雑報によると東部戦線には何故か必要な地雷が無く、また何故か塹壕土工もされないため、守備兵は退却するしかなかったのだと。政府の腐敗が背景にあると彼らは感じているそうだ。

 Oliver Parken 記者による2024-5-14記事「T-6 Pilot Dies In Ejection Seat Accident」。
    テキサス州のシェパード空軍基地で死亡事故。練習機「T-6A テキサン II」が5-13に地上で座席を不意に射出させたらしい。飛行訓練生が1名、病院へ急送されたが、そのご、死亡。詳細は出てきていない。

 事故は現地時刻で午後2時よりも前に起きた。

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 Dhruv Mehrotra記者による『WIRED』の記事「Security News This Week: Microsoft Deploys Generative AI for US Spies」。
    『ブルームバーグ』の報道によると、マイクロソフト社は、オフラインで起動させられるAIソフトを米国政府のために用意した。GPT-4をベースにしていて、トップシークレットを扱っても安全だとという。このオフラインとは、米政府内のアクセス権のある高官1万人だけが使えるということを意味する。

 従来のジェネレイティヴAIの大問題は、掻き集めて参照するデータ源に見境がなさすぎるために、そこから生成されたモノに、図らずも「政府の秘密」が含まれてしまうことがあり得ることだった。マイクロソフト謹製の米政府用のAIでは、そのような《偶然のリーク》事故は防止ができるという。

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 Defense Express の2024-5-14記事「Ukrainian Drone Knocks Over a Train, Blocking Pathway to russian Arsenal 400 km in the Rear」。
    ヴォルゴグラードの「Kotluban」駅に宇軍の無人機が突っ込んできた。石油タンク貨車×9両が脱線。そのうち2両が炎上。また1両は爆発した模様。

 SNSに出た映像からは、他に、材木や鉄屑を運搬していた貨車も脱線していることが分かる。
 機関車は自重130トンあったという。

 この「Kotluban」駅、じつは、ただの田舎の貨物駅ではない。「57229/51」というナンバーでしか文書に記載されることがない、ロシア国防省直轄のミサイル工廠が近くにあり、そこから製品を積み出すための駅なのだ。

 宇軍は2023-11-16と、2023-11-24にも、この駅を爆撃している。

 次。
 Defense Express の2024-5-13記事「Meet the Ninja: Name of Ukraine’s Largest-Reaching Drone of 1,500 km Revealed」。
    1500km飛べる、有人機改造の片道無人特攻機の名前は「Ninja」だそうである。
 この改造機が、この前、ガスプロムの「Neftekhim Salavat」精油所を破壊した。

 さいしょから無人機として開発されている機体としては「Liutyi」が最近、精油所破壊作戦で名を揚げている。バイラクタルのTB2を小型にしたような全体のレイアウト。
 これに対して「Ninja」はエンジンがトラクター式配置。

 以前に800km飛んでモスクワに特攻したプッシャー式のUAVは、「Bober」という名前。こっちの活動はこの頃、ちっとも聞こえてこない。量産工場が、存在しなかったのだ。それは誰のせいかといったら、乞食坊の戦争指導が宜しくないのである。他国からモノを貰うことしか考えられない天然乞食では国家の運命が改善しないのだ。

 次。
 Sarah Simpson 記者による2024-4-30記事「Sky Power UAV Engines Successfully Pass FAR33 Endurance Tests」。
   スカイパワー社が、UAV用の新型の2サイクル・エンジンを2種類、完成しつつあり。

 製品のひとつ「SP-110」は、45kg~65kgのMTOWの無人機用だ。
 もうひとつの「SP-210」は、60~100kgのUASに適合する。

 ※同社の過去の製品の「SP-55」というのが排気量55cc.だったので、新製品の排気量も想像がつく。日本の最新の原付バイクエンジンの125cc.なら、人体と同じくらいの重さの無人機を飛ばせるポテンシャルがあるのかと空想する。尤も、4サイクルでは非力?

 ※無人機用といえどもきょうびはもはや2サイクルはダメなのかと思っていたのだが、FAAにもしっかり寄り添っているメーカーが、まったくの新品を堂々と出してきた。ゆえに、注目しておこう。

 ※今日あたり、全国隅々の書店に『自転車で勝てた戦争があった』が行き渡ったのではないですかな? 読んで面白かった人は、最寄の地域図書館、または学校図書館に、この話題の新刊を入れて貰おう! また、読み終わった本は職場の図書室に寄贈して、徳を積もう!



自転車で勝てた戦争があった


通販で入手された方は、昨日あたりに読み終えられたと思います。『自転車で勝てた戦争があった』の読後感想を、めいめい勝手にネット上に書き込んでくださいますと、たいへん嬉しいです。

 内輪に伝えられても、なんの宣伝にもなりませんからな。是非ともパプリックにすることで、売り上げを盛り上げてくださりませい。

 次。
 TARA COPP 記者による2024-5-12記事「US aims to stay ahead of China in using AI to fly fighter jets, navigate without GPS and more」。
    米軍は、GPS電波への依拠は有事にはますますリスキーだと予見していて、かくなるうえはAIの力を借りることで、GPS電波が使えないときでも精確なナビゲーションができるようにならぬものか、研究させている。

 これに関する米空軍の一実験。昨年やったのだが、C-17の中にラップトップを持ち込み、そのなかのAIプログラムが、磁探が捉えた、刻々変わる地磁気だけを手がかりに、現在の自己位置を推理しようというもの。

 これには大きな壁がある。飛行機はそれ自体、厖大な電磁波ノイズを発している。

 空軍はMITと組んで「AI促進計画」を事業化しているところだが、そのプロジェクトリーダーの大佐氏いわく。C-17のストロボライトを点灯しただけでも、「マグネトメーター(磁気検知器)」は感応してしまう。そのくらい過敏な世界。

 そうしたノイズをすべて、フィルターで除去しないことには、環境中の地磁気だけをクリアに読み取ることなどできない。しかし、そんなつごうのよい物理フィルターなど、存在しない。

 そこで、AIに学習させる。さすれば、過敏なセンサーにも「フィルター」をかけることが可能になる。AIは、なにがノイズで、何が環境磁気なのかを、みるみる学習するという。

 次。
 Alison Bath 記者による2024-5-10記事「Navy tests surface drone that can dive for days at West African exercise」。
    米海軍が、ヨット型の無人艇「トライトン」でアフリカのギニア湾における違法を見張る手伝いをしようという。なんとこの無人艇は、随時に「潜航」もできる。※どうやって? この記事ではそこが不明。

 西アフリカではさいきん、ニジェールのクーデターの余波で、それまで1億1000万ドルも投下していた無人機基地から米軍が追い出され、かわってロシアや中共が入り込んでいる始末。

