ある試算。MBTを電化しようと思ったら、15分で充電できないと困る。そのためには17メガワットの発電機を回さねばならぬ。その発電機は1時間に1200ガロン以上の軽油を燃やす必要があるだろう。

 速報です。
 「プッシュバイク」の実験に興味があり、新刊『自転車で勝てた戦争があった(仮)』の出版まで待ち切れないという人は、とりあえず下記のユーチューブ動画をご覧ください。ご感想・ご意見をお待ちします。

 これまで1年以上、旧軍の自転車について調べてきて、今、少しばかり把握し、且つ想像していることがあります。
 たとえば……。

 S16の辻グループ(於・台湾)は、イタリアのベルサグリエリの戦術綱要を翻訳しただけなのではないか? だから、道路佳良なマレー半島のスピード作戦には適用できたが、「自転車を輜重に使う。しかもジャングル内の泥道で」という発想は、日本陸軍のどこを探してもまるで無かったのではないか。

 いわゆる日本兵の「餓死」は、「退却時の置き去り」によって発生している。インパールでも東部ニューギニアでも、攻勢が頓挫するまでは、1人も餓死などしていない。なぜ退却時に置き去りにされるかというと、1人の「独歩不能衰弱者」「重患者」を運んでやるためには、8~9人もの健全兵が必要だったからである。

 この問題を、ウィンゲート旅団はどう解決したか? 「置き去りでいい」とした。傷病兵は村に置き去りにしろとウィンゲートが厳命していた。これは騾馬(ミュール)では傷病者は運べなかったことを意味している。さらに英文ネットをながめていると、マイナー寄稿者が、暗闇の真相に光を当ててくれている。やはり、ウィンゲート挺進隊も、衛生兵が重患者をピストルで処置して竹薮に匿すということをふつうにやっていた節がある。

 ウィンゲートの最大の功績は、宣伝である。チンディッツの第一次作戦は、《8日以上の絶食によって、二度ともとの健康体には戻れなくなった廃兵》を百人単位で量産したという点でまさにインパール作戦退却フェイズの雛形だった。その失敗部分を日本側に対して完全に隠しおおせたことで、科学的懐疑力をもたない牟田口がひっかかって同じことをやれるじゃないかととびついた。

 独歩できない衰弱患者をそもそも発生させないようにするための糧食輸送、ならびに、1人の重患者を1人の健全兵だけで後送してやることのできる、当時の日本軍にも調達可能な道具があったはずだ。それはタンデム2輪の「全木製スクーター」である。

 サイドバイサイドの2輪では、どうにもならない。ここに気付いているのは世界ひろしといえどもベトナム軍だけである。だから今のベトナム軍は、特殊輜重用の自転車を国内メーカーに納品させていながら、そのディテールを、積極公開させていない。ぼやけた写真しかネットではみつからないのだ。彼らは、次の本番でもそれがじぶんたちだけのスペシャルな強みになると理解しているのだろう。

 次。
 Defense Express の2024-2-11記事「Ukraine Got New Winged FPV Drone With Longer Range and Durability, to Spend Less HIMARS Rockets」。
    安価に大量生産をすることを主眼として開発され、すでに最前線で使われている、ウクライナ国産の固定翼自爆機のディテールがわかってきた。

 名称は「Darts」という。弾頭重量3kg強。

 製造コストは米ドル換算で、1170ドルから1330ドル。
 弾頭重量70kgのHIMARSが1発で22万3000ドルだから、HIMARSのコストはダーツの17倍だ。

 ※これは微妙じゃないか? ダーツ×17機で、50kgの弾頭重量となるので、HIMARS×1発(弾頭重量70kg)よりも総威力は低いわけだ。ただしHIMARSはラーンチャーと指揮通信で箆棒なカネがかかっている。その負担がDARTSには無い。

 ※ロイター2-12報によると、オーストリーの国営エネルギー会社OMVに、ガスプロムから天然ガスを輸入する長期契約を終らせることを、同国は検討している。エネルギー大臣が語った。ちなみに今の契約は2040まで有効。


note に 宣伝のAI作画を載せたので、ご覧ください。

さらに詳しい話は、後日……。


兵頭二十八 note

AIでは説明が行き届かないのでスクラッチ模型の協力者を探しています。

今年は自転車の本を出すのでその前宣伝。

なぜビルマとソロモンで使おうとしなかったのかの謎も解きました。お楽しみに。


有坂銃 新装版 (光人社NF文庫)


改造自転車をプラモデルで表現してくれる人を探しています。今春の出版企画用に。

 Mike Schuler 記者による2023-12-30記事「Maersk Ship Hit be Missile in the Red Sea」。
  紅海でコンテナ船が1発のミサイルに被弾した。そのミサイルの種類は不明。

 コンテナ船は『Maersk Hangzhou』で、シンガポール国旗を掲げていた
 土曜日の現地時刻午後8時半にやられた。

 負傷者はいない。
 米艦『USS Gravely』『USS Laboon』の2隻が現場にいた。
 『グレーヴリー』は、飛来した2発の「対艦弾道弾」を空中で撃破した。弾道弾の発射地点はイエメンで、発射した下手人はフーシである。

