トリが好むモノはトリに聞け。

 定期的に草刈りをしている家の前の荒地。探索する都度、やたらに「タニウツギ」「カジノキ」「エゾニワトコ」「キンギンボク」等があちこちから芽を出していることに強い印象を受ける。これらは野鳥がタネを(消化器官経由で)撒布したものに間違いないだろう。
 わたしはさいきん、これらの天然実生苗木は刈らないで残すことに決めた。それらこそが「マーケットの需要」だと気付いた。「トリパラ計画」を見直さねばならない。
 野鳥食餌樹を解説した図鑑類に、ニワトコはともかく、カジノキ等をもれなく紹介している本には、わたしはお目にかかったことがない。しかも、ごく短期間のいきあたりばったりな観察で、これは鳥が好むとかこれは好まないとかの軽率なコメントまで付けたりしているのだ。
 「無知の知」をわきまえずにどうして皆、専門家(や「編集者」)を自称できるのだろうか?
 次。
 ストラテジーペイジの2017-6-13記事。
  シルクロードを開発して利用したのはシナ人ではなかった。イラン人、インド人、アラブ人たちである。
 中共は一路一帯のため2000億ドルを出すと言っている。
 さいきん中共の国連代表は、国連機関が、アフリカにおけるシナ人の犯罪的事業を捜査することを、カネの力で止めさせた。
 中共は新疆において、16歳未満の子供の名前が「イスラム的すぎる」場合は改名を強制中だ。イスラム、コーラン、メッカ、ジハード、イマム、サダム、ハッジ、メディナ、アラファト……といったもの。
 16歳になると住民は、非イスラム名のIDカードを持たねばならない。非漢人はDNAサンプルも登録されている。
 すでに屋外での「顔隠し」は2017に違法化されている。
 また、中共の公共放送テレビ番組を視ない行為、中共の公共放送ラジオを聴かない行為も新疆では違法である。※NHKが欲する未来だね。
 パキスタン南西部で、スンニ系のテログループが、誘拐していたシナ人カップルを処刑した。
 この2名は目的を偽って入国し、勝手にキリスト教の伝道をしていた。
 2人のシナ人はクエッタの近くで5-24に誘拐された。そこにシナ文化センターがあって、それを2人で運営しながらウルドゥ語を学んでいたという。ところがこの2人は最初からキリスト教布教のために送り込まれてきた伝道師だったのだ。
 該グループは反シーアのテロ活動をずっと続けてきており、最近ISに加盟している。
 青海省では5-19にチベット僧侶1名が中共に抗議の焼身自殺。チベット暴動が2008に鎮圧されていらい、2009からかれこれ150人くらい焼身成仏しているという。
 シンガポールは今年、ドイツに2隻の『218SG』潜を追加発注した。
 その前に2013に2隻発注していて、それは2022までに納入される。
 1800トンのAIPで、電装品にはシンガポール製品も使われる。
 自動化がいちじるしく、乗員は28名。
 AIPだけで30日間もぐりっぱなしも可能である。
 訓練費用コミで1隻9億ドル。
 マラッカ海峡はいちばん狭いところで幅65km、その水深は27mから37mである。
 バルト海も浅いので、ドイツやスウェーデンの潜水艦が丁度良いのである。
 シンガポール軍7万1000人のうち55%は徴兵である。
 海軍にはすでに4隻の潜水艦がある。
 うち2隻は『ファースターゴットラント』級として2005にスウェーデンから買い、2012に大改装して『アーチャー』級と称す。
 1995にはやはりスウェーデン製『チャレンジャー』型を4隻買っていた。そのうちの2隻を『アーチャー』でリプレイスした。
 大改装では、AIPを搭載するため艦の容積を三分の一増やして1400トンにした。乗員28名。
 熱帯仕様としてエアコンが強化されているのがシンガポール潜の特徴だ。
 次。
 2017-6-12記事「South Korea’s Defense Blunder」。
  5月に訪韓した民主党第二位の上院議員、ディック・ダービン(イリノイ州選出)は、『ワシントンエグザミナー』に語った。文は、アメリカよりもシナと組んだ方が北鮮封じ込めがうまくできると思ってるんじゃないか、と。
 文は6月後半にDCでトランプと会う予定だ。