 その穴を少しでも埋めねばならない。そこで、多国間合同演習である「Obangame Express」に、今回、米海軍が、無人艇の実験を押し込んだ。

 無人艇は『USS Hershel“Woody” Williams』から放たれた。遠征作戦用の補給母艦だ。

 沿岸のガボン、ガーナ、カメルーンなどは、いずれも小国なので、ロクな海軍は持てない。
 こうした国々は、安価な無人艇で沖合いの秩序を守るとよい。

 トライトンは連続2週間以上、行動できる。よって経費が安い。
 潜水は連続5日可能。
 また、洋上を漂うだけなら、もっと期間は延ばせる。これが無人艇のメリット。

 今次演習は5月6日にスタートした。基地はガボンのリバービル。

 自重775ポンドのトライトン艇をこしらえたのはミシシッピ州の「オーシャン・アエロ」社だ。
 (まぎらわしいのだが飛行機の「MQ-4C トライトン」はノースロップグラマン社謹製。)

 『ウッディ・ウィリアムズ』は今回、ISR用の飛行船も3機、放った。
 この飛行船は、ロードアイランド州のプロビデンス市にあるメーカー製。

 次。
 ストラテジーペイジ の2024-5-11記事。
   中共はげんざい、700機以上の衛星を周回させている。
 また、彼らの計画では、2030年までに中共の衛星を1万機以上にするつもり。

 次。
 2024-5-11記事「Royal Navy Orders Additional Remus Underwater Unmanned Vehicles from HII」。
   創業135年、従業員44000人の大造船所である「HII」は、このほど英海軍からUUVを受注した。「REMUS 100」を3機と、「REMUS 300」を5機。

 次。
 ストラテジーペイジ の2024-5-11記事。
   ロシア軍は2022-2いらい、今日まで、700機近くの有人航空機を失っている。
 そのうち400機近くは、固定翼の戦闘攻撃機だ。
 そしてそれらの機数の5%しか、国内製造によって埋めることができていない。理由は、西側から受けている経済制裁のため、電装部品などが手にはいらないため。

 ※ショイグが更迭されるという速報が出ましたね。



自転車で勝てた戦争があった


本日、書店搬入です! 新刊『自転車で勝てた戦争があった』を、ミリタリーの棚で探そう!

 いや~、待ち遠しかったっす。ネットでは5月初旬から流通してますけど、街の書店さんへの出荷が未だでしたからね。

 次。
 COL Jorg Stenzel, German Army, and CDR Michael Posey, U.S. Navy 記者による2024-5-7記事「Analyzing the German Frigate Hessen’s Near-Miss of a U.S. Drone in the Red Sea」。
    2024-2に紅海にてドイツのフリゲート艦から「スタンダード2」対空ミサイルを2発、米軍の「RQ-9 リーパー」へ向けて誤射し、しかも2発とも外れたという事件。

 『Hessen』は、多機能フェイズドアレイレーダー「APAR」を備え、対空警戒レーダーとしてはそれと別に「SMART-L」を設置。

 APARは、レーダー覆域視程150km、同時識別目標は200個という。
 SMART-Lは、覆域視程400km、同時に1000個の空中目標をトラックできると豪語す。

 『ヘッセン』のVLSは「マーク41」で、その中には24発の「RIM-66 スタンダードミサイル2MR」と、32発の「RIM-162 Evolvedシースパロー=ESSM」。
 また2基の「マーク49」ミサイル発射装置の中には「RIM-116 RAM」のセット。〔※これがあればファランクスは要らないと考える海軍もある。〕
 さらにオットーメララの62口径長の76㎜砲でも防空交戦できる。

 他にハープーンの専用ラーンチャーと、「EuroTorp MU 90」対潜魚雷、それと対舟艇用に役立つ27㎜機関砲もあり。

 2月26日、『ヘッセン』が防空を担当するエリア内に1機のUAVが近づいてきた。『ヘッセン』の近傍にはすくなくも15隻の商船が通航中であった。

 MQ-9 リーパーは、IFF(敵味方識別トランスポンダー)を備えていなかった。
 『ヘッセン』艦長は、同盟国軍の司令部と調整をした上で、このUAVを攻撃すると決心。
 しかしSM-2は2発とも外れてしまった。

 翌日『エッセン』は、別なフーシのUAVを2機、撃墜している。しかしそのさい、ESSMが不調で、RAMと主砲を使用したことが分かっている。高額なシステムが、またしても役立たなかった理由は何なのかという疑問を呼んだ。

 リーパーは、時速170~200マイルの低速で飛ぶ。しかも当該機は、ヘッセンと「同航」の位置関係だった。平行して飛んでいたのだ。そこで「クロス-レンジ」の難問が生じてしまったらしい。

 たとえばボクシングで、フックは届かせ難いが、ストレートには近すぎるような、微妙な間合いだった。

 マスコミに揶揄された艦長は、しかし、手順には自信をもっていて、ワシは教科書通りにやったのであり、また同じ状況になったら同じことをするだけであると強く反駁している模様。

 ※ドイツ人艦長が口にできないことを推定すると、この艦はイスラエル製の交戦管理システムを導入中であった。そのシステムが、ドップラー遷移を生じにくい遠距離目標――すなわち同航且つ低速の目標――への対処力に弱点があるのではないか。また、臨時紅海艦隊の上級司令部は、ギリシャ人やイタリア人が努めているが、そいつらがリーパーの飛行予定を把握してないのがそもそも無能である。寝ていたのではないか。

 次。
 Sofiia Syngaivska 記者による2024-5-9記事「russia Loots the Avdiivka Coke and Chemical Plant and Ships the Equipment to Mariupol」。
    露軍は占領したアウディウカのコークス工場とケミカルプラントの設備を根こそぎ取り外し、マリウポリへ運び去った。

 次。
 Defense Express の 2024-5-9記事「Ukraine’s Drones Reach 1,400 km: Strike on Oil Refinery in Bashkiria」。
    ガスプロムの、年産1000万トンの原油精製力がある「Neftekhim Salavat LLC」が、ウクライナの無人機特攻によって炎上。この精油所は、前線から1400kmも離れているという。



自転車で勝てた戦争があった


おかげさまで、無事、発売されました(通販先行)。『自転車で勝てた戦争があった』をAMAZONその他でポチられていた方へは数日中に届くはずです。

 すでに配達されたところも、あるかもしれません。楽しんでいただけましたか?

 かれこれ数十年もNHKが繰り返している《失敗の本質》式解説に飽き飽きしている向きは、是非、拙著によって、視野を広げていただきたいと思います。

 それと、ひきつづきまして、自転車の《試作改造工房》を買って出てくれる有志を募っています!

