日本兵は“餓死”する必要など無かった!

 並木書房のHPから、来月の新刊『自転車で勝てた戦争があった』の予約ができるようになりましたので、ご案内します。

 戦前の日本の自転車を語る場合、それは宮田製作所を語ることと重なります。

 戦前のわが国を代表する自転車メーカーの創業者であった宮田栄助(1840~1900)は、明治9年に茨城県から東京に出て来て、すぐ砲兵工廠で雇われました。もともと銃工であったのと、西南戦争とが、幸いしたようです。
 彼は明治14年に東京府下の京橋に自分の製銃工場を持ちます。猟銃の受注生産と、工廠からの請負仕事とがあったと『宮田製作所七十年史』(S34)は説明をします。
 おそらく陸軍は、小石川の東京砲兵工廠の製造能力だけでは「十三年式村田歩兵銃」を急速量産できなかったのでしょう。その製造を、工廠と分担して民間工場が手伝うサプライ・チェーンが、自然に成立したのだろうと私は思います。ピーク需要をそうやって調節したのです。

 明治14年の『朝野新聞』に、種子島銃工が失職したので、村田銃量産のために東京に呼んだら、皆、優秀であったと書いてあるそうです。宮田は、彼らの間で成功モデルになっていた可能性があります。

 明治20年時点で、工場経営者であった宮田栄助本人が、それと同時に、工廠にも籍を置いていました。おそらく「十八年式村田歩兵銃」の量産にフルに関わっていたのでしょう。明治23年以前には、そういうことができたのです。

 宮田は明治23年に自分の工場を都内の本所へ移し、そのさいに社名を「宮田製銃所」にしました。『七十年史』はその理由を書いていませんが、私の想像では、「二十二年式村田連発銃」の部品の受注を期待し、意気込みを反映しているのだと思います。
 ところが、俄かに風向きが変わります。23年か24年に、工廠からの発注が止まったのです。

 これは、明治憲法が23年から施行され、帝国議会が同年に始まったことと関係があると思います。

 これ以後、砲兵工廠の当年度予算は、前年に国会で決められるようになりました。
 そんな整った予算制度がなかった草創期ならば、たとえば村田経芳の一存で、工廠内で猟銃商売(いわゆる「猟銃の村田銃」。古い軍用制式ライフルの機関部を転用して国内最安値の単発猟銃――散弾銃/マスケット銃――を民間に普及させようとした。受注カスタム生産であった)を推進したり、即決で周辺の民間工場に随意契約の仕事を外注することは自在だったのでしょう。が、もはやそれはゆるされなくなった。だから村田も23年に少将昇進と同時に予備役になっているのでしょう。その直前には、それまでの労をねぎらわれる形で欧州を公費で漫遊し、日本を留守にしています。巨額の設備投資をしていたさなかの宮田は、ボスの不在にさぞや気を揉んだでしょうね。

 すっかり「お役所」らしくなった東京砲兵工廠は、もはや「二十二年式村田連発銃」の製造を宮田に外注してはくれなくなりました。突如として宮田は、安定した収入源であった軍銃の下請けに、見切りをつけねばならなくなったのです。それで明治24年に自転車製造に転じたというのが、真相ではなかったでしょうか? これは私が『宮田製作所七十年史』を深読みした推測です。

 余談を続けましょう。村田は、早くも明治十年代において、日本の「銃猟家」としても「猟銃設計者」としても五指に入る有名人でした。
 明治25年に農商務省が刊行した『狩猟図説』には、村田猟銃には不発が多いこと、バレルに螺旋が入っていないことが指摘されています。
 宮田栄助が軍銃部品の請負に見切りをつけたとき、村田自身は、安価な猟銃の全国普及に没頭するようになっていました。そうすることが、明治22年にスイスの国民皆兵制度を視たときからの、村田の信念でした。

 明治32年発行の『銃砲正價報告書』は、横浜の金丸謙次郎の銃砲店で取り扱っている商品のカタログです。たしか、国会図書館かどこかにあったのを私は見ました。そこに村田式猟銃の図が載っていて、「十三年式村田歩兵銃」の機関部を流用していることがわかります。売価は¥10円から、いろいろあったことも……。とにかく安いので、マタギにも村田猟銃がいちばん普及したわけです。

 村田経芳と南部麒次郎には、似通ったところがあります。
 軍の工廠にはコンスタントに仕事が流れるべきなのに、しばしば、何の受注残もなくなってしまう「端境期」といえる時節が生じます。終身雇用制ではなかった明治時代、腕の良い工員たちは、すぐに外に実入りの良い仕事を探して転職してしまう。村田は、生産設備を一時も遊休化させない配意として、工廠の工作機械を使った猟銃商売を始めました。南部は、いっそ自分で民間軍需企業を経営してやろうと考えました。
 私は、南部は「日本のクルップ」になりたかったのではないかと思います。しかし、これは証明することができません。
 また、村田流の臨機即決的なビジネスの多角化は、時代とともに予算の執行手続きがうるさくなる一方の砲兵工廠の事務方と、かならずや摩擦・衝突をきたしたはずだと思います。しかし、それを証拠だてる史料もありません。

 杉浦久也先生ほか、多くの方が、戦前の兵器製造史の解明に挑んでおられ、その成果はめざましい水準に達しております。にもかかわらず、依然として明治の銃砲開発にかんしての、匿された真相が多く残っている。5月発売の『自転車で勝てた戦争があった』の中では、そんな想像も、あれこれと致しております。
 乞う、ご期待!