26日の米軍LCU卸下@沼津海岸を取材します。前日、お近くの人にはお目にかかりましょう。リバーサイドで。

  Katherine Owens 記者による2017-6-8記事「Lockheed enterprise computer connects older aircraft with F-35s」。
    ロックマート社は先月のノーザンエッヂ演習にて、初めて「エンタープライズ・ミッション・コンピュータ 2.0」をU-2に搭載し、それによってF-35やF-22とデータリンクができるようにした。
 スカンクワークスが開発したこの新ミッションコンピュータは「アインシュタイン・ボックス」と仇名されている。なぜなら頭文字が「EMC2」となるからだ。
 異なる戦術データリンク系統の間を自在に結べるようにした。
 前のモデルの「EMC1」は、リンク16を、それを使わない前提のF-22でも利用できるようにしたものだった。
 米空軍は「リンク16」と「マルチファンクション・アドバンスト・データ・リンク(MADL)」と「赤外線データリンク(IFDL)」の3系統の戦術データリンクを用いている。
 リンク16は、大量のデータを送受できるのはよいのだけれども、短波帯を用いるために、敵に電波技術があれば、妨害されたり、居場所の特定に逆用される可能性が高い。ステルス強調の第五世代機がこれを任務中に使えない理由も、居場所が悟られるからである。
 MADLはステルス任務中のF-35が用いる。20ギガから30ギガヘルツ帯を使う。
 IFDLはF-22編隊の専用データリンク。光線なので敵からまず逆探されないし、遠くの敵が傍受するという懸念もない。
 今回なぜU-2にテスト搭載されたかというと、「EMC2」は嵩張り、電力がたくさん必要で、本格的な冷却も不可欠なものなので、U-2ぐらいの余裕がある機体でないとまだダメなのである。
 次。
 Zi Yang 記者による2017-6-7記事「Privatizing China’s Defense Industry」。
  中共政府が、国内の国有軍需企業の、効率の悪さ、イノベーションの無さ、負債の巨額さに音を上げ、これらを半分民営化して、競争原理と予算管理精神を注入したいと欲している。つまりペンタゴンがしているように、数社に競合させていちばん安上がりで良い兵器を選択して買い上げるようにしたい。MOR=混合所有形態改革 と称している。だが、そんな改革はまず無理であろう。
 ※それら国有軍需企業の発行する「社債」類が現況では市場で買い手がみつからず、このままでは運転資金の調達不能で運営が行き詰るという切羽詰った危機感が背景にありそうだ。銀行に利子をつけてカネを返さないという態度を続けてきたなら銀行も支援するわけがないし。本来なら倒産していておかしくない軍需企業・航空機メーカーが、わんさかあるのだろう。
 米国の軍需企業は、資金の7割を市場調達している。株式等の証券で。
 しかしシナ軍需企業は、市場からは25%しか資金を集められていない。
 従来は秘密一点張りだった軍事研究開発機関をできるだけ「会社」化して独立採算にさせようという組織改革も既に進行中である。それらの研究所の運転資金補給をもう政府が面倒見切れなくなった。
 ※ということは習近平が来日したら、カネの話になるね。連鎖倒産しそうなシナ企業に、日本国内で投資先が無いカネを突っ込んでくれという。AIIBの変化球だよ。もちろんいちばん最初に相談したのはキッシンジャーだろう。米国から先に手を回し、北鮮情勢とマヌケのトランプをうまく利用して、AIIBを肯定させた。いよいよ「お鉢」が日本に回ってくる。
 従業員に軍需企業の株式を買わせて会社を支えさせるかという実験も始まっている。問題は、どの割合までそれを許すのか。1人が1%まで、とか、全従業員でも30%まで、とか、規制をはめようとしている。株式の国有率を34%未満にするつもりは、中共にはない。
 2017-3に、解放軍が保有する秘密パテントのうち、軍民デュアルユースのもの3000件以上が、初めて秘密解除され、そのうち2346件は公開された。
 ハニカム構造を爆薬の力で鍛造する特許など、珍しいものもある。
 資産に対する負債の巨額さや、配当率の低さが、多くの中共企業に共通。
 国産空母を建造したCSIC社、初のジェット旅客機を製造することになったAVIC社は、シナ企業の中では資金調達の市場証券依存率が高い方だが、そのパフォーマンスは宜しくない。
 たとえばCSICのROEは2016において1.23%、2017において1.73%だ。
 中共軍の将来需要動向を知っているのは党員将校のインサイダーなのだから、シナ軍需企業に透明性など期待できるわけはなく、外国人証券投資家にとってはリスク買い以外の何ものでもない。
 ※NUKEMAP というお役立ちのHPがありまして、自分の町が核攻撃されたら被害はどうなるかというシミュレーションを、イールド別、起爆高度別に、RCビルが爆圧でぶっこわれる半径、木造家屋が壊れる半径、人が500レムを浴びる半径、人が三度の大火傷を負う半径(三度だと皮下の神経まで失うので逆に痛覚が無いと書いてある)、死者数、負傷者数を概略知ることができる。火球半径や、特定の毀害を最大面積化したい場合のイールド別の最適爆発高度まで教えてくれる。なんでいままでこういうソフトが無かったのか? 不動産屋は必見だろう。ちなみに2メガトンが都庁の上空で爆発すると、火球半径は1.27km、強放射線半径は2.72km、RC倒壊半径は3.55km、三度火傷は16.9kmまでだから、所沢にコンパネ住宅を建てて住んでいればとりあえず自宅内は無事だぞ! 3メガトン(東京向けのシナ軍ミサイルの最大可能イールド)だったとしても所沢は安全。府中よりも都心寄りに住宅を買ってしまった人は、ご愁傷様。


