Mr. Dyson’s Air Multiplier may vanish all rotors of helicopters

 世間の役に立つ新製品を続けざまに考え付ける人って素晴らしいですね。
 James Dyson氏の扇風機は、航空機の設計を全般的に変えてしまうんじゃないかという予感がします。
 むかし、OH-6の尾部ローターの代わりにターボシャフトエンジンの排気をテールに導いて横向きの孔から噴出させたらどうかという「No-ter」とかいう試行があったと記憶しますが、それはなにか具合がよくなかったらしくて、「没」になっているものと認識しています。しかし、フェネストロンの代わりにダイソン氏の扇風機を装着し(それは真円形にする必要もなく、長楕円形でも長方形スリット状でも良いはずだ)、ターボシャフトの排気と大気の冷たい空気を混ぜてサイドスラストさせるようにしたらどうでしょう。これはうまくいくのではないですか?
 さらに改善努力が投入されれば、効率上のブレークスルーが発見されて、ヘリコプターのメイン・ローターもいらなくなるかもしれません。とりあえず小型UAVをこしらえてVTOL実験してみるべきじゃないでしょうか?
 自身では大発明ができなくとも、それを為す組織をサポートしようというお金持ちもいます。とりあえず、ブラッド・ピット、偉い。
 テクノバーンの2009-10-14の「US Architect creates floating house for New Orleans residents」という記事。
 ミシシッピ洪水被害を二度と許さないぞ、という目論見で、耐洪水の「可泛」な家屋を考え付いたという。その技術集団のスポンサーがブラピ。
 コンクリート土台構造の上に家屋が載っていて、そのコンクリート構造がお椀船のように浮力を保ち、洪水が来た際には、ガイドの柱に沿って垂直に12フィートまで浮き上がることができる。水が引けば、しぜんにまた地面に降りてくる。家が流されない。
 過去のミシシッピ流域の洪水記録をよく調べ、12フィート浮くようにすれば十分だと見当をつけたようです。
 尤も、ハリケーンのまっただなかで避難もせずに木造家屋内に居てよいわけではなく、避難はしなければならないのですが、水がひいたらすぐに戻ってきて、屋根や壁の修理をすれば住むことができる。家屋全体の滅失はとりあえず防ごうじゃないかというアイディアです。
 兵頭いわく。これは第一次大戦中からある「戦時コンクリート標準船」の故智の転用かと思いましたが、地球温暖化問題にも一石を投じますよ。
 というのはグリーンランドと南極の氷が解けるとバングラデシュの沿岸部が海没し、1億人くらいの避難民がインドかビルマに逃げようとするんじゃないかと環境ロビイストらによってさかんに危機が煽られているのですが(イスラミックだから隣国および先進国では難民をひきとらないだろうとハッキリ予想できます)、コンクリート製の「浮かぶ集合住宅」を用意しておけば、この問題の緊急性はかなり遠のいちまうでしょう。ベトナムには船上で生活している人なんて既にゴマンといますからね。
 バングラ低地の海没対策さえできれば、地球の温暖化は、むしろ良いことの方が多くなるかもしれませんよ。特に不毛のシベリアが一大水田地帯と化すであろうロシアは、それが待ち遠しくてしょうがないでしょう。
 アラスカ州、カナダ、グリーンランドが世界の穀倉となり、北極海は地中海リゾートと化し、南極はジャングル大陸化する。海浜土壌が海に混入することによって海草もやたら増える。これって薔薇色じゃね?
 次。ロシアの核先制使用ドクトリンの内容がエスカレート?
 AFPの2009-10-14記事「Russia To Adopt 1st Strike Nuke Policy: Official」がイズベスチア紙を引用して伝えているところによると、ロシアは、局地レベルの通常兵器による侵略にも、核を先制使用する可能性を残したいらしい。
 つまり通常兵器ではCOINし切れないという不安があるのか。米国と違ってカネづまりなのでしょうけど、だんだんとすごいことになっていきそうです。


