米大統領は携帯電話を所持できない。居場所をトラッキングされてしまうから。逆にNSAは迂闊な外国元首の現在位置を常時電波で把握中。

 KIM GAMEL AND YOO KYONG CHANG 記者による2016-11-16記事「Land-swap deal reached for THAAD battery site in S. Korea」。
  THAADは、来年、ロッテ・スカイヒル・カントリークラブの敷地に展開することになった。ロッテ・インターナショナル社は、その山の中のゴルフ場を、京城[ソウル]近郊の国有地と交換する。
 ただし破談になる可能性も残る。
 どうみてもギョンギ県の国有地の価値の方が倍以上あるのだ。ロッテはその評価差額を国に支払わなければならない。
 在韓米軍司令官のビンセント・ブルックス大将は、THAADは2017年9月までには韓国に配備されると言っている。※10月で米連邦年度予算は切り替わるので、ある意味とうぜんの発言。
 次。
 John Spencer 記者による2016-11-15記事「The Most Effective Weapon on the Modern Battlefield is Concrete」。
   俺は2008年にバクダッドに歩兵として配備される前はコンクリートのことなど何も知らなかった。だがそこでは設置式コンクリート障害物のあらゆるタイプについて知ることが死活的だったから、俺はたちまちエキスパートとなった。
 コンクリート・バリアーの各タイプごとの重量。それ1個のコストがいくらするのか。各タイプごとに設置や移動に必要なクレーンの等級。ひとばんで何個設置できるのか。軍隊の輸送トラックのパワートレインがぶっこわれるまでにコンクリート障礙物は何回運べるか……。
 障碍物には名前がついている。高さ3フィートで重さ2トンの「ジャージー」。これが最小だ。
 高さ6フィートで重さ3.5トンの「コロラド」。高さ6フィート8インチで重さ6トンの「テキサス」。
 そして高さ12フィートで7トンの「アラスカ」。こいつが最大だ。
 「Tウォール」というのは高さ12フィートで6トンの壁だ。
 塹壕補強用の構造材は、高さ6フィートで重さ8トンある。
 警備タワーも出来合いのコンクリート製がある。高さ15フィートから28フィートまでいろいろとな。
 2004年にイラクで路肩爆弾による被害が増えると、主要道路の両側を「Tウォール」を並べて閉鎖するようになった。
 「Tウォール」は1個が600ドル以上した。8年間、ひたすらイラクの道路網にこれを設置し続けたんだから、総額では数十億ドルだろうな。
 戦場では敵もすぐに学習する。ゲリラはこんどはコンクリート壁の上や、壁の中にIEDを仕掛けるように進化しやがった。だがその威力は減じたよ。
 需要増にともない、コンクリート製造工場もイラクじゅうに建設された。
 サドル・シティではひとばんに122個の「Tウォール」を設置したこともあったよ。
 30日かけて3000個の「Tウォール」で全長3マイルの壁をつくった。サドルシティにな。
  ※記者のスペンサー少佐は二等兵で入隊して曹長から歩兵少尉となり、レンジャー教官、空挺など23年のキャリアを有する。今はウェストポイント内の現代戦研究所に勤務。