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 ストラテジーペイジの2024-4-1記事。
   3月後半に露軍はミサイル攻撃のターゲットを、ウクライナ国内の電力インフラに集中した。ハルキウ方面には15発のミサイルが分配され、たったそれだけでブラックアウトの一歩手前においつめられている。地域が電力を喪失すれば、「上水」の配給機能も止まってしまう。なぜなら水道施設のポンプはほとんどが電動だからだ。だから発電所攻撃や変電所攻撃、ダム攻撃は、戦略爆撃として、とてもコスパが好いのだ。発電所を爆破してしまえば、浄水場を爆破する必要はないのである。

 ※米軍理論では開戦の第一撃で発電所と送電インフラはすべて破壊してしまう。イラクでやったように。それは敵国内の指揮系統と基地機能を麻痺させるのが狙い。ロシアは2022-2-24にそれをせず、爾後2年間、都市破壊や港湾破壊にかまけてミサイルを徒費し、いまさらに米軍理論の必要性と有効性に気付いた。

 送電線は、ミサイルによっては破壊されにくいという長所がある。そのかわりに、ゲリラ/コマンドーの挺進潜入爆破工作にはかんたんにやられる。

 大都市の労働者が通勤するのに欧州では電車/路面電車がよく使われていて、バス交通網はそんなに発達してはいない。鉄道の送電網は、鉄道会社が線路に沿って独自に維持しているのだが、この給電を切断してやることにより、軍需工業の動員もできなくしてやれる。バスや私有車では通勤鉄道の穴埋めはできないためだ。

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 メーカーの3月のプレスリリース「ANAVIA HT-100」。
 ペイロードが65kgある、シングルローターの無人ヘリコプター。尾部ローターが無い、特殊な方式。
 滞空250分可能。
 最大速力 120km/時。
 50kgのペイロードを抱えて100km飛べる。
 20kgのペイロードなら400km飛べる。

 最大離陸重量は120kg。空虚重量は55kg。
 燃料タンクには「Jet-A1」や「JP-8」が60リッター入る。
 最大高度は3000m。

 エンジンはなんとターボシャフトである。出力15キロワット。
 リモコンのデータリンクは最大で200km届く。


並木書房
自転車で勝てた戦争があった─サイクルアーミーと新軍事モビリティ


自転車で勝てた戦争があった


中国で表札代わりにQRコードをアパートの玄関ドア上に貼り付け始めた。

 雑報によると、このQRコードからは、誰でも隣人のソーシャル・クレジット(社会忠誠指数)を確認することができ、当局への密告競争が促され、相互監視による公安も確立する。

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 Svetlana Shcherbak 記者による2024-3-30記事「Was the ODAB-1500 Aviation Bomb Used by the Enemy for the First Time: What Is Its Main Danger?」。
   ODAB-1500 は、サーモバリックの航空機投下爆弾である。重さ1.5トン。UMPKキットをとりつけることで、滑空爆弾にもなる。その場合はリリース点から水平に50km以上離れた地点を空爆できる。

 すでにウクライナの最前線にこれが落下し始めた。滑空型が。Sumy郡の村落に。

 ODAB-1500は、SNS上には2024-1に初めて動画が投稿された。しかし当初、西側は、それは「ODAB-500」なのだと勘違いしていた。

 ※ODAB-500とODAB-1500 を比較すると、後者の爆弾デザインが量産本意に簡略化されているのが一目瞭然である。お椀形コーンは、空力度外視の円錐コーンに。円環状空力安定板は省略。

 ODAB-1500は、仕組みとしては古いタイプのサーモバリックである。すなわち爆発は二段式になっている。まず地面から10m離れた空中で少量の火薬を爆発させて液剤を飛散せしめ、ついで、それに点火するのだ。

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 Boyko Nikolov 記者による2024-3-29記事「Russia sends Zubilo to Ukraine: not an APC, not a tank, not a robot」。
   ロシアが、多用途の4×4ロボット戦闘車を完成した。
 Zubiloといい、連装の23ミリ機関砲で武装。車体の後半には、ドローン兵器を前送し、負傷兵を後送するための十分なスペースがある。
 外見はAPCのように見える。しかし、操縦席は無い。

 この新装備は4月中に前線に現れると露兵は期待している。

 エンジンは350馬力。舗装道路なら100km/時を出せる。
 車重16トン。ほとんどは装甲の重さだ。正面については30ミリ機関砲に耐弾することを考えているという。
 荷台には3トンの荷物を積める。
 パーツの多くはKAMAZトラックから借用している。

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 ストラテジーペイジの2024-3-31記事。
   宇軍内にはげんざい、6万人以上の女性兵士が現役。すべて志願兵。
 そのうち5000名が、前線で狙撃手のような戦闘職種に就いているという。

 そして2024年春時点で100人前後が戦死し、500人前後が負傷した。

 2022-2以前は、宇軍の総体が小さかったので、女子比率は15%だったが、今は男子動員がかかっているので、女子比率は10%未満に薄れている。

 ロシアがクリミアを切り取った2014年から女子志願兵は増えた。今次侵略により、いったん除隊していたその人たちが再志願したケースも多い。

 男子用の戦闘服・防弾ヴェスト・ブーツ・が、女子にフィットせぬという問題は、クラウドファンディングと民間協力により、解決されつつある。



有坂銃 新装版 (光人社NF文庫)

北海道開拓使には7連発の騎兵銃 「帯刀」も許された明治期の銃事情
特別編 光人社NF文庫「有坂銃」


豪華クルーズ船は、1日に軽油を250トン、燃やしている。それをレギュラーガソリンに換算すれば8万ガロン強になる。1人の自動車オーナーが一生かけても消費し切れない量。

 ちなみに貨物船が40日間の航海をすれば、消費する重油の代金は1億円だそうだ。

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 Defense Express の2024-3-30記事「russians Produce Portable Kozerog BRT Rocket Launchers to Use Unexploded Ordnance for BM-21 Grad」。
    122ミリの地対地ロケット弾である「BM-21 グラド」。ほんらいは車載のMLRS用。しかしこれをドンバスの親露軍が、ガレージで自作した簡易型のラーンチャーから、単発~3連発で発射できるようにしつつあり。