別宮暖朗先生の新刊が出たよ

 米海軍はいま、大型無人偵察機「グローバルホーク」の洋上哨戒機版である「BAMS」を常駐させて思うままに運用できるような広々とした飛行基地が、太平洋上にはほとんど得られないというので、これから深刻な悩みを抱えそうです。
 米海軍は空軍や陸軍ほど無人化に積極的でなく(というのはおそらく有事に人員が増やされる組織ではないから、平時から人を確保すべしという組織本能が強いのだ)、今のP-3Cをすっかり無人機で代替するつもりはない。
 有人の新鋭機P-8Aと、しぶしぶ、混用しようという方針。
 だから、既製の飛行場では、必要な余積が足りなくなる。とにかくBAMSはデカいのです。
 そこで前原大臣に提案しましょう。赤字の地方空港を、民用としては廃止しちまって、米海軍の無人機用に有料でレンタルしたら?
 ついでに海保(国交省)もBAMSの日本版をつくり、その基地を共用したら良いでしょう。捜索と救難の拠点基地にするのです。
 豪州とニュージーランドのコーストガードは、はやばやと無人機の採用を加速させています。それが合理的だからです。海保は、遅れています。たとえば無人の武装ヘリなしで、どうやって北鮮船を臨検する気?
 こんな話も、次の未来計画本で書いてみたいと思っています。
 さて、きのう並木書房さんから最新刊を1冊いただきましたので早速ご紹介します。
 『「坂の上の雲」では分からない 日露戦争陸戦 ――児玉源太郎は名参謀ではなかった』
 旅順の話を除いた、野戦と外交の評論です。あいかわらず濃密で、勉強になる内容です。これから日露戦争に論及する者にとり、必読参照文典の一つに加わることでしょう。
 またこれで一発、NHKスペシャル大河は、放映開始前からダメージを蒙るわけか……。
 著者の別宮先生も、もうそろそろご退院みたいです。目出度いです。
 内容ですが、井口省吾、ボロカスです。松川俊胤も一緒。児玉はこの二人の部下に作戦を任せるしかなかった。満州軍総司令部ができてから日本陸軍の作戦は逆にスローになってしまっている。満州軍総司令部の愚劣な作戦に隷下部隊が従わなかったことによって日本は勝つことができているのだ。
 得利寺では露兵は1万人死傷したと推定できる根拠がある。しかるにロシア陸軍省の公式発表は過少で、「真っ赤なウソ」。それを日本側『公刊戦史』は敢えて採用し、ロシア側の戦死者が少ないのは三十年式歩兵銃の口径が6.5ミリで低威力だからだときめつけた。だが事実は、日露戦争を通じて特利寺戦こそが日本陸軍の最大の圧勝だった。
 元老では、伊藤博文だけが光っていた。戦争指導部の中で国際法が分かっていたのは、小村と伊藤だけだった。この二人のコンビが、日露戦争をパーフェクトな「自衛戦争」にしたのだ。
 佐橋滋は、自衛隊違憲論の上にホンダの四輪車参入を阻止しようとした、国益などどうでもよかった統制計画主義官僚=井口タイプの勘違い参謀の見本じゃないか……などなど。
 痛快です。
 ところで『voice』連載の堀井健一郎さんの記事には毎回じつに考えさせられることが多いのですが、11月号では、松本清張の仕事のピークが49歳から59歳までの10年であり、司馬遼太郎のピークは39歳から49歳までの10年だった――とのスルドイ指摘が。
 『坂上の雲(六)』は司馬が49歳のときにリリースして完結。『(一)』は46歳のときだった。
 だとしたら当時の40代以下の読者が騙されたのは尤もじゃないかと納得しました。トシをとらないと見破れぬことは、多いです。
 さて、おそらく今月下旬に光人社さんから『近代未満の軍人たち』(ハードカバー)と『有坂銃』(NF文庫)が相次いで刊行されるでしょう。これでNHKスペシャル大河と「坂の上」史観は、またも打撃に曝される。いずれも加筆修正した新版です。ご期待ください!


インドが核実験準備???

 インドについてはモニターしていたつもりでしたが、米国内でこれほど盛り上がっていたとは、気づきませんでした。
 『NYT』電子版2009-10-11社説。「Just Say No」。これはインドに対して警告する内容です。
 いわく。もしインドが核実験したら、2008の米印合意に縛られている米国としては、対印の核燃料販売はできなくなるぞ。
 インドがやれば、パキスタンも実験すると言うに決まっている。そうなったらパキ政府はもうタリバン討伐どころじゃなくなるだろう。
 それに、そうなったら米国の包括核実験禁止条約の批准(これは連邦上院の特権。大統領は条約を調印して帰ってくることができるだけ)もパーだ。
 なぜ1988の核実験を仕切った インドのK. Santhanamは、いまごろになって、あの実験はフィズル(fizzle)だったなんて言い出しているのか?
 NYTいわく、邪推をすれば、インドは、米上院が核実験禁止条約を批准できない環境をつくろうとしているのだ。そうなれば、インドも条約調印を迫られないですむからな。
 すでに182カ国以上が調印し、150カ国は批准もすませた。
 が、条文が定めた9カ国が批准しないとこれは発効しない。その9カ国には米国、シナ、インドが含まれている。
 オバマは上院を説得すると公言しているのだけれども、サンタナムが新しい実験が必要だと騒いでいるので、もうだめかもしれない。インドの原子力委員長は、シミュで十分だから実験無用と言っているが……。
 そしてNYTの結論。インドは経済発展しろ――。
 これについては、AFPの過去記事が早かったと記憶します。
 2009-8-29の「Indian PM Denies Claims About 1998 Nuke Tests」という記事。
 1988の核実験について最近疑いが……。シン首相は8-29にそれを否定。
 なんと、核技師が、あれは部分成功にすぎなかったと言っている。
 出力も公表より低かった、と。 水爆としてはFizzleであった、と――。
 兵頭いわく。この1988インド実験もそうなんですが、直前のパキ実験はもっと疑わしいものなのです。近接した横穴トンネルの中で、5発一度に炸裂させた。そんな実験ってありますかい? ロクにデータなんかとれるわけないでしょ。
 米ソのおびただしい核実験数にくらべて、インドやパキスタンの実験数は回数が少なすぎ、かつまた、その実験の「質」がムチャクチャなのです。
 わたしは、インドもパキスタンも、BMで核を運用する能力はないだろうと疑っています。
 印パは互いにハッタリのBMレースを続けているのです。
 (もちろん北鮮については言うまでもありません。ノドンがそもそも東京には届きません。)
 次。インドが350kmの液体二段式BM×2本の試射に成功したというニュース。vivek raghuvanshi記者、09-10-12、「India Tests Nuke-Capable Missile Twice」。
 Prithvi-II を2発、 eastern Orissa state にて、 10-12に発射した。350km先の別々な目標に、うまく到達した。
 弾頭は500kgまで可能。精度は within a few meters と国防省発表。
 パキスタンの Hatf-III は、 range of 290 kilometers で、固体である。
 他方で、インドの通常戦力は惨憺たるありさまだとか、その割にはオマーン軍の訓練もしてやっている地域の兄貴株なのであるといった新着ニュース、それから、ロシアが米ソ条約の切れるこの年末に複数弾頭の新BMを配備予定で、それが旧単弾頭ミサイルの改造(つまり条約違反)なのか否かの舌戦が展開中で、おそらくこうしたことがオバマ氏のノーベル平和賞と関係があるのだろうとも思いますが、当方多忙につき割愛。
 なぜか米国内では、北京のレアメタル禁輸発表が、かなりの政治的奇襲だったようで、ヘルタースケルター状態で次々と対応が模索されている様子が伝わってきます。
 まず2009-10-12のSHARON BURKE記者による「China Is Calling for Your Cell Phone」という記事。
 タイヤ問題なんか吹っ飛ぶぜ。
 液晶パネル、精密誘導弾、車載レーザ、航空機エンジンにもレアアース。
 考えてみろ。10年前、インド人の 0.2 % しか携帯電話をもってなかった。今は4割、つまり4億人が持っている。米国総人口の2倍だぜ。
 携帯つくるにはindium と gallium が欠かせない。ところがこれらは米国も100%輸入依存ときた。
 WWIIは、the scrap metal と生ゴムが drives したのを思い出そう。※オイ、そこで日本が引き合いかよ! レアアースを獲りに米国がシナに戦争仕掛けるってのか?
 次世代電池に必須の Lithium これは南米に集中。ボリビアに世界の埋蔵量の半分がある。
 ブリキに使われる cassiterite【錫石】は中央アフリカに偏在。クリントン国務長官はこれに言及。
 とりあえず米国にとっては 13 のminerals がcritical であり、別に 39 minerals について評価中。
 同じテーマを別角度から。おなじみの JOHN T. BENNETT記者〔仏語読みすればジョンベネか。同僚から冷やかされとるんだろうな〕による2009-10-12記事「Battling a Mineral Monopoly――As China Tightens Grip, Molycorp Ready To Step Up」
 いわく。シナは今や98%のレアアース酸化物をコントロールしている。※まじっすか?
 しかし米国にも最後の希望があった。それが2002以降、半ば廃れている カリフォルニアのMountain Pass 鉱山だ。ここにレアアースがあるのだ。
 このヤマの復活をペンタゴン/米政府は支援すべし。市場に任せておくと、シナ物との競争に勝てないから、経営がなりたたないからだ。
 じつはアメリカには変な鉱山規制がたくさんあるのだ。環境にうるさかった時代の。採掘拡大の許可とるのに15年とか。
 鉱脈がみつかるまでにも10年かかるんだ。期限30年とか。そんな縛りがあってはダメだ。緊急事態だ。政府の肝煎りでなんとかしろ。ヤマの再開には多額の資金も必要だ。政府が貸してやれ。
 レアメタルを2万トン出ないと全米の需要を満たせない。同盟国分までとなったらその倍を掘りださにゃならん。
 そこで兵頭いわく。日本も海水からレアメタルを回収する事業を始めたらどうだい。これがホントの ”sea change”【すっかりさまがわり。海潮による陸地の変形】 だわな。


