Michael Elleman 記者による2019-10-9記事「North Korea’s New Short-Range Missiles: A Technical Evaluation」。
結論。3種類の短距離地対地ミサイルKN-23/24/25は、いずれもさらなる発射実験が必要。そのテスト回数を見ていれば、北鮮の「狙い」も読める。
20回ほど繰り返すようなら、それは短射程SSMによる敵軍相手の打撃能力を持ちたいからだ。
テスト20回未満で新SSM群を実戦配備するなら、彼らは敵の軍隊相手に必要になる命中精度についてはまったく妥協したことになる。命中精度が悪いSSMは、実戦では、1目標に対してやたら多数を発射しなくてはならない。対都市攻撃の役にしかたたないのだ。
おそらく北鮮は液燃式のレンジ300kmの「火星5=スカッドB」とレンジ500kmの「火星6=スカッドC」を、固体燃料式SSMで更新することを望んでいる。それは発射シークェンスが短いことでも有利。
米国の調べ。KN-21はレンジ250km。KN-18は450kmだろう。
KN-02トクサは、ソ連のSS-21「トチュカ」に似ている。レンジは大きく見積もって120kmか。固体燃料。
20回も飛翔テストをしているから、命中精度については北鮮軍は納得したのだろう。
KN-23はイスカンデルもどきだ。420kmは飛ぶだろう。ポテンシャルとしては600kmくらい。
KN-24は、ATACMSもどき。すでに実射で400km飛ばしてみせた。
KN-25は径45センチ弱の多連装ロケット弾で、レンジ380kmを実証済み。GPS誘導される。
KN-09は、径30センチの多連装ロケットで、レンジ250km。
KN-23からKN-09までは、すべて、弾道の最高点が50kmを越えない。これは、大気の抵抗を利用して空力フィンによってコースを変えることを可能にする。
落下中にGPSによってコースを自己修正できる場合、半数必中半径CEPは100mまで縮まると期待できる。GPSを利用できず、INSだけで自己修正する場合でも、CEPは200m以下を期待できる。
地上の硬化目標を破壊するには、500kgの弾頭が、距離20m以内で炸裂する必要がある。
地上に暴露している航空機を破壊するには、500kgの弾頭が、距離60mで炸裂する必要がある。
もし弾頭重量を1トンにできるなら、硬化目標は距離25mで、暴露航空機は距離70mで破壊できる。
この関係を数式的に言い表せば、単弾頭の重量を8乗に増やしたときに、やっと、必殺半径を2倍にできるのである。
すなわち、砲弾や、地対地ミサイルの単弾頭を重くしていく努力をするよりも、軽い弾頭の地対地ミサイルの精度を高める努力をした方が、ずっと、軍事資源は節約できるというわけだ。
新顔の北鮮ミサイルの弾頭重量のデータは得られていない。推定では250kgから500kgの間だ。
もしある単弾頭の破壊殺傷半径がCEPに等しいならば、破壊殺傷期待率は0.5である。すなわち50%である。
もしある単弾頭の破壊殺傷半径がCEPの2倍であったならば、破壊殺傷期待率は0.94になる。
スカッドB=火星5の弾頭重量は1トン。CEPは750mから1000mであった。このレベルの精度の地対地ミサイルでは、何か特定の軍事目標を破壊できると期待することはできないことが、わかるたろう。
だからロシアはイスカンデルMをつくった。
北鮮はこれを模倣することで、破壊殺傷期待率が0.5(すなわちCEPと破壊殺傷半径がイコール)から0.9(すなわち弾頭威力=破壊殺傷半径がCEPの2倍ある)のミサイルを獲得したがっているはずだ。
KN-23/24は、400~500kgの単弾頭か、数百発のクラスター子爆弾を運搬するのだろう。
その破壊殺傷期待半径はだいたい50mから100mである。
KN-09/25の弾頭はKN-23/24の半分くらいだろう。ところが、弾頭重量が半分になっても、もし精度が等しければ、破壊殺傷期待率は、2割しか減じないのだ。
もし1発の地対地ミサイルでの目標破壊期待率を90%に高めたかったら、そのミサイルのCEPは25m未満にせねばならない。
それには最低限、GPS誘導と弾頭センサーによる終末ホーミング装置が不可欠である。
あるSSMの弾頭が特定目標を破壊するのに必要な炸裂距離が、そのミサイルのCEPの半分であった場合、90%の期待率でその特定目標を破壊したければ、同一座標に対して13発のミサイルを発射しなければならない。
北鮮にはCEP40mを実現する技術はない。200mで妥協するしかないだろう。すると、1軍事目標の破壊には、最新型ミサイルが10発必要だ。
これを覚えておけば、近未来の脅威を読み間違えることはないだろう。スカッド・レベルの旧式ミサイルは、都市攻撃以外には、無意味である。