チタン合金の屋根は富裕住宅のステイタスなんだという方向のPRが足りない。「見せびらかし消費」を誘わなければ。

 Bob Woodward記者による2016-11-13記事「Trump is about to learn all of ‘our deep secrets’」。
  政権の移行期間中、次期大統領はまず、米国の諜報能力について説明を受ける。
 ついで、現在進行中の秘密作戦について。核戦争になったときのオプションについても。
 オバマの回想。このブリーフィングは2008にシカゴの防備万全施設で受けた。そのビルの窓に鉄格子があるのは幸いだった。もしなければ、そこから飛び降りていただろう。そのくらいのショックだった。
 トランプのスポークスマンはホープ・ヒックス(♀)。
 政権移行期間の終始にわたって、このブリーフィングは続く。それが過去の常例である。
 CIAの公表名簿に記載されていない、外国で活動しているスパイの名前。これも、もしトランプが望めば、教えられる。その海外スパイたちのために米政府は巨費を割いている。しかし過去の次期大統領は、めったにその名を問わなかった。
 進行中の秘密作戦は、トランプが新命令を出さない限り、続行される。
 もし新大統領が新しい秘密作戦をスタートするなら、そのことを上下両院の「情報委員会」に知らせなければならない。
 その極秘情報を共有していい「8人組」とは。上下両院の2大政党の院内総務、つごう4名。プラス、情報委員会の委員長2名、そして最有力委員2名。この8人以外の議員は何も知らされない。
 そして新大統領は、米国がいかに核の不拡散のための秘密作戦を遂行中であるか、知らされる。
 ※もしトランプが来年1月以降、「日本を核武装させろ」と言わなくなったなら、それはわたしの仮説の「ニクソン=毛」密約についてブリーフィングされたからだろう。
 ついで、他国政府のコンピュータネットワークに対する攻撃能力。
 フットボールとよばれる核発射命令ラップトップPC。それには「ブラックブック」という75ページの手帳がついている。核攻撃のすべてのオプションについて、コードが記載されている。
 対露の核攻撃はおおきく三種類。軍事目標限定。軍事経済まで拡大。指導者目標限定。
 もちろん、他に多数のオプションが。
 ブラックブックには、各オプションの想定殺害人数も併記されている。大きいところでは1都市で100万人が死ぬ。
 ここが新大統領にはショックなところだ。というのはICBM反撃命令は数分以内に下さねばならない。側近やセクデフやNSCメンバーに相談しているヒマなどないのだ。ゆえに大統領本人が常に頭の中にICBM核オプションのすべてを入れておかなければならない。これを就任日までに真っ先に暗記しておかなければばならないのだ。それには想定被害人口の数値もある。世界を吹っとばすオプション。それが6種類以上ある。だからショッキング。
 ブッシュ(子)は就任の5日前まで核ブリーフィングを受けていない。
 過去のすべての大統領は、このブリーフィングをよろこんでいなかったようである。
 次。
 Kristina Wong and Rebecca Kheel 記者による2016-11-12記事「Five things to watch for with Trump’s Pentagon」。
  もしトランプが国防費を増やすと5830万ドルの予算枠が7000万ドル近くに増える。
 ※イスラエルにF-22を売れというかもしれませんなあ。義理の息子がアレだから。
 国防費天井切り詰め法は2021まで有効なので、これを撤廃するには議会に法改正してもらわねばならぬ。
 しかし共和党議員たちとて野放図な軍事出費には賛成していない。マケインとは対立するだろう。
 また、富裕層に対してまで減税すれば、政府の赤字は増える。
 シリアについてはアサドでいいじゃないかというのがトランプの意見。
 難民が欧州にやってこないようにシリア内にセーフゾーンを設けるともいう。
 しかしロシアはそのセーフゾーン内の集団を「テロリスト」認定して爆撃するだろう。そこから米露戦争になる可能性がある。
 トランプは2016-8に「ネイション・ビルディング」は終わりだ、と宣言している。だからアフガンからは撤退。
  ※中共をして中央アジアのイスラム聖域を制圧させれば一石二鳥じゃね。
 トランプは就任前にプーチンと会うつもりである。
 副大統領のペンスは、シリアでロシアと対決する気満々。
 国務長官になるのではないかと下馬評のある上院外交委員長のコーカー。彼もシリアでのロシアの行動には反対だ。
 ブルッキングスのマイケル・オハンロンによれば、NATOについてトランプにはいつくかの手がある。たとえば「GDPの2%を拠出してない国の防衛には米国は関知しない」と宣言することだ。
 オバマは2017-1-20までにグァンタナモ刑務所を閉鎖する気だった。しかしトランプはそれを維持するだろう。
 ※キューバに領地をもっているのがおかしいので、キューバにグァンタナモを買い取らせればいいのではないか。不動産屋なんだから。その資金は国際金融団が融資するよ。
 次。
 Gordon G. Chang 記者による2016-11-12記事「Here’s How China and Russia Will Test Trump」。
  NATO条約の第五条が、共同防衛を謳っている。リトアニアが攻撃されても、それはアメリカが攻撃されたものとみなす。
 トランプが減税し、かつまたインフラに投資しはじめると、アメリカ経済にはブームが起き、金利が上がるだろう。
 現在でもシナからは年に1兆ドルが流出している。それが加速するだろう。
 次。
 Jeffrey Goldberg 記者による『アトランティック』2016-12月号記事「The Lessons of Henry Kissinger」とその余禄。
  選挙前にキッシンジャーに長いインタビューをしたのを記事にした。アトランティック・マガジン12月号。
 インタビューは、2016-11上旬より前の長期間をかけたものである。
 トランプの当確後、キッシンジャーに電話で追加インタビューした。彼いわく。ISや他のジハーディスト組織は2017-1月早々にトランプ新政権を試みるはずである。お手並み拝見だ。そしてオーバーリアクションも引き出そうとするだろう。
 キッシンジャーもヒラリーが勝つと思っていたので驚いた。
 トランプはプーチンの擁護者ではないね。しかしプーチンから声援されたら、それには応える必要があると彼は考えちょる。
 全ての外国は、6~9ヶ月、様子を見るはずだ。
 しかしNGOテロリストはそんなに待つ必要がないから、もっと早く威力偵察を試みる。
 トランプ現象の背景。アメリカの中産階級が、インテリや学者たちから価値を攻撃されていると思っていて、その反撃に出た。
 大統領には避けられない義務がある。アメリカは何を達成すべきか。アメリカはなにを避けたいか。どうしてなのか。それを説明しなくてはいけない。
 バーニー・サンダース上院議員は、ヒラリーがキッシンジャーからの承認を求めているといって予備選挙段階で酷評していた。
 キッシンジャーは93歳だが、彼が基本的に正しいと思っていることに人々を同意させたいという熱意は衰えていない。だからすぐにインタビューに応じてくれた。
 ただし発言内容の取り扱いについては異常な制限を求められた。
 たとえば活字にするときは、アトランティック誌が前に特集したオバマ記事と同じ、1万9000語の長さにして欲しいと。
 インタビューはトランスクリプトされ、彼に示された。彼は、論点をわかりやすくし、論議を拡張するためにためだけ、それに手を加えた。これは事前の約束だったが、彼は守った。
 キッシンジャーの田舎の家はコネチカットにある。5月の週末に初回のインタビューをした。
 キッシンジャーは、米支関係こそが最重要の国際関係だとわたしを納得させた。
 キッシンジャーは、オバマがそれ以前の大統領のように彼に相談したがらないことに不満のようであった。
 オバマ政権は過去の政権の外交に批判的である。それはキッシンジャーには、彼個人への攻撃と映っているようであった。