 フネはシンガポールを出港し、エジプトのポートスエズに向かう途中であった。
 「被弾」といっても、乗組員が「閃光」を見たというレベル。

 次。
 J.P. Lawrence 記者による2024-12-31記事「US Navy helicopters sink 3 small boats in Red Sea skirmish, CENTCOM says」。
    『Maersk Hangzhou』はフーシの4杯の小型ボートで近接襲撃されたが、コンテナ船には傭兵が乗っており、火力で撃退したという。

 しかも空母『アイゼンハワー』と駆逐艦『グレイヴリー』からヘリが飛来して、3杯を撃沈。その生存者はいないという。
 先にボートからヘリを銃撃したので、反撃したのだという。
 4杯目は逃走した。

 飛来した2発のミサイルを撃墜したのも『Gravely』であった。
 僚艦『ラブーム』も駆逐艦だが、こっちは迎撃をしてないようだ。

 次。
 ストラテジーペイジ の2023-12-31記事。
   ウクライナはおそまきながら「AQ400」という対都市報復兵器を開発した。
 32kgの爆薬を積んで700km飛ぶ。

 レンジを半分に短縮するなら、爆薬は70kgまで増やせる。
 1機の単価は3万ドル。

 機体はベニヤ板でできている。
 量産はまず月産100機からスタートしたい。
 できるだけ早く、月産1000機にする。

 巡航速度は144km/時。
 滞空6時間半可能。

 ※時間はカネで買うことができない。2014年に侵略を受けた直後から、この機体を開発していれば、いまごろはモスクワを廃墟にできていた。

 次。
 AFPの2023-12-22記事「Russia space agency official held over multi-million euro fraud」。
   ロシア警察は金曜日、ロスコスモスのナンバー2を逮捕した。
 国家予算を430万ユーロも私的にネコババしていた容疑により。

 ※専制国家においては、宇宙開発事業の中抜き工作が特にしやすいのか。中共の火箭軍の親玉が粛清された理由は謎だが、公式説明がすべてだとするなら、ロスコスモスと同じ体質があったのか。

 次。
 Lt Gen. PR Shankar (Retired)記者による2023-12-31記事「China’s ‘Lethal & Shadowy’ PLA SSF Celebrates 8 Years Of Existence; Is Responsible For Beijing’s ‘Info War’」。
   PLAの戦略支援軍は2015-12-31に創設された。陸・海・空&火箭軍と同格。

 何でも「情報化」するセクションらしい。

 全軍と中央の指揮連絡用の通信手段。
 宇宙からのナビゲーション信号も統括する。
 サイバー戦。
 電子戦。
 そして対外宣伝戦。心理戦。政治工作。

 米軍は、空軍と宇宙軍を合体させたが、中共軍はそれには倣わず、宇宙軍の機能をすべて、この戦略支援軍に握らせている。
 対衛星作戦も、ここが仕切っていると思われる。

 戦略支援軍は、非軍事の宇宙開発も仕切っている。

 戦略支援軍の最大のショックが「スターリンク」の出現であった。そこで戦略支援軍は、スターリンクを上回るLEO衛星群を整備しなくてはならないと決意している。

 ※ロシア国内に工場をもっていたわけでもないイーロン・マスクは、「スターリンクをパールハーバーするぞ」とプーチンの寅から脅されただけでその対宇サービス提供を数度にわたって停止した。だったら上海にテスラ車とその電池の巨大工場を抱えている今の立場で、戦略支援軍から「スターリンク」を第三国に利用させるなと脅迫された暁には、マスクは抵抗ができるのか? できるわけがない。

 2021-7に、中共は初めて、ICBMを使って、ハイパーソニック弾を放った。これは米軍が未だやってないテストである。


有坂銃 新装版 (光人社NF文庫)


今月の新刊は、『読解・富国強兵 日清日露から終戦まで』(NF文庫)です。

 正確な発売日は承知していませんが、今月の下旬と思います。潮書房光人新社さんのウェブ広告を、どうかご注目ください。
 内容ですが、これは書き下ろしではありません。2008年刊の『日本の戦争Q&A』の本文に、「文庫版のあとがき」を書き足しました。

 誰にも予言できない未来を占うには、どうしたらいいのか? 《ものごとのはじまり》をおさらいしておくのが有益でしょう。
 しかし今日の出版事情では、明治27~28年の第二次伊藤内閣時代の「日清戦争」について書き下ろすなんていう企画が通るとは思えません。

 さいわい、15年前の単行本がそれをカバーしていました。

 次。
 2023-9-16記事「New company developing sustainable drones in extreme volumes for military applications」。
    1分間に20機のUAVを量産するというとんでもない計画をブチ上げているスタートアップあらわる。
 「ShadowVu」株式会社。
 固定翼機とクォッドコプターの両方をやる。
 部品の85%はサステナブル素材でつくる。
 その、部品の85%以上は自社製とする。

 単価は100ドル以下にして、使い捨てても惜しくないようにする。とうぜん、スウォームのカミカゼ作戦も可能にする。

 1機あたりの製造時間は3分にする。
 年産は1000万機となる。

 いずれも、現状でそれを達成できているメーカーは存在しない。

 次。
 Chen Chuanren 記者による2023-9-14記事「Mysterious Taiwanese Company Reveals Loitering Munition」。
    台湾の、これまでほとんど知られていなかったメーカー「フトロン」社が、「H2B ハヤブサ」という名のロイタリングミュニションを、台北航空宇宙防衛技術エキシビジョンに出展した。なんとエンジンはジェット機関である。