ご訃報に一驚す。

 「ニュー速+」を偶然開いてびっくりしました。本当なんでしょうか?
 江畑先生ならびに奥様には2004-5-29の海保の洋上式典で一度お目に掛かったことがあるだけでございますが、謹んでお悔やみを申し上げ度く存じます。


いつかはこの時代が来ると思っておった……

 テクノバーンの2009-10-9アップの「Household robots do not protect users’ security and privacy」という記事を読んで、己れの迂闊さを慨嘆。1年前に気づくべきだったなぁ!
 ワシントン大の助教授らが1冊の本を書いて無線操縦ロボット・オモチャの危険について警告したというのだがハッキリいってそんな警告はどうでもいい。
 2008-10時点で彼らは、3台の市販トイロボをテストしていた。
 すなわちインターネット経由で無線操縦ができる、昆虫態の装輪ロボットで、ビデオカメラによる撮影、マイクによる収音、そしてまたスピーカーを鳴らすことも可能な「WowWee Rovio」。
 それと同様機能の「Erector Spykee」。
 そして、赤外線で近距離の操縦ができる、機能が一層巧妙化した「WowWee RoboSapien V2」だ。
 著者らは、これらの玩具ロボットが映像&音声偵察活動をするさいに、周囲の人々に対しては何らの光学的/音響的な警報も与えないこととか、映像や音声の無線伝送信号が簡単に他者に傍受され得ることなどを、現代人のプライバシーの危機につながるものだと強調したいらしい。
 おいおい、それよりもさ、これらがみんなメイドインチャイナだってことに深い脅威を直感するべきじゃないのかぃ?
 シナ軍がこのオモチャの機能を延長したら、そのまま軍用偵察ロボットになる。その「訓練」ができる。兵隊のスキルを高められるわけ。
 iRobot 社の PackBot にだって素早く追いつけるじゃないですか。
 そうなったら自衛隊はシナ軍に対してすら「周回遅れ」ですよ。
 数日前の「The Chinese blogosphere has been buzzing about the photo release of a previously unknown UAV (operational?)」という、どこかの記事によれば、シナ軍のUAVはもっかのところ参本2部が一括管理しているらしい。つまりまだ戦略偵察用を主に考えている段階のようです。しかし、パキスタンですら対地攻撃用のUAVをイタリアと共同で作ろうっていう趨勢なんだから、マゴマゴしてたら第三世界以下の原始的な軍隊になっちゃいますぜ、自衛隊は。
 ここは日本の玩具メーカーさんに踏ん張ってもらうしかない、とわたしは思います。
 JSEEOに余裕があれば、わたしは「タミヤ」を表彰したいぐらいなのです。日本のキチガイサヨクが全盛だった戦後の数十年間、軍事研究の若い人材がポツポツと日本社会に供給され続けたのは、まったくのところ静岡県のプラモ業界があったおかげですからね。本来、国家がそれを褒章すべきなのだが、どうせ国家はやらんでしょうから、JSEEOがいつかやりますよ。
 それはともかく、「WowWee Rovio」のようなことが去年からもうできるのであったら、リアル3D戦車戦(もちろん、モータライズド・スケールモデル同士の)だって、すぐに可能じゃないですか。あるいは、リアル・レディオプレーン同士による空中戦も……!
 交戦結果は、ガン・カメラ判定でもいいし、バトラー訓練装置のオモチャ版をとりつけたっていいわけですよ。
 1980年代のエアーガンだって、はじめはデフォルメのトイガンしかなかったのを、日本のガンマニアが、実銃レプリカに発展させたんだ。みんなで応援すればいいんだよ。
 防衛省に無人機導入のヤル気がないんだったら、玩具の世界で先行したら良いのですよ。みんな、この運動を推進しよう!