E-malfunctions & AAGH!……と誰もが連想しているだろう。

 Dan Grazier 記者による記事「How Not to Build a Ship: The USS Ford」。
 ※『The San Diego Union-Tribune』に最近載ったこの記事にはもっと長いバージョンがある。それはPOGOウェブサイトを見よ。
 米海軍はフォード型空母1号艦は2014に、105億ドルで納品されると予期していた。
 しかし現実には、2017に、129億ドルでの引き渡しとなった。
 揚弾昇降機も問題があるらしい。レーダーも。
 電磁カタパルトは機体へのストレスをやわらげるという謳い文句だったが、陸上施設でのテストによれば、F-18はむしろスチームカタパルトよりも強い応力に曝される。
 また電力系統を4条のカタパルトごとに遮断できないことがわかった。これが意味することは、もし1つのカタパルトに修理や点検の必要があるときは、4条すべての発艦と着艦の作業が、中止されざるを得ないということ。
  現時点では、『フォード』の電磁カタパルトは、射出400回ごとに故障を起こしている。発注の時点では、故障を起こすまで4166回は射出できるということになっていたのに。
 空母が作戦に投入されるときは、最初の4日間は毎日100回以上も発艦や着艦があるものだ〔いわゆるサージ・ストライクの期間〕。400回で故障が起きるということは、とてもまずいだろう。
 得をしたのは、サンディエゴにあるジェネラルアトミクス社ばかり。彼らは電磁カタパルトの開発とデモンストレーションの契約を2004年に結び、1億4500万ドルを獲得したのだ。
 なおかつ2017-1には、同社はフォード型3番艦『エンタープライズ』の電磁カタパルトとアレスティングシステムのために5億3200万ドルをかちとっている。
 しかしトランプが言ったようにスチーム式に戻すと、もっとカネが必要になる。なぜなら、原子炉を熱源にしてスチームを発生させて圧力を維持させるシステムを、あらたに設計しなければならないから。
 フォード型は、大型のスチームシステムは排してオール電化された空母にしようという根本コンセプトがあった。でかい蒸気系統の介在を、最初から考えてなかったわけだから。大改造になっちまう。
 甲板の支持構造もとっかえねばならない。工期は3年追加となるだろう。
 電気式アレスティングシステムの開発は、2005年の見積もりでは1億7200万ドルで可能だとされた。2009年には、3億6400万ドルかかるだろうと見通しが修正され、今日ではそれが、13億ドルに膨れ上がっている。
 アレスティングワイヤを減速させるメインの仕組みはしかし電気とはあんまし関係がなくて、液体(水)の中で羽根車(パドル・ウィール)が回るときの粘性抵抗が利用される。これで着艦機の行き脚エネルギーの七割を吸収してしまい、のこった三割を、電気モーターの引っ張り力が分担する。
 ウォーター・ツイスターとよばれるこの減速装置の内部メカは、強度の足りないところが複数あって、すぐに壊れた。
 その再設計に2年が費やされた。
 海軍は、ケーブルショックアブソーバーは16500回の着艦回数まで壊れぬことを要求しているが、いまのところAAGは、25回の着艦で壊れてしまう。
 とりあえず二番艦の『JFK』では路線は変更されない。海軍はあくまで電気で行く気でいる。
 法規によって、2009時点での見積もりを50%予算超過した計画は、自動的に見直し過程に投げ込まれる。とはいえ現実的にはキャンセルなど無理な話。
 ここにも、「フィッツジェラルドの防衛予算要求第一法則」があてはまる。いわく。軍備開発計画には二つの段階しかないのだ。初期には「それ〔合格にほど遠いという所感〕を言うには早すぎる」であり、そのあとには「もう止めるには遅すぎる」である。
 『フォード』型の発電機がまた凄い。4基載っているのだが、その発電量は、『ニミッツ』型の8基の発電機の総出力の3倍もある。
 電圧も高いため、これを熱帯の高温多湿環境で運転しているうちには、「短絡」の危険がとうぜんにある。
 『フォード』型の原子炉は「ベッチェルA1B」×2基である。『ニミッツ』型の「A4B」原子炉よりも、トータルで、熱量が25%多く、発電量は3倍だ。
 にもかかわらず、その運転に必要な人員は、三分の二に省力化されるという。
 2016-6に、この発電機の1基が「電気的爆発」事故。また7月には別な発電機も同様の故障を起こして修理が必要になった。
 どちらの発電機も、内部ローターが交換された。
 しかし第2発電機については、『フォード』が就役したあとに、時間をかけて全部バラして補修する必要があるらしい。
 米海軍の第一線用の新造艦は、かならず「ショック・トライヤル」を受けなければならない。ちょっと離した水中で爆薬を起爆させ、その衝撃波で艦内に問題が生じないかどうかを確かめるのだ。
 2000年5月、豪州海軍の『コリンズ』型SSの1隻が、ハワイ沖の合同演習にて、米海軍の空母戦闘群に肉薄し、空母に対するアタックポジションまで気づかれずに辿り着くことに成功している。これは連邦議会の予算局が承知している。
 同様の「演習沈没」は、米空母『ロナルド・レーガン』と『リンカーン』に対してもスコアされたことがあるのだという。
 いま、北鮮は潜水艦70隻、中共は非核式を50隻、ロシアは18隻+SSNを22隻、イランは20隻、有している。


中東最大の米軍基地はカタールのアルウデイド空軍基地。

 Bruce Riedel 記者による2017-6-5記事「The $110 billion arms deal to Saudi Arabia is fake news」。
  トランプこそがフェイクニュースの作者である。サウジに1100億ドルの兵器を売ったという話は真っ赤な嘘だ。契約書が1枚も存在していない。
 あるのは引き合いの書簡だけ。
 したがって武器輸出審査のために米連邦上院に提出された書類もないわけである。
 今回列挙された兵器品目はすべてオバマ政権時代から売り込み努力が始められていたもの。トランプがこのたび初めて売り込んだものなど一つもない。
 たとえばサウジ向けにプッシュされた4隻のLCSもどきフリゲート(マルチミッション水上戦闘艦)。
 これについては国務省が2015に連邦議会に売り込み中であるという報告書を提出している。しかしその後、契約には進展していない。そもそもLCSの発展型というコンセプトだから、見本艦すら1隻も実在してないのである。
 THAADにサウジが興味を示したのもオバマ時代に遡る。オバマは2015のキャンプデイヴィッドサミットで、THAADの対サウジ輸出を許可した。しかし契約には至らなかった。
 原油価が低くなり、2年以上もイエメンで戦争しているサウジに、1100億ドルもの兵器代金の支払いができるわけもない。
 ※公務員へのバラ撒きと、クーラー電力の大盤振る舞いだけで、すでに財政破綻は目前の状態。
 オバマ政権の8年間に、米国がサウジに売った全武器代金が、1120億ドルだった。
 このほとんどが、2012年にゲイツ国防長官が一発でまとめた契約だった。ゲイツはイスラエルと米議会を同時に納得させる汗を流している。そしてサウジはこのときの買い物代の支払いにいまだに苦しみ続けている状態なのだ。
 トランプが本当にサウジに凄い兵器を売ったなら、かならずイスラエルは「こっちにも補償をしてバランスを取れ」と註文をつけてくる。そのイスラエルの動きが今回まるで見られないということは、トランプは実際には何もやっていないことの証明だ。
 サウジには喫緊の買い物リストがある。弾薬だ。対イエメン戦争で消費し続けている誘導爆弾や砲弾が、いくらあっても足りないのだ。これは10億ドル単位の買い物であるが、買わないという選択があり得ない。だから、まもなく、こっちがニュースになるだろう。
 サウジはこのたび断交したカタールに懲罰戦争を仕掛けたいと念じている。カタールは、エジプトのムスリム同胞団を支援し、アルジャズィーラに拠点を提供し、イランとの紐帯を維持している。
 次。
 ストラテジーペイジの2017-6-6記事。
 エジプトがカタールと絶縁したのは、カタールの庇護しているアルジァズィーラ放送局が、エジプト治安当局による対「ムスリム同胞団」その他のテロ集団に対する検挙流儀を非難する報道を続けていることが大きな理由。
 しかも、エジプト国内で活動するISを声援する報道までしていやがるので。
 カタールは、サウジ対イランの宗派闘争では、シーアのイランを支持するようになっていた。
 カタールは住民が210万人しかいない。カタール国籍の保有者はそのうちの12%でしかない(あとは外国からの労働者)。しかし人口あたり所得は、GCCの中でカタール人が最高額なのである。この富の力でカタールは、アラブ世界を変えようとしてきた。
 2012後半、カタールの君主シェイク・ハマド・ビン・ハリファ・アル・タニはガザ地区を訪問し、4億ドルを拠出して3000軒の家を立ててやると公約した。タニはハマスをイランと絶縁させて、ヨルダン川西岸のファタハと同盟させて、パレスチナ合衆国を創設し、それによってイスラエルと交渉させようと念じた。
 カタールはシリアにおける反政府叛乱も応援したし、イスラムテロ運動がアラブ世界内の力の分布構造をすっかり変えてしまうことも欲している。
 しかしタニは2012年にガザ住民からソッポを向かれた。ガザ住民はハマスにはうんざりであった。表立ってそれをデモンストレートするとただでは済まないから、彼らは、動員に逆らい、サッカースタジアムでのタニの演説を見にいかない(空席率8割にして政治ショーをキャンセルに追い込む)ことで、反対の意思を表明した。
 ハマスが和平に動こうとするたび、それに反対して闘争をけしかけているのが、ISである。