 主翼を畳んで格納しておく構造は「スイッチブレード600」に類似している。
 「H2B」の自重は15kg。弾頭重量は5kg。
 ジェットエンジンの型式は謎。
 もっと静かな飛行機にしたいユーザーのためには、プッシャープロペラ式に換えることもできるそうだ。

 会社のジェネラルマネジャー氏は、フランク・ファンという名。
 彼いわく。H2Bの航続距離は150kmである。滞空は1時間可能。

 衛星と交信するための、フェイズドアレイ・アンテナも備えているという。

 次は「母機」を開発し、そこから6機の「H2B」を空中で放出させる計画だという。

 この企業が謎なのは、ウェブサイトが無いのだ。
 ネット上では2021年に、無人機を開発している会社として紹介されたことがある。

 次。
 Jake Cordell 記者による2023-9-15記事「Russia Raises Interest Rates to 13% Amid Inflation Concerns」。
    ロシアの中央銀行は、金曜日をもって、公定歩合を12%から13%に引き上げた。インフレを抑止するためという。

 中央銀行はインフレ率を4%にしたい。現状では5.5%になっている。

 次。
 2023-9-17記事「To convert the promised Ukraine M1117s, will need another 18 months」。
   2022年の11月に米政府は、州兵が使っていた「M1117」という4×4のAPC(テクストロン社製)を250両、再整備してウクライナにめぐんでやると約束していたが、修理がちっとも進んでおらず、約束の実行まであと18ヵ月かかるそうだ。

 ※つまりこの戦争には間に合わないわけである。ロシアは2024年には力尽きると試算されているから。こんなところに工場労力を割いていたらダメだろう。

 M1117 は「M706」の改造品で、単価は80万ドル。
 銃塔が載っている。それはAAV-P7と類似のもので、フルオートの40ミリ擲弾発射器と、12.7ミリ重機。

 M1117は、重さ13.5トン。長さ6m。幅2.6m。
 エンジンは、カミンズの260馬力。

 次。
 Boyko Nikolov 記者による2023-9-16記事「Russian B-237 Kilo-class sub was hit about the main pressure hull」。
    9月13日に、乾ドック内で破壊された『キロ』級の潜水艦について、エアバス社が市販している民間衛星写真を見たところ、耐圧の内殻を真上から「ストームシャドウ」にブチ抜かれており、この戦争が終るまで、もうこの潜水艦は再生しないと考えられる。

 命中箇所は、セイルより前方である。

 水雷室や電信室もやられたろう。何より、内殻を修理したあと、本当に水圧に耐えるかどうかの実験を重ねた上でなければ、ふたたび作戦に送り出すことはできない。今のロシアには、無理だろう。

 ※ロシアの海軍工廠は、現状、大船を入れられる船渠が皆無と考えられている。極東にはまだあるが、そこを黒海艦隊や北海艦隊は利用できない。浮きドックの大きいやつも、何年か前に沈んでしまった。

 次。
 2023-9-17記事「Kongsberg Maritime’s Promas Propulsion System Now Available for Naval Vessels」。
   コングスベルグ・マリタイム社が、舶用の斬新な推進装置を開発している。「プロマス」と称する。2軸のスクリュープロペラのスピナーキャップ後端に、それぞれラダーがめりこんで一体化しているのだ。これによって軍艦の燃費は5%改善するという。

 通常、2軸プロペラの軍艦のラダーは、スクリュー軸からはオフセットして、ついている。その発想を転換した。「バルブ・ラダー」システムと称する。

 作戦中の軍艦にとって、航続距離が5%延びるのは、大きい。
 いまは25ノットでの抵抗を最小化することに主眼があるが、30ノットでも効果があるはずだ。

 「プロマス」にすると、従来より小さい舵面でも舵の効きが良い。また低速で大きく舵を切ったときの反応も良くなる。ということは、港で接岸するときの作業も楽になる。

 次。
 Joe Saballa 記者による2023-9-15記事「QinetiQ Unveils ‘Jackdaw’ Disposable Drone」。
    英国のメーカー「クインティQ」社が、「ジャックドー」と名づけた、安価に使い捨てできるジェットエンジン推進の無人機を完成しつつある。2020年代なかばに売り出す。

 最高時速は740km/時。
 滞空は3時間以上も可能。

 ※どうやら、高性能のターゲット・ドローンを開発していて、その副産物として、この簡略化製品が飛び出したようだ。

 ※宇軍情報部によるとカディロフ(山羊髭ブヒ男)の病気は腎臓疾患だとのこと。

 ※ドネツク州の Svitlodarsk にある露軍駐屯地に、宇軍のJDAM滑空爆弾が2発、着弾した。これは露軍のAAが薄くなっていることを示唆している。

 ※雑報によると、イルクーツクにあるDulisma石油会社の施設を、謎のPMCがヘリボーンしてきて占領したという。自動火器を乱射して従業員を追い払った。武装グループは黒ずくめのいでたちだがヘルメットを被っていない。軽油が密輸出される前に現物を押さえたいのか?