 オバマにインタビューしたとき感じたこと。部屋には常にキッシンジャーの亡霊が居る。そしてオバマはキッシンジャーは冷戦期に失敗したと思っている。「クレディビリティ」(有言実行)を証明すべくカンボジアまで爆撃したニクソン=キッシンジャーは愚かだったとオバマは信じている。オバマはそういう前例を破った〔=レッドラインを超えたアサドを空爆しなかった〕ことを誇りに思っている。
 前のインタビュー記事に出ているようなオバマの態度、すなわち他国指導者を見下したような物言いが、キッシンジャーには不快である。一国の指導者は謙虚さを身に着けているべきだ。※いや単にじいさんの自尊心が巨大すぎるんじゃね?
 サンダースにいわせるとヒラリーは、不徳な連中とつきあいすぎている。
 キッシンジャーはヒラリーと近い。しかしそういう表現をするマスコミ記者は、要するにヒラリーが嫌いなのだ。外交面のあたりまえの結論というものが理解されていない。
 以下は選挙前のインタビュー。
 議会もメキシコも、壁には協力しないだろう。
 ヒラリーが国務長官時代、よくキッシンジャーと懇談していた。
 キッシンジャーが認める、天賦の才能があった政治家。それはレーガンとビル・クリントンとロックフェラーだ。
 もしヒラリーが勝っていた場合、民主党内のサンダース派がすべての政策について抵抗した可能性がある。
 TPPの意見を聞くためオバマは2015-11に存命の元国務長官OBのうち4人だけ集めた。パウエル、ベイカー、オルブライト、キッシンジャー。
 ソ連封じ込めは正しかった。ウォレスだけが反対したが放逐された。モサデク追放はやりすぎだったかも。
 モサデクのイランにはわれわれは堪えられなかった。だから追放した。
 今日、エジプトやトルコの内政にわれわれは不快である。
 オバマは対ベトナムの武器禁輸を撤廃した。これにシナ人は苛ついている。
 ※過去の米政権は、中共に対して、「ベトナムには兵器を売らない」と密約していたのか?
 たとえアメリカ1国となっても、何を追求しなければならないか。これをまず新大統領は自問すること。
 次に、たとえアメリカ1国となっても、何を避けなければならないか。これを自問すること。
 諸地域のカオスをどう減らしていくか。
 キッシンジャーは1955以降の政治については、ほぼインサイダーとして語る資格がある。
 アメリカが達成した人権はすばらしい。しかしそれはベトナムやイラクには実現できなかった。
 第二次大戦が終わったとき、米国のGNPは世界の55%であった。
 しかし今はGNPで22%ぐらいだ。これがすべてを物語る。
 いまや諸政策をアメリカ1国だけでは押し通せないし、小さいプロジェクトを同時に多数実行することもできなくなっている。
 サダム追放は正しかった。しかしイラク民主化は余計だった。
 アサドがレッドラインを超えたのに爆撃しなかった。オバマは、カンボジアを念頭に、そう決断したようだ。
 言い訳させてもらおう。
 当時カンボジア内には北ベトナム軍が4個師団もいて、南ベトナムに越境攻撃しては毎週500人の米兵を殺していたんだよ。
 パキスタン、ソマリア、イエメンでのドローン爆殺にわたしは賛成なんだ。
 記者は判断する。オバマはこう考えている。ニクソンとキッシンジャーがカンボジアを爆撃した目的は、ハノイに対して「おれたちは本当にやるぜ」と認識させる演出にあった。つまり、ハノイに対するクレディビリティ強調のためだった、と。
 それは間違った総括だ。ニクソンが就任してから1ヵ月で、カンボジア内のベトナム軍のために米兵が2000人死傷していた。それを減らす必要があったのじゃよ。
 ニクソンが就任してから2週間で、ベトナムは攻勢を開始したんじゃ。
 インドシナからは総撤収するしかなかったんだが、ジョンソン政権末期にはそんな政策オプションは微塵も検討されとらんかった。
 55万人もインドシナに送っていたから、撤退は18ヶ月はかかる。
 しかも敵は80万人で取り囲んでいた。
 オバマはこう語ってくれた。アサドを本当に爆撃したところで、米国は敵からクレディビリティを買うことにはならなかった、と。
 ※これはおかしい。アサドを無人機爆撃で脅かしてやる方法は常にあったはずだ。キッシンジャーもそこをほのめかしたのだろう。
 ジョン・ケリーは過去1年、オバマにアサドを爆撃させようと相当骨を折ってた。
 ケリーはベトナム戦争に抗議した若者だったのに、今ではカンボジア爆撃みたいなことをやりたがっている。
 アサドが消えても次に何が起きる? そこを考えろって。
 米支秘密交渉はパキスタンを仲介者として進めていた。
 しかしパキスタンは同時に人権弾圧国家でもあった。特にバングラデシュにおいてひどかった。
 米支が関係を公にしたあとで米国はパキスタンに対して、バングラデシュの自治を認めろと迫った。
 1971-11にパキスタンの大統領はニクソンに、1972-3にバングラデシュを独立させると約束した。
 ところが1972-12にインドは、難民の流入を解決するために東パキスタンに攻め入った。インドは直前にソ連から武器弾薬を援助してもらっていた。
 米国とインドとの関係は1974に回復された。というのは1972-2に米ソがソルト1を調印して手打ちしていたからだ。
 シナの歴史は西洋からの孤立の歴史なのだ。それでよかったのだ。
 中共の外交観念は独特である。彼らは西側の国々を対等な公的主体だとは看做さないのだ。(it〔=チャイナ〕 did not consider foreign countries as equal entities.)
 2049年、すなわち中共建国から100年後までに、習近平は米国と物質的・軍事的に並ぶつもりである。
 習近平はWWIの再現のようなことは避けたいと考えている。今、西側と対決すれば破滅だ。だから、現実戦術として、周辺の敵国をひとつづつ味方に取り込む努力を続ける。
 キッシンジャーは、その習近平の目標に米国が協力すべきだと主張する。
 シナ人は、平和のための永久的な解決というものはこの世界にはないんだと考えている。
 ひとつの問題が片付けば、それはイコール、「次の問題発生」なのだ。
 そこで彼らはトレンドに気をつける。これから15年間のトレンドに気をつけているのだ。
 このギャップがあるために米支首脳会談は実りがない。彼らは長期を考え、対する米国のマスコミは短期の成果を大統領に期待しているから。
 シナは隆盛したのではなく、19世紀の落ち込みだけが例外であったのだとシナ人は考えている。彼らは終始一貫、世界の中心の王国なのだと思っている。
 米国の戦略家は、解決方法ばかり考える。解決したら、去るつもりだ。
 シナ人は、解決などはできないものと考え、プロセスに注意している。彼らは問題から立ち去れないと覚悟している。ワシと周恩来との会話のトランスクリプションを読んでみてくれ。そうすれば分かる。
 このギャップあり限り、米支は噛み合わない。
 米支貿易戦争だけはしてはならない。
 シナを封じ込めろという政策には私は反対する。
 むしろTTPに中共を加盟させるべきなのだ。
 プーチンを理解したくば、『マイン・カンプ』ではなく、ドストエフスキーを読まねばならぬよ。
 プーチンはロシアが弱くなったことなどよく承知の介だ。
 オデッサもセントペテルスブルクも、湿地だったところを、ツアーが都市に造成させた。
 スウェーデンのカルル7世は、なんでウクライナまで南下する必要があったかというと、ロシアの貧農たちが率先して焦土戦術をとったので、糧食が得られなかったのだ。貧農が愛国者であるというのがロシアの恐ろしさなのだ。
 民主党左派と共和党ネオコンは、ロシアなど亡びればいいと思っている。これが多数派である。
 キッシンジャーは反対する。秩序が大事だ。ロシアをバルカン化してはならない。
 ウクライナの騒動が満州までひろがってしまうんだぞ。
 ウクライナはロシア圏と西欧圏のつなぎの橋となるべきで、どちらかの最外縁陣地となるべきではない。
 ウクライナは、今のオーストリーやフィンランドのようになるべきである。NATOの一員ではなく。
 ドンバスは切り取らせてはならない。そうなったら残ったウクライナは永久的にロシアの敵国となる。そこはプーチンを説得しなければならない。
 プーチンが2001に権力を握ったとき、アメリカは対イスラムの同盟者だと思っていた。ところがアメリカが2004からウクライナのNATO引き込みに動いたので、アメリカはもはや敵であると考えを変えたのだ。


