原発第4号炉のタービン建屋内には露軍が爆薬を仕掛け了えている。いつでも爆破できるという。その爆破命令の口実が欲しいのではないか? ザポロジア一帯が放射能で汚染されれば、宇軍の反転攻勢も不可能になり、クリミア半島は奪回されずに済むのである。

 ※5月3日の夜にはブリヤンスク空軍基地も、ウクライナ軍によるドローン空襲を受けた。特攻無人機×5機が襲来したという。

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 2023-5-3記事「German amphibious armored personnel carriers may be on their way to Ukraine」。
   ドイツは、大量に保有している古なじみの6×6APC「TPz フクス」をウクライナへ近々、搬入する。この装甲車は10km/時で浮航ができ、すぐに渡河作戦に投入可能だ。

 全重は17.6トン~23.5トン。装甲によって変わる。
 固有乗員2名+お客10名を乗せられる。固有装備はMG3×3梃だ。
 エンジンは320馬力。

 公式発表は今のところなし。したがって数量も不明。

 しかし、ウクライナ国境から17kmしか離れていないルーマニア領内に、ラインメタル社が整備工場を開設し、そこでは、マルダーやチャレンジャーやレオ2の他にフクスもメンテすると発表されているので、そこから推定して、フクスが供給されるのはまちがいなさそう。ルーマニア軍はフクスを持っていないし持つ予定もない。

 ドイツ国防省は2022時点ではフクスの対宇供与に消極的だった。が、今年になって考えを変えたと見られる。

 フクスは1979年からある。バリエーションは多数。APCとしての最新バージョンは2022年の「A8」型だ。

 ※大攻勢をかける流れの中でなら、フクスの装甲の非力さは目だった欠点にはならないと判断したのだろう。停滞した戦場にフクスを出されると、ATGMの好餌になり、ブランドイメージの上で面白くない。

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 UST の2023-5-2記事「New Military-Grade sUAS Launched for Nighttime Operations」。
    レッドキャットホールディングズ社が、歩兵が背中に担いで運搬できるサイズのマルチコプターとしては最上精度の暗視用FLIRを搭載した偵察ドローン「Teal 2」を仕上げた。

 米国連邦税関は、密輸の取り締まり用としてさっそく、54セットを注文している。

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 Joseph Trevithick 記者による2023-5-2記事「Classified AIM-260 Air-To-Air Missiles To Arm Future Air Force Drones」。
    米空軍が考えている未来の空戦。無人機から、AMRAAMのような有力なAAMを発射させる。このためのAAMの開発がすでにスタートしている。その名も「AIM-260」。別名「JATM」(統合先進戦術ミサイル)。

 JATMは、ラムジェットと、デュアル・パルス・ロケットによって推進され、射程が長い。

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 Morten Soendergaard Larsen 記者による2023-5-2記事「Russian ‘Ghost Ships’ Are Turning the Seabed Into a Future Battlefield」。
   民間船に偽装し、且つ、AISを切った、ロシアの「ゴーストシップ」が、有事のさいには、バルト海と北海の海底ケーブル、および海底パイプラインを、切断&爆破しまくるだろう。

 だから北海沿岸諸国は、「洋上風力発電」に依存しすぎていると、有事にあっけなくインフラ崩壊することになるぞ。

 特に脆弱なのが、デンマークだろう。

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 Ines Kagubare 記者による2023-5-2記事「China updates military conscription rules with eye on space, cyberwarfare」。
    英紙『ガーディアン』によると中共はこの月曜日にあたらしい法令を成立させた。
 げんざいは市井人であるところの予備役兵を、一朝にして急速動員するのが目的だ。

 殊に、サイバー系や宇宙系の技能を有している「元兵隊」は、まっさきに赤紙招集される。

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 ストラテジーペイジの2023-5-3記事。
   中共の武警用に新兵器が登場した。「CS/LW21」という。隊員が手持ちで使える「レールガン」だという。重さは3kg。

 ほとんど音を立てずに、コイン形の「弾丸」を数百発、電動で連射することができる。威力は、厚さ3ミリの板を貫通するレベル。

 これなら民衆に向けてためらいなく乱射できるので、暴動も鎮圧しやすい。

 この銭形弾丸は、最大で50m飛ぶ。
 もっと殺傷性を高めたくば、円盤状ではない、流線型の弾丸を飛ばすこともできる。その場合、レンジも延びるという。

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 Seth Robson 記者による2023-5-3記事「Yokota Air Base is a logical spot for NATO mission in Japan, security expert says」。
    NATOの連絡将校が、米軍横田基地内に来年から常駐するのではないかという。


ウクライナの国内で量産されているFPV操縦による自爆クォッドコプターに装着できる弾薬重量は800グラムらしい。筒径は63ミリ。

 それは対歩兵用で、スチールボールが飛散するタイプだという。

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 Vijainder K Thakur 記者による2023-5-2記事「Russian Decoys Trick Ukrainian Air Defense While Kh-101 Stealth Missiles Deliver A Painful Blow」。
    ※記者は元インド空軍パイロットで、ジャギュアに乗っていた。この人が書いていることは全部読む価値がある。

 ウクライナのパウログラド市(ドニプロペトロウスク州)には、ミサイル燃料や弾頭炸薬の生産工場があったという。そこが5-1に多数の空対地巡航ミサイルで空襲された。
 大きなキノコ雲が発生したのは、ケミカル材料に引火したからだという。