読解・富国強兵 日清日露から終戦まで (光人社NF文庫 ひ 1330)


兵頭本新刊(復刊)情報『読解・富国強兵 日清日露から終戦まで』(管理人U)

 お世話になっております。兵頭ファンサイト管理人です。

 2023年9月25日発刊の兵頭本『読解・富国強兵 日清日露から終戦まで(兵頭二十八 著/光人社NF文庫)』  

 内容は『日本の戦争Q&A(2007/12)』の復刊との事です。

 私はもちろん買いますよ。兵頭マニアだから。

 まだまだ暑いですね。皆様、ご自愛ください。


読解・富国強兵 日清日露から終戦まで (光人社NF文庫 ひ 1330)


YggDoreのチップを贈る機能は2023年9月24日に停止となるそうです。(管理人U)

 お世話になっております。兵頭ファンサイト管理人です。
 
 いままでYggDore(ユグドア)という素晴らしいサービスを通じて、兵頭二十八先生へのご喜捨をいただいておりました。
 2023年9月24日をもってチップを贈る機能が停止されるそうです。

※YggDore 注文受付終了について

 私が言うのも違うかもしれませんが、これまでありがとうございました。

 私としてはNoteのサポート機能などで兵頭二十八先生へのご喜捨を続けていただけたら嬉しいです。

(管理人U) 


『緊急護身術: 無差別殺人者の後ろをとったとき、あなたが社会のために考えること/兵頭二十八 著』がセール品になりました。(管理人U)

 お世話になっております。

 当サイト発のKindle本『緊急護身術: 無差別殺人者の後ろをとったとき、あなたが社会のために考えること/兵頭二十八 著』。

 いまなら140円と大変お買い求めやすくなっております。
 ただKindle Unlimitedでも読めます。
 よろしくお願いします。

(管理人U)



緊急護身術: 無差別殺人者の後ろをとったとき、あなたが社会のために考えること


露軍が捕虜にしたウクライナ兵をポケットナイフで「去勢」した事例が複数、確認されている。捕虜交換で判明した。英紙『The Sunday Times』が詳細報道。

 Ashish Dangwal 記者による2023-6-18記事「Running Away, Faking Breakdowns, German Media Says Leopard-2 Tankmen Are Reluctant To Fight Russia」。
   『シュピーゲル』誌の報ずるところによると、ザポリッジア戦区にて宇軍の「レオ2A6」のクルーが、露軍の塹壕線に近づくのを厭がり、「故障」「被弾」を詐称して逃げ回っているという。

 また、戦車で敵の塹壕線を攻撃するときのテクニックとして、立ち木に榴弾を当てると良いという。そのシュラプネルが塹壕内にまんべんなく降り注ぐのだという。

 次。
 Boyko Nikolov 記者による2023-6-18記事「Australian Bushmaster IMV survived a ‘Russian kamikaze’ impact test」。
   豪州からウクライナ軍に寄贈された4×4装甲車の「ブッシュマスター」に露軍の自爆型UAVがヒットしたが、乗員は無傷で済み、このAPCの性能が証明された。

 証拠写真は「テレグラム」にUpされた。
 側面の低い部位に命中して爆発したようだ。

 ちなみにオーストラリア軍はこの車両をAPCとは呼ばず、IMV=歩兵移動用車両 と称している。装甲を強調しないわけである。

 「ブッシュマスター」には10人が乗れる(車長とドライバーを含めて)。
 後続距離は800km。最高時速100km/時なので高速道路も不都合なく利用できる。

 ※要人輸送用にこのAPC(輸送防護車)を選んだ防衛省内の人は、誰だか知らないが、威張って可い。そして今気付いたのだが、この14.5トンという重さは、小松の8輪の「96式装輪装甲車」と同じなのな。おそらくC-130での空輸ができるように考えて。それでエンジンを調べたら、ブッシュマスターが300馬力で、96式は360馬力ですよ。これは何を意味するか? おそらくブッシュマスターの方が96式よりも装甲重量に多くを配分できている。窓ガラスが爆圧で外れるという弱点は、今回の写真でハッキリしたけれども、弾片の貫通を防ぐという機能では、96式よりも頼りにできるのかもしれない。96式は日本の山坂での不整地走破力を重視して、エンジンは重く、アクスルも4軸とした分、装甲はペラペラになっているとも想像が可能である。その装甲をもっと強化しろと防衛省から迫られ、小松は「できるわけねえだろ」と逆ギレしたのか。小松が装甲車事業から撤収してしまった経緯は、そういうことか?

 次。
 Boyko Nikolov 記者による2023-6-17記事「US attack sub that shipwrecked off China cannot enter for repairs」。
    南シナ海で海底の山に衝突してしまった米SSNの『コネチカット』。たった3隻しかない『シーウルフ』級の1隻だ。
 しかし、なんと修理は2026年までできないそうである。ひとつには、修理コストが8000万ドルと見積もられ、そのカネをおいそれと得られないためだが、根底には、造船所が人手不足。

 『コネチカット』を修理する予定なのは、ワシントン州の海軍工廠の修船ドック。ほんらいなら今年2月に工事がスタートするはずのところ、スケジュールが遅れている。これはすべての米海軍艦艇が今、直面させられている大問題である。「レディネス」が全般に悪化している。

 ※それで日本の民間造船所を第七艦隊がフル活用しろという話が出てきている。やればいいじゃん。

 次。
 2007-8-22記事「ScanEagle ―― Mini-UAV (Unmanned Aerial Vehicle)」。
  ※古い記事です。

 偵察用UAVの「スキャンイーグル」は、艦船上から運用することもできるし、2006年時点で早くも、C-130やオスプレイから空中発射することが研究されている。これは、エンジンがガソリンでないから、可能なのである。スキャンイーグルのピストンエンジンは「JP5」という、米海軍機用の最も火災を起こしにくい灯油系のジェット燃料を使用する。