 最近、考えているのが、こんな感じです(一案です)。

 全体レイアウトは「ペニーファージング(Penny-farthing)」だが、乗用は考えず、サドル無し。ペダル無し。

 前輪は52インチ(=132センチ)。これは段差での安全を特に重視するため。ニューマチックタイヤとせず、ソリッドゴムとするのが、整備上は好適か。

 後輪は、ホームセンターで誰でもスペアが手に入る、「一輪車」(ネコ車)の主輪を流用。耐荷重の不安なく、非常時に蛮用も効きそうなので。

 ダウンチューブ(ハイウィーラーの場合、主輪上のヘッドチューブと後輪軸とを結んでいる唯一のパイプ)は、後方から眺めた場合に「梯子」の如き複列構造にし、普段はそこに、荷物運搬用の「袋状容器」を複数、ひっかけるように積載して、プッシュバイクたるカーゴバイクとして運行せしむ。

 もしくは梯子構造を、ダウンチューブ(1本管構造)からは浮かせ、「sacktruck/stair climbing sacktruck」(わが国で言うところの、飲料ケース運搬台車やボンベキャリーの如き道具)の如くに使えるものとする。
 すなわち、その梯子だけを垂直に立てれば、山伏の「(四脚型)笈」のように2脚+「すくい板」の縁が接地し、それが自転車の「スタンド」となってくれる。梯子構造とダウンチューブ(単管)とは「ヒンジ」で接合されているわけ也。

 後輪を、ネコ車よりも小径の運搬台車用車輪にすることも考え得るが、決して、ダブルタイヤや「サイドバイサイド2輪」としてはいけない。あくまでタンデム2輪にこだわるべき理由は、拙著を読んで戴き度し。

 この梯子構造の中段に片膝を乗せれば、「Chukudu」と同じような無動力のキックスクーターにもなるはず。(余談ながらフランス語では Chu はシュと発音されるので、この語源が「スクーター」であったことの見当もつくわけ。最初からカタカナで表記してしまうとそこが想像できなくなります。)

 大震災発生などの緊急非常時には、この梯子部分に「独歩不能患者」を1名、ボンベ台車のチェーンよろしく紐で縛り付け、1人の介助者の人力によって、危険な場所からエバキュエートさせることができるはず。

 また、離島作戦中の普通科隊員は、この特殊プッシュバイク/スクーターによって200kg前後のミサイルを人力運搬できるはず。

 拙著をお読みの方は、ここからどんなバリエーションが可能になるのか、すぐにご想像がお付きだろうと思います。そう。最新の81㎜迫撃砲を、この特製プッシュバイクで運搬することも考えられるのです。(弾薬車には、別な1台~数台を、カーゴバイクとして随伴せしむ。)

 しかし、ともかく試作品をこしらえてサイズ感やバランスを見ぬことには、見直しの要否からして掴めず、改善案も生じません。篤志の皆様の自主参加を念願致す所以でございます。

 また、こうしたマルチユース機能を有する「荷車」を普及させる場合にアップデートが望ましい法令の整理・統一等につきましても、併行して世間に提言して参りたいので、斯界に詳しい方の御助言をお待ち申し上げています。

 次。
 Bill Rivers 記者による2024-4-19記事「A Rockefeller of the Seas」。
     ※この記者は2017~19年にマティス国防長官のスピーチライターであった。

 中共に戦争をあきらめさせる米軍の切り札は潜水艦なのだが、それが予算不足で建艦ペースが巻き上がらない。どうしたらよいか?
 過去の伝統に戻り、億万長者のイニシアチブで無人潜航艇を先行納品してもらったらよい。

 南北戦争中の1862にテネシー川を支配することによって南軍の西部諸邦を大いに脅威してやった北軍艦隊は、セントルイスの実業家 James B Eads がグラント将軍のために一肌脱いだもので、その甲鐵艦の最初の1隻は今でも国有財産ではなく、私有財産だという。

 イーズは、4000名以上の職工を働かせてこの河川艦隊を建造させ、グラントに引渡した。
 プロジェクトのスタートから100日以内に、その艦隊は進水している。その間の建造費用すべて、彼の個人資産で賄った。
 もちろん、連邦政府との契約があった。しかし、代価が支払われたのはかなり後だった。

 今日の話をすると、米海軍は2028年になるまで「年に2隻」のペースでは攻撃型原潜を取得できないそうである。これは海軍が2023-3に発表している。

 台湾近海は浅海である。そこでは「無人半没艇」や「ロボット潜航艇」が活躍できる。それを、今日の米国の富豪たちは、自己資金で建造して米海軍に納品できるはず。後払いで米政府から補償を受ければいいのだ。そんな公平な仕組みを考えようではないか。

 2023年に議会調査部は、米海軍は全世界で31隻の原潜を作戦させられるとしている。インド・太平洋域だけでもこれでは足りない。まして全世界用としては。

 31隻というのは必要量の「五分の三」なのである。建造もメンテナンスも、ペースが、本来の必要水準まで追いついていないのだ。

 『WSJ』紙が調べ上げた事実。『ヴァジニア』級の攻撃型原潜は現状では、年に「1.2隻」しか新造ができない。本来なら「2.0隻」を建造し続けないといけないのに。

 だとすれば中共は2027に台湾侵攻すれば、その時点で米海軍は最も潜水艦戦力が弱体化しているので好機に乗ずることが可能だ。

 台湾防衛に関して米海軍の最後の期待はいまや、急速量産が可能な無人の水中ロボットだけだ。しかしその政府予算も未だついていない。「レプリケーター」イニシアチブは、DoD内部の一政策提言であって、政府は公式にその予算はつけていない。もっか、議会にはたらきかけて、その将来予算を確保しようと道を模索している最中なのだ。

 他方、米国内外の複数の中小メーカーは、今すぐにでも、AUV(自動潜航艇)を製造開始して米政府に納品することは可能なのである。足らないのは米政府の初期発注資金だけなのだ。

 民間造船所が米海軍を助けたのは、南北戦争が最初ではない。1813のエリー湖の勝利に貢献したのは、ノアとアダムのブラウン兄弟が自己資金で建造したブリグ船であった。

 「富+スピード=抑止」という方程式が、今の対支政治では、妥当するのである。
 遅すぎる調達では、対支の抑止にまったくならないのだ。それがいくら高性能の兵器でも、調達が何年も先では、もう手遅れなのだ。中国による侵略を止められずに、既成事実をつくられてしまう。

 米国は富んでいるのに予算がない。しかしここに予算の必要がある。だったら、われわれはもっとクリエイティヴになるべきだ。
 ベゾス、マスク、ザッカーバーグらは、1862年のイーズのように行動すべきだ。彼らの資金力で、中小のベンチャー・メーカーを動員することは簡単だ。

 パブリックとプライベートを臨機に結びつける枠組みを、発明するべきなのである。

 次。
 Joseph Trevithick 記者による2024-5-2記事「Israel Is Shooting Down A Lot Of Its Own Drones」。
   米海兵隊内で航空戦力の指揮の統合について考究している部門の長、マイケル・プルーデン中佐が、衝撃的な数値をあきらかにした。なんとイスラエル軍は、昨年ガザで、自軍が飛ばした無人機の4割を、てめえで撃墜してしまったというのだ。