韓国大統領がリンチを免れる唯一の方法は、今このタイミングで「原爆開発を命ずる」ことだろう。

 Brendan McGarry記者による2016-11-9記事「Trump Surges to Become Next Commander-in-Chief」。
  米軍の関係でトランプがこれから直面するのは、全戦闘兵種に女を混ぜろという政治トレンド。
 米軍内では、しかし女の将校でも、ヒラリーよりはトランプを選好していた。
 米軍将兵のうち、どんどん昇進してやろうと考えているグループは、三対一の比率でトランプ支持だった。これは10月の「ミリタリー・コム」のオンライン調査への自主回答による。
 ラテン系の男子将校も、トランプの方が軍人の待遇のことを考えてくれるだろうと期待している。
 退役軍人たちも、概して共和党候補を好む。
 唯一、黒人の男女将兵だけは、ヒラリーを選好した。
 トランプは、米陸軍を54万人まで増やすといい、海兵隊は36個大隊〔陸軍の旅団相当〕まで増やすといい、海軍は350隻まで増やすといい、空軍の戦闘攻撃機は1200機以上にすると言っている。
 ところで、ペンタゴンのFY2017の予算要求(執行は10-1からスタート)は、陸軍46万人、海兵隊歩兵大隊24個、軍艦287隻、A-10を除く戦闘攻撃機1170機である。これには州兵と予備役は含まれない。
 トランプはその計画を実現するためにどうやって議会に働きかけるつもりか、何も語っていない。少なくも数百億ドルかかる話である。
 不法入国者でありながら米軍に勤務している兵隊に対してはトランプは追い出さないと言っている。
 プーチンが東欧やバルト三国に侵攻した場合、トランプはNATOの自動総力反撃には乗り気ではない。
 特に、NATOとして合意決定している防衛費の努力額、すなわちそれぞれのGDPの2%を軍事費に支出していないメンバー国に対しては、トランプは不快に思っている。2016-7時点で基準を満たしているのは五ヵ国だけである。すなわち、米国、ギリシャ、英国、エストニア、ポーランドは合格。
 いまイラクには5000人の米兵や米人軍属が所在する。
 副大統領に決まったマイク・ペンス(今はインディアナ州知事)は、シリアではロシアと強く対決すべきだと言っている。具体的には、アレッポ市の反アサド系住民に対する露軍機の空襲をもしプーチンがやめなければ、米軍機が直接アサドを爆撃するべきだ、と。しかしプーチン好きのトランプは不同意だ。
 トランプは、アフガンには8400名の米軍を残す。
 また、核拡散リスクこそが米国安全保障上の筆頭脅威だと認めている。
 トランプは、退役軍人庁が運営する病院はもはや腐敗企業だと断じ、他の普通の一般病院に、退役軍人がその保険証で受診できるようにすると公約もしている。
 次。
 Cristina Silva記者による2016-11-9記事「Will Donald Trump Trigger World War 3?」。
 トランプは、もしヒラリーの言うとおりにするならシリアから第三次世界大戦に突入じゃないか、と発言している。
 昨年、米国は、6000億ドル以上の国防費を使った。
 トランプが、今47万5000人の陸軍を54万人にする、などの政策を実現するためには、連邦予算は今より300億ドル膨張させる必要がある。
 したがってトランプは、その300億ドルを、日本、サウジアラビア、ドイツがこれから分担するように求めるだろう。
 2012年の大統領選挙中、ミット・ロムニーは「米海軍の艦艇数は1916年いらいの最低水準なので、それを350隻に増やすべきだ」と主張した。オバマはそれにこう応酬した。「われわれは1916年当時より少ない馬、少ない銃剣しか持っていません」〔=100年前の軍艦と今の軍艦の数を比較して何の意味がある?〕。


スーダンでは塩素ガスとマスタード糜爛ガスの2種が普通に使われている。

 Ben Guarino記者による2016-11-8記事「At $800,000 per round, ammo on USS Zumwalt too pricey to fire」。
  『ズムウォルト』型は1隻が44億ドルする。
 ボルチモアで1号艦の就役セレモニーが10月にあった。太平洋コマンド司令官のハリス提督は、バットマンの軍艦だとこれを形容。バットマンのブルース・ウェインは億万長者という設定である。
 ハリスは、「安全保障への貪欲さ」といううまい形容でこの高額を正当化した。※ポジショントークであるが、さすがである。ボスのオバマはバットマン好き。
 全長610フィートあるが、レーダー反射像では十二分の一に抑制されるという。
 主火器は155ミリ砲×2である。これは巡航ミサイルよりも安価に地上を叩くためにロックマートが開発した。63海里〔=116.7km〕の射程を有する。
 その砲弾が落下するときはほぼ垂直なので、峡谷とか市街地内で、コラテラルダメジを抑制しつつ敵を直撃できる。
 弾倉がカラになるまで、毎分10発を射撃できる。
 ところがこのロケット付きのGPS誘導砲弾LRLAPには大問題があるとわかった。1発が80万ドルにもなっちまったのだ。ズムウォルトはこの誘導砲弾を600発、弾火薬庫内に定数として置きたいのだが、それは予算上、むずかしいだろう。ましてズムウォルト級が3艦以上になったら……。
 なんでそんなことになった?
 当初、ロックマートは、このLRLAP砲弾のコストは1発5万ドルだとプレゼンしていた。だったら600発くらい、金額的に、なんてことはないと考えられたのだ。
 ある人いわく。トマホークミサイルは1発100万ドルで、どんなフネでもこれを発射でき、しかも射程は1000海里〔=1852km〕以上もある。ところが1発80万ドルのLRLAP弾は『ズムウォルト』型からしか発射できない。コスパが悪すぎるだろう。
 ※比較するならばむしろハープーンかもね。射程がちょうど120kmぐらいだし。
 『ズムウォルト』型じたいも、同じ経緯を辿っている。最初は適価で32隻を量産するつもりだった。ところが開発が長引き、単価が爆上がりを続けた。しょうがなく、調達計画を24隻に減らし、さらに7隻に減らして、とうとう今は3隻で止めるということになっている。竣工しているのは1隻だけだ。
 次。
 ストラテジーペイジの2016-11-8記事。
  中共はこのたび、1974就役のSSNだった『091型 長征1』の原子炉を取り外し、展示見学用の保存艦に仕立て直した。放射能事故がなかったことをテレビで強調し、水兵をリクルートしたがっている。
 廃原潜の内部展示艦化は、1965年の米海軍のSSN『ノーチラス』と、2002年の仏海軍のSSBN『ルドゥタブル』(就役は1971)の2艦の先例がある。
 『091型』1番艦は2000年に退役した。しかし同型艦が他に5隻、現役である。
 今日まで世界で建造された原潜の総数は400隻を越えている。大宗はロシア製。
 冷戦の最盛期に米海軍は100隻の原潜を持っていた。今は70隻に減っている。
 1974にデビューした『091』型のソナーはフランス製の輸入品であった。多くの電装品も西側製であった。※SIPRI統計を見れば天安門事件後にいちばん早く中共に武器を売り始めた西側国はフランスとイスラエルだと見当がつく。いったい何を売ってるんだよ?
 シナ人は『091』型が酷い出来であることはわかっていたものの、2002に『093』型のSSNができるまで、捨てることもできなかった。
 いまは『095』型が仕上がっており、2010に進水している。それは2016には就役するだろうという。
 ロシアは冷戦中に250隻の原潜を建造し、40回の重大な事故を起こし、乗員400人以上が死んでいる。ほとんどは原子炉の事故だった。
 露軍にはいま、41隻の原潜が現役である。
 米海軍は過去に機械的故障によって2隻の原潜を喪失している。それによる死者は228人。
 次。
 JOBY WARRICK AND KAREN DEYOUNG記者による2016-11-4記事「The real story behind Hillary Clinton’s feud【宿怨関係】 with Vladimir Putin」。
  2013、つまり国務長官としての最後の年、ヒラリーはオバマに書いた。絶対にプーチンと一緒に仕事したがっているとは思わせるな。高い関心を示すな。サシのトップ会談の招請には応ずるな。無視せよ。
 ヒラリーの結論。プーチンが理解できる言語は、強さと決意のみである。
 駐露大使経験者のマイケル・マクフォールの証言。ロシアはヒラリーを長らく嫌っている。ヒラリーの政策も、過去のその実行も。
 上院議員だった2008-8に、グルジア侵攻の裏にプーチンの旧式な世界観〔旧ロシア帝国の肯定〕があると見抜いた。※いや単純に石油だろう。
 ブッシュ(子)は、プーチンにはソウルがあると2001に言った。しかしヒラリーは2008前半に、プーチンにはソウルは無いと言った。
 プーチンの大統領返り咲きは2012。
 メドヴェジェフはプーチンより13年若いのでソ連官僚だった経験がない。しかもセントペテルスブルグ出身で西側に親近である。オバマはそんなメドヴェージェフがリアルの指導者だと錯覚していた。ヒラリーはそうではなかった。