 スキャンイーグルのエンジンは内燃機関である。出力は0.97kW。機体内には燃料は4.3kg、搭載する。
 2002年の開発当初はガソリンエンジンであった。しかし2007年には燃料が「JP5」に切り替えられた。※これはインジェクションの電子制御技術が普及してきたおかげ。

 ガソリン燃料でスキャンイーグルは連続22時間飛ぶことができる。しかし2007年にはJP5で28時間44分滞空してみせた。

 ※米海軍は、艦艇と艦艇の間でスペアパーツを輸送してくれる無人機を公募しているが、そのエンジンもとうぜんに、JP5を燃料とするものでなくてはならない。今日の米海軍は、ガソリン燃料が艦内に置かれることを拒絶する。その理由はWWII中の幾多の被弾火災を想起すれば当然なのである。したがって、わが国のメーカーが新無人兵器を開発する場合、そのエンジンがガソリン燃料であったなら、それは米軍にはさいしょから採用されるわけがないことはもちろん、米海軍の艦艇や輸送機で運んでもらうこともできないということを意味してしまうのである。

 ※4月に並木書房から刊行された『武装商船「報国丸」の生涯』(森永孝昭氏著)は、読みでのあるおそろしい労作で、改めて学べることに満ちている。戦後78年を閲し、わが国の兵器メーカーは、実戦の被弾損害を暗黙知としてもちあわせなくなった。そこは是非、戦後日本人の開発関係者としては、先の大戦の経験をデータ化することで、埋め合わせるしかないんだという自覚をもつべきなのだが、遺憾千万にも、その自覚が希薄なのである。もしその自覚があるなら、被弾すれば悲惨な結果になるのは必定の《欠陥兵器》がず~っと改修もされないで、用途廃止の日が来るまで放置されるなんてこともあり得ないのである。いったん「正式の制式」と決めてしまった「仕様」を後から修正できないという文化的な病気がわが国の風土病としてあるのならば、なおさら、「正式の制式」を決めてしまう前に、「先の大戦の経験データ」を「悪魔の論駁人」とする想像力が発揮されなくてはならない。1万439トンもあった優秀な武装商船(特設巡洋艦)の『報国丸』は、6341トンの空荷のタンカー『オンディナ』号を拿捕しようとして不用意に近づきすぎ、敵船の船尾に1門だけあった10.2センチ砲を1発喰らった。それで搭載の零式水偵のガソリンが火を発した。その水偵の搭載爆弾と中層甲板貯蔵の魚雷(味方潜水艦に補給する予定のもの)が火災の熱で相次いで誘爆。『報国丸』はインド洋で沈没した。これが、世界の水兵がガソリンを嫌う理由である。昔と違って、インジェクション方式とすればピストンエンジンを回すのにもJP5やJP8が使えるようになっているのに、今日の艦艇内に、わざわざガソリン発動機を置きたがる海軍は、どこにもない。

 ※昨日の八雲の5人死亡事故。意外だったのは、すぐ隣を高速道路が通っているのに、札幌からのバスがわざわざ下の国道を走っていたことだった。ネット情報によると、八雲ICから下の道に下りて函館までずっと国道5号線を来るらしい。これは運転士にはたいへんなストレスだ。八雲や森町で下車する利用客もいるために、そうするのだろう。だがもし私がバス運行会社の経営者なら、安全第一に運転士の心身疲労のことを考えて、むしろ長万部ICで下みちに降りるようにさせる。そこから八雲までは国道5号線をゆるゆると南下させ(広い直線道路で、景観に開放感があり、渋滞は無く、運転ストレスがとても低い)、八雲ICから再び高速へ乗せるのだ。悪いが、森町に用のある乗客は八雲で路線バスに乗り換えてもらう(八雲ICのバス停は観光施設内にあり、待っていて退屈しない)。都市間バスの運転士にとっては、長万部~八雲の地上区間が、走りながらの気分転換タイムとなるはずだ。そして都市間バスは、八雲からは高速道路終端の大沼公園ICまで、高速道路をノンストップでスイスイと走るべきである。なぜそうするのが良いか。国道5号の野田生から函館市街手前までの区間は、カーブの狭い山道や、渋滞しがちな海岸道が連続し、ひるまの乗客は面白いだろうけれども、操縦者はどうにも精神的に楽じゃないのである。おまけに札幌方面から走り続けてくれば、身体疲労もそこらへんでピークに達してしまう。今回の事故は、バス運転士の疲労とは無関係と考えられるものの、会社の経営者は、もはやそこは無視すべきではないと信ずる。もうひとつ、こんかい再確認できる大事なこと。激しい衝突事故であったにもかかわらず、燃料の火災は起きなかった。バスもトラックもディーゼルエンジンであったおかげで、さらに悲惨な事態に発展することが、抑制されているのです。