 そのロケット弾はどこから供給されて来るのか?
 なんと、推進薬に点火せず、発射しそこなった、不良品のロケット弾を、再利用しようというのだ。露軍が投棄した、そういう不良品が、大量にあるらしいのである。

 簡易発射機には「Kozerog BRT」という名前が付けられている。

 BM-21を1発だけ発射できる、ポータブルな発射機の正規品も存在する。「Grad-P」という。

 長さ1.95mの「9M122M」ロケット弾は、最大射程が10.8kmである。
 「9M122MD」というロケット弾だと、最大で15km飛ぶ。

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 Svetlana Shcherbak 記者による2024-3-30記事「russia Develops Computer for FPV Drones with Machine Vision and There Are Other Equally Threatening Things」。
   FPVドローンの終末誘導を自律で実行させるための「マシン・ビジョン」とよばれるソフトウェア。宇軍が実用化で先行しているが、ロシア国内でも、これを小さな基盤回路にまとめた製品を試作中。

 クリミア連邦大学内の「Fablab」というところで開発しているという。製品名は「Grape Pi 1」。

 基盤に載っているマイクロチップはすべて輸入品である。
 たとえば1ギガバイトのRAMボードは日本のElpida製だ。
 グラフィックプロセッサーは中共企業「Allwinner」製の「H616」を搭載。

 ※雑報によると、スウェーデンの「Gothenburg」市立図書館で椿事が発生。この前の土曜日は休館日(全聖人の日という公定祭日)だったのだが、館員が前日夜に施錠を忘れた。そのため休館と知らずに来館した市民が450人いた。もともと貸し出しシステムは機械化&自動化されていたので、利用者は勝手に電気をつけていつも通りに本を借りて行ったという。その数250冊以上。盗まれた物や破壊された物はひとつもなかった。


並木書房の新刊『自転車で勝てた戦争があった――サイクルアーミーと新軍事モビリティ』は5月の連休明けに書店販売となります。

 ネット予約は4月から可能になるそうです。ねだんは1800円台でしょう。

 表紙カバーの袖の売り文句は、こんな感じになると思います(じっさいとは違います)。

 ――先の大戦での戦没日本兵165万人のうち37%を占めているとすらいわれる《広義の餓死者》。だが、1950年代のベトナム兵たちが主用したような「押して歩く自転車」を、兵糧輸送と患者後送の手段として役立てる着想さえあったなら、その餓死者数はゼロにおさえられた可能性があると著者は説く。ではなぜ帝国陸軍のエリート参謀たちにはそれができなかったのか? これまで誰も答えてくれなかった「そもそも」の疑問を、本書はひとつひとつ解き明かす。古今の自転車技術を探り、《追試実験》によって確かめられた真実……。日本兵は“餓死”する必要はなかった!

 このチャレンジングな難しい企画にご協力を賜りました皆々様方に、あらためましてこの場で謹んで御礼を申し上げます。
 ありがとうございました!

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 Jamie Dettmer 記者による2024-3-27記事「As Russia attacks, Ukraine scrambles to dig enough trenches」。
   ウクライナ国会に属する野党の有力議員が『POLITICO』に疑問を語った。宇軍の防御陣地工事能力が低すぎるのではないか。土工作業が遅すぎる。われわれは去年の夏から政府に勧告しているのに、一向に要塞化が進捗していない。

 ウクライナ軍による「反転攻勢」とやらは、露軍が掘った三線の塹壕陣地の前に、あえなく阻止されてしまった。

 英国のシンクタンクRUSIは2023-5に、露軍の野戦築城がいかに優れているかを警告している。そのとおりになった。

 野党政治家の言うところによると、宇軍はやっと2024-2になって、現陣地の強化工事を開始したという。遅すぎるスタートである。この調子で5月の敵の攻勢に間に合うとは思えない。

 匿名の退役将校いわく。宇軍には、あらたに土工した塹壕陣地の前に配する地雷の数が足りない。またその拡張した塹壕を守備させるのに必要な兵隊の数も足りない。

 永久築城のためのコンクリートのための巨額の予算が2024-2につけられた。ところがキーウ防衛線を視察してみると、ぜんぜんその工事が進んでいない。汚職である。カネが何か別なところへ消えている。
 最近たてつづけに政権幹部が追放されていることとも、これは関係があるのだろう。

 露軍は1.5トンの滑空爆弾を多用するようになった。これはますますたくさん投入されるようになるだろう。砲弾よりも量産が早いからだ。となったら、今までの塹壕構造ではもうダメだ。本格的な地下陣地を建設しなくては、兵士が心理的にもちこたえられない。

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 ストラテジーペイジ の2024-3-29記事。
    イスラエル軍は、ハマスに対して最新のMLRSである「Lahav」を使い始めた。2020年から装備されているが、今までは使っていなかった。
 米国製のHEMIT 8×8トラックに、複数のサイズのロケット弾を混載する。小さいのは122㎜径。大きいのは370㎜径。

 ※長射程ロケット弾は近間を攻撃することができない。これがカノン砲との違い。その不利を補うためには、短距離ロケット弾も同じラーンチャーから随意に発射できるように設計しておけばよい。

 もともと、米国製の「M270 MLRS」を国産品で更新するのが、開発の動機であった。

 122ミリロケット弾は、炸薬20kgを充填してあり、最大35km飛ぶ。これを18発集束したポッドを「Romah」という。35km飛ぶならガザの隅から隅まで制圧できる。