 通例、軍用ロケット燃料や爆薬材料は、工場の地下に格納して、空襲されても簡単には火がつかないようにしているものだ。しかし原材料や半製品の搬入/搬出時には、露天に危険物が山積みされる時節がある。その時節をスパイが通報したのだろう。それでピンポイントの集中空襲が奏功した。

 報道を綜合すると、このたびの空襲には、「ツポレフ95」×9機と、「ツポレフ160」×2機が発進。ところが驚くべきことに、空から発射された巡航ミサイルは、たったの18発であったという。

 宇軍の把握しているところでは、最初の空対地ミサイルがリリースされたのは、深夜の2時半だったという。

 そして宇軍は、飛来した「Kh-101」と「Kh-555」、合計18基のうち、15基を途中で撃墜したと主張している。

 「Kh-101」のレンジは4500kmであると報じられている。全重2.4トン、弾頭重量400kg。比較的に新しい巡航ミサイルなので、形状はステルス配慮。

 「Kh-555」は、古い巡航ミサイルで、形状にステルス配慮がなく、自己誘導精度も劣るという。爆発威力は同等。

 宇軍は主張している。3基の「Kh-101」を迎撃しそこない、それが着弾したと。

 ところで、1機の「ツポレフ95」重爆は、最大で14発もの「Kh-101」を吊架することができるのである(6発は胴体弾倉内に。8発は主翼下に)。

 また1機の「ツポレフ160」は、12基の「Kh-101」を弾倉内に格納できる。
 また今回、ロシア国防省は、数発の巡航ミサイルは海から発射したと公報している。

 これは何を意味するか?

 おそらく、大量に離陸した重爆撃機のほとんどは「囮」だったのだ。
 巡航ミサイルを積まずに、宇軍の防空機能を麻痺させるために陽動したのだろう。あるいは、専用のデコイ飛翔体を、放出したかもしれない。

 露軍は「Kh-55」という、専門の囮ミサイルをもっている。これを重爆から放って先行させると、大きなレーダー反射で目を惹き、敵のSAMをそっちに吸引することができる。その直後に真の重爆が安全に前進し、ステルス形状の巡航ミサイルを放てば、敵の防空システムをかいくぐれるだろう。

 ウクライナ領土内で「Kh-55」の残骸は回収されている。SNSにその写真がUpされている。露軍が実用していることは確かだ。

 「Kh-55」はソ連時代に完成された。レンジは2500kmと、戦略級。
 もともと200キロトンの核弾頭付きの空対地ミサイルなのだが、いまではその核弾頭をはずして、ただのデコイとして飛ばしている。宇軍情報によると、ロシアはこの「弾頭無しKh-55」が囮機として重宝であると評価して、生産を再開させたという。

 宇軍の防空システムを麻痺させるためには、この「Kh-55」を数発、放つだけでいいという。飛行は、ウェイポイントを何箇所か入力した、プリプログラムによる。したがって、SAM陣地から微妙に遠いところを縫うように飛びまわって宇軍を翻弄するわけである。

 「こいつはデコイではないか」と疑っても、宇軍のSAMはこれを無視するわけにはいかない。というのも、「Kh-55」には、通常爆薬を410kgも仕込むことが可能だからだ。

 露軍の空襲目標は、すでに、ウクライナのインフラ(変電所など)から、宇軍の前線補給デポへ、シフトしているようである。これは「反転攻勢」が近づいていることと関係がある。宇軍が攻勢に出ようとしている方面には、燃弾などの物資が大量に推進されて貯蔵される。そこを焼き払おうとしているのだ。4月28日の巡航ミサイル空襲は、まさにそれだったという。

 5月1日の空襲も、最前線のロケット砲兵への弾薬補給の根本を断つという決意でなされたのだろう。

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 David Axe 記者による2023-5-1記事「Ukraine Is Really Muddy Right Now. It’s A Risky Time For A Counteroffensive」。
    ウクライナ語で「ベズドリッズィア」とは「道路無し」の意味で、春と秋の大泥濘期のことを指す。

 秋の泥濘と春の泥濘では、春の方が酷いという。しかも今年は長引いていて、4月末までどうにもならなかった。

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 Aleksandr Avilov 記者による2023-5-1記事「Calls in State Duma to Increase Length of Russian Military Service」。
    ロシア議会の国防副委員長 アレクセイ・ズラヴレフが、一般徴兵年季の延長を提案した。

 ズラヴレフ自身は過去にいちども軍役に就いたことがないくせに、いろいろと高邁な演説をしている。給与や諸手当て目当てに軍隊に入るような精神ではダメだ、とか。

 では何年にするのかについては、ニコライ・ヴォルコフが代弁している。現行の1年では短かすぎるので、陸軍は2年、海軍は3年にするべきだという。

 この件について国防大臣ショイグはまったく沈黙している。世間の反発をじぶんにはあつめたくないので。

 以前にはロシア軍の徴兵は2年現役だった。それが2008年から、1年現役に短縮されているのである。

 ヴォルコフによる、追加の提案。志願兵には入営と同時に、寝室が2部屋あるアパートを褒美として与えるべし。また任期満了除隊時に、彼が望む大学へ進学するのに必要な授業料の充当小切手を与えるべし。