 無人機の敵味方の識別がつかないので、見境無く、撃墜したわけである。

 狭い土地に、濃密に無人機が飛びまわるようになれば、とうぜん、そうなっちまうわけだ。
 ライフル用のAI照準器も、イスラエル国産で、あるしな……。

 次。
 The Maritime Executive の2024-5-1記事「Australia “Not Concerned” by Possible Hanwha Acquisition of Austal」。
   豪州政府は、韓国のハンワが豪州のオースタル造船会社を買収するとかいう『Yonhap』発のガセネタを、ぴしゃりと否定した。

 次。
 Alex Wilson 記者による2024-5-2記事「China’s newest carrier likely several years away from regular deployments, experts say」。
    公試運転を始めた空母『福建』は、就役するまでにもあと2年かかる。それから艦隊の中軸として米軍との実戦に遺憾がないようになるまでにはさらに5年くらいもかかるであろう。

 電磁カタパルトとやらの調子が安定するまでにも7年くらいかかるとしてもおかしくないのだ。

 次。
 Defense Express の2024-5-2記事「Ukrainian UAVs Strike Unexpected Target: Railway Power Supply is What russians Cannot Protect with Air Defense」。
    ウクライナ軍は、ロシアの鉄道線路を爆破しても「数時間」にして修理されてしまうと学習し、饋電[きでん]用変電所(traction substation)を自爆無人機で空襲し始めた。

 ※「饋」は訓読みすると「おく・る」。電車の架線に給電するための電力線のこと。サブステーションは、高電圧を低電圧に変電する施設。

 ロシアの鉄道では、饋電用変電所は、線路に沿って15kmから50kmおきに多数ある。そのすべてを防空アセットで万全にカバーすることなど、とうてい不可能。よって、どの変電所を空爆するかのイニチアチブはウクライナ側に確保され、常に爆破は成功する。



自転車で勝てた戦争があった


今次ウクライナ戦争で露軍はこれまで少なくも1500機の「ランセット」を命中させたという。

 《note》にコメント下さった方へ。どうぞ、動画用に御使用ください。すいませんコメントに返信する方法がわからんもんで・・・。

 次。
 Siobhan O’Grady and Kostiantyn Khudov 記者による2024-4-28記事「As Ukraine runs low on ammo, civilians build troops DIY drones at home」。
    キーウ在住の市民Aさんは、これまで150機のFPV特攻ドローンを自宅でこしらえて軍に献納した。また、ウクライナ軍が戦場で墜落機を回収した半壊ドローン(露軍のものを含む)の修理復活もひきうけていて、その数はこれまでで数百機だという。

 こうした市民がたくさんいるという。

 パーツを中共から輸入するための資金として、募金をこれまで20万ドル以上、集めているが、Aさんと旦那は共にIT技師なので、その収入からも自腹を切っている。

 なお、こうした義勇製造市民は、爆発物は、とりあつかわない。ドローンと組み合わされる弾薬・爆薬は、すべて、前線に用意されており、前線において兵隊が結合する。

 こうした、無人兵器の製造ラインを民間にかぎりなく分散させてしまう方法は、有事には利点がある。これがもし、巨大な製造工場であったなら、ロシア軍はそこにミサイルを撃ち込んで、一挙に生産力を破壊してしまえる。しかし兵器製造が「クラウドソーシング」されていれば、露軍はそれを、破壊のしようがない。ほとんどのパーツの供給元である中共を爆撃するわけにもいかない。

 各都市の、街の市民ボランティア改造工房多数を束ねている地域の有志団体も多数ある。
 しかし、それら団体から軍に直納するのではない。まず中間のテスト団体が引き取る。そこが動作の確認試験をやって、まちがいなく使えるものだけが、前線へ送られる。

 有志の改造屋たちが、じぶんの改造したドローンの送り先を指定することもできる。たいていの場合、彼らの友人が兵隊となっている最前線部隊だ。

 あるグループのウェブサイトは断言している。250ユーロで製作されているわれわれのドローンは、1発7万ユーロの「ジャヴェリン」と同じ戦果を挙げて見せている、と。

 爆撃用ドローンや自爆特攻ドローンの造り方、使い方を、兵隊や有志市民に教授しているボランティア団体も、ある。2022年の露軍の侵攻直後に最初のグループが立ち上がっている。

 ボランティアの部品調達部門は、製造に必要な中共製パーツは何か、公表している。市民有志はそれを通販の「AliExpress」でポチり、寄贈する。こうして愛国者のクラウドの資金力が、裏切り者によって中抜きされることなく、戦力に転換される。

 某団体は、始めたころには週に5機を献納した。それが翌週には7機に増え、1年後には、毎週400機に。そして今では、毎週4500機の、テスト済みの特攻ドローンを、前線へ送り続けている。

 ところで、組み立てたドローンの検品テストはどこでどのようにするのか?
 キーウ市内の工房の場合、「公園」を使うそうである。飛行テストするのも、週末ボランティアたちなのだ。
 前線で負傷して除隊した傷痍軍人が、こうしたドローン献納団体の「QC係長」となっているケースもある。1機ずつ、飛行動作試験をして、確かめる。

 急激な空中機動をさせたときに、組み付けの悪いドローンは、空中分解してしまうことがあるという。そうなることがないかどうか。

 爆薬の代わりに、砂を充填して重くしたペットボトルを、ドローンに抱きかかえさせる。

 不合格品はまとめて、ショップへ送り返している。

 前線の兵隊からは、ショップに、ビデオ付きの令状が届くことがあるという。自分が作ったモノで人(露兵)が死ぬビデオを見てこんなに嬉しく思う日が来るとは思わなかった――とある有志市民女性。

 ※イタリア空軍はこれまで200発の「ストームシャドウ」を受領しているが、その中から、イタリアもウクライナへ同ミサイルを寄贈するという。

 次。
 Aliyah Kovner 記者による2024-4-23記事「This alloy is kinky」。
    ニオビウム、タンタルム、チタン、ハフニウムの合金が、凄いという。
 超高温下でも、超低温下でも、強度と靭性が低下しないのだという。
 これはただちに次世代のエンジン部品に適用されるはず。

 新合金をつきとめたのは、国立ローレンス・バークレイ研究所と、バークレイ大学の合同チーム。
 その報告は2024-4-11刊行の『サイエンス』に出ている。


兵頭二十八 note


自転車で勝てた戦争があった


『自転車で勝てた戦争があった』の見本刷りは、すでに22日に印刷所から版元まで届けられた模様。

 ぜ~んこくの図書館利用者の皆さん!
 この新刊を《購入希望》の新刊書リクエストカードに書き込み、1人でも多くの人が自転車の真実に目覚められるようにしましょう!