 227㎜ロケット弾は「Ra’am Eitan」と名づけられ、これは6発が1セットのコンテナに入っている。レンジは40kmで、弾頭はクラスターである。

 もっと古いロケット弾には、径306㎜の「EXTRA」がある。これは1ポッドに4発納められている。弾頭には炸薬120kg充填。レンジ150km。

 径370㎜の「Nitz Dors」は1ポッドに2発入り。レンジ300kmで、充填炸薬は140kgだ。

 これらのポッドコンテナを随意に選択して「Lahav」から発射できるのである。
 「Lahav」にはポッドコンテナを2個、同時に載せて行ける。

 車両にはアウトリガーとクレーンが付属する。

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 Boyko Nikolov 記者による2024-3-29記事「Italy procures three Israeli unmanned subs, vetted in a NATO drill」。
    イスラエルのIAI社製の無人潜航艇「Blue Wave」をイタリア海軍が3基、調達する。

 この無人潜航機は2023-5-1に存在が公表されている。
 全長10.9m、直径1.12m、重量5.5トン。
 深度は300mまでOK。速力は3ノット未満だが、そのかわり、自律的に30日間、活動してくれる。
 高性能な衛星通信機能付き。

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 Ellie Cook 記者による2024-3-28記事「Russia-Ukraine War Analysts Reveal Plan to Defeat Putin」。
   米シンクタンク「戦争研究所」=ISW の最新のまとめ。水曜日公表。
 西側は対露のアドバンテージを持っているのだから、それを使え。

 工業を動員せよ。

 ウクライナ政府の予想では5月後半からまた露軍の攻勢が始まる。

 げんざいロシアは、国内の全生産力の三分の一を、対宇戦争に注ぎ込んでいる。

 ISWの指摘。クレムリンの主な努力は、米国人の世界認識を操作することに集中投入されつつあり。ロシアの国益を第一に考えるべきだと米国人をして思わせる。

 西側は、ウクライナ国内の兵器弾薬生産力の増強に手を貸さなくては、危うい。

 露軍の最大の弱点は黒海艦隊なので、まずその弱点を徹底して叩くべし。すでに黒海のロシア海軍力の三分の一は消失した。



自転車で勝てた戦争があった


こんどは「ふ号」? ウクライナ戦線に風船爆弾が再登場。

 Svetlana Shcherbak 記者による2024-3-28記事「The russians Claimed That They Shot Down a Kamikaze Balloon: What Threat Does This Pose?」。
   GPS航法装置と動力を有し、爆薬を積載した無人の飛行船――ただし外見は気象観測用の風船だという――がウクライナ方向から飛んできたので戦闘機によって撃墜した、とロシアが宣伝している。

 しかし爆弾やリフレクターを吊るした風船による攪乱作戦は2023年前半にロシア人がドンバス地方で始めたものである。また再開したのではないか。それが偏西風に乗ってしまったのではないか。

 小型の風船を撃墜するのはとても厄介で難しい。

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 Joseph Trevithick 記者による2024-3-27記事「Two Of The Fastest U.S. Sealift Ships Trapped By Baltimore Bridge Collapse」。
    フランシス・スコット砂洲橋が落橋してしまったことにより、それよりも奥(広義のチェサピーク湾であるが、それがボルチモア市心にまで引っ込んでいる入り江)の埠頭に繋留されていた「高速輸送船」(所属は連邦海運局だが、ほぼ米軍御用)×2隻と、予備の輸送船×2隻が、出られなくなってしまった。

 ※記事の附図が貴重である。「Fast Sealift Ship」は全長946フィート、幅106フィート、排水量54895トン、死重26416トン。ぜんぶで8隻あるが、積載需品容積が微妙に異なる3タイプに更に分類できる。なおまた、連邦運輸省の海運局が国防予備艦隊として保有している輸送船としては、この8隻の他に、Ro/Ro船が27隻、支援クレーン船が4隻、灯標工事船が2隻、ミサイル射場設備船が2隻、練習船が8隻。それらの母港は米本土に14港ある。東海岸では、北から、ボルチモア、ノーフォーク、ニューポートニューズ、ポーツマス、チャールストン。メキシコ湾では、ニューオリンズとマレロ(ルイジアナ州)、「MARAD Layberth Facility」(テキサス州)、ポート・オブ・ボーモン(テキサス州)。西海岸では、北から、タコマ(ワシントン州)、アラメダ(加州)、オークランド、サンフランシスコ、ロングビーチ、サンディィエゴ。このうち所属船の数が多いのは、チャールストンの6隻、サンフランシスコの5隻。ボルチモアとMLFは4隻づつでそれに次いでいる。ただしRo/Roの古いものは主機が蒸気タービンで、除籍5分前の物も少なからず。

 閉じ込められている優秀船は『SS Antares』と『SS Denebola』。

 こうした輸送船に乗組むのは文民の船員。だが有事には米海軍の軍事シーリフト・コマンドの麾下に入る。
 平時には最小人数の保守要員しか乗せていないので、出動までには準備に10日ぐらいかかるのがふつう。
 しかしボルチモアの優秀船は、準備5日で出動ができる。それが、使えなくなってもうた。

 ※雑報によると今はコンテナ船の上に橋梁残骸がのっかっている状態だが、このコンテナ船を動かすとその巨大構造も水没して旅順港閉塞完成みたいになってしまうので、除去作業の段取りを必死で考えているところ。コープス・オブ・エンジニア(米陸軍工兵隊=連邦の大河や港湾の巨大工事はふつう、ここが請け負う)の出番だろう。

 ※ミシュランの2016年の道路地図で確かめると、この橋の南側には迂回の橋が無いも同然(200km以上走ってノーフォークまで行けばある)。しかし北側3kmには入り江を横断する海底トンネルがある。しかし海底トンネルは、可燃物や危険物を積んだトレーラーが通行するのに不自由があるかもしれない。

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 The Maritime Executive の2024-3-28記事「Investigators Check Dali’s Fuel with Speculation of Possible Contamination」。
   コンテナ船『ダリ』が電力喪失した原因は、ディーゼル燃料の中に何か悪いモノが混ざっていて、それでエンジンが止まったのではないかという疑いがある。