 ※プー之介の代弁者どもは、《現役服役期間を長くすることでロシア軍部隊の質が上がる》といった高説を正面に掲げるわけだが、もちろんそれはとってつけの言い訳で、もはや誰もそんな未来があるとは期待していない。単純に、現役年を2倍、3倍と長くすることで、政府が兵隊の頭数をかき集める手間が、劇的に省けるのである。まさに北朝鮮が辿ってきた道だ。

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 Andrei Lyubimov 記者による2023-5-1記事「Twitter Restricts Dmitry Medvedev’s Account Over Offensive Poland Tweet」。
    ロシア国家安全保障委員会のナンバー2であるメドヴェジェフが「ポーランドは存在するべきではない」と暴言をSNSに書き込んでいるので、ツイッターは彼の英語アカウントを凍結した。

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 Ellie Cook 記者による2023-4-30記事「Russia Reported to Be Punishing Soldiers in Medieval Zindans」。
   19世紀の中央アジアで、地面に穴をオープンカットし、天蓋に鉄格子を伏せ、中に人を入れて懲らしめる施設をZindansと呼んだ。

 このごろ露軍は、飲酒酩酊の悪癖ある兵隊たちを、まったく同じ構造の地下牢にとじこめることで、反省を促しているという。トラ箱、兼、懲治房だ。

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 Thomas Kika 記者による2023-4-30記事「Russian MLRS Weapons Factory Bursts Into Flames: Reports」。
   モスクワから1500km東にあるペルム市に、「PJSC モトヴィリカ」という工場があり、そこでは露軍の多連装ロケット弾を生産しているのだが、そこが火災に罹った。工場内の変電施設が火元で、出火は午後8時頃という。

 10平米に火が燃え拡がったところで、消防隊が到着。
 火は消し止められたという。4-29のSNS書き込みによれば。

 実はこの工場、露軍のMLRSを一手に製造していたらしい。
 また2018年には、倒産5分前まで行ったこともある。

 ルーモアが拡がっている。焼失被害はもっと大きいのではないか? また、もしこれがウクライナ特殊工作員の仕事だとしたら、狙いとして秀逸である。と同時に、内部のサボタージュという可能性にも一定の信憑性がある。中央から押し付けられたノルマに応ずることができぬ責任を免れようとして資材倉庫に放火すれぱそれは火薬庫爆発に準ずる大災厄になる。他方、古い変電施設からの発火偽装なら、騒ぎはコントロールしやすく、しかも、納期遅れの言い訳もできるであろう。

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 The Maritime Executive の2023-5-2記事「Fire on “Shadow” Tanker off Malaysia is Extinguished, Search Continues」。
   アフラマックス社の原油タンカー『パブロ』がマレーシア沖で大火災を起こしていたのだが、鎮火した。
 船長はロシア人。

 火災は月曜日の昼過ぎに発生したという。
 煙が出てきて、やがて爆発。船のアンテナがぜんぶ吹き飛んだので、船長はトランシーバーで緊急通報した。脱出ボートもなくなってしまった。

 船員たちは、ライフジャケットだけで海に飛び込んだ。
 25人の乗員は通りがかりの船に救助されたが、3名(インド国籍の甲板員×2と、ウクライナ国籍の士官)は行方知れず。船内の気密区画に取り残されている可能性あり。

 この船は「シャドウ船隊」に属する。荷主が誰なのか不明。海上保険はまずかかっていない。

 イランの核武装を監視するグループによると、この『パブロ』号は、2019年からイランの石油密輸船として暗躍しているという。
 2022年にはイラン原油を積み込み、2023-1にシナの港へ届けた。

 今回は、シンガポール港へ向かっていたという。そして別な貨物船に、積荷の原油を分ける予定だったという。それが不法な「瀬取り」行為なのかどうかは、船長は語らず。

 ※上甲板がガス爆発でまるまる吹き飛び、船倉の底まで、上から覗ける状態になってしまっている。これでも沈没しないのだから現代タンカーの船殻構造(三重底?)はすごい。誰も言わないけど、これはシールズによる報復作戦でしょ? あるいは北鮮と、原油と砲弾のバーターでもする予定だったのかな?

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 ストラテジーペイジの2023-5-2記事。
    ギリシャは買った。

 イスラエル製の「オービター3」無人偵察機が、高価値目標を発見して、そこにレーザー照射する。そこに大射程対戦車ミサイルである「スパイクNLOS」を指向させる。

 この無人機とミサイルを、セットで4億ドル分。

 「オービター3」の通信可能距離は50kmである。「スパイクNLOS」の最大レンジも50kmである。

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 Defense Express の2023-5-2記事「Disorientation and Malfunction: Challenges With $22 Billion Program’s High-Tech Goggles」。
    兵隊にハイテク・ゴーグルを装着させて、そこに戦場情報をぜんぶ映示させれば未来っぽくてカッケー、と安直に発想された「IVAS」。試作はできているのだが、不評。
 めまいがする。頭痛がする。方向感覚が狂う。目がおかしくなる。肩凝りも酷い。視野も狭いじゃないか。

 ゴーグル1個で6万ドルするのだが……。

 開発にはマイクロソフト社が全面協力している。「メタバース」の仮想現実の仕上がりを見れば、楽観はできないと思える。

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 Boyko Nikolov 記者による2023-5-1記事「Legal ‘war’ begins in Germany over ownership of Leopard 2 tanks」。
   レオ2の車体は、クラウスマッファイウェグマン(KMW)が製造している。砲塔と主砲はラインメタル社である。