JSEEOの主張は、すべて『「自衛隊」無人化計画』(PHP)の中に……

 わしはついにアフガニスタン問題を根源から解決する良い方法を発見し、その雑誌原稿を書いておっただよ。
 そしたっけその間にも、言及せざるを得ねえニュースが次々に飛び込んで来やがるだよ。
▼JOHN T. BENNETT氏の09-10-7寄稿「GOP Lawmaker Blasts Obama Team’s Missile Intel, Cost Claims」。いわく……
 米議会内では、〈GBI代わりの対イランBM用のSM-3配備のためには9隻のイージス艦が必要だろう。うち2隻が前方展開としてな。1隻の新造は$25 billionだ。旧イージス艦の改修でも1隻につき1~9 billionドルだ。そんな無駄を議会が許すと思うのか。GBIより高価なものはダメだ〉といわんばかりの批判、そしてとうとう〈どうせイージス艦を太平洋から持ってくるしかないのだ〉との示唆まで飛び出したっちゅーこと。
 まさか来月オバマ氏はこれを説得しに来日する?
 次。AFPの09-10-8の驚羅大四凶殺速報。「Russia Plans Shift in Nuclear Doctrine: Reports」。
 ロシアが先制核攻撃を採用だってよ! 窮したねぇ、あの国は。
 おそらく数週間後、オバマ氏とのRe-START交渉の開始前後に全文が公表されるのだろう。
 元KGBのオッサンいわく。大量破壊兵器または、大規模な通常兵器による侵略の損害が生じたときには、ロシアは核を最初に使うぞ、と。
 これは冷戦時代の、核の先制使用はしませんぜという口公約を反転させるものだ、とAFP。
 次。JOHN T. BENNETT氏の09-10-8寄稿「Administration Pursues Early Warning Radar, Trade Treaty Approval」。
 ロシア南部、アゼルバイジャンというこれまでも出てきた、NATOとリンクさせるABMレーダーの候補地に加え、ウクライナにどうじゃという話も出てきた。
 ウクライナとロシアはハッキリいって仲は良くない。米国には好ましく、ロシアには厭らしい案ですね。
 次。アジアなんとかニュースに出ていた、09-10-8アップの記事「Strykers to Deploy to India for Exercise」。
 今月中に米陸軍は17両のストライカーをインドに持ち込む。イラクとアフガン以外では最大だ。
 2年ごしで準備してきた、米太平洋軍とインド軍との合同演習が12日から2週間、始まるのだ。
 これと関係あるのか? 次の記事を見よ。
 『ワシントンタイムズ』紙にSara A. Carter氏の09-10-8アップ記事「EXCLUSIVE: Pakistan plans ambitious blitz to rout Taliban」。
 パキスタン軍が米国から暗視装置を貰って、ヘリコプターを使って、タリバン拠点の掃蕩に乗り出す、と。
 兵頭いわく。できるわけねーだろ。関東軍が満蘇鮮国境からどうやって金日成軍を叩き出したのか、その勉強でもしやがれ。
 さもなきゃ、来月の兵頭記事を読むがよい。ヒンズークシからゲリラを根絶できないのは、装備の問題じゃなくて、道路インフラの問題ですよ。あと4万人増派したってダメ。これはオバマ氏に忠告したい。
 次もアジアなんとかコムから。「Taiwan in talks with Germany over four U- 214 SSK」という記事。
 ギリシャがドイツに4隻発注した燃料電池式の潜水艦の代金を振り込まないものだから、いままで1隻も引き渡されないでいた、その潜水艦を台湾が横から貰おうという商議をしたようだ。
 これは微妙なケースだ。じつはU214型はパキスタンも購入契約する気だと伝えられている。それが本当なら、アメリカ政府は、U214の技術情報がシナその他に洩れても問題はないと考えているのだろう。
 これに関しては、wendell minnick氏の09-10-5寄稿の「Ex-PACOM Official Convicted of Spying for China」という記事も見るべきだ。
 台湾系シナ人が1996退役の元米軍中佐を北京のスパイとしてとりこんだ。この元中佐はとっつかまり、15年の求刑に直面するだろう。
 FBIが”false flag” operation と呼ぶものは、台湾に渡すものだからといって秘密情報をとり、それを北京に渡す。組織から退職直前の男がひっかかる。
 台湾有事の際に、台湾政府と米国政府は暗号通信で相談しなければならない。その暗号は「Type 1 cryptography techniques」といい、米国が提供する。バーガーソンはその取り極めのペーパーに関与する立場だった。
 その暗号に北京は興味があった。
 しかしこの事件で台湾政府は一人も逮捕していない――と。
 兵頭いわく。
 米国は着々とプロ・シナの悪者を訴追しているのに台湾は1人もつかまえていない。台湾はもう北京からの間接侵略に屈服しているのだ。とすればドイツ潜の情報も台湾人経由で北京にダダ漏れすると懸念せねばなるまい。しかしたぶん、米国政府の前に北京政府がドイツに嫌がらせをしてこの話はチョンだろう。
 そもそも台湾はミニ潜航艇くらい国産できる資金力は十分にあったのに、これまでやる気がまったくなかったわけ。日本のバカ右翼のようになにか期待する方が間違ってるのです。