レーザー施術で驚くのは、自分の蛋白質が燃える匂いを嗅げること。

  MICHAEL E. RUANE 記者による2017-6-5記事「Unsealed 75 years after the Battle of Midway: New details of an alarming WWII press leak」。
  『トリビューン』紙の1942-6-7付、ミッドウェー海戦大捷報道。メインストーリーは問題なかったのだが、サイドストーリーでこれが海軍暗号解読班の手柄である――日本側の作戦計画を事前につきとめていた――ことをバラしてしまった。
 それは、詳しすぎた!
 14パラグラフもあって、WWII中の最悪の報道リークだったとアメリカ政府では回顧している。
 米海軍とFDR政権高官が激怒したのは当然であった。
 この機密リーク報道の責任者は誰であって、どのような罪に問われるかを判断する予審(大陪審)での証言内容は、70年以上も秘密にされていた。
 やっと2016-12に、海軍史家のエリオット・カールソンが、その記録を情報公開させるところまで漕ぎ着けた。
 これは、米国政府が「エスピオナージ法」にもとづいてメディア関係者を裁判にかけようとした、米国史上で唯一件のケースとなっている。
 『トリビューン』の記事はバラした。米海軍内部では、ミッドウェー諸島へ来攻する日本軍の兵力は海戦よりもセベラルデイズも前からよく知られていたと。この予告のおかげで、米軍は持てる全航空戦力を日本艦隊の邀撃にさしむけることができたのだ、と。
 また記事はバラした。日本艦隊は3本編成になっていたと。まず攻撃艦隊。その後方に支援艦隊〔戦艦などがウロウロしたのみ〕。そして上陸占領部隊を輸送する艦隊。
 その艦数や、艦名・艦種までが、記事には表示されていた。
 ただし記事は、「日本軍の暗号を破っていた」とは明示していない。
 とはいえ、海軍の世界に詳しい者がこの記事を一読すれば、米海軍が日本海軍の作戦用暗号を破ったことは明瞭であった。
 史家のジョン・コステロによれば、米情報当局は、日本軍がミッドウェー方面で攻撃を開始する日を、誤差わずかに24時間で、事前に言い当てていた。
 攻撃目標がミッドウェーであることを確かめるために、「海水蒸留装置が壊れた」という偽の緊急無線をミッドウェー島から平文の英語で打電させた話は有名。
 『トリビューン』の記事は、『ワシントンタイムズ-ヘラルド』紙や『ニューヨークデイリーニューズ』紙等によっても短く引用された。
 『トリビューン』紙の元記事を書いたのは、スタンリー・ジョンストンという太平洋特派員だった。ただし記事にはその署名は無い。
 ジョンストンは豪州人で、記者時代には口ひげ野郎だった。
 ジョンストンはWWIでは十代にしてアンザック部隊の一員としてガリポリで戦闘したベテランだった。
 戦間期にはニューギニアで金鉱を掘っていたこともある。
 英国の『トリビューン』紙の特派員となったのは1940のこと。英国滞在中、ドイツ軍機の爆弾であやうく死にかけた。
 米国が参戦すると、新聞社は彼を太平洋へ送り出した。そこで彼は『レキシントン』に同乗取材を許された唯一のリポーターとなった。そして1942-5の珊瑚海海戦を体験。
 『レキシントン』は沈むまでにかなりの時間があったので、3000人近くの水兵もジョンストンも、泳ぐ必要なく、安全に退艦できた。同艦は最終的に米駆逐艦が魚雷で沈めた。
 ジョンストンと元『レキシントン』乗組員たちは、米海軍の輸送艦『バーネット』に乗せられてサンディエゴ軍港へ向かった。
 この航海の途中で、ジョンストンは偶然に決定的な情報に接することができたのである。
 ニミッツが、これから4日もしくは5日の間に、ミッドウェーで海戦が起きる、という予報を、海上の全指揮官に対して、無線(暗号電信)で事前に通知したのだ。
 さらにニミッツは別の電報で、やってくるであろう日本の攻略隊の構成について詳細に通知した。
 この海軍高緊急度電報311221番は、ミッドウェー海戦には用のない『バーネット』宛てに来るべきものではなかったが、受信され、その電信室で〔おそらく暇だったのと興味本位から〕暗号電文が翻訳され、その電報紙が、艦内の元『レキシントン』座乗の司令官・セリグマン准将まで回覧された。そして『バーネット』艦内では、セリグマンは、ジョンストンと同じ臨時居室をあてがわれていたのである。ジョンストンは、その内容を書き取った。
 ジョンストンがサンディエゴに上陸したのは6月2日。そしてシカゴには6月4日に着いた。
 そこでジョンストンは、ミッドウェー海戦大勝利についての政府公式発表を知り、ただちに『トリビューン』の編集長に対して「わたしは日本艦隊に関する特ネタを持っています」と申し出た。こうしてあの記事が、東部の有名新聞をぜんぶ出し抜いて、活字になったのである。
 ニミッツ電報が「秘」であることをジョンストンが知っていたかどうかが、予審の焦点になった。しかしそれを証拠立てるものはなかった。
 この一件の捜査を海軍省と司法省から任された、元連邦検事総長ミッチェルは、もしジョンストンを訴追すれば、裁判の過程でまた別な軍の秘密がどんどん表出してしまうだろうと懸念した。
 しかしFDR政権はなんとしてもジョンストンを起訴させたがった。よってシカゴで1942-8に、連邦大陪審が開廷された。
 けっきょく、大陪審は誰も起訴しなかった。証言は封印され、2016-12まで世間から隠されていたのだ。
 1962-9-13に62歳のジョンストンが心臓発作で死亡すると、『シカゴ・トリビューン』紙は追悼記事を1面に掲げた。


誤差6cmなら空自の誘導爆弾はJDAMでもペイヴウェイ以上に精確に当たるってことじゃねえか。『みちびき』すげえ!