 KMWは次世代のMBT開発でフランス企業と組もうとしている。それはラインメタルが開発中の次期MBTと、商売の上で激突する話である。

 ここから、揉め事が起きている。


空襲警報が、攻撃起点の地元からSNS経由でリアルタイムに届く時代がやってきた。

 たったいま「ツポレフ95M」重爆撃機がロシア北西部のオレニャ空軍基地から一斉離陸して南下して行ったぞ――という目撃情報が、たちどころにSNSに掲載されて、ウクライナ住民に「巡航ミサイル注意報」(地下室への退避勧告)として伝達された模様である。

 でもこれ、AWACS情報がソースであることを韜晦するための、プロクシー投稿かもしれないね。

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 AFPの2023-5-1記事「Russian Army Replaces Top Logistics Commander」。
    露軍は日曜日に、兵站系幕僚の最上位者だった、ミハイル・ミジンツェフ上級大将を左遷した。
 この将軍、2022のマリウポリ市攻囲中の非人道犯罪に責任があるとも指弾されている人物である。

 後任は、アレクセイ・クヅメンコフだと発表された。

 プー之介が昨年9月に追加動員を発令したと同時にミジンツェフが国防副大臣に起用されていた。ロシアでは、国防副大臣が、全露軍の兵站を統監するのである。

 更迭の噂は先週からあった。

 ※真の責任者は、プリゴジンが非難する如く、ショイグなのだが、ショイグは責任を転嫁できる部下には事欠きはしない。

 ※Lizzie Collingham 氏著『The Taste of War』(2012ペンギン版)にこんな記述がある。――独ソ戦初盤で動員された16歳のウクライナ兵。軍靴がなく、ボロ切れを巻いて代用する必要があった(p.320)。露軍内にはなぜかウォッカとタバコだけは常にあった。そして露軍の兵站将校は1942当時から、物資の横流しをしていた(p.321)。がんらい、鉄道と馬車しかない輸送力に、アメリカが莫大なトラックを援助してくれたので、ソ連の車両工業は、戦車の製造だけに集中できたのである(p.336)。アメリカからの食糧援助がなかったら、うたがいもなく、はるかに多数のソ連市民が餓死していた。米国から送った対ソの援助品のうち、食糧は、重量比で14%もあった。戦後、アメリカに亡命した露人旋盤工の証言。ソ連兵は末端までよく承知していましたよ。靴から軍服から罐詰から何から何まで、米国の物資が援助されたおかげで勝つことができたのだと。それなしでは勝利は無かったと。ソ連兵よりも悪い栄養で戦争したのは日本兵だけである――。この本は再読する価値が高い。今次ウクライナ戦争に関して、いちじるしく示唆的なのだ。ヒトラーには、公刊されなかった《第二の書》があった。ドイツ語スクールのプー之介はそれを読んだのかと疑われる。

 次。
 2023-5-1記事「A freight train derailed in Russia」。
   ブリヤンスクで鉄道のレールが爆破され、石油タンク列車が脱線し、火災が発生した。月曜朝の事件。

 この貨物列車は60両編成で、石油の他に、建設資材を輸送していた。
 「ラッシュカ~ウネチャ」線の、136kmマーク地点だという。

 モスクワ時刻で、10時17分だった。すなわち、0717GMT。

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 2023-5-1記事「Power lines pole blown up in the Leningrad region of the Russian Federation」。
    サンクトペテルスブルグ市が属するレニングラード軍管区の森林地帯で、高圧送電鉄塔の基部が爆破され、1基が倒壊。
 もう1基にも仕掛けられていたが、そちらの爆発物は不発状態で発見され、工兵隊が雷管を除去した。

 送電路は自動的に迂回路に切り替わったと当局は発表。

 しかし、あるSNS投稿によれば、深夜の1時に、レニングラード発電所から給電されているすべての世帯で停電が起きたという。

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 2023-5-1記事「How a Russian drone hit the Gepard, and why they hid the true result (Video)」。
    戦争のプロパガンダは、それに接した者に嘘を信じさせる必要はない。それに接した者が、真実と嘘の区別はどうもできそうもないと印象してくれれば、プロパガンダとして大成功なのだ。

 ウクライナ戦線で、捜索レーダーを回してない状態の「ゲパルト」がランセットから奇襲されれたとする画像。まず、スチル写真が公表された。

 ここが憶測を呼んでいる。露軍は無人機を攻撃任務に繰り出すときは同時に上空から別な偵察ドローンが動画撮影している。なぜそのムービーを最初からUpしないのか。じつはゲパルトのレーダーにほとんど損傷を与えていないという自認があるからじゃないか。

 「ウクライナ人なんかに高額な兵器を与えても、ぜんぶ無駄にされるだけですよ」と西側人をして印象させることが、ロシア側プロパガンダの大目的である。

 ※国連総会で初めて中共代表が、ロシアを「侵略国家」とする決議に賛成票を投じた。アルメニアとカザフスタンも。

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 Boyko Nikolov 記者による2023-4-26記事「If Russia pollutes the runways, the US F-16 becomes unusable」。
    この戦争中にF-16をウクライナ軍に供与するなんてありえない。その理由。
 意外なことに、F-16はミグ29やスホイ27よりも長い離陸滑走距離を必要とする。ウクライナの既存の戦闘機用の航空基地の滑走路はF-16用には短すぎる。もしF-16を受け入れるなら、滑走路の延長工事が必要だ。それはロシアにはすぐにバレる。