対人用ミニチュア・ミサイルへの一里塚

 David A. Fulghum 氏による「New Weapons Look And Act Strangely」という09-9-30の記事。
 サーモバリック・ヘルファイア!
 すなわち成形炸薬ではなく、固体炸薬と気体爆薬を組み合せ、燃焼速度を抑え、ヘルファイアが貫通した後の密閉空間内の殺傷力を増す。
 チャイナレイクでは、分子の格子状配列をカスタムしてしまうことにより、緩燃で爆発の持続時間が長く、しかもピーク圧力が高いサーモバリック炸薬も追究中。
 コラテラル被害のない誘導爆弾も、チャイナレイクで開発中。
 500ポンド爆弾でSUV×1台を吹っ飛ばして、その周りへは無影響とする。
 旧来の、弾頭と弾底に2ヶのフューズをつけるかわりに、弾長に沿った紐状の信管をとりつける。そして爆弾のどの部分が先に着地したかによって瞬時に最適の起爆を引き起こすようにすればコラテラルは減らせる。
 やはり Fulghum 氏による「/China Lake Naval Air Warfare Center」という09-9-30の記事。
 陸軍の新製品。汎用のミニ・ミサイル「スパイク」はたった2フィート。重さ5.5ポンド。
 歩兵がこれを発射するときは、バックブラストは考えないで良い。初速は時速100マイルで、ゆっくり。
 スパイクの構成は、2.25インチ径の量産品のロケット弾の先に、チープなハンディカムをとりつけたようなもの。
 燃焼時間は1.5秒。それでマッハ 0.85 まで加速され、惰性で3.2km飛翔し、終速は600マイル/時くらいである。
 地対空モードでは、たった1秒で発射準備完了。標的が30フィート以上離れていさえすれば、あたかもショットガンを使うように発射できる。肩打ちだが。なお、12ボルトのバッテリーは必要だ。
 UAVのヘルファイア・ランチャーにもとりつけられる。
 09-6-15には無人ヘリの「ヴィジラント」からも発射テスト済み。
 今年、9度テストして7度成功。そのうち一度は、小型高速ボートの吃水を狙って貫通した。
 目標が時速60マイルで横行していても命中させられる。まっすぐこちらに向かって来る敵や、まっすぐ逃げていく敵ならば、もっと高速移動していたとしても当たる。
 次の目標は、この量産品の納入価格を $5,000-6,000 per missile に抑えることだ。
 修理するなどバカらしいくらいに安くしたい。前線の部隊で簡単な作動チェックをしてみてもし不具合が分かったら、補給処の修理部隊へ後送するのではなく、その場に投げ棄てさせる。そういう兵器。これが陸軍経費の圧縮につながる。
 市販品の流用によってこのコストが実現できる。イメージCCDセンサーなどは100ドルで民生品が調達できるのだ。
 あとでもっと安い市販部品やプログラムソフトが入手できたら、それにすぐ差し替えられるようにも設計してある。
 推薬の発火は光ファイバーのレーザー信号(市販の通信用部品)による。だから静電気や迷走電圧などで勝手に暴発する危険もない。
 やがてすべてのセンサーと回路が1枚のチップに載せられる時代が来る。そうなればこの種の製品はもっと安くなる……。
 兵頭いわく。
 この調子でいけば、歩兵対歩兵の戦闘にミニ・ミサイルが湯水のように使われるようになりますよ。
 そしてこれもゲリラの手に渡るのは時間の問題です。宮内庁は早く皇居の大改造をした方がいいんじゃ……?
 ところでわたくしはテレビを視ていないのですが、シナ軍は、敵UAVのイメージングCCDを韜晦するためのAFV/ソフトスキン用の「デジタル迷彩パターン」塗装(レゴブロックみたいな模様)を、パレードで公表しただろうか? 公開しなかったとしたら、かなり本気で研究中なのに違いない。外国人の広帯域光線カメラの前に生資料を提供したくはなかったのだ。
 日本にはまともな政治家がいないので、残念ながら核武装は半永久に不可能です。ではどうやって対北京の戦略報復力を確保するか。答えはロボット/小型無人機です。ロボットはコラテラルな被害ゼロの選別的大量破壊(対権力直接アプローチ)を可能にする唯一の手段でもあるのです。しかし日本人がぼやぼやしていれば、この分野でも米国の世界支配が確定するでしょう。新刊『「自衛隊」無人化計画』(PHP研究所)をお読みください。近くに図書館のある方は、購入リクエストしましょう!
 JOHN T. BENNETTT 氏による「U.S. Could Send Army Patriot Missile Unit to Poland」という09-10-1寄稿記事。
 国務省幹部が下院(の共和党の)議員たちに語る。パトリオット部隊でもポーランドに出しますか、と。
 ポーランド政府の希望を煎じ詰めると、米軍部隊が国内に駐留し、ロシア軍の侵攻の壁になってくれることに尽きている。だから、米軍部隊なら何でもいいじゃないか。
 ブッシュ計画にはなかったセンサー複数を配備することになるかも。
 〔移動式Xバンドでもなく、固定Xバンド・レーダー基地でしょうか?〕
 GBIは1発25トン。SM-3は1トン前後。よって安いんですよ。
 そこへ共和党員たちの突っ込み。SM-3なんて “a paper missile”(空想上のミサイル)だろう。その改良はイランの長BM完成に間に合うまい。
 だいたい、あと10年も長BMを防がないつもりなのか。その間、欧州に配備されている米軍はどうやって守るんだ?――云々。
 兵頭いわく。日本の国会でどうしてこういう質問が出ないんでしょうね。東京は、1960年代からシナの核弾頭付き中BMで狙われ続けているんですが(そしてノドンは東京には届きません)。日本こそGBIを10発すぐによこせと言わなければおかしいでしょう。