 2022年には、シンガポールで200隻前後の商船に給油した高濃度硫黄含有重油の中に「有機塩素化合物」が混ざっていたために、80隻近くが燃料ポンプやエンジンのトラブルに見舞われたという事件が起きている。

 『ダリ』号は、バックアップ用の発動発電機も、主機と同じ燃料で回していたために、主機と同じように即座に停止してしまったのではないかと米コーストガードやNTSBは疑っているそうだ(WSJ報)。

 『ダリ』のディーゼル燃料は、上海と韓国で給油されていたという。それは「マリン・ガス・オイル」と分類される油種で、普通の軽油よりも汚染物質を少なくしてあって、割高なものである。これは寄港先の環境規制がうるさいので、しぶしぶ使うのである。

 『ダリ』号は3-13にはパナマ運河にあり、そこからNY港、ノーフォークを回って、最後にボルチモアに寄った。パナマでは給油はしていない。しかしボルチモアで給油した。その軽油が汚染されていた(FuelTrust という専門機関による推理)。


米国から供与のGLSDBは快調に戦果を積み重ねているようだ。

 Defense Express の2024-3-27記事「Zircon’s Warhead Unveils the Biggest Scam by russian Defense Ministry Leading to Creation of a Useless Missile」。
    3月25日に撃墜した「Zircon」ミサイルの弾頭を調べたところ、驚くべきことが分かった。
 弾頭部分の重さは100kgから150kgというところ。充填されている炸薬はわずか40kgだと見積もられる。

 ハイパーソニック弾の製造単価は高い。しかるに、その破壊威力は怪しいものであった。

 ちなみに、キンジャルの弾頭重量は推計で500kg。Kh-101/555、ならびにカリブル巡航ミサイルの弾頭重量は400kg。P-800オニクスでも300kgである。

 「Zircon」の弾頭重量に近似の巡航ミサイルとしては、150kgのKh-31と、135kmのKh-35がある。
 このレベルの弾頭が撃沈可能と考えられる軍艦は、排水量が4500トン以下のコルヴェットである。

 ロシアのメーカーは、レンジ1000kmを達成せよという無理な要求にこたえるために、弾頭重量をここまで削ったのであろう。

 ※衝突物体の破壊力は着速の二乗に比例するので、弾頭重量が軽いからといって対艦威力が無いことにはならない。この記事がリードしようとする方向は、科学的ではない。

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 Tyler Rogoway 記者による2024-3-26記事「FPV Drone Motherships That Also Relay Their Signals Offer Huge Advantages」。
    ロシアの新システム。「Pchelka」というハイブリッドドローン。ガソリンエンジンを牽引式に配した固定翼無人機だが、車輪の代りにスキッドがあり、そのスキッドから4軸のローターを生やしている。すなわち、電動モーターで垂直に離着陸し、巡航は内燃機関を使う。そして胴体内には、自爆型FPVドローンを複数、内臓する。本体は使い捨てにせず、特攻ドローンと地上基地との無線リンクを確立するための中継局機能を果たす。

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 Joseph Trevithick 記者による2024-3-26記事「China’s WZ-7 High-Altitude Drone Makes First Known Flight Over Sea Of Japan」。
   ジェットエンジンで高空を飛ぶ無人偵察機「WZ-7」が日本海に出てきた。駆逐艦艦隊も出てきたのでその支援目的か。
 空自はF-15Jをスクランブルさせた。

 WZ-7は2010年代の後半から就役しているが、いままで、日本海まで出てきたことはなかった。

 高度6万フィートを、4350マイル航続すると称している。滞空時間は10時間以上というが、じっさいには不明。「RQ-4 グローバルホーク」に対抗して数値を盛っているだろう。

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 Ritu Sharma 記者による2024-3-27記事「China To ‘Outnumber’ Balochistan Populace By 2048; Locals Pick-Up Guns To Counter Beijing’s Expansion」。
    パキスタンの「Siddique」軍港に、バロチ地方の分離主義集団によるテロ攻撃あり。標的は、そこに中共が配備していた対地攻撃用の固定翼無人機だったのではないか。

 この軍港には、「P-3C」が離発着できる本格的な滑走路が付属している。
 パキにはここを含めて軍港が4箇所ある。

 パキ陸軍は中共製の「CH-4B」を2021年に買った。同年にまず4機。それは「Bahawalpur」空港に置かれた。パキ陸軍航空隊がそこにある。

 バルチスタンはパキスタン内ではもっとも人口密度が低い。

 3月26日には、Khyber Pakhtunkhwa州にあるBesham市郊外の水力発電ダムの工事を監督する中国人技師たちが自動車自爆特攻テロにかかった。技師5人が爆死。この技師たちは数台の自動車でイスラマバードから工事現場に向かう途中であった。路上を走行中、うしろから追いついてきた自爆車が轟爆。

 この1週間で3回目の対支テロだという。

 次。
 The Maritime Executive の2024-3-26記事「Old Safety Lessons May Haunt Baltimore Bridge Tragedy」。
   1980年に、タンパ市の「サンシャイン・スカイウェイ」道路橋に貨物船の『Summit Venture』号が激突して、橋の半分が破壊されてしまった事故の教訓は、ぜんぜん活かされていなかった。
 このときは落下した自動車に乗っていた35人が死亡。