 ストラテジーペイジの2017-6-1記事。
 無人で719日、軌道を周回していた小型スペースシャトルのX-37Bが5月に帰還した。
 衛星にとりつける新型スラスターのテストをしていたという。
 もちろん、スパイ・ミッションも兼ねていた。
 また、10個の超小型の「キューブサット」も放出したという。
 X-37Bは、2010-12-3に224日周回をまず達成。ついで2012-6-12に469日周回を達成。さらに2014-10に675日周回を達成。こんどのは四回目のミッションであった。
 もともと本機は、開発目標として280日間の周回を考えていた。完成してみたら、その三倍は行けるということが分かったのである。
 長期ミッションを可能にしているのは、大型のソーラーパネルを展張できることによる。
 このX-37Bをちょっと大型化すれば、軽量版の有人スペースシャトルになるだろうという構想はすでに2011年にメーカーが公表している。中共はまちがいなく、それと同じことをするつもりでいる。
 X-37Bの荷室には300kg弱、寸法として「2.1m×1.4m」未満のモノまで搭載できる。自重は5トン、全長9m、ウイングスパン4mである。
 廃止された元祖有人スペースシャトルは、ペイロード24トン、自重2000トン、全長56mもあった。
 その中間機が欲しいわけだ。
 有事には、X-37Bは、敵国の衛星を破壊する宇宙戦闘機になる。また味方の衛星にスラスター燃料を再補給してやることもできる。
 世界のアマチュア衛星追跡マニアたちも、X-37Bにはしばしば「まかれた」。つまり軌道をしょっちゅう変更できるので、次に観測できる地点が予想できなくなるのである。これは、米国の敵国たちはもはや、米国製スパイ衛星の上空出現予測にもとづいて地上での隠密活動を上手にやりとげることが困難であることを意味している。
 2008年に米国のスパイ衛星が軌道変更に失敗して墜落した。これをアマチュア衛星マニアはモニターしていた。
 ちなみに、毎月、4機から5機の衛星が、大気圏内に突入しているのだが、それらはまったくニュースにもならぬ。
 こうした衛星マニアたちの議論は、たとえば「satobs.org」の運営するHPでなされているという。
 次。
 James Hasik 記者による2017-5-31記事「Exports and End-Use」。
  アムネスティーインターナショナルの告発。米国がイラクやクウェートに供与した装備が10億ドル分以上もISに流出しているぞと。
 米国対外軍事援助庁が「ポスト・デリバリー」の監視をせねばならぬことは法的に決まっている。そのためにエンドユース・モニタリングの部局がある。
 そもそもリーヒー法(22 U.S. Code § 2378d)によれば、人権侵害国には米国製の武器は供与されてはならない。※すなわちサウジに売ることはできないはず。
 オランダは、サウジに対する武器輸出を禁じている。二人の米連邦議員が、米国もオランダに倣うべきだと主張中。
 スウェーデンも、民主的政府をもっていない国家に対する武器輸出をすべて禁じている。
 しかし、中東にはジェファソニアンなどいやしないのだ。
 ウェリントン将軍は1812-8に英国議会で、スペイン西部の砂嵐下に某騎兵連隊に支給されたラズベリージャム容器の定数違いだとか、某歩兵大隊の勘定外の現金残高1シリング9ペンスについても説明しなければならなかった。
 くだらんことで査問や公聴会を開かず、どんどんイラク政府軍に武器を供給し続けろ。対ISの実際の戦果こそが議会で問われるべきなのだ。
 次。
 ストラテジーペイジの2017-5-31記事。
   スウェーデン唯一の潜水艦メーカー、サーブ社は、新型の『A26』について五月に公表した。これまでより全長を10m長くし(従来は63m)、重さを500トン増やした(従来は1900トン)。
 そして3本の垂直シリンダーを増設した。そのひとつのシリンダーには、VLSが6本収められている。つまり、トマホーク巡航ミサイルをディーゼル電池潜水艦から垂直に18発、つるべ撃ちできるわけ。魚雷発射管を使わずに。
 サーブ社はこれを、さる外国の顧客のために開発したと言っている。その国名は、非公表だ。新型2隻の登場は2022か?