武装商船「報国丸」の生涯


雑報によると、露軍はドニプロ川南岸のタヴリスクの取水設備をみずから破壊し、これによってクリミア半島へ飲用水を送る水道本管の機能が止まった可能性がある。

 昭和17年のシンガポール攻略では「上水水源」施設の破壊/占領が、敵降伏の契機になった。その送水本管の破壊は、じつはジョホール水道の北側でもできたので、後知恵では、もっと早くこいつを挺進隊で爆破してしまえば、英軍の降伏もさらに早まったろう――と考えられたのである。将兵、軍馬、車両、航空機、艦船、すべて「真水」を必要とする。加えて狭いシンガポールには「避難住民」がおびただしく流入していたから、上水の供給が止まったなら、もはや守備軍司令官も総督も、1日で抵抗を諦めるしかなかったのだ。

 次。
 2023-6-5記事「Radio Waves Air Fake Putin ‘State of Emergency’ Address」。
    月曜日、ロシア本国の複数の地域――ベルゴロド、ヴォロネジ、ロストフ――でラジオ電波がジャックされ、プーチンの偽演説がON-Airされた。
 AI合成音声が、これらの地域の住民たち全員に、ただちにロシアの奥地への退避を命じた。
 さらにフェイク音声は、クルスク、ベルゴロド、ブリヤンスクがウクライナ軍の攻撃を受けているとして、「国家非常事態」を宣言した。
 演説のしめくくりは、国家総動員の呼号であった。

 次。
 並木書房さんから、James Johnson 氏著、2021年pub.『Artificial Intelligence and The Future of Warfare』の全訳が出た。邦題『ヒトは軍用AIを使いこなせるか』(2020円+税)。
 2022-4-24以降、ロシア人は嘘しかつかないということを世界の人々は認識しつつあるが、そういう認識がまだ一般的でなかった2021時点での、学究的にまじめな整理本だ。たとえば本書が書かれた時点で、ロシアは2025年までに戦力の3割をロボット化するだろうなどとフカしていた。そしてカラシニコフ社はすごいロボット兵器をいくつも開発しつつあると宣伝していた。全部嘘であった。実戦のおかげで嘘がバレて真実が見えている。まったく同じことは近未来の中共に対してもあてはまるだろう。今、中共との実戦をしていないのに、中共発の嘘ばかり聞かされながら論ずるAIとやらに、深刻に対応しようとするとガッカリするだろう。
 ちなみに著者は脚注の中で「プロスペクト理論」にかんする2017文献を読んでいることを明かしているが、本文中ではプロスペクト理論は紹介されていない。
 有意義な指摘がいくつかあった。A.T.マハンは1912の「Armaments and Arbitration」の中で「武力は存在していても、誇示しなければ効力をもたない」と言っているそうである。これはまさにもっかの米支関係にあてはまる。年に一回か二回、実弾を使った小競り合いをするようにして、米軍の実力を平時から天下によく見せ付けておかないと、敵は自己宣伝に中毒して増長し、今次ウクライナ侵略のような愚劣な自殺戦略が発動されぬとも限らない。嘘しかつかないロシア人や儒教圏人に対しては、常にその軍事的な「面子」をリアルに潰し続けることが、世界の安定と安全につながるのである。
 AIを搭載したドローンが滑走路上の軍用機のエアインテイクに異物を撒くようになったらF-35も安心できないだろうという指摘をした者が2017年にいたことも本書の脚注で分かった。しかるに2023の今になってもその単純なAIができたという報道はない。
 余談だが、オートバイの後輪のトラクション・スリップを検知してスロットルを調節するAIは一部のバイクに実装されている。だがAIを使って「転ばぬ先に姿勢を立て直すバイク」を作った企業はどこにもない。誰もが発想するはずなのに。どうして?
 今次戦争でも、大砲の照準とじっさいの弾着点の座標誤差を、ドローンからフィードバックされた画像をデータ化してAIに取り込んでやれば、1門1門の大砲ごとに、砲身の「癖」が把握されて、磨耗した砲身や性能の一定しない弾薬を使っても、確率論的に命中精度を倍増できるだろうと思うのだが、どこの軍隊もそれを工夫している様子がない。「使いこなす」前の発想が貧弱すぎやしないか。何をやってるんだという感じだ。

 次。
 Jon Jackson 記者による2023-6-5記事「Russia’s Reliance on Trenches Leaves Troops Vulnerable」。
    衛星写真でわかるのだが、ドンバスの露軍は徹底的に塹壕線を拡張することで宇軍のこれからの反攻に耐え忍ぶように訓示されていると思しい。

 ショイグは徴兵8万7000人〔例によってこの数字は「化粧数」である〕をウクライナ国内に展開させていると発表している。

 しかし米軍専門家は、素人兵×塹壕線の組み合わせでは、とうていロシア軍は持ち堪ることはできないだろうと語っている。

 ※皮肉にも、都市を破壊してサラ地に変えてしまったおかげで、こんどは露軍が守りに入るときには、荒涼とした原野に塹壕線を掘らなくてはいけなくなったわけである。

 ※SNS情報によると、ベルゴロド方面で露領へ侵入している反モスクワ部隊――私はその正体は東欧正規軍の特殊部隊だと疑っているが――の侵入路は、前もって周到に準備された「地下トンネル」である。おそらく歩兵1名が通れるだけの狭いトンネル。その出口は、ちょうど映画の『大脱走』のような目立たなさになっている。国境の下で、ものすごい長さのトンネルを掘り進めていたのだ。