日本はロシアのウクライナ侵略を不問に付すのか? だったら中共から侵略されても誰も救ってくれないだろう。

 ストラテジーペイジの2016-11-7記事「。
  ロシアの軍事予算がこっそりと10月後半に公表された。2017年度は3割減となる。
 今、ロシアは45億ドルを国防に投じている。それは露国のGDPの3.3%である。
 国際油価は低いままと予想される。それを前提とすると、2017年にはGDP比3%となり、2018年にはGDP比2.8%にまでロシアの国防費は減ってしまう。しかも分母のGDPが、ずっと右肩下がりである。
 ウクライナ侵略前の2013年にロシアGDPは2兆2000億円だった。しかし侵略戦争の咎で経済制裁を受けた後の2016年のGDPは1兆5000億円に激下がりしている。
 一方で虚勢を張るための見せ掛けの軍拡をしている。これは何を意味するか? 見えないところで削っているのだ。たとえば、定期修繕や増改築が必要なインフラを、損耗腐朽したままに放置することである。
 政府が自国内のインフラを維持しなくなれば、いよいよ経済は縮む。不便を蒙る民衆は政府を恨むようになる。その鉾先を逸らすべく、ますますモスクワは「西側諸国がロシアを弱めている」との国内宣伝を打つ。
 いま、プーチンが必要としている「勝利」は3つ。シリアとウクライナでロシアの思い通りの政情が固定化すること。西側が対露制裁を撤回すること。そしてバルト三国と東欧諸国がNATOメンバーではなくなること。このどれかが実現すれば、国民に耐乏を納得させることができるから。
 西側からの経済制裁は、ロシア軍需産業に部品や部材の入手難を強いている。代用品が手当てできないうちは、兵器生産は止まる。代用品をみつくろうのには時間がかかり、しかも必ず割高である。ルーブルが他の通貨に対して高くなる要因もないので。
 ロシアは世界第三位の国防費大国の座から転落するだろう。ちなみに第二位の中共は、公称でGDPの2%しか軍事費に使っていない。しかし金額では、それはロシアの軍事費の三倍なのだ。なにしろGDPがロシアの七倍あるからである。
 第二次大戦中、米国はGDPの33%強を国防費に投じた。ソ連はGDPの50%以上だった。
 WWII後、ロシアはGDPの20%を越える軍事費を維持した。それがなんと1991まで続いたのだ。
 米国はベトナム戦争中、GDPの10.7%を国防費に使っていたが、1970年代には5.9%に低下。レーガン政権が一時的に著増させたもののレーガンが去るやすぐまた5.8%に戻っている。
 ロシア崩壊直後の米国国防費はGDPの4.1%に落ち、さらに2001年には4%も切った。
 シリアで判ってしまったこと。ロシア軍戦闘機は精密誘導爆弾を運用する能力があるが、その精密誘導爆弾のストックがロシア本国にはぜんぜんないらしくて、ちびちび投下することしかできない。
 いまや飛行機の数よりも誘導兵器の数がモノを言う時代なのに、ロシアにはそうしたハイテク消耗戦を遂行できる財力は無い。
 シリアのアレッポ市域では、アサド軍機と露軍機が、反乱軍と、域内の住民30万人の上に、爆弾を落とし続けている。アサド大統領は、この30万人が、シリア国外へ去るか、それともアサド政府の管理下の地域に住むのならば、安全に退去させてやると告げている。しかし住民たちは、反乱軍と運命を共にする道を選び、とどまっている。
 この爆撃について、米国と西欧諸国は、「戦争犯罪だ」と叫んでいるが、米欧にロシアを罰する意志力など無いことは見透かされている。
 2011のアラブの春開始いらい、アサド軍は反政府派住民を砲爆撃し続けてきた。爆撃して殺すのが目的ではなく、爆撃によって、反政府ゲリラを支援できない場所、すなわち戦闘区域外へ、もっと理想的にはシリア国外へ、反政府派住民が出て行くことを促したい、と欲しているのだ。
 これまでのシリア国内での死者の三分の二は、住民である。そのうちの8割が、アサド軍の攻撃の結果である。
 2015年にロシア空軍がシリア入りしてから、爆撃で殺される住民は増えた。ロシア機は、エイドのキャンプや、国連が開設した施設でも、そこに武装した人間の存在が認められれば、容赦なく爆撃する。これは国際法上、正当化される。「中立施設」がその中立性を尊重されるためには、武装兵が存在してはならないのだ。じっさい、反政府ゲリラたちはそれらの施設を都合よく利用しているのだ。
 露軍は2015-9からの爆撃で反政府派住民1万人を殺した。そしてそれを今後も止めるつもりはない。米軍が邪魔するなら、実力で対抗する。核の行使の準備もできているとモスクワは認めている。
 アレッポ近くでスホイ35がE-3に500m未満に猛接近。10-17のこと。
 空母『クズネツォフ』は、スホイ33とミグ29Kを載せ、駆逐艦3隻と補給艦4隻に囲まれて、ジブラルタルから地中海に入った。10-15にシリア沖着。英仏海峡を南下するときに、遠目にも錆びだらけであった。
 露軍のヘリコプターは、これまでシリアで4機、墜落している。
 アサドとトルコは不仲である。しかしトルコはロシアに工作して、ロシア製のSAMでトルコ機が攻撃されないように、手を打った。
 イランはS-300を配備しおえた。イスラエルは、GCC諸国が見返りの政策を約束するなら、GCC空軍に、有効なECMの方法を教えてやることができると言っている。
 ウクライナ戦線では、停戦にもかかわらず互いに銃砲撃はある。ただし、最初に警告射撃をして、全員が壕に退避する時間を与えている。
 10-16には、エレベーターにしかけられた爆弾で、ロシア派の民兵首領が暗殺された。
 これは、ロシアの統制にしたがわなくなった有力者をロシアが始末して見せしめにしたのだともいう。
 10-14、日本海のロシア沖で操業していた48人乗りの北鮮漁船をロシアの警備艇が臨検したとき、抵抗があったので、北鮮人1人を射殺し、6人を負傷せしめ、拿捕した。
 エアバスのC295は、最低200km/時で飛べる輸送機。そしてパレット方式でつみこめるプローブ・アンド・ドローグ方式の給油装置がこのたびできたので、時速200km以上で飛べるヘリコプターにも、空中給油がしてやれることになった。
 C295は最高時速570km/時。スペインに組み立て工場がある。
 ※日本がロシアには1銭も与えないで、しかもプーチンから感謝される方法がある。それは安倍総理がプーチンの面前で「日本はロシアがINFから脱退することを希望する」と言い切ることだ。INF条約はその当時は西欧の役に立ったものだが、極東の核バランスはそのご却って悪化させた。そしてNATO圏がポーランドまで前進した結果、ヨーロッパでも何の意味もなくなっている。今、これの破棄を提言しても米国の面子を潰さないでいられる大国は、日本しかない。なぜなら中共の核ミサイルで直接に脅威されている非核国だからだ。タイミングは、次の大統領が教書を出す前の、2016年内しかない。きっと、ロシアからも東欧からも西欧からも感謝されるだろう。