「読書余論」 2017年6月25日配信号 の 内容予告

▼M.C.ペリー著、F.L.ホークス編纂、宮崎壽子監訳『ペリー提督日本遠征記 上』角川文庫 H26 pub.
 ※ペリー報告書の完全翻訳本はなんと1997まで無かった。大ボリュームだが、驚くほど周到な施設団派遣であったことがよくわかる。これが大正時代に完訳されていたらと惜しまれる。今回は途中まで。
▼H・J・LASKI著、飯坂良明tr.『近代国家における自由』1951-6 原1947“Liberty In The Modern State”
 国を異にすれば自由の観念も異なる。
 エジプトやサウジアラビアでは、特権階級以外の一般男女は、自由について考えてみたことすらない。古典古代の奴隷と変わらぬ。
 ペリクレスの時代も今日も、自由を全うする秘訣は勇気である。
 不正に直面しつつ沈黙を守る人はいつでも自由の喪失を甘受する人である。
 プロテスタンティズムがキリスト教圏で共存をかちとるのに125年以上の戦争が必要だった。
 国家の支配者がちゃんと責任をとるように、国民が支配者に強制できるようになっているか。これが自由の担保なのである。
 したがって国民の勇気と結束が不可欠なのである。
 英国では、外国人の帰化請願を受理するのは内務大臣の権限である。
 帰化申請のためには、英国内に5年以上居住し、さらに、宣誓証言した市民たち複数による人物証明書を提出する必要がある。そして公告により、彼に関する情報の提供も求められる。
 出版言論と演説言論〔放送言論〕は、作用において大きな違いがある。
 出版言論は、理性で読者を説き伏せるのに向く。意図的に世間を混乱させようとしても持続できない。
 演説言論〔放送言論〕は、意図的に世間を混乱させ、しかもそれを持続させることができる。
 自由と報道は切っても切れない。人々の意見は、事実の真実性いかんによって決定的に左右されるから。
 「特定の利害によってニュースが制約されるときは、自らを自由人だと信じている人々も、実は囚人と化すのである」。
 主権は法的に全能だから、領域内で外国人の権利を制限するのもテクニカルに可能。そのさい他国といっさい相談しなくてもよいし、正義の原則から逸脱していてもOK。
▼ハンス・ケルゼン著、西島芳二tr.『デモクラシーの本質と價値』S23-10
 国民はその総体たる国家においてのみ政治的に自由になれるとすれば、国家の人格が自由でなくてはならない。自由国家の国民のみが自由なのだ。
▼P・G・ヴィノグラドフ著、末延・伊藤共訳『法における常識』イワブン1972、原1959“Common Sense In Law” 
malicious prosecution とは、濫訴の罪。悪意をもち、相手の無罪なることを内心信じつつ、他人を訴追し、結果が訴えの棄却もしくは無罪判決となった場合、訴えた者がこの罪に問われる。悪意の不存在、合理的理由の存在については原告が証明しなければならない。
 1908判例。陸軍や海軍に入ってはならないという条件をつけてなされた遺贈は、公の秩序に反する条件であるから、法律上、無効である。
 conspiracy とは、二人以上の者が、民事上または刑事上の違法行為をなす旨の合意である。その行為が実際になされずとも、軽罪を構成する(訳注)。
 1881から1904にかけ、ロシアで反動政治が吹き荒れ、当局の忌憚に触れた学生は、最下級兵として軍隊に編入されるのが「罰」であった。
▼九里[ぐのり]聰雄[としを]『食用野草』S21-6
 牛や馬は先天的に毒草を知っていて、決して食べない。牛馬が避ける草をよく見覚えよ。
 澤村真の『栄養と食物』によれば、ジャガイモは百匁中の有効熱量(大カロリー)が288であるのに比し、キクイモは269である。
 ◆  ◆  ◆
 「読書余論」は、主に軍事系の古本を、兵頭が注目した一斑の摘記や読書メモによって紹介し、他では読めないコメントも附しているものです。
 あまりに多すぎる過去の情報量の中から「兵頭はここは珍しいと思いました」というポイントだけ要約しました。
 大きな図書館に毎日通えない人も、最低費用で、過去の軍事知識のマニアックな勘所に触れることが可能です。
 また、ミリタリーしか読んで来なかった人には、他分野の情報が、何ほどか有益かもしれません。
 「読書余論」は、毎月25日に「武道通信」から最新号が配信されます。1号分の購読料は500円です。
 バックナンバーも1号分が500円で、1号分のみでも講読ができます。
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観測船も出さずに誤差何メートルとか笑かしてくれるがそのフェイク宣伝の片棒担ぎの「専門家」しかいないのに絶句。

 Paul Bracken 記者による2017-5-30記事「A North Korean H-Bomb」。
  ※北鮮は水爆を完成することで国防が完全になるという興味深い論文。記者はイェール大の核問題専門の教授。
 米国は広島から7年で水爆を手にした。貢献したのは、テラー、ウラム、ニューマン。
 シナは1964の原爆から3年で水爆まで漕ぎつけた。
 シナが水爆を手にしたからこそ、米国はベトナムでは勝手なことができなくなったのである。
 イスラエル、インド、パキスタンは水爆を持っておらず、もし北鮮が開発に成功すれば、それはP5以外の国家として初例になる。
 北鮮はまちがって日本を水爆攻撃してしまうかもしれない。
 もっとありそうなこととして、北鮮領土内で爆発事故を起こすかもしれないが。
 ※とにかく水爆を持ってしまえば「ドゥームズデイ・マシン」みたいなものとなり、その地表汚染を心配して誰も北鮮を攻撃できなくなるという。これは一理アルゼンチン。
 次。
 「Upgrading U.S. nuclear missiles, as Russia and China modernize, would cost $85 billion. Is it time to quit the ICBM race?」という記事。
  ミニットマン3は、この地球上のどこであれ30分以内に届く。
 いま、コロラド州、ネブラスカ州、ワイオミング州、モンタナ州、ノースダコタ州に400基のミニットマンあり。
 ミニットマン3は60年代に開発され、初号機は1970に配備された。
 1990年には、米国のいつでも発射できるICBM弾頭は2000発あった。ICBMそのものは1000基。今はミサイルが400基で弾頭数も400発である。
 20年前のクリントン政権の国防長官、ウィリアム・ペリーは、2016-9の講演で米国のICBMの全廃を唱えた。
 チャック・ヘーゲルも元は全廃論者だったが、長官に就任してからスタンスを変えた。
 マティスはICBMを最新型に更新するべきだという意見。
 グローバルストライクコマンドの司令官だったストス空軍大将いわく。反応即応性が一番良いのがICBMなのだ。発射命令を出してから実際に発射されるまでの時間が最も短い。しかも安定度が他の2脚より高い。
 もしICBMを全廃したら、敵は5発の水爆で米本土の核基地を消滅させられる。すなわち3箇所の爆撃機飛行場と、2箇所のSLBM軍港だ。
 反対する者いわく。ジャックに豆を売った人物にもういちど会って借金を申し込むか、虹の接地点を掘って純金の壺でも発見しない限り、ICBM更新なんて予算的に不可能な話だ。
 ※4基地のサイロ数を半減してアラスカ州に新鋭設備の基地をひとつひらけばよいのだ。
 ミニットマンのコマンドシステムはアナログ電子環境。これをデジタル化するところから開始しなければならない。
 誘導装置は、MXの場合、1基で120億ドルもしたものだった。それはバスケットボールほどの容積に、1万9401個の部品が組み込まれている。
 液体の中にジャイロが浮かせてあった。サイロの中に置かれている状態で、地球自転速度の微妙な変化すらも検知ができた。GPSには頼らない時代に開発されたので。
 ※何を持つか、ではなく、何をするか、なんだよね。ト政権は何かを解決する気は無く、解決のための何かをしているフリをするのみの演出政治サーカス集団に堕落している。今宣伝している3隻の空母、GBIの増強、中共への「お願い」……、これらはすべて無意味である。
 次。
 Ridzwan Rahmat 記者による2017-5-30記事「Vietnam receives Hamilton-class cutter from US Coast Guard」。
  米国からベトナムに、旧沿岸警備隊所属の中古船『モーゲンソー』が、76ミリ自動砲付きのまま、ひきわたされた。
 ハミルトン級の1隻で、48年間、米コーストガードで使われていた。
 根拠法は、「対外援助法」=Foreign Assistance Act。
 余剰の米軍の装備は、外国政府に対してプレゼントして可い、と定めている。
 この中古船は、艤装品込みで800万ドル相当の現在価値がある。
 吃水6.1m、幅13.1m、縦115.2m。
 29ノット出せる。巡航は15ノット。
 副火器のブッシュマスター×2と、1基のCIWSもそのまま引き渡したのかどうかは、不明である。
 ※機密が漏れるのでさすがにCIWSは無理なのでは……? しかしわが海保の機関砲も対ドローン用にCIWS化するべきではないのか。米国から中古品を買ったらどうなのか。