「読書余論」 2009年10月25日配信号 の 内容予告

▼伊呂波会『伊号潜水艦訪欧記』2006
 日本海軍は、対艦用のロケット加速爆弾の実物資料を要求していたのではないかと思われるのだが、本書によって、それは結局届かなかったと察することができる。
 ドイツは戦時中、空襲警戒警報と同時に中波を停止していた。中波ラジオ局は、まさに敵爆撃機にとってのビーコンになってしまうのだ。※現代の敵国は日本を巡航ミサイルで攻撃するのにGPSもマップデータも必要とはしまい。東京タワーのMW周波数とVHF周波数にホーミングさせれば良いだけだ。
▼マックス・ウェーバー『都市の類型学』世良晃志郎tr.、S39
 アジアにおいては、非血縁盟約をさまたげる血縁が強く、産業同盟たる市民は生まれなかった。同じ事情から、キリスト教も不可能であった。
▼レーリヒ『中世ヨーロッパ都市と市民文化』原1964、魚住&小倉tr.S53
 ドイツの都市民主主義は、分権化からけっきょく広域防禦力の弱体化を招いて、三十年間、すべての周辺国の傭兵隊が好き放題荒らしまくり、トドメをさされたのである。〔日本もこの道を辿るのかな? 近畿地方かなりヤバイよ。〕
▼藤田弘夫『都市と権力』1991
▼原田伴彦『都市発達史研究』1984
▼季亜農『中国の奴隷制と封建制』中村篤二郎tr.S31、原1954
▼堀敏一『中国古代の身分制――良と賤』1987
▼長坂金雄ed.『美談日本史 第四巻 産業美談』S15
▼『美談日本史 第八巻 復讐美談』S16
▼『美談日本史 第十一巻 武芸美談』
▼伊藤貞夫『古典期アテネの政治と社会』1982
▼『戦記名著集 vol.11 日露観戦記 弾痕抄』S5
 所収の「弾痕抄 露軍の内幕」。独の戦時通信記者マックス・ベールマン著、斉藤鉄太郎tr.、1904-8-20。
▼中村賢二郎ed.『都市の社会史』1983
▼リクワート『〈まち〉のイデア』前川道郎tr.、1991、原1976
▼高柳俊一『都市の思想史』S50
 ベーコンいわく、「国家については実験をしない方がいい」。
▼藤田幸一郎『都市と市民社会』1998
▼谷和雄ed.『西洋都市の発達』S40
▼原田伴彦『中世における都市の発達』S17-10
▼アンリ・ピレンヌ『中世都市論』佐々木克巳tr.、1988、原19世紀
▼ハンス・プラーニッツ『中世ドイツの自治都市』林毅tr.、S58、原1944
▼ブラウンフェルス著、日高健一郎tr.『西洋の都市――その歴史と類型』1986、原1976
▼宮下孝吉『西洋中世都市発達の諸問題』S34
▼瀬原義生『ヨーロッパ中世都市の発達』1993
▼Milo Roy Maltbie著『都市発達論』M35、杉山重義ed.
▼上田正昭ed.『日本古代文化の探究・都城』S51
▼桐生政夫『都市住宅の防空防火戦術』S18-3
▼東京都総務局基地返還対策室『都内基地のあらまし』1975-12
 戦前は立川飛行場がいちばんよく整備されていたのだが、戦後、ジェット化と大型輸送機の登場でどうにも狭くなってしまい……。
▼津田素彦『射的術』M32-11
▼足立栗園『武士道発達史』M34-6
▼『國文学 解釈と教材の研究』1987-10月号所収、桑原三郎「立川文庫と少年講談の冒険譚の主題――『宮本武蔵』論」
▼『法政大学教養部紀要 人文科学編』1991-2所収、大東俊一「九鬼周造と武士道」
▼森銑三『宮本武蔵言行録』S15-2
▼石田外茂一『宮本武蔵五輪書詳解』S18-6
▼日本文化研究会ed.『日本精神研究 第四輯 武士道精神』S10-1
▼坂本辰之助『日本外戦史 附・兵器考』S10-5
▼竹本尉『日本の弓箭』S17-8
▼江口卯吉『銃剣術』S17-2
▼瓜生喬『江戸時代の武士』M33-11
▼秋山梧庵ed.『武士道叢書』M38-12
▼高橋富雄『武士道の歴史 2』S61
▼高橋富雄『武士道の歴史 3』S61-5
▼小瀧淳『武士道逸話』S15-10
▼高木武『太平記と武士道 日本精神叢書 第42』S13-11
▼『明治文学全集8 福沢諭吉全集』筑摩書房S41
 所収の「明治十年 丁丑公論」と「痩我慢の説」について。
▼渡辺世祐・八代国治『武蔵武士』大2初版、S62repr.
▼西鶴「武道伝来記」、谷脇理史校注『新日本古典文学大系77』所収
▼飛田茂雄『アメリカ合衆国憲法を英文で読む』1998
▼永積安明・島田勇雄校注「古今著聞集」『日本古典文学体系84』1996所収
 弓箭関係の説話について。
▼竹村英輔『グラムシの思想』1975-6
 グラムシは公務員なんか全部かたづけろと叫んでいたのに、日本の共産主義者は大概が公務員だもんだから、その話をスルーし、矛先を天皇制に向け変えているのだと察することのできる本。
▼小倉卯之助『暴風の島――新南群島発見記』S15-12
 戦前は「南沙」などと呼んでなかった。ちなみに著者は『初瀬』が触雷沈没したときそこに乗組んでいたという、貴重な生き証人である。
▼中 正夫『航空の書』S19-4
 本書は、イタリアの自殺飛行隊「デスペレータ」についてレイテ戦以前に紹介していた日本語文献のひとつ。ただし日本人の紹介者は、1940の「イ・ディスペラティ」と、1935~36の「ラ・ディスペラータ」とを混同していたのではないかと兵頭は思うようになった。それについて詳しく述べよう。
▼田尻昌次『元寇』S3
 武器に詳しい。
▼布施秀治『上杉謙信傳』大6
▼柴田眞三朗『航空部隊』S18-10
 著者は陸軍浜松航空隊の草分けの爆撃教官だがS18-5に急死。
 本書には、昭和4~5年に、浜松陸軍飛行学校の教官たちが、「五機一艦相撃[あいうち]主義」の航空必死隊をとなえた――という興味深い証言が……!
 それが本当なら陸海軍を通じても最も早い特攻隊の発案。もちろんイタリア人よりも早い。
 S18前半にすでに離陸時から自爆覚悟で爆弾の風車安全装置を外し、実際に敵艦に突入している飛行機があるのだという見解披露。
 特攻史研究者ならば、この資料は必読。
▼『東京・横田基地』1986
 1970前後の東京からの核の傘撤去に関する米支密約について推理するためには、米空軍の核攻撃機F-105Dおよびその後継F-4部隊の移駐の跡を辿る必要があるだろう。
▼東京都昭島市pub.『基地とあきしま』S47-3
 これもヨコタの話。
▼『続 基地とあきしま』S50-3
 ◆  ◆  ◆
 「読書余論」は、主に軍事系の古本を、兵頭が注目した一斑の摘記や読書メモによって紹介し、他では読めないコメントも附しているものです。(配信されるファイルはPDFスタイルです。)
 あまりに多すぎる過去の情報量の中から「兵頭はここは珍しいと思いました」というポイントだけ要約しました。
 大きな図書館に毎日通えない人も、最低費用で、過去の軍事知識のマニアックな勘所に触れることが可能です。
 また、ミリタリーしか読んで来なかった人には、他分野の情報が、何ほどか有益かもしれません。
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潜水艦輸出とイラン危機のおかげでドイツは「P6」入りを成し遂げる