土壇場で1割負けさせるのはインド人の常套値切り術。

 David Hambling記者による2016-11-5記事「Drones Fight Back Against Laser Weapons」。
   実験でレーザーでドローンを撃墜したのは1973が最初。
 『ポンセ』にレーザー兵器LaWSが搭載されたのは2014のこと。
 対ドローン用のレーザーは、イスラエルでも開発中。
 果たしてドローンはレーザーから身を守れるか?
 鏡を使ったらどうか。
 問題は、鏡の反射率は決して100%ではないので、ミラーは一定率で熱を吸収してしまう。それによってミラーの損壊が起きる。
 そこで、X線でも反射できるブラッグ(Bragg)式の断熱ミラーの利用ですよ。
 微細なスペースが設けられているため互いに熱を伝えない、そういう多層構造によって、エネルギーを反射する。
 この構造を使うと、ある特定波長のレーザーに限れば、99.99%の反射率を実現できる。
 全波長のレーザーを断熱的に跳ね返せるような構造は、実現は至難である。
 しかし現用になっている兵器級レーザーの波長はそんなに広帯域ではない。だからなんとかなる。
 これから研究が進めば、敵のレーザー波長をつきとめた後から、戦場にて、自軍のドローンに最適のブラッグ・ミラー層をスプレー塗布できるようにもなるであろう。
 ナノ粒子の開発が、これを可能にしてくれる。
 米海軍研究所のONRでは、鏡の他にも、レーザーを受けると塗料が蒸散することによってその熱エネルギーを奪ってしまうというしくみでの防護も考えている。
 微細な空隙を設けた多層状の機体外皮材も研究されている。これは鏡のようにレーザーを反射はしない。そのかわり、最上皮層で受けた熱がスペース層で次々と断熱されることにより、最下皮層まで熱が伝わる時間を稼いで、バイタル・パーツを防護してくれる。
 ボーイング社の対ドローン用レーザーは、撃墜までに15秒もの照射が必要である。
 さすれば、もし自爆型ドローンが2マイル先から時速120マイルで飛来するなら、自衛する軍艦には迎撃交戦時間は1分間しかない。
 ということは、敵がもし5機以上のスウォームで突撃してくれば、わが軍艦の1基のレーザー高角砲はアウトナンバーされてしまう。
 今日では、同時30機のドローン・スウォーム運用が可能である。
 レーザー光は、ミスト状の粒子雲の介在によっても、散乱・減衰を余儀なくされる。 ※第一波のドローンが空中で自爆して煙幕を展張し、その雲の間から第二波の爆装ドローンがスウォームで突っ込めばよいのか。
 ONRでは、遠い将来の目標として、光をねじまげてしまう「メタ物質」の開発も狙っている。
 ※空間をねじまげればいいんじゃね?
 米海軍と契約しているベンチャー企業アヅィスは、無人機に搭載可能な、レーザー発射源を逆探知できるステレオ式センサー「ヘリオス」を開発中だ。敵のレーザー砲の破壊力に耐えてその発射源を瞬時に標定するや、即座に、その発射源に対して無人機の側から出力の弱いレーザー光を照射してやる。敵のレーザー砲の照準器は、幻惑されて目標を見失う。
 次。
 Matt Schudel記者による2016-11-6記事「Gene R. La Rocque, Navy admiral who became Pentagon critic, dies at 98」。
  「ラロック証言」で知られた退役海軍少将ジーン・ロバート・ラ・ロックが98歳で死去。10-31に。腎臓疾患で。
 ラロックの初任は1940年のパールハーバーだったので、日本軍機による空襲も見ている。
 1960年代に統合幕僚本部の戦略プランナーになった。しかし68年にインドシナの前線を視察したことで、彼は政府に対する批判者に転向した。
 なぜ米国がベトナムに関与しているのか、そしてまた、われわれはインドシナで一体何を達成したいのか、さっぱりわからなかった。
 ラロックの昇進は止まった。1972年に少将で退役した彼は、米国初の、退役将校たちで構成する、政府政策に翼賛的ではないスタンスの独立系国防シンクタンクを組織した。CDI(国防情報センター)といった。
 CDIは、政府や、軍需産業からの資金提供をすべて謝絶しながら、三十年以上、活動した。
 CDIが発行したニューズレターの『ディフェンス・モニター』は広く読まれた。ラロックらはそこで、ペンタゴンの兵器開発プログラムや調達中の兵器のどれが「無駄」なものであるか、忌憚なく指摘した。
 ラロックの考えでは、政府と軍がみずから兵器を開発するより、民間兵器メーカーに外注した方が、よいものが安くできる。
 こうした彼の所見は連邦議会内のリベラル派議員たちに支持された。
 ラロックは東西両陣営の全面核戦争を心配していた。
 〈敵はソ連ではなくて核戦争である〉と発言していた。
 CDIは、米ソが保有している核弾頭の総数はいまや5万発である、と推定して公表した。これは信拠するに足るデータとしては初であった。
 しかしレーガン政権3年目の1983にソ連のテレビに出演したことで、ラロックは米軍関係者のほとんどすべてを敵に回した。ただちに500人以上の退役海軍将官たちが右派系新聞『ワシントン・タイムズ』に全面広告を載せて、ラロックとCDIを非難した。
 かつてラロックの上官であった、元海軍作戦部長〔=軍令部総長〕のエルモ・ズムウォルト提督は、「もしラロックの考えがその通りに実現するならば、わたしの子供たちは自由世界で一生を送ることはできなくなるであろう」と声明した。
 ラロックとズムウォルトは1985に同時に連邦議会での証言を求められた。ズムウォルトはそこでラロックとの握手を拒んだ。
 ラロックは1918-6-29にイリノイ州で生まれた。父は自動車販売業だったが1929からの大不況で失職し、家具店を開いた。
 ラロックはイリノイ州立大学に進み、卒業を目前にして1940に海軍入りした。
 真珠湾が空襲されたとき、彼は在港の軍艦『マクドノー』の士官だった。
 彼の第二次大戦の体験は愉快なものではなかったようだ。彼は第二次大戦を舞台にヒロイズムを画いた映画は観ようとしなかった。
 1963に彼はジョージ・ワシントン大学で学士号を得、ジョージタウン大学からは国際関係論の修士号を得ている。
 現役最後の3年間は、マクネア基地にある全米国防大学校の校長として勤務した。
 ラロックはCDIを2000年代半ばまで運営した。2012にCDIは、PGO=「政府の見落としを見張る」という団体に吸収されている。
 先妻の死後、再婚したが、後妻にもまた先立たれている。
 先妻との間の3児は存命。他に養子が2人いる。孫もひ孫もあり。
 ニクソン大統領はラロックの電話を盗聴させていたという。ラロックは、それは望むところだったと後に語っている。なぜなら、たとえ盗聴を通じてでもよいので、一人でも多くのホワイトハウス高官や議会人たちに、われわれの得ているすべての事実を知って欲しかったからだ、と。