 〔既存の輸送機用の長い滑走路がある飛行場に〕F-16を受け入れる場合でも、それ用の新しい格納庫、メンテナンス建物や倉庫が不可欠である。それらの増築工事も、ロシアが偵知できないわけがない。

 さらに肝腎な事実。胴体下の低い位置に、エアインテイクが大口を開けているF-16の運用には、とても「クリーン」な滑走路が、大前提として求められるのだ。旧ソ連系の軍用機が胴横に吸気口を配して、滑走路上のデブリを吸い込まないようにしている配意とは、想定環境がハナから違うのである。F-16の設計者は、戦闘機を最前線の荒れた航空基地で活動させる必要などまるで想像もしていなかったのである。
 この戦争が続く限り、ウクライナ領内に米軍式のクリーンな滑走路はあり得ない。そこではF-16のエンジンは長持ちしない。

 英国シンクタンクのジャスティン・ブロンクは説く。ウクライナにふさわしいのは「グリペン」であって、「F-16」ではないだろう、と。

 グリペンは、道路や農業飛行場からも離発着できるというのみならず、整備のための「固定建物」を必要としないという配意が、すぐれているのである。車両が整備工場であり、部品倉庫だ。その移動整備班がまるごと、戦闘機の分散先について行く。

 ※雑報によると、米空軍は宇軍の「スホイ25」用に「ズーニ」空対地ロケット弾を供給している模様。5インチ径で、弾頭は4.3kgのコムポジットB爆薬入りのHE仕様。ソ連製の「S-13」より射程が長くなるという。主翼下ポッドが黒塗りで検閲された写真がSNSに出ている。

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 Zoe Sottile 記者による2023-4-30記事「What is a vampire straw? A closer look at the weapon confiscated from a Boston traveler’s luggage」。
    放血鍼という見た目の凶悪な暗器がボストンのローガン空港で押収された。
 それを手荷物に入れていた男は、逮捕された。

 この兇器は、チタニウム製の細い管。その一端は、注射針のようにするどく斜めにカットされているのである。
 男は「Szabo」という会社から85ドルで買ったそうだ。この兇器のメーカーは米国に数社ある由。

 もし誰かにこれをみとがめられたときには「スムージーを飲むためのマイ・ストローなんですよ」という言い訳が成り立つ長さになっている。しかし実際の用途は、護身用のダガーだ。自動車のタイヤに穴を開けてパンクさせるのにも使える。

 先を尖らせた金属ストローを携帯することが違法となるかどうかは、その地方の刀剣類取締法令に、かかっている。

 マサチューセッツ州法では、これは錐状の刺突武器の類とみなされ、もし前科や余罪があれば、懲役5年に直面する。

 連邦で銃砲刀剣を取り締まる部局であるTSAは、機内持ち込み手荷物の中に、鋭利な端面を有する道具を入れることを概括的に禁じている。

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 『UST』の2023-4-28記事「Drone Landmine Detection & Mapping Technology Delivered to Ukraine」。
    マルチコプターを使って、どこに埋まっているか知れない地雷を効率的に探知し、《地雷マップ》まで作成してくれるハードとソフト。
 ウクライナの「ドラガンフライ」社が、同国政府から資金を得て、開発中である。

 こういうシステムを欲しているのは、ウクライナ内務省。

 ※森林用は無理でも、せめて、畑用には、地雷の気配を警報してくれるAIができることが待望されているだろう。しかし、その実現までの道のりは遼遠だろうと思う。炸裂した砲弾の破片や、吹き飛んだ装備品の破片が、そこらじゅうに無数に散らばっているからだ。となると現実的には、かつて南アフリカの白人農園主たちが、黒人ゲリラの仕掛けた地雷から身を守るために、農耕用トラクターをV形断面ハルの「耐地雷仕様」に改造していた、あの古い知恵を引っ張ってくる必要があるだろう。ところがおそろしいことに、インターネット空間には、アパルトヘイト時代の南阿の風物に関する画像資料は、ほぼ、ひとつも存在しないのである。これは、政治的理由で、掲載が排除されたからだとしか思えない。AIが人を騙すのではない。無知をよしとする集団が、他者をも仲間に巻き込もうと、昼夜尽力している。ロシアや中共と、どこが違うんだ、それは?