中古兵器の対外無償譲与が法的に可能になったとはめでたからずや。

 まだ使えるけれどもわが国の最新の安全保障ニーズには適合しなくなっている――という兵器が自衛隊にはゴマンとあるから、それを全部ASEANにプレゼントしてしまう。
 それによって大綱の別表に空いた「空欄」を、最新のニーズに合うようなふさわしい装備で埋める。こうやって「進化」のスピードをまきあげなかったら、日本は近い将来に韓国軍にすら、してやられますぜ。
 次。
 Stew Magnuson 記者による2017-5-26記事「Fuel Cells Fail to Make Inroads With the Military」。
  ※この記者さんは、わたしが『「グリーン・ミリテク」が日本を生き返らせる!』を上梓した2010年より前からずっと軍用の燃料電池や植物油等による代替動力源の取材を続けている、筋金入りの脱石油オタクである。
 全米防衛産業協会主催による「ジョイント・パワー・エクスポ」がヴァジニア・ビーチで開催中。
 米四軍は、燃料電池の実用を当面、見送る。
 ただし研究は続行される。
 残念ながら、歩兵が携行するにはまだ重すぎる。重さの割りに電力が長持ちしない。
 ※現在、米軍の地上兵は重量負担が過大になりすぎていて、有史いらい最もヘヴィーな兵隊と化しており、骨や筋肉の故障をカバーするためステロイド剤に頼らざるを得ないなど、不健康のスパイラルが人権問題になりかかっている。これと比べると自衛隊は天国だ。
 燃料電池は、水素と酸素を化合させて電力を引き出す装置である。
 酸素は大気中にありふれているが、水素は、化石燃料、天然ガス、プロパン、メタノールなどから取り出すしかない。
 これを最前線でどうするんだという話。そこが実用化のネック。
 四軍は、1990年代の前半に、共通基本燃料としてはJP8を使うことを決めている。兵站を合理化し、兵站線の負荷をできるだけ楽にしてやるため。兵站線が疲れてしまったのは、イラクとアフガンへの泥沼常駐が関係している。
 とにかく水素は、流通も貯蔵も容易ではない。
 プロパンやメタノールは、イラクやアフガンの戦場へ大量に推進補給するのに全く不向きである。
 となるとJP8からなんとか水素を取り出すしかない。
 それが、なかなかそうはいかない。
 JP8(これはジェットエンジン用の灯油だが、米軍の全ディーゼル車両用にもそのまま給油されている)から水素を取り出そうとするためには改質させる工業プロセスが必要だが、そのさい不純物(特に硫黄)がフィルターや触媒を通り抜けてしまうと、燃料電池はダメになってしまうのだ。
 米国内で精製されたジェット燃料に含まれる硫黄分は15ppmと少ないから好都合なのだが、海外で調達したジェット燃料はその限りではない。
 湾岸戦争のさいにサウジアラビアで調達したジェット燃料には3000ppmもの硫黄分が含まれていた。
 米軍以外の誰も、JP8やから硫黄の混じらない水素を取り出そうなどという目的意識をもっている機関や団体は無く、したがって、このめんどうな開発はすべて米軍内部で研究を進めるしかないのである。
 実用化までの道程を9里程であらわすならば、いま、研究は5里まで来ているところだ。
 軍用の小型UAVの内燃機関は、実はとてもメンテに手間がかかる。だから軍としては、できたら、これは燃料電池+モーターに変えてしまいたい。
 水素タンクの代用品としては、「水素化アルミ」が有望材料だ。「アレイン」という。
 アレインは個体で、水素が結びついている。もともとロケット・モーターの材料。
 毒性が無く、安定。数十年放置しても質が劣化しない。
 このアレインを、重さ2.8ポンド以下のコンテナに封入し、あたかもそれを「乾電池」のようにして戦場で兵隊が次々と消費するようにしたい。この試みは陸軍が先行して研究中。
 アレインの難点は、製造しにくいこと。
 次。
 ストラテジーペイジの2017-5-27記事および5-25記事。
   2017-4-27にロシアは、最新型で全部で4機しかないAWACSのA-50Uをシリアに移動させた。これはイスラエル軍のF-35がレーダーにどう映るかを調べるため。
 イスラエルは50機のF-35Iを発注済み。うち33機は2021年までに納入される。
 最初の20機はF-35Aそのままだが、イスラエルは受領後にそれを「I」型に改造する。
 21機目以降は、米国内の工場で最初から「I」仕様で製造される。
 イスラエルが6機装備するF-35はすでに訓練飛行でシリア国境を越えている可能性がある。
 軍用機にかぎらず、いま一番大事な技術は、データ融合。複数のビデオカメラとレーダーの情報をソフトウェアがリアルタイムで総合して、指揮官の役に立つスタイルで表示してくれること。
 地上とのデータ共有もできる。F-35パイロットが感心するのは、ソフトウェアがパイロットをアシストしてくれる技術はここまで進化したのかということ。
 イスラエル軍パイロットの経験が、過去にも、米軍の新型戦闘機のソフト開発に反映させてきた。今回もそうだろう。
 ロシアの新AWACSの「U」型は2011にデビューしていたが、外国軍は実戦場でその能力を密着観察(自軍のエリント機で)する機会がなかった。
 ところが向こうからシリアまで持ってきてくれたものだから、米軍はさっそくF-22を「エリント機」として、このA-50Uのレーダー特性を追いかけ、解析しているところである。
 むろんイスラエルもF-35で情報収集中。
 ステルス機の真面目は、こうしたエリント・ミッションでこそ発揮されるようだと、米軍もイスラエル軍も認識中。
 もともと米軍の1977デビューのE-3がソ連を刺激し、イリューシン76をベースに開発され、1984年から40機のA-50が就役させられた。
 しかし中共はそれを高く評価せず、独自に双発のボーイング737-800を母体にAWACSをこしらえている。
 イリューシン輸送機は維持コストがかかりすぎるのだ。自重も倍違うし。