KN-02は20回の実射テストでようやく精度面での納得が得られた。
20回未満の実射テストしかやってない北鮮の新顔ミサイルは、CEPを期待されていないか、未完成品である。
カテゴリー: 兵頭二十八の放送形式
新刊の発売は今月下旬に。早まりました。
戦国合戦を見る目がガラリと変わりますので、ご期待ください。
タイトルは『武器が語る日本史』の予定。
兵器の進化論の新説を提示しています。
次。
Michael Schwirtz 記者による記事「Top Secret Russian Unit Seeks to Destabilize Europe, Security Officials Say」。
ロシアの政治撹乱工作部隊「ユニット29155」は10年以上前からの活動暦がある。欧州における暗殺を含む政情撹乱工作は、このユニットの一元的なプランニングのもとに実行されている。
このユニットそのものがGRUの下にある。
2016年の米大統領選挙にはインターネット工作によって介入した。クリントン陣営のサーバーにハッキング侵入したのは、「26165」部隊と「74455」部隊であった。
2016年のモンテネグロのクーデターで首相を殺したのもGRU下の工作部隊である。
次。
Joseph Votel、Elizabeth Dent 記者による2019-10-8記事「The Danger of Abandoning Our Partners」。
シリア北東部からの米軍撤収は、同盟国に何の相談もせず、米軍上層にも謀ることなく、ホワイトハウスが決定した。
※だから何だってんだ。50人の特殊部隊だぞ。
北鮮漁船に大和堆で勝手に密漁させている現状は、日本政府が北鮮に軍資金を与えているに等しい。その怠慢は「国連決議違反」であろう。
JOHN VANDIVER 記者による2019-10-8記事「Lawmaker sounds alarm over possible US withdrawal from Open Skies Treaty」。
オープンスカイ条約は2002に34カ国間で結ばれている。
ところがロシアはカリニングラード上空を飛ばれるのを勝手に制限。
米国も対抗して米本土の一部上空の飛行を拒否している。
次。
Todd South 記者による記事「The plan to give soldiers a day’s worth of MREs in one ration. Seven days of food weighing less than 10 pounds」。
いま米陸軍の歩兵の1週間分の携行糧食は、重さ32ポンド=14.5kg。
これを10ポンドまで軽量化する研究が進んでいる。
基本技術は真空電磁圧縮。フリーズドライと違って冷やさないし、完全には乾燥させない。真空空間でマイクロウェーブを当てて食物を圧縮すると、最低限の水気は、中に残されるのである。
次。
ストラテジーペイジの2019-10-8記事。
モスクワ市議会議員選挙の腐敗。
ユーチューブにデモ行進のライブをUpすると警察がそれを削除する。
イドリブ地方の反政府ゲリラはトルコが後援している。
SDF(シリアのクルド人)はアメリカが支援している。
アサドは地中海沿いのラタキア地方を支配している。そこはシーア派が濃い。だからイランが兵隊の給料を肩代わりしてやっている。ラタキアには露軍基地も点在。
アサドはイランにもトルコにも出て行って欲しいが、それを口にはできない。
シリア東部でのSDFとトルコ軍の対決気運は1月から高まり始めた。たがいに部隊を集めて交戦準備態勢を進めている。
トルコは、進攻すれば必勝なのだが、フリーハンドではない。国内で、対シリア外征が不人気なのだ。そんなところでトルコ兵は死ぬべきではないと有権者は思っている。だからトルコ政府は、シリア内にFSAという傀儡ゲリラ勢力を育成し、FSAをして対クルド戦争の矢面に立たしめている。
ロシアが大量の自動小銃を無料で中央アフリカ共和国にプレゼントした。
侵略国ロシアは、国連制裁を受けており、その一環として、国際銀行間決済システムSWIFTの利用をブロックされている。
しょうがないのでロシア政府は、独自にSPFSという代替システムを構築した。これに参入している国は3つだけ。ロシア、イラン、中共だ。
9月28日、ロシアがシリアから飛ばした偵察用UAVを、トルコ空軍のF-16がトルコ領空上で撃墜した。2015年にも同様事件あり。UAVはウクライナ戦線で2014から使っているタイプだ。
ロシアの鼠輸送。9-27に衛星写真が捉えた。2隻のキロ級潜水艦がシリアのタルトゥス港に入っているのを。こっそりと、荷物運びをしているらしい。