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 Tyler Totten 記者による2023-6-5記事「U.S. Navy Should Pursue Commercial Containerships」。
   民間で使われているコンテナ船、ならびに、Ro-Ro船だが同時にコンテナも積載する「ConRo」船を、そのまま米海軍でも使おうという計画あり。

 海軍専用の輸送艦や補給艦に比べて格安だから、隻数をたくさん調達できる。したがって、戦時の輸送需要の爆伸に対応しやすい。

 コンテナ船はふつう、自前のクレーンを持っていない。しかし、そういうクレーンを備えた特別なコンテナ船ができてもいいだろう。

 自前で荷捌きができる「ConRo」船仕様なら、何の埠頭設備もない素の海岸に、単船で横付けしてコンテナやトラックを吐き出せる。

 米海軍が2013年に発注した2隻の『アロハ』級コンテナ輸送艦。1隻の建造費は今の価値にして2億5000万ドルほどであった。

 ※先の大戦で日本の輸送船が舐めさせられた苦汁。これを繰り返さないための新機軸を戦後日本の造船業界が打ち出せていないのは、情け無い限りだ。軍用のコンテナは、水密でなくてはならない。そいつを舷側から海中に放り込んでも、決してぶくぶくとは沈まない。ほんのわずか、水面に浮いているようにする。その状態で離島のビーチからワイヤーウインチでたぐりよせられるようにする。さらには、この半没コンテナを直列に数珠繋ぎにして、それを航洋タグで引っ張る。低速でよければ、少ない抵抗しか発生しないはずだ。

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 Joseph Trevithick 記者による2023-6-5記事「Marines Betting Big On “Critical” Air-Launched Swarming Drones」。
    米海兵隊は、空中から放出できるロイタリングミュニションのスウォームを考えている。
 プラットフォームは、KC-130Jのみならず、MV-22Bオスプレイ、F-35B戦闘機も。

 戦場がイラクやアフガニスタンだったら、海兵隊のAH-1から、射程8kmのヘルファイア・ミサイルを発射すれば事は足りた。
 しかし戦場が南シナ海となったら、もうそんな距離感では話にならないのだ。ミサイルは最低でもLRAM=ロングレンジアタックミュニション でなくてはいけない。※具体的には例えばイスラエルのUVision社が多種提案している十字翼の「HERO」シリーズ。露軍の「ランセット」はこの技術をイスラエル人が売ったものと疑える。

 島嶼の陸上から対艦ミサイルを発射しようという米海兵隊の「NMESIS」構想もすごい。上陸用舟艇から無人のJLTVを砂浜に上陸させる。そのJLTVは2発の地対艦ミサイルを背負っている。JLTVには「運転室」が初めから無い。

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 Mike Ball 記者による2023-6-6記事「New Variable-Pitch Propeller System for Multirotor Drones」。
   「T-モーター」社は、マルチローター機のための、あたらしいヴァリアブル・ピッチ・プロペラーを開発したという。

 4軸以上あるマルチコプターのローターは、基本的に、固定ピッチ・プロペラーである。
 しかし離陸重量を欲張り、ホバリング時のエネルギー節約をしたければ、マルチコプターも可変ピッチプロペラにするしかないのだ。

 ドローンが低空を飛ぶのと、空気が薄い高空を飛ぶのとでは、プロペラピッチは変えるべきである。それを固定ピッチで押し通そうとすれば、効率は犠牲になるのだ。



ヒトは軍用AIを使いこなせるか


最新の★《続・読書余論》は、Jim Fitzpatrick 著『The Bicycle in Wartime』1998初版・ほか です。

 岩畔豪雄と辻政信のマレー戦回想×2、それから戦史叢書の『マレー進攻作戦』中の自転車関連記述も併せて摘録し、それ以外に、戦前~戦中の国内の自転車生産統計等も抜粋しました。
 旧軍がもし自転車をフルに利用していたらどうなっていたかを考えるための基礎資料が、あらまし、揃ったと思います。

 ご興味ある方は 《note》 https://note.com/187326mg/  をご覧ください。

 私は、自動二輪車には、まだ未開拓の「形態」が複数あると思っています。そこへ飛躍的に進化させたいと思ったなら、げんざいすでに進化の袋小路に逢着しつつある、最新式の自動二輪車をベースに考えていては、埒はあかない。

 こういうときには、「進化の階梯」を、何段階か、後戻りさせて、その原初的な形態から、こんどは人為的な実験のくりかえしによって、ふたたび進化をやりなおさせるのが、よいのです。
 私流のその提案は、いずれ、本に書くつもりですが、ちょっとみなさんもイメージしてみてください。

 オートバイの祖先は自転車です。その自転車のはじまりは1817年です。そこまで遡っても、たかだか2世紀。その2世紀の間に、消えたアイディア、消えた形態が、無数にあります。しかしそれらは、現代の技術をあらためて適用してみるならば、思いもよらなかった大きなブレイクスルーにつながるかもしれませんよ。

 ところで、ベトナムの軍用自転車に関しては決定版文献と想像されたフィッツパトリック本、私はアマゾンを通じて海外に初版本の安い古書を発注したのですが、届くのが遅くてやきもきしました。予告の期日を過ぎても届かないので思い余ってちょっと高額なリプリント版(新刊価格)も発注してしまった。
 比較しましたところ、挿絵写真の質がコピー劣化している、残念な出来です。原書にご関心のある方には、やはり初版本の調達をお勧めします。この本の写真はとても貴重ですので……。