 ちなみに表紙カバーに使われているAI描画(複数)も、「Y.I.」さんが作ってくださったものです。
 いきなりこんな時代が到来したんだな~。

 次。
 Howard Altman 記者による2024-4-23記事「Meet The Flamethrowing Robodog Named Thermonator」。
    「サーモネーター」、爆誕。

 オハイオ州にある「スロウフレイム社」。ロボドッグに火炎放射器を結合して、9420ドルにて、売り出した。

 この会社はもともと、火炎放射器のメーカーらしい。「ARC フレイムスローワー」という商品が前からあり、それを、ロボ犬に載せてみたようだ。
 火炎は30フィート先まで届く。

 ロボ犬の「下顎」部分にLIDARのセンサーがあって、全周を3D測距するために常にぐるぐる回っている。ここから出される周辺探知用のレーザーは、人畜の目には無害だ。
 そのロボット犬を、オペレーターは、FPV操縦する。もちろん夜間もOK。

 ※雑報によると全米の48州で合法的にこれを買えるのだそうだ。

 次。
 ストラテジーペイジ の2024-2-24記事。
   イランが「358」という、ユニークな上空待機型の対低速機用のSAMを開発したのはもう何年も前だ。
 これは中高度以下を飛んで来るUAVや、ヘリコプターに対して、効果があると考えられている。

 「358」は全長2.7m、自重40kgで、弾頭重量は10kg。

 センサーは熱赤外線を捉える。近接信管はレーザーの反射を利用する。

 「358」のロイタリング飛行スピードは、500km/時である。
 地上の発射機コンテナーからは、まず火薬ブースターで飛び出し、空中でガスタービン動力に切り替える。

 ロイタリング高度は1000フィート以下。パターンは「8の字」が普通である。
 会敵せずに燃料が尽きたときは、地上に墜落する。

 機体と地上の間には無線リンクもあり、哨戒空域を変えさせたいときは、無線でその指示ができる。

 「358」は、イエメンのフーシに武器を密輸出せんとするイラン船を海上で取り締まっていた米艦が、2018年から押収し始めた。これまでに数十基、押収されているという。

 レバノンや、シリア西部でも、すでに「358」が飛んでいる。
 速度差があるので、イスラエルの高速のジェット戦闘機にとってはほとんど脅威ではないのだが、もし偶然に近傍を航過するようなことがあると、やられるおそれはある。

 また、この「358」をイスラエル軍の航空基地の近くで飛ばされると、とても迷惑だ。戦闘機の離着陸時のスピードは遅いので、「358」でも直撃のチャンスがある。

 米国からウクライナに少量が供与されている「スイッチブレード600」には「全自動モード」がある。オペレーターからいっさい、指図をしないで、ロイタリングミュニションが勝手にターゲティングするから、通信リンクに対する電波ジャミングは、効かない。
 「358」も同じ強みをもつ。

 次。
 Steve Holland and Idrees Ali 記者による2024-4-25記事「The US quietly shipped long-range ATACMS missiles to Ukraine」。
   水曜日にロイターが聞き出したところでは、すでに数週間前にATACMSの300km飛ぶやつはウクライナへ供与済みで、しかも、それはもう2度も、露軍に対して実戦発射されているという。

 これは、3月12日にバイデンが署名した3億ドル援助パッケージに含まれていたと。
 その数量については、政府は口を閉ざしている。

 その最初の発射(複数発)は4月17日で、クリミア半島にある露軍の飛行場を狙った。その飛翔距離は165kmであったという。

 ※165kmは旧型ATACMSと同じなので、露軍はそれが新型ATACMSであるとは気付かなかったわけか?

 またその二度目の発射は、ウクライナ南東の領土内の露軍に対して、ひとばんじゅう、行われたという。

 ちなみに、最大射程が165kmである旧世代ATACMSは、2023-9にウクライナ軍へ与えられた。

 ロシアは米政府の警告を無視して北朝鮮から弾道ミサイルを調達し、それを2023-12と2024-1にウクライナ領内へ発射している。

 長射程版ATACMSの対宇供与に米政府が踏み切った背景として、露軍がウクライナの重要なインフラを爆撃し始めたことにたいする加罰の意図がある。そのメッセージはロシアに伝わっており、ロシアはインフラ破壊を控えるようになったという。

 ATACMSのメーカーであるロッキードマーティン社と、運用者である米軍が、2024-1後半までに、さらなるATACMSの対宇供与をしても、米軍の「レディネス」は悪化しません〔=新品製造を巻き上げるので、対支戦争が不安になることはありません〕、とバイデン政権へ請合った。

 これを承けて2月なかば、バイデン政権内では秘密裡に、追加供与する方針が決まった。熱心なアドバイザーたちの勧めを、政権内の他の国家安全保障チームが受け入れた。

 国家安全保障チームの主な面々。ジェイク・サリヴァン。ロイド・オースティン。アントニー・ブリンケン。統幕議長のC.Q.ブラウン。

 問題は原資であった。3月、ペンタゴンに納入している複数のメーカーが、安値を提示。これでバイデン政権は3億ドルを新たにウクライナ援助に使えることになった。この枠でATACMSを援助した。

 バイデンがチームに命じた。その援助品の中に、長射程型のATACMSを入れろ、と。

 ※従来より射程が大な精密弾道ミサイル兵器がウクライナの前線に登場すると、敵の露軍は、その射程を避けるべく、必要なだけ、後退する。だから新兵器による大戦果は最初の数日間しか期待することはできず、常にワンタイムである。米側としては、いきなり300kmレンジのSSMを援助するのではなく、まず80kmのHIMARS、次に165kmの旧型ATACMS、次に300kmの新型ATACMS……という具合にステップアップする流儀を選んでいる。新兵器の奇襲効果はすぐになくなってしまうが、3段階にステップアップすれば、奇襲も3回できるわけである。もちろんこれはウクライナにとってはもどかしい。最初から300km型ATACMSがあったなら、ドニプロ川の北岸からクリミア半島全域を火制できたのだ。が、それは、《長射程の反撃兵器》を2014年からまったく自前で整備しようとはしてこかったウクライナ人が悪い。ミサイルは安い製品ではない。それを只で貰って濫費できると思う「乞食主義」はホワイトハウスにより拒否され、ウクライナ人は仕方なくじぶんたちの無限の流血で代価を支払っているところなのだ。ところで300kmの次は500~600kmの弾道弾かというと、これはない。ウクライナ国境から500km先がモスクワだから、1987米ソINF条約の精神が完全に破壊されてしまう。ロシアは、全欧の大都市を破壊できる複数核弾頭付きの「SS-20」を復活させることができる。そうさせないことは、ウクライナの救済などよりも、重要なのである。