F-117は52機が残っており、いまだにちょくちょく駆り出されている。
2008~2016にはシリア方面に出張して、空爆後の戦果確認偵察をしていた。
また米本土では、敵国のステルス攻撃機の仮装役として飛ぶこともある。
次。
Karen Hao 記者による記事「The US just blacklisted 8 Chinese AI firms. It could be what China’s AI industry needs」。
中共の監視ビデオメーカーの「Hikvision」、人の声を識別するAIのメーカー「iFlytek」、顔認識AI企業の「Megvii」および「SenseTime」、ロボットのための顔識別と音声認識の技術企業「Yitu」など8社のAI関連シナ企業が、米政府のブラックリストに載せられた。
これらの企業と取引きを続ける西側企業も、米政府からの制裁対象になる。
中共はAI構築に必要なグラフィック・プロセッサのチップを90%、国外からの輸入に頼っている。米国には「Nvidia」社の製品がある。これらのチップが中共に供給されないようにして行くことが、世界人民の人権を擁護する道につながる。
公船は頑丈に造っておけば、よいことがあるよね。
CHRISTOPHER DENNIS 記者による2019-10-7記事「British family calls for return of American diplomat’s wife suspected of killing teen」。
ロンドンから北東へ車で1時間半のところにある英空軍クラウトン基地は、オスクフォードに近い。じつは米空軍が通信傍受をやっているところで、米国務省の被用者や出張者も大勢所在する。
この基地城下町で8月、19歳の住民の少年が自動車に衝突されて殺された。
運転していた犯人は42歳のA.N.(♀)である。
女は英国にやってきて3週間目で、事故のあと車外に出て自分の罪を認めていたという。どうやら右側走行していて、真正面からぶつかったらしい。
しかし女の弁護士が外交官特権を主張したので、ノーサンプトンシャー警察は立件を諦めた。
女とその一家は、飛行機で米本土に逃げ去ってしまった。
少年の両親は、犯人が英国内の法の裁きを受けることを望んでいる。
※少年もなんらかの車両を運転していたのかどうかはこの記事からは分からないが、ヘッドオンと書いてあるので可能性あり。しかし『スターズアンドストライプス』編集部のレベルはこんな程度なのかよ? 欧州版が配信されない他地域読者のために、基本事実をまず紹介すれや。事故の日時もスルーだし、学級新聞?
次。
ストラテジーペイジの2019-10-7記事。
5月の豪州の国政選挙の前に、中共の公安部が、大規模なインターネット輿論工作を豪州住民に対して展開していたというリポートの詳細がリークされた。
工作努力のピークは投票日の3ヵ月前に設定されていた。
次。
Angela Chen 記者による記事「Forget fake news?nearly all deepfakes are being made for porn」。
ディープトレースという、合成メディアを見破る会社による調査によれば、いまのところ、選挙工作のために作製されたと思われるようなディープフェイクの数はとるにたらず、ディープフェイク作品の96%は、純然たるエロ目的のポルノ動画であることがわかった。
ディープフェイク動画は2017後半から、ネットにアップロードされ出している。
「ディープフェイク」という用語自体、そもそもポルノ用語だ。ポルノスターの首から下の動画と、セレブ女優の首から上の動画を、AIソフトで合成してみたもののことだった。
ザッカーバーグに偽のムチャクチャなスピーチをさせるといった、政治的に悪質なAI加工動画が散見されるようになったのは、こうしたポルノ動画の流行より後である。
それを見た人々が《これって選挙戦の怪文書として使えるんじゃね?》と気づいた。
ディープフェイクの女優版、女性歌手版は、ユーチューブにUpされてもすぐに削除される。だから、現在ユーチューブに残っているのは、すべて男性のものだ。
それはネット全体の割合を反映していない。
趨勢として、ブィープフェイク投稿の数は加速度的に増えつつある。
加州のニューソン知事はこのたび、選挙の2ヵ月前までの期間において政治家の顔素材を加工したディープフェイクの製作および公開を禁ずる法令に署名した。
これには批判もある。
もうひとつの法令も成立しそうだ。その内容は、本人の許諾なくしてディープフェイク動画に自分の顔が使われてしまった人が、その製作者等を訴えることを容易にするもの。
この5年で何がタブーではなくなったのか。逆に、何がタブーになりつつあるのか。