「読書余論」 2016年11月25日配信号 の 内容予告

▼古賀斌[たけし]『武士道論攷』S18-7
▼石田文四郎『日本武士道史の体系的研究』S19-3
▼東海林辰三郎『名将逸話 時代の武士』M45-7
▼『地學雑誌』1997-3 所収・松山薫「関東地方における旧軍用飛行場跡地の土地利用変化」
▼周緯『中國兵器史稿』1957
▼渡辺宗太郎『新しい警察』S24-5
▼小関尚志『日本臣道史』S16-9
▼箕作元八『西洋史新話(第六巻)武士道の華』S16-11
 英仏戦争史である。
▼田中義能『武士道概説』S7-10
▼葦津珍彦[うずひこ]『武士道――戦闘者の精神』1969
 ※学生闘争が激化していて、もうじき乱世が来ると予期した本。
▼石川公弘『過密の中の軍事基地』1994-11
▼(財)大日本航空技術協会ed.『航空基地建設器材輯覧(III)掘鑿器材』S20-3、大雅堂pub.
 敗戦直前ながらも、米国の最新土工器材のカタログを集めていた。
▼川村静『警備戦術の要諦』S27-10
 著者は陸幼出の警察高官。
▼片方[かたがた]善治『警察のシステム工学』S50-7
 著者は米国でシステム工学を修めた。
 ◆  ◆  ◆
 「読書余論」は、主に軍事系の古本を、兵頭が注目した一斑の摘記や読書メモによって紹介し、他では読めないコメントも附しているものです。
 あまりに多すぎる過去の情報量の中から「兵頭はここは珍しいと思いました」というポイントだけ要約しました。
 大きな図書館に毎日通えない人も、最低費用で、過去の軍事知識のマニアックな勘所に触れることが可能です。
 また、ミリタリーしか読んで来なかった人には、他分野の情報が、何ほどか有益かもしれません。
 「読書余論」は、毎月25日に「武道通信」から最新号が配信されます。1号分の購読料は500円です。
 バックナンバーも1号分が500円で、1号分のみでも講読ができます。
 過去のコンテンツは、配信元の「武道通信」のウェブサイト
http://www.budotusin.net/yoron.html
 で、タイトルが確認できます。
 電子書籍ソフト対応の「一括集成版」もできました。詳細は「武道通信」で。
 ウェブサイトでわからない詳細なお問い合わせは、(有)杉山穎男事務所
sugiyama@budotusin.net
 へどうぞ。


日本の高校のキーパーソンは校長先生ではなく教頭先生。これは常識中の常識。地本のリクルーターは何を措いてもまず教頭先生にアポを取れ!

 David B. Larter 記者による2016-10-28記事「This ‘life-changing’ shift has made submariners much happier」。
  これまで米海軍の潜水艦乗務は、6時間当直したあとに、12時間の休憩または他の作業というパターンであった。
 しかしこれだと24時間のリズムがどんどん狂ってしまい、心身ともによくなかった。
 それで米海軍は、8時間当直のあとに16時間の休憩または他の作業という新パターンを導入した。「エイト・オン、シックスティーン・オフ」のワッチという。
 すでに実施している艦では、みんな、目の下の隈がなくなったという。
 次。
 ストラテジーペイジの2016-10-30記事。
  10-2のドローン爆死事件の真相がわかってきた。
 北イラクのISはクルド部隊に対して攻撃をかける前にはよくドローンを飛ばしてくる。
 無傷で回収されたドローンがあり、それはホビー用の軽量ラジコン機を改造したもののようだった。胴体はスタイロフォームでできていた。
 撮影画像はSIMカードに記録され、帰投後に検分されるようになっていた。この方式なら電力消費も重量も最小に抑えられる。
 そしてこのために不時着や墜落したUAVは回収される価値がある。そこでISは敵が回収したじぶんたちのドローンを精査することをさまたげてやるため、電気回路のどこかをいじれば即自爆するような仕掛けを施しているのである。
 この仕掛けのおかげで爆発が起き、10-2に2人クルド兵が死亡し、2人のフランス兵顧問が負傷した。場所はイルビルの近く。
 ※インドが1981年から82年にかけて「ミグ23BN」や「ミラージュ2000」を輸入することに決めた最大の理由は、「核武装を急いでいるパキスタンがこれから装備し始めるF-16を圧倒しなければ」という「恐怖」と「見栄」の混ざった切迫感であった。すでに核実験していたにもかかわらず、いや、それだからこそ、インドの兵器整備政策の骨幹は常に隣国に対する「ヴァニティ」なのだ。中共が今年、「US-2モドキ」をつくってさんざん宣伝してくれたおかげで、インドの見栄張りパワーが再起動し、2年もストップしていた新明和の大商談は急に前進したようだ。しかし、これからが大変だぞ。正式の契約書ができあがっても油断はできない。インド人はそこから何度でも心ゆくまでゴネてくる。キャッシュがじっさいに振り込まれるのは、何十年先になるかわからない。失礼だが新明和の企業体力ではその不安定期間を乗り切れないはずだ。日本政府が「保険」をかけてやらねばならない。日本版のFMS、FMFとその前駆ルールがまだできあがっていない。
 ※新明和は日本の兵器産業全体の恩人である。「US-1/2」は「武器ではない救難機」として、非兵器枠で普通に輸出ができるはずだ――という社内の信念から、彼らは武器輸出解禁の議論の生じるはるか前から海外でのPRに努めて来た。おかげでインドでも周知度が高く、さればこそ、最初にコンタクトしてきたのは国防相ではなくて、商工相だったのである。しかし新明和は方針を転換すべきであると思う。2014-4-1の閣議決定以降、US-2をことさらに「救難機」だとしてPRするメリットはなくなった。むしろ「特殊部隊員40名とゾディアック艇を2000km以上遠くの島へいちどに運べる長距離戦術水上輸送機」として堂々と宣伝した方がいい。