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 Ritu Sharma 記者による2024-4-24記事「IAF’s Su-30 MKI Test Fires Ballistic Missile That Can ‘Rock’ Pakistan’s Terror Camps From Indian Airspace」。
    インドが、空中発射型の弾道ミサイルをテストした。場所はアンダマン~ニコバル諸島沖。
 「クリスタル・メイズ 2」といい、イスラエルのラファエル社の製品。
 発射母機は「スホイ30MKI」。
 ミサイルの射程は250km以上とされる。

 インドはこのミサイルを国産化しようと考えている。



自転車で勝てた戦争があった


ペンタゴン内にある「ディフェンス・イノベーション・ユニット」が火曜日に声明。地熱を利用する技術を研究しているベンチャー企業への助成金を6倍にすると。

 特にアラスカの米軍基地では、地熱の利用のし甲斐があるだろうと期待されている。中世のバイキングもアイスランドの住居を地熱で暖房していたのである。

 ※『自転車で勝てた戦争があった』のプロモ動画のスマホ版が出ました。→「https://youtube.com/shorts/ObE_1020vzs?si=ZGbzseUTewpMjyrz」。都合により今回の新刊には詳細地図を載せている余裕がなかったので、それを補う意味で、パソコン用の宣伝動画の方には、『戦史叢書』の附録地図の一部分が一瞬だけ映るようにしています。場所は、ビルマとオーエンスタンレー山脈とガダルカナル島北岸。なお『戦史叢書』は国会図書館からPDFダウンロードもできるはずですので、さらに細かい確認をしたい方は、オンラインでそちらをチャレンジしてみてはいかがでしょう。

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 Defense Express の2024-4-17記事「Another S-400 SAM System Likely to Destroy In Result of Ukraine’s Missile Strike on russia’s Dzhankoi Air Base」。
   水曜日の未明、クリミア半島にある「Dzhankoi」空軍基地がウクライナからのミサイル空襲を受け、1基のS-400はATACMSの直撃を受けて破壊された模様。
 露兵は30人死んだ。

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 Boyko Nikolov 記者による2024-4-17記事「Possible Russian losses in Crimea base attack: Su-25s, S-400, Ka-52s」。
    ドゥザンコイ空軍基地への大規模ミサイル空襲。そこは最前線から145km離れている。クラスター弾頭タイプのATACMSは、レンジが165kmである(旧式が引渡されている。新式は300km飛ぶはず)。

 この空軍基地には、直前の民間衛星写真を見ると、スホイ25や、ヘリコプターも展開しているので、それらの損害もあったはず。

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 Boyko Nikolov 記者による2024-4-17記事「UralVagonZavod turns a Soviet VAZ-2104 car into military buggy」。
   ウラルヴァゴンザヴォドは、プー之介から命じられたAFVの増産がノルマに達しないので、市中から回収した民間の中古車、それも、レトロなロシアメーカー製の型落ちの4×2乗用車をピックアップに改造し、緑色に塗装し、その後部荷台に軽機関銃やATGMを装置させられるマウントをとりつけ、写真に撮って、政府向けに《広報》するという姑息な《言い訳》事業に乗り出している。

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 Elodie MAZEIN 記者による2024-4-17記事「In Scranton, aging US factory makes shells for Ukraine」。
    ジョー・バイデンの地元であるペンシルベニア州のスクラントンに、古~い、砲弾工場がある。まさにラスト・ベルト(錆び錆び旧工業団地)の面目。

 正式には「スクラントン・アーミー・アミュニション・プラント(SCAAP)」と称し、155ミリ砲弾の弾殻になる鋼管を製造する。

 この弾殻をアイオワに陸送し、そこの工場で炸填する。
 「信管」は、野戦部隊が発射の直前に取り付ける。安全のためだ。

 工場は1908年に設立され、当初は蒸気機関車の修理が本業だった。そこを米連邦政府が1953年に買収した。朝鮮戦争の経験から、砲弾需要の将来予測を見直したわけだ。

 いま、ペンシルベニア州東部にある3ヵ所の類似工場にて、月産2万4000発の155ミリ砲弾殻が製造されつつある。このペースは2027年末まで続くという。
 ただ、2019年に政府との間で交わされた契約の詳細は、非公開。殊に納品総数については部外にまったく情報を出さないのがこの業界だ。量産ペースも、変動するであろう。

 ちなみに、スクラントン近郊の他の2つの砲弾工場は、私企業で、ジェネラル・ダイナミクス資本が運営している。

 GD社は、テキサス州に、新しい砲弾工場を建設中で、それはこの夏から製造を開始するであろう。この工場も取材に対するガードが固い。

 ペンシルベニアの3つの砲弾工場で働いている従業員は、トータルで900人である。

 SCAAPを近代化(省エネ化)する設備投資計画は2022年よりも前からあり、逐次に推進される。

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 Sofiia Syngaivska 記者による2024-4-17記事「The Kremlin Plans to Smear Ukrainian Special Forces with False Weaponry Allegations in Sudan」。
    スーダンにはウクライナ軍の特殊部隊が駐留しているのだが、ロシアはその評判を落とすために、「偽のウクライナ兵」になりすまして、悪事をさまざまに働くつもりだ。



自転車で勝てた戦争があった


靴の接着剤は最も強靭なものを使っているはずなのに、温度×湿気で機能が不全に陥る。おそらく元寇のときにモンゴル軍の「合成弓」の膠に起きたのがこの現象だったのだと思う。

 和弓のスタイルには、理由があったのだ。

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 Eva Dou 記者による2024-4-11記事「A drone factory in Utah is at the epicenter of anti-China fervor 」。
    ジョージ・メイタス君(26)は、ソルトレイクシティで高校生だったとき、人の肩にとまらせておいて、人が探険するルートを先行偵察してくれるミニドローンを空想していた。
 17歳にして彼は「Teal ドローンズ」社を起業。ティールというのは、急速に増やすアヒルの子のイメージだ。

 強敵は中共のDJIだった。とにかくその製品の値段は、米国内で製造したなら、ありえない安さであった。

 メイタス君は、一般消費者向けの市場でDJIと競っても生き残れないと判断し、国防総省や警察、税関向けのISRドローンに、自社製品のキャラクターを明確に絞った。
 特に、夜間の視察能力を「売り」にできるように考えた。

 今次ウクライナ戦争ですべてがハッキリした。スモール・ドローンは、バトル・ツールとしての価値を証明した。

 特に片道特攻機。ペンタゴンもこれを見て、「レプリケイター」路線を推進する肚を括った。数百万機のオーダーのドローンの「数」によって中共軍を圧倒しようという最新戦略だ。

 この「レプリケーター」イニシアチブが明確に提示されたことで、米国内の弱小ドローン・メーカーたちには、急に未来の経営展望が開けた。対DoDの商売では、DJI社などはとうぜん排除されるから、もはや誰も、中共との価格競争を強いらることはない。米国内の製造コストの相場を前提した上で、米軍に売り込みをかける、まっとうな勝負ができるのだ。