David Grossman 記者による2019-10-4 記事「NASA Gets Its First All-Electric Experimental Plane」。
NASAは全電動式の航空機「X-57 Mod II」の試作機を受領し、これからテストする。9人乗り以下の都市交通手段として、レギュレーションを考える参考にする。
原型はイタリア製の「P2006T」である。
自重3000ポンド。そのうち860ポンドはリチウム電池の重さだ。
高度8000フィートにて、時速172マイルで巡航できるという。
2016年から開発されてきた。
次。
Eric Tegler 記者による2019-10-1記事「Bugs: A Self-Driving Car’s Worst Nightmare」。
走行中の、ロボット運転カーのセンサーに、虫が衝突してつぶれて張り付いてしまったら、センサーは狂ってしまう。特にレーザー光走査による物体探知&測距センサーである「LIDAR」が大問題。
これをどう解決するか。
2017からロボット運転カーを、ピッツバーグの「アルゴAI」社といっしょに開発しているフォード。このたび、ひとつの解を出した。
ノズルから高速の空気を、35度~40度の角度で噴出させることによって、雪、埃、虫の飛行コースをほんのわずか変えてやり、センサー鏡面にはくっつかぬようにできるという。
「空気シールド」と称す。
この空気の流れはまた、LIDARの冷却にも役立つという。
それでも何かがくっついてしまった場合は、洗い流す必要がある。
それには、欧州車がよく採用している、ヘッドライト用の洗滌システムを、参考にできるだろうという。
移設先サイトの件 途中経過(管理人より)
お世話になっております。
兵頭ファンサイト管理人です。
難しいですね!wordpress。私がわかってないだけなんでしょうけど!
移設先は↓に作ったのですが、まだログの移行はできておりません。
.htaccessを書き換えても、なぜかなんにもなりません。
(レンタルサーバ会社へお問い合わせして、お返事待ちです)
しかも、投稿になぜか時刻が表示されません。
(これはレンタルサーバ会社はサポート外だそうで、自分で考えてますがうまくいきません)
https://www.adminweb.jp/wordpress/disp/index2.html
この通りしているんですけどね。
日付表示は変更されるのですが、時刻がでてきません。
24時間表示のものを選んで変更を保存しているのですけどね……。
テンプレートタグを変更しないといけないのかな、と思うのですが、
どこのファイルかよくわかりません。
何度も申し訳ありません。
お分かりの方いらっしゃいましたら教えてください。
よろしくお願いします。
※ちなみに写真は私が撮影した、私の好きなアユタヤの駅です。
兵頭ファンサイト管理人
28funsite@gmail.com
直近5年くらいの官能小説のトレンドを手短に教えてくださる方はいないだろうか。
Sebastian Sprenger 記者による記事「Boeing’s F-18 jet may have a leg up in Germany over Eurofighter」。
ドイツ・メディアの報道によると、ドイツ空軍のトーネイドの更新機種が、タイフーンではなく、F/A-18 スーパーホーネットになりそうであるとのこと。
ドイツ国防省はペンタゴンに、F/A-18が核爆弾を運用できることについての確証を求めていた。ペンタゴンが問い合わせに対して確証回答したので、この決定になったという。
かたやユーロファイターが核爆弾〔米国から核戦争時に供与されるB-61系〕を運用できることをドイツ国防省に対して証明するためには今から3年~5年もかかってしまうだろうという。これで勝負あったか。
ドイツ軍は80機近くのトーネイドを維持しており、その任務は欧州での核戦争勃発時に「ニュークリア・シェアリング」政策に基づいて米国から供給される報復用核爆弾をロシアの大都市まで運搬することにある。
90機ほど調達される新型機候補からF-35が脱落したことは2019-1にアナウンスされていた。
※核報復専用だとするとF-35にするメリットはない。すでに露軍のレーダーは壊滅している情況だからである。
F-18とタイフーンのどちらが選ばれるかは、2020前半に決定される。
タイフーンが選ばれない場合、エアバスとダッソー社はヘソをまげ、新ステルス機を独仏西で合同開発するという構想には水がさされる。
かたやドイツはトランプから、対米貿易黒字を減らし、国防費を増やせと迫られている。その件で独国防大臣が先月、ホワイトハウス詣でをしたばかりだった。
次。