 橋の再建にあたって、橋脚を船舶の衝突から防護するコンクリート製の「ドルフィン」が設置されたものである。

 こんかい落橋したフランシス・スコット・キー橋は1977年に供用開始。それは1980より前だが、じつは1975にもタスマニアで類似の事故は発生していた。

 ボルチモアの橋にも、ちいさなドルフィンはあった。
 しかしボルチモアの橋のドルフィンは、すりぬけられてしまった。そして貨物船は、橋の主塔に右舷を激突させた。

 ドルフィンで止められるサイズより、船舶が巨大だったということ。

 次。
 Defense Express の2024-3-27記事「Satellite Images Show that russians No Longer Able to Use Ivan Khurs Intelligence Ship After Ukrainian Strike」。
    クリミアの軍港に繋留されていたロシア海軍の電波情報収集艦が3-24のミサイル攻撃で艦尾部分をやられていた。このシギント艦はロシア海軍に2隻しかない。もう1隻の『ユーリ・イワノフ』は北海艦隊に所属。

 『Ivan Khurs』は2023-5-24にも無人特攻機の攻撃を受けていた。


雑報によると、コンテナ船は動力を喪失してしまって、漂流状態で橋にぶつかったのだという。

 HT News 記者による2024-3-26記事「All-Indian crew on container ship that collided with Baltimore bridge」。
     火曜日にボルチモアの鉄橋を崩落させたコンテナ船の乗員22名は、全員インド人だった。

 2人の水先案内人もインド人だった。
 乗組員は誰も負傷しておらず、また、船からの汚染物質流出も無い。

 この船『ダリ』号は、パタプスコ川を下って、最終的にはスリランカまで行く予定だった。それが橋の主塔(パイロン)に激突した。

 この船はシンガポール国旗を掲げていた。
 衝突時にコンテナを4679個、運んでいた。最大で、20フィーターコンテナを1万個、積める。

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 Svetlana Shcherbak 記者による2024-3-26記事「The ZM22 Zircon Missile Speeds and Engine Details Revealed」。
   3月25日に撃墜した2発の「Zircon」の残骸調査から、確かにロシアはハイパーソニック弾用にラムジェットエンジンを完成していることが判った。

 ロケットで加速されて高空に達したあと、ラムジェットに点火してマッハ5.5で巡航する。最後にダイブする場合は終速はマッハ7.5にもなる。
 しかし低空を飛ぶ場合は、マッハ4.5を超えない。

 プー之介は「マッハ9まで行く」とフカしていたが、それは嘘だった。

 Zirconは、陸上から発射された場合は、最大レンジが700kmになる可能性がある。

 ソ連時代の空対地ミサイルの「Kh-22」の終速がマッハ2.4だから、「Zircon」のマッハ4は大変な進歩と言わねばならぬ。

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 Defense Express の2024-3-26記事「Several russian Troops Came Up With a Strange Protection Against FPV Drones」。
   露軍のBMP-1がおもしろい「対FPVドローン」対策を講じてきた。車体の天板に、細長い棒鋼を何十本も熔接して植立し、「動く竹藪」のようにしているのだ。

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 Thomas Newdick 記者による2024-3-26記事「Japan Wants T-7 Red Hawk As Its Next Trainer」。
    ボーイングとサーブ社が共同開発したジェット練習機「T-7A レッドホーク」を航空自衛隊は買いたいようだ。
 T-4の次の世代の練習機の国内開発などしている予算はないので、既製品を買った方が安いから。

 これについては『毎日新聞』が最初に報じた。
 ※別に独自に取材した成果ではなく、防衛省の広報が、出入りの大手メディアに、順繰りにネタを提供してやっているだけであろう。たまたま今回のこのネタは毎日新聞に振られた。次は別なネタで別な報道機関が「特だねを掴みました!」とやる。安定のローテーション。

 この件は4-10の岸田訪米の手土産として、向こうで発表される。

 米空軍は、いま351機ある「T-38 タロン」の後継として、T-7を開発させてきた。米海軍も「T-45C ゴスホーク」の後継をこの系統にする。海軍仕様へのカスタムはボーイング社がやる。

 豪州空軍は前から「BAE ホーク」の後継を「T-7」にしたいと言っていたが、T-7の完成が遅れたことから、話はフラついているところだ。
 T-7Aは、2023-6-28に初飛行したばかりである。

 セルビアはT-7を軽攻撃機に改造して「F-7」の名で採用したいという。

 T-4は1988年から就役し、212機が造られた。今も180機以上、残っているはず。しかし2019いらいエンジントラブルに苦しめられている。

 T-4は何年も前に生産が終了しているので、スペアパーツの取得が不如意になっている。T-7にしてしまえば、こういう悩みも消えるのである。

 軍用機の操縦にもAIが導入される。AIとドローンについて日米両政府は2023-12に、共同研究することで合意している。プラットフォームを共通化しておけば、メリットは大きい。

 現段階では、日本のメーカーがT-7を組み立てるという話は出ていない。

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 Defense Express の2024-3-26記事「Ukraine’s Neptune Missile Got an Overhaul: What Details the Strike on Konstantin Olshansky Landing Ship Reveals」。
    3月24日に揚陸艦に命中した対艦ミサイルは「ネプチューン」の改良型であった。
 報道された2隻だけでなく、2014に鹵獲された元のウクライナ艦『Konstantin Olshansky』にも当たっていた。

 初期のネプチューンはレンジが280kmだった。これだとクリミア軍港まで一直線で飛ばすしかなく、簡単に迎撃されてしまう。しかし改良型ネプチューンは400kmまでレンジが伸びたので、敵のSAMレーダーを避けて、意外な方位からの襲撃ができる。

 また、ゴチャゴチャした埠頭に、他艦と混じるように繋留されている標的を識別できる、何らかの特製のセンサーが、改良型には装置されたものと考えることができる。


『沈黙の沈黙』。

 Michael Peck 記者による2024-3-24記事「What the US Army should learn from Ukraine’s hasty retreat from a Russian assault」。
   2月の宇軍のアウディウカからの退却は、無秩序な「潰走」だったらしい。
 後退行動の訓練がまったくできていない素人集団だったのだ。