 09-9-28に『NYT』に FLYNT & HILLARY LEVERETT氏が「How to Press the Advantage With Iran」という寄稿。
 そこにこんなことが書いてありました。
 ――1969にニクソンは、チベットに関する工作を停止しろとCIAに命じ、米海軍には台湾海峡から離れろと命じた。ベトナム戦争中だったにもかかわらず。
 兵頭いわく。『属国の防衛革命』(光人社)にも書きましたが、米支核密約は1969に始まったと思います。片岡鉄哉先生すら、気付けなかったことです。新政権の外相は早くこれを暴きましょう。
 ――シナはイランから原油を輸入しているだけでなく、おびただしい油田開発をイランで実施中。さらにパイプラインをイランからシナまで敷き、原油タンカーを米海軍に妨害されないようにせんとの野心あり。
 兵頭いわく。23日の『FT』は、シナがイランへガソリンを逆輸出中だと報じていましたね。
 またウォルフォウィッツの9-27のFT論文によれば、イランはロシアに次ぐ天然ガス埋蔵量を誇り、それは米国の埋蔵量の4倍で、2/3は未開発だと。(だからといって原発の必要などないとか、原発用の濃縮ウランは安く輸入すればよいだろうとか、ナショナルセキュリティについて他国人が妄言できないでしょう。それがよい証拠には、かつて日本資本によるイランの油井開発を妨害して中断に追い込んだのは米国政府じゃないか。)
 09-9-28には Hu Zhengyue 氏が「Seek peaceful solution to Kashmir: China to India, Pak」という記事を寄稿しています。〔これはインドの新聞でしたか……?〕
 カシミア領土問題を早く解決しようという呼びかけですが、これは、イランからの原油をパキスタン領経由でカシミール峠を越えてシナまで通したいからですよね。
 AFPは09-9-29に、「Israel Takes Delivery of 2 German-Built U212 Subs」と報じ、『ジェーンズ・ディフェンス・ウィークリー』によれば、このDolphin-class は核弾頭付巡航ミサイルを発射できると紹介しています。〔わたしはこれはブラフのレベルだと思っています。理由は、イスラエルはその実戦的な発射演習をほとんどしていないようだから。核攻撃は、不確実性の高いBMでもCMでもなく、腕に覚えの航空機投下爆弾によってするつもりでしょう。〕
 湾岸戦争後、ドイツは3隻の潜水艦をイスラエルに売り、それにこの2隻が加わりました。引渡しは2010だと思われていたのが、早められた。
 イスラエルがイランの脅威にかなり真剣になっているのは間違いないでしょう。
 ドイツは核武装国ではないが、イスラエルに核兵器投射手段を売ってやることで、「P5+1」のメンバーに招じ入れられた。イランをペルシャ湾側から脅威できる――ようにいつかはなるかもしれない――この潜水艦の売却は、完全に米国の承諾下で行なわれているでしょう。実質、米国によるイスラエルへの戦略兵器システムの迂回援助のようなものでしょう。
 EU経済を一国で支えているドイツは、アフガンにも有力な空陸部隊を供出していますが、それだけじゃ「P6」扱いはしては貰えなかった。
 日本はインドに大型潜水艦などを提供すれば、このドイツに近い地位が得られるのかもしれません。日本がやらなければ、フランスが原潜技術をインドに売ろうとするだけです。早く日印武器貿易協定(第三国への技術流出防止)を結ぶべきでしょうね。
 さて10月下旬にはまた小生の単行本が出るでしょう。しかしその前に皆さんは『「自衛隊」無人化計画』を熟読して欲しい。これは惨憺たる経済状態に陥った日本社会の暗い趨勢を根本から逆転して明るくすることのできる福祉のマニフェストなのですから。