坊さんを乗せたタクシー運転士が脳血管障害を突発。行く道が思い出せないのに体面を気にして言い出せず、葬式に大遅刻。

 ……という実話を田舎のタクシーの乗務員さんから数年前に聞かされたのを思い出した。山村地帯だった。けっきょくそのベテラン運転手氏はすぐ引退したそうである。もし飛行機のベテラン機長に同じ症状が起きたとしたら、副操縦士には何ができるだろうか……?
 キングエアー350は、C-130の次に世界で多用されている輸送機だ。1960年代から6000機以上が製造され、老成・円熟している。米軍もC-12、RC-12、MC-12などとしてイラクでもアフガニスタンでも重い装備を積んで運用中。最初は1970年代に米陸軍で採用したが、今では無人のプレデターを重用したくない空軍が大贔屓だ。もちろん、空中で突然分解したなどという話は聞かれないのである。
 次。
 Keith Nightingale 記者による2017-5-21記事「The Higgins Boat: Wood, Steel, and Purpose」。
    ノルマンディー海岸に着達した大発みたいな舟艇は「ヒギンズ艇」と呼ばれる。
 1艇には25人から35人の重装備の兵隊がギュウ詰め。
 ニューオリンズにある工場で発明された、積層合板製の平底上陸用舟艇であった。
 これを設計したアンドリュー・ジャクソン・ヒギンズはアイルランド系で大酒飲みだった。
 1920年代から30年代にかけ、ヒギンズはメキシコ湾岸(ルイジアナ低湿地)の石油掘削業者のために舟艇で物資を届ける零細事業主だった。その商売上の必要から、2フィート未満の吃水の物資搬送艇をいくつも自作していた。
 平底。舳先の落とし倒し扉は、当初から備わっていた。エンジンは強力でなくてはならなかった。動力系は、水中植物がまきつかず、泥や砂をもろともせず、後進も自在なものでなくてはならなかった。
 WWIIが近づくと、ヒギンズは商機を嗅ぎ取った。1939年に比島で伐採されたすべてのマホガニーを彼は私費で買占め、それをじぶんの造船所にストックした。
 政府からの最初の発注はPTボートだった。これには主材としてマホガニーが必要だった。
 真珠湾の直後、彼は米海軍に、自分の設計した舟艇は「突撃艇」にできる、として文書で提案した。米海軍省は、自組織の艦政局が考えたものではないという理由から部外者のヒギンズの提案は採り上げなかった。
 海軍は老舗の造船所に上陸用舟艇を製造させている。しかしそれは欠陥品であることが初期太平洋で証明される。船底断面がV形では、すぐにリーフにひっかかり、海兵隊員たちははるか沖合いから泳いで敵前上陸しなくてはならないのだ。
 ヒギンズは連邦議員に熱心に働きかけ続け、とうとう大統領の注意を惹くことに成功した。1942年である。
 ※FDRは三選を狙っていたから南部の政治家たちを無視できない。
 ヒギンズは複数の試作品、LCA(ランディング・クラフト、アソールト)としてのヒギンズ・ボートを海兵隊の前ですでにデモンストレーションしていた。それについて絶賛した海兵隊指揮官の手紙が、ヒギンズのプレゼンには添えられていて、ついにFDRをも動かしたのだ。
 ※FDRの長男がマキン挺進作戦に従軍していることも少しは関係あるのだろう。そのときは潜水艦とゴムボートだったが。
 FDRは海軍に、ヒギンズと契約せよと命じた。
 最初の量産型ヒギンズ艇はガダルカナルで有用性を立証。海兵隊のヴァンデグリフトも海軍のニミッツも太鼓判を押したので、ヒギンズはさらなる大量発注を米海軍から受けた。
 ヒギンズはミシシッピ・デルタ地区で工場を大拡張させた。
 そのさい、南部の文化とはそぐわない、厳密な掟も創っている。
 まず、白人工員と黒人工員を同じ製造ラインで協働させ、決して分離を許さなかった。
 給与は米国平均より高くし、遠くから優秀な工員が集るようにした。
 男女工員の賃金格差はなかった。しかし労働者が示した能力のみを基準に昇進させた。
 工場内には育児所までも完備させ、子持ちの労働者が仕事に集中できるようにした。もちろん、黒人も分けない。工場内診療所も同様であった。
 ルイジアナの大湿地帯に彼は18ヶ月で8つの工場を新設している。
 大型のLCT(ランディング・クラフト、タンク)から小型の平底艇まで、そこから送り出された。
 1943末までにヒギンズのデザインが、世界各地の沿岸戦場でのスタンダードになった。
 アイゼンハワーは、これらの兵器のおかげで連合軍は戦争に勝てたとして戦後に例示したものの一つに「ヒギンズ氏のボート」を含めた。
 ヒギンズ艇は基本的に木製だが、舳先の起倒式ランプドアだけは、金属板であった。
 そのランプは航走時に閉じた状態では舷側高よりさらに1フィート高くなっており、その部分にはスリットがあって、兵員が岸方を見ることができた。
 ランプは倒して斜板にしたときに車両のタイヤ等が滑らないように表面に畝があった。