Nathan Strout 記者による記事「DARPA wants a robotic satellite mechanic launched by 2022」。
太陽同期周回衛星を軌道上で修理する専門の衛星をDARPAが開発したがっており、民間パートナーを募集している。
太陽電池パネルと長さ2mのロボットアーム×2本を備えたもので、要修理衛星に並走して作業する。
これにより、新規衛星の軌道投入直後の初期不具合をリカバリーできる。たとえば、太陽電池パネルが展張しない、といった。
2022年には完成したいと。
カメラで並走撮影することにより、不具合箇所の診断も地上にて可能になる。
不要となった古いGEO衛星を大気圏に突入させるゴミ処分作業も、このアームでできるという。
DARPAは前に「オービタルATK」社とこのタイプのメンテナンス衛星の共同開発をしていたのであるが、2017にオービタル社は抜けて、自社で単独開発することに決めた。
家庭用防犯監視カメラに顔認識AIが搭載される流れ。特に集合住宅。
Tyler Rogoway 記者による記事「China’s High-Speed Drone Is Rocket-Powered And All About Doing What Satellites Can’t」。
まず確認だ。70周年パレードにひきだされた「WZ-8」×2機は、モックアップではなかった。実機のようであった。
もちろんプロトタイプとか実験機に近いだろうが、ともかくも、ハリボテのフェイク物じゃなかった。
側面からの写真ではランディング・ギアが分かる。
パレードに出たWZ-8は、大型機から空中でリリースされて遠距離を高速で偵察し、また陸地にもどって滑走路で回収されるらしい。
中共は近年、超高空まで浮揚するゾンデに高速飛翔体をくくりつけて発進させるという実験を繰り返している。その飛翔体の外形は、WZ-8と似ていた。
空気取り入れ口がなく、噴射ノズルはある。ということは、動力はロケット・エンジンだ。
ジェット・エンジン技術で劣っている中共も、液体燃料ロケットならば超音速を容易に実現できる。ただし超音速で往復の巡航はできないだろう。
まず宇宙との境界ぐらいまでの高度に上昇し、弾道飛行のようにして偵察し、帰りはグライダーとなって飛行場まで戻るのだろう。
上昇限度は13万5000フィート、速度はマッハ3.42だろう。
ところで宇宙空間近くでは普通の「舵」はまったく効かない。ならば操縦制御をどうするのか、機体写真からはまったくわからない。
噴射ノズルも、ヴェクター可変には見えない。
20分間しか飛行できないとしても、マッハ3.2なら1000マイル以上を偵察できる。H-6N爆撃機から空中発射されて上昇開始するなら、往復で1500マイル飛翔できるだろう。
このレンジで、南シナ海の大半を見張ることができる。
発進は海南島付近から。回収はスプラトリーの砂盛島の滑走路にするのだろう。
次。
Loren Thompson 記者による 2019-10-3記事「Pentagon’s Next-Gen Missile Defense Plan Could Leave U.S. Poorly Protected For Years」。
GMDが近未来の長射程SSM脅威に対応できる見通しが立たなくなったことをペンタゴンは公式に認めたにも等しい。2019-8に、《衝突体》の改良案が放棄された。※おそらくSM-3の流用品案か。
北鮮がSLBM試射した1時間後、米空軍は「ミニットマン」ICBMを発射。見せつけてますね。
Martin de Bourmont and Sharon Weinberger 記者による2019-10-1記事「Trump tweeted ‘billions of dollars’ would be saved on military contracts. Then the Pentagon fired the official doing that」。
シェイ・アサードという男に注目だ。
ペンタゴン内で装備品調達を値切る交渉人であった。トランプもアサードを高く買っていた。億ドル単位で国民の税金が無駄使いされることを防ぎ続けてきた。
しかしが2016時点で、ペンタゴンが最も憎んでいる男 だと称されていて、とうとう、馘にされてしまった。
次。
Scott Crino and Andy Dreby 記者による記事「Drone Technology Proliferation in Small Wars」。
大流行中の自爆型小型無人機。この交信電波は、ISM電波帯を使う。ISMとは、工業、科学、医療。
もともとFCC米連邦通信委員会は、ISMを「シングル・チャンネル」でのみレジャー用に許可していた。単一周波数回線。