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 Michael Schwirtz 記者による2023-5-1記事「Ukraine Wants to Push Forward. Not So Fast, Says Its Black Soupy Mud」。
    最前線を2週間取材したNYT特派員のリポート。
 黒土が泥濘化すると、西側のAFVでも立ち往生する。ドイツから貰った新品の155ミリSPである「Panzerhaubitze 2000」も、スタックして牽引脱出が必要だった。

 今年の春雨は例年より多雨だそうである。おかげで地面が乾くのが遅れている。

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 Defense Express の2023-5-1記事「Nice Replacement for Handmade Launchers: Ukrainian Forces Receive Croatian Trailer-MLRS」。
   ウクライナの国境警備隊(郷土防衛軍)は、クロアチア製の128ミリ多連装ロケット砲「RAK-SA-12」を装備している。これは被牽引式で、12門のチューブが2輪のトレーラー上に載っている。
 チューブの長さは1.2mと短く、したがってとてもコンパクトである。

 ロケット弾のレンジは最新の弾薬を使えば最大8540mなので、まず申し分がない。

 12発の再装填は、人力によって、1分20秒で可能だという。
 装填済みのこのロケット砲を放列布置させるには、被牽引姿勢から、1分30秒しかかからない。
 また陣地の撤収には、1分しか要しない。

 牽引するトラックには、砲側員が5名。プラス、指揮官×1名。

 ※牽引式にすることで接地圧を分散できるので、砲車を多連装にもしやすい。宇軍がてんでバラバラに試みているように、ピックアップトラックにチューブを背負わせると、4連装くらいになってしまう。しかも、前射で生じた車体動揺が次射に悪影響を与えぬよう、荷台後端にアウトリガーまで追加をしなければならない。まるで改造効率が悪い。敵のロイタリングミュニションが不意に次々と突っ込んで来る、これからの戦場では、地上車両の「トレイン化」は、とても合理的である。牽引車と被牽引車のコンビにしておけば、ロイタリングミュニションはその双方を同時に爆砕することはできないので、リスク分散が図られる。しかも泥道にも強くなる。私はさらに提案する。トレーラーを引っ張る役目の車両も、高性能のトラックである必要はない。日本の軽トラックを、エンジンだけ1000cc.クラスに換え、車体のまんなかに「牽引レール」を縦貫させ、その前後端に牽引用リングをとりつける。こうすることで、2台の軽トラがトウイングワイヤで結ばれて重連となり、さらにその後方に、「砲車」を引っ張ることができるであろう。この3両を同時に爆砕できるロイタリングミュニションは、あり得ないのである。



The Taste of War: World War Two and the Battle for Food


戦争と飢餓


ウクライナではいま、20の《私設学校》にて、7000人のUAV操縦士を速成教育中である。これがさらに1万人にまで拡大されるという。

 モスクワタイムズの2023-4-28記事「Moscow Baker Fined Over Anti-War Cakes」。
    2022-4にモスクワ市内のベーカリーのアナスタシアさんが、反戦メッセージをケーキにデコレートしてその写真をインスタグラムにUpした。

 このたび、その行為は、ロシア軍の活動をけなす《犯罪》であるとして、罰金刑が言い渡された。

 この法律は2022年に創られた。

 警察がタレコミによってウェブサイトを確認してアナスタシアさんを逮捕したのが木曜日である。
 裁判所が判決を下したのが金曜日である。
 罰金3万5000ルーブルは、米ドルにして440ドルくらい。

 アナスタシアさんはもういちどこのようなタレコミを受ければ、こんどは懲役刑に直面するであろう。
 今回は警告である。

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 Lidia Kelly 記者による2023-4-30記事「Ukraine says it controls key supply route into Bakhmut」。
   ウクライナ軍広報の土曜日発表。
 宇軍はひきつづきバフムトに至る主補給道路を確保し続けている、と。
 すなわち、西隣の「Chasiv Yar」町からつながる17kmの道。

 もしバフムト市が陥落するようなことがあれば、その次の露軍の攻略目標は、この「Chasiv Yar」となる。

 プリゴジンは土曜日に公表した。バフムトで150m弱前進するのに94名のワグネル傭兵が戦死した。これは、こっちに弾薬が足りないせいである。弾薬さえあったら、犠牲は五分の一だった、と。

 それとは別に、ロシアの軍事ブロガーのセミョン・ペゴフのインタビューにプリゴジンが答えた話も土曜日に公開されている。
 それによると、バフムトのワグネルには、あと数日分の弾薬しかなく、その補給が無いなら、退却は必至だという。
 このインタビューの日付は不明であるが、プリゴジンは4-28までに弾薬を寄越せとショイグには伝えたそうだ。

 プリゴジンはこうも語った。「我々は、すべてはうまくいっているかのように大衆をたぶらかす嘘話をもう止めるべきだ。正直に言わねばならない。ロシアは今、破滅の淵に立たされているのである」。

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 2023-4-30記事「Ukraine is developing a Trembita missile」。
    ウクライナ人の民間有志がPARSという兵器設計室を立ち上げているのだが、そこでは今、「トレムビタ」という軽便なミサイルが完成間近である。

 なんと「パルスジェット」エンジンの巡航ミサイルだ。「V-1」号を、小さなサイズで復活させたようなコンセプト。
 いまや民間人がガレージで「V-1」号を作れてしまうのだ。

 レンジは140kmになるという。低速であるうえ、エンジンからの赤外線輻射がかなり目立つが、敵のはるかに高額なSAMをひきつけて消耗させるであろう。

 PARSの試算では、ひとつの目標に向けて20発、このトレムビタを放てば、露軍のSAMはすぐ尽きてしまって、最後には妨害されずに着弾するようになるという。

 トレムビタの総重量は100kg。弾頭重量20kg。巡航速度は400km/時。巡航高度は最大で2000m、最低で30m。

 パルスジェットエンジンには「可動部品」がないので、安価に製造でき、メンテナンスは不要。飛翔中に機械故障で墜落することがない。燃料はガソリンである。

 射出は、カタパルトの上から圧搾空気による。

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 Defense Express の20234-30記事「Ukraine to Get New-Generation Weapons From Three Deals Signed With Turkish Baykar」。
    ウクライナ政府の戦略工業省は、トルコのバイカルマキナ社とのあいだで、あらたに3アイテムの導入契約を締結したという。しかし詳細は秘密だ。