麻薬が水を奪う! “失敗国家”寸前のイエメンの姿

 イランのニュースがいろいろ盛り上がっていますけど、あっと驚く話は無いですね。『フィナンシャルタイムズ』へのウォルフォビッツの意見寄稿とか、古いレコードの歌のようなものだ。
 今回も、中距離BMのシャハブ3改と、二段式固体燃料の「セジル」の、実際の飛距離の公表はありませんでした。
 シナ製の短BMを「二連装」で発射できるランチャー(車載機動だが地面におろして据えるようだ)の公表だけが興味深かった。固体燃料式だからできるんでしょう。
 シナ製の短BMは三種類あり、その最大のものでも300kmしか飛ばず、それではイラン領からイスラエルまでは届かないが(最低1000kmは射程が必要)、イランはなにしろレバノンのヒズボラへSSM/SSR売りまくりの前科がある。これらも密輸出されるんでしょう。米軍が地中海にイージス配備するのは、それに備えたいのか。
 ジョイントスターズやその類似機能のUAVで空からBM展開を探知されても、対地攻撃機が飛来する前にさっさとBMを発射しちまえばいい、というのがイランの高等判断なんでしょう。シナ製固体BMがその需要に応えた。輸出経路は空輸でしょう。
 そうするとセジルもシナ技術じゃないかと疑われる。ノドンと同射程なら、もう北鮮はイラン市場をシナに奪われたのですよ。
 で、果たしてイスラエルが「行動」を起こすとしたらどうなるか? 手際よくまとめてくれているのが、ANTHONY H. CORDESMAN氏の09-9-26の「The Iran Attack Plan」という記事。どこかの日本の媒体でこれをマルパク和訳しただけの解説記事が出そうな予感のするくらい要領が良い。
 まあそれよりも最近考えさせられたのは次のイエメンの記事です。
 Andrew Lee Butters 氏が 2009-10-5〔この日付は紙媒体用?〕に載せた「Is Yemen the Next Afghanistan?」という記事。
 イエメン政府はスンニ派。反政府ゲリラはシーア派で、北部国境に蟠居している。内乱は難民を生み、アルカイダ天国の土壌ができている。
 それでも2009-6までは、外国人が被害に遭うことはなかったのだが、とうとう6月に9人の外国人が誘拐され、そのうち2名のドイツ人女性、1名の韓国人女性は、バラバラ死体で発見されている。
 その後、イエメン政府は外国ジャーナリスト等の国内旅行を制限している。
 世界公認の失敗国家(failed state)であるソマリアが海賊を輩出しているのは有名だが、次はそろそろイエメンがあぶなくなっているぞ。
 イエメン領内の山岳地は無法地帯で、アルカイダも好んでいる。というか、もともとイエメンはアルカイダへの有数の人材供給国。イエメン政府とアルカイダの関係は symbiotic【共生的】である。
 ※なるほど、2002にプレデターの最初のヘルファイアの手柄首がイエメンで挙げられていたのもこういう背景があったわけね。
 ソ連がアフガニスタンに侵攻したときにもイエメン人が多数志願ゲリラになり、多数がソ連軍に処刑された。フセイン時代のイラクにもイエメンから反政府ゲリラ要員が潜入した。
 アルカイダは 2008-9にイエメンのアメリカ大使館を襲撃せんとした。
 イエメンは銃だらけ。しかも国民の教育はほぼゼロ。
 Khatという低木がある。この葉を口の中で噛んでいると、天然の覚醒剤成分が五臓六腑にしみわたる。イエメン男の90%、イエメン女の25%は、この植物麻薬の中毒患者である。
 イエメンで耕作可能な土地のほとんどが、この Khat の栽培のために利用されている。ただでさえ乏しい水は、ほとんどその畑のために費やされている。
 Khatをやめれば禁断症状が出る。だが、それを治療する方法を、イエメン政府も、米国も、持ってはいない。
 大衆は〈現状でいいじゃないか〉という態度。Khat を常習していると、なんかどうでもよくなってしまうのだ。
 そして、唯一、この現状を改革可能なのは、アルカイダの怒れるピューリタンかもしれん。やつらはこの麻薬には手を出さないから――。
 ……というのだが、本当か? 「アルカイダ=イエメン庶民」という構図があるのなら、ラリったメンバーだって多いだろうに。
 この記事には書いてないけど、ソマリアでブラックホークが墜落したとき、襲い掛かってきた住民も、この木の葉を噛んでラリっていたんでしょうね、たぶん。地域ぜんたいトリップ状態かよ!
 さて拙著『「自衛隊」無人化計画』が書店発売になってから10日を過ぎましたが、ここには日本の現状を変える方法がすべて書いてあります。
 昼間っからマリファナ吸ってふらふらしているような若者は一人も居ないといわれるニッポンのみなさま、どうぞインフルエンザにお気をつけてお過ごしください。