しかし、ISMでドローンを操縦しているときにもしトラックが通過してその強力なCB無線の電波がかぶったら、ドローンと操縦者の交信は遮断されてしまった。
そこで、1980年代のなかば、FCCは、ISMバンドを、FHSS(頻繁に周波数をホッピングしてスペクトラムを拡大)にしても可い、免許など要らぬ、と規制緩和した。
このおかげで、ラジコン機がトラック無線から干渉されて墜落することはなくなった。無人機を操縦できる最大距離も伸びた。
もうひとつの技術革新は、加速度計のチップ化。2000年より前だと、小型のジャイロスコープは高額すぎてアマチュアには手が出せなかった。だから機体は簡単に墜落した。
今は、安いチップひとつで、加速、傾き、推定現在位置等が把握できる。それを自律姿勢制御ソフトの前提にできるのだ。
これに、GoProカメラ、リチウム電池、無線の暗号化技術等が加わって、ドローンはますます便利に高性能になった。
DJIのドローンは2014にISが最初に軍用偵察に使った。今年3月、ウクライナ軍は、DJI製ファントム4からVOG-17破片手榴弾を投下できるようにしたものの写真を公開。空力フィンは3Dプリンター製。不意の爆発事故がないよう安全装置もちゃんと考えられている。
ガザ地区ではハマスがこれまでに二度、イスラエル軍車両に対してマルチローター型UAVからIEDを投下している。ひとつはメルカバ戦車で5月。ひとつは装甲HMMWVで9月。
※マルチコプター型の大きなものは、人間一人を持ち上げられる。つまり90kgぐらいのペイロードが可能。この四分の一の重さの成形炸薬弾頭でも、MBTを破壊できる。低速で地面スレスレからアプローチすれば、敵戦車のAPSも反応できない。地面すれすれで自爆して自己鍛造弾を車体側面下方から斜め上方に向けて撃ち込めば、爆発反応装甲も回避できる。なにより、味方歩兵に敵AFVが非常に接近してしまっている場合、そのAFVの向こう側で起爆させることが、マルチコプターならば容易である。その爆発破片は味方歩兵を襲うことはなく、逆に敵の随伴歩兵が破片を浴びるわけだ。すぐに日本のメーカーははこういうものを開発すべきだろう。
そろそろ秋がくる。
Joel I. Holwitt 記者による2019-10記事「Sub vs. Sub: ASW Lessons from the Cold War」。
記者は現役米海軍中佐。
ロシアのSSGN『セヴェロドゥヴィンスク』は、欧州方面勤務の米海軍の中佐にいわせると、とても静かだそうだ。
戦後、米海軍はドイツのソナーを参考にした。
米海軍の潜水艦用の最初の魚雷はMk27で、16ノットだった。これはWWII終末に完成した。
次が1956年完成のMk37で26ノットで駛走する。
それを有線誘導にした改良が1960年。
当時、相手として考えていたシュノーケル深度の敵潜水艦は、8~12ノットしか出さないものとみなされていた。
しかしソ連も原潜をこしらえると、30ノットの水中標的も考えねばならなくなった。魚雷より速い。
そこで1960に技術要求が出された。
さんざん苦労してMk48魚雷ができた。1972に米艦隊はこの新魚雷を受領した。
驚くべし。米海軍は14年間、ソ連潜水艦の速度に追いすがれる通常爆薬魚雷を、持たずにいたのである。
穴埋めとして、Mk45核魚雷と、UUM-44サブロック〔潜水艦から発射する対潜水艦用の核ロケット爆雷。飛翔は空中〕が、米艦隊にはあてがわれていた。
また米潜はMk37魚雷を至近距離から気づかれずに発射するので、魚雷そのものが低速でも、ソ連潜は逃走する余裕など無いと考えていた。ASWの技術格差が大きく、ソ連潜はこっちの接近にも、魚雷発射音にも、気づけないはずだった。
やがてソ連はノルウェーと日本から最新技術を調達して『ヴィクターIII』級のSSNを就役させた。それは静粛さが格段に向上していた。※東芝機械は、いつの間にか社名を変えましたな。やはり過去の名前は続けられないだろう。
さらにソ連は、西側のSOSUS聴音線の上で旧型の騒々しい潜水艦を走らせてマイクの感度を飽和させておき、その隙に、静かな最新鋭潜水艦をすりぬけさせるというテクニックを覚えてしまった。
こうしたことが判明したのは1985にジョン・ウォーカーを秘密の売り渡し容疑で逮捕した後である。ウォーカーは1967年からソ連スパイに海軍情報を洩らしていた。
80年代前半にソ連は『シエラ』級の全チタニウムSSNを就役させている。この静粛化技術はウォーカーが渡した資料が参考にされたかもしれない。
同時にスチール船殻として建造された『アクラ』級SSNは、もっと静かであった
1987に展開開始した『ヴィクターIII』はどのくらい静かだったか?