 トルコの無人機には、すでにウクライナ製のエンジンが普通に搭載されている。「AI-450」「MS-500」は、双発プロペラ機の「アキンジー」に選択的に取り付けられる。「AI-322F」は、ジェット無人機の「キジレルマ」用に選ばれている。

 全重35kmの「ケマンケス」ミニ巡航ミサイルは、今年から製造が始まる。50kmまではリモコン可能。攻撃レンジは200kmになる。弾頭重量は6kgだが、このくらいで、敵レーダーの破壊用には十分なのだ。

 「キジレルマ」の製造は2024年からスタート予定。

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 Defense Express 記者による2023-4-29記事「Shahed-136 Has a Stolen Engine Technology, As If That Wasn’t Enough, russians Fill It With the Wrong Fuel」。
    すくなくも1機の「シャヘド136」が、ほぼ無傷の状態でウクライナ軍の手におちている。機械故障によって途中で墜落した際に、衝突のインパクトが弱かったので、弾頭が起爆しなかったのだ。

 英国の「CAR(紛争兵器調査)」グループがこの機体の解析を手伝ったところ、いろいろなことが分かってきた。

 まず、墜落の原因はエンジンのせいではなく、ユーザーのロシア軍が、グレードの低い燃料を注入したせいであった。

 エンジンは「MD-550」で、これはイランのマド市で製造している。

 2019年にサウジアラビアが特攻無人機で攻撃されているが、その無人機にも「MD-550」が使われていた。

 イランは2006年に、1基のドイツ製の「Limbach Flugmotoren L-550」というエンジンを得た。それを違法にフルコピーした製品が「MD-550」であることに間違いない。

 「L-550」は、4気筒の2サイクルで、水平対向配置になっている。燃料はガソリン・ベースの航空混合油。それをスパーク・プラグで点火する。

 ※まさかと思うが露軍は潤滑油を混ぜずに4サイクル機関だと思ってガソリンだけ入れたのか? あるいは混ぜ方をテキトーにしすぎたか。

 このエンジンは、超軽量リモコン飛行機用として1980年代から定評があるが、同時に、そのメンテナンスには細心の注意が必要だ。

 「L-550」の市価は、1基が1万2000米ドルから1万7000米ドルといったところである。
 イランがコピーしたところでそれより大幅に安くなるものではない。手抜きはできないからだ。

 イランも国際的な経済制裁を食らっている。エンジン原材料の調達にも余計なコストがかかっていないはずがない。

 このことから、「シャヘド136」が1機2万ドル以下で売買されるという以前の話は、まったく過小見積もりであったと断言できる。エンジンだけで2万ドル近くしているのだ。

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 Jeff Poor 記者による2023-4-28記事「Lawmakers Tout Effort to Prevent A.I. from Launching Nuclear Weapon」。
    共和党の下院議員ケン・バック(コロラド州)と、民主党の下院議員テッド・リュー(加州)は呼びかけた。AIが核ミサイルを発射させるような未来を防ぐため超党派で努力しようじゃないか、と。

 スタンフォード大学のアンケートによれば、AI専門家の36%は、AI自動システムが核戦争の引金になり得ると心配している。

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 「Enter Kornet」という記事。
    「9M133 コルネット」は、露軍歩兵部隊の主力対戦車ミサイルである。レンジは5500mまで。秒速250mで飛ぶので、最大距離まで22秒で到達する。誘導は、射手がレーザーで照射した、その反射源にホーミングして行く、セミアクティヴ誘導。無線も赤外線も使わないから、妨害され難い。

 2007年にはシリア領内で、トルコ軍装備の「レオパルト2」が、ISの発射したコルネットにやられている。

 コルネットは茶色の排気煙の尾を引きながら飛ぶので、目立つ。1970年代からイスラエルの戦車兵が教えられている「サガー・ワッチ」が有効である。周辺で排気煙が立つのを見逃すなということだ。

 だいたい、煙を発見してから11秒の余裕があると考えていい。11秒でコルネットは2750m飛ぶ。シリアやシナイ半島あたりでは、それより近いところにATGM班が隠れていることはあまり無い。


アイスランドが久々に米SSNの補給寄港を認めた。ロサンゼルス級の『サンフアン』。

 Simon Middleton 記者による2023-4-26記事「Rise of the Rocket Launcher 2: Lessons from Ukraine」。
    ※記者は現役の英軍砲兵大尉。広い戦場から目標情報を吸い上げて評価し、そこに適切な火力を割り振って指向させる火力統制の仕事をしている。

 戦争は、機甲部隊の戦いから、ロケット砲兵の戦いに移行する。これが大きな流れだ。

 ロケット砲兵には課題がある。長射程のロケット弾では、近距離の敵と交戦できない。近距離の敵には、短射程のロケット弾を大量に発射する必要がある。

 このジレンマを解決してしまったのが、エルビット・システム社の「PULS」だ。ラーンチャー・ビークルは変えずに、そこに載せるポッドを自在に選べる。レンジ35kmのロケット×20連装にもできるし、レンジ300kmの地対地ミサイル×4発にもできる。その中間選択もできる。