カーボンヒーターは600w超の中型よりも、300Wの小型品を2箇置いた方が諸事重宝であると気付いた。赤熱が遅いマガイ物(600w)にはご注意。

 2016-10-29記事「Lithuania issues updated Russian invasion advice booklets」。
  リトアニア政府は、露軍が侵略してきた場合にどうするか、75ページの市民防衛ガイドブックを改訂して数万部、国内に配布した。
 また、ロシアのスパイらしき者を見かけたら市民はここへすぐ通報せよという電話も開設された。
 2014のクリミア侵略直後にこのブックレットの第一版が出ている。今回のは改訂第三版。
 ロシア製の弾薬の見分け方が地雷に至るまで図説されている。さらに、野外での生存術の指南までも。
 国民に抗戦の意思が堅ければ、敵は侵略に困難を予測し、侵略行動を起こしにくくなる、とも説諭。
 リトアニアは2004にNATOに加盟した。カリニングラード飛び地領およびポーランドおよびベラルシアに接壌。
 2015にはリトアニアは19歳から26歳までの徴兵制を復活させた。
 2016-8にはドイツ政府も、ロシア軍のバルト侵攻事態に備えて市民が食料と水の備蓄を始めるように奨励している。
 ※「読書余論」でご紹介したエレン・ダンコース女史著『崩壊した帝国』を一読すれば、ロシア=ソ連の経済回生の決め手は「労働力人口獲得のための近隣侵略」しかないことが推定できる。この本はソ連大好きのエマニュアル・トッド氏がまだ学生だったときにパリで出版されていて、とっくにソ連の崩壊は予測されていたのであった。だがロシアはいまさら中央アジアやシリアあたりのイスラム圏人を取り込むわけにいかない。イスラム圏人は工業労働力として役に立たないばかりか、殺人やテロについて宗教が「ネガ・リスト」だけを用意するため、国家も社会も安定させてくれないのだ(詳しくは『宗教問題』バックナンバーの兵頭寄稿を見よ)。だからウクライナの次はバルト三国、そして東欧の再取り込みに向かうしかない。いまのところシリアでのロシア製兵器のデモンストレーションと、西方への侵略戦争しか考えてないモスクワに、安倍政権は何をオファーしたのか? 頭のおかしい者しかおらんのか? だいいち若い労働力が足りてない国に事業資金だけくれてやったらどうなるんだ。東京五輪計画が、高騰した建設労務者賃金のために次々と見直し縮小されるのと同じ現象が起こり、形としては存外に小さなものしか残らない。そして浮いた予算をモスクワはありがたく軍人給与に充当するだろう。侵略の補助金だ。東欧人の恨みを買うだけじゃないか。


「Sino-」は、ギリシャ語でシナ人のことを「Sinai」と呼んだのが語源である。

 Matthew Moss 記者による2016-10-27記事「How Churchill Paved the Way for NATO’s Standard Ammunition」。
   英国の第21軍が1945年に文書をまとめている。「WWIIのノルマンディ上陸からドイツ降伏までの西部戦線における小火器弾薬威力についての最終報告」。今では王立造兵図書館で読める。
 ドイツの突撃銃が採用した「中間サイズ弾薬」の合理性を彼らは認めた。
 ちなみに戦中のドイツの突撃銃のタマは7.92×33ミリ。ソ連の新弾薬はそれを基にして7.62×39ミリとしていた。
 そこで1949に英国も0.303=7.7ミリのリーエンフィールド槓桿式ライフルを更新する自動小銃のための新弾薬を開発した。0.280インチ弾である。
 中間弾薬の模索はWWII直後からスタートし、1947には「理想口径委員会」が0.280インチを推奨していた。
 これは発射反動が0.303インチ弾薬の半分だった。
 1951の実射比較実験。セミオートで標的を狙って射撃をする場合の現実的な最大レートが判明する。.303のリーエンフィールドボルトアクションだと毎分27発が限度。.30-06のガランドだと毎分43発。そして.280のEM-2は84発。
 英国はもちろんこの0.280がNATO弾として正式採用されることを望んだ。
 ところが米国も秘密裡に独自の新弾薬を複数研究していた。そのひとつが7.62×51ミリの「T65」である。
 米国は英国よりもストッピングパワーと射程にこだわった。それで.30-06をベースに薬莢を軽量化しようとしたのだ。
 T65実包は0.280弾よりも銃口エネルギーが4割も強く、フルオートにした場合、銃身の踊りを抑えられない。
 1949から1954まで、英米は公然と競った。
 他のNATO諸国は、英米間の決着がつくまで、待たされた。
 英国スプリングフィールド造兵廠は0.280用の複数の小銃を試製している。
 そして労働党首相アトリーは1951-4に、.280を用いるブルパップ型の野心的な「EM-2」小銃の採用を宣言した。
 野党の議員となっていたチャーチルは、それはマズイと考えた。英国の小火器弾薬系統は、WWII後はもう米国に完全に一致させるべきなのだ。さもないと次の有事に無尽蔵の弾薬補給は受けられないであろう。
 チャーチルは議会で真正面からアトリー政府批判を展開した。0.280のEM-2の採用は、米国およびカナダの弾薬体系と英国を切り離してしまうではないか、と。
 そのチャーチルは1951-10から首相にカムバックした。
 英国と米国の弾薬体系が違っては、欧州防衛そのものが危うくなる。だから欧州の安全のために、コストを度外視して、いったん採用と決まったEM-2を、保守党政権では見直す、とチャーチルは決めた。
 野党労働党は、採否を決める前にチャーチル自身がEM-2を射撃してみろと迫った。
 そこで1951-11に人前で射撃したのである。
 チャーチル77歳だった。
 チャーチルはEM-2で100ヤード先を狙って20発発射し、9発を的に当てた。
 腰ダメのフルオートも試した。
 次にチャーチルはT65弾薬を発射する米国製のT25試作銃(のちのM14)を試射した。11発射ったところで、その反動のキツさに、チャーチルは射撃を中止した。
 だがチャーチルの判断は覆らない。われわれはすばらしい弾薬のためにソ連との戦争に負けるわけにはいかないのだ。0.280はすばらしい。だがわが国は7.62×51ミリを選ぶ。
 米国、カナダと弾薬のサプライチェーンを合一化しておくことは戦争に勝つために死活的に重要だからである。
 チャーチルは野党に返答した。わたしは米軍が0.280を採用するようひきつづき働きかけよう。しかし米国人がわたしに説得されなかった場合、われわれが1国だけで.280を採用することはしない。
 1952-1にチャーチルはDCへ飛び、トルーマンと会合した。
 ここでEM-2推しは終了した。
 1953後半、英国はT65弾薬を採用し、それを発射する小銃としては、ベルギー製のFN-FALを選んだ。
 じつはEM-2とFALは同時併行で開発されており、英国は、EM-2がダメならFALだと早くから考えていたのだ。
 英国がFALを採用したのは1953-12である。T65弾薬は「7.62×51ミリ」NATO弾となり、今も5.56ミリとともにNATO弾だ。
 FALは、カナダ、ドイツ、オランダ、オーストリーも採用した。が、米国だけは他国製を嫌い、M-14を採用した。
 ところが米国人たちもすぐに、M14はリコイルがキツすぎてダメだと認める。それで1964に真の「中間弾薬」である0.223インチ=5.56ミリ弾とM16自動小銃を採用したわけ。
 0.280を選ばなかったのは、やはり、見栄と意地なのであろう。