 米陸軍上層は、これは他山の石だと見ている。米軍ももっと退却戦について演習を重ねておく必要がある。

 1861年のブルランでの北軍、1943のカセリン峠、1950の朝鮮戦争初盤で、米陸軍は整斉と退却できなかった。しかしそれ以降、こうした経験をしていないために、訓練はできていない。

 退却は、周到に計画を立てて実施しなくてはいかん。

 アウディイウカ市の防衛は、第110機械化旅団の担任だった。その退却を第3突撃旅団が掩護すべくさしむけられているのだが、この2つの旅団の間で何の調整もなかった。

 第3突撃旅団が陣地に着く前に、第110機械化旅団は後退を開始してしまった。これでは壊乱をみずから招致するようなもの。どの道路を主ルートとし、どの道路を副ルートとするのか、その取り決めも無かった。

 退却作戦は難しい。特に、負傷兵をどうやってエバキュエートするのか。このたびのアウディウカでも宇軍は大量の歩けない戦友を残置して敗走している。結果、それら傷病者は露兵によって虐殺されるか捕虜となった。

 重患者のエバキュエートは、撤退作戦では最も詳密に計画しなければならぬテーマである。時間は限られ、敵にはこちらの不意を衝く創意がある。ある程度の負傷兵はどうしても敵の手に落ちてしまう。だからこそこの計画が優先される。

 救援部隊は、地雷原啓開装備も持っていかなくてはダメ。敵は、こっちの撤収ルート上に砲兵を使って地雷を撒布し、地雷原を急設するから。

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 AFPの2024-3-24記事「Chinese-owned tanker hit by Huthi missile in Red Sea」。
    セントコムの発表によると、土曜日、イエメン沖の紅海で、中共所有のパナマ船籍の原油タンカー『Huang Pu』号が被弾。
 負傷者は出ておらず、フネは航海を続けている。紅海からアデン湾に向かって南下していた。
 甲板上で火災が発生したものの、30分で消火できたという。

 対艦弾道弾は5発発射され、5発目が命中したのだという。
 フーシはそれに先だち、中共の船舶は攻撃しないと声明していたのだが……。

 2024-2までこのフネは、英国の会社の所有だった。その登録は2019になされている。フーシは最新のデータを持っていないのだろう。

 セントコムによると、このタンカー攻撃に続いて、フーシは陸岸から6機のドローンを飛ばしてきた。米艦はそれと交戦した。ドローンのうち5機が紅海に墜落した。が、1機はイエメンのフーシ支配区に戻って行ったそうだ。

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 Defense Express の2024-3-25記事「South Korea Has 3.4 Million 105mm Artillery Shells, Everyone Would Benefit if Some Went to Ukraine」。
    WRSA-K とは、《戦争用の備蓄・同盟国・韓国》の略号で、このプログラムは、次に半島有事となったときに米軍が使用すべき弾薬を事前に韓国内に備蓄しておこうというものだった。しかし2000年代のあるとき、この大量の弾薬は韓国政府へ売り渡された。

 この結果、韓国軍は、数十万発の155ミリ砲弾と、340万発の105㎜榴弾を取得した。

 2023夏にシンクタンクのCSISが指摘したこと。米国がウクライナに搬入した30万発の155ミリ砲弾は、この「WRSA-K」に由来するストックだったのだろう、と。

 そして今、残っている105㎜砲弾もやっちまえよ、という声が出ている。

 CSISの中の人によれば、韓国軍は、米国設計のものや英国設計のものも含めて、総計約100門の105㎜砲を持っているそうだ。

 また韓国軍のユニークな装備として、6輪トラックの荷台に「K105」という国産の105㎜榴弾砲を架設した自走砲が200両、現役だという。ただしこうした105㎜の火砲は2020年いらい、すべて退役の方向で検討が進んでいるという。

 そうなると、ストックの105㎜砲弾は余剰品になるわけだ。

 韓国は、今、年に20万発の155ミリ砲弾を製造している。
 弾殻は「Poongsan」社が製造し、そこに炸薬を充填するのは「Hanwha」でやっている。

 ※チェコの大統領が騒いでいたのは、けっきょくこれか?

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 The Maritime Executive の2024-3-24記事「Ukraine Attacks Two More Russian Amphibs in Sevastopol」。
    金曜日の夜、宇軍はセワストポリ軍港を巡航ミサイルもしくは無人機によって空襲し、埠頭に繋留されていたロプチャ級の揚陸艦『ヤマル』と『アゾフ』の2艦に命中弾を与えたと。さらに黒海艦隊司令部の通信施設も爆破したと。
 ロシアのSNSは、空対地ミサイルの「ストームシャドウ」が使われたと言っている。

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 Cailey Gleeson 記者による2024-3-25記事「DeSantis Approves Social Media Ban For Kids Under 14 In Florida」。
   フロリダ州知事デサンティスが月曜日に新法に署名した。
 14歳未満の者は、2025年の1月1日以降、SNSにアカウントを創ることは許されない。

 またSNS運用会社は、14歳未満のユーザーが開いている既存アカウントを消去しなくてはならない。

 14歳と15歳の者は、親の同意があれば、アカウントを開設できる。


台湾政府はTikTokを国家安全保障上の脅威だと認定した。

 Lily LaMattina 記者による2024-3-24記事「Taiwan labels TikTok as national security threat」。
    これはデジタル担当大臣の唐風(アンドレイ・タン)の24日の発言。
 すでに台湾の政府機関はTikTokを使うことを禁止されている。
 しかし学校内やNGOにおいては依然として野放しなので、これも禁ずることを検討中。

 米国での反TikTok法は、下院を通過し、今は連邦上院の承認待ち。もし承認されれば、バイデンはすぐにその法案に署名すると言っている。

 かたやトランプは、この反TikTok法には反対すると言っている。2020年当時と、言うことが逆である。

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 Rachel Gordon 記者による2024-3-22記事「AI generates high-quality images 30 times faster in a single step」。
   AI描画ソフトとしては「Stable Diffusion」や「DALLE-3」が既にあるが、それらの30倍のスピードでユーザーが求める絵柄を学習できるソフトを、MITのチームが開発したと言っている。