 この「PULS」のコンセプトが、これからのロケット砲兵の主流になるしかないだろう。

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 Marc Santora and Victoria Kim 記者による2023-4-29記事「Large Fire Burns at Crimea Fuel Depot After Suspected Drone Attack」。
   セバストポリ軍港の石油タンク群が大炎上。土曜日午前。複数のドローンによる経空攻撃。

 ウクライナ軍の発表では、貯油タンク10基以上、4万トンの燃料を燃やした。
 現地傀儡州知事いわく、2機の特攻機が当たったと。

 ※他報によると、どうもアリババ・ドローンの「ムジン5」らしい。カタログによれば、固定翼のウイングスパンが16フィート、胴長11フィート、ペイロードは55ポンド。巡航速力は74マイル/時。滞空7時間可能。

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 Sofiia Syngaivska 記者による2023-4-29記事「Silent Kayak Operations: Ukrainian Special Forces Master River Crossing」。
   この1月からウクライナ軍の偵察隊は、2人乗りのカヤックを操ってドニエプル川の両岸を隠密に行き来している。このテクニックは、ドイツ軍が仕込んでやったものだという。

 カヤックはモーターの音を立てないので、ギリギリまで近寄っても敵兵には気付かれない。また2人の人間で軽々と岸を運搬できる。分解も容易であるという。

 カヤックの表面には特殊な塗装がしてあって、赤外線の輻射レベルがとても低いという。だから敵の暗視スコープにもひっかからない。

 偵察カヤックを出すときには、必ず此岸に歩兵を伏せておき、いつでも彼岸を狙撃できるようにしている。

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 Michael Schwirtz 記者による2023-4-29記事「Life in Ukraine’s Trenches: Gearing Up for a Spring Offensive」。
   ウクライナ南東部の戦線を2週間おじゃまして取材した。

 そこは〔82ミリの?〕迫撃砲部隊の塹壕で、次の砲撃目標に関する命令を受領する地下壕にはモニター(タブレット)があり、ドローンからのライブ映像が表示されている。
 付近には敵の砲弾が頻々と落下。

 警報スピーカーからは、露軍のヘリコプターの接近が伝えられる。そんな情況。

 この塹壕は機械掘りではなく、手掘りだという。ウクライナ兵たちの士気は旺盛であった。

 砲弾を発射してから、弾着がモニターに映るまで、数分かかる。敵兵は林縁にいる。

 この部隊の迫撃砲は、イランがフーシに供給しようとしたものを米軍が海上で拿捕したものらしい。米国製迫撃砲に比べて精密ではないという。また弾薬は、パキスタン製や、旧ソ連時代からのストックだという。

 ※この陣地が2週間のあいだ、露軍のドローンから攻撃されていないというところが興味深い。対空遮蔽にじゅうぶんに気をつけるようになったのだろう。また、ウクライナの戦線は1200kmもあって、とてもなまじっかの数のドローンではカバーできないのか。

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 2023-4-29記事「EU countries disagree over manufacturers to purchase 1 million shells for the Armed Forces of Ukraine from」。
   『フランクフルター・アルゲマイネ・ツァイテゥング』紙によると、これから欧州からウクライナへ100万発の155ミリ砲弾を供給するにあたって、細目に関して各国の意見は分かれているという。

 フランスは、これらの砲弾はEUで製造したものでなくてはならないと言い張っている。
 それに対してポーランドは、どこ製であろうが早く大量に供給することが大事だと反論。

 ノルウェーはEUではない。しかし大きな弾薬工場を持っている。イスラエル、カナダ、合衆国、韓国も同様である。

 EUのうち、155ミリ砲弾を製造できる工場があるのは、11ヵ国だという。

 ※ノルウェーは過去に2回、EUに入るかどうかの国民投票をしていて、いずれも大差で反対票が上回った。ノルウェー人の目から見ると、EUには自由と民主主義の水準が疑わしい国々が混ざっている。環境汚染に無関心な諸国も混ざっている。また市場をなんでも自由化すればいいというもんじゃないから。

 次。
 David Ljunggren 記者による2023-4-29記事「Russia’s Wagner group could soon cease to exist, founder tells blogger」。
    金曜日にプリゴジンは、あるブロガーに向けたビデオメッセージを公開した。

 露軍が弾薬を補給してくれないので、ワグネルは消滅して、歴史になる、と。

 そのご、彼は、あれは冗談だったと言っている。

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 ロイターの2023-4-29記事「Russia pledges harsh response after Polish ‘seizure’ of embassy school in Warsaw」。
   ポーランド政府は、ワルシャワ市内にある、ロシア大使館付属の学校を、接収し、国有化した。土曜日に。
 ロシアは怒っている。

 ポーランド政府はまた、凍結したロシア大使館の銀行口座の預金も接収した。

 ※雑報によると、ラトビアでアイスホッケーの世界大会が開かれるが、ロシアはこれに参加できない。会場ではロシア国旗とベラルーシ国旗は禁止される。ぎゃくにウクライナ国旗は持ち込み自由だと。これは異例である。ふつう、こうしたスポーツ大会で許される国旗は、ホスト国の国旗だけだから。