 Teal Drones社は2021年に「レッド・キャット・ホールディングズ」が買収している。オーナーは、ジェフ・トンプソンだ。

 メイタスがティール社を興したのは2015年だった。当時、ドローンはブームだった。WP紙の現オーナーであるジェフ・ベソスも、2017年から小荷物をドローンで配送するとの野心を語っていたものだ。

 ところが2016にDJI社は、自重1.6ポンドでポケットに入るサイズ(3.3×7.8インチ)の「Mavic Pro」を999ドルで北米発売した。これと価格や機能を競おうとした米国内の中小ドローンメーカー(たとえばSkydioなど)は、軒並み、打ちのめされた。

 もし2018年にペンタゴンが米軍内でのDJI運用を禁止しなかったら、ティールもスカイディオ社も、皆、潰れていただろう。

 スカイディオ社は2023年にきっぱりと、一般消費者向けの製品部門を閉鎖している。これからは「官」だけを相手にするのだ。
 ティール社は、暗視能力、全天候能力、対電波妨害能力をドローンに附加すれば、高くても米軍はそれを買ってくれるので、助かっている。

 それでも、ティール社の今の従業員は100人弱。DJI社の1万4000人といわれる中国工場(もちろん大量の製造ロボットもあり)とは規模が比較にならない。

 しかし、ソルトレークシティ北部で、原野遭難者の救助隊にドローンで協力している人にいわせると、森林内で迷子を捜索するといったミッションにかぎっても、いまもって、DJI製品が最も優秀であり、米国内メーカーとの格差はいまだに「数年」はあるというのが実感だそうだ。

 DJI製品の使用が許可されていたならば、命を救えた遭難死者がいた、と、この人は明言する。

 DJIの3万ドルする最高性能ドローンを使えば、地平線のあたりまでビデオカメラをズームして、サーマルイメージによって、人の所在だけを背景から浮かび上がらせることができるのだという。

 ユタ州は法律によってDJI製品を禁じているわけではない。そこが救いである。

 マイアミ警察のある部隊。カリフォルニアで製造されたスカイディオのドローンは1機が2万5000ドル。それに対しDJI製は、1500ドルから3000ドルだという。

 フロリダ州は州法によって中共製のドローンを官公署が使うことを禁じている。

 中共製ドローンは、屋内を探索させているときにも、無線交信が切れないという。それに対して米国製のドローンは、屋内に入れるとすぐに無線のリンクが切れてしまい、そこで機材がロストする。

 レッドキャットは、ティールに加えて、一時、2つのドローン系のスタートアップを保有したものの、今はそれは手放した。2社とも、中共から部品を仕入れて値段を安くする路線のメーカーだったので。そんな腐れ縁があると、ティールを「官」に売り込むときに、障碍となってしまうのだ。

 ※近刊の『自転車で勝てた戦争があった』は、今、アマゾンで注文されますと、おそらく速い人で5月の5日には、書籍を手にできるのではないかと思います。都内書店への配本は、5月10日ですので、早ければ即日に店頭に現物が出るはずです。5月まで待ちきれないという都内の人には、4月下旬に書籍をGetできる特別な道もあるのですが、これは公言できません。超おもしろいので、みんなで買おう!



自転車で勝てた戦争があった


米議会はポーランドにJASSM-ERを輸出することを承認した。

 Tyler Rogoway 記者による2024-4-6記事「No Major Damage Seen At Russian Air Base After Drone Attack」。
 数日前の、宇軍による、ロシア西部数箇所の航空基地に対する大々的なドローン攻撃の戦果は、どんなものだったのか?
 「Planet Labs」社の細密な民間衛星写真が手に入り、まったく戦果は無かったことが判明した。
 露軍が発表していた通り、UAVはほとんど途中で撃墜された模様である。

 4月4日撮影の写真と、4月6日撮影の写真を比べると、露軍機の数に変化が無い。
 攻撃がなされたことは確かだ。というのは、駐機場所とは違う地面にクレーターが2個、できていたりする。※マシンビジョン搭載のUAVではなかったことが強く推定される。

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 Amaury Coutansais Pervinquiere 記者による2024-3-28記事「French troops in Odessa. Five scenarios of Macron in Ukraine are named」。
  仏紙『フィガロ』が、マクロンがその言葉通り、フランス兵をウクライナ国内に展開させる場合、場所はどこになるのかの予想を立てている。

 2-26のマクロン発言を承けてドイツのショルツ首相は、ぜったいにドイツ兵をウクライナに送るつもりはないと言明している。

 仏陸軍の参謀総長は、命令があればそれから30日のうちに、2万人の仏兵をウクライナへ派兵できると言っている。

 ウクライナ国内に軍需工場をつくってやるというオプションもある。もちろん露軍はそこをミサイル攻撃してくるはずだ。
 地雷処理とか、訓練だけでウクライナに関わるというオプションも、考えられる。

 有力オプションは、オデッサ市の防衛に関与すること。
 『ル・モンド』紙によるとマクロンはこのオプションに乗り気だという。

 オデッサの3箇所の港は、2019年の統計によれば、ウクライナの総輸出の64.8%、そして輸入の67%が通過。ここを安全にすることにより、世界の穀物価格が安定する。だからフランス政府として意義を説明しやすい。

 オデッサに派兵するとしたら、それは飛来するミサイルを迎撃できる、防空部隊が中心になるだろう。しかしパリ五輪でもこれら高射部隊は警備に必要だ。そこにジレンマがある。

 ベラルーシ国境沿いとか、ヘルソン州、ハルキウ前縁などに、仏軍部隊が防衛線をつくってやるというオプションも、あり得る。

 いちばんありそうにないのが、仏兵がウクライナ兵といっしょに塹壕に籠もって防戦するという、参戦の仕方だろう。

 ※雑報によると、オデーサにはすでに仏兵がいるという。ルーモアだが……。

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 Boyko Nikolov 記者による2024-4-7記事「Zelensky ‘surrendered’ to Trump, Kyiv is ready for an arms loan」。
   トランプは、ウクライナは米国から只で武器を貰おうとするのではなく、分割払いで買えよ、との意見。『シュピーゲル』紙によれば、ゼレンスキーは、そうするしかないと思い始めた。

 乞食ゼレンスキーは「最低25基のペトリオット発射機(6個~8個高射大隊分)」が必要だとさいきんでは強調している。

 それを只で貰おうというのだからずうずうしい。だったらツケで買えば? —というのがトランプの考え。

 ※この場合、ゼレンスキーには奥の手がある。トランプ政権からのローンで天文学的な額の兵器を買い、もしそれが完済されなければロックマートの経営が傾くという水準まで注文しまくる。そうなった後でロシア軍がウクライナ領土を占領してしまったら、米国の債権は紙屑となるのである。