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 Kamil Galeev 記者による2024-3-16記事。
    記者のチームは、ロシアにぜんぶで28ヵ所ある重要ミサイル工場を調べ上げた。
 いずれも、弾道ミサイル、もしくは巡航ミサイル、ハイパーソニック弾、SAMの工場である。
 それらは、4つある大企業のいずれかの傘下に属す。その4社は、その4社は、ロスコスモス、Almaz-Antey、 Tactical Missiles、および、ロステク社である。

 リポートの全文は、「How Does Russia Make Missiles?」のタイトルでダウンロードできる。

 要旨。

 こうしたミサイルのパフォーマンスは「精密工作機械」にほとんど依存し、それ次第ですらある。しかるにソ連のミサイル工業は、工作機械のNC化を進めなかった。

 西暦2000年にプー之介が全権を掌握するまでにロシアのミサイル工業は死滅状態に陥っていた。
 プー之介はそれらを「近代化」するのではなく、廃墟から創設しなおす必要があった。

 プーチンのロシアのために、そのすべてを据え付けてやった外国企業がある。ドイツのジーメンス社だ。
 ロシア人の工員が介入するとロクなことがないので、極度に設備は自動化された。

 ※自国防空のアセットが足りなくなったロシアは、インドに売る約束だったS-400の引渡しを2026年以降に、自己都合で延期した。


露軍は追加で30万人を充員召集して、ハリコフを攻めたいのだという。

 Defense Express の2024-3-23記事「Ukraine Keeps Attacking russian Oil Refineries: Kuybyshevsky Oil Plant on Fire After Alleged Drone Strike」。
    3月23日深夜、ロシア領内サマラ州にあるクィビシェフスキー精油工場に複数機の無人特攻機が突っ込み、複数の爆発が起き、火災に。

 この工場と、最寄のウクライナ領土とのあいだは900km離れている。無人機は直線コースを飛んだとは考えられないので1000km以上飛べる型なのであろう。

 長距離の無人機攻撃を計画するときは、敵のSAM陣地の位置を見極めて、そこを避けるようにする。ゆえに直線コースを飛ぶことは決してないのだ。

 今回やられた精油所は、年産700万トンの原油を処理できた。2012年から2015年にかけて、104億ルーブル(2012年レートで3億3500万ドル)を投じて近代化改修したところである。それが炎上した。

 使われたUAVは「Liutyi」ではないかという。国営の「ウクライナ防衛工業JSC」という企業体が製造しており、航続距離は1000km以上ある。※基本レイアウトは「バイラクタルTB2」と相似。縮尺模型の写真だけが公表されている。

 この攻撃の直前に英紙『フィナンシャルタイムズ』が、匿名の米高官がウクライナ政府に対して《国際油価が高くなるから精油所攻撃は止めてくれ》と要請したという記事を載せている。※それじたい、精油所所在地の防空部隊を油断させるためのディスインフォメーション作戦であった可能性が高いだろうと思う。

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 Boyko Nikolov 記者による2024-3-21記事「Russian FAB-500 bomb fell at 10:30am but detonated at 3:00pm」。
   露軍は、「FAB-500」改造の滑空爆弾の信管に、5時間遅延信管をとりつけてきた。
 10時半に着弾したものが、轟爆したのが15時だったので。

 ※露空軍は「FAB-3000」という3トン爆弾の滑空爆弾化も進めているところだという。在庫品ではなく、目下、しゃかりきに量産させているのだという。これが爆発するとブラストの影響は半径900mに及ぶそうだ。さてそこで提案だ。ロクな空軍機をもっていない宇軍には同じことはできないのか? できる。パラグライダーに3トン爆弾を吊るし、最も安価に――おそらく3Dプリンターによっても――量産が可能な「パルスジェット」のエンジンをとりつけて、モーターパラグライダーとして、近距離の敵地を攻撃させることが。リリース方式は、輸送用のヘリコプターから落とすのが合理的だろう。攻撃対象は、鉄道とパイプラインと送電鉄塔と橋。AIの画像識別チップを組み込んでおけば、リモコンの必要もない。

 ※砲弾は簡単に増産できないが、爆弾は質を落とせばいくらでも簡単に増産できる。今から2年するとNATOの砲弾製造能力がロシアを圧倒してしまう。だからロシアの軍需工業は、砲弾ではなく「滑空爆弾」に注力するように指導されているところなのだと思う。アウディウカでは1日に80発の滑空爆弾が飛んできて、地上の建物はすべてサラ地になったという。この、「空爆によるサラ地化」こそは、露軍がシリアでず~っとやってきた常套戦法だ。

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 Povilas M.記者による2024-3-23記事「The Growing Popularity of ‘Dragon’s Teeth’ ―― Do They Work?」。
    WWII中のジークフリート線に打設された「竜の歯」にくらべると、今日のウクライナ戦線で見られる「竜の歯」はずいぶんチャチい置き物だが、兵隊たちはこれをますます気に入っている。効果はあるらしい。

 AFVは、ゆっくり前進すれば、「竜の歯」を押しのけて、障害線を越えられる。しかし、最高速力では超越はできない。そこに意味がある。

 こいつは急設できる。トラックの荷台に積んで運んでくればいいだけだ。
 それを、地雷原や、他の障害壕や、対戦車火器陣地と組み合わせるのだ。

 ポーランドとバルト三国も、すでに、露領と接する国境線に「竜の歯」を並べている。

 ※ポーランド国内で量産されているクラスター弾頭を、ウクライナ軍の多連装ロケット弾に装着するという計画が進んでいるらしい。