英軍の対潜哨戒機ニムロッドは、このソ連潜を追跡するために、従来1年で消費する量のソノブイを、数週間にして使い切ってしまったという。
米英両海軍は、6隻のヴィクターのうち5隻は常続的に追跡できたが、最後の1隻にはいつもまかれてしまっていた。艦長が優れていたようだった。
1989にソ連は349隻もの潜水艦隊を擁していたが、静粛なSSNまたはSSGNとしてNATO相手に使い物になったのは、計35隻のみ。うち23隻が『ヴィクターIII』で、文字通り主力SSNだった。
ソ連潜の弱点は、乗員が徴兵で、練度が低いことだった。マイク級SSNの『コムソモレツ』が沈没した事故について、1989年に、マイク級の設計副主任が書き残している。乗員はシステムをほとんど理解していなかったと。救命装具の扱い方も教育されていなかったと。
レーガン政権が1986から、米海軍をよりソ連本土近くに展開させるようにし、英海軍もそれに合力したことから、ソ連は自軍のSSBNを防禦するために、遠くへ出していたSSNを自国領海近くまで引き退げるシフトを強いられた。
米海軍は手をゆるめず、対潜哨戒機と他のAWS手段を緊密に連繋させてソ連潜を常続的に追いかける態勢を1980年代に構築した。
いま、ロシアは27隻のSSN/SSGNを有する。中共は6隻である。米海軍のSSNは51隻あり、英海軍は7隻だ。
ロシアと中共の原潜に乗り組んでいる水兵は、今日でも、徴兵である。米英は水兵に至るまですべて志願兵。
1980年代のピーク時にソ連は、6週間ごとに1隻の潜水艦を建造していた。当時、英海軍では真剣に、じぶんたちの手持ちの魚雷の本数よりも、ソ連の潜水艦の数の方が多くなってしまう、と心配したものだった。
今の中共は、1年に2隻のペースでSSNを量産できるだろう。
次。
ストラテジーペイジの2019-10-2記事。
英国でヘルファイアを改造したブリムストーン。2005に完成したが、ジェット機から高速で射出できるために射程が20kmにも延びる。
筒体もやや長く、そのぶん、固体燃料が多く詰まっている。総重量は55kg。
2008にメーカーのMDBAは、弾頭のセンサーを、ミリ波レーダーとレーザー〔セミアクティヴ?〕のデュアルにした。
そしてリビアに投入されて実戦評価を得た。
2016年には「ブリムストン2」が出来、新型モーターにより、レンジは40kmに伸びた(高空の固定翼ジェット機から発射した場合)。
低空の低速機から発射すれば、レンジは20kmである。
ブリムストンを対舟艇用にしたのが「シー・スピア」。弾頭重量は、ブリムストンが6kgなのに比して16kgもある。
誘導システムには工夫が凝らされている。スウォーム襲来する敵ボートに一斉発射しても、同じ標的を二発で襲うような重複の無駄は起らないのだ。
シースピアの実戦配備は来年以降だろう。
ブリムストン3も開発中。20km離れた敵のAFV群に対して12発以上を地上から一斉発射し、そのそれぞれが、別個の標的を破壊する。決して重複攻撃の無駄は起らないように、機械の方で面倒をみてくれる。
ブリムストンは敵戦車の薄い天板を攻撃する。APSも真上から落ちてくるミサイルに対してはあまり効果はない。
ポーランドのPZG社は、地対地ミサイルとしてブリムストンをライセンス生産中である。
ポーランド陸軍は、大量にもっているBMPの砲塔を撤去してボックスランチャーをとりつけ、そこにブリムストンを20発、収容させる。
重機関銃のリモコン銃塔は別に残すので、このミサイルBMPは近接自衛もできる。
シースピアーにターボジェットエンジンをとりつけた「スピアー3」も開発中だ。重さは100kgになるが、レンジも100kmに伸びる。