兵頭二十八 note

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自転車で勝てた戦争があった


タタルスタン州のNizhnekamsk市にあるロシアで三番目の規模の石油精製プラント。「小型輸送機」サイズの無人特攻機が突っ込んで爆発した。ウクライナ領内から1200kmは飛行した模様。

 一説に、この改造特攻機のペイロードは660ポンドだという。数十km離れた工業団地では「シャヘド136」をライセンス製造しており、そこにも同じ特攻機が正確に突入した。4月2日のこと。

 次。
 Svetlana Shcherbak 記者による2024-4-5記事「Satellite Images Reveal Over 60 Aircraft at russian Airfields in Engels, Yeysk and Morozovsk Prior to UAV Attack」。
    4月4日の晩から5日の未明にかけての夜間に、ロシア西部の複数の航空基地が、ドローン攻撃を受けた。
 エンゲリス飛行場はウクライナ国境から700km離れているが、やられた。
 国境から300km離れたところのMorozovsk空港、150km離れたYeysk空港も、やられた。

 3機の「ツポレフ95MS」戦略重爆撃機を含む19機が損傷したという。
 Yeyskでは、2機の「スホイ25」が破損した。

 攻撃前の民間衛星写真で確かめると、この3箇所の航空基地には合計60機以上が駐機していた。

 エンゲルス空港の4-4朝の写真には、8機の戦略重爆が写っている。ツポレフ160が3機と、ツポレフ92が5機。他に、イリューシン76とツポレフ22が1機ずつ。

 Yeysk空軍基地には、L-39練習軽爆×10機、アントノフ26輸送機×5機、アントノフ74×1機、アントノフ12×1、スホイ27戦闘機×4、スホイ25×4、スホイ30×1機、カモフ27ヘリ×?機、ミル8×1機、ツポレフ134UBL練習機×2機がいたと判る。

 モロゾフスク飛行場には、4-4時点で、戦闘機が29機所在。多くは「スホイ34」である。これも「Planet Labs」の衛星写真で確認できた。

 ※宇軍は片道特攻UAVを50機以上、飛ばしたようだが、それらがただGPS座標指定をされていただけならば、19機も効率的に破壊することはできない。それらの特攻機には「マシンビジョン」が搭載されていて、駐機している敵軍用機の機種を見分け、高価値目標を自律的に選別し、直撃する仕様だったのであろう。とうぜん、「ツポレフ160」を優先破壊するアルゴリズムだったと考えられるのだが、おそらく露軍側では「ブラックジャック」についてのみは機内でクルーを寝泊りさせて、警報あり次第離陸させられるようにしていたのであろう。もしブラックジャックが破壊されれば基地司令官には刑務所行きが待っているので。

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 Joseph Trevithick 記者による2024-4-4記事「Four Stealthy AGM-158C Long-Range Anti-Ship Missiles Flew Together In “Historic” Test」。
    2機のF/A-18 スーパーホーネットから4発の「LRASM」を同時発射する訓練が実施され、すべてうまく行ったという。

 テストの場所と日時については非公開である。
 しかし対支の実戦をシミュレートしたことは疑いもない。

 げんざい、米海軍の保有機で、LRASMを発射できるのは、スパホだけ。「P-8A」からも発射できるように、改修工事がすすめられているところが、とうぶんは、それは仕上がらない。

 米空軍は、B-1BからLRASMを発射できる。F-35は、機内弾倉にこのサイズの巡航ミサイルは入らないので、無理に運用させようとするなら、機外吊下とするしかない。

 メーカーのロックマートと米海軍は、LRASMを軍艦の「マーク41」VLSからも発射できるんですよ、と議会にアピールしている(実験は既に成功)。

 LRASMには、いまのところ、2つの型がある。
 AGM-158Cは、「C-1」とか、「LRASM 1.1」とも称される。これが今、配備済みの型である。

 もうひとつの型は、開発中のもので、「C-3」とか「LRASM-ER(エクステンデト・レンジ)」と呼ばれる。

 どちらもステルス性の高い対艦巡航ミサイルである。

 そもそもLRASMは、空対地スタンドオフミサイルの「JASSM」を進化させたもので、機体のコア部分はJASSMと類似している。

 「C-1」の航続距離は、200浬から300浬のあいだである、としか公表されていない。すなわちそれはJASSMと同じだ。

 LRASMは、飛行中に、みずからESMによって敵艦の出すレーダー波をキャッチし、それらのレーダー波によって最も探知がされ難くなるような、最適のアプローチ針路を、じぶんで案出して突っ込む。

 敵空母が、最初は電波封止をしていたが、とちゅうから我慢できなくなってレーダーを稼動させたような場合、飛翔しながらそれを察して、すぐにそっちに目標を変えて突っ込む、という自律判断まで、できてしまう。

 敵艦が見通せる位置まで近づくと、赤外線イメージ照合が始まり、敵空母や敵駆逐艦の最も脆弱な箇所をピンポイントで直撃する。

 いま開発中の「C-3」は、レンジが伸びる。おそらく「AGM-158B JASSM-ER」と同じ、600浬くらいになるだろう。

 米海軍は、「C-3」を2026年のなかばから、F/A-18 スーパーホーネットに運用させるつもりである。これは米海軍が出しているFY2025予算要求から推定できる。

 2030年までに米海軍と米空軍は、1000発以上のLRASMを調達するつもりだ。

 ※今から予測できてしまうのだが、中共海軍は、空母や揚陸艦の舷側に巨大な白地の垂れ幕を下げて、そこに「赤十字」マークを映示させる技法を研究中だと思う。病院船を攻撃できないようにしているはずの、LRASMの画像イメージ照合のアルゴリズムを、逆手に取るわけだ。

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 Boyko Nikolov 記者による2024-4-3記事「Enigma unraveled: Australian E-7A Wedgetail ‘shot down’ Su-34」。
   豪州空軍は、その所有するAWACSである「E-7A」を、2023-10にドイツのラムスタイン基地に展開させていた。支援員100名とともに。それが4月2日に豪州に戻ってきた。

 どうやら、この「ウェッジテイル」の情報にもとづいて、クリミア方面でロシア空軍の「スホイ34」が3機、撃墜されたのではないかという。

 ウェッジテイルはウクライナ領空では作戦しなかったはずだ。しかし、ポーランド領空は使っただろう。黒海の公海上も飛んだだろう。そのくらい離れていても、西側のAWACS機には、露軍機の動静が見えてしまうのである。


兵頭二十八 note

ネット予約は4月からできます! 5月の新刊『自転車で勝てた戦争があった――サイクルアーミーと新軍事モビリティ』

次の《自転車企画》のために 皆様のお知恵を拝借


自転車で勝てた戦争があった