 なお小生の手元に、読まれずに余ったリプリント版は、日本国内ではたぶん収蔵機関がないだろうと思われますので、後日、靖國偕行文庫、もしくは他の適当な公共図書館に寄贈するつもりです。

 あと《note》の仕様が、いつのまにか、変わっているようなので驚きました。たとえば、いままで段落頭の1字下ゲは、問答無用で消えてしまっていたのに、それが反映されるようになっている。そこは歓迎できるのですが、どうもAIが内容を検閲し始めたんじゃないかという節がある。AIがネットの書き込みを検閲する時代が日本にも到来していたのか? もし、そんな方向に進むのならば、私には居心地の悪いプラットフォームになってしまうという悪い予感がします。

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 Joseph Trevithick 記者による2023-5-18記事「Leaked U.S. Report Says Basic F-16 Training For Ukrainian Pilots Could Take Just Four Months」。
    ヤフーニュースがすっぱぬいた。米空軍の「ベースライン・パイロット評価」報告書だ。これはウクライナから派遣された2人の操縦者をこの春、ためしに教練してみた結論も含む。

 その報告書は、以下の国々の関係者にも開示された。すなわち、ベルギー、ブルガリア、デンマーク、英国、ノルウェー、ポーランド、ポルトガル、ルーマニア、オランダ。
 以上のうち、英国をのぞくと、皆、F-16の使用国/使用予定国である。

 ウクライナから来た2人についてもすでにいろいろ分かっている。1人はスホイ27乗りの大尉。もうひとりは、ミグ29乗りの少佐だ。

 アリゾナ州兵空軍「第162ウイング」の、3名の少佐教官(F-16で1500時間以上飛行)と、1名の中佐教官(F-16で2600時間飛行)が、評価を下した。その結論。

 シミュレーターにて、F-16のエンジンが止まってしまった状態での着陸をさせてみたが、彼らはそれができた。

 シミュレーターにて、低空飛行をさせてみたが、その技倆は平均以上であると認められた。

 この人たちは4ヵ月以内の訓練でF-16を任せられる。すなわち、8週間にて機種転換を習熟、ついで2週間にて低レベルのステップダウン訓練〔すまん、意味不明〕、さらに3週間にて空対空戦闘を覚えられる。

 空対空戦闘は、具体的には、2機1組の邀撃で、有視界内でAMRAAMとサイドワインダーを使う。そこまでできるようになる。

 唯一の不安が英語スキル。ディスプレイ表示も、器材の刻印言語も、すべて英語なので。
 ※キリル文字体系がなまじいにアルファベットであるがゆえの混乱が、咄嗟の場合に、あり得る。CなのかSなのか、どっちなんだ、とか。

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 『NYT』の2023-5-19記事「U.S. Will Support F-16 Training for Ukraine」。
    F-16の乗員の訓練は、欧州にて、実施される。これをバイデン政権は決めた。

 その戦闘機をどの国が具体的に宇軍へ与えるのかは、決まっていない。

 もし欧州のNATO加盟国が、保有するF-16を宇軍へ与えるのであれば、米政府の事前許可が必要。その許可についてバイデン政権は、与えると公言した。これが今の段階。

 アエロフロートは部品を得ている。UAEおよび中共からの迂回ルートでスペアパーツを調達しているのだ。これを米国政府は許せないと思っており、制裁の網を強化するつもり。

 ロシアは、小粒のダイヤモンドの輸出国として世界最大だが、米国はこれも潰すつもり。ちなみに2021年のロシア産ダイヤモンドの輸出額は45億ドル。デカい。化石燃料の次くらいに稼いでいる。

 フォルクスワーゲン社は、ロシアのカルーガにある生産工場を売却したと、金曜日に公表。地元の自動車ディーラー企業「Avilon」が買い取ったという。ロシアメディアによると、買取金額は1億2500万ユーロほど。工場は今次侵略開始後、操業をストップしていた。

 なおメルセデスベンツ社は先月、ロシア支社と同国内の組み立て工場の売却を完了した。売り先はロシアの投資会社「Avtodom」。

 2007年にカルーガ工場を建設するときにVW社が使ったカネは7億7400万ユーロ。
 操業停止前の製造能力は 22万5000台/年 であった。

 VW社はニジニノヴゴロドにも工場を開いていた。そちらはロシアの「ガス・グループ」に売却されている。

 VW社は、カルーガ工場の従業員4000人に、去年ずっと、給与を払い続けていた。まさに大損失。
 ロシア政府統計によると、2021年に同国内では、30万人が、自動車メーカーに雇用されていた。またその裾野産業では350万人の雇用があった。
 この自動車製造業が一挙に77%、落ち込んでいる。西側資本が一斉にロシアから手を引いたので。

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 Karen Freifeld 記者による2023-5-20記事「From sunglasses to milking machines, US halts more exports to Russia」。
   バイデン政権は金曜日、広範囲の民生品の対露輸出を禁じ、さらに71のロシア企業をブラックリストに載せた。

 たとえば、コンタクトレンズやサングラスも、これからは対露輸出が許されなくなる。

 ブラックリストに載った企業は、露軍を支援していると認定された。よって何人も米政府の許可なくその企業と取引をしてはならない。


兵頭二十八 note

★《続・読書余論》Jim Fitzpatrick 著『The Bicycle in Wartime』1